(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
半導体レーザ(11)と、前記半導体レーザから出射される光の波長を所定の掃引周期で繰り返し変化させる波長掃引手段(12〜15)と、を備える波長掃引光源(10)において、
前記半導体レーザから出射され空中伝搬した光を受け、印加された磁場の強度に応じた旋光角で旋光させるファラデー素子(18)と、
前記ファラデー素子により旋光された光を出力光として外部に伝送する出力側光ファイバ(21)と、
前記ファラデー素子に磁場を印加する磁場印加手段(19)と、
前記磁場印加手段により前記ファラデー素子に印加される磁場の強度を変化させて、前記所定の掃引周期に同期して前記旋光角を第1角度と第2角度とに交互に切り替える制御を行う旋光角制御部(20)と、を備え、
前記第1角度と前記第2角度との差が90度であることを特徴とする波長掃引光源。
前記ファラデー素子は、その飽和磁場よりも絶対値の大きい第1方向の磁場を前記磁場印加手段から印加されることにより前記第1角度が45度となり、かつ、前記飽和磁場よりも絶対値の大きい前記第1方向と逆向きの第2方向の磁場を前記磁場印加手段から印加されることにより前記第2角度が−45度となるものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の波長掃引光源。
前記ファラデー素子の法線が、前記半導体レーザから出射された光の光路に対して0度以外の角度を成すことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の波長掃引光源。
前記ファラデー素子は、その保磁力よりも絶対値の小さい磁場で、45度の前記第1角度、又は、−45度の前記第2角度を維持することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の波長掃引光源。
光分岐手段により、請求項1から請求項6のいずれかに記載の波長掃引光源からの前記出力光を測定光と参照光とに分岐して被測定光ファイバ(100)に前記測定光を入力するステップ(S2)と、
前記光分岐手段により分岐された前記参照光の偏波状態を偏波コントローラ(38)により変化させる偏波状態変化ステップ(S3)と、
前記偏波状態変化ステップにより偏波状態が変化された前記参照光の所定の偏光方向の成分を偏光子(39)により透過させるステップ(S4)と、
前記偏光子を透過した前記参照光と、前記測定光が入力された前記被測定光ファイバからの反射光とを合波することで干渉光を出力するステップ(S5)と、
前記干渉光を電気信号に変換するステップ(S6)と、
前記電気信号をディジタル信号に変換するステップ(S7)と、
前記ディジタル信号に基づいて、前記被測定光ファイバの各位置における前記反射光の強度を測定する反射測定ステップ(S8,S11)と、を含み、
前記偏波状態変化ステップは、前記旋光角が前記第1角度である場合と前記第2角度である場合とで、前記偏光子を透過する前記参照光の光量が同量となるように、前記参照光の偏波状態を変化させるものであり、
前記反射測定ステップは、
前記ディジタル信号をフーリエ変換して、前記干渉光のスペクトラムを算出するフーリエ変換ステップ(S8)と、
前記旋光角が前記第1角度のときに前記フーリエ変換ステップにより算出された前記干渉光のスペクトラムと、前記旋光角が前記第2角度のときに前記フーリエ変換ステップにより算出された前記干渉光のスペクトラムと、を加算するステップ(S11)と、を含むことを特徴とする測定方法。
【背景技術】
【0002】
従来から、光周波数領域反射測定法(Optical Frequency Domain Reflectometry:OFDR)を用いて、センサ用ファイバの歪み分布又は温度分布を測定するOFDR装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。OFDR装置では、参照光とセンサ用ファイバからの反射光を、光ファイバやファイバカプラを利用して干渉させている。
【0003】
図11に示すように、従来のOFDR装置は、波長掃引光源50からの出力光を測定光と参照光とに分岐してセンサ用ファイバ100に測定光を入力するファイバカプラ51及びサーキュレータ52と、測定光が入力されたセンサ用ファイバ100からの反射光と参照光とを合波することで干渉光を出力するファイバカプラ53と、を含む測定干渉計54と、測定干渉計54から出力された干渉光を電気信号としての干渉信号に変換する受光器55と、を備える。
【0004】
高いS/Nで上記の干渉信号を取得するためには、偏波補償が必須である。偏波補償の方法として、
