(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6586208
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】屋外配管用ケーブル保護管
(51)【国際特許分類】
F16L 11/115 20060101AFI20190919BHJP
H02G 9/06 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
F16L11/115
H02G9/06
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-159580(P2018-159580)
(22)【出願日】2018年8月28日
【審査請求日】2019年2月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000221502
【氏名又は名称】東拓工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155491
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 雅元
(74)【代理人】
【識別番号】100167988
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】松下 史和
(72)【発明者】
【氏名】山本 耕平
【審査官】
藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭55−066278(JP,U)
【文献】
実開平01−078784(JP,U)
【文献】
特開2001−254876(JP,A)
【文献】
特開2004−065395(JP,A)
【文献】
特開平7−317969(JP,A)
【文献】
特開平8−320090(JP,A)
【文献】
実公平6−48226(JP,Y2)
【文献】
特開平11−22871(JP,A)
【文献】
特開2015−45379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 9/00−11/26
H02G 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内外面に螺旋状の凹凸が形成された合成樹脂製の管本体と、
前記管本体の凸部の内周面に螺旋状に固定された線状の補強材とを備えており、
前記補強材は、管本体の凸部の空間内に設けられており、
前記補強材が、引張強さが250N/mm2〜600N/mm2であるなまし鉄線と、そのなまし鉄線を被覆する合成樹脂製の被覆層とからなる断面円形のものであり、
前記補強材の1/3〜4/5の表面積を前記管本体の凸部の内周面に接着して凸部内に空間を残すように固定し、
JISC3653(2004)の付属書1における圧縮強度試験の撓み率が、3.5以下である、
屋外配管用ケーブル保護管。
【請求項2】
内外面に螺旋状の凹凸が形成された合成樹脂製の管本体と、
前記管本体の凸部の内周面に螺旋状に固定された線状の補強材とを備えており、
前記補強材は、管本体の凸部の空間内に設けられており、
前記補強材が、引張強さが250N/mm2〜600N/mm2であるなまし鉄線と、そのなまし鉄線を被覆する合成樹脂製の被覆層とからなる断面円形のものであり、
前記補強材の1/3〜4/5の表面積を前記管本体の凸部の内周面に接着して凸部内に空間を残すように固定し、
前記管本体と補強材との接着強度が100N以上、1000N以下である、
屋外配管用ケーブル保護管。
【請求項3】
内外面に螺旋状の凹凸が形成された合成樹脂製の管本体と、
前記管本体の凸部の内周面に螺旋状に固定された線状の補強材とを備えており、
前記補強材は、管本体の凸部の空間内に設けられており、
前記補強材が、引張強さが250N/mm2〜600N/mm2であるなまし鉄線と、そのなまし鉄線を被覆する合成樹脂製の被覆層とからなる断面円形のものであり、
前記補強材の1/3〜4/5の表面積を前記管本体の凸部の内周面に接着して凸部内に空間を残すように固定し、
補強材を備えていないケーブル保護管の垂れ下がり量の基準値に対して、その垂れ下がり量の比率の下限が0.5倍以上、3.5倍以下である、
屋外配管用ケーブル保護管。
【請求項4】
