(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記駆動軸に、前記クラッチプレートの前記操作部材側への移動量を拘束するストッパ部材が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の車輪ユニット。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本発明の実施形態に係る車輪ユニット、およびそれを備えた手押し移動体について、図面を参照して説明をする。
図1は、本発明の実施形態における車輪ユニットを備えた手押し移動体の一例を示す斜視図である。
【0032】
(電動アシストシルバーカー)
同図に示すように、電動アシストシルバーカー(手押し移動体)10は、フレーム11と、収納部12と、車輪13と、を備えている。
【0033】
フレーム11は、収納部12を支持する座部フレーム11aと、座部フレーム11aの一端に設けられ、上方に向けて延びる背部フレーム11bと、座部フレーム11aから下方に向けて延びる脚部フレーム11cと、を備える。
ここで、以下の説明においては、平面視した状態で、座部フレーム11aに対して背部フレーム11bが設けられた側を後方、その反対側を前方、前後方向に向かって左右両側を側方と称することがある。
【0034】
収納部12は、内部に物品等を収容できる物品収容部12aと、物品収容部12aの上方を覆い、上面に物品を載置したり着座したりすることが可能な台部12bと、を備えている。
【0035】
車輪13は、脚部フレーム11cの下端部に設けられている。車輪13は、ホイール13wと、ホイール13wの外周部に装着されたタイヤ13tと、を備えている。
この実施形態において、脚部フレーム11cは、上方から下方に向かって、平面視した状態で電動アシストシルバーカー10の四隅に向けて延びている。これにより、車輪13は、電動アシストシルバーカー10の四隅に配されている。ここで、4つの車輪13のうち、フレーム11の前方の幅方向両側に設けられている車輪13fは、脚部フレーム11cを挟んでその両側に二個一対で設けられている。また、フレーム11の後方の幅方向両側に設けられている車輪13rは、脚部フレーム11cの側方に設けられている。
【0036】
電動アシストシルバーカー10は、例えば後方の幅方向両側の車輪13rを回転駆動させる電動アシスト機構を備えている。電動アシスト機構は、車輪13rを回転駆動する駆動ユニット(電動アシスト装置)20Aと、収納部12内に収納され、駆動ユニット20Aの動作を制御する制御部18と、を備えている。
【0037】
(第1の実施形態)
(駆動ユニット)
図2は、車輪ユニットに設けられた駆動ユニットの構成を示す斜視展開図である。
同図に示すように、駆動ユニット20Aは、減速機付モータ(モータ)21と、車輪13rと、クラッチ機構C1と、を備えている。
【0038】
(減速機付モータ)
減速機付モータ21は、ケース210と、ケース210内に設けられたモータ部220と、減速機部230と、駆動軸240を備えている。
【0039】
図3は、駆動ユニットを構成する減速機モータの構成を示す断面図である。
同図に示すように、減速機付モータ21は、ケース210内に、モータ部220と、ハイポサイクロイド減速方式により作動し、モータ部220から入力される回転を減速し、減速された回転を出力する減速機部230と、を備える。
【0040】
ケース210は、中央部に開口部211hが形成された略板状の隔壁部211と、隔壁部211の一方の側に筒状に延び、モータ部220を収容する第一ハウジング212と、隔壁部211の他方の側に筒状に延び、減速機部230を収容する第二ハウジング213と、を一体に備えている。
【0041】
隔壁部211の一方の側に形成された第一ハウジング212の端部212aは、蓋体215により閉塞されている。
【0042】
