特許第6586230号(P6586230)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6586230
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20190919BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   G02B27/01
   B60K35/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-520825(P2018-520825)
(86)(22)【出願日】2017年5月23日
(86)【国際出願番号】JP2017019252
(87)【国際公開番号】WO2017208911
(87)【国際公開日】20171207
【審査請求日】2018年11月13日
(31)【優先権主張番号】特願2016-108264(P2016-108264)
(32)【優先日】2016年5月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120204
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 巌
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(72)【発明者】
【氏名】橋本 佳拡
(72)【発明者】
【氏名】酒井 重史
(72)【発明者】
【氏名】村松 雄一
【審査官】 鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−039981(JP,A)
【文献】 特開平10−333080(JP,A)
【文献】 特開平06−144082(JP,A)
【文献】 特開2015−176130(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0188651(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の中間像を形成する中間像形成手段と、
前記中間像形成手段からの出射光を反射させる光学要素を有する反射光学系と、
前記反射光学系からの入射光を被投影面に導く投影光学系と、
前記光学要素を移動させることによって、前記中間像形成手段から前記投影光学系に至る光路の長さを制御する移動手段と、
前記移動手段による移動の前後における、前記反射光学系から前記投影光学系への入射角度が同一となるように、前記光学要素の配置角度を制御する角度制御手段とを備えることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記中間像形成手段は、出射面から発散光を出射する光学素子を有し、
前記発散光の出射角は、前記出射面の中央よりも外側であるほど外側に大きくなり、
前記移動手段は、前記出射面の方向に沿って前記光学要素を移動させることによって、前記中間像形成手段から前記投影光学系に至る光路の長さを制御し、
前記角度制御手段は、前記移動手段による移動の前後における、前記反射光学系から前記投影光学系への入射角度が同一となるように、前記光学要素の配置角度を制御することを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記反射光学系は前記光学要素として複数の反射鏡を有し、
前記移動手段は、前記複数の反射鏡の少なくとも1つを移動させることによって、前記中間像形成手段から前記複数の反射鏡を順に反射して前記投影光学系に至る光路の長さを制御し、
前記角度制御手段は、前記複数の反射鏡の相対角度を制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記反射光学系が有する複数の反射鏡は2つの反射鏡であり、
前記移動手段は、前記2つの反射鏡のうち、前記中間像形成手段側の反射鏡を移動させ、
前記角度制御手段は、前記2つの反射鏡の相対角度を制御することを特徴とする請求項3に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記中間像形成手段は、出射面に対応する1つの平面において前記中間像を少なくとも2つの領域に分割して表示 し、
それぞれの領域からの出射光に対する前記中間像形成手段から前記投影光学系に至る光路の長さが異なることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記画像表示装置は車両に設置され、