補強材を備えていないケーブル保護管の垂れ下がり量の基準値に対して、その垂れ下がり量の比率の下限が1.09倍以上、3.5倍以下である、
請求項3記載の屋外配管用ケーブル保護管。
【請求項5】
前記管本体が難燃性ポリエチレン製であり、
前記補強材の被覆層がポリエチレン製であり、
前記補強材の1/2〜4/5の表面積を前記管本体の凸部の内周面に接着して凸部内に空間を残すように固定した、
請求項1から4いずれか記載の屋外配管用ケーブル保護管。
【請求項6】
前記管本体は、外径が20mm〜100mmであり、内径が15mm〜80mmであり、内径/外径が0.60〜0.95であり、
前記補強材の径が1.5mm〜5.0mmであり、
前記補強材のピッチが、5mm〜30mmである、
請求項1から5いずれか記載の屋外配管用ケーブル保護管。
【請求項7】
前記なまし鉄線の径が1.3mm〜3.0mmである、
請求項1から6いずれか記載の屋外配管用ケーブル保護管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外配管用ケーブル保護管に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設される電線・電話線等のケーブルを保護する管として、例えば特許文献1に示すように、螺旋状に凹凸が形成された合成樹脂製の地中埋設用ケーブル保護管が知られている。この地中埋設用ケーブル保護管は、地中に埋設するため、非常に大きな土圧に耐える必要がある一方、複雑な配管構造を可能とするべく可撓性が求められている。さらに、埋設した後は、半永久的に配設されるため、耐久性も求められている。
また、比較的大径であっても、耐圧性と可撓性の性能を満たすべく、例えば、特許文献2の
図3に示すように、帯状の補強板を螺旋状に埋め込んだケーブル保護管が知られている。また特許文献3の
図5に示すように、硬鋼線、ピアノ線などの硬線を波形管本体の内面の凹部に螺旋状に設けることも知られている。
【0003】
一方、構造物の建設や補修などの作業場において、電気等を繋ぐために仮設ケーブルが設置される。このような仮設ケーブルは、作業現場の近くの空き地等の屋外を通して配設される。このような仮設ケーブルは、一時的なものであるため、安価な補強無しの円筒状のケーブル保護管で保護されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−148577号公報
【特許文献2】特開2005−180609号公報
【特許文献3】特開2008−303970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような空き地の管理として草刈機で雑草の整備が行われる。このような整備において、補強無しの円筒状のケーブル保護管は、草刈機と接触しただけで簡単に切断され、中の仮設ケーブルが損傷するという問題があった。
一方、このような仮設ケーブルに特許文献2、3のような補強有りの地中埋設用ケーブル保護管を使用することも考えられる。しかし、これら補強有りの地中埋設用ケーブル保護管は逆に強度が高すぎて、現場において、長さを調節するために切断するのが困難である。また、現場の車両等や保管された鉄筋等を縫うようにして配管されるため、可撓性も地中に埋設するとき以上に求められる。このように現場の作業性という面で問題がある。さらに、小径のケーブル保護管は、帯状の補強板や硬鋼線を小径に巻回しなければならず、生産性が低下するという問題もある。そして、工事作業中の一時の使用のためだけに、地中埋設用ケーブルを使用するのはコスト高でもある。
このように本発明は、作業性および生産性の高い屋外配管用ケーブル保護管を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の屋外配管用ケーブル保護管は、内外面に螺旋状の凹凸が形成された合成樹脂製の管本体と、前記管本体の凸部の内周面に螺旋状に固定された線状の補強材とを備えており、前記補強材が金属線を有していることを特徴としている。
【0007】
本発明の屋外配管用ケーブル保護管は、筒本体の凸部の内周面に金属線が固定されているため、草刈機の鋸刃が接触したとしても、容易に切断されず、挿通した電線等のケーブルを保護できる。詳しくは、草刈機の鋸刃がケーブル保護管と接触したときに、金属線が鋸刃を受け、その鋸刃の衝撃をケーブル保護管全体の弾性力で押し返す。そのため、金属線が完全に切断される前に、草刈機の使用者へそのケーブル保護管の存在を示す感触を与えることができる。
