(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記蒸着源が、上記複数の噴射ノズルのそれぞれを挟むように、かつ上記第2の制御板と平行に配置される複数の共蒸着用噴射ノズルをさらに有する請求項3の蒸着装置。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイパネルや太陽電池等の金属電極配線、有機EL層、半導体層、その他の有機材料薄膜や無機材料薄膜等は、真空蒸着法等の蒸着によって形成されることがある。蒸着は、通常、坩堝内の蒸着材を加熱することにより、蒸着材を気化させ、気化した蒸着材を基板表面に向けて噴射し、この基板表面に蒸着材を堆積させることにより行われる。基板表面に堆積された蒸着材が、薄膜を形成する。また、蒸着の際には、所定形状を有するマスクにより基材表面を被覆しておくことで、パターニングされた蒸着膜を形成することができる。このような蒸着を行う蒸着装置は、通常、蒸着材を収容する坩堝等が内部に配置され、気化した蒸着材を噴射する噴射ノズルを有する蒸着源と、基板を固定する基板固定部とを備える。
【0003】
ここで、大型の基板に対応した蒸着を行うためには、
図12に示すように、用いる噴射ノズル101の数を増やすことが考えられる。噴射ノズル101の数を増やすことで、大型の基板Xに対しても、膜厚均一性の高い蒸着膜を形成することができる。なお、
図12中に模式的に示す曲線Uは、各噴射ノズル101による蒸着量の分布を示す曲線である。しかし、複数の噴射ノズル101を有する蒸着装置100を用いた場合、特に基板Xの端部において、離れた位置の噴射ノズル101から噴射される蒸着材が、基板表面に対して小さい角度(入射角)で到達することとなる。このような部分においては、
図13に示すように、マスクYで被覆された部分にまで蒸着材が進入しやすくなる。このような場合、蒸着膜Zにおいて、シャドーSといわれる蒸着材が薄く積層された領域が大きくなる。このため、このような従来の蒸着装置100の場合、微細な成膜パターンを得ることが困難である。これに対し、噴射ノズルを少なくし、かつ噴射ノズルを端に配置しない構成とすることで、蒸着材が基板表面に対して到達する角度を大きくすることができる。しかしこの場合、大型の基板に対して、膜厚均一性の高い蒸着膜を形成することが困難になる。
【0004】
このような中、各噴射ノズル間に蒸着材の蒸着領域を制御する制御板(遮断壁などとも称される。)が設けられた蒸着装置も開発されている(特許文献1参照)。この特許文献1においては、制御板が、基板の相対的移動方向と平行に、又は相対的移動方向に対して1〜10°程度傾けて設けることが開示されている。このような蒸着装置によれば、基板に対して大きく傾斜した方向に噴射される蒸着材が制御板により遮断されるため、蒸着材の入射角を大きい範囲に制御し、シャドーを小さくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面を参照にしつつ、本発明の一実施形態に係る蒸着装置及び蒸着方法について詳説する。
【0016】
<蒸着装置:第1の実施形態>
第1の実施形態に係る
図1の蒸着装置10は、蒸着源11、基板保持部12及び制御板13を備える。なお、蒸着装置10は、適切な真空度が維持される真空チャンバ(図示しない)内に配置される。真空チャンバには、真空チャンバ内の気体を排出させて、真空チャンバ内の圧力を低下させる真空ポンプ、真空チャンバ内に一定の気体を注入して、真空チャンバ内の圧力を上昇させるベンティング手段などが備えられていてよい。
【0017】
蒸着源11は、上側先端に設けられた噴射口(開口)から、気化した蒸着材を噴射する複数の噴射ノズル14を有する。複数の噴射ノズル14は、直線状(一直線上)かつ等間隔に配置されている。蒸着源11は、固体状の蒸着材を収容し、加熱により蒸着材を気化させ、気化した蒸着材を複数の噴射ノズル14から噴射するように構成されている。
【0018】
