【文献】
KUMAR, R. et al.,Scalable synthesis of aligned carbon nanotubes bundles using green natural precursor: neem oil,Nanoscale Research Letters,ドイツ,Springer,2011年 1月18日,Vol.6,92
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
カーボンナノチューブ(A)中の鉄、コバルト、ニッケル、アルミニウム、マグネシウム、シリカ、マンガン、およびモリブデンの総量が0.5質量%未満であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のカーボンナノチューブ。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のカーボンナノチューブ、カーボンナノチューブ分散液、樹脂組成物、合材スラリーおよびそれを塗工した電極膜について詳しく説明する。
(1)カーボンナノチューブ(A)
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)は、平面的なグラファイトを円筒状に巻いた形状を有している。カーボンナノチューブ(A)は単層カーボンナノチューブが混在するものであってもよい。単層カーボンナノチューブは一層のグラファイトが巻かれた構造を有する。多層カーボンナノチューブは、二又は三以上の層のグラファイトが巻かれた構造を有する。また、カーボンナノチューブ(A)の側壁はグラファイト構造でなくともよい。例えば、アモルファス構造を有する側壁を備えるカーボンナノチューブをカーボンナノチューブ(A)として用いることもできる。
【0023】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)の形状は限定されない。かかる形状としては、針状、円筒チューブ状、魚骨状(フィッシュボーン又はカップ積層型)、トランプ状(プレートレット)及びコイル状を含む様々な形状が挙げられる。本実施形態においてカーボンナノチューブ(A)の形状は、中でも、針状、又は、円筒チューブ状であることが好ましい。カーボンナノチューブ(A)は、単独の形状、または2種以上の形状の組合せであってもよい。
【0024】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)の形態は、例えば、グラファイトウィスカー、フィラメンタスカーボン、グラファイトファイバー、極細炭素チューブ、カーボンチューブ、カーボンフィブリル、カーボンマイクロチューブ及びカーボンナノファイバーを挙げることができるが、これらに限定されない。カーボンナノチューブ(A)は、これらの単独の形態又は二種以上を組み合わせられた形態を有していてもよい。
【0025】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)の外径は5〜25nmであることが好ましく、8〜20nmであることがより好ましく、10〜15nmであることがさらに好ましい。
【0026】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)の外径の標準偏差は2〜8nmであることが好ましく、3〜6nmであることがより好ましい。
【0027】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)の外径および平均外径は次のように求められる。まず透過型電子顕微鏡によって、カーボンナノチューブ(A)を観測するとともに撮像する。次に観測写真において、任意の300本のカーボンナノチューブ(A)を選び、それぞれの外径を計測する。次に外径の数平均としてカーボンナノチューブ(A)の平均外径(nm)を算出する。
【0028】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)の繊維長は、0.1〜150μmが好ましく、1〜10μmがより好ましい。
【0029】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)の炭素純度はカーボンナノチューブ(A)中の炭素原子の含有率(質量%)で表される。炭素純度はカーボンナノチューブ(A)100質量%に対して、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以上がさらに好ましく、99.5質量%以上がより好ましい。
【0030】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)中に含まれる金属量はカーボンナノチューブ(A)100質量%に対して、10質量%未満が好ましく、5質量%未満がより好ましく、1質量%未満がさらに好ましく、0.5質量%未満がより好ましい。カーボンナノチューブ(A)に含まれる金属としては、カーボンナノチューブ(A)を合成する際に触媒として使用される金属や金属酸化物が挙げられる。具体的には、コバルト、ニッケル、アルミニウム、マグネシウム、シリカ、マンガンやモリブデン等の金属、金属酸化物やこれらの複合酸化物が挙げられる。
【0031】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)の純化処理方法としては、従来公知の様々な方法を用いることができる。例えば、酸処理、黒鉛化処理や塩素化処理が挙げられる。
【0032】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)を酸処理する際に使用する酸としては、カーボンナノチューブ(A)に含まれる金属および金属酸化物を溶解できるものであればよいが、無機酸やカルボン酸が好ましく、無機酸の中でも、塩酸、硫酸や硝酸が特に好ましい。