また本発明の屋外配管用ケーブル保護管は、金属線を管本体の凸部の内面の空間に設けているため、草刈機の鋸刃がケーブル保護管と接触したとき、草刈機の鋸刃と、収容された仮設ケーブルとの間に所定の空間を確保することができる。そして、可撓性も高い。
【0008】
本発明の屋外配管用ケーブル保護管であって、前記補強材が、金属線と、その金属線を被覆する合成樹脂製の被覆層とを備えたものが好ましい。この場合、管本体が合成樹脂製であるため、補強材を管本体に固定させやすい。
【0009】
本発明の屋外配管用ケーブル保護管であって、金属線の引張強さが250N/mm
2〜1300N/mm
2であるものが好ましい。
ここで「引張強さ」とは、JISZ2241(2011)による金属材料引張試験方法において、試料の降伏が終わるまでの最大試験力(N)を試料の断面積(mm
2)で除した値である。
このように補強材の金属線の引張強さを250N/mm
2〜1300N/mm
2とする場合、長さ調整などの切断が比較的簡単にでき、かつ、可撓性も高く、現場における作業性が高い。そして、比較的小さい径のケーブル保護管であっても生産性が落ちない。
【0010】
本発明の屋外配管用ケーブル保護管であって、管本体と補強材との接着強度が100N以上であるものが好ましい。
ここで「接着強度」とは、長さ150mmのケーブル保護管の一端を固定し、ケーブル保護管の他端から飛び出させた補強材の端部を保持し、その保持した補強材の自由端をケーブル保護管の管軸方向に引っ張ったとき、補強材が管本体から引き剥がれるときの力の大きさ(N)をいう。
接着強度が小さいと、草刈機の鋸刃がケーブル保護管に接触し、ケーブル保護管の一部が損傷したとき、補強材が管本体から外れるおそれがある。
【0011】
本発明の屋外配管用ケーブル保護管であって、前記管本体に対して前記補強材の面積の1/3〜4/5を埋設して固定したものが好ましい。この場合、管本体と補強材との間の接着面積を大きくすることができ、高い接着強度を確保できる。
【0012】
本発明の屋外配管用ケーブル保護管であって、外径が100mm以下であるものが好ましい。現場において、このサイズの要望が最も高い。
本発明の屋外配管用ケーブル保護管であって、補強材の断面が円形であるものが好ましい。この場合、補強材を安定して螺旋状に巻回させることができ、生産性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の屋外配管用ケーブル保護管の一実施形態を示す一部断面側面図である。
【
図3】可撓性を示す垂れ下がり量の試験方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1の屋外配管用ケーブル保護管10は、内外面に螺旋状の凹凸が形成された合成樹脂製の管本体20と、管本体20の凸部の内周面に螺旋状に固定された線状の補強材30とを備えている。
屋外配管とは、屋外に固定して、または、固定しないで配管することをいう。例えば、仮設ケーブル等を作業現場の近くの空き地等の屋外への配管が挙げられる。
工事現場用の仮設ケーブルとしては、複数のケーブルを束ねたものの外接円の外径が5mm〜25mmのものが挙げられる。
【0015】
ケーブル保護管10は、管本体20の内周面に補強材30が固定されている。
その接着強度の下限は、100N以上、好ましくは、180N以上、特に好ましくは250N以上である。接着強度が100Nより小さい場合、ケーブル保護管10に草刈機の刃が接触し、管本体20の一部が損傷したとき、補強材30が管本体20から外れてしまうおそれがある。つまり、ケーブル保護管10は、自重により若干長手方向に弾性変形しており、螺旋状に設けられた補強材30も若干長手方向に引っ張られた弾性変形した状態で管本体20に固定されている。そのため、管本体20との接着強度が十分でないと、収容された仮設ケーブルに巻きつくように縮径しながら管本体20から外れ、仮設ケーブルを損傷させるおそれがある。なお、接着強度の上限としては、高い方が好ましいが、1000N以下である。
接着強度とは、
図2に示すように、長さ150mmのケーブル保護管10を準備し、そのケーブル保護管の一端10aを固定し、ケーブル保護管の他端10bから飛び出させた補強材30の端部を保持具41等で保持して、その保持した補強材30の端部をケーブル保護管10の管軸方向に引っ張ったとき、補強材30が管本体20から引き剥がれるときの力の大きさ(N)をいう。