モータ部220は、第一ハウジング212の内周面に固定された円環形状のステータ221と、後述する入力軸231の一端231aに固定され、ステータ221の内側にて回転自在に配置されたロータ222と、ステータ221に外部からの制御電流を供給する配電基板214と、を備える。
【0043】
ステータ221は、鋼板を積層して形成されたステータコア221aと、インシュレータ221b、221bを介してステータコア221aに巻装されたコイル221cと、を備える。
ロータ222は、椀形状のロータ本体222aと、ロータ本体222aの外周面に取り付けられたマグネット222bと、を備える。
【0044】
このようなモータ部220は、配電基板214から供給される制御電流をステータ221に印加することにより、その内側でロータ222が入力軸231とともに中心軸回りに回転駆動される。
【0045】
減速機部230は、ハイポサイクロイド減速方式により作動し、モータ部220から入力される回転を減速し、減速された回転を出力する。この減速機部230は、入力軸231と、第一内歯歯車232と、回転部材233と、第一外歯歯車234と、第二内歯歯車235と、第二外歯歯車236と、出力部材237と、を備える。
【0046】
入力軸231は、ケース210の隔壁部211に形成された開口部211hに、ベアリングB1を介してその中心軸回りに回転自在に支持されている。入力軸231は、一端231aが隔壁部211の一方の側に突出し、他端231bが隔壁部211の他方の側に突出するよう設けられている。入力軸231の一端231aには、前記ロータ222が設けられている。これにより、モータ部220の駆動により、入力軸231は、ロータ222とともに、その中心軸CL回りに回転駆動される。
【0047】
第一内歯歯車232は、円環形状で、第二ハウジング213に内嵌されている。第一内歯歯車232の内周面に沿って、複数の内歯232gが形成されている。
【0048】
回転部材233は、略円盤形状で、入力軸231の中間部に形成された偏心軸部231hに、ベアリングB2、B2を介して回転自在に設けられている。偏心軸部231hは、入力軸231の中心軸CLに対し、所定寸法δだけ離れて平行に位置する偏心軸心ELを有している。これにより、回転部材233は、入力軸231が回転すると、半径δの円弧回りに公転する。
【0049】
第一外歯歯車234は、円環形状で、回転部材233の外周に一体的に取り付けられている。この第一外歯歯車234は、第一内歯歯車232の内周側に配置されている。第一外歯歯車234は、その外周部に沿って、第一内歯歯車232の内歯232gに噛み合う複数の外歯234gが形成されている。この第一外歯歯車234は、外歯234gのピッチ円半径が、第一内歯歯車232の内歯232gのピッチ円半径よりも大きく設定されている。
このような第一外歯歯車234は、入力軸231の回転により、回転部材233と一体に公転しつつ、第一内歯歯車232との噛み合いにより自転する。
【0050】
第二内歯歯車235は、円環状で、第一外歯歯車234と一体的に設けられ、第一外歯歯車234から隔壁部211に対向する側とは反対側に延びるように形成されている。この第二内歯歯車235の内周面に沿って、複数の内歯235gが形成されている。
この第二内歯歯車235は、第一外歯歯車234と一体に公転しつつ自転し、いわゆる遊星動作する。
【0051】
第二外歯歯車236は、円環形状で、第二内歯歯車235の内側に配置されている。第二外歯歯車236は、その外周面に沿って、複数の外歯236gが形成されている。第二外歯歯車236は、そのピッチ円半径が、第二内歯歯車235のピッチ円半径よりも大きく設定されている。この第二外歯歯車236は、出力部材237に形成された筒状の歯車保持部237aに外嵌されている。
第二外歯歯車236の外歯236gは、その内側で入力軸231の回転によって遊星動作する第二内歯歯車235の内歯235gに噛み合う。
【0052】
出力部材237は、略円盤形状で、その外周部が、第二ハウジング213の内周部に、ベアリングB3を介し、入力軸231の中心軸CLと同軸回りに回転自在に保持されている。出力部材237は、隔壁部211に対向する側に設けられたベアリングB4を介して、入力軸231の他端231bを中心軸CL回りに回転自在に支持している。