【0033】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)の酸処理は液相中で行われることが好ましく、液相中でカーボンナノチューブを分散および/または混合することがさらに好ましい。酸処理後のカーボンナノチューブは水洗し、乾燥することが好ましい。
【0034】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)の黒鉛化処理は、酸素濃度0.1%以下の不活性雰囲気下、カーボンナノチューブ(A)を1500℃〜3500℃で加熱することにより行うことができる。
【0035】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)の塩素化処理は、酸素濃度0.1%以下の不活性雰囲気下、塩素ガスを導入し、カーボンナノチューブ(A)を800℃〜2000℃で加熱することにより行うことができる。
【0036】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)は、通常二次粒子として存在している。この二次粒子の形状は、例えば一般的な一次粒子であるカーボンナノチューブ(A)が複雑に絡み合っている状態でもよい。カーボンナノチューブ(A)を直線状にしたものの集合体であってもよい。直線状のカーボンナノチューブ(A)の集合体である二次粒子は、絡み合っているものと比べるとほぐれ易い。また直線状のものは、絡み合っているものに比べると分散性が良いのでカーボンナノチューブ(A)として好適に利用できる。
【0037】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)は、表面処理を行ったカーボンナノチューブでもよい。またカーボンナノチューブ(A)は、カルボキシル基に代表される官能基を付与させたカーボンナノチューブ誘導体であってもよい。また、有機化合物、金属原子、又はフラーレンに代表される物質を内包させたカーボンナノナノチューブ(A)も用いることができる。
【0038】
カーボンナノチューブ(A)の層構成は下記方法で粉末X線回折分析することにより解析することができる。
【0039】
まず、カーボンナノチューブ(A)を所定のサンプルホルダーに表面が平らになるように詰め、粉末X線回折分析装置にセットし、15°から35°までX線源の照射角度を変化させ測定する。X線源としては例えばCuKα線が用いられる。その時にピークが現れる回折角2θを読み取ることでカーボンナノチューブ(A)の評価が可能である。グラファイトでは通常2θが26°付近にピークが検出され、これが層間回折によるピークであることが知られている。カーボンナノチューブ(A)もグラファイト構造を有するため、この付近にグラファイト層間回折によるピークが検出される。ただし、カーボンナノチューブは円筒構造であるために、その値はグラファイトとは異なってくる。その値2θが25°±2°の位置にピークが出現することで単層ではなく、多層構造を有している組成物を含んでいることが判断できる。この位置に出現するピークは多層構造の層間回折によるピークであるため、カーボンナノチューブ(A)の層数を判断することが可能となる。単層カーボンナノチューブは層数が1枚しかないので、単層カーボンナノチューブのみでは25°±2°の位置にピークは出現しない。しかしながら、単層カーボンナノチューブであっても、100%単層カーボンナノチューブということはなく、多層カーボンナノチューブ等が混入している場合は2θが25°±2°の位置にピークが出現する場合がある。
【0040】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)は2θが25°±2°の位置にピークが出現する。また粉末X線回折分析により検出される25°±2°のピークの半価幅からも層構成を解析することができる。すなわち、このピークの半価幅が小さいほど多層カーボンナノチューブ(A)の層数が多いと考えられる。逆にこのピークの半価幅が大きいほど、カーボンナノチューブの層数が少ないと考えられる。
【0041】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)は、粉末X線回折分析を行った時に回折角2θ=25°±2°にピークが存在し、そのピークの半価幅が2°以上3°未満であり、2.2°以上3°未満であることが好ましい。
【0042】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)のG/D比はラマン分光分析法により求められる。本実施形態のカーボンナノチューブ(A)は、ラマンスペクトルにおいて1560〜1600cm
−1の範囲内での最大ピーク強度をG、1310〜1350cm
−1の範囲内での最大ピーク強度をDとした際に、G/D比が、1.5〜5.0であり、1.8〜4.5であることが好ましい。
【0043】
ラマン分光分析法で使用するレーザー波長は種々あるが、ここでは532nmおよび632nmを利用する。ラマンスペクトルにおいて1590cm
−1付近に見られるラマンシフトは、グラファイト由来のGバンドと呼ばれ、1350cm
−1付近に見られるラマンシフトはアモルファスカーボンやグラファイトの欠陥に由来のDバンドと呼ばれる。このG/D比が高いカーボンナノチューブほど、グラファイト化度が高い。
【0044】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)の体積抵抗率は1.5×10
−2〜2.5×10
−2Ω・cmであることが好ましく、2.0×10
−2〜2.5×10
−2Ω・cmであることがより好ましい。カーボンナノチューブ(A)の体積抵抗率は粉体抵抗率測定装置((株)三菱化学アナリテック社製:ロレスターGP粉体抵抗率測定システムMCP−PD−51))を用いて測定することができる。
【0045】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)のBET比表面積は100〜800m
2/gのものが好ましく、150〜600m
2/gのものがより好ましく、150〜400m
