特許第6586178号(P6586178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6586178
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】バスバー用の誘電コンポーネント
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/06 20060101AFI20190919BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   H01F17/06 F
   H01F27/24 H
【請求項の数】17
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-566285(P2017-566285)
(86)(22)【出願日】2016年6月10日
(65)【公表番号】特表2018-523304(P2018-523304A)
(43)【公表日】2018年8月16日
(86)【国際出願番号】EP2016063303
(87)【国際公開番号】WO2016206993
(87)【国際公開日】20161229
【審査請求日】2018年2月9日
(31)【優先権主張番号】102015110142.4
(32)【優先日】2015年6月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】ティーディーケイ・エレクトロニクス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TDK ELECTRONICS AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】シュリーヴェ,イェルン
(72)【発明者】
【氏名】シェフラー,シュテファン
【審査官】 久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−538494(JP,A)
【文献】 特開2010−062295(JP,A)
【文献】 実開平05−008917(JP,U)
【文献】 国際公開第2011/136232(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/06
H01F 27/24
H01F 41/02
H01B 7/00
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電コンポーネントと、前記誘電コンポーネントに挿通されたバスバーとを有する構造において、
前記誘電コンポーネントは、前記コンポーネントの互いに反対の側面に配設される2つのエアギャップを有しており、
前記2つのエアギャップは、前記コンポーネントの縦方向に互いに間隔を有し、
前記2つのエアギャップの少なくとも1つの縦方向の境界が、前記コンポーネントのコアの端面によって定められ、当該端面が前記コアの全長に亘って所定高さでのびることを特徴とする構造。
【請求項2】
前記互いに反対の側面は、前記バスバーの長手方向の側面であることを特徴とする請求項1記載の構造。
【請求項3】
前記構造は2つのコアを有し、各々のコアが第1の脚部と第2の脚部とを有し、前記第1の脚部は前記第2の脚部とは異なる長さを有することを特徴とする請求項1又は2記載の構造
【請求項4】
前記エアギャップが前記各々のコアの間に位置することを特徴とする請求項記載の構造
【請求項5】
第1のエアギャップは前記第1のコアの前記第1の脚部と前記第2のコアの前記第2の脚部との間に配置されており、第2のエアギャップは前記第1のコアの前記第2の脚部と前記第2のコアの前記第1の脚部との間に配置されていることを特徴とする請求項又は記載の構造
【請求項6】
高さ方向における前記エアギャップの相互の間隔は、第1の脚部の長さと、第2の脚部の長さと、エアギャップの高さとの合計の少なくとも1/4であることを特徴とする請求項のいずれか1項記載の構造
【請求項7】
高さ方向における前記エアギャップの相互の間隔は、第1の脚部の長さと、第2の脚部の長さと、エアギャップの高さとの合計の多くとも3/4であることを特徴とする請求項のいずれか1項記載の構造。
【請求項8】
前記コアは同じ形状を有することを特徴とする請求項のいずれか1項記載の構造
【請求項9】
前記コアのうち少なくとも一方は、それぞれ異なる長さの脚部を備える「U字型」コアの形状または「C字型」コアの形状を有することを特徴とする請求項のいずれか1項記載の構造
【請求項10】
両方のコアがそれぞれ異なる長さの脚部を備える「U字型」コアの形状または「C字型」コアの形状を有し、各々の前記エアギャップが両方のコアに隣接することを特徴とする請求項記載の構造