図11の構成において、センサ用ファイバ100を含めて、測定干渉計54を構成する全ての光ファイバに偏波保持ファイバを利用する方法があるが、偏波消光比が測定干渉計54の感度に与える影響は大きい。市販の偏波保持ファイバカプラの偏波消光比は20dB程度であるため、偏波保持ファイバの進相軸を通った光のみを干渉させたつもりであっても、干渉信号には、進相軸と遅相軸を伝搬した光による干渉信号も重畳されることとなる。したがって、進相軸同士の干渉信号の側方に、−20dB程度の強度の側帯波が発生してしまう。また、偏波保持ファイバや偏波保持ファイバカプラは非常に高価である。
【0005】
この側帯波を避けるために、センサ用ファイバ100及び測定干渉計54を構成する光ファイバとしてシングルモードファイバを使用する場合には、例えば
図12及び
図13に示す2通りの方法を利用することができる。
図12に示した方法は、センサ用ファイバ100からの反射光を偏波分離器56で直交する2つの偏波に分け、それぞれを偏波コントローラ57a,57bにより偏波状態が調整された参照光と干渉させて、それぞれの干渉信号を合成することにより、偏波補償する方法である。しかしながら、
図12の構成では2台の受光器55a,55bが必要になるため、コストが掛かるという問題がある。
【0006】
一方、
図13に示した方法は、波長掃引光源50とセンサ用ファイバ100の間に旋光器58を入れて、センサ用ファイバ100に入射させる光の偏波状態を時間軸上で切り替え、それぞれの時間軸上の干渉信号を合成することにより偏波補償する方法である。この旋光器58は、入射した光の偏波状態をポアンカレ球上でS
3軸を中心に180度回転(90度旋光)した位置関係にある2つの偏波状態のいずれかに切り替えるものである。
【0007】
例えば
図14(a)に示すように、旋光器58に入射する光が直線偏光であれば、ポアンカレ球上の対極の位置に相当する2つの偏波状態、すなわち偏波状態が互いに直交する2つの直線偏光の光を時間軸上で切り替えて旋光器58から出射させることが可能になる。旋光器58としてはファラデー素子を利用した安価なものを利用できる。
図13の方法は、受光器55が1つで済むため安価に実現できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、
図13の構成において、波長掃引光源50の出射用ファイバや旋光器58の入射用ファイバ、ファイバカプラ51,53等は、それぞれ数十cm以上あり、それらのファイバをリール等に巻けば応力等によって偏波が回転してしまう。このため、たとえ波長掃引光源50が直線偏光の光を発光させたとしても、その光は旋光器58に到達するまでに、楕円偏光となっている可能性がある。
図14(b)に示すように、楕円偏光の光は90度旋光させてもポアンカレ球上の対極の位置に偏波状態を変化させることはできないため、偏波状態が互いに直交する光を時間軸上で切り替えて旋光器58から出射させることができない。このため、
図13に示した波長掃引光源50とセンサ用ファイバ100の間に旋光器58を入れる構成では、正確な偏波補償ができないという問題があった。
【0010】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、OFDR装置において偏波補償を低コストで正確に実現できる波長掃引光源、それを用いたOFDR装置及び測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る波長掃引光源は、半導体レーザと、前記半導体レーザから出射される光の波長を所定の掃引周期で繰り返し変化させる波長掃引手段と、を備える波長掃引光源において
、前記半導体レーザから出射され
空中伝搬した光を
受け、印加された磁場の強度に応じた旋光角で旋光させるファラデー素子と、前記ファラデー素子により旋光された光を出力光として外部に伝送する出力側光ファイバと、前記ファラデー素子に磁場を印加する磁場印加手段と、前記磁場印加手段により前記ファラデー素子に印加される磁場の強度を変化させて、前記所定の掃引周期に同期して前記旋光角を第1角度と第2角度とに交互に切り替える制御を行う旋光角制御部と、を備え、前記第1角度と前記第2角度との差が90度である構成である。
【0012】
この構成により、本発明に係る波長掃引光源は、光ファイバの応力の影響を受ける前に半導体レーザから出射された直線偏光の光の角度を90度切り替えることができるため、OFDR装置の波長掃引光源として用いられた場合に、OFDR装置において低コストで正確な偏波補償を実現できる。
【0013】