2/gのものが特に好ましい。
【0046】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)は、粉末X線回折分析において、回折角2θ=25°±2°にピークが存在し、そのピークの半価幅が2°以上3°未満であり、ラマンスペクトルにおいて1560〜1600cm
−1の範囲内での最大ピーク強度をG、1310〜1350cm
−1の範囲内での最大ピーク強度をDとした際にG/D比が1.5〜5.0であれば特に限定されず、どのような方法で製造したカーボンナノチューブでもよい。例えば、レーザーアブレーション法、アーク放電法、熱CVD法、プラズマCVD法及び燃焼法により、カーボンナノチューブを得た後、酸素濃度が1体積%以下の雰囲気中、加熱することで、カーボンナノチューブ(A)を得ることができる。加熱時の温度としては、700〜2500℃が好ましく、900〜2000℃がより好ましく、1200〜1800℃がさらに好ましい。
【0047】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)は、酸素濃度が1体積%以下、700〜1000℃雰囲気中に塩素ガスを導入し、カーボンナノチューブ(A)に含まれる金属を金属塩化物とした後、1200〜2000℃に加熱し、金属塩化物を揮発させて、カーボンナノチューブ(A)を得ることが好ましく、酸素濃度が1体積%以下、700〜1000℃雰囲気中に塩素ガスを導入し、カーボンナノチューブ(A)に含まれる金属を金属塩化物とした後、減圧し、金属塩化物を揮発させて、カーボンナノチューブ(A)を得ることがさらに好ましい。
【0048】
(2)溶媒(B)
本実施形態の溶媒(B)は、カーボンナノチューブ(A)が分散可能な範囲であれば特に限定されないが、水、及びまたは、水溶性有機溶媒のいずれか一種、若しくは二種以上からなる混合溶媒であることが好ましい。
【0049】
水溶性有機溶媒としては、アルコール系(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ベンジルアルコールなど)、多価アルコール系(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコールなど)、多価アルコールエーテル系(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテルなど)、アミン系(エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミンなど)、アミド系(N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−エチル−2−ピロリドン(NEP)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルカプロラクタムなど)、複素環系(シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、γ−ブチロラクトンなど)、スルホキシド系(ジメチルスルホキシドなど)、スルホン系(ヘキサメチルホスホロトリアミド、スルホランなど)、低級ケトン系(アセトン、メチルエチルケトンなど)、その他、テトラヒドロフラン、尿素、アセトニトリルなどを使用することができる。この中でも、水またはアミド系有機溶媒であることがより好ましく、アミド系有機溶媒の中でもN−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンが特に好ましい。
【0050】
本実施形態の溶媒(B)として、アミド系有機溶媒のみを使用する場合、溶媒(B)中の水分量が500ppm以下であることが好ましく、300ppm以下であることがさらに好ましく、100ppm以下であることが特に好ましい。
【0051】
(3)分散剤(C)
本実施形態の分散剤(C)は、カーボンナノチューブ(A)を分散安定化できる範囲で特に限定されず、界面活性剤、樹脂型分散剤を使用することができる。界面活性剤は主にアニオン性、カチオン性、ノニオン性及び両性に分類される。カーボンナノチューブ(A)の分散に要求される特性に応じて適宜好適な種類の分散剤を、好適な配合量で使用することができる。
【0052】
アニオン性界面活性剤を選択する場合、その種類は特に限定されない。具体的には脂肪酸塩、ポリスルホン酸塩、ポリカルボン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸スルホン酸塩、グリセロールボレイト脂肪酸エステル及びポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステルが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、具体的にはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステル塩及びβ−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
またカチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩類及び第四級アンモニウム塩類がある。具体的にはステアリルアミンアセテート、トリメチルヤシアンモニウムクロリド、トリメチル牛脂アンモニウムクロリド、ジメチルジオレイルアンモニウムクロリド、メチルオレイルジエタノールクロリド、テトラメチルアンモニウムクロリド、ラウリルピリジニウムクロリド、ラウリルピリジニウムブロマイド、ラウリルピリジニウムジサルフェート、セチルピリジニウムブロマイド、4−アルキルメルカプトピリジン、ポリ(ビニルピリジン)−ドデシルブロマイド及びドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロリドが挙げられるが、これらに限定されない。また両性界面活性剤としては、アミノカルボン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
またノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン誘導体、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びアルキルアリルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。具体的にはポリオキシエチレンラウリルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
選択される界面活性剤は単独の界面活性剤に限定されない。このため二種以上の界面活性剤を組み合わせて使用することも可能である。例えばアニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤の組み合わせ、又はカチオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤の組み合わせが利用できる。その際の配合量は、それぞれの界面活性剤成分に対して好適な配合量とすることが好ましい。組み合わせとしてはアニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤の組み合わせが好ましい。アニオン性界面活性剤はポリカルボン酸塩であることが好ましい。ノニオン性界面活性剤はポリオキシエチレンフェニルエーテルであることが好ましい。
【0056】
また樹脂型分散剤として具体的には、セルロース誘導体(セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースブチレート、シアノエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドンが挙げられる。特にメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドンが好ましい。
【0057】
(4)カーボンナノチューブ分散液
本実施形態のカーボンナノチューブ分散液は、カーボンナノチューブ(A)と溶媒(B)と分散剤(C)を含むものである。
【0058】
本実施形態のカーボンナノチューブ分散液を得るには、カーボンナノチューブ(A)を溶媒(B)中に分散させる処理を行うことが好ましい。かかる処理を行うために使用される分散装置は特に限定されない。
【0059】
分散装置としては、顔料分散等に通常用いられている分散機を使用することができる。例えば、ディスパー、ホモミキサー、プラネタリーミキサー等のミキサー類、ホモジナイザー(BRANSON社製Advanced Digital Sonifer(登録商標)、MODEL 450DA、エム・テクニック社製「クレアミックス」、PRIMIX社「フィルミックス」等、シルバーソン社製「アブラミックス」等)類、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、コロイドミル(PUC社製「PUCコロイドミル」、IKA社製「コロイドミルMK」)類、コーンミル(IKA社製「コーンミルMKO」等)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル等のメディア型分散機、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS−5」、奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機、その他ロールミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
本実施形態のカーボンナノチューブ分散液の固形分の量は、カーボンナノチューブ分散液100質量%に対して、0.1〜30質量%が好ましく、0.5〜25質量%が好ましく、1〜10質量%が好ましく、2〜8質量%が特に好ましい。
【0061】
本実施形態のカーボンナノチューブ分散液中の分散剤(C)の量は、カーボンナノチューブ(A)100質量%に対して、3〜300質量%使用することが好ましい。また導電性の観点から5〜100質量%使用することが好ましく、10〜50質量%使用することが好ましい。
【0062】
本実施形態のカーボンナノチューブ分散液中のカーボンナノチューブ(A)の繊維長は、0.1〜10μmが好ましく、0.2〜5μmが好ましく、0.3〜2μmが特に好ましい。
【0063】
(4)バインダー(D)
バインダー(D)とは、物質間を結合する樹脂である。
【0064】
本実施形態のバインダー(D)としては、例えば、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、スチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルピロリドン等を構成単位として含む重合体または共重合体;ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂;カルボキシメチルセルロースのようなセルロース樹脂;スチレン−ブタジエンゴム、フッ素ゴムのようなゴム類;ポリアニリン、ポリアセチレンのような導電性樹脂等が挙げられる。また、これらの樹脂の変性体や混合物、および共重合体でも良い。特に、耐性面から分子内にフッ素原子を有する高分子化合物、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン等の使用が好ましい。
【0065】
本実施形態のバインダー(D)としてのこれらの樹脂類の重量平均分子量は、10,000〜2,000,000が好ましく、100,000〜1,000,000がより好ましく、200,000〜1,000,000が特に好ましい。分子量が小さいとバインダーの耐性や密着性が低下することがある。分子量が大きくなるとバインダーの耐性や密着性は向上するものの、バインダー自体の粘度が高くなり作業性が低下するとともに、凝集剤として働き、分散された粒子が著しく凝集してしまうことがある。