前記投影光学系は、前記中間像に基づいて前記車両のウインドシールドに投影画像を生成することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ装置などに用いる画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の車両用表示装置は、反射鏡によって、表示手段からの表示光を車両のフロントガラスの運転者の視線位置に向けて反射させる装置であり、車両の速度に応じて反射鏡を回転させることによって表示光の虚像位置を制御する。これによって、走行中の運転者の注視目標を車速に応じて安全な位置に設定することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−89371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の車両用表示装置では、反射鏡の回転によって虚像位置を前後に変位させることは可能であるが、この変位にともなって虚像の位置が上下にも変位してしまうため、運転者の視線方向を変動させてしまうという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、対象者としての運転者から見た虚像の上下位置を変えることなく、虚像までの距離を制御することができる画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の画像表示装置は、所定の中間像を形成する中間像形成手段と、中間像形成手段からの出射光を反射させる光学要素を有する反射光学系と、反射光学系からの入射光を被投影面に導く投影光学系と、光学要素を移動させることによって、中間像形成手段から投影光学系に至る光路の長さを制御する移動手段と、移動手段による移動の前後における、反射光学系から投影光学系への入射角度が同一となるように、光学要素の配置角度を制御する角度制御手段とを備えることを特徴としている。
これにより、対象者としての運転者から見た虚像の上下位置を維持しつつ、虚像までの距離を制御することができる。
【0007】
本発明の画像表示装置において、中間像形成手段は、出射面から発散光を出射する光学素子を有し、発散光の出射角は、出射面の中央よりも外側であるほど外側に大きくなり、移動手段は、出射面の方向に沿って光学要素を移動させることによって、中間像形成手段から投影光学系に至る光路の長さを制御し、角度制御手段は、移動手段による移動の前後における、反射光学系から投影光学系への入射角度が同一となるように、光学要素の配置角度を制御することが好ましい。
【0008】
これにより、中間像形成手段の光学素子における出射角と反射光学系の光学要素における反射角の変更によって、光路の長さの制御に寄与できるため、反射光学系の光学要素と投影光学系との距離の変化量を大きくとることが可能となることから、シンプルな構成でありながら虚像位置の変位量を大きくすることができる。
【0009】
本発明の画像表示装置において、反射光学系は光学要素として複数の反射鏡を有し、移動手段は、複数の反射鏡の少なくとも1つを移動させることによって、中間像形成手段から前記複数の反射鏡を順に反射して投影光学系に至る光路の長さを制御し、角度制御手段は、複数の反射鏡の相対角度を制御することが好ましい。また、反射光学系が有する複数の反射鏡は2つの反射鏡であり、移動手段は、2つの反射鏡のうち、中間像形成手段側の反射鏡を移動させ、角度制御手段は、2つの反射鏡の相対角度を制御することが好ましい。
これにより、中間像形成手段と投影光学系をコンパクトにした構成で、虚像位置を変位させることができる。
【0010】
中間像形成手段は、出射面に対応する1つの平面において中間像を少なくとも2つの領域に分割して表示し、それぞれの領域からの出射光に対する中間像形成手段から投影光学系に至る光路の長さが異なることが好ましい。
本発明の画像表示装置は車両に設置され、投影光学系は、中間像に基づいて車両のウインドシールドに投影画像を生成することが好ましい。
これにより、運転者から見た虚像の上下位置を変えることなく、虚像までの距離を制御できるヘッドアップディスプレイ装置を構成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、対象者としての運転者から見た虚像の上下位置を変えることなく、虚像までの距離を制御できる画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係る画像表示装置の構成を示す平面図である。
図2】第1実施形態に係る画像表示装置の構成を示すブロック図である。
図3】第1実施形態に係る画像表示装置の構成を示す平面図であって、図1に示す状態に対して、第1ミラーを移動・回転させた後の状態を示す図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る画像表示装置の構成を示す平面図である。
図5】第2実施形態に係る画像表示装置の構成を示すブロック図である。
図6】第2実施形態に係る画像表示装置の構成を示す平面図であって、図4に示す状態に対して、第1ミラーを移動させるとともに、第1ミラー及び第2ミラーを回転させた後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る画像表示装置について図面を参照しつつ詳しく説明する。以下の実施形態は、本発明の画像表示装置を車両用ヘッドアップディスプレイ装置に適用した実施形態であり、画像表示装置は車両に設置され、画像表示装置で虚像を観察する対象者は運転者である。なお、本明細書では、虚像を作り出すために画像表示装置内に形成される情報画像を中間像と称する。
