(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エチレン系共重合体シートの各種特性について要求される技術水準は、ますます高くなっている。本発明者らは、従来のエチレン系共重合体シートに関し、以下のような課題を見出した。
まず、エチレン系共重合体シートを用いて、合わせガラスや太陽電池モジュールを製造する場合は、エチレン系共重合体シートとガラス等の透明基板とを積層し、加熱加圧によりエチレン系共重合体シートを硬化させることにより各層を接着一体化させる。
このとき、得られた合わせガラスや太陽電池モジュールにおいて、透明基板とエチレン系共重合体シートとの間に気泡のようなものが生じ、外観が悪化してしまうことが明らかになった。
このように、本発明者らは、従来のエチレン系共重合体シートは、透明基板に積層した際に外観不良が発生しやすいことを見出した。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、外観に優れた、透明基板と樹脂シートとの積層体を歩留り良く得ることが可能な樹脂シートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意研究を重ねた。その結果、エチレン系共重合体により構成された樹脂シートにおける最大膜厚と最小膜厚との差という尺度が、透明基板と樹脂シートとの積層体の外観不良を改善するための設計指針として有効であるという知見を得て、本発明を完成させた。
【0009】
本発明によれば、以下に示す樹脂シート、合わせガラスおよび太陽電池モジュールが提供される。
【0010】
[1]
エチレン系共重合体により構成された樹脂シートであって、
上記樹脂シートは少なくとも一方の表面に複数の微細な凹部および複数の微細な凸部を有し、
上記樹脂シートの平均膜厚が0.2mm以上2.0mm以下であり、
以下の条件により測定される、上記樹脂シートの最大膜厚と最小膜厚との差が30μm以下である樹脂シート。
<条件>
上記樹脂シートの幅方向における任意の200mm間において20mmごとに厚みを10点測定する。得られた10点の厚みのうち、最大の厚みを上記最大膜厚とし、最小の厚みを上記最小膜厚とする。ここで、上記厚みは、接触式厚み計を用いて上記凸部で測定する。
[2]
上記[1]に記載の樹脂シートにおいて、
上記複数の微細な凹部の平均深さが10μm以上80μm以下である樹脂シート。
[3]
上記[1]または[2]に記載の樹脂シートにおいて、
上記複数の微細な凹部の配列の周期が100μm以上400μm以下である樹脂シート。
[4]
上記[1]乃至[3]いずれか一つに記載の樹脂シートにおいて、
上記エチレン系共重合体が下記要件b1)を満たすエチレン・極性モノマー共重合体(b)を含む樹脂シート。
b1)上記エチレン・極性モノマー共重合体(b)中の極性モノマー単位の含有量が8質量%以上35質量%以下である
[5]
上記[1]乃至[4]いずれか一つに記載の樹脂シートにおいて、
上記エチレン系共重合体が以下の要件a1)およびa2)の少なくとも一つを満たすエチレン・α−オレフィン共重合体(a)を含む樹脂シート。
a1)ASTM D1505に準拠して測定される密度が0.860g/cm
3以上0.895g/cm
3以下である
a2)ASTM D2240に準拠して測定されるショアA硬度が55以上95以下である
[6]
上記[1]乃至[5]いずれか一つに記載の樹脂シートにおいて、
上記エチレン系共重合体が以下の要件c1)をさらに満たす樹脂シート。
c1)ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるMFRが0.1g/10分以上50g/10分以下である
[7]
上記[1]乃至[6]いずれか一つに記載の樹脂シートにおいて、
上記エチレン系共重合体の含有量が、当該樹脂シート全体を100質量%としたとき、50質量%以上である樹脂シート。
[8]
上記[4]に記載の樹脂シートにおいて、
上記エチレン・極性モノマー共重合体(b)がエチレン・酢酸ビニル共重合体を含む樹脂シート。
[9]
上記[5]に記載の樹脂シートにおいて、
上記エチレン・α−オレフィン共重合体(a)がさらに以下の要件a1')およびa2')の少なくとも一つを満たす樹脂シート。
a1')ASTM D1505に準拠して測定される密度が0.865g/cm
3以上0.884g/cm
3以下である
a2')ASTM D2240に準拠して測定されるショアA硬度が60以上85以下である
[10]
上記[1]乃至[9]いずれか一つに記載の樹脂シートにおいて、
架橋剤をさらに含む樹脂シート。
[11]
上記[10]に記載の樹脂シートにおいて、
上記架橋剤の含有量が、上記エチレン系共重合体100質量部に対して、0.05質量部以上5質量部以下である樹脂シート。
[12]
上記[1]乃至[11]いずれか一つに記載の樹脂シートにおいて、
上記複数の微細な凹部および上記複数の微細な凸部を有する上記一方の表面に透明基板が配置される樹脂シート。
[13]
上記[1]乃至[12]いずれか一つに記載の樹脂シートにおいて、
合わせガラス用中間膜または太陽電池封止材である樹脂シート。
[14]
上記[1]乃至[12]いずれか一つに記載の樹脂シートにより構成された合わせガラス用中間膜と、
上記合わせガラス用中間膜の両面に設けられた透明基板と、
を備える合わせガラス。
[15]
表面側透明保護部材と、
裏面側保護部材と、
太陽電池素子と、
上記[1]乃至[12]いずれか一つに記載の樹脂シートの架橋体であり、かつ、上記太陽電池素子を上記表面側透明保護部材と上記裏面側保護部材との間に封止する封止層と、
を備えた太陽電池モジュール。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、外観に優れた、透明基板と樹脂シートとの積層体を歩留り良く得ることが可能な樹脂シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。数値範囲の「A〜B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。
【0015】
1.樹脂シート
本実施形態に係る樹脂シートは、エチレン系共重合体により構成された樹脂シートである。上記樹脂シートは少なくとも一方の表面に複数の微細な凹部および複数の微細な凸部を有する。
本実施形態に係る樹脂シートにおいて、複数の微細な凹部および複数の微細な凸部は、樹脂シートの少なくとも一方の表面に形成されていればよいが、例えば、合わせガラス用中間膜または太陽電池封止材として用いる場合は、透明基板に接する表面に複数の微細な凹部および複数の微細な凸部が形成されていることが好ましく、両面に複数の微細な凹部および複数の微細な凸部が形成されていることがより好ましい。
【0016】
本実施形態に係る樹脂シートは、以下の条件により測定される、上記樹脂シートの最大膜厚と最小膜厚との差が30μm以下、好ましくは28μm以下、より好ましくは25μm以下、さらに好ましくは20μm以下、特に好ましくは18μm以下である。上記樹脂シートの最大膜厚と最小膜厚との差の下限値は特に限定されないが、例えば1μm以上、好ましくは5μm以上である。
<条件>
上記樹脂シートの幅方向における任意の200mm間において20mmごとに厚みを10点測定する。得られた10点の厚みのうち、最大の厚みを上記最大膜厚とし、最小の厚みを上記最小膜厚とする。ここで、上記厚みは、接触式厚み計を用いて上記凸部で測定する。