【0066】
本発明の想定する産業上の利用可能性から、バインダー(D)は、フッ素原子を有する高分子化合物を含むことが好ましく、フッ素原子を有する高分子化合物であることが好ましく、フッ化ビニリデン系共重合体であることがさらに好ましく、ポリフッ化ビニリデンであることが特に好ましい。
【0067】
(5)カーボンナノチューブ樹脂組成物
本実施形態のカーボンナノチューブ樹脂組成物は、カーボンナノチューブ(A)と溶媒(B)と分散剤(C)とバインダー(D)とを含むものである。
【0068】
本実施形態のカーボンナノチューブ樹脂組成物を得るには、カーボンナノチューブ分散液(C)とバインダー(D)を混合し、均一化することが好ましい。混合方法としては、従来公知の様々な方法を行うことができる。カーボンナノチューブ樹脂組成物は前記カーボンナノチューブ分散液で説明した分散装置を用いて作製することができる。
【0069】
(6)活物質(E)
本実施形態の活物質(E)とは、電池反応の基となる材料のことである。活物質は起電力から正極活物質と負極活物質に分けられる。
【0070】
正極活物質としては、特に限定はされないが、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能な金属酸化物、金属硫化物等の金属化合物、および導電性高分子等を使用することができる。例えば、Fe、Co、Ni、Mn等の遷移金属の酸化物、リチウムとの複合酸化物、遷移金属硫化物等の無機化合物等が挙げられる。具体的には、MnO、V
2O
5、V
6O
13、TiO
2等の遷移金属酸化物粉末、層状構造のニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、スピネル構造のマンガン酸リチウムなどのリチウムと遷移金属との複合酸化物粉末、オリビン構造のリン酸化合物であるリン酸鉄リチウム系材料、TiS
2、FeSなどの遷移金属硫化物粉末等が挙げられる。また、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子を使用することもできる。また、上記の無機化合物や有機化合物を混合して用いてもよい。
【0071】
負極活物質としては、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能なものであれば特に限定されない。例えば、金属Li、その合金であるスズ合金、シリコン合金、鉛合金等の合金系、Li
XFe
2O
3、Li
XFe
3O
4、Li
XWO
2(xは0<x<1の数である。)、チタン酸リチウム、バナジウム酸リチウム、ケイ素酸リチウム等の金属酸化物系、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン等の導電性高分子系、ソフトカーボンやハードカーボンといった、アモルファス系炭素質材料や、高黒鉛化炭素材料等の人造黒鉛、あるいは天然黒鉛等の炭素質粉末、カーボンブラック、メソフェーズカーボンブラック、樹脂焼成炭素材料、気層成長炭素繊維、炭素繊維などの炭素系材料が挙げられる。これら負極活物質は、1種または複数を組み合わせて使用することもできる。
【0072】
正極活物質は、Al、Fe、Co、Ni、Mn等の遷移金属を含むリチウムとの複合酸化物であることが好ましく、Al、Co、Ni、Mnのうちいずれかを含むリチウムとの複合酸化物であることがより好ましく、Ni、および/または、Mnを含むリチウムとの複合酸化物であることが特に好ましい。これらの活物質を用いたとき、特に良好な効果を得ることができる。
【0073】
活物質のBET比表面積は0.1〜10m
2/gのものが好ましく、0.2〜5m
2/gのものがより好ましく、0.3〜3m
2/gのものがさらに好ましい。
【0074】
活物質の平均粒子径は0.05〜100μmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜50μmの範囲内である。本明細書でいう活物質の平均粒子径とは、活物質を電子顕微鏡で測定した粒子径の平均値である。
【0075】
(7)合材スラリー
本実施形態の合材スラリーとは、カーボンナノチューブ(A)と溶媒(B)と分散剤(C)とバインダー(D)と活物質(E)を含むものである。
【0076】
本実施形態の合材スラリーを得るには、カーボンナノチューブ樹脂組成物に活物質を加えた後、分散させる処理を行うことが好ましい。かかる処理を行うために使用される分散装置は特に限定されない。合材スラリーは前記カーボンナノチューブ分散液で説明した分散装置を用いて、合材スラリーを得ることができる。
【0077】
合材スラリー中の活物質(E)の量は合材スラリー100質量%に対して、20〜85質量%であることが好ましく、40〜85質量%であることが特に好ましい。
【0078】
合材スラリー中のカーボンナノチューブ(A)の量は活物質100質量%に対して、0.05〜10質量%であることが好ましく、0.1〜5質量%であることが好ましく0.1〜3質量%であることが好ましい。
【0079】
合材スラリー中のバインダー(A)の量は活物質100質量%に対して、0.5〜20質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがさらに好ましく、1〜5質量%であることが特に好ましい。
【0080】
合材スラリーの固形分の量は、合材スラリー100質量%に対して、30〜90質量%であることが好ましく、40〜85質量%であることが好ましい。
【0081】
合材スラリー中の水分量は500ppm以下であることが好ましく、300ppm以下であることがさらに好ましく、100ppm以下であることが特に好ましい。
【0082】
(7)電極膜
本実施形態の電極膜とは、集電体上に合材スラリーを塗工乾燥することで、電極合材層を形成した塗膜である。
【0083】