【請求項11】
前記誘電コンポーネントは点対称に構成されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載の構造
【請求項12】
前記誘電コンポーネントは正確に2つのエアギャップを有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項記載の構造
【請求項13】
前記誘電コンポーネントは、長手方向の側面と端面を有しており、エアギャップは長手方向の側面のみに位置することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項記載の構造
【請求項14】
前記エアギャップの相互に間隔をおいた配置は前記バスバーでの損失を低減するために構成されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項記載の構造
【請求項15】
高周波の外乱をフィルタリングするために構成されていることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項記載の構造。
【請求項16】
記誘電コンポーネントはEMCフィルタに使用する構成にされていることを特徴とする請求項15記載の構造
【請求項17】
前記バスバーは電気駆動装置のための周波数変換装置用の入力フィルタ部材として使用するために構成されていることを特徴とする請求項15又は16記載の構造
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
バスバー用の誘電コンポーネントが提供される。
【背景技術】
【0002】
誘電コンポーネントは、特に外乱をフィルタリングするために、特に高周波の外乱をフィルタリングするために、バスバー用に用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、バスバー用の改良された誘電コンポーネントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様では、バスバー用の誘電コンポーネントが提供される。特に誘電コンポーネントは、コンポーネントにバスバーを挿通する構成を採用している。このバスバーは銅バスバーであることが好ましい。バスバーは、例えば周波数変換装置で電流を導通するための構成となっている。誘電コンポーネントは、例えば低周波の有効信号における高周波の外乱をフィルタリングする役目を果たす。
【0005】
誘電コンポーネントは2つのエアギャップを有する。これらのエアギャップは、コンポーネントの互いに反対の側面(opposite sides)に配設されるのが好ましい。例えばコンポーネントは、バスバーを挿通するための開口部を有する。エアギャップは、開口部を間に挟んだ、コンポーネントの両側に配設されるのが好ましい。したがって、コンポーネントにバスバーが挿通されると、エアギャップはバスバーの相対する両側に配設される。
【0006】
エアギャップは、コンポーネントの高さ方向に見て互いに離間していることが好ましい。ここで高さ方向とは、バスバーが延びる方向に対して垂直の方向、すなわちバスバー中を流れる電流の流れ方向に対して直交する方向を意味する。高さ方向は、エアギャップが配置されているコンポーネントの互いに反対の側と平行に延びるのが好ましい。したがって、エアギャップはコンポーネントのそれぞれ異なる高さに配置され、特に、互いにオフセットした状態で配置される。これらのエアギャップは、コンポーネントの半分の高さから等しい距離を有するのが好ましい。例えば、第1のエアギャップはコンポーネントの半分の高さに対して下方に配置され、第2のエアギャップはコンポーネントの半分の高さに対して上方に配置される。
【0007】
エアギャップを互いに間隔をあける配置によって、バスバーでの損失を減らすことができるという利点がある。特に、いっそう均等な電流密度分布をバスバーで実現することができる。この場合、このような効果をコンポーネントの大型化なしに、かつコストの増大なしに実現できるという利点がある。
【0008】
誘電コンポーネントは、例えば2つのコンポーネント構成要素を有する。これらは、特に軟磁性材料、例えばフェライトからなる、2つのコア(cores)である。エアギャップはこれらのコアの間に配置されるのが好ましい。例えば、それぞれのコアは同じ形状を有している。
【0009】
1つの実施形態では、各々のコアは第1の脚部(limb)と第2の脚部とを有しており、第1の脚部は第2の脚部とは異なる長さを有する。例えば、各々のコアは正確に2つの脚部を有する。各々のコアの2つの脚部は、結合片(connecting piece)によって互いに結合されているのが好ましい。コアは例えばそれぞれ長さの異なる脚部を備えた「U字型」コア、または、「C字型」コアの形状を有する。