【0053】
この出力部材237は、第二外歯歯車236が、入力軸231の回転によって遊星動作する第二内歯歯車235に噛み合うことで、第二外歯歯車236と一体に入力軸231の中心軸CL回りに回転する。このようにして、出力部材237は、第二外歯歯車236および第二内歯歯車235を介して、第一外歯歯車234に連係される。
【0054】
このとき、モータ部220の作動による入力軸231への回転入力により、第一外歯歯車234は入力軸231の回転数にて公転運動するとともに、公転運動に対し所定の比率にて減速された回転数にて自転運動を行う。第二内歯歯車235は、第一外歯歯車234に一体的に設けられていることにより、第一外歯歯車234と同一の回転数にて公転および自転運動を行う。
さらに、出力部材237は、出力部材237と一体に設けられた第二外歯歯車236の自転運動により所定の比率にて減速(増速)された回転数の回転出力により回転する。
【0055】
図2に示すように、出力部材237には、駆動軸240が取り付けられている。
図4は、駆動ユニットを構成するクラッチ機構を示す斜視図である。
同図に示すように、駆動軸240は、出力部材237(
図2参照)に固定される円盤状のベース部241と、ベース部241の中心から突出する出力軸部242と、を一体に備えている。
【0056】
ベース部241は、周方向に間隔を空けて配置された複数のボルト243によって、出力部材237に固定されている。
【0057】
図5は、クラッチ機構を構成する駆動軸を示す斜視図である。
同図に示すように、出力軸部242は、ベース部241側の一定長が断面視円形の支持軸部242aとされ、先端部側の一定長が二方取り加工されて断面視略長円形とされたガイド軸部242bとされている。
【0058】
図2に示すように、減速機付モータ21は、車輪13rの一方の側に配される。減速機付モータ21は、駆動軸240のベース部241を車輪13rの中央部に形成されたセンターハブ部13Cに、円環状のスペーサ27を介して押し当てるとともに、センターハブ部13Cに形成された貫通孔13hに出力軸部242を挿通して設けられる。
【0059】
(クラッチ機構)
図6は、クラッチ機構の構成を示す、駆動軸の軸線方向に沿った断面図である。
図2、
図6に示すように、クラッチ機構C1は、ベアリング22と、スプラインプレート23と、ホルダー24Aと、クラッチプレート25と、操作ノブ(操作部材)26と、を備える。
【0060】
ベアリング22は、ホイール13wの中央部に形成された貫通孔13hの周囲に装着されている。このベアリング22の内側に、出力軸部242の支持軸部242a(
図5参照)が挿入され、これによって、ホイール13wは、ベアリング22を介して出力軸部242に回転自在に支持される。
ここで、駆動軸240の出力軸部242は、先端部のガイド軸部242bが、ベアリング22を貫通して、ホイール13wの他方の側に突出するよう設けられる。
【0061】
スプラインプレート23は、略円盤状で、その中央部に開口23hが形成されている。開口23hの内周面には、周方向に複数の内歯23gが形成されている。このスプラインプレート23は、ホイール13wのセンターハブ部13Cに形成された凹部13dに収容される。
【0062】
図7は、クラッチ機構を構成するホルダーを示す斜視図である。
図8は、ホルダーの内側に形成されたガイド溝を示す斜視図である。
図9は、ホルダーの内側に形成されたガイド溝を、
図8とは異なる角度から見た斜視図である。
図10は、ホルダーの内側から見たガイド溝を、周方向に展開して示した図である。
図2、
図6〜
図9に示すように、ホルダー24Aは、スプラインプレート23に対し、ホイール13w側とは反対側に配される。ホルダー24Aは、円環状のベース部24aと、ベース部24aの内周部からスプラインプレート23と反対側に向かって延びる筒状部24bと、を一体に備えている。
【0063】
図2、