本実施形態の電極膜に使用する集電体の材質や形状は特に限定されず、各種二次電池にあったものを適宜選択することができる。例えば、集電体の材質としては、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、又はステンレス等の金属や合金が挙げられる。また、形状としては、一般的には平板上の箔が用いられるが、表面を粗面化したものや、穴あき箔状のもの、及びメッシュ状の集電体も使用できる。
【0084】
集電体上に合材スラリーを塗工する方法としては、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。具体的には、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ドクターコーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコティング法、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法または静電塗装法等が挙げる事ができ、乾燥方法としては放置乾燥、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機などが使用できるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0085】
また、塗布後に平版プレスやカレンダーロール等による圧延処理を行っても良い。電極合材層の厚みは、一般的には1μm以上、500μm以下であり、好ましくは10μm以上、300μm以下である。
【0086】
以上のようなカーボンナノチューブ分散液を用いた合材スラリーは導電性および密着性が良好であることがわかった。
【実施例】
【0087】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。実施例中、「カーボンナノチューブ」を「CNT」を略記することがある。
【0088】
<物性の測定方法>
後述の各実施例及び比較例において使用されたCNTの物性は以下の方法により測定した。
【0089】
<CNTの粉末X線回折分析>
アルミ試料板(外径φ46mm、厚さ3mm、試料部φ26.5mm、厚さ2mm)の中央凹部にCNTをのせ、スライドガラスを用いて、平坦化した。その後、試料を載せた面に薬包紙をのせ、さらにアルミハイシートパッキンをのせた面に対して、1トンの荷重をかけて平坦化した。その後、薬包紙とアルミハイシートパッキンを除去して、CNTの粉末X線回折分析用サンプルを得た。その後、X線回折装置(Ultima2100、株式会社リガク社製)にCNTの粉末X線回折分析用サンプルを設置し、15°から35°まで操作し、分析を行った。サンプリングは0.02°毎に行い、スキャンスピードは2°/min.とした。電圧は40kV、電流は40mA、X線源はCuKα線とした。この時得られる回折角2θ=25°±2°に出現するプロットをそれぞれ11点単純移動平均し、そのピークの半価幅をCNTの半価幅とした。ベースラインは2θ=16°および2θ=34°のプロットを結んだ線とした。
【0090】
<CNTのラマン分光分析>
ラマン顕微鏡(XploRA、株式会社堀場製作所社製)にCNTを設置し、532nmのレーザー波長を用いて測定を行った。測定条件は取り込み時間60秒、積算回数2回、減光フィルタ10%、対物レンズの倍率20倍、コンフォーカスホール500、スリット幅100μm、測定波長は100〜3000cm
−1とした。測定用のCNTはスライドガラス上に分取し、スパチュラを用いて平坦化した。得られたピークの内、スペクトルで1560〜1600cm
−1の範囲内で最大ピーク強度をG、1310〜1350cm
−1の範囲内で最大ピーク強度をDとし、G/Dの比をCNTのG/D比とした。
【0091】
<CNTの体積抵抗率>
粉体抵抗率測定装置((株)三菱化学アナリテック社製:ロレスターGP粉体抵抗率測定システムMCP−PD−51))を用い、試料質量1.2gとし、粉体用プローブユニット(四探針・リング電極、電極間隔5.0mm、電極半径1.0mm、試料半径12.5mm)により、印加電圧リミッタを90Vとして、種々加圧下の導電性粉体の体積抵抗率[Ω・cm]を測定した。1g/cm
3の密度におけるCNTの体積抵抗率の値について評価した。
【0092】
<CNT純度の測定>
CNTをマイクロ波試料前処理装置(マイルストーンゼネラル社製、ETHOS1)を使用し、酸分解し、CNTに含まれる金属を抽出した。その後、マルチ型ICP発光分光分析装置(Agilent社製、720−ES)を用いて分析を行い、抽出液に含まれる金属量を算出した。CNTの純度は次のようにして計算した。
CNT純度(%)=((CNT質量−CNT中の金属質量)÷CNT質量)×100
【0093】
<CNT分散液の粘度測定>
CNT分散液を25℃の恒温槽に1時間以上静置した後、CNT分散液を十分に撹拌してから、粘度計(TOKISANGYO CO.LTD、VISCOMETER、MODEL BL)を用いて、撹拌速度6rpmと60rpm時の粘度を測定した。
【0094】
<電極膜の体積抵抗率>
合材スラリーを、アプリケーターを用いて、70±10μmとなるようにアルミ箔上に塗工した後、電気オーブン中で120℃±5℃で25分間、塗膜を乾燥させた。その後、(株)三菱化学アナリテック社製:ロレスターGP、MCP−T610を用いて乾燥後の塗膜の表面抵抗率(Ω/□)を測定した。測定後、アルミ箔上に形成した電極合材層の厚みを掛けて、電極膜の体積抵抗率(Ω・cm)とした。電極合材層の厚みは、膜厚計(NIKON社製、DIGIMICRO MH−15M)を用いて、電極膜中の3点を測定した平均値から、アルミ箔の膜厚を引き算し、電極膜の体積抵抗率(Ω・cm)とした。
【0095】
<電極膜の剥離強度>