蒸着源11は、具体的には、例えば蒸着材収容室と拡散室とが連設された構成とすることができる。拡散室の上面に、複数の噴射ノズル14が配置される。蒸着材収容室内には、坩堝が配置され、この坩堝内に固体状の蒸着材が収納される。気化した坩堝内の蒸着材は、蒸着材収容室から拡散室に移動する。坩堝の周囲には、加熱手段としてのヒータ等が配置される。加熱手段により坩堝中の蒸着材が加熱され、蒸着材が気化する。蒸着源11においては、加熱手段や、図示しない蒸着材の流路に設けられたバルブ等により、蒸着材の放出量を制御可能に構成されていてよい。
【0019】
基板保持部12は、複数の噴射ノズル14の列と平行な向きに基板Xを保持する。換言すれば、基板保持部12は、複数の噴射ノズル14と対向するように基板Xを保持する。基板保持部12は、基板Xを着脱可能に保持する。基板保持部12は、従来公知の蒸着装置に備わる基板保持部と同様のものとすることができる。なお、基板Xにおいて、複数の噴射ノズル14と対向する側の面(
図1における下面)には、所定形状のパターンを有する蒸着用のマスク(図示しない)が設けられていてよい。
【0020】
基板Xと複数の噴射ノズル14の列とが平行とは、例えば、基板Xと、複数の噴射ノズル14における各噴射口の中心を通る直線とが、平行な状態をいう。
【0021】
制御板13は、基板Xに対して垂直に配置され、各噴射ノズル14から噴射される蒸着材の基板Xへの蒸着領域を制御する役割を有する。制御板13が基板Xに対して垂直とは、制御板13を構成する各板が、基板Xに対して垂直であることを意味する。
図1の蒸着装置10においては、制御板13はz軸方向に沿って配設している。制御板13は、基板Xと蒸着源11との間に配設されている。制御板13の具体的構造については詳説する。
【0022】
蒸着装置10においては、基板X、又は複数の噴射ノズル14(又は蒸着源11全体)と制御板13との組み合わせが、基板Xの複数の噴射ノズル14との平行状態を維持しながら複数の噴射ノズル14の列に対して垂直方向(
図1におけるy軸方向)に移動可能に構成されている。すなわち、基板Xと、複数の噴射ノズル14及び制御板13とは、互いに相対的に移動しながら蒸着を行うことができる。
図1においては、複数の噴射ノズル14(すなわち、蒸着源11全体)及び制御板13は固定され、基板Xが奥から手前にy軸方向に沿って移動するよう構成されている。このとき、基板保持部12は、基板Xとともに移動するよう構成されていてもよいし、基板保持部12の位置は固定され、基板Xのみが移動するよう構成されていてもよい。また、制御板13は、蒸着源11の上に載置されていてもよいし、蒸着源11(複数の噴射ノズル14)及び制御板13それぞれが固定されていてもよい。一方、他の形態として、基板Xは固定され、複数の噴射ノズル14(又は蒸着源11全体)と制御板13とが、y軸方向に沿って一体的に移動するように構成されていてもよい。
【0023】
以下、制御板13について詳説する。制御板13は、複数の噴射ノズル14の列を挟むように互いに平行に配置された一対の第1制御板13aと、隣り合う複数の噴射ノズル14の間にそれぞれ配置された複数の第2制御板13bとを有する。
【0024】
一対の第1制御板13aは、基板Xの相対的移動方向(y軸方向)に直交するように設けられている。
図1において、一対の第1制御板13aは、xz平面に沿って設けられている。第1制御板13aは、その上端縁が基板Xの下面に近接した状態で配置されている。このように第1制御板13aが設けられていることで、
図1の基板Xにおける下面のそれぞれの領域においては、その領域が一対の第1制御板13a間を通過するときに、蒸着がなされることとなる。
【0025】
図2に示されるように、複数の第2制御板13bは、隣り合う噴射ノズル14の噴射口間の距離をP、一対の第1制御板13a間の距離をL、tanθ=L/Pとした場合、基板Xに垂直な方向視(z軸方向視、
図2)において、隣り合う噴射ノズル14の噴射口間の中点Mを中心とし、噴射ノズル14の列に対して角度θ傾斜して配設されている。換言すれば、角θは、第1制御板13aと第2制御板13bとがなす鋭角である。さらに具体的には、
図2に示されるように、第2制御板13bは、一方の第1制御板13aに対する一の噴射ノズル14aの噴射口の垂線と上記一方の第1制御板13aの内側の面との交点Qと、他方の第1制御板13aに対する上記一の噴射ノズル14aの隣の噴射ノズル14bの噴射口の垂線と上記他方の第1制御板13aの内側の面との交点Rとを結ぶように設けられている。また、