図6に示すように、ホルダー24Aは、センターハブ部13Cの凹部13dに収容されたスプラインプレート23にベース部24aを突き当てた状態で、周方向に間隔を空けて配置された複数のボルト28を、スプラインプレート23に形成された貫通孔23k(
図6参照)に通し、センターハブ部13Cの凹部13dにねじ込むことで固定される。これにより、ホルダー24Aおよびスプラインプレート23は、ホイール13wのセンターハブ部13Cに固定される。
【0064】
図8、
図9に示すように、ホルダー24Aの内周面には、後述する操作ノブ26の動作をガイドするガイド溝(ガイド部、溝)24gが形成されている。ガイド溝24gは、筒状部24bの径方向において互いに対向する位置に、二個一対で形成されている。
【0065】
図8〜
図10に示すように、各ガイド溝24gは、ホルダー24Aの軸方向に連続してホルダー24Aの軸方向両端部にそれぞれ開口する導入溝部24cと、導入溝部24cのベース部24a側の端部から周方向に延びるスライド溝部24dと、スライド溝部24dに連通するとともに、スライド溝部24dに対して筒状部24bの周方向に沿って間隔を空けた位置に形成された案内溝部24eと、を備える。
【0066】
案内溝部24eは、スライド溝部24dから筒状部24bの軸方向に連続し、ベース部24aから離間する方向に延びる第一端部(操作始端位置)24mと、第一端部24mに対して筒状部24bの周方向に間隔を空けた位置に形成され、筒状部24bの軸方向に連続する第二端部24nと、第一端部24mと第二端部24nとの間に形成された螺旋状部24h、凸部24j、およびロック部(操作終端位置、ロック機構)24kと、を有する。
【0067】
螺旋状部24hは、第一端部24m側から第二端部24n側に向かって、ベース部24a側に漸次接近するよう形成された螺旋状に形成されている。
凸部24jは、螺旋状部24hの第二端部24n側の端部に、筒状部24bの軸方向に沿ってベース部24a側に突出するよう形成されている。
ロック部24kは、凸部24jに隣接する第二端部24nに、筒状部24bの軸方向に沿ってベース部24aから離間する側に延出するよう形成されている。
【0068】
図2、
図7に示すように、クラッチプレート25は、円盤状で、その外周部に沿って複数の外歯25gが形成されている。クラッチプレート25の中央部には、出力軸部242のガイド軸部242bが挿通される断面略長円形状の軸挿通穴25hが形成されている。クラッチプレート25は、軸挿通穴25hに出力軸部242のガイド軸部242bが挿通されることで、ガイド軸部242bに回転不能、かつガイド軸部242bに沿ってその軸方向にスライド移動可能に保持される。
【0069】
図2、
図6に示すように、出力軸部242のガイド軸部242bの先端部には、ガイド軸部242bの中心軸に直交する径方向に貫通するストッパピン(ストッパ部材)30Aが設けられている。このストッパピン30Aは、クラッチプレート25に対し、ホイール13w側とは反対側に設けられ、その両端部30tがガイド軸部242bから径方向に突出して設けられている。このストッパピン30Aにより、クラッチプレート25がガイド軸部242bに沿ってホイール13wから離間する方向に移動するストロークを規制する。
【0070】
また、クラッチプレート25とベアリング22との間には、スナップリング29が配されている。このスナップリング29は、出力軸部242のガイド軸部242bの外周面に固定されている。
スナップリング29と、クラッチプレート25との間には、コイルスプリング(付勢部材)31が圧縮状態で設けられている。このコイルスプリング31により、クラッチプレート25は、ストッパピン30A側、つまりホイール13wから離間する方向に押圧されている。
ここで、
図2に示すように、スナップリング29とベアリング22との間、スナップリング29とコイルスプリング31との間には、それぞれ、円環状のシム33が挟み込まれ、クリアランス調整、付勢力調整等がなされている。
【0071】
図2、
