特許第6586214号(P6586214)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6586214
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/10 20060101AFI20190919BHJP
   F02M 69/54 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   F02M37/10 Z
   F02M37/10 G
   F02M69/54
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-207845(P2018-207845)
(22)【出願日】2018年11月5日
【審査請求日】2019年7月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】内藤 敏彦
【審査官】 首藤 崇聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−303933(JP,A)
【文献】 特開2010−77823(JP,A)
【文献】 特開2017−106361(JP,A)
【文献】 特開2015−190424(JP,A)
【文献】 特開2004−137937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/10
F02M 69/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクに配置され、該燃料タンク内の燃料を吸入して外部へと吐出する燃料ポンプと、該燃料ポンプの吐出口が接続される燃料通路を有したハウジングと、前記ハウジングの内部に設けられ前記燃料通路内で余剰となった燃料を外部へと排出することで前記燃料の圧力を調整するレギュレータとを備えた燃料供給装置において、
前記ハウジングは、前記レギュレータにおける弁筒の少なくとも一部が圧入され保持される圧入保持部と、該圧入保持部に対して前記燃料通路側に隣接して設けられた挿入保持部とを備え、
前記弁筒には、前記圧入保持部に圧入される第1弁筒部と、前記挿入保持部に対してシール部材を間にして挿入され、且つ、前記挿入保持部との間に間隙を有した第2弁筒部とを備え、
前記挿入保持部には、前記シール部材と前記圧入保持部との間となる位置に前記ハウジングの内部と外部とを連通するリーク孔が形成される、燃料供給装置。
【請求項2】
請求項1記載の燃料供給装置において、
前記圧入保持部の外周側にリブが立設される、燃料供給装置。
【請求項3】
請求項2記載の燃料供給装置において、
前記リーク孔は複数のリブの間に形成される、燃料供給装置。
【請求項4】
請求項2又は3記載の燃料供給装置において、
前記リブは、前記ハウジングの延在方向に沿って互いに離間して設けられる第1リブ部と、
前記延在方向に沿って設けられ、複数の第1リブ部を互いに接続する第2リブ部と、
を備える、燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の燃料タンクから内燃機関へと燃料を供給するための燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、鞍乗り型車両に搭載された燃料タンク内の燃料を燃料ポンプで吸い込んで加圧した後、吐出することで内燃機関へと供給する燃料供給装置を提案している(特許文献1参照)。
【0003】
この燃料供給装置は、取り付けベース部材と、該取り付けベース部材に装着され燃料タンク内の燃料を吸い上げて燃料取り出し管へと送出する電動ポンプと、余剰となった燃料を燃料タンク側へと排出するレギュレータ弁とを備え、前記取り付けベース部材には、前記燃料取り出し管と連通し前記レギュレータ弁の弁筒を嵌合保持するガイド孔と、該ガイド孔に連なり前記弁筒の一部が圧入される保持筒とを有している。
【0004】
この弁筒は、シール部材を介してガイド孔に嵌合するガイド筒部と、保持筒の内周面に圧入される圧入筒部とを備え、前記保持筒の内周面には、ガイド筒部の外周面との間に軸方向に沿って延在し外部へと開放されたリーク溝が設けられている。
【0005】
そして、上述した燃料供給装置の燃料漏れ検査を行う際、シール部材が未装着の状態では、レギュレータ弁の入口側の燃料がリーク溝を通じて外部へと流出することで前記シール部材の装着忘れを検知可能としている。
【0006】