【0014】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る画像表示装置の構成を示す平面図である。図2は、第1実施形態に係る画像表示装置の構成を示すブロック図である。図3は、第1実施形態に係る画像表示装置の構成を示す平面図であって、図1に示す状態に対して、第1ミラーを移動・回転させた後の状態を示す図である。
【0015】
第1実施形態にかかる画像表示装置は、図1又は図2に示すように、中間像形成手段としての中間画像形成部10と、反射光学系の光学要素としての2つのミラー21、22と、移動手段としての第1ミラー移動部23と、角度制御手段としての第1ミラー回転駆動部24と、投影光学系としての投影ミラー30と、制御部40と、メモリ41とを備える。メモリ41には、以下に説明する制御・動作に必要な情報や、画像表示装置が表示する画像のデータなどが記憶されている。
【0016】
中間画像形成部10は、図1に示す、レーザ光源11、LCOS12、結像レンズ13、及び、スクリーン14を備え、さらに、図2に示す、レーザドライバ15とLCOSドライバ16を備える。
【0017】
レーザ光源11は、可視領域の波長のレーザ光を出射する光源であって、レーザドライバ15から供給される電流量に応じた強度の光を出射する。レーザドライバ15から供給される電流量は制御部40によって制御される。レーザ光源11から射出されたレーザ光はLCOS12に入射する。
【0018】
LCOS12は、反射型LCOS(Liquid Crystal On Silicon)であって、液晶層とアルミニウムなどの電極層とを有するパネルである。LCOS12においては、液晶層に電界を与える電極が規則的に並んで複数のピクセルが構成されており、それぞれの電極に与えられる電界強度の変化により、液晶層内の結晶の層の厚さ方向への倒れ角度が変化し、反射するレーザ光はピクセル毎に位相が変調される。このようなピクセル毎の位相の変化は、制御部40の制御に基づいて、LCOSドライバ16によって制御され、LCOS12では所定の位相変調光が生成される。LCOS12は、制御部40の制御により、画像表示装置の本体(不図示)に対して相対的に移動又は回動可能である。
【0019】
ここで、位相変調が可能であれば、LCOS12に代えて、透過型LCOS、その他の変調素子を用いても良い。また、LCOS12に代えて、入射光をスキャン可能なスキャナを用いてレーザ光を入射させるようにしてもよい。このスキャナとしては、例えばデジタルミラーデバイス(DMD)やポリゴンミラーを用いたものがある。上記の他の方式とする場合には中間画像形成部の具体的な構成が図1とは異なるが、その詳細は省略する。ここではLCOS12を用いた事例について説明する。
【0020】
LCOS12で生成された位相変調光は、結像レンズ13に入射する。この結像レンズ13は、両凸正レンズであって、フーリエ変換レンズ(FTレンズ)として入射光をフーリエ変換するとともに、入射光を集光することにより、イメージ光を生成する。このイメージ光は、中間像(ホログラム画像)として、スクリーン14上に結像する。スクリーン14は、その光軸14cが結像レンズ13の光軸の延長線に重なるように配置される。ここで、位相変調光のフーリエ変換が可能であれば、結像レンズ13に代えて、別の形状の正の屈折力のレンズや、複数枚のレンズからなる正の屈折力の光学系を用いても良い。
【0021】
スクリーン14は、結像レンズ13からの入射光を、出射面14aから発散光として出射する光学素子としてのディフューザ(拡散板)である。このスクリーン14においては、出射面14aからの発散光の出射角が、出射面14aの中央、すなわち光軸14c上の位置よりも、外側の位置であるほど外側へ大きくなるように設計されている。スクリーン14は、出射光の出射角が出射面14aの中央よりも外側であるほど外側に大きくなれば、ディフューザのほか、例えばマクロレンズアレイで構成してもよい。
【0022】
スクリーン14に形成される中間像は、出射面14aに対応する平面において、中央の領域とその外側の領域の2つに分けられている。それぞれの領域の画像に対応するイメージ光は、互いに独立した光学系としての2つのミラー21、22にそれぞれ入射する。
ここで、中間像が有する領域は、表示内容などに応じて3つ以上であってもよく、また、各領域の位置や大きさは任意に設定できる。中間像が有する領域が3つ以上である場合は、各領域に対応して3つ以上の、互いに独立した光学系を備えることが好ましい。
【0023】
第1ミラー21と第2ミラー22は、反射鏡であって、スクリーン14から出射された光を反射する反射平面21a、22aをそれぞれ有する。図1に示すように、第2ミラー22は、スクリーン14の光軸14cの延長線上に配置されており、第1ミラー21は、出射面14aにおいて光軸14cよりも外側の領域から出射する発散光が入射する位置に配置されている。