【0017】
本発明者らは、発明が解決しようとする課題の欄に記載した課題を解決するために鋭意検討したところ、透明基板とエチレン系共重合体シートとの間に気泡が生じ、外観が悪化してしまうシートはシート表面に不規則に突発的に存在する突出部が生じていることが明らかになった。本発明者らは、樹脂シート表面に不規則に突発的に存在する突出部があると、透明基板と積層した際に突出部が潰され気泡のようなものが生じてしまうと推察した。
そこで、本発明者らは上記課題を達成するための設計指針についてさらに鋭意検討した。その結果、最大膜厚と最小膜厚との差を上記上限値以下とすることで、外観に優れた透明基板と樹脂シートとの積層体を歩留り良く得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0018】
本実施形態においては、とくにエチレン系共重合体の種類、樹脂シートの成形条件等が、最大膜厚と最小膜厚との差を制御するための因子として挙げられる。
【0019】
本実施形態に係る樹脂シートの平均膜厚は、0.2mm以上2.0mm以下であり、好ましくは0.3mm以上1.5mm以下、より好ましくは0.4mm以上1.0mm以下である。樹脂シートの平均膜厚が上記下限値以上であると、樹脂シートの機械的強度をより良好なものとすることができ、樹脂シートの熱収縮を抑制することができる。また、樹脂シートの平均膜厚が上記上限値以下であると、ラミネート工程において、透明基板等の他の部材の破損を抑制でき、比較的低温でも透明基板へのラミネート成形ができる。また、樹脂シートの平均膜厚が上記上限値以下であると、十分な光線透過率を確保でき、それを用いた太陽電池モジュールは高い光発電量を有する。
ここで、上記樹脂シートの平均膜厚は上記10点の厚みの平均値とすることができる。
【0020】
本実施形態に係る樹脂シートにおいて、複数の微細な凹部の平均深さは10μm以上80μm以下であり、より好ましくは20μm以上70μm以下であり、さらに好ましくは30μm以上50μm以下である。ここで、各凹部の深さは凹部の最大深さであり、複数の微細な凹部の平均深さは、各凹部の深さの平均値である。
凹部の平均深さが上記上限値以下であれば、加熱および加圧により凹凸がつぶれる時に空気がトラップされにくく、すなわち、エア抜け性に優れ、気泡が低減される。また、平均深さが上記上限値以下であれば、シートロール等にした際に、その内部の無駄な空間を少なくすることができ、輸送効率が向上する。一方、凹部の平均深さが上記下限値以上であれば、凹部の底面が隣接するシート面と接触しにくく、シート面同士のブロッキングを効果的に抑制できる。
【0021】
複数の微細な凹部の平均深さは、例えば、樹脂シートのシート片を電子顕微鏡で断面観察することにより求めることができる。
【0022】
複数の微細な凹部の配列の周期は、100μm以上400μm以下の範囲であることが好ましく、200μm以上300μm以下の範囲であることがより好ましい。なお、周期は樹脂シートの全体にわたって同一である必要はない。周期が上記上限値以下であれば、凹部の底部が隣接するシート面と接触しにくい。そのため、ブロッキングを効果的に抑制できる。一方、周期が上記範囲内であれば、エア抜け性により一層優れた樹脂シートとなる。
【0023】
ここで、周期とは、1つの凹部とそれに隣接する凹部との重心間距離である。なお、1つの凹部に対して隣接する凹部との重心間距離が複数ある場合には、最小の重心間距離が上記範囲内にあればよいが、最小の重心間距離と最大の重心間距離がともに上記範囲内にあることがさらに好ましい。
【0024】
周期は、例えば、樹脂シートのシート片を光学顕微鏡で観察することにより求めることができる。具体的には、シート片の表面形状を光学顕微鏡で測定して周期を測定し、上記範囲内にあるかどうかを確認できる。
【0025】
<エチレン系共重合体>
本実施形態に係る樹脂シートに用いられるエチレン系共重合体としては、例えば、エチレンおよび炭素数3〜20のα−オレフィンとを含むエチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・環状オレフィン共重合体、エチレン・α−オレフィン・環状オレフィン共重合体等のオレフィン系樹脂;エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体およびそれらの塩、エチレン・ビニルエステル共重合体等のエチレン・極性モノマー共重合体;等から選択される一種または二種以上を用いることができる。
【0026】
これらの中でも、エチレン・α−オレフィン共重合体およびエチレン・酢酸ビニル共重合体から選択される少なくとも一種が特に好ましく使用される。なお、本実施形態においては上述したエチレン系共重合体は単独で用いてもよいし、二種以上をブレンドして用いてもよい。
【0027】
本実施形態における樹脂シート中の上記エチレン系共重合体の含有量は、樹脂シート全体を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。これにより、透明性、接着性、耐熱性、柔軟性、架橋特性等の諸特性のバランスにより優れた樹脂シートを得ることができる。
【0028】
(要件c1)
ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるエチレン系共重合体のメルトフローレ−ト(MFR)は、好ましくは0.1〜50g/10分であり、より好ましくは0.5〜40g/10分、さらに好ましくは1.0〜35g/10分、特に好ましくは5.0〜25g/10分である。エチレン系共重合体のMFRは、重合反応の際の重合温度、重合圧力、並びに重合系内の共重合モノマーのモノマー濃度と水素濃度のモル比率等を調整することにより、調整することができる。
【0029】
MFRが上記下限値以上であると、エチレン系共重合体を含むエチレン系樹脂組成物の流動性が向上し、シートの成形加工性がより良好となる。
一方、MFRが上記上限値以下であると、分子量が大きくなるため、チルロール等のロール面への付着を抑制できるため、剥離を不要とし、より均一な厚みのシートに成形することができる。さらに、「コシ」がある樹脂組成物となるため、0.1mm以上の厚いシートを容易に成形することができる。また、架橋特性が向上するため、十分に架橋させて、耐熱性の低下を抑制することができる。
【0030】
(エチレン・極性モノマー共重合体)
本実施形態におけるエチレン・極性モノマー共重合体としては、例えば、エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸プロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸ヘキシル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン・マレイン酸ジメチル共重合体、エチレン・マレイン酸ジエチル共重合体、エチレン・フマル酸ジメチル共重合体、エチレン・フマル酸ジエチル共重合体等のエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体;エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・マレイン酸共重合体、エチレン・フマル酸共重合体、エチレン・クロトン酸共重合体等のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体およびそれらの塩;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン・酪酸ビニル共重合体、エチレン・ステアリン酸ビニル共重合体等のエチレン・ビニルエステル共重合体:エチレン・スチレン共重合体等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