この構成では、圧入筒部の外周面と保持筒の内周面との一部がリーク溝によって非接触となるため、周方向に沿った全周で接触させて保持筒の剛性をさらに高め、レギュレータ弁の弁体が開閉した際に生じる振動に伴った作動音を低減したいという要請がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−235942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記の提案に関連してなされたものであり、シール部材の装着忘れを確実に検知すると同時に作動音の低減を図ることが可能な燃料供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明の態様は、燃料タンクに配置され、燃料タンク内の燃料を吸入して外部へと吐出する燃料ポンプと、燃料ポンプの吐出口が接続される燃料通路を有したハウジングと、ハウジングの内部に設けられ燃料通路内で余剰となった燃料を外部へと排出することで燃料の圧力を調整するレギュレータとを備えた燃料供給装置において、
ハウジングは、レギュレータにおける弁筒の少なくとも一部が圧入され保持される圧入保持部と、圧入保持部に対して燃料通路側に隣接して設けられた挿入保持部とを備え、
弁筒には、圧入保持部に圧入される第1弁筒部と、挿入保持部に対してシール部材を間にして挿入され、且つ、挿入保持部との間に間隙を有した第2弁筒部とを備え、
挿入保持部には、シール部材と圧入保持部との間となる位置にハウジングの内部と外部とを連通するリーク孔が形成される。
【0010】
本発明によれば、燃料供給装置は、燃料通路内で余剰となった燃料を外部へと排出して燃料の圧力を調整するレギュレータをハウジング内に備え、このハウジングには、レギュレータにおける弁筒の少なくとも一部が圧入され保持される圧入保持部と、圧入保持部に対して燃料通路側に隣接し弁筒との間に間隙を有した挿入保持部とを備えている。一方、弁筒には、圧入保持部に圧入される第1弁筒部と、挿入保持部に対してシール部材を間にして挿入される第2弁筒部とを備え、ハウジングの内部と外部とを連通するリーク孔が、挿入保持部においてシール部材と圧入保持部との間となる位置に設けられている。
【0011】
従って、燃料供給装置の組付けが完了した後に燃料の漏れを確認する際、シール部材を誤って装着し忘れている場合には、燃料通路側から供給された燃料がハウジングの挿入保持部と第2弁筒部との間の間隙を通じてリーク孔から外部へと流出することで、シール部材の装着忘れを容易且つ確実に検知することが可能となる。また、弁筒の第1弁筒部をハウジングの圧入保持部に対して全周で圧入することができるため、リーク溝によって全周での圧入が行われず一部が非接触であった従来の燃料供給装置と比較し、ハウジングの剛性を高めることができ、それに伴って、レギュレータの開閉動作時に生じる振動に起因した作動音を効果的に低減することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0013】
すなわち、組み付けの完了した燃料供給装置に対して燃料漏れを確認する際、誤ってシール部材を装着し忘れている場合でも、燃料通路側から供給された燃料がハウジングの挿入保持部と第2弁筒部との間の間隙を通じてリーク孔から外部へと流出することで、シール部材の装着忘れを容易且つ確実に検知することができる。また、弁筒の第1弁筒部をハウジングの圧入保持部に対して全周で圧入することで、リーク溝によって周方向の一部が非接触であった従来の燃料供給装置と比較し、ハウジングの剛性をより高めることができ、それに伴って、レギュレータの開閉動作時における作動音の低減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態に係る燃料供給装置の全体正面図である。
図2図2Aは、図1に示す燃料供給装置の収納部近傍を示す拡大正面図であり、図2Bは、図2Aに示す収納部近傍の外観斜視図である。
図3図3Aは、図2AのIIIA−IIIA線に沿った断面図であり、図3Bは、図3Aにおいてシール部材が装着されていない状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る燃料供給装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。図1において、参照符号10は、本発明の実施の形態に係る燃料供給装置を示す。
【0016】
この燃料供給装置10は、例えば、鞍乗り型車両である自動二輪車の燃料タンク12に搭載され、図1に示されるように、前記燃料タンク12の底壁12aに固定される蓋部材14と、該蓋部材14に設けられ燃料ポンプ16を含んだポンプモジュール18と、該ポンプモジュール18の端部に接続されるフィルタ20とを含む。
【0017】
蓋部材14は、例えば、燃料タンク12のタンク開口を覆うベース部22と、該ベース部22の上面から上方へと突出したホルダ部24と、該ホルダ部24と隣接した端子接続部26と、前記ベース部22の下面側に設けられたコネクタ部28及び吐出部30とを含む。