【0010】
例えば、第1のエアギャップは、第1のコアの第1の脚部と第2のコアの第2の脚部との間に配置され、第2のエアギャップは、第1のコアの第2の脚部と第2のコアの第1の脚部との間に配置される。これらのエアギャップは、結合片から脚部の自由端に向かって延びる方向に対して、相互にオフセットして配置されるのが好ましい。
【0011】
1つの実施形態では、高さ方向(垂直方向)でのエアギャップの相互の間隔は、第1の脚部の長さと、第2の脚部の長さと、エアギャップの高さとの合計の少なくとも1/4である。バスバーを挿通するための開口部は、第1の脚部と、エアギャップと、第2の脚部とによって側方で区切られる(bounded)ことが好ましい。そして開口部の高さは、第1の脚部の長さと、第2の脚部の長さと、エアギャップの高さとの合計に等しいことが好ましい。このように、高さ方向におけるエアギャップの相互の間隔は開口部の高さの少なくとも1/4である。エアギャップの相互の間隔をこのようにすると、バスバーでの損失を最大で50%まで減らすことができる。
【0012】
1つの実施形態では、高さ方向でのエアギャップの相互の間隔は、第1の脚部の長さと、第2の脚部の長さと、エアギャップの高さとの合計の多くとも3/4である。したがって、高さ方向でのエアギャップの相互の間隔は、開口部の高さの多くとも3/4である。エアギャップの位置を結合片の近傍にすると、バスバーでの損失が再び増える可能性がある。したがって、エアギャップを結合片に近づけすぎない方が好都合である。開口部の上側端部または下側端部からのエアギャップの間隔は、開口部の高さの少なくとも1/8であるのが好ましい。1つの実施形態では、エアギャップは開口部の上側端部および下側端部に対して少なくとも10mmの間隔、例えば12.5mmの間隔をおいて配置することが好ましい。
【0013】
例えば高さ方向でのエアギャップの相互の間隔は、開口部の高さの1/4から開口部の高さの3/4までの範囲内にある。特に、この間隔は開口部の高さのほぼ1/2にすることができる。
【0014】
1つの実施形態では、コンポーネントは点対称に構成される。特に、コンポーネントは軸を中心とする180°の回転に関して対称に構成され、この軸は開口部の中心を通って電流の流れ方向に延びている。このようにして、両方の半部について同一のコア形状を適用することができる。
【0015】
本発明のさらに別の態様では、誘電コンポーネント用のコアが提供される。コアは、それぞれ異なる長さで構成された2つの脚部を有する。特に、コアは正確に2つの脚部を有する。コアは、例えばそれぞれ異なる長さの脚部を備えた「U字型コア」または「C字型コア」として構成される。このコアは、特に上記したコンポーネント用に適しており、これに関連して説明した構造的、機能的な特性を全て備えることができる。
【0016】
本発明の第1の態様では、それぞれ異なる長さの2つの脚部を備える上記コアを有する誘電コンポーネントが提供される。このコンポーネントは、このような種類のコアを2つ有するのが好ましい。これらのコアは、例えば、コンポーネントがバスバー用の開口部を備えるように組立てられる。開口部は、これらのコアのうちの一方のコアの第1の脚部と、他方のコアの第2の脚部とによってそれぞれ長手方向に区切られる(bounded)ことが好ましい。開口部は、それぞれ上と下において、コアの結合片1個によって区切られるのが好ましい。この誘電コンポーネントは、上記したコンポーネントの構造的、機能的な特性を全て備えることができる。特にこのコンポーネントは、それぞれの高さの面で相互にオフセットされた2つのエアギャップを有することができる。
【0017】
本発明のさらに別の態様では、誘電コンポーネントとバスバーを備えた構造について記載する。バスバーは誘電コンポーネントに挿通される。特に、この構造の誘電コンポーネントは、上記した誘電コンポーネントのうちの1つである。
【0018】
例えば、この構造のコンポーネントは2つのエアギャップを有する。これらのエアギャップは、バスバーの互いに反対側の側面に配置されるのが好ましい。この互いに反対側の側面とは、例えば、バスバーの長手方向の側面である。例えばバスバーは横断面に対して、すなわち電流の流れ方向に対して垂直の長方形形状を有する。特に、バスバーは2つの長手方向の側面(longitudinal sides)と2つの端面(face sides)とを有する。長手方向側面の高さは、端面の幅よりも大きいのが好ましい。
【0019】
誘電コンポーネントは、例えばEMCフィルタに使用する構成にされている。EMCとは「電磁両立性」を表す。1つの適用例では、このEMCフィルタは、周波数変換装置用の入力フィルタである。
【0020】