図6に示すように、このような構成において、クラッチプレート25は、通常状態においては、コイルスプリング31の押圧力によって、出力軸部242のガイド軸部242b上においてホイール13wから離間してストッパピン30Aに突き当たるよう位置している。この状態で、クラッチプレート25は、スプラインプレート23とは噛み合わず、クラッチ「断」の状態とされている。
【0072】
図11は、クラッチ機構において、クラッチプレートをスプラインプレートに噛み合わせた状態を示す断面図である。
同図に示すように、クラッチプレート25を、コイルスプリング31の押圧力に抗して出力軸部242のガイド軸部242bに沿ってホイール13w側に移動させると、スプラインプレート23と噛み合い、クラッチ「続」の状態とされる。
このような、クラッチプレート25の位置を出力軸部242のガイド軸部242bに沿って移動させることで、クラッチプレート25とスプラインプレート23の噛み合いを断続する操作は、操作ノブ26によって行われる。
【0073】
図12は、ホルダーの内側に操作ノブを配した状態を示す斜視図である。
図13は、操作ノブを内側に配したホルダーを、
図12とは異なる方向から見た斜視図である。
図2、
図12、
図13に示すように、操作ノブ26は、円盤状のベース部26aと、ベース部26aのホイール13wから離間した側に突出して設けられた摘まみ部26bと、ベース部26aの外周部からホイール13wに対向する側に延出する筒状部26cと、筒状部26cの先端部に形成され、クラッチプレート25の軸挿通穴25hの外周側に突き当たるプレート押圧部26dと、を一体に備えている。また、操作ノブ26の筒状部26cには、その径方向において対向する位置に、それぞれ外周側に突出するガイドピン(被ガイド部、凸部)32が固定されている。
【0074】
この操作ノブ26は、ホルダー24Aの筒状部24b内に挿入配置される。筒状部24bの内側で、操作ノブ26に設けられたガイドピン32が、筒状部24bの内周面に形成されたガイド溝24gに係合している。
【0075】
操作ノブ26は、ガイドピン32がホルダー24Aのガイド溝24gにおいて、案内溝部24eの螺旋状部24hで第一端部24m側に位置している状態(
図10における位置P1)では、
図6に示すように、クラッチプレート25および操作ノブ26が、コイルスプリング31の押圧力によって、出力軸部242のガイド軸部242bに沿ってホイール13wから離間する方向にスライドし、クラッチプレート25がストッパピン30Aに突き当たる。この状態で、クラッチプレート25は、スプラインプレート23に対して噛み合わず、クラッチ「断」の状態とされる。
【0076】
この状態から操作ノブ26を所定方向に回すと、ガイドピン32が、ガイド溝24gの案内溝部24e内で、第一端部24m側から第二端部24n側に向かって周方向に相対的に移動する。すると、ガイドピン32が案内溝部24eの螺旋状部24hによって軸方向に押圧される。これにより、操作ノブ26を回転させるにしたがって、操作ノブ26がホルダー24A内でホイール13w側に引き込まれ、操作ノブ26とともにクラッチプレート25が出力軸部242のガイド軸部242bに沿ってスプラインプレート23側に接近していく。
【0077】
そして、クラッチプレート25がスプラインプレート23の内側に入り込み、クラッチプレート25の外歯25gがスプラインプレート23の内歯23gに噛み合う。
操作ノブ26をさらに回転させると、クラッチプレート25は、スプラインプレート23の内側で、外歯25gがスプラインプレート23の内歯23gに噛み合ったまま、出力軸部242のガイド軸部242bに沿ってスライドする。
【0078】
ガイドピン32が螺旋状部24hに沿って周方向に移動して凸部24j(
図10における位置P2)を乗り越え、第二端部24nでロック部24kに入り込む。
図14は、クラッチ機構において、ガイドピンがガイド溝の凸部を乗り越えるときの、クラッチプレートとスプラインプレートとの位置関係を示す断面図である。