【0018】
ベース部22は、例えば、一定厚さの板状に形成され、車両の前後方向となる長手方向(矢印A、B方向)に沿って長尺な長円状に形成され、その上面が燃料タンク12の底壁12aの外側に当接するように設けられる。
【0019】
端子接続部26には、後述する燃料ポンプ16に接続されたリード線32が電気的に接続され、ベース部22を挟んでコネクタ部28と接続されている。そして、図示しないコントローラに接続されたカプラ(図示せず)がコネクタ部28へと接続されることで、燃料ポンプ16のリード線32及び端子接続部26に対して電気的に接続される。
【0020】
吐出部30は、ベース部22の下面において、該ベース部22に対して略直交するように突出して図示しない燃料チューブが接続される。
【0021】
そして、蓋部材14は、そのホルダ部24及び端子接続部26が燃料タンク12内に収納され、前記ベース部22、前記コネクタ部28及び吐出部30が前記燃料タンク12の外側となるように設けられ、ベース部22の外縁部が燃料タンク12の底壁12aに当接してタンク開口を閉塞した状態で図示しない固定ボルトによって固定される。
【0022】
ポンプモジュール18は、燃料タンク12の内部に収納され、その一端部が蓋部材14に対して保持されるハウジング34と、該ハウジング34の他端部に接続されるエンドブロック36と、前記ハウジング34に収納される燃料ポンプ16とを含み、前記ハウジング34と前記エンドブロック36とがスナップフィット機構(図示せず)によって互いに長手方向(矢印A、B方向)に連結される。
【0023】
ハウジング34は、例えば、樹脂製材料から形成され、長手方向(矢印A、B方向)に沿って互いに平行に延在する第1及び第2保持部38、40を有し、前記第1保持部38には燃料ポンプ16がベース部22と平行に保持され、第2保持部40は、第1保持部38の上部に設けられプレッシャレギュレータ(レギュレータ)42が収納されている。そして、ハウジング34は、第1保持部38の一端部が、蓋部材14と略平行となるように該蓋部材14のホルダ部24に対して接続されている。
【0024】
第1保持部38の内部には、長手方向(矢印A、B方向)に沿って第1燃料通路44が形成され、その一端部が後述する第3燃料通路100と連通している。
【0025】
燃料ポンプ16は、例えば、ブラシレスモータが採用され、その軸線が蓋部材14のベース部22と略平行となるようにハウジング34の第1保持部38に対して略平行に保持される。また、燃料ポンプ16は、燃料を供給する吸入口16a側がエンドブロック36の吸入通路102と接続され、前記燃料を吐出する吐出口16b側がハウジング34の第1燃料通路44と接続されている。
【0026】
そして、燃料ポンプ16は、図示しないモータ部に接続された複数のリード線32が外部へと取り出されて蓋部材14の端子接続部26に対して電気的に接続され、図示しないコントローラからコネクタ部28及び端子接続部26へと入力される制御信号に基づいて駆動制御される。
【0027】
第2保持部40は、その内部に長手方向(矢印A、B方向)に沿って延在する第2燃料通路46を有し、この第2燃料通路46の一端部が、第1及び第2保持部38、40の一端部側において上下方向に延在する第3燃料通路100と接続され連通している。
【0028】
また、図1図3Bに示されるように、第2保持部40の他端部にはプレッシャレギュレータ42の収納される収納部48が設けられる。
【0029】
この収納部48は、長手方向(矢印A、B方向)に沿って延在する略円筒状に形成され、第2燃料通路46側(矢印B方向)に形成されて接続される第1保持筒部(挿入保持部)50と、該第1保持筒部50と隣接して径方向外側へと拡径した第2保持筒部52と、該第2保持筒部52に隣接した他端部側(矢印A方向)に形成される加締部54とを有し、これらの内部が第2燃料通路46と連通しプレッシャレギュレータ42の収納される収納室56となる。
【0030】
第1保持筒部50の内周面は、第2燃料通路46に対して段付状となるように拡径し略一定径で延在している。そして、第1保持筒部50の内周面は、他端部側に向かって徐々に拡径し、第2保持筒部52の内周面へと接続されている。この第2保持筒部52の内周面は、長手方向に沿って略一定径で形成されている。また、加締部54の内周面は、第2保持筒部52の内周面に対してさらに若干だけ大径となるように形成される。
【0031】
一方、収納部48の外周面は、第2保持筒部52が最も径方向外側となり、第1保持筒部50と加締部54とが略同一径となるように形成されている。
【0032】