また、本発明に係る波長掃引光源においては、前記磁場印加手段は電磁石であり、前記旋光角制御部は、前記旋光角を前記第1角度又は前記第2角度にする磁場を発生させるための駆動電流を前記磁場印加手段に供給する可変電流源を含む構成であってもよい。
【0014】
この構成により、本発明に係る波長掃引光源は、旋光角制御部により電磁石の駆動電流を制御することにより、ファラデー素子の旋光角を第1角度又は第2角度に切り替えることができる。
【0015】
また、本発明に係る波長掃引光源においては、前記ファラデー素子は、その飽和磁場よりも絶対値の大きい第1方向の磁場を前記磁場印加手段から印加されることにより前記第1角度が45度となり、かつ、前記飽和磁場よりも絶対値の大きい前記第1方向と逆向きの第2方向の磁場を前記磁場印加手段から印加されることにより前記第2角度が−45度となるものであってもよい。
【0016】
この構成により、本発明に係る波長掃引光源は、半導体レーザから出射された光を45度又は−45度で旋光させることができる。
【0017】
また、本発明に係る波長掃引光源においては、前記ファラデー素子の法線が、前記半導体レーザから出射された光の光路に対して0度以外の角度を成す構成であってもよい。
【0018】
この構成により、本発明に係る波長掃引光源は、ファラデー素子の表面で反射した半導体レーザからの光が半導体レーザ側に戻ることを抑制できる。
【0019】
また、本発明に係る波長掃引光源においては、前記ファラデー素子は、その保磁力よりも絶対値の小さい磁場で、45度の前記第1角度、又は、−45度の前記第2角度を維持する構成であってもよい。
【0020】
この構成により、本発明に係る波長掃引光源は、電磁石に供給する駆動電流の供給時間を短縮できるため、電磁石の発熱を抑えて旋光角の温度による変動を抑制することができる。
【0021】
また、本発明に係る波長掃引光源においては、前記半導体レーザは、2つの光出射端面のうちの一方の端面が他方の端面に比べて低反射率面であり、前記波長掃引手段は、前記半導体レーザの前記一方の端面から出射された光をその波長に応じた角度で回折させる回折格子と、前記回折格子により回折された光を反射して前記回折格子に戻す回動ミラーと、前記回動ミラーから前記回折格子に戻された光が再び回折格子で回折されて、前記半導体レーザの前記一方の端面に入射されるように、前記回動ミラーの前記回折格子に対する角度を所定の掃引周期で変化させる掃引駆動部と、を備え、前記回動ミラーの前記角度の変化に応じて、前記半導体レーザの前記他方の端面から前記回折格子を経て前記回動ミラーに至る共振器長が変化することにより、前記他方の端面から前記ファラデー素子に出射される光の波長を前記所定の掃引周期で繰り返し変化させる構成であってもよい。
【0022】
この構成により、本発明に係る波長掃引光源は、半導体レーザからファラデー素子に出射される光の波長を所定の掃引周期で繰り返し変化させることができる。
【0023】
また、本発明に係るOFDR装置は、上記のいずれかに記載の波長掃引光源と、前記波長掃引光源からの前記出力光を測定光と参照光とに分岐して被測定光ファイバに前記測定光を入力する光分岐手段と、前記光分岐手段により分岐された前記参照光の偏波状態を変化させる偏波コントローラと、前記偏波コントローラにより偏波状態が変化された前記参照光の所定の偏光方向の成分を透過させる偏光子と、前記偏光子を透過した前記参照光と、前記測定光が入力された前記被測定光ファイバからの反射光とを合波することで干渉光を出力する光合波手段と、前記干渉光を電気信号に変換する受光器と、前記電気信号をディジタル信号に変換するA/D変換器と、前記ディジタル信号に基づいて、前記被測定光ファイバの各位置における前記反射光の強度を測定する反射測定部と、を備え、前記偏波コントローラは、前記旋光角が前記第1角度である場合と前記第2角度である場合とで、前記偏光子を透過する前記参照光の光量が同量となるように、前記参照光の偏波状態を変化させるものであり、前記反射測定部は、前記ディジタル信号をフーリエ変換して、前記干渉光のスペクトラムを算出するフーリエ変換部と、前記旋光角が前記第1角度のときに前記フーリエ変換部により算出された前記干渉光のスペクトラムと、前記旋光角が前記第2角度のときに前記フーリエ変換部により算出された前記干渉光のスペクトラムと、を加算する加算処理部と、を含む構成である。
【0024】
この構成により、本発明に係るOFDR装置は、低コストで正確な偏波補償を行うことができる。
【0025】