そのような接着強度を満たすものとしては、例えば、補強材30の1/3以上、好ましくは2/5以上、特に好ましくは1/2以上の表面積が管本体20と接着または溶着しているケーブル保護管10が挙げられる。なお、接着面積は大きい方が好ましいが、凸部内面の空間を減少させ、ケーブル保護管10の可撓性が低下するおそれがあるため、補強材30の表面積の4/5以下とするのが好ましい。
【0016】
ケーブル保護管10の可撓性としては、補強材を備えていないケーブル保護管の垂れ下がり量の基準値175mmに対して、その垂れ下がり量の比率の下限が0.50倍以上、1.09倍以上、特に1.2倍以上であることが好ましい。垂れ下がり量が0.50倍より小さい場合、十分な可撓性を得ることができない。一方、その上限は、耐圧性が低くなることから3.5倍以下が好ましい。
垂れ下がり量は、
図3に示すように、1100mmのケーブル保護管10を準備し、700mm(L)のケーブル保護管が実験台から突出するようにケーブル保護管の一端10aを実験台に固定し、実験台から突出した他端10bから50mm(M)の部位1kgの錘(S)を設け、30秒経過後におけるケーブル保護管の撓み量をいう。
【0017】
ケーブル保護管10の耐圧性は、JISC3653(2004)の付属書1における圧縮強度試験の撓み率が3.5%以下、好ましくは2.5%以下、特に好ましくは2.0%以下である。撓み率を3.5%以下とすることにより、空き地等において、作業者等に踏まれても潰れることがない。
【0018】
図1に戻って、管本体20は、外周面20aおよび内周面20bに螺旋状の凹凸が現れる凸部21および凹部22を有している。なお、凸部21および凹部22は、外周面20aから見た状態をいう。
【0019】
管本体20の外径Xは、20mm〜100mm以下、好ましくは30mm〜90mm以下、特に好ましくは40m〜70mmである。外径Xが100mmより大きい場合、工事現場用の仮設ケーブルの保護管として大きくなりすぎ、コスト高となる。なお、補強板や引張強さが1720N/mm
2以上の硬鋼線、ピアノ線などの硬線によって補強される従来公知の地中埋設用ケーブル保護管は、外径Xを100mmより小さくすると可撓性が悪くなる。また、補強板や硬線の湾曲度が大きくなるため、加工が困難になり、生産性も低くなる。一方、外径Xが20mmより小さい場合、仮設ケーブルの保護管としては小さすぎる。
管本体20の内径Yは、15mm〜80mm、好ましくは25mm〜65mm以上、特に好ましくは35mm〜55mmである。内径Yが15mmより小さい場合、工事現場用の仮設ケーブルを挿入しにくくなる。特に、内周面20bに凹凸が形成されているため挿入しにくくなる。一方、内径Yが80mmより大きいと、挿入する仮設ケーブルに対して無駄なスペースが多くなり、コスト高となる。
なお、管本体20の内径Y/外径Xは、0.60〜0.95、好ましくは0.70〜0.90、特に好ましくは0.75〜0.85である。管本体20の内径Y/外径Xが0.95より大きいと、凸部の高さを十分に取ることができず、ケーブル保護管10の外周面20aと、収納される仮設ケーブルの距離が近くなり、ケーブル保護管10が草刈機の鋸刃等と接触したとき、鋸刃が仮設ケーブルに届きやすくなる。管本体20の内径Y/外径Xが0.60より小さいと、コスト高となる。
【0020】
管本体20の凸部21および凹部22のピッチPは、5mm〜30mm、好ましくは8mm〜20mm以下、特に好ましくは10mm〜15mm、最も好ましくは13mm〜14mmである。ピッチが30mmより大きい場合、補強材の密度が低くなり、草刈機と接触したとき、切断されやすくなる。一方、ピッチが5mmより小さいと、ケーブル保護管として重くなり、取り扱いが煩雑になる。なお、ピッチは、管本体の外径に対して1/3〜1/5とするのが好ましい。
管本体20の厚みWは、1.0mm〜2.5mm、好ましくは1.1mm〜2.2mm、特に好ましくは1.2mm〜2.0mmである。厚みWが1.0mmより小さい場合、腐食しやすくなり、耐久性が弱くなる。また、補強材30の被覆層32との熱融着による接着力を十分に得られなくなる。一方、厚みWが2.5mmより大きい場合、コスト高となる。
【0021】