本件の開示には、1つの発明の複数の態様が記載されている。誘電コンポーネント、コア、および/または構造に関して説明するすべての特性は、たとえそれぞれの特性がそれぞれの態様の文脈で明示的に言及されていなくても、それぞれ他の態様に関しても相応に開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A】誘電コンポーネントとバスバーとの構造の実施形態を示す斜視図である。
図1B図1Aの実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、ここで説明している主題について、縮尺通りではない模式的な実施例を参照しながら詳しく説明する。
【0023】
特に、以下の図面の中で同じ符号は、異なる実施形態の機能的または構造的に対応する部品を参照指示している。
【0024】
図1Aは、誘電コンポーネント1とバスバー2との構造20を斜視図として示している。図1Bは、この構造20を断面図で示している。
【0025】
バスバー2は、一例として銅でできている。バスバー2は、特に大電流を導通するのに適している。例えばバスバー2は、周波数変換装置で電流を導通するために利用される。周波数変換装置は、例えば電気機械に、特にモータに、電流を供給する役割を果たす。
【0026】
誘電コンポーネント1は、例えばEMCフィルタで利用され、すなわち、電磁両立性(EMC)を実現するためのフィルタで利用される。これは特にバスバーフィルタである。例えばこのような種類のフィルタは、互いに配線された複数のインダクタンスとコンデンサを複数のバスバーに有している。特にこのフィルタは、低周波の有効信号における高周波の外乱をフィルタリングする役目を果たす。例えば有効信号は、約50Hzの周波数を有する。特にこのフィルタは、ディファレンシャルモードノイズ(Differential Mode)に適している。
【0027】
誘電コンポーネント1は2つのコンポーネント構成要素を有している。これらのコンポーネント構成要素は、コア3,4として、特に磁気コアとして構成される。これは例えばフェライトコアである。各々のコア3,4は、第1の脚部5,6と第2の脚部7,8とを有しており、これらがそれぞれコア3,4の結合片9,10によって互いに結合されている。コア3,4は、誘電コンポーネント1が2つのエアギャップ11,12を有するように配置されている。例えば各々のコア3,4は一体的に構成され、例えば1つの部品としてプレス成型される。しかしながらコア3,4は、個々のコアから、例えばI字型のコアから、組み合わされていてもよい。
【0028】
誘電コンポーネント1は、このような種類のコア3,4の複数の構造を有することができる。本例では、コア3,4の後方に、コア3,4と同じように構成された2つの別のコア23,24が配置されている。
【0029】
特に、第1のコア3の第1の脚部5と第2のコア4の第2の脚部8との間に第1のエアギャップ11が配置され、第1のコア3の第2の脚部7と第2のコア4の第1の脚部6との間に第2のエアギャップ12が配置される。誘電コンポーネント1は、正確に2つのエアギャップ11、12を有しているのが好ましい。エアギャップ11、12は誘電コンポーネント1の耐飽和性(saturation resistance)を保証し、すなわち、コンポーネント1が飽和(saturation)へと向かうのを防止する。
【0030】
誘電コンポーネント1は直方体コアの形状を有する。誘電コンポーネント1は、面取りされたコーナーを有することもできる。誘電コンポーネント1は、バスバー2を挿通するための開口部19を有する。開口部19は、高さhと幅bとを有している(図1B参照)。このとき高さhは、第1の脚部5,6の長さと、第2の脚部7,8の長さと、エアギャップ11,12の高さとを合わせたものである。
【0031】
誘電コンポーネント1はバスバー2を取り囲む。バスバー2は長方形の幾何学的断面形状を有する。特にバスバー2は、互いに反対側に配設される2つの長手方向側面13,14と、互いに反対側の2つの端面15,16とをそれぞれ有する。長手方向側面13,14の高さは、開口部の高さhよりも若干小さい。端面15,16の幅は、開口部の幅bよりも若干小さい。
【0032】
例えば、バスバーは50mm×10mmの寸法を有し、誘電コンポーネントは85mm×46mmの寸法を有し、開口部は55mm×16mmの寸法を有し、ギャップは5mmの寸法を有する。電流は、使用時に例えば1600Aである。誘電コンポーネントでの損失の低減は例えば28%であり、このことは、フィルタ全体で約10%の損失の低減に相当する。
【0033】
誘電コンポーネント1は点対称に構成されるのが好ましい。特に誘電コンポーネント1は、電流方向に沿って開口部の中心を通って延びる軸を中心とする180°の回転に関して対称に構成される。コア3,4は、例えば同一の幾何学的形状を有する。