【0024】
第1ミラー21は、移動手段としての第1ミラー移動部23によって、予め定めた直線L1上を移動可能とされている。また、第1ミラー21は、角度制御手段としての第1ミラー回転駆動部24によって、反射平面21aが、その平面に沿った軸21cを中心にして回転可能とされている。第1ミラー移動部23による移動、及び、第1ミラー回転駆動部24による回転は、制御部40によって制御される。第1ミラー回転駆動部24による回転は、第1ミラー移動部23による移動の前後において、第1ミラー21からの反射光(イメージ光I11)が投影ミラー30に入射する角度が同一となるように制御される。すなわち、第1ミラー21からの反射光は、第1ミラー移動部23による移動にかかわらず常に同じ直線L1上を進行し、投影ミラー30へ入射する。
一方、第2ミラー22は固定されており、出射面14aの中央の領域からの出射光(イメージ光I12)は第2ミラー22で反射されて投影ミラー30へ入射する。
【0025】
投影ミラー30は、反射面31を有する凹面鏡(拡大鏡)であって、第1ミラー21と第2ミラー22で反射されたイメージ光は投影ミラー30でそれぞれ拡大・反射される。この反射光は、車両のウインドシールド50(被投影面)の表示エリアに投影される。ウインドシールド50は半反射面として機能するため、入射したイメージ光は、運転者に向けて反射されるとともに、ウインドシールド50の前方位置において虚像51、52を形成する(図1)。ここで、虚像51は、第1ミラー21からの反射光に対応する像であり、虚像52は、第2ミラー22からの反射光に対応する像である。ウインドシールド50の前方の虚像51、52を目視することで、運転者の眼Eには、ステアリングホイールの上方の前方に情報画像が表示されているように見える。さらに、第1ミラー21及び第2ミラー22は投影ミラー30に対するスクリーン14(に表示される中間像)からの距離が異なるように配置されているため、それぞれの反射光に対応する虚像は、ウインドシールド50からの距離が異なる位置に形成される。すなわち、第1ミラー21よりもスクリーン14および投影ミラー30との距離が短い第2ミラー22からの反射光に対応する虚像52は、第1ミラー21からの反射光に対応する虚像51よりもウインドシールド50に近い位置に形成される。
【0026】
第1ミラー21は、第1ミラー移動部23による移動によって、スクリーン14から投影ミラー30へ至る光路の長さが制御される。具体的には、図1に示す移動前の状態においては、スクリーン14の出射面14aから第1ミラー21の反射平面21aまでが距離aであるのに対して、図3に示す移動後の状態においては、第1ミラー21が投影ミラー30から離れる方向に距離bだけ移動することによって、出射面14aから第1ミラー21の反射平面21aまでの距離が、前記距離aより大きな距離cとなっている。これは、出射面14aからの出射角度が、移動前の状態では出射面14aからの角度θ1であったのに対して、出射位置が外側へ移動した後の状態では、角度θ1よりも大きな角度θ2となったためである。ここで、図1における直線V1及び図3における直線V2は、第1ミラー21への出射光の出射点における出射面14aに対する法線である。また、第1ミラー21の移動の前後においては、第1ミラー21からの反射光が投影ミラー30に入射する角度が同一に保たれるように、第1ミラー21は、第1ミラー回転駆動部24によって、軸21cを中心にして回転される。
以上のような第1ミラー21の移動・回転の前後により、スクリーン14から投影ミラー30へ至る光路の長さは、「b+c−a」だけ長くなっている。このように光路を長くしたときの第1ミラー21からの反射光に対応する虚像53は、図3に示すように、第1ミラー21を移動・回転する前の虚像51よりもウインドシールド50から離れる側に形成される。また、第1ミラー21は、移動の前後で反射光が投影ミラー30に入射する角度が同一となるように回転されているため、運転者から見て、移動前の虚像51と移動後の虚像53は、上下方向において同じ位置に形成される。なお、第1ミラー21を投影ミラー30に近づけるように移動させる場合は、第1ミラー21を回転させることにより、投影ミラー30に入射する角度を同一に維持した状態で、距離を短くすることができる。
【0027】
以上のように構成されたことから、第1実施形態の画像表示装置によれば、次の効果を奏する。
(1)第1ミラー21の移動の際に反射平面21aを回転させることにより、投影ミラー30への入射角度を維持したまま投影ミラー30までの距離を変更できる。このため、対象者としての運転者から見た虚像の上下位置を維持しつつ、虚像までの距離を制御することができる。
【0028】
(2)スクリーン14の出射面14a上の位置により発散角が異なり、また、第1ミラー21の反射平面21aの角度によって出射角度が異なることから、スクリーン14と第1ミラー21の両者が投影ミラー30への入射角度の制御に寄与できる。このため、この光路の変化量を大きくとることが可能となることから、虚像位置の変位量を大きくすることができる。