また、本発明に係る測定方法は、光分岐手段により、上記のいずれかに記載の波長掃引光源からの前記出力光を測定光と参照光とに分岐して被測定光ファイバに前記測定光を入力するステップと、前記光分岐手段により分岐された前記参照光の偏波状態を偏波コントローラにより変化させる偏波状態変化ステップと、前記偏波状態変化ステップにより偏波状態が変化された前記参照光の所定の偏光方向の成分を偏光子により透過させるステップと、前記偏光子を透過した前記参照光と、前記測定光が入力された前記被測定光ファイバからの反射光とを合波することで干渉光を出力するステップと、前記干渉光を電気信号に変換するステップと、前記電気信号をディジタル信号に変換するステップと、前記ディジタル信号に基づいて、前記被測定光ファイバの各位置における前記反射光の強度を測定する反射測定ステップと、を含み、前記偏波状態変化ステップは、前記旋光角が前記第1角度である場合と前記第2角度である場合とで、前記偏光子を透過する前記参照光の光量が同量となるように、前記参照光の偏波状態を変化させるものであり、前記反射測定ステップは、前記ディジタル信号をフーリエ変換して、前記干渉光のスペクトラムを算出するフーリエ変換ステップと、前記旋光角が前記第1角度のときに前記フーリエ変換ステップにより算出された前記干渉光のスペクトラムと、前記旋光角が前記第2角度のときに前記フーリエ変換ステップにより算出された前記干渉光のスペクトラムと、を加算するステップと、を含む。
【0026】
この構成により、本発明に係る測定方法は、低コストで正確な偏波補償を行うことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、OFDR装置において偏波補償を低コストで正確に実現できる波長掃引光源、それを用いたOFDR装置及び測定方法を提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る波長掃引光源、それを用いたOFDR装置及び測定方法の実施形態について図面を用いて説明する。
【0030】
図1に示すように、本実施形態に係る波長掃引光源10は、例えばリトマン型の外部共振器型光源の構成を含んでおり、半導体レーザ11と、コリメートレンズ12と、回折格子13と、回動ミラー14と、掃引駆動部15と、集光レンズ16と、アイソレータ17と、ファラデー素子18と、磁場印加手段としての電磁石19と、旋光角制御部20と、出力側光ファイバ21と、を主に備える。波長掃引光源10は、コリメートレンズ12、回折格子13、回動ミラー14、及び掃引駆動部15からなる波長掃引手段により、半導体レーザ11から出射される直線偏光の光の波長を所定の掃引周期で繰り返し変化させるようになっている。
【0031】
半導体レーザ11は、直線偏光のレーザ光を2つの光出射端面11a,11bから出射するものであり、2つの光出射端面11a,11bのうちの一方の端面11aが他方の端面11bに比べて低反射率面となっている。一方の端面11aは、例えばARコートされることにより低反射率面となっている。
【0032】
コリメートレンズ12は、半導体レーザ11の一方の端面11aから出射された光をコリメートするレンズである。回折格子13は、コリメートレンズ12によりコリメートされた半導体レーザ11からの光をその波長に応じた角度で回折させるようになっている。回動ミラー14は、回折格子13により回折された光を反射して回折格子13に戻すようになっている。
【0033】
掃引駆動部15は、回動ミラー14から回折格子13に戻された光が再び回折格子13で回折されて、コリメートレンズ12を介して半導体レーザ11の一方の端面11aに入射されるように、回動ミラー14の回折格子13に対する角度を所定の掃引周期で変化させるようになっている。また、掃引駆動部15は、掃引周期のタイミングの情報を含む掃引信号aを旋光角制御部20と後述する反射測定部34に出力するようになっている。
【0034】
回動ミラー14の角度の変化に応じて半導体レーザ11の他方の端面11bから回折格子13を経て回動ミラー14に至る共振器長が変化することにより、
図4の上段に示すように、他方の端面11bからファラデー素子18に出射される光の波長が所定の掃引周期Tで正弦波的に繰り返し変化することになる。
【0035】
なお、波長掃引光源10は、上記のリトマン型に限定されず、リトロー型、ファブリーペロー型、リングレーザ型、DBR(Distributed Bragg Reflector)型などの任意の構成であってもよい。
【0036】
ファラデー素子18は、ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶などの磁気光学結晶からなり、印加された磁場の強度に応じた旋光角で、半導体レーザ11の他方の端面11bから出射された光を旋光させるようになっている。