同図に示すように、ガイドピン32がガイド溝24gの凸部24jを乗り越えるとき、クラッチプレート25は、最も車輪13r側に位置する。このとき、クラッチプレート25の一部がスプラインプレート23よりもホイール13w側に突出し、クラッチプレート25の操作ノブ26側の残部が、外歯25gが内歯24gに噛み合った状態を維持できるよう、スプラインプレート23の厚さを設定してもよい。これにより、スプラインプレート23の厚さを最小限に抑えることができる。
【0079】
図11に示すように、ガイドピン32が凸部24jを乗り越えてロック部24kに入り込むと(
図10における位置P3)、ガイドピン32が第二端部24nに突き当たることによって、操作ノブ26のそれ以上の回転が規制される。これにより、クラッチプレート25は、スプラインプレート23の内側に位置し、クラッチプレート25の外歯25gがスプラインプレート23の内歯23gに噛み合った状態を維持する。
このとき、操作ノブ26の操作者は、ガイドピン32がロック部24kに入り込むとともに、ガイドピン32が第二端部24nに周方向から突き当たることを感知することができる。
このようにして、クラッチプレート25をスプラインプレート23にかみ合わせて、クラッチを「続」の状態とすることができる。
【0080】
ここで、
図12に示すように、操作ノブ26の摘まみ部26bが、クラッチを「続」の状態、または「断」の状態にあることを使用者が認識出来るよう、ホルダー24Aの筒状部24bにおいて操作ノブ26の外周側に位置する部分に、「ON」、「OFF」といった表示部24N、24Fを形成することができる。
すなわち、ガイドピン32が第一端部24mに位置しているときには、摘まみ部26bが「OFF」の表示部24Fに一致し、ガイドピン32が第二端部24nのロック部24kに位置しているときには、摘まみ部26bが「ON」の表示部24Nに一致するようにする。これにより、操作者は、摘まみ部26bの向きと表示部24Nまたは24Fとを視認することで、クラッチを「続」の状態、または「断」の状態にあることを容易に認識することができる。
【0081】
このようにしてクラッチを「続」の状態とするために操作ノブ26を所定方向に回転させるとき、クラッチプレート25の外歯25gとスプラインプレート23の内歯23gの位相が周方向にずれていて、外歯25gと内歯23gとが干渉して噛み合わないことがある。この場合、ガイドピン32は、凸部24jの手前(
図10における位置P4)に位置し、螺旋状部24hの凸部24jを乗り越えてロック部24kに入り込まず、第二端部24nに突き当たらない。
【0082】
したがって、操作ノブ26の操作者は、ガイドピン32がロック部24kに入り込んで操作ノブ26の回転がロックされたことを感知することができない。さらに、操作ノブ26がロックされず、操作者が操作ノブ26を離すと、コイルスプリング31の押圧力によって、操作ノブ26が回転して元の位置に戻ってしまう。したがって、操作ノブ26の操作者は、ガイドピン32がロック部24kに入り込んで回転がロックされていないこと、つまりクラッチが「続」の状態にないことを容易かつ確実に感知することができる。
【0083】
クラッチを「続」の状態とするために操作ノブ26を所定方向に回転させても、クラッチプレート25の外歯25gとスプラインプレート23の内歯23gの位相が周方向にずれていて、外歯25gと内歯23gとが干渉して噛み合わない場合、操作ノブ26をさらに回転させる。すると、操作ノブ26とクラッチプレート25との間に生じる摩擦力によって、操作ノブ26とともにクラッチプレート25を回転させ、スプラインプレート23と噛み合いやすくすることができる。
【0084】
クラッチを「続」の状態から「断」の状態に移行させるには、操作ノブ26を一旦ホイール13w側に押し込んだ後、上記とは反対方向に回転させる。すると、ガイドピン32がベース部24a側に移動してロック部24kから抜け出した後、凸部24jを乗り越えて螺旋状部24hに移動する。さらに操作ノブ26を回転させれば、ガイドピン32が螺旋状部24hに沿って周方向に移動しながらベース部24aから離間する側に移動する。
【0085】