【0029】
<第2実施形態>
第2実施形態の画像表示装置においては、中間像のイメージ光を、2つの可動のミラー121、122に順に反射させている。この構成においては、第1ミラー121の移動にともなって、これらのミラー121、122の反射平面の相対角度を制御することによって、第2ミラー122からの出射光が投影ミラー30に入射する角度を一定に保持しつつ、虚像の形成位置を変位させることができる。
以下の説明において、第1実施形態と同様の構成部材については同じ参照符号を使用し、その詳細な説明は省略する。
【0030】
図4は、第2実施形態に係る画像表示装置の構成を示す平面図である。図5は、第2実施形態に係る画像表示装置の構成を示すブロック図である。図6は、第2実施形態に係る画像表示装置の構成を示す平面図であって、図4に示す状態に対して、第1ミラーを移動させるとともに、第1ミラー及び第2ミラーを回転させた後の状態を示す図である。
第2実施形態にかかる画像表示装置は、図4又は図5に示すように、中間像形成手段としての中間画像形成部110と、反射光学系の光学要素としての2つのミラー121、122と、移動手段としての第1ミラー移動部123と、角度制御手段としての第1ミラー回転駆動部124および第2ミラー回転駆動部125と、投影光学系としての投影ミラー30と、制御部40と、メモリ41とを備える。メモリ41には、以下に説明する制御・動作に必要な情報や、画像表示装置が表示する画像のデータなどが記憶されている。
【0031】
中間画像形成部110は、図4に示す、レーザ光源11、LCOS12、結像レンズ13、及び、スクリーン114を備え、さらに、図2に示す、レーザドライバ15とLCOSドライバ16を備える。レーザ光源11、LCOS12、結像レンズ13、レーザドライバ15、及び、LCOSドライバ16は第1実施形態と同様であるため、それらの詳細な説明は省略する。
【0032】
スクリーン114は、結像レンズ13からの入射光を、出射面114aから拡散光として出射するディフューザ(拡散板)である。スクリーン114は、拡散光を出射できれば、ディフューザのほか、例えばマクロレンズアレイで構成してもよい。また、第1実施形態のスクリーン14のように出射位置によって出射角度が異なる拡散板を用いてもよい。
【0033】
スクリーン114に形成される中間像は、出射面114aに対応する平面において中央の領域とその外側の領域の2つに分けられている。中央の領域に対応するイメージ光I21は、光軸114cに沿って進行して投影ミラー30に直接入射する。
一方、外側の領域に対応するイメージ光I22は、まず第1ミラー121に入射し、第1ミラー121からの反射光が、さらに第2ミラー122で反射されて、投影ミラー30に入射する。
ここで、中間像が有する領域は、表示内容などに応じて3つ以上であってもよく、また、各領域の位置や大きさは任意に設定できる。
なお、中間画像形成部は、中間像が形成される液晶パネルと、液晶パネルの後方から光を与えるバックライトとで構成してもよい。この場合には中間画像形成部の具体的な構成が図4とは異なり、スクリーン114の位置に液晶パネルが配置される。虚像を作り出すための中間像は、液晶パネルの表示画像である。
【0034】
第1ミラー121と第2ミラー122は、反射鏡であって、入射光を反射する反射平面121a、122aをそれぞれ有する。第1ミラー121と第2ミラー122は、スクリーン114よりも投影ミラー30側に配置され、第1ミラー121への入射光は反射平面121aで反射されて第2ミラー122に入射し、この入射光は反射平面122aで反射されて投影ミラー30へ入射する。
【0035】
第1ミラー121は、移動手段としての第1ミラー移動部123によって、予め定めた直線上を移動可能とされている。また、第1ミラー121は、角度制御手段としての第1ミラー回転駆動部124によって、反射平面121aが、その平面に沿った軸121cを中心にして回転可能とされている。第1ミラー移動部123による移動、及び、第1ミラー回転駆動部124による回転は、制御部40によって制御される。
【0036】
第2ミラー122は、角度制御手段としての第2ミラー回転駆動部125によって、反射平面122aが、その平面に沿った軸122cを中心にして回転可能とされている。第2ミラー回転駆動部125による回転は、制御部40によって制御される。
【0037】
第1ミラー回転駆動部124による第1ミラー121の回転と第2ミラー回転駆動部125による第2ミラー122の回転は、第1ミラー移動部123による移動の前後において、第2ミラー122からの反射光が投影ミラー30に入射する角度を同一に保つように制御される。別言すると、第1ミラー121と第2ミラー122をそれぞれ回転させることによって、第1ミラー121の反射平面121aと第2ミラー122の反射平面122aの相対角度が調整され、これによって、第2ミラー122からの反射方向が投影ミラー30に対して一定に維持されように制御される。これにより、第2ミラー122からの反射光は、第1ミラー移動部123による移動にかかわらず常に同じ直線L2上を進行する。ここで、第1ミラー移動部123によって第1ミラー121が移動する方向は、上記直線L2に平行である。