この第2保持筒部52の外周面には、径方向外側に向かって環状に突出した複数の第1リブ(第1リブ部)60と、複数の第1リブ60を互いに接続する複数の第2リブ(第2リブ部)62とを備えている。第1リブ60は、例えば、収納部48の長手方向(矢印A、B方向)と直交するように突出し該長手方向に沿って互いに等間隔離間し、第2リブ62は前記長手方向に沿って延在すると共に、第2保持筒部52の周方向に沿って互いに等間隔離間して形成される。すなわち、第2保持筒部52の外周面において、第1リブ60と第2リブ62とが交差状に形成されている。
【0033】
なお、ここでは、第1及び第2リブ60、62をそれぞれ3つずつ備える場合について説明する。
【0034】
また、第2保持筒部52の外周面には、その一端部側(矢印B方向)に形成された第1リブ60と他端部側に隣接した第1リブ60との間にリーク孔64が開口している。リーク孔64は、第2保持筒部52の長手方向(矢印A、B方向)と直交する径方向に貫通し収納室56と外部とを連通させると共に、後述するプレッシャレギュレータ42の弁ハウジング66に臨む位置に開口している。
【0035】
プレッシャレギュレータ42は、第2保持部40の収納室56に収納され、図3Aに示されるように、円筒状に形成された弁ハウジング(弁筒)66と、該弁ハウジング66の一端部に設けられる弁座部材(弁筒)68と、前記弁座部材68の弁路70に着座する弁体72と、前記弁体72に当接して押圧するリテーナ74と、前記リテーナ74を前記弁座部材68側(矢印B方向)に向かって付勢するばね76と、前記弁ハウジング66の一端部側(矢印B方向)に装着されるシール部材78とから構成される。
【0036】
弁ハウジング66は、その他端部側(矢印A方向)に底部80を有した有底円筒状に形成され、一端部側に形成される先細部82と、該先細部82に隣接して外周面が拡径した挿入筒部(第2弁筒部)84と、該挿入筒部84と隣接し他端部側(矢印A方向)に形成された圧入筒部(第1弁筒部)86とを有し、前記圧入筒部86は前記挿入筒部84に対して若干だけ外周面が大径となるように形成されると共に、その他端部が底部80と略直交するように接合されている。
【0037】
この底部80の中央には、後述するリテーナ74の軸部98が挿入される軸孔88が貫通すると共に、該軸孔88の径方向外側には複数の排出孔90が貫通するように形成される。
【0038】
そして、弁ハウジング66は、その先細部82が収納部48における第1保持筒部50の内周面に臨み、挿入筒部84が第2保持筒部52の内周面に臨み、圧入筒部86が前記第2保持筒部52の内周面の一部に対して圧入されると共に加締部54の内周面に臨むように設けられ、先細部82と第1保持筒部50との間、挿入筒部84と第2保持筒部52の内周面との間にはそれぞれ間隙92a、92bが形成される。
【0039】
この弁ハウジング66は、圧入筒部86が第2保持部40の第2保持筒部52に対して圧入されることで同軸上に保持され、先細部82及び挿入筒部84は、第1及び第2保持筒部50、52に対して間隙92a、92bを有した状態で挿入されることで、該間隙92aと間隙92bとリーク孔64とが連通する。
【0040】
また、弁ハウジング66は、加締部54の他端部が図示しない治具によって径方向内側に折曲するように加締められることで、圧入筒部86の他端部が加締部54の他端部によって長手方向に係止される。なお、この加締部54の加締めには、例えば、加熱によって折曲させる熱かしめが用いられる。
【0041】
弁座部材68は、略一定径で形成された円筒体からなり、その中央には軸方向(矢印A、B方向)に沿って弁路70が貫通し、第2保持部40の内部において一端部が第2燃料通路46に臨み、他端部が挿入筒部84の一端部近傍の内周面に対して圧入されることで、弁ハウジング66に対して所定長さだけ一端部側へと突出した状態で同軸上に保持される。なお、弁座部材68は、先細部82に対しては圧入されることなく単に挿入されているだけとなる。
【0042】
また、弁座部材68の他端部中央には、弁路70の他端部となる位置に弁体72の着座する弁座94が形成される。この弁体72は、例えば、金属製材料からなる球体であり、弁座部材68の弁路70の直径よりも大きな直径で形成され、前記弁座部材68の弁座94へと着座することで前記弁路70の他端部を閉塞する。
【0043】
リテーナ74は、例えば、断面略T字状に形成され、一端部側(矢印B方向)に形成され弁体72の一部に当接する当接部96と、該当接部96の中心から長手方向に沿って他端部側へと延在した軸部98とを有し、該軸部98が弁ハウジング66の軸孔88へと挿通された状態で、弁ハウジング66における挿入筒部84及び圧入筒部86の内部に移動自在に設けられる。そして、リテーナ74の当接部96と弁ハウジング66の底部80との間には、例えば、コイルスプリングからなるばね76が設けられ、前記リテーナ74を弁体72側(矢印B方向)に向かって付勢することで、弁体72が弁座部材68の弁座94に対して押圧された弁閉状態となる。