【0037】
電磁石19は、ファラデー素子18に磁場を印加するものであり、例えば、ファラデー素子18を透過する半導体レーザ11からの光の進行方向に平行な成分を有する磁場を印加するように配置される。なお、ファラデー素子18に印加される磁場の方向が逆向きに変わると、旋光角の変化の方向も変わる。以降では、半導体レーザ11からファラデー素子18に向かう方向の磁場を「第1方向の磁場」、ファラデー素子18から半導体レーザ11に向かう方向の磁場を「第2方向の磁場」とも称する。
【0038】
旋光角制御部20は、掃引信号aに応じて電磁石19によりファラデー素子18に印加される磁場の強度を変化させて、所定の掃引周期に同期して旋光角を第1角度と第2角度とに交互に切り替える制御を行うようになっている。旋光角制御部20は、旋光角を第1角度又は第2角度にする磁場を発生させるための駆動電流を電磁石19に供給する可変電流源20aを含んでいる。ここで、第1角度と第2角度との差は90度である。また、旋光角制御部20は、旋光角の切り替えのタイミングの情報を含む制御信号を後述する反射測定部34に出力するようになっている。
【0039】
なお、ファラデー素子18として、例えば、飽和磁場よりも絶対値の大きい第1方向の磁場を電磁石19から印加されることにより第1角度が45度となり、かつ、飽和磁場よりも絶対値の大きい第1方向と逆向きの第2方向の磁場を電磁石19から印加されることにより第2角度が−45度となるものを用いるのが便利である。
【0040】
さらに、ファラデー素子18として、その保磁力よりも絶対値の小さい磁場で、45度の第1角度、又は、−45度の第2角度を維持するものを利用することも可能である。このようなファラデー素子18に対しては、例えば、
図2に示すようなデューティー比が50%未満(例えば5%程度)のパルス状の磁場を印加すればよく、電磁石19への駆動電流の供給時間を短縮できるため、電磁石19の発熱を抑えて旋光角の温度による変動を抑制することができる。
【0041】
なお、半導体レーザ11の他方の端面11bとファラデー素子18の間には、半導体レーザ11の他方の端面11bから出射された光を出力側光ファイバ21に向けて集光する集光レンズ16と、集光レンズ16を透過した半導体レーザ11からの光が半導体レーザ11側に戻ることを防ぐアイソレータ17と、が配置されている。
【0042】
上記の構成によれば、半導体レーザ11からの光は空中伝搬している間に旋光されるため、光ファイバの応力の影響を受ける前に半導体レーザ11からの光の偏波状態を、ポアンカレ球上の対極の位置に相当する2つの偏波状態のいずれかに切り替えることが可能になる。例えば、
図3のポアンカレ球の赤道上のA点(旋光角0度)に相当する半導体レーザ11からの光の偏波状態は、赤道上のB点(旋光角45度)又はC点に相当する偏波状態(旋光角−45度)のいずれかに切り替わることになる。
【0043】
図4は、掃引周期のタイミングと旋光角の切り替えのタイミングの一例を示すグラフである。この例では、掃引周期Tごとに旋光角が切り替わっており、第1角度を45度とし、第2角度を−45度としている。なお、旋光角の切り替えのタイミングは上記に限定されず、例えば掃引周期Tの1/2ごとなどの任意のタイミングであってもよい。また、以降では、ファラデー素子18により45度の旋光角で旋光された光の偏波状態を「P偏光」、ファラデー素子18により−45度の旋光角で旋光された光の偏波状態を「S偏光」とする。
【0044】
出力側光ファイバ21は、ファラデー素子18により旋光された光を波長掃引光源10の出力光として外部に伝送するシングルモードファイバである。出力側光ファイバ21は円筒状のフェルール22のファイバ孔22aに挿通されている。出力側光ファイバ21は、例えばファイバ孔22a内に設けた接着剤による接着固定や、ファイバ孔22aへの圧入による固定などにより、フェルール22に固定される。
【0045】
フェルール22の端面22bには、例えば、ファイバ孔22aの軸線に垂直な仮想垂直面に対して7〜9度程度傾斜する傾斜面を形成するAPC(Angled Physical Contact)研磨等の斜め研磨が施されていてもよい。なお、出力側光ファイバ21のフェルール22に固定されている部分の先端面は、フェルール22の端面22bに揃えられている。このように斜め研磨が施された端面22bにファラデー素子18を張り付けて固定することにより、ファラデー素子18の法線が、半導体レーザ11の他方の端面11bから出射された光の光路に対して7〜9度程度の0度以外の角度を成すことになる。これにより、ファラデー素子18の表面で反射した半導体レーザ11からの光が半導体レーザ11側に戻ることを抑制できる。