【0038】
投影ミラー30は、第1実施形態と同様に反射面31を有する凹面鏡(拡大鏡)であって、スクリーン114から直接入射したイメージ光I21と、第2ミラー122で反射されたイメージ光I22をそれぞれ拡大・反射させる。この反射光は、車両のウインドシールド50(被投影面)の表示エリアに投影され、この光は運転者に向けて反射されるとともに、ウインドシールド50の前方位置において虚像151、152を形成する(図4)。ここで、虚像151は、スクリーン114から投影ミラー30へ直接入射したイメージ光I21に対応する像であり、虚像152は、第2ミラー122からの反射光(イメージ光I22)に対応する像である。
【0039】
第1ミラー121及び第2ミラー122は、スクリーン114よりも投影ミラー30側に配置されており、第1ミラー121への入射光は第1ミラー121及び第2ミラー122で順に反射されて投影ミラー30へ入射する。 このため、2つのイメージ光I21、I22のそれぞれに対応する虚像151、152は、ウインドシールド50からの距離が異なる位置に形成される。すなわち、虚像151は、虚像152よりもウインドシールド50に近い位置に形成される。
【0040】
第1ミラー121は、第1ミラー移動部123による移動によって、スクリーン114から投影ミラー30へ至る光路の長さが制御される。具体的には、図4に示す移動前の状態においては、第1ミラー121の反射平面121aから第2ミラー122の反射平面122aまでが距離dであるのに対して、図6に示す移動後の状態においては、まず、第1ミラー121は、投影ミラー30に近づく方向に距離eだけ移動している。さらに、この移動に対して、第2ミラー122からの反射光が投影ミラー30に入射する角度が同一となるように、第1ミラー121の反射平面121aが時計回りに角度γ1回転されるとともに、第2ミラー122の反射平面122aは時計回りに角度γ2回転される。これによって、2つの反射平面121a、122aの相対角度が変化して両者の距離はfとなる。このため、第1ミラー121の移動前の状態と移動後の状態とで、スクリーン114から、第1ミラー121と第2ミラー122を経て投影ミラー30へ至る光路の長さは、「e+f−d」だけ長くなっている。このように光路を長くしたときの第2ミラー122からの反射光に対応する虚像153は、図6に示すように、第1ミラー121を移動する前の虚像152よりもウインドシールド50から離れる側に形成される。ここで、第2ミラー122からの反射光は、第1ミラー121の移動の前後で反射光が投影ミラー30に入射する角度が同一となるように制御されているため、運転者から見て、移動前の虚像152と移動後の虚像153は、上下方向において同じ位置に形成される。
【0041】
第2実施形態の画像表示装置によれば、第1ミラー121と第2ミラー122で折り返す構成によって、比較的小さなエリアで光路長の制御が可能となるため、スクリーン114と投影ミラー30をコンパクトにした構成で、虚像位置を変位させることができる。
なお、図4図6に示す構成では、反射光学系の光学要素のうち第1ミラー121のみを移動させていたが、第2ミラー122も移動させ、これに合わせて2つのミラー121、122の反射平面の相対角度を調整するようにしてもよい。
なお、その他の作用、効果、変形例は第1実施形態と同様である。
本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的または本発明の思想の範囲内において改良または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上のように、本発明に係る画像表示装置は、運転者から見た虚像の上下位置を変えることなく、虚像までの距離を制御できるヘッドアップディスプレイ装置を構成することができる点で有用である。
【符号の説明】
【0043】
10 中間画像形成部
11 レーザ光源
12 LCOS
13 結像レンズ
14 スクリーン
14a 出射面
14c 光軸
15 レーザドライバ
16 LCOSドライバ
21 第1ミラー
21a 反射平面
21c 軸
22 第2ミラー
22a 反射平面
23 第1ミラー移動部
24 第1ミラー回転駆動部
30 投影ミラー
40 制御部
41 メモリ
50 ウインドシールド
51、52、53 虚像
110 中間画像形成部
114 スクリーン
114a 出射面
114c 光軸
121 第1ミラー
121a 反射平面
121c 軸
122 第2ミラー
122a 反射平面
122c 軸
123 第1ミラー移動部
124 第1ミラー回転駆動部
125 第2ミラー回転駆動部
151、152、153 虚像
図1
図2
図3
図4
図5
図6