【0031】
これらの中でも、上記エチレン・極性モノマー共重合体としては、その入手容易性と性能とのバランスからエチレン・ビニルエステル共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体から選択される一種または二種以上を含むことが好ましく、特に、エチレン・酢酸ビニル共重合体が好ましい。
【0032】
上記エチレン・極性モノマー共重合体中の極性モノマー単位の含有量は、好ましくは8質量%以上35質量%以下、より好ましくは10質量%以上35質量%以下、さらに好ましくは13質量%以上35質量%以下である。極性モノマーの含有量がこの範囲にあると、架橋性、柔軟性、耐候性、透明性のバランスにより一層優れる。
【0033】
本実施形態に係る樹脂シートを太陽電池封止材として用いた場合には、極性モノマーの含有量が上記範囲内にあると、架橋性、柔軟性、太陽電池封止シートの接着性、耐候性、透明性、機械的性質のバランスにより一層優れる。また、太陽電池封止シートを成膜する際にも、成膜性が良好となる。
【0034】
酢酸ビニル含有量や、MFR等が異なる2種以上のエチレン・極性モノマー共重合体を併せて用いてもよい。2種以上のエチレン・極性モノマー共重合体を用いる場合には、これらの総量を上記範囲とすることが好ましい。
【0035】
(エチレン・α−オレフィン共重合体)
本実施形態における樹脂シートに用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合することによって得られる。α−オレフィンとしては、通常、炭素数3〜20のα−オレフィンを1種類単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いることができる。中でも好ましいのは、炭素数が10以下であるα−オレフィンであり、とくに好ましいのは炭素数が3〜8のα−オレフィンである。このようなα−オレフィンの具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等を挙げることができる。中でも、入手の容易さからプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンおよび1−オクテンが好ましい。なお、エチレン・α−オレフィン共重合体はランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよいが、柔軟性の観点からランダム共重合体が好ましい。
【0036】
エチレン・α−オレフィン共重合体はさらに要件a1)〜a3)の少なくとも一つを満たすことがより好ましく、要件a1)およびa2)の少なくとも一つを満たすことがさらに好ましく、要件a1)〜a3)のすべてを満たすことが特に好ましい。また、本実施形態に係る樹脂シートを太陽電池封止材として用いた場合には、以下の要件a1')、a2')およびa3')を満たすことがより好ましい。
【0037】
(要件a1)
ASTM D1505に準拠して測定されるエチレン・α−オレフィン共重合体の密度が、好ましくは0.860〜0.895g/cm
3であり、より好ましくは0.863〜0.895g/cm
3であり、さらに好ましくは0.865〜0.890g/cm
3である。
エチレン・α−オレフィン共重合体の密度は、エチレン単位の含有割合とα−オレフィン単位の含有割合とのバランスにより調整することができる。すなわち、エチレン単位の含有割合を高くすると結晶性が高くなり、密度の高いエチレン・α−オレフィン共重合体を得ることができる。一方、エチレン単位の含有割合を低くすると結晶性が低くなり、密度の低いエチレン・α−オレフィン共重合体を得ることができる。
【0038】
エチレン・α−オレフィン共重合体の密度が上記上限値以下であると、結晶性が低くなり、透明性をより高くすることができる。さらに、架橋性をより良好なものとすることができる。また柔軟性により優れる。
【0039】
一方、エチレン・α−オレフィン共重合体の密度が上記下限値以上であると、エチレン・α−オレフィン共重合体の結晶化速度を速くできるため、成形されたシートがベタつきにくく、冷却ロールでの剥離が容易になり、樹脂シートをより容易に得ることができる。また、シートにベタツキが発生しにくくなるのでブロッキングの発生を抑制し、シートの繰り出し性を向上させることができる。また、架橋性がより良好となるため、耐熱性の低下をより抑制することができる。
【0040】
(要件a1')
本実施形態に係る樹脂シートを太陽電池封止材として用いた場合には、ASTM D1505に準拠して測定されるエチレン・α−オレフィン共重合体の密度が、好ましくは0.865〜0.884g/cm
3であり、より好ましくは0.866〜0.883g/cm
3であり、さらに好ましくは0.866〜0.880g/cm
3であり、特に好ましくは0.867〜0.880g/cm
3である。エチレン・α−オレフィン共重合体の密度は、エチレン単位の含有割合とα−オレフィン単位の含有割合とのバランスにより調整することができる。すなわち、エチレン単位の含有割合を高くすると結晶性が高くなり、密度の高いエチレン・α−オレフィン共重合体を得ることができる。一方、エチレン単位の含有割合を低くすると結晶性が低くなり、密度の低いエチレン・α−オレフィン共重合体を得ることができる。
【0041】
エチレン・α−オレフィン共重合体の密度が上記上限値以下であると、結晶性が低くなり、透明性をより高くすることができる。さらに、架橋性をより良好なものとすることができる。また柔軟性により優れ、ラミネート成形をする際に太陽電池素子の割れや、薄膜電極のカケ等が発生することをより抑制することができる。
【0042】
一方、エチレン・α−オレフィン共重合体の密度が上記下限値以上であると、エチレン・α−オレフィン共重合体の結晶化速度を速くできるため、成形されたシートがベタつきにくく、冷却ロールでの剥離が容易になり、本実施形態に係る樹脂シートをより容易に得ることができる。また、シートにベタツキが発生しにくくなるのでブロッキングの発生を抑制し、シートの繰り出し性を向上させることができる。また、架橋性がより良好となるため、耐熱性の低下をより抑制することができる。
【0043】
(要件a2)
ASTM D2240に準拠して測定される、エチレン系共重合体のショアA硬度は55〜95であり、好ましくは60〜95であり、より好ましくは63〜90である。
エチレン系共重合体のショアA硬度は、エチレン系共重合体のエチレン単位の含有割合や密度を制御することにより、調整することができる。すなわち、エチレン単位の含有割合が高く密度が高いエチレン系共重合体は、ショアA硬度が高くなる。一方、エチレン単位の含有割合が低く密度が低いエチレン系共重合体は、ショアA硬度が低くなる。