【0044】
シール部材78は、例えば、弾性材料から形成されたОリングであり、弁ハウジング66の先細部82に臨み、且つ、弁座部材68の一端部外周側に当接し、且つ、第1保持筒部50の内周面に当接している。すなわち、シール部材78は、弁ハウジング66内において、第2保持部40の第1保持筒部50と弁座部材68との間を通じて第2燃料通路46の燃料が他端部側(矢印A方向)へと流入することを防止している。
【0045】
そして、プレッシャレギュレータ42は、第2保持部40の第2燃料通路46から弁路70へと供給された燃料の圧力によって弁体72が弁座部材68から離間する方向(矢印A方向)へと押圧されることで、前記燃料が前記弁路70から弁ハウジング66の内部、排出孔90を通じて外部へと排出される。
【0046】
このハウジング34は、その一端部側に第3燃料通路100が上下方向に延在し、その上端部が第2燃料通路46を通じてプレッシャレギュレータ42と連通し、下端部が蓋部材14のベース部22を介して吐出部30と接続されて連通すると共に、長手方向に沿った途中に第1燃料通路44が接続されて燃料ポンプ16の吐出口16bと連通している。
【0047】
エンドブロック36は、ハウジング34の他端部を覆うように着脱自在に設けられ、その内部には後方側(矢印A方向)に向かって延在する吸入通路102が形成されている。
【0048】
フィルタ20は、燃料中に含まれる不純物等を除去する目的で設けられ、例えば、燃料供給装置10の長手方向(矢印A、B方向)に沿って設けられると共に厚さ寸法の小さな袋状に形成される。このフィルタ20には、エンドブロック36側となる一方の側面に図示しないアタッチメントを介して前記エンドブロック36の吸入通路102が接続され連通している。
【0049】
本発明の実施の形態に係る燃料供給装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に前記燃料供給装置10が組み付けられた状態でシール部材78の装着忘れを確認するための検査を行う場合について、図3A及び図3Bを参照しながら説明する。
【0050】
先ず、図3Bに示されるシール部材78(図中、二点鎖線形状参照)を装着し忘れて組み付けられた燃料供給装置10に対し、第2燃料通路46から収納室56へと燃料を供給する。この燃料は、シール部材78の設けられていない弁座部材68と第1保持筒部50との間を通じて他端部側(矢印A方向)へと流れた後に、弁ハウジング66の先細部82と第1保持筒部50の間の間隙92a、挿入筒部84と第2保持筒部52との間の間隙92bを通じて他端部側(矢印A方向)へと流れ、前記第2保持筒部52に開口したリーク孔64を通じて外部へと導出される。これにより、図示しない作業者が、リーク孔64から外部へと排出される燃料を確認することでシール部材78が装着されていないことを容易且つ確実に視認することができる。
【0051】
一方、図3Aに示されるように、シール部材78が所定の位置に装着されている燃料供給装置10では、第2燃料通路46から収納室56へと燃料を供給すると、弁座部材68の外周と第1保持筒部50の内周面との間に設けられたシール部材78によって前記弁座部材68と前記収納部48との間を通じた燃料の他端部側への流入が確実に防止される。また、弁座部材68が弁ハウジング66の挿入筒部84に対して圧入されているため、前記弁座部材68と前記挿入筒部84との間を通じた燃料の流入も防止される。
【0052】
そのため、収納室56内に供給された燃料がリーク孔64から外部へと排出されることがなく、図示しない作業者が前記リーク孔64からの燃料の排出がないことを視認することで、シール部材78が所定の位置へと確実に装着されていることが確認される。
【0053】
次に、上述したようにシール部材78の装着有無の確認がなされた燃料供給装置10の動作について説明する。
【0054】
先ず、図示しないコントローラからの制御信号が、蓋部材14のコネクタ部28及び端子接続部26を通じてリード線32から燃料ポンプ16へと入力されることで該燃料ポンプ16が駆動する。そして、燃料タンク12の内部に蓄えられた燃料が、フィルタ20を通過してアタッチメント、エンドブロック36の吸入通路102を通じて燃料ポンプ16の吸入口16aから内部へと吸入される。
【0055】
そして、燃料ポンプ16へと吸入された燃料は、その吐出口16bからハウジング34の第1燃料通路44へと吐出された後、第3燃料通路100を経て蓋部材14の吐出部30から燃料チューブ(図示せず)へと導出される。その後、燃料チューブを通じて内燃機関のインジェクタへと燃料が供給される。
【0056】