【0046】
図5は、被測定光ファイバとしてのセンサ用ファイバ100が被試験対象(Device Under Test:DUT)110に張り付けられた状態で、センサ用ファイバ100からの光信号を観測することにより、DUT110の歪や温度を測定するOFDR装置30の構成例を示す図である。
【0047】
OFDR装置30は、本実施形態に係る波長掃引光源10と、測定干渉計31と、受光器32と、A/D変換器33と、反射測定部34と、表示部35と、を備える。
【0048】
測定干渉計31は、波長掃引光源10の出力側光ファイバ21から伝送された出力光を測定光と参照光とに分岐してセンサ用ファイバ100に測定光を入力する光分岐手段としてのファイバカプラ36及びサーキュレータ37と、ファイバカプラ36により分岐された参照光の偏波状態を変化させる偏波コントローラ38と、偏波コントローラ38により偏波状態が変化された参照光の所定の偏光方向の成分を透過させる偏光子39と、を含む。
【0049】
偏波コントローラ38は、ファラデー素子18の旋光角が第1角度である場合と第2角度である場合とで、偏光子39を透過する参照光の光量が同量となるように、参照光の偏波状態を変化させるようにあらかじめ調整されたものである。例えば、この調整は、偏波コントローラ38からの出力の直線偏光の方向が、偏光子39の偏光軸に対して45度傾いた状態になるように行われる。したがって、偏光子39から出射される光は、ファラデー素子18の旋光角が第1角度又は第2角度のいずれであるかにかかわらず、常に偏光子39の偏光軸に一致した直線偏光となり、その光量は一定となる。
【0050】
例えば、
図6(a)に示すタイミングでファイバカプラ36により分岐された参照光のP偏光とS偏光とが切り替えられる状況において、偏波コントローラ38を調整する前の偏光子39の出力光量が
図6(b)に示されたようなものである場合、
図6(c)のように偏光子39の出力光量が旋光角の切り替えのタイミングにかかわらず一定となるように偏波コントローラ38は調整されている。
【0051】
さらに、測定干渉計31は、測定光が入力されたセンサ用ファイバ100からの反射光と、偏光子39を透過した参照光と、を合波することで干渉光を出力する光合波手段としてのサーキュレータ37及びファイバカプラ40を含む。
【0052】
すなわち、ファイバカプラ36により出力光は測定光と参照光とに2分岐され、測定光はサーキュレータ37を透過後、センサ用ファイバ100を伝搬する。センサ用ファイバ100内を伝搬する測定光はセンサ用ファイバ100の各点で反射される。この反射光は、再びセンサ用ファイバ100を伝搬し、サーキュレータ37を透過してファイバカプラ40に入射される。一方、ファイバカプラ36により分岐された参照光は、偏波コントローラ38と偏光子39を透過してファイバカプラ40に入射される。
【0053】
なお、センサ用ファイバ100はシングルモードファイバである。また、ファイバカプラ36からファイバカプラ40に至る測定光、反射光、及び参照光の光路上の各光学部品も、シングルモードファイバで接続されている。このため、波長掃引光源10から出射される光の旋光角が第1角度のときと第2角度のときにおいて、ファイバカプラ40に入力されるセンサ用ファイバ100からの反射光の偏波状態は、ポアンカレ球上で対極の位置に相当するものとなる。
【0054】
受光器32は、入力光の強度に比例した電気信号を出力するフォトダイオード(PD)からなり、測定干渉計31から出力された干渉光を電気信号(以下、「干渉信号」とも称する)に変換するようになっている。干渉信号の周波数fは、センサ用ファイバ100からの反射光と、偏光子39を透過した参照光との光周波数の差である。
【0055】
A/D変換器33は、後述する反射測定部34からの指示信号cに応じて、受光器32から出力されたアナログの干渉信号をディジタル信号に変換するようになっている。
図7に示すように、干渉信号は掃引周期に同期してA/D変換器33によりサンプリングされる。
図7は、短波長から長波長への掃引時にサンプリングが行われる例を示しているが、本発明はこれに限定されず、サンプリングのタイミングは任意である。例えば、長波長から短波長への掃引時にサンプリングが行われてもよく、あるいは、短波長から長波長への掃引時と、長波長から短波長への掃引時の両方でサンプリングが行われてもよい。
【0056】