【0044】
ショアA硬度が上記下限値以上であると、シート化しやすく耐ブロッキング性が良好なシートが得られ、さらに耐熱性も向上させることができる。
ショアA硬度が上記上限値以下であると、透明性および柔軟性を向上させるとともに、シート成形を容易にすることができる。
【0045】
(要件a2')
本実施形態に係る樹脂シートを太陽電池封止材として用いた場合には、ASTM D2240に準拠して測定される、エチレン・α−オレフィン共重合体のショアA硬度は好ましくは60〜85であり、より好ましくは62〜83、さらに好ましくは62〜80、特に好ましくは65〜80である。エチレン・α−オレフィン共重合体のショアA硬度は、エチレン・α−オレフィン共重合体のエチレン単位の含有割合や密度を御することにより、調整することができる。すなわち、エチレン単位の含有割合が高く、密度が高いエチレン・α−オレフィン共重合体は、ショアA硬度が高くなる。一方、エチレン単位の含有割合が低く、密度が低いエチレン・α−オレフィン共重合体は、ショアA硬度が低くなる。
【0046】
ショアA硬度が上記下限値以上であると、エチレン・α−オレフィン共重合体の結晶化速度が速くなる。このため、成形されたシートがベタつきにくくなり、冷却ロールでの剥離がより容易になり、樹脂シートを得ることがより容易になる。また、シートに発生するベタツキが抑制されるのでブロッキングを抑制でき、シートの繰り出し性がより良好となる傾向にある。また、樹脂シートの架橋性がより向上し、耐熱性がより良好となる。
【0047】
一方、ショアA硬度が上記上限値以下であると、結晶性が低くなり、透明性を高くすることができる。さらに、柔軟性が高いため、ラミネート成形をした場合に太陽電池素子であるセルの割れや、薄膜電極のカケ等が発生することをより抑制することができる。
【0048】
(要件a3)
エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれる、エチレンに由来する構成単位の含有割合は、好ましくは78〜93mol%であり、より好ましくは79〜93mol%であり、さらに好ましくは80〜90mol%である。エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれる、炭素数3〜20のα−オレフィンに由来する構成単位(以下、「α−オレフィン単位」とも記す)の含有割合は、好ましくは7〜22mol%であり、より好ましくは7〜21mol%であり、さらに好ましくは10〜20mol%である。
【0049】
エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれるα−オレフィン単位の含有割合が上記下限値以上であると、結晶性が低くなり、透明性をより高くすることができる。さらに、架橋性をより良好なものとすることができる。また柔軟性により優れる。
【0050】
エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれるα−オレフィン単位の含有割合が上記上限値以下であると、エチレン・α−オレフィン共重合体の結晶化速度を速くできるため、成形されたシートがベタつきにくく、冷却ロールでの剥離が容易になり、本実施形態に係る樹脂シートをより容易に得ることができる。また、シートにベタツキが発生しにくくなるのでブロッキングの発生を抑制し、シートの繰り出し性を向上させることができる。また、架橋性がより良好となるため、耐熱性の低下をより抑制することができる。
【0051】
(要件a3')
本実施形態に係る樹脂シートを太陽電池封止材として用いた場合には、エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれる、エチレンに由来する構成単位の含有割合は、好ましくは80〜90mol%であり、より好ましくは80〜88mol%であり、さらに好ましくは82〜88mol%であり、とくに好ましくは82〜87mol%である。エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれる、炭素数3〜20のα−オレフィンに由来する構成単位(以下、「α−オレフィン単位」とも記す)の含有割合は、好ましくは10〜20mol%であり、より好ましくは12〜20mol%であり、さらに好ましくは12〜18mol%、とくに好ましくは13〜18mol%である。
【0052】
エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれるα−オレフィン単位の含有割合が上記下限値以上であると、結晶性が低くなり、透明性をより高くすることができる。さらに、架橋性をより良好なものとすることができる。また柔軟性により優れ、ラミネート成形をした場合に太陽電池素子であるセルの割れや、薄膜電極のカケ等が発生することをより抑制することができる。
【0053】
エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれるα−オレフィン単位の含有割合が上記上限値以下であると、エチレン・α−オレフィン共重合体の結晶化速度を速くできるため、成形されたシートがベタつきにくく、冷却ロールでの剥離が容易になり、樹脂シートをより容易に得ることができる。また、シートにベタツキが発生しにくくなるのでブロッキングの発生を抑制し、シートの繰り出し性を向上させることができる。また、架橋性がより良好となるため、耐熱性の低下をより抑制することができる。
【0054】
(エチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法)
エチレン・α−オレフィン共重合体は、以下に示す種々のメタロセン化合物を触媒として用いて製造することができる。メタロセン化合物としては、例えば、特開2006−077261号公報、特開2008−231265号公報、特開2005−314680号公報等に記載のメタロセン化合物を用いることができる。ただし、これらの特許文献に記載のメタロセン化合物とは異なる構造のメタロセン化合物を使用してもよいし、二種以上のメタロセン化合物を組み合わせて使用してもよい。
メタロセン化合物を用いる重合反応としては、例えば以下に示す態様を好適例として挙げることができる。
【0055】
従来公知のメタロセン化合物(I)と、(II)(II−1)有機アルミニウムオキシ化合物、(II−2)上記メタロセン化合物(I)と反応してイオン対を形成する化合物、および(II−3)有機アルミニウム化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物(助触媒ともいう)と、からなるオレフィン重合用触媒の存在下に、エチレンとα−オレフィン等から選ばれる一種以上のモノマーを供給する。
【0056】
(II−1)有機アルミニウムオキシ化合物、(II−2)上記メタロセン化合物(I)と反応してイオン対を形成する化合物、および(II−3)有機アルミニウム化合物としても、例えば、特開2006−077261号公報、特開2008−231265号公報、および特開2005−314680号公報等に記載のメタロセン化合物を用いることができる。ただし、これらの特許文献に記載のメタロセン化合物とは異なる構造のメタロセン化合物を使用してもよい。これら化合物は、個別に、あるいは予め接触させて重合雰囲気に投入してもよい。さらに、例えば特開2005−314680号公報等に記載の微粒子状無機酸化物担体に担持して用いてもよい。
