【実施例1】
【0019】
図1ないし
図5は、本発明の実施例1による工作機械の切屑排出装置を説明するための図である。本実施例において、手前(前方),奥(後方),左,右と記す場合は、機械正面から見た状態での手前,奥,左,右を意味する。
【0020】
図において、1は横型マシニングセンタ2等の工作機械に配設される切屑排出装置を示している。この切屑排出装置1は、前記横型マシニングセンタ2の機械加工点Aに供給され落下するクーラントを貯留するクーラントタンク3と、該クーラントタンク3内に、その下部が収容されるように配置され、前記機械加工点Aにて発生し落下する切屑を機外に排出するチップコンベア4とを備えている。
【0021】
前記横型マシニングセンタ2は、ベッド5に配設された加工テーブル6にワークWを搭載し、前記ベッド5上に配設された主軸装置7の刃具7aにより前記ワークWに所定の機械加工を施すように構成されている。
【0022】
前記ベッド5には、後端から手前側に延びる凹部5aが形成されており、前記切屑排出装置1は、前記凹部5a内にクーラントタンク3の前部及びチップコンベア4の下部27aが位置するように配置されている。また、前記ベッド5の加工テーブル6の下方には前記クーラント,切屑を前記チップコンベア4上に落下させるベッド開口5bが形成されている。
【0023】
前記チップコンベア4は、ケーシング27と、該ケーシング27内に配置されたコンベア本体28とで構成されている。
【0024】
前記ケーシング27は、前記クーラントタンク3内に配置された下部27aと、該下底部27aに続いて前記クーラントタンク3から斜め上方に立ち上がる立ち上がり部27bとを有する。前記下部27aの天壁を構成する蓋板14の前記ベッド開口5bに対向する部位には、タンク開口14aが形成されている。
【0025】
前記蓋板14のタンク開口14aの周縁部には弾性体からなるシール部材13が配設されている。また前記ベッド5のベッド開口5bの周縁部には前記シール部材13を押圧する係合片部5cが形成されており、これによりベッド5とケーシング27との間はシールされている。
【0026】
前記コンベア本体28は、前記ケーシング27の立ち上がり部27bの上端部に配設された左,右の駆動スプロケット16と、前記下部27aの手前側端部に配設された左,右の従動スプロケット17に左,右の無端状のコンベアチェーン19,19を巻回し、前記左,右のコンベアチェーン19,19に、掻き板21を移動方向aに所定間隔を空けて架け渡して取り付けた概略構造を有する。なお、18はクーラントから切屑を分離するフィルタ、20は該左,右のコンベアチェーン19の上側部分の下方に敷設され、落下してくる切屑を受け止めると共に前記掻き板21が摺設するガイドプレート、22は前記コンベアチェーン19を前記ケーシング27に沿って案内する案内部材である。
【0027】
前記クーラントタンク3は、上方に開口する直方体状のタンク本体3aと、該タンク本体3aの後端に接続された1次クリーン槽10及び2次クリーン槽11とを有する。前記フィルタ18で濾過されたクーラントは、前記1次クリーン槽10に移送され、該1次クリーン槽10内でフィルタ(不図示)を介して微細な切屑が分離され、該切屑が分離されたクーラントは2次クリーン槽11に移送され、ここからポンプ12により前記主軸装置7に供給循環される。
【0028】
前記タンク本体3aは、底壁3bと、前,後側壁3c,3dと、左,右側壁3e,3eとからなり、該前,後側壁3c,3d及び左,右側壁3e,3eは何れも前記底壁3bに対して垂直に起立するように接続されており、上部が開口された単純な直方体で構成されている。
【0029】
前記クーラントタンク3の底壁3bの下面には、このクーラントタンク3を単体で移動と可能するために複数の車輪9が配設されており、また該クーラントタンク3を所定の設置位置に補助的に固定するためにジャッキ部材8が配設されている。
【0030】
前記前側壁3cの内側上部には、取付けブラケット24が形成されている。この取付けブラケット24は、天壁部24a,内壁部24b及び底壁部24cを有する大略コ字形状をなしており、前記前側壁3cに溶接固定されている。また前記内壁部24bには前記ケーシング27の下部27aを支持する支持部材20aが溶接固定されている。
【0031】
図4,
図5に示すように、前記ベッド5の前記凹部5aの上壁面5dの前記取付けブラケット24に対向する部位には左,右一対の支持ボス部5f,5fが一体的に形成されている。この左,右の支持ボス部5fにはボルト挿入孔5hが形成されており、その上面にはナット26bが固定され、前記取付けブラケット24は下方から挿入され、前記ナット26b螺着されたボルト26aにより前記支持ボス部5fに吊り下げた状態で固定されている。