これにより、操作ノブ26およびクラッチプレート25が、コイルスプリング31の押圧力によって押圧されながら、スプラインプレート23から離脱してホイール13wから離間する方向にスライドする。ガイドピン32が螺旋状部24hで第一端部24mに突き当たると、操作ノブ26のそれ以上の回転が規制される。これにより、操作ノブ26の操作者は、操作ノブ26の回転が規制されることによって、クラッチが「断」状態となったことを感知することができる。
【0086】
ガイドピン32が案内溝部24eで第一端部24mに突き当たった状態(
図10における位置P1)にあるとき、操作ノブ26を押し込んで、反対方向に回転させると、ガイドピン32がスライド溝部24dを通り(
図10における位置P5)、導入溝部24cに入り込む(
図10における位置P6)。
これにより、操作ノブ26を、ホルダー24Aの筒状部24b内から、ホイール13wから離間する方向に引き出すことができる。これによって、操作ノブ26をホルダー24Aから取り外して、例えばグリスアップ等のメンテナンス等を行うことができる。
【0087】
(フレームへの取付構造)
図15は、車輪ユニットの構成を示す斜視図である。
図16は、車輪ユニットを
図15とは異なる方向から見た斜視図である。
図15、
図16に示すように、上記駆動ユニット20Aは、ブラケット100を介してフレーム11に装着することができる。ここで、これら駆動ユニット20Aと、ブラケット100とから、電動アシスト車輪ユニットAが構成されている。
【0088】
図17は、車輪ユニットを構成するブラケットの構成を示す斜視展開図である。
図18は、ブラケットのフレームへの取付状態を示す斜視図である。
図19は、ブラケットを示す斜視図である。
図15〜
図19に示すように、ブラケット100は、メインブラケット101と、固定ブラケット102と、ブレーキ部材110と、を備えている。
【0089】
図17〜
図19に示すように、メインブラケット101は、フレーム11の脚部フレーム11cの下端部に沿う断面略円弧状のサポート部101aと、サポート部101aの上下にそれぞれ形成され、サポート部101aから幅方向両側方に延びるネジ座部101b、101bと、サポート部101aの上下方向中間部に形成され、サポート部101aから幅方向両側方に延び、バネ係止孔101hが形成されたバネ係止部101cと、を一体に有している。
また、サポート部101aの上下には、それぞれ、幅方向中心に、ボルト締結孔101gが形成されている。
さらに、サポート部101aの上下には、それぞれ、車輪13r側に向かって延び、減速機付モータ21を支持する柱状のモータ支持部101m、101mが形成されている。
【0090】
ここで、メインブラケット101は、サポート部101aの中心軸線に対して線対称に形成され、ネジ座部101b、101bや、バネ係止部101c、ボルト締結孔101g、モータ支持部101m、101mは、それぞれ左右一対に設けられている。
【0091】
図15、
図17に示すように、固定ブラケット102は、メインブラケット101の上部と下部に対してそれぞれ対向するよう配される。固定ブラケット102は、フレーム11の脚部フレーム11cの外周面に沿う断面円弧状のサポート部102aと、サポート部102aから幅方向料側方に延び、ボルト挿通孔102hが形成されたフランジ部102bと、を一体に備えている。
【0092】
このような固定ブラケット102は、メインブラケット101のサポート部101aと各固定ブラケット102のサポート部102aとの間に脚部フレーム11cを挟み込み、フランジ部102bのボルト挿通孔102hにボルト105を挿通させ、ネジ座部101bに形成された雌ネジ孔101nにねじ込む。これによって、メインブラケット101と上下の固定ブラケット102との間にそれぞれフレーム11の脚部フレーム11cを挟持することができる。
【0093】
また、
図17に示すように、メインブラケット101の脚部フレーム11cへの位置決めは、脚部フレーム11cに予め形成された、貫通孔11hに、位置決めボルト106を挿通させ、メインブラケット101のサポート部101aに形成されたボルト締結孔101gにねじ込むことでなされる。