反射測定部34は、A/D変換器33から出力されたディジタル信号に基づいて、センサ用ファイバ100の各位置における反射光の強度を測定するようになっており、フーリエ変換部41と、記憶部42と、加算処理部43と、を含む。また、反射測定部34は、掃引駆動部15からの掃引信号aと、旋光角制御部20からの制御信号bとに基づいて、サンプリングのタイミングを指示するための指示信号cをA/D変換器33に出力するようになっている。
【0057】
フーリエ変換部41は、A/D変換器33から出力されたディジタル信号を高速フーリエ変換(FFT)して、干渉光のスペクトラムを算出するようになっている。
【0058】
例えば、ファイバカプラ36→サーキュレータ37→センサ用ファイバ100の入射端→サーキュレータ37→ファイバカプラ40の光路長と、ファイバカプラ36→偏波コントローラ38→偏光子39→ファイバカプラ40の光路長が一致するように測定干渉計31のファイバ長が調整されているとすれば、干渉光のスペクトラムの周波数0での信号強度は、センサ用ファイバ100の入射端からの反射光の強度に比例する。
【0059】
また、波長掃引光源10の光周波数掃引速度をV[Hz/s]、光速をc[m/s]、センサ用ファイバ100の屈折率をn、センサ用ファイバ100の入射端からセンサ用ファイバ100内の各点までの距離をZ[m]とすれば、干渉光のスペクトラムの周波数f[Hz]は、下記の式(1)で表すことができる。式(1)によれば、光周波数掃引速度Vが一定であると仮定すれば、干渉光のスペクトラムの周波数fはセンサ用ファイバ100内の位置Zに比例することが分かる。
f(Z)=V×2nZ/c ・・・(1)
【0060】
しかしながら、実際の波長掃引光源10から出力される光の周波数は、非直線的に掃引されたり、変調が重畳されていたりする。これにより、干渉光のスペクトラムはぼやけたり、側帯波を持ったりすることになり、高精度な測定の妨げとなる。
【0061】
そこで、A/D変換器33から出力されたディジタル信号に対して、公知のリサンプリング処理を行うことにより、波長掃引光源10による波長掃引の非線形性の影響を除去することが望ましい。この場合、フーリエ変換部41は、リサンプリング処理されたA/D変換器33からのディジタル信号をフーリエ変換して、干渉光のスペクトラムを算出することになる。
【0062】
式(1)に従って、干渉光のスペクトラムの周波数をセンサ用ファイバ100内の位置Zに換算した干渉光のパワーを
図8に示す。
図8の上段に示すように、波長掃引光源10から出射される光がP偏光のとき(以下、「P偏光時」とも称する)に信号強度が低下している領域では、センサ用ファイバ100からの反射光の偏波状態が、偏光子39を透過した参照光の偏波状態と直交している。一方、
図8の下段に示すように、波長掃引光源10から出射される光がS偏光のとき(以下、「S偏光時」とも称する)には、センサ用ファイバ100からの反射光の偏波状態が、偏光子39を透過した参照光の偏波状態と直交しなくなるため、
図8の上段と同じ領域において逆に干渉光のパワーが強くなる。
【0063】
記憶部42は、旋光角制御部20からの制御信号bに基づいて、フーリエ変換部41により算出された干渉光のスペクトラムのデータを、旋光角に対応付けて記憶するようになっている。
【0064】
加算処理部43は、旋光角が第1角度のときにフーリエ変換部41により算出された干渉光のスペクトラムと、旋光角が第2角度のときにフーリエ変換部41により算出された干渉光のスペクトラムと、を記憶部42から読み出して、これらを加算するようになっている。
図9は、加算処理部43により、フーリエ変換部41で得られたP偏光時の干渉光のパワーとS偏光時の干渉光のパワーを加算することにより偏波補償を行った結果の一例を示すグラフである。
図9に示すように、加算処理部43による加算処理後の干渉光のパワーは、位置Zに依存せずにほぼ一定となる。
【0065】
表示部35は、例えばLCDやCRTなどの表示機器で構成され、加算処理部43により得られた加算処理後の干渉光のパワーなどを表示するようになっている。
【0066】
以下、本実施形態に係る波長掃引光源10を用いる測定方法について、
図10のフローチャートを参照しながらその処理の一例を説明する。
【0067】
まず、旋光角制御部20は、掃引信号aに応じてファラデー素子18の旋光角を第1角度に設定する(ステップS1)。
【0068】
次に、光分岐手段としてのファイバカプラ36及びサーキュレータ37は、波長掃引光源10からの出力光を測定光と参照光とに分岐してセンサ用ファイバ100に測定光を入力する(ステップS2)。
【0069】
次に、偏波コントローラ38は、ファイバカプラ36により分岐された参照光の偏波状態を変化させる(偏波状態変化ステップS3)。
【0070】