合材スラリーを、アプリケーターを用いて、70±10μmとなるようにアルミ箔上に塗工した後、電気オーブン中で120℃±5℃で25分間、塗膜を乾燥させた。その後、塗工方向を長軸として90mm×20mmの長方形に2本カットした。剥離強度の測定には卓上型引張試験機(東洋精機製作所社製、ストログラフE3)を用い、180度剥離試験法により評価した。具体的には、100mm×30mmサイズの両面テープ(No.5000NS、ニトムズ(株)製)をステンレス板上に貼り付け、作製した電池電極合材層を両面テープのもう一方の面に密着させ、一定速度(50mm/分)で下方から上方に引っ張りながら剥がし、このときの応力の平均値を剥離強度とした。
【0096】
<CNTの純化処理(塩素化(1))>
CNT(KUMHO PETROCHEMICAL社製、100T)をカーボン製の耐熱性容器に1000gを計量した。その後、CNTが入ったカーボン製の耐熱性容器を炉内に設置した。その後、炉内を1Torr(133Pa)以下に真空排気し、更にカーボン製ヒーターに通電を行い、炉の内部を1000℃まで昇温させた。次に、アルゴンガスを炉内に導入して、炉内の圧力が70Torr(9.33kPa)となるように調整し、その後毎分1Lのアルゴンガスを炉内に導入した。その後、アルゴンガスに加えて、塩素ガスを導入し、炉内の圧力が90Torr(11.99kPa)となるように調整し、当該圧力となった後は毎分0.3Lの塩素ガスを炉内に導入した。そのままの状態で、1時間保持した後に通電を停止し、さらにアルゴンガスと塩素ガスとの導入を停止して、真空冷却した。最後に、1Torr(133Pa)以下の圧力で真空冷却を12時間行った後、炉内が室温まで冷却されていることを確認したうえで大気圧になるまで窒素ガスを炉内に導入し、耐熱性容器を取り出し、純化CNT(A)を得た。
【0097】
<CNTの純化処理(塩素化(2))>
炉の内部温度を1050℃に変更した以外はCNTの純化処理(塩素化(1))と同様の方法により、純化CNT(B)を得た。
【0098】
<CNTの純化処理(塩素化(3))>
CNT(KUMHO PETROCHEMICAL社製、100T)を120Lの耐熱性容器に10kgを計量し、CNTが入った耐熱性容器を炉内に設置した。その後、炉内に窒素ガスを導入して、陽圧を保持しながら、炉内中の空気を排出した。炉内の酸素濃度が0.1%以下になった後、30時間かけて、1600℃まで加熱した。炉内温度を1600℃に保持しながら、塩素ガスを50L/分の速度で50時間導入した。その後、窒素ガスを50L/分で導入して陽圧を維持したまま冷却し、純化CNT(C)を得た。
【0099】
<CNTの純化処理(塩素化(4))>
CNT(KUMHO PETROCHEMICAL社製、100T)を120Lの耐熱性容器に10kgを計量し、CNTが入った耐熱性容器を炉内に設置した。その後、炉内に窒素ガスを導入して、陽圧を保持しながら、炉内中の空気を排出した。炉内の酸素濃度が0.1%以下になった後、30時間かけて、1800℃まで加熱した。炉内温度を1800℃に保持しながら、塩素ガスを50L/分の速度で50時間導入した。その後、窒素ガスを50L/分で導入して陽圧を維持したまま冷却し、純化CNT(D)を得た。
【0100】
<CNTの純化処理(塩素化(5))>
CNT(KUMHO PETROCHEMICAL社製、100T)を120Lの耐熱性容器に10kgを計量し、CNTが入った耐熱性容器を炉内に設置した。その後、炉内に窒素ガスを導入して、陽圧を保持しながら、炉内中の空気を排出した。炉内の酸素濃度が0.1%以下になった後、30時間かけて、2000℃まで加熱した。炉内温度を2000℃に保持しながら、塩素ガスを50L/分の速度で50時間導入した。その後、窒素ガスを50L/分で導入して陽圧を維持したまま冷却し、純化CNT(E)を得た。
【0101】
<CNTの純化処理(黒鉛化(1))>
CNT(KUMHO PETROCHEMICAL社製、100T)を7Lのカーボン製の耐熱性容器に1000gを計量し、CNTが入った耐熱性容器を炉内に設置した。その後、炉内に窒素ガスを導入して、陽圧を保持しながら、炉内中の空気を排出した。炉内の酸素濃度が0.1%以下になった後、炉内を2900℃まで30時間かけて昇温した後、2900℃を3時間保持した。その後、炉内の加熱を停止し、試料を冷却した後、純化CNT(F)を得た。
【0102】
表1に本実施例で使用したCNT、CNTの外径、半価幅、G/D比、CNTの体積抵抗率、CNT純度、CNT分散液を示す。
【0103】
(実施例1)
ガラス瓶(M−225、柏洋硝子株式会社製)に、純化CNT(A)を3.9部、分散剤(株式会社日本触媒社製、ポリビニルピロリドン K−30)を1.95部、NMPを124部およびジルコニアビーズ(ビーズ径1.25mmφ)200部を仕込み、レッドデビル社製ペイントコンディショナーを用いて6時間分散処理を行った後、ジルコニアビーズを分離して、CNT分散液(A)を得た。
【0104】
(実施例2〜5)、(比較例1〜13)
表1に掲載したCNTに変更した以外は実施例1と同様の方法により、CNT分散液(B)〜(R)を得た。CNT分散液(G)は粘度が高く、その後の評価をすることができなかった。
なお、実施例1、2および5のカーボンナノチューブ、およびそれを用いた分散液、合材スラリー、電極膜は参考例である。
【0105】
【表1】
【0106】
表2に実施例1〜5、比較例1〜13で作製したCNT分散液の評価結果を示す。粘度評価基準は以下の通りとした。6rpmにおけるCNT分散液の粘度が1000mPa・s以下を+++(優良)、1000mPa・sを超えて5000mPa・s以下を++(良)、5000mPa・sを超えて10000mPa・s以下を+(可)、10000mPa・sを超えるものを−(不可)とした。6rpmにおけるCNT分散液の粘度を60rpmにおけるCNT分散液の粘度で除したものをTI値とした。
【0107】
【表2】
【0108】
(実施例6)
容量150cm