図2に示されるように、基板Xに垂直な方向視(z軸方向視、
図2)における第2制御板13bの長さNは(P
2+L
2)
1/2となる。複数の第2制御板13bは、互いに平行に配置されている。
【0026】
各第2制御板13bは板状体であり、その断面形状は実質的に長方形である。より具体的には、
図3に示されるように、基板Xの相対的移動方向視(y軸方向視、
図3)における第2制御板13bの断面形状(xz平面での断面形状)は、噴射ノズル14の噴射口と基板X(基板Xの下面、基板Xにおける被蒸着面)との距離をTとした場合、隣り合う噴射ノズル14の噴射口間を底辺BCとし、高さがTの二等辺三角形ABCの2つの斜辺AB、ACに内接する形状である。なお、
図3において点Aは、隣り合う噴射ノズル14の噴射口間BCの垂直二等分線と、基板Zの下面(基板Xにおける被蒸着面)との交点である。
図3に示されるように、第2制御板13bは、基板Xの下面(被蒸着面)にまで近接する高さとなっている。なお、
図3中のT’は、第2制御板の上記断面形状における上記二等辺三角形ABCの底辺BC(噴射ノズル14の噴射口)から内接点(第2制御板13bの二等辺三角形ABCの2つの斜辺AB、ACへの内接点)までの高さである。板状(断面が直線状)の第2制御板13bにおいては、T’は、噴射ノズル14の噴射口からの第2制御板13bの高さに等しい。
【0027】
このような制御板13が設けられることで、相対的に移動する基板Xに対する各噴射ノズル14からの蒸着量の分布曲線は、上記移動方向視(y軸方向視)において実質的に二等辺三角形状となる。具体的には、
図4(b)に示されるように、上記移動方向視における基板Xに対する各噴射ノズル14からの蒸着量分布曲線は、実質的に底辺の長さが2Pである同一な二等辺三角形状となる。これは、以下の理由による。上記移動方向視において、各噴射ノズル14の直上の位置では、噴射口からの蒸着材が、相対的に移動する基板Xに到達するまで第2制御板13bによって全く遮断されない。一方、移動方向視において、噴射ノズル14の直上から距離P以上離れた位置では、噴射口からの蒸着材は第2制御板13bによって完全に遮断され、基板Xに到達しない。噴射ノズル14の直上の位置から距離P離れた位置までの間においては、上述のように斜めに配置した第2制御板13bにより、蒸着量は直線的に変化することとなる。これにより、噴射ノズル14からの蒸着量分布曲線は、実質的に底辺の長さが2Pである二等辺三角形状となる。なお、「二等辺三角形状」とは、厳密な二等辺三角形に限定されないことを意味し、本発明の効果に影響を与えない範囲で、例えば各辺(実質的に等しい長さの2つの辺)が多少湾曲していてもよく、頂点が多少丸みを帯びていてもよい。但し、頂点は実質的に丸みを帯びていないことが好ましく、各辺は実質的に直線であることが好ましい。
【0028】
なお、上記の説明は、上記移動方向視において、各噴射ノズル14の直上の位置から距離P離れた位置までの間では、制御板が無い場合の蒸着量が等しいと仮定している。通常、この仮定が実質的に成り立つ範囲である。これを示す蒸着量の測定結果を
図5に示す。
図5は、
図1のように制御板を配置した蒸着装置における1の噴射ノズルからの蒸着量分布曲線の計算値と実測値とを示したものである。上述のように実質的に二等辺三角形状の分布が生じていることが確認できる。
【0029】
各噴射ノズル14からの分布が、底辺の長さが2Pの同一な二等辺三角形状となっている場合、距離Pずつ離れた複数の噴射ノズル14全体における蒸着量の分布は、
図4(c)に示す通り平坦な分布となる。このため当該蒸着装置10によれば、膜厚均一性の高い蒸着を行うことができる。
【0030】
また、当該蒸着装置10によれば、各噴射ノズル14からの蒸着範囲は、両隣の噴射ノズル14までの範囲に限られ、シャドーが少ない蒸着膜が形成される。具体的には、当該蒸着装置10を用いて蒸着を行った場合、蒸着材の基板Xへの最小入射角αは、tanα=T/{P
2+(L/2)
2}
1/2を満たす値となる(
図6参照)。すなわち、
図6に示されるように、最小の入射角となる位置は、基板Xの相対的移動方向視(y軸方向視)において、噴射ノズル14から距離P離れた、第1制御板13aの直上の位置Oとなる。このときの基板Xへの蒸着材の入射角が上記角αとなる。