次に、偏光子39は、偏波状態変化ステップS3により偏波状態が変化された参照光の所定の偏光方向の成分を透過させる(ステップS4)。なお、上記の偏波状態変化ステップS3は、旋光角が第1角度である場合と第2角度である場合とで、偏光子39を透過する参照光の光量が同量となるように、参照光の偏波状態を変化させるものである。
【0071】
次に、光合波手段としてのサーキュレータ37及びファイバカプラ40は、偏光子39を透過した参照光と、測定光が入力されたセンサ用ファイバ100からの反射光とを合波することで干渉光を出力する(ステップS5)。
【0072】
次に、受光器32は、干渉光を電気信号に変換する(ステップS6)。
【0073】
次に、A/D変換器33は、電気信号をディジタル信号に変換する(ステップS7)。
【0074】
次に、フーリエ変換部41は、ディジタル信号をフーリエ変換して、干渉光のスペクトラムを算出する(フーリエ変換ステップS8)。
【0075】
次に、反射測定部34は、旋光角が第2角度のときの干渉光のスペクトラムがフーリエ変換ステップS8で算出されたか否かを判定する(ステップS9)。否定判定の場合にはステップS10に進み、肯定判定の場合にはステップS11に進む。
【0076】
ステップS10において旋光角制御部20は、掃引信号aに応じてファラデー素子18の旋光角を第2角度に設定して、ステップS2に戻る。
【0077】
ステップS11において加算処理部43は、旋光角が第1角度のときにフーリエ変換ステップS8により算出された干渉光のスペクトラムと、旋光角が第2角度のときにフーリエ変換ステップS8により算出された干渉光のスペクトラムと、を加算する。
【0078】
ステップS8とステップS11とは、ディジタル信号に基づいて、センサ用ファイバ100の各位置における反射光の強度を測定する反射測定ステップを構成する。
【0079】
以上説明したように、本実施形態に係る波長掃引光源10は、光ファイバの応力の影響を受ける前に半導体レーザ11から出射された直線偏光の光の角度を90度切り替えることができるため、OFDR装置の波長掃引光源として用いられた場合に、OFDR装置において低コストで正確な偏波補償を実現できる。
【0080】
また、本実施形態に係る波長掃引光源10は、旋光角制御部20により電磁石19の駆動電流を制御することにより、ファラデー素子18の旋光角を第1角度又は第2角度に切り替えることができる。
【0081】
また、本実施形態に係る波長掃引光源10は、半導体レーザ11から出射された光を45度又は−45度で旋光させることができる。
【0082】
また、本実施形態に係る波長掃引光源10は、ファラデー素子18の法線が、半導体レーザ11から出射された光の光路に対して0度以外の角度を成しているため、ファラデー素子18の表面で反射した半導体レーザ11からの光が半導体レーザ11側に戻ることを抑制できる。
【0083】
また、本実施形態に係る波長掃引光源10は、ファラデー素子18が、その保磁力よりも絶対値の小さい磁場で、45度の旋光角、又は、−45度の旋光角を維持できるものである場合には、電磁石19に供給する駆動電流の供給時間を短縮できるため、電磁石19の発熱を抑えて旋光角の温度による変動を抑制することができる。
【0084】
また、本実施形態に係る波長掃引光源10は、半導体レーザ11からファラデー素子18に出射される光の波長を所定の掃引周期で繰り返し変化させることができる。
【0085】
また、本実施形態に係るOFDR装置30は、本実施形態に係る波長掃引光源10を備えているため、低コストで正確な偏波補償を行うことができる。
【0086】
なお、本実施形態においては、波長掃引光源10がOFDR用の波長掃引光源として用いられる場合の構成例を主に説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ポアンカレ球上の対極の位置に相当する2つの偏波状態の光を切り替えて出射させる任意の用途に対して、本実施形態の波長掃引光源10を用いることができる。
【解決手段】半導体レーザ11から出射される光の波長を所定の掃引周期で繰り返し変化させる波長掃引光源10において、印加された磁場の強度に応じた旋光角で、半導体レーザ11から出射された光を旋光させるファラデー素子18と、ファラデー素子18により旋光された光を出力光として外部に伝送する出力側光ファイバ21と、ファラデー素子18に磁場を印加する電磁石19と、電磁石19によりファラデー素子18に印加される磁場の強度を変化させて、所定の掃引周期に同期して旋光角を第1角度と第2角度とに交互に切り替える制御を行う旋光角制御部20と、を備え、第1角度と第2角度との差が90度である。