【0057】
なお、好ましくは、前述の(II−2)上記メタロセン化合物(I)と反応してイオン対を形成する化合物を実質的に使用せずに製造することで、電気特性の優れるエチレン・α−オレフィン共重合体を得ることができる。
【0058】
エチレン・α−オレフィン共重合体の重合は、従来公知の気相重合法、およびスラリー重合法、溶液重合法等の液相重合法のいずれでも行うことができる。好ましくは溶液重合法等の液相重合法により行われる。上記のようなメタロセン化合物を用いて、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合を行ってエチレン・α−オレフィン共重合体を製造する場合、(I)のメタロセン化合物は、反応容積1リットル当り、通常10
−9〜10
−1モル、好ましくは10
−8〜10
−2モルになるような量で用いられる。
【0059】
化合物(II−1)は、化合物(II−1)と、化合物(I)中の全遷移金属原子(M)とのモル比[(II−1)/M]が通常1〜10000、好ましくは10〜5000となるような量で用いられる。化合物(II−2)は、化合物(II−2)と、化合物(I)中の全遷移金属(M)とのモル比[(II−2)/M]が、通常0.5〜50、好ましくは1〜20となるような量で用いられる。化合物(II−3)は、重合容積1リットル当り、通常0〜5ミリモル、好ましくは約0〜2ミリモルとなるような量で用いられる。
【0060】
<架橋剤>
本実施形態に係る樹脂シートは、さらに架橋剤を含んでもよい。これにより、エチレン系共重合体の架橋構造を形成することができ、樹脂シートの接着力を高めることができる。
本実施形態に係る樹脂シート中の架橋剤の含有量は、エチレン系共重合体100質量部に対して、好ましくは0.05〜5質量部であり、より好ましくは0.1〜3質量部である。
【0061】
架橋剤は、シランカップリング剤と、エチレン系共重合体とのグラフト変性の際のラジカル開始剤として、さらに、エチレン系共重合体の架橋反応の際のラジカル開始剤として用いられる。エチレン系共重合体に、シランカップリング剤をグラフト変性することにより、各基材への接着性、架橋性がさらに良好な樹脂シートを得ることができる。
【0062】
架橋剤としては、有機過酸化物が好ましく用いられる。
好ましく用いられる有機過酸化物は、エチレン系共重合体にシランカップリング剤をグラフト変性したり、エチレン系共重合体を架橋したりすることが可能なものであればよいが、シート成形での生産性と架橋速度のバランスから、有機過酸化物の1分間半減期温度が100〜170℃であることが好ましい。有機過酸化物の1分間半減期温度が上記下限値以上であると、シート成形時に樹脂シートにゲルが発生しにくくなる。また、発生したゲル物によりシートの表面に凹凸が発生するのを抑制できるため、外観の低下を防止することができる。
【0063】
有機過酸化物としては公知のものが使用できる。1分間半減期温度が100〜170℃の範囲にある有機過酸化物の好ましい具体例としては、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジベンゾイルパーオキサイド、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、1,1−ジ(t−アミルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−アミルパーオキシ)シクロヘキサン、t−アミルパーオキシイソノナノエート、t−アミルパーオキシノルマルオクトエート、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−アミル−パーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソノナノエート、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、等が挙げられる。好ましくは、ジラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソノナノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。上記有機過酸化物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0064】
<架橋助剤>
本実施形態に係る樹脂シートは、架橋性をより向上させる観点から、架橋助剤をさらに含むことが好ましい。
上記架橋助剤としては、例えば、ジビニル芳香族化合物、シアヌレート化合物、ジアリル化合物、アクリレート化合物、トリアリル化合物、オキシム化合物およびマレイミド化合物から選択される一種または二種以上を用いることができる。
【0065】
本実施形態に係る樹脂シート中の架橋助剤の含有量は、エチレン系共重合体100質量部に対して、5.0質量部以下であることが好ましく、3.0質量部以下であることがより好ましく、2.0質量部以下であることが特に好ましい。
【0066】
また、本実施形態に係る樹脂シート中の架橋助剤の含有量は、エチレン系共重合体100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましい。これにより、適度な架橋構造とすることができる。また、太陽電池封止材や合わせガラス用中間膜として用いた場合には、耐熱性、機械物性、および接着性を向上できる。
【0067】
ジビニル芳香族化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジ−i−プロペニルベンゼン等が挙げられる。
シアヌレート化合物としては、例えば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
ジアリル化合物としては、例えば、ジアリルフタレート等が挙げられる。
トリアリル化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等が挙げられる。
【0068】
アクリレート化合物としては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
オキシム化合物としては、例えば、p−キノンジオキシム、p−p'−ジベンゾイルキノンジオキシム等が挙げられる。
マレイミド化合物としては、例えば、m−フェニレンジマレイミド等が挙げられる。
【0069】
架橋助剤としてはビニル基等の架橋性不飽和結合を1分子中に3官能以上有する化合物が好ましく、中でも、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートが、架橋性が良好で好ましい。
【0070】
<シランカップリング剤>
本実施形態に係る樹脂シートは、さらにシランカップリング剤を含んでもよい。
本実施形態に係る樹脂シート中のシランカップリング剤の含有量は、エチレン系共重合体100質量部に対して、0.1〜5質量部であることが好ましく、0.1〜4質量部であることがより好ましく、0.1〜3質量部であることが特に好ましい。
【0071】
シランカップリング剤の含有量が上記下限値以上であると、接着性が向上する。