【0031】
<蒸着方法>
本発明の一実施形態に係る蒸着方法は、蒸着装置10を用いて蒸着を行う工程を備える。
【0032】
当該蒸着方法は、当該蒸着装置10を用いること以外は従来公知の蒸着方法と同様に行うことができる。すなわち、基板Xを相対的に移動させながら、複数の噴射ノズル14から蒸着材を噴射させることにより、基板Xの表面(
図1おける下面)に蒸着材を蒸着させる。なお、各噴射ノズル14からの蒸着材の噴射量は、通常実質的に等しい。当該蒸着方法によれば、上述のように、膜厚均一性が高く、かつシャドーが少ない蒸着膜を形成することができる。また、噴射ノズル14の数を多くした設計とすることで、大型の基板に対しても良好な蒸着を行うことができる。
【0033】
当該蒸着装置10を用いた蒸着工程においては、上述のように、蒸着材の基板Xへの最小入射角をαについて、tanα=T/{P
2+(L/2)
2}
1/2の関係が満たされる。ここで、当該蒸着装置10を用いた蒸着方法においては、適当な最小入射角αで蒸着を行うことができるように、噴射ノズル14の噴射口間の距離P、一対の第1制御板13a間の距離L、及び噴射ノズル14の噴射口と基板Xとの距離Tのうちの一部又は全部が調整可能に構成されていてもよい。例えば、噴射ノズル14の噴射口間の距離Pとしては100〜500mm、一対の第1制御板13a間の距離Lとしては、100〜500mm、噴射ノズル14の噴射口と基板Xとの距離Tとしては、100〜800mmの範囲で調整することができる。距離P及び距離Lに対応して、第1制御板13aと第2制御板13bとがなす鋭角θは、例えば45〜70°の範囲となる。また、最小入射角αは、例えば45〜70°の範囲で調整される。
【0034】
<蒸着装置:第2の実施形態>
第2の実施形態に係る蒸着装置は、制御板23の形状が異なること以外は、第1の実施形態に係る蒸着装置10と同様である。
【0035】
図7に示す第2の実施形態に係る蒸着装置の制御板23は、一対の第1制御板13aと、複数の第2制御板23bとを有する。制御板23は、複数の第2制御板23bの移動方向視(y軸方向視)における断面形状が異なること以外は、第1の実施形態に係る蒸着装置10の制御板13と同じである。すなわち、制御板23の第1制御板13aは、蒸着装置10の第1制御板13aと同じである。
【0036】
第2制御板23bの断面形状はT字状である。より具体的には、
図9に示されるように、第2制御板23bの移動方向視(y軸方向視、
図9)における断面形状(xz平面での断面形状)は、噴射ノズル14の噴射口と基板Xとの距離をTとした場合、隣り合う噴射ノズル14の噴射口間を底辺BCとし、高さがTの二等辺三角形ABCの2つの斜辺AB、ACに内接するT字状である。
【0037】
図8に示されるように、基板Xに垂直な方向視(z軸方向視、
図8)における第2制御板23bの長さNは、
図2の第2制御板13bと同様、(P
2+L
2)
1/2となる。しかし、幅がありかつ高さの低い各第2制御板23bにおいて、一対の第1制御板13aに近い両端部分Dには、蒸着材が当たらないこととなる。従って、最小限必要な第2制御板13bの長さN’は、第2制御板23bの断面形状における上記二等辺三角形ABCの底辺から内接点までの高さをT’とした場合(
図9参照)、(T’/T)(P
2+L
2)
1/2となる。これは、第2制御板23bのz軸方向視におけるx軸方向の幅Wと噴射ノズル14の噴射口間の距離Pとの比W/P(
図8参照)が、比T’/T(
図9参照)と等しいことによる。このため、基板Xに垂直な方向視(z軸方向視、
図8)における第2制御板23bの長さは、(T’/T)(P
2+L
2)
1/2以上(P
2+L
2)
1/2以下であればよい。
【0038】
第2の実施形態に係る蒸着装置を用いた蒸着方法は、上述した蒸着装置10を用いる場合と同様である。第2の実施形態に係る蒸着装置を用いた場合も、各噴射ノズル14からの蒸着材は、蒸着装置10の場合と同様に、制御板によって制御される。このため、移動方向視における基板Xに対する各噴射ノズル14からの蒸着量分布曲線は、実質的に底辺の長さが2Pである同一な二等辺三角形状となり、複数の噴射ノズル14全体における蒸着量の分布は、平坦な分布となる(