3のプラスチック容器にPVDF(Solvey社製、Solef#5130)を8質量%溶解したNMPを4.7質量部計量した。その後、CNT分散液(A)0.5質量部を添加し、自転・公転ミキサー(シンキ―社製あわとり練太郎、ARE−310)を用いて、2000rpmで30秒間撹拌した。さらに、CNT分散液(A)を5.7質量部を添加し、再度自転・公転ミキサー(あわとり練太郎、ARE−310)を用いて、2000rpmで30秒間撹拌して、カーボンナノチューブ樹脂組成物(A)を得た。さらにその後、正極活物質(BASF戸田バッテリーマテリアルズ合同会社製、HED(登録商標)NCM−111 1100)を36.9質量部加えて、自転・公転ミキサー(あわとり練太郎、ARE−310)を用いて、2000rpmで2.5分間撹拌した。最後に、NMPを2.2質量部加えて、自転・公転ミキサー(あわとり練太郎、ARE−310)を用いて、2000rpmで2.5分間撹拌し、合材スラリー(A)を得た。
【0109】
(実施例7〜10)、(比較例13〜25)
表3に掲載したCNT分散液に変更した以外は実施例6と同様の方法により、合材スラリー(B)〜(R)を得た。
【0110】
【表3】
【0111】
(実施例11)
合材スラリー(A)を、アプリケーターを用いて、70±10μmとなるようにアルミ箔上に塗工した後、電気オーブン中で120℃±5℃で25分間、塗膜を乾燥させ、電極膜(A)を得た。
【0112】
(実施例12〜15)、(比較例26〜38)
表4に掲載した合材スラリーに変更した以外は実施例11と同様の方法により、電極膜(B)〜(R)を得た。
【0113】
【表4】
【0114】
表5に実施例11〜15、比較例26〜38で作製した合材スラリーの評価結果を示す。
評価基準は以下の通りとした。導電性評価は電極膜の体積抵抗率が10Ω・cm以下を++(優良)、10Ω・cmを超えて15Ω・cm以下を+(良)、15Ω・cmを超えるものを−(不可)とした。密着性評価は剥離強度が0.7N/cmを超えているものを+++(優良)、0.5N/cmを超えて0.7N/cm以下のものを++(良)、0.4N/cmを超えて、0.5N/cm以下のものを+(可)、0.4N/cm以下を−(不可)とした。
【0115】
【表5】
【0116】
(実施例16)
ガラス瓶(M−225、柏洋硝子株式会社製)に、純化CNT(A)を3.9部、分散剤(株式会社日本触媒社製、ポリビニルピロリドン K−30)を1.95部、イオン交換水を124部およびジルコニアビーズ(ビーズ径1.25mmφ)200部を仕込み、レッドデビル社製ペイントコンディショナーを用いて6時間分散処理を行った後、ジルコニアビーズを分離して、CNT分散液(S)を得た。
【0117】
表6に実施例16で作製したCNT分散液の評価結果を示す。粘度評価基準は以下の通りとした。6rpmにおけるCNT分散液の粘度が1000mPa・s以下を+++(優良)、1000mPa・sを超えて5000mPa・s以下を++(良)、5000mPa・sを超えて10000mPa・s以下を+(可)、10000mPa・sを超えるものを−(不可)とした。
【0118】
【表6】
【0119】
(実施例17)
容量150cm
3のプラスチック容器に増粘剤としてのエーテル化度0.45〜0.55のカルボキシメチルセルロース(第一工業製薬(株)製、セロゲンPL−15)2質量%水溶液7.4質量部と、結着剤としてのSBRエマルション40質量%溶液(日本ゼオン(株)製、品名:BM−400B)0.9質量部を計量した。その後、CNT分散液(S)0.5質量部を添加し、自転・公転ミキサー(シンキ―社製あわとり練太郎、ARE−310)を用いて、2000rpmで30秒間撹拌した。さらに、CNT分散液(S)を5.7質量部を添加し、再度自転・公転ミキサー(あわとり練太郎、ARE−310)を用いて、2000rpmで30秒間撹拌して、カーボンナノチューブ樹脂組成物(S)を得た。さらにその後、正極活物質(炭素被覆量5質量%のLiFePO
4)を36.9質量部加えて、自転・公転ミキサー(あわとり練太郎、ARE−310)を用いて、2000rpmで2.5分間撹拌した。最後に、イオン交換水を2.2質量部加えて、自転・公転ミキサー(あわとり練太郎、ARE−310)を用いて、2000rpmで2.5分間撹拌し、合材スラリー(S)を得た。
【0120】
(実施例18)
合材スラリー(S)を、アプリケーターを用いて、70±10μmとなるようにアルミ箔上に塗工した後、電気オーブン中で120℃±5℃で25分間、塗膜を乾燥させ、電極膜(S)を得た。
【0121】
表7に実施例18で作製した合材スラリーの評価結果を示す。評価基準は以下の通りとした。導電性評価は電極膜の体積抵抗率が10Ω・cm以下を++(優良)、10Ω・cmを超えて15Ω・cm以下を+(良)、15Ω・cmを超えるものを−(不可)とした。密着性評価は剥離強度が0.7N/cmを超えているものを+++(優良)、0.5N/cmを超えて0.7N/cm以下のものを++(良)、0.4N/cmを超えて、0.5N/cm以下のものを+(可)、0.4N/cm以下を−(不可)とした。
【0122】
【表7】
【0123】
表8に実施例1〜5、16および比較例1〜13に示したCNTまたその分散液および電極膜の評価結果を示す。CNTの評価は、CNT分散液の粘度評価、電極膜の導電性評価および密着性評価の+の数が6個以上であり、‐の数が0個のものを◎(優良)、3以上6個未満であり、‐の数が0個のものを○(良)、‐の数が1個以上のものを×(不可)とした。
【0124】
【表8】
【0125】
上記実施例では、半価幅が2°以上3°未満であり、G/D比がD比が1.5未満のCNTと、半価幅が2°未満のCNTを用いた。実施例では、比較例に比べて導電性の高い電極膜が得られた。また、電極膜の密着性やCNT分散液の粘度も低いことから、本発明は従来のCNT分散液では実現しがたい導電性および密着性を有する電極膜を提供できることが明らかとなった。
【0126】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【課題】密着性および導電性の高い電極膜を得るためのカーボンナノチューブ、カーボンナノチューブ分散液およびカーボンナノチューブ樹脂組成物を提供することである。さらに詳しくは、高い分散性を有するカーボンナノチューブ分散液、カーボンナノチューブ樹脂組成物および合材スラリーを提供すること。