管本体20は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、塩化ビニルなどの合成樹脂から成形される。その中でもポリエチレンが好ましく、特に難燃性ポリエチレンが好ましい。
【0022】
補強材30は、金属線31と、その周囲を覆う被覆層32とを備えた断面円形の線状体である。断面円形とすることにより、後述する製造方法において、補強材30を安定して螺旋状に巻回させることができる。補強材30の径としては、1.5〜5.0mm、好ましくは1.7〜4.0mm、特に好ましくは2.0〜3.0mmである。補強材30の径が1.5mmより小さいと、管本体との接着面積が小さくなり、接着強度を十分に取ることができない。補強材30の径が5.0mmより大きいと、凸部内面の空間を減少させ、ケーブル保護管としての可撓性を低下させる。
【0023】
金属線31としては、軟鋼線、硬鋼線、鉄線などが挙げられる。特に、冷間加工後、軟化のために焼きなまししたなまし鉄線が好ましい。
また、このような金属線31において、引張強さが250N/mm
2〜1300N/mm
2、250N/mm
2〜1000N/mm
2、特に250N/mm
2〜600N/mm
2であるものが好ましい。金属線の引張強さが1300N/mm
2より大きい場合、現場において長さ調整等の目的でのケーブル保護管の切断が困難になり、また、生産性も低下する。一方、金属線の引張強さが250N/mm
2より小さい場合、草刈機等が接触したとき、切断されやすくなる。
なお、引張強さは、JIS Z 2241(2011)による金属材料引張試験方法において、試料の降伏が終わるまでの最大試験力(N)を試料の断面積(mm
2)で除した値である。
【0024】
上述の引張強さを持つ金属線31の径は、1.3mm〜3.0mm、好ましくは1.5mm〜2.5mm、特に好ましくは1.7mm〜2.0mmである。径が1.3mmより小さい場合、草刈機の鋸刃に切断されやすくなる。一方、径が3.0mmより大きい場合、ケーブル保護管の重量が大きくなり、取り扱いが煩雑になる。
【0025】
被覆層32は、厚みが0.20〜0.70mm、好ましくは0.25〜0.60mm、特に好ましくは0.30〜0.50mmである。厚みが0.20mmより小さい場合、管本体20との固着面積を十分に確保することができず、十分な接着強度を得ることができない。厚みが0.7mmより大きい場合、コスト高となる。
被覆層32としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、塩化ビニルなどの合成樹脂が挙げられる。管本体20と同質の合成樹脂が好ましい。例えば、管本体20として難燃性ポリエチレンを用いる場合、被覆層32としてはポリエチレンが好ましい。
【0026】
このようなケーブル保護管10は、次のようにして製造される。初めに、線状の補強材30を螺旋状に巻回する。次いで、凸部を含む帯状体を押出成形により成形し、この帯状体の凸部の内面に補強材30が当接するように、螺旋状に巻かれた補強材30と同じピッチで螺旋状に巻回する。その後、補強材30と帯状体の凸部の内面、および、管軸方向に隣接する帯状体の側縁部同士を熱融着することにより、ケーブル保護管10を製造する。
【0027】
ケーブル保護管10は、管の外側(凸部の内周面)に金属線31を有する線状の補強材30を備えているため、ケーブル保護管10を空き地等の屋外に配管させ、草刈機の鋸刃が接触したとしても、挿通した電線等のケーブルを保護できる。
つまり、弾性を有する合成樹脂製の管本体20に補強材30が設けられているため、草刈機の鋸刃がケーブル保護管10と接触したときに、補強材30が鋸刃を受け、その衝撃をケーブル保護管全体の弾性力で押し返す。そのため、補強材30が完全に切断される前に、草刈機の使用者にそのケーブル保護管10の存在を示す感触を与えることができる。たとえ、ケーブル保護管10の一部に損傷が見られたとしても、鋸刃がケーブル保護管10の内部に侵入することを防ぐ。また、草刈機の使用者は、押し返された感触によってケーブル保護管10の存在に気付くことができ、草刈機を停止させる、あるいは、ケーブル保護管を避けて整備をすることができる。
またケーブル保護管10は、補強材30を管本体20の凸部の内面の空間に設けているため、草刈機の鋸刃がケーブル保護管10と接触したとき、草刈機の鋸刃と、収容された仮設ケーブルとの間に所定の空間を確保することができる。また、管本体20の凹凸が維持されるため、可撓性を保つことができる。