図4(b)、(c)参照)。
【0039】
<蒸着装置:第3の実施形態>
第3の実施形態に係る蒸着装置は、制御板33が異なること以外は、第1の実施形態に係る蒸着装置10と同様である。
【0040】
図10に示す第3の実施形態に係る蒸着装置の制御板33は、一対の第1制御板13aと、複数の第2制御板33bとを有する。制御板33は、複数の第2制御板33bの基板Xに垂直な方向視(z軸方向視、
図10)における配置向きが異なること以外は、第1の実施形態に係る蒸着装置10の制御板13と同じである。すなわち、制御板33の第1制御板13aは、蒸着装置10の第1制御板13aと同じである。
【0041】
複数の第2制御板33bは、基板Xに垂直な方向視(z軸方向視、
図10)において、ジグザグに配置されていること以外は、第1実施形態に係る第2制御板13bと同じである。これらの各第2制御板33bも、基板Xに垂直な方向視(z軸方向視、
図10)において、噴射ノズル14の列に対して角度θ傾斜して配設されている。
【0042】
第3の実施形態に係る蒸着装置を用いて蒸着を行った場合も、各噴射ノズル14からの蒸着材は、蒸着装置10の場合と同様に制御板によって制御される。すなわち、移動方向視における基板Xに対する各噴射ノズル14からの蒸着量分布曲線は、実質的に底辺の長さが2Pである同一な二等辺三角形状となり、複数の噴射ノズル14全体における蒸着量の分布は、
図4(c)に示す通り平坦な分布となる(
図4(b)、(c)参照)。
【0043】
<蒸着装置:第4の実施形態>
第4の実施形態に係る蒸着装置は、
図11に示すように、蒸着源41が、複数の噴射ノズル14のそれぞれを挟むように、かつ第2制御板13bと平行に配置される複数の共蒸着用噴射ノズル45をさらに有する。第4の実施形態に係る蒸着装置は、蒸着源41が共蒸着用噴射ノズル45をさらに有すること以外は、第1の実施形態に係る蒸着装置10と同様である。噴射ノズル14とこれに隣接する共蒸着用噴射ノズル45との距離(開口部の中心間距離)Vとしては、例えば10〜40mmである。
【0044】
第4の実施形態に係る蒸着装置においては、例えば、各噴射ノズル14から第1の蒸着材が噴射され、各共蒸着用噴射ノズル45から第2の蒸着材が噴射され、共蒸着を行うことができる。このように、複数の第2制御板13bがそれぞれ平行に配置し、かつ、複数の噴射ノズル14のそれぞれを挟むように、かつ第2制御板13bと平行に複数の共蒸着用噴射ノズル45をさらに配置することで、2種の蒸着材の蒸着量の分布曲線の同一性が高くなり、濃度のムラの小さい共蒸着膜を形成することができる。
【0045】
<他の実施形態>
本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲でその構成を変更することもできる。例えば、複数の噴射ノズルの数は特に限定されるものではなく、蒸着を行う基板のサイズ等に応じて適宜設定することができる。噴射ノズルの数は、例えば3以上20以下とすることができる。噴射ノズルの数を増やすことで、蒸着領域を広げ、大型基板への蒸着が可能となる。また、上記実施の形態においては、第2制御板の断面形状は、直線状(I字状)及びT字状のものを挙げたが、これらの形に限定されるものでは無い。
【課題】膜厚均一性が高く、かつシャドーが少ない蒸着膜が形成されるように設計され、大型の基板に対して良好な蒸着を行うことができる蒸着装置、及びこのような蒸着装置を用いた蒸着方法を提供する。
【解決手段】本発明は、直線状かつ等間隔に配置され、噴射口から蒸着材を噴射する複数の噴射ノズルを有する蒸着源、及び上記複数の噴射ノズルの列と平行に基板を保持する基板保持部、及び上記基板に対して垂直に配置され、上記蒸着材の蒸着領域を制御する制御板を備え、上記基板が、上記基板の平行状態を維持しながら上記複数の噴射ノズルの列に対して垂直方向に相対的に移動可能に構成された蒸着装置であって、隣り合う上記噴射ノズルの噴射口間の距離をPとした場合、上記移動方向視における上記基板に対する各噴射ノズルからの蒸着量分布曲線が、実質的に底辺の長さが2Pである同一な二等辺三角形状である蒸着装置である。