一方、シランカップリング剤の含有量が上記上限値以下であると、コストと性能のバランスがよく、透湿性の低下も防止できる。また、太陽電池封止材として用いた場合に、表面側透明保護部材、セル、電極、裏面側保護部材との密着性が良好となり、接着性も向上する。また、シランカップリング剤自体が縮合反応を起こし、太陽電池封止材に白い筋として存在し、製品外観が悪化することを抑制できる。
【0072】
シランカップリング剤は、従来公知のものが使用でき、とくに制限はない。具体的には、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシシラン)、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が使用できる。好ましくは、接着性が良好なγ−グリシドキシプロピルメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0073】
<紫外線吸収剤、光安定化剤、耐熱安定剤>
本実施形態に係る樹脂シートは、紫外線吸収剤、光安定化剤、および耐熱安定剤から選択される少なくとも一種の添加剤をさらに含有してもよい。これらの添加剤の配合量は、エチレン系共重合体100質量部に対して、0.005〜5質量部であることが好ましい。さらに、上記三種から選ばれる少なくとも二種の添加剤を含有することが好ましく、とくに、上記三種の全てが含有されていることが好ましい。上記添加剤の配合量が上記範囲内にあると、耐候安定性および耐熱安定性を向上する効果を十分に確保し、かつ、透明性や、ガラス板との接着性の低下を防ぐことができるので好ましい。
【0074】
紫外線吸収剤としては、具体的には、2−ヒドロキシ−4−ノルマル−オクチルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−N−オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアリゾール系紫外線吸収剤;フェニルサルチレート、p−オクチルフェニルサルチレート等のサリチル酸エステル系紫外線吸収剤等が用いられる。
【0075】
光安定化剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]等のヒンダードアミン系光安定化剤、ヒンダードピペリジン系光安定化剤等が好ましく使用される。
【0076】
耐熱安定剤としては、具体的には、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4'−ジイルビスホスフォナイト、およびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等のホスファイト系耐熱安定剤;3−ヒドロキシ−5,7−ジ−tert−ブチル−フラン−2−オンとo−キシレンとの反応生成物等のラクトン系耐熱安定剤;3,3',3",5,5',5"−ヘキサ−tert−ブチル−a,a',a"−(メチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ベンジルベンゼン、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のヒンダードフェノール系耐熱安定剤;硫黄系耐熱安定剤;アミン系耐熱安定剤等を挙げることができる。また、これらを一種単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることもできる。中でも、ホスファイト系耐熱安定剤、およびヒンダードフェノール系耐熱安定剤が好ましい。
【0077】
<その他の添加剤>
本実施形態に係る樹脂シートは、以上詳述した諸成分以外の各種成分を、本発明の目的を損なわない範囲において、適宜含有させることができる。例えば、上記エチレン系共重合体以外の各種ポリオレフィン、スチレン系やエチレン系ブロック共重合体、プロピレン系重合体等が挙げられる。これらは、上記エチレン系共重合体100質量部に対して、0.0001〜50質量部、好ましくは0.001〜40質量部含有されていてもよい。また、ポリオレフィン以外の各種樹脂、および/または各種ゴム、可塑剤、充填剤、顔料、染料、帯電防止剤、抗菌剤、防黴剤、難燃剤、架橋助剤、および分散剤等から選ばれる一種以上の添加剤を適宜含有することができる。
【0078】
2.樹脂シートの製造方法
本実施形態に係る樹脂シートを得るためには、とくにエチレン系共重合体の種類、樹脂シートの成形条件等を高度に制御することが重要である。
【0079】
以下、本実施形態に係る樹脂シートの製造方法の一例について説明する。エチレン系共重合体の種類については前述したのでここでは省略する。
はじめに、エチレン系共重合体と、必要に応じて、架橋剤と、架橋助剤と、シランカップリング剤と、紫外線吸収剤と、光安定化剤と、耐熱安定剤と、さらに必要に応じてその他添加剤とを、例えば、ポリ袋等の袋の中で人力でのブレンドや、ヘンシェルミキサー、タンブラー、スーパーミキサー等の攪拌混合機を用いてブレンドする。次いで、得られた樹脂組成物を、例えば、押出シート成形機のホッパーに投入し、溶融混練を行いつつ押出シート成形機のTダイから樹脂組成物をシート状に押出して樹脂シートを得る。
【0080】
ここで、押出して得られる樹脂シートの厚みが均一になるように、Tダイのリップ開度を高度に制御することが重要である。これにより上記樹脂シートの最大膜厚と最小膜厚との差を低下させることができる。なお、リップ開度とは、リップの幅方向に対して垂直方向の開口長さを指す。
Tダイのリップ開度を、例えば、以下のように高度に制御することにより、上記樹脂シートの最大膜厚と最小膜厚との差を低下させることができる。
Tダイには、通常、幅方向に複数のリップ開度調整機構が設けられている。まず接触式厚み計を用いて、得られた樹脂シートの幅方向における任意の200mm間において20mmごとに厚みを10点測定する。得られた10点の厚みのうち、最大の厚みを最大膜厚とし、最小の厚みを最小膜厚とする。次いで、最大の厚みを有する区画に対応するリップ開度を狭め、最小の厚みを有する区画に対応するリップ開度を広げ、再度樹脂シートを製造する。次いで、再度、得られた樹脂シートの幅方向における任意の200mm間において20mmごとに厚みを10点測定する。次いで、最大膜厚と最小膜厚との差が30μmを超える場合は、同様のリップ開度調整の操作を行う。これを繰り返すことで、上記樹脂シートの最大膜厚と最小膜厚との差を低下でき、その結果、本実施形態に係る樹脂シートを得ることができる。
【0081】
押出温度範囲としては、例えば、押出温度が100〜250℃である。押出温度が上記範囲内であると、より一層良好なシートが得られる。なお、有機過酸化物をエチレン系共重合体に含有した場合、押出温度は80〜130℃である。押出温度が上記範囲内であると、有機過酸化物によるゲルの発生をより一層抑制でき、より一層良好なシートが得られる。
【0082】
複数の微細な凹部および複数の微細な凸部は、例えば、エンボスロールを用いてエンボス加工を行うことで製造することができる。エンボスロールは、例えば、金属製のロールの表面に、シートに形成したい凹部に応じて設計した凸部パターンを、従来技術に準じた金属加工にて形成して準備することができる。かかる場合、エンボスロール表面の凸部の大きさ、形状、位置、深さ等を調整することで、樹脂シート表面に形成される複数の微細な凹部および複数の微細な凸部の形状、複数の微細な凹部の平均深さ、複数の微細な凹部の配列の周期等を調整することができる。