一方、第1燃料通路44から第3燃料通路100へと流れた燃料は、該第3燃料通路100から第2燃料通路46を通じて収納室56のプレッシャレギュレータ42へと供給され、このプレッシャレギュレータ42の弁体72が燃料の圧力によって弁座部材68の弁座94から離間して弁開することで、余剰となった前記燃料が弁路70から弁ハウジング66の内部へと流入して複数の排出孔90を通じて燃料タンク12内へと排出される。
【0057】
この際、第2保持部40の第1保持筒部50と弁座部材68との間に設けられたシール部材78によって、第2保持部40の収納部48とプレッシャレギュレータ42との間を通じた燃料の漏出が防止される。
【0058】
以上のように、本実施の形態では、燃料供給装置10を構成するハウジング34に、第1及び第3燃料通路44、100内で余剰となった燃料を外部へと排出して前記燃料の圧力を調整するプレッシャレギュレータ42が設けられ、該プレッシャレギュレータ42の弁ハウジング66は、圧入筒部86がハウジング34の第2保持筒部52に対して圧入され、挿入筒部84が第1保持筒部50に対して間隙92a、92bを有した状態で挿入されている。また、ハウジング34内において第3燃料通路100側となる弁ハウジング66の先細部82と第1保持筒部50との間にシール部材78が設けられると共に、第2保持筒部52において前記シール部材78と圧入筒部86との間には、収納室56と外部とを連通するリーク孔64が開口している。
【0059】
これにより、燃料供給装置10の組付けが完了した後に燃料の漏れを確認する検査を行う際、誤ってシール部材78を組み付け忘れた場合には、第2燃料通路46側から供給された燃料が弁ハウジング66と第2保持筒部52との間の間隙92a、92bを通じてリーク孔64から外部へと流出し、前記シール部材78が所定の位置に装着されていないことを容易且つ確実に検知することが可能となる。
【0060】
また、弁ハウジング66の圧入筒部86を収納部48に対して全周で圧入することができるため、リーク溝によって全周での圧入が行われず一部が非接触であった従来の燃料供給装置と比較し、収納部48の剛性をより高めることができ、それに伴って、プレッシャレギュレータ42の開閉動作時に生じる振動に起因した作動音を低減することができる。
【0061】
さらに、収納部48において、弁ハウジング66の圧入される第2保持筒部52の外周側に第1及び第2リブ60、62を設けることで、前記第1及び第2リブ60、62によって前記第2保持筒部52の剛性をさらに高めることができ、内部に収納されたプレッシャレギュレータ42の開閉動作時の作動音をより一層低減できる。
【0062】
さらにまた、収納部48において、リーク孔64を第2保持筒部52の外周側に設けられた複数の第1リブ60の間に設けることで、リーク孔64を前記収納部48に開口させた場合でも剛性に対する影響が低減される。
【0063】
またさらに、収納部48における第2保持筒部52の外周面に対して径方向外側へ環状に突出し、ハウジング34の長手方向に沿って互いに離間した複数の第1リブ60と、前記長手方向に沿って延在して複数の第1リブ60を互いに接続する第2リブ62とを備えることで、前記第1及び第2リブ60、62を交差状とすることができ、剛性をより一層高めることが可能となる。
【0064】
また、収納部48内に設けられるシール部材78は、弁ハウジング66の一端部側に設けられる場合に限定されるものではなく、例えば、前記弁ハウジング66の外周面と第1保持筒部50の内周面との間に設けて両者に当接させるようにしてもよい。
【0065】
なお、本発明に係る燃料供給装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0066】
10…燃料供給装置 12…燃料タンク
14…蓋部材 16…燃料ポンプ
18…ポンプモジュール 20…フィルタ
34…ハウジング 36…エンドブロック
38…第1保持部 40…第2保持部
42…プレッシャレギュレータ 48…収納部
50…第1保持筒部 52…第2保持筒部
56…収納室 60…第1リブ
62…第2リブ 64…リーク孔
66…弁ハウジング 68…弁座部材
72…弁体 78…シール部材
84…挿入筒部 86…圧入筒部
92a、92b…間隙
【要約】
【課題】燃料供給装置においてシール部材の装着忘れを確実に検知すると同時に作動音の低減を図る。
【解決手段】燃料供給装置10を構成するハウジング34には、その第2保持部40にプレッシャレギュレータ42の収納される収納部48を有し、該収納部48の第2保持筒部52には、径方向に貫通して収納室56と外部とを連通するリーク孔64が形成されると共に、前記第2保持筒部52の外周面には径方向外側へと突出した複数の第1及び第2リブ60、62が設けられている。また、リーク孔64は、収納部48の第1保持筒部50内に装着されたシール部材78とプレッシャレギュレータ42の圧入筒部86との間となる位置に開口している。
【選択図】図3
図1
図2
図3