【0032】
そして前記左,右の支持ボス部5fの下面と前記取付けブラケット24の天壁部24aとの間には所定厚さのシムプレート25が介在されている。このシムプレート25を厚さの異なるシムプレートに取り替えることにより、又はシムプレートの枚数を変化させることにより前記クーラントタンク3の前側端部のベッド5への取付け高さを変化させることが可能となっている。この場合、シムプレートを介在させない場合の取付け高さが最も高くなり、シムプレートの厚さが大きくなるほど、枚数が多くなるほど取付け高さは低くなる。
【0033】
また前記クーラントタンク3の前後方向中途部分、具体的には前記1次クリーン槽10及び2次クリーン槽11の前側壁10a,11aには、センタブラケット10b,11b,11bが固定されており、図示していないが、該各センタブラケットは前記ベッド5に吊り下げた状態で固定されている。
【0034】
そして前記クーラントタンク3は、これの前側壁3cが後側壁3dより高くなるように取付けブラケット24が前記左,右の支持ボス部5fに前記シムプレート25を介在させて前記ボルト26aにより締結固定されている。
【0035】
このようにして前記クーラントタンク3は、タンク本体3aの底壁3bが排出側3fに向かって低くなる傾斜をなすように前記ベッド5に吊り下げ固定されている。
【0036】
ここで、前記タンク本体3aの底壁3bの傾斜角度θは、クーラントタンク3の大きさ,形状あるいは切屑の沈殿状況,クーラント及び切屑の流れ易さ等によって適宜設定することとなる。具体的には、本実施例では、クーラントタンク3は、これの前側壁3cが側後壁3dより約10mm高くなるようにベッド5に固定されており、その結果、前記底壁3bの傾斜角度θは約0.4度となっている。
【0037】
本実施例によれば、クーラントタンク3の排出側3fと反対側に位置する前側端部をベッド5に取り付けることにより該クーラントタンク3の底壁3bを排出側3fが低くなるように傾斜させたので、ワークWの機械加工中においては、機械加工中におけるクーラントの循環流により、該クーラントに含まれる粉状の切屑等が傾斜している底壁3bに沿って排出側3fに集積し易くなり、クーラントタンク3をベッド5下方から機外に引き出すことなく、切屑を短時間にかつ容易に排出することができる。
【0038】
また、クーラント交換作業においては、クーラントの水位が低くなっても排出側に確実に流れるため、クーラントがタンク内に残留するのを回避できる。
【0039】
また、本実施例では、前記クーラントタンク3を、前側端部が後側端部より高くなるようにベッド5に取り付けるという簡単な作業で底壁3bを排出側3fが低くなるように傾斜させる構造を採用しているので、傾斜していない底壁を有する既存のクーラントタンクをそのまま採用することが可能であり、従来のクーラントタンクの底壁を傾斜状に加工する場合に比べて製作コストを低減できる。
【0040】
さらにまた、前記クーラントタンク3のベッド5への取り付け高さを変化させることで底壁の傾斜角度を可変可能としたので、クーラントタンク3の大きさ,形状,あるいは切屑のクーラントタンク3内への沈殿状況,切屑及びクーラントの流れ易さ等に応じた適切な傾斜角度を簡単な方法で設定することができる。
【0041】
また、前記クーラントタンク3の前側端部に形成された取付けブラケット24を、ベッド5に形成された支持ボス部5fに間にシムプレート25を介在させてボルト締め固定したので、シムプレート25の厚さ又は枚数を変化させるだけの簡単な作業で底壁の傾斜角度を容易に調整することができる。
【0042】
なお、前記実施例では、クーラントタンク3の前側壁3cをベッド5に取り付けることで傾斜させたが、本発明では、クーラントタンク3の左,右側壁3e,3eの前端部をベッドに取り付けることで傾斜させてもよい。
【0043】
また前記実施例では、クーラントタンクの前端部を持ち上げてベッドに取り付けることにより傾斜させたが、クーラントタンクを傾斜させる構造については各種の変形例が考えられる。
【0044】
図6は第1変形例を示しており、これはクーラントタンク3をベッド5に略同じ角度をなすように結合し、ベッド5のジャッキ30の調整によりベッド5と共にクーラントタンク3を傾斜させた例である。
【0045】
図7は第2変形例を示しており、これはベッド5のクーラントタンク固定面31を傾斜させることでクーラントタンク3を傾斜させた例である。
【0046】
図8は第3変形例を示しており、これはベッド5とクーラントタンク3との間に楔形状部材32を介在させて取り付けることで傾斜させた例である。
【0047】
前記第1〜第3変形例の何れにおいても、既存のクーラントタンクをそのまま採用することが可能であり、製作コストの低減が可能となる。