【0083】
3.合わせガラス
本実施形態に係る樹脂シートの用途は特に限定されないが、合わせガラス用中間膜として用いることが好ましい。
本実施形態の合わせガラスは、本実施形態に係る樹脂シートを合わせガラス用中間膜として用いていればよい。本実施形態に係る合わせガラスは、外観不良が生じ難い合わせガラスである。
【0084】
図1は、本発明の合わせガラス100の一実施形態を模式的に示す断面図である。
合わせガラス100は、本実施形態に係る樹脂シートにより構成された合わせガラス用中間膜101と、合わせガラス用中間膜101の両面に設けられた透明基板103と、を備える。
合わせガラス100を製造するには、例えば、
図1に示すように、本実施形態に係る樹脂シートを合わせガラス用中間膜101として用い、合わせガラス用中間膜101を2枚の透明基板103の間に狭持した後、加熱加圧する方法等が用いられる。
これらの工程は、例えば、真空袋方式、ニップロール方式等を用いて行われる。これにより、合わせガラス用中間膜101が硬化して、合わせガラス用中間膜101と2枚の透明基板103とを接着一体化することができる。製造条件としては、例えば、上記積層体を80〜120℃の温度で予備圧着し、100〜150℃で10分〜1時間加熱処理することによりエチレン系共重合体を架橋させる。また、加熱処理は加圧下で行ってもよい。
【0085】
透明基板103は、例えば、グリーンガラス板、珪酸塩ガラス板、無機ガラス板、無着色透明ガラス板等のガラス板;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンブチレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のプラスチック製の基板又はフィルム等を用いることができる。耐候性、耐衝撃性等の点でガラス板が好ましい。
透明基板103の厚さは、1〜20mm程度が一般的である。合わせガラス100において両面に配置されるそれぞれの透明基板103は、同一のもの用いてもよく、異なる基材を組み合わせて用いてもよい。基材の強度と合わせガラスの用途とを考慮して、組み合わせを決定する。
【0086】
合わせガラス100は、建築物や乗り物(自動車、鉄道車両、船舶)用の窓ガラス;プラズマディスプレイ等の電子機器;冷蔵庫や保温装置等のような各種装置の扉や壁部等;種々の用途に使用することができる。
【0087】
4.太陽電池モジュール
本実施形態に係る樹脂シートの用途は特に限定されないが、太陽電池封止材として用いることが好ましい。
本実施形態に係る樹脂シートにより構成された太陽電池封止材(太陽電池封止材シートとも呼ぶ。)は、太陽電池モジュールにおいて、太陽電池素子を封止するために用いられる。
太陽電池モジュールは、例えば、通常、単結晶シリコン、多結晶シリコン等により形成された太陽電池素子を太陽電池封止材シートで挟み積層し、さらに、表裏両面を保護シートでカバーした結晶型太陽電池モジュールが挙げられる。すなわち、典型的な太陽電池モジュールは、太陽電池モジュール用保護シート(表面側透明保護部材)/受光面側封止層/太陽電池素子/裏面側封止層/太陽電池モジュール用保護シート(裏面側保護部材)という構成になっている。ここで、本実施形態の太陽電池封止材は上記受光面側封止層および裏面側封止層のいずれか一方、あるいは両方を形成するために用いられ、これらの封止層は樹脂シートを架橋させることにより形成することができる。
ただし、本発明の好ましい実施形態の1つである太陽電池モジュールは、上記の構成には限定されず、本発明の目的を損なわない範囲で、上記の各層の一部を適宜省略し、または上記以外の層を適宜設けることができる。上記以外の層としては、例えば接着層、衝撃吸収層、コーティング層、反射防止層、裏面再反射層、および光拡散層等を挙げることができる。これらの層は、とくに限定はないが、各層を設ける目的や特性を考慮して、適切な位置に設けることができる。
【0088】
図2に、本実施形態の太陽電池モジュールの断面図の一例を示す。
太陽電池モジュール10は、複数の太陽電池素子13と、太陽電池素子13を挟んで封止する一対の受光面側太陽電池封止材シート11と裏面側太陽電池封止材シート12、および表面側透明保護部材14および裏面側保護部材(バックシート)15とを備える。
【0089】
(太陽電池素子)
太陽電池素子13としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン等のシリコン系、ガリウム−砒素、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルル等のIII−V族やII−VI族化合物半導体系等の各種太陽電池素子を用いることができる。
太陽電池モジュール10においては、複数の太陽電池素子13は、導線および半田接合部を備えたインターコネクタ16を介して電気的に直列に接続されている。
【0090】
(表面側透明保護部材)
表面側透明保護部材14としては、ガラス板;アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、フッ素含有樹脂等により形成された樹脂板等の透明基板が挙げられる。
本実施形態の太陽電池封止材シートは、表面側透明保護部材14に対して良好な接着性を示す。
【0091】
(裏面側保護部材)
裏面側保護部材(バックシート)15としては、金属や各種熱可塑性樹脂フィルム等の単体もしくは多層のシートが挙げられる。例えば、錫、アルミ、ステンレススチール等の金属;ガラス等の無機材料;ポリエステル、無機物蒸着ポリエステル、フッ素含有樹脂、ポリオレフィン等により形成された各種熱可塑性樹脂フィルム等が挙げられる。
裏面側保護部材15は、単層であってもよく、複層であってもよい。
本実施形態の太陽電池封止材シートは、裏面側保護部材15に対して良好な接着性を示す。
【0092】
<太陽電池モジュールの製造方法>
本実施形態における太陽電池モジュールの製造方法は特に限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。
まず、インターコネクタ16を用いて電気的に接続した複数の太陽電池素子13を一対の受光面側太陽電池封止材シート11と裏面側太陽電池封止材シート12で挟み、さらにこれら受光面側太陽電池封止材シート11と裏面側太陽電池封止材シート12を表面側透明保護部材14と裏面側保護部材15とで挟んで積層体を作製する。次いで、積層体を加熱して、受光面側太陽電池封止材シート11と裏面側太陽電池封止材シート12、受光面側太陽電池封止材シート11と表面側透明保護部材14、裏面側太陽電池封止材シート12と裏面側保護部材15とを接着する。
太陽電池モジュールの製造に当たっては、樹脂シートを予め作っておき、樹脂シートが溶融する温度で圧着するという従来同様のラミネート方法によって、例えば、ラミネート温度が145〜170℃、真空圧10Torr以下で、0.5〜10分間真空下で加熱する。次いで、大気圧による加圧を2〜30分間程度行い、既に述べたような構成のモジュールを形成することができる。この場合、樹脂シートは特定の架橋剤を含有することで優れた架橋特性を有しており、モジュールの形成において二段階の接着工程を経る必要はなく、高温度で短時間に完結することができ、モジュールの生産性を格段に改良することができる。また、オーブン等を用いた二段階の接着工程を経ることも可能であり、二段階の接着工程を経る場合は、例えば、120〜170℃の範囲で1〜120分加熱し、モジュールを生産することも可能である。