【0034】
エアギャップ11,12は、コンポーネント1の互いに反対側の長手方向側面21,22に位置する。従って、エアギャップ11,12はバスバー2の互いに反対側にあり、特に、バスバー2の互いに反対側の長手方向側面13,14に位置する。エアギャップ11,12は、特にバスバー2の長手方向側面13,14にのみ存在し、バスバー2の端面には存在しない。それに応じて誘電コンポーネント1は側面と端面を有しており、エアギャップ11,12はコンポーネント1の側面にのみある。端面にはエアギャップはない。
【0035】
エアギャップ11,12は、それぞれの高さに関して相互にオフセットされて配置されている。高さ方向17は、バスバー2の延びる方向に対して垂直の方向である。高さ方向17は、エアギャップ11,12が配置されているコンポーネント1の長手方向側面21,22と平行に延びている。幅方向18は、バスバー2における電流方向に対して直角に、かつ高さ方向17に対して直角に延びている。
【0036】
特に、エアギャップ11,12はバスバー2を通る中心平面の鏡像に関して非対称に配置される。中心平面とは、長手方向側面13,14の間で、かつ長手方向側面13,14に対して平行に延びる平面である。特に、エアギャップ11,12はそれぞれの長手方向側面13,14で同じ高さにはない。
【0037】
例えば第1のエアギャップ11は、長手方向側面13の半分の高さよりも下方の領域に位置する。第2のエアギャップ12は、例えば側面14の半分の高さよりも上方の領域に位置する。このようにいずれのエアギャップ11,12も、それぞれの長手方向側面13,14に関して中心に配置されるものではない。
【0038】
開口部19は、例えば55mmの高さhを有する。エアギャップ11,12は、例えば高さ方向17に25mmの間隔dを有する。この間隔dを、以下においてはギャップシフトとも呼ぶ。エアギャップ11,12は、例えば5mmの高さを有する。したがって、第1の脚部5,6は第2の脚部7,8からそれぞれ5mmの間隔をおいている。コア3,4は、例えばU字型コアとして、または異なる長さの脚部5,6,7,8を備えたC字型コアとして、それぞれ構成される。
【0039】
エアギャップ11,12のギャップシフトによって、ギャップシフトを有さないエアギャップの場合よりも均等な電流分布をバスバー2で実現することができる。ギャップシフトのないコンポーネントでは、エアギャップ11,12はバスバーと並んで両側で中央に、特に側面の高さの半分のところにある。不均等な電流分布は、周波数依存的な表皮効果に原因がある。このような表皮効果はすでに低い周波数のときに、例えば50Hzのときに、無視することのできない役割を演じて、バスバー2で望ましくない損失をもたらす。特にエアギャップが対称に配置されていると、上方および下方に向かって減少していく高い電流密度がエアギャップの領域に生じる。
【0040】
このような種類の損失は、通常、バスバー2の断面積の増大によって、または改善された熱排出によって減少する。しかし、これら両方の取組みは容積の増加および/または構造20のコストの上昇につながる。エアギャップ11,12を相互にシフトさせることで、容積増加やコスト上昇なしに損失を減らすことができる。特に、エアギャップがシフトされていれば、同じ高さに配置されたエアギャップの場合よりも、バスバーの電流密度が明らかに均等になる。
【0041】
例えば、高さ50mmの開口部とこれに類似する高さのバスバー2の場合、5mmのギャップシフトがすでに約1%の損失低下をもたらすことが判明している。25mmのギャップシフトの場合、損失を10%だけ減らすことができている。コア3,4の縁部に向かって、すなわち結合片9,10の方向にエアギャップをさらにシフトさせれば、損失は再び大きくなる。誘電作用が縁部のところで強まるからである。エアギャップの間隔についての最善の領域は、特に、開口部またはバスバーの高さの半分周辺の範囲内にあり、例えば0.25・hから0.7・hの範囲内にある。このような種類のギャップシフトでは、誘電コンポーネントの損失を20%以上減らすことができている。
【符号の説明】
【0042】
1…誘電コンポーネント、2…バスバー、3…第1のコア、4…第2のコア、5…第1のコアの第1の脚部、6…第2のコアの第1の脚部、7…第1のコアの第2の脚部、8…第2のコアの第2の脚部、9…第1のコアの結合片、10…第2のコアの結合片、11…第1のエアギャップ、12…第2のエアギャップ、13…バスバーの長手方向側面、14…バスバーの長手方向側面、15…端面、16…端面、17…高さ方向、18…幅方向、19…開口部、20…構造、21…コンポーネントの側面、22…コンポーネントの側面、23…別のコア、24…別のコア、h…開口部の高さ、b…開口部の幅、d…エアギャップの相互の間隔。
図1A
図1B