【0028】
本発明のケーブル保護管は、上記実施形態に限定されるものではない。
図1のケーブル保護管10では、金属線31と、被覆層32とを備えた補強材30を用いているが、本発明の補強材は金属線を含んでいれば特に限定されない。例えば、本発明の補強材を金属線31のみから構成してもよい。その場合も、金属線31の引張強さは上述した範囲に含まれることが好ましい。そして、金属線31のみから構成される場合、金属線31をそのまま管本体20に接着剤等で固定させる。
また、
図1のケーブル保護管10では、補強材30の被覆層32を管本体20と熱融着あるいは溶着させているが、接着剤を用いて補強材30の被覆層32と管本体20とを固定してもよい。その接着強度は、実質的に
図1のケーブル保護管10と同じにするのが好ましい。
【実施例】
【0029】
[実施例1]
難燃性ポリエチレン製であって、外径が68mm、内径が49mm、ピッチが15.5mm、厚さが1.8mmである管本体20と、径が1.8mmのなまし鉄線(金属線31)および厚さが0.4mmのポリエチレン製の被覆層32からなる補強材30とを備えたケーブル保護管10であって、補強材30の1/2の表面積を管本体20と接着させて、補強材30を管本体20に固定したケーブル保護管10を製造した。これを実施例1とする。
[実施例2]
難燃性ポリエチレン製であって、外径が56mm、内径が42mm、ピッチが14.0mm、厚さが1.4mmである管本体20と、径が1.8mmのなまし鉄線(金属線31)および厚さが0.4mmのポリエチレン製の被覆層32からなる補強材30とを備えたケーブル保護管10であって、補強材30の1/2の表面積を管本体20と接着させて、補強材30を管本体20に固定したケーブル保護管10を製造した。これを実施例2とする。
[実施例3]
難燃性ポリエチレン製であって、外径が61mm、内径が49mm、ピッチが16.4mm、厚さが1.5mmである管本体20と、径が1.8mmのなまし鉄線(金属線31)および厚さが0.4mmのポリエチレン製の被覆層32からなる補強材30とを備えたケーブル保護管10であって、補強材30の1/4の表面積を管本体20と接着させて、補強材30を管本体20に固定したケーブル保護管10を製造した。これを実施例3とする。
[実施例4]
難燃性ポリエチレン製であって、外径が64mm、内径が48mm、ピッチが14.6mm、厚みが1.3mmである管本体20と、径が0.96mmの硬鋼線および厚さが0.15mmのポリエチレン製の被覆層32からなる補強材30とを備えたケーブル保護管10であって、補強材30の1/4の表面積を管本体20と熱融着させて、補強材30を管本体20に固定したケーブル保護管10を製造した。
この実施例1〜4の物性を次の表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
[草刈鋸刃接触試験]
図4に示すように、実施例1〜4のケーブル保護管10を固定し、そのケーブル保護管10に対して円盤状の草刈機の鋸刃が水平とし、鋸刃を回転させながらケーブル保護管10に接触させた。このときの鋸刃による補強材の切断、および、補強材30の固定状態を観察した。その結果を表2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
実施例1〜4のケーブル保護管10は、いずれも草刈機の鋸刃を押し返し、補強材30の切断は見られなかった。
一方、実施例1、2のケーブル保護管10は、草刈機の鋸刃を押し返した後、補強材30は管本体20にしっかり固定されていた。しかし、接着強度が低い実施例3、4は、草刈機の鋸刃を押し返した後、補強材30は管本体20から離れ、管本体20の内部で収縮した。
【符号の説明】
【0034】
10 ケーブル保護管
10a ケーブル保護管の一端
10b ケーブル保護管の他端
20 管本体
20a 外周面
20b 内周面
21 凸部
22 凹部
30 補強材
31 金属線
32 被覆層
41 保持具
P ピッチ
W 厚み
X 外径
Y 内径
【要約】
【課題】作業性および生産性の高い地上配管用ケーブル保護管を提供する。
【解決手段】螺旋状の凹凸が形成された合成樹脂製の管本体20と、管本体20の凸部の内周面に螺旋状に固定された線状の補強材30とを備えた屋外配管用ケーブル保護管10。補強材30は、金属線31と、その周囲を覆う被覆層32とを備えた断面円形の線状体である。
【選択図】
図1