【0093】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0094】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0095】
(1)測定方法
[ショアA硬度]
エチレン系共重合体を190℃、加熱4分、10MPaで加圧した後、10MPaで常温まで5分間加圧冷却して3mm厚のシートを得た。得られたシートを用いて、ASTM D2240に準拠してエチレン系共重合体のショアA硬度を測定した。
【0096】
[MFR]
ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件にてエチレン系共重合体のMFRを測定した。
【0097】
[α−オレフィン単位の含有割合]
試料0.35gをヘキサクロロブタジエン2.0mlに加熱溶解させて得られた溶液をグラスフィルター(G2)で濾過した後、重水素化ベンゼン0.5mlを加え、内径10mmのNMRチューブに装入した。日本電子社製のJNM GX−400型NMR測定装置を使用し、120℃で
13C−NMR測定を行った。積算回数は8000回以上とした。得られた
13C−NMRスペクトルより、共重合体中のα−オレフィン単位の含有割合を定量した。
【0098】
[酢酸ビニル含有量]
酢酸ビニル含有量はJIS K6730に準拠して測定し、算出した。
【0099】
[密度]
ASTM D1505に準拠して、エチレン系共重合体の密度を測定した。
【0100】
[厚みの測定]
樹脂シートの幅方向における任意の200mm間において20mmごとに厚みを10点測定した。得られた10点の厚みのうち、最大の厚みを最大膜厚とし、最小の厚みを最小膜厚とした。ここで、厚みは、接触式厚み計(ピーコック社製MODEL H)を用いて凸部で測定した。また、10点の厚みの平均値を樹脂シートの平均膜厚とした。
【0101】
[凹部の平均深さ]
樹脂シートの凹部の平均深さを測定した。具体的には、樹脂シート中央、および樹脂シートの幅方向の両端から10cm内側の3カ所において、20mm×20mmの正方形のシート片を切り出し、これらのシート片にある各凹部の深さを1つのシート片あたり10個、電子顕微鏡による断面観察により測定し、平均深さを求めた。各実施例および各比較例では凸パターンが全体に一様に形成されたエンボスロールを用いているため、この様に求めた平均値は、全体の平均とみなすことができる。
【0102】
[周期]
凹部の配列の周期を測定した。具体的には、平均深さの評価と同様の3カ所から5mm×5mmの正方形のシート片を切り出し、これらのシート片の表面形状を光学顕微鏡により測定して周期を測定した。
【0103】
(実施例1)
1.樹脂シートの製造
エチレン・酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量:28質量%、MFR:15g/10min)100質量部に対し、シランカップリング剤としてγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを0.5質量部、架橋剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネートを1.0質量部、架橋助剤としてトリアリルイソシアヌレートを1.2質量部、紫外線吸収剤として2−ヒドロキシ−4−ノルマル−オクチルオキシベンゾフェノンを0.4質量部、光安定化剤としてビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートを0.2質量部、耐熱安定剤1としてトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト0.1質量部、および耐熱安定剤2としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート0.1質量部を配合し、樹脂組成物Aを得た。
T型ダイス付き押出成形機にて、ダイス温度105℃の条件下で上記樹脂組成物をシート状に溶融押出した。次いで、ロール温度30℃、巻き取り速度1.0m/minで、冷却ロールを兼ねたエンボスロールにて冷却固化後、溶融押出したシートを巻き取り、平均膜厚0.45mmの樹脂シートを得た。ここで、Tダイのリップ開度を調整することにより、樹脂シートの最大膜厚と最小膜厚との差を調整した。
得られた樹脂シートの最大膜厚と最小膜厚との差は15μm、複数の微細な凹部の平均深さは30μm、複数の微細な凹部の配列の周期は300μmであった。なお、本実施例において用いたエンボスロールの表面には、平面視で正方形の凸部を複数有する凸パターンが全体に一様に形成されていた。
【0104】
2.樹脂シートとガラス板の積層体の作製
以下の方法に従い、樹脂シートとガラス板との積層体を作製した。
幅1000mm×長さ800mmサイズにカットした旭硝子ファブリテック社製の3.2mm厚みの青板フロートガラス2枚の間に、幅1010mm×長さ810mmにカットした樹脂シートを積層した。真空ラミネーター(NPC社製:LM−110x160−S)を用いて熱板温度150℃で、真空時間3分、加圧時間2分、保持時間13分にてラミネートした。また、真空時間の3分はリフトピンを上げた状態にした。
【0105】
3.樹脂シートとガラス板の積層体の外観評価
得られた積層体のうち目視による観察で気泡が確認されなかった積層体を〇と評価し、気泡が確認された積層体を×と評価した。結果を表1に示す。
【0106】
(実施例2)
巻き取り速度を調整することにより、樹脂シートの平均膜厚を1.0mmとした以外は実施例1と同様にして樹脂シートを作製した。
【0107】
(実施例3)
凸パターンの大きさが実施例1とは異なるエンボスロールを用い、かつ、樹脂シートの最大膜厚と最小膜厚との差が25μmになるようにTダイのリップ開度を調整した以外は実施例1と同様にして樹脂シートを作製した。得られた樹脂シートの複数の微細な凹部の平均深さは50μmであった。
【0108】
(実施例4)
エチレン・酢酸ビニル共重合体の代わりに、WO2012/060086の合成例2のエチレン・α−オレフィン共重合体(α−オレフィン:1−ブテン、α−オレフィン単位の含有割合:18mol%、エチレン単位の含有割合:82mol%、MFR:9.5g/10分、ショアA硬度:60、密度:0.865g/cm
3)を用いた以外は実施例1の樹脂組成物Aと同様にして樹脂組成物Bを調製した。この樹脂組成物Bを用いた以外は実施例1と同様にして樹脂シートを作製した。
【0109】
(比較例1)
Tダイのリップ開度の調整を行わなかった以外は実施例1と同様にして樹脂シートを作製した。
【0110】
(比較例2)
樹脂組成物Bを用いた以外は比較例1と同様にして樹脂シートを作製した。
【0111】
【表1】
【0112】
実施例1〜4の積層体は気泡が発生しなかった。これに対し、比較例1および2の積層体は気泡が発生した。
【0113】
この出願は、2015年11月11日に出願された日本出願特願2015−221143号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。