ここで、メインブラケット101の脚部フレーム11cの位置決めに用いる貫通孔11hは、例えば、元々ブレーキを取り付けるためのブレーキ取付穴や、車軸穴等を用いることができる。
【0094】
図18、
図19に示すように、ブレーキ部材110は、サポートアーム111と、ブレーキアーム112と、バネ113と、を備えている。
【0095】
サポートアーム111は、メインブラケット101の上端部から上方に向かって延びるよう、メインブラケット101に連結されている。
ブレーキアーム112は、サポートアーム111の上端部111bに、シャフト114を介して鉛直面内で回動自在に設けられている。ブレーキアーム112は、板状で一方向に延びるアームプレート部112aと、アームプレート部112aの一端112cから側方に延出するよう折り曲げ形成されたシュー支持部112bと、を一体に備えている。このブレーキアーム112は、アームプレート部112aの一端112cと他端112dとを結ぶアームプレート部112aの幅方向中心線を中心として線対称に形成されている。
【0096】
図19に示すように、このブレーキアーム112の他端112dには、操作ワイヤ120が連結されている。
図1に示すように、この操作ワイヤ120は、脚部フレーム11cに固定されたワイヤガイド121を介して上方に向かって延びるよう設けられている。操作ワイヤ120を、フレーム11に設けられた操作レバー123等で操作することで、ブレーキアーム112を鉛直面内で揺動させる。
【0097】
図16,
図18、
図19に示すように、シュー支持部112bには、車輪13rのタイヤ13tに外周側から押し付けることで制動力を発揮するシュー115が装着されている。
また、バネ113は、ブレーキアーム112のアームプレート部112aの他端112dと、メインブラケット101のバネ係止部101cのバネ係止孔101hとの間に設けられている。
このようなブレーキ部材110は、操作ワイヤ120の操作によりブレーキアーム112が揺動すると、ブレーキアーム112の一端112cに設けられたシュー115が、車輪13rのタイヤ13tに押し付けられ、制動力を発揮する。
【0098】
このような電動アシスト車輪ユニットAをフレーム11に組み付けるには、まず、フレーム11の脚部フレーム11cにメインブラケット101および固定ブラケット102を装着する。このとき、メインブラケット101に設けられたサポートアーム111には、ブレーキアーム112を装着しておくとともに、ブレーキアーム112とサポートアーム111との間にバネ113を係止しておく。
【0099】
そして、メインブラケット101に、車輪13rと予め一体に組み付けられた駆動ユニット20Aの減速機付モータ21を装着する。
【0100】
ここで、電動アシスト車輪ユニットAは、フレーム11の脚部フレーム11cに組み付けるに先立ち、予め組み立てておいても良い。
【0101】
(効果)
本第1の実施形態によれば、駆動ユニット20A、クラッチ機構C1は、操作ノブ26が、クラッチプレート25がスプラインプレート23と噛み合ったときのみ、操作ノブ26の操作終端位置であるロック部24kに到達する。つまり、クラッチプレート25とスプラインプレート23とが噛み合わない限り、操作ノブ26が操作終端位置に到達しない。これにより、操作ノブ26が操作終端位置であるに到達するか否かにより、クラッチ機構C1の噛合状態を容易に感知することができる。
【0102】
また、クラッチプレート25がスプラインプレート23と噛み合ったときに、操作ノブ26は、その操作終端位置においてロック部24kによって拘束されるので、クラッチプレート25とスプラインプレート23との噛合状態が維持される。このとき、操作ノブ26がロック部24kによって拘束されることを感知することによって、クラッチ機構C1の噛合状態を確実に感知することができる。
【0103】
また、操作ノブ26は、ロック部24kによって拘束されている状態以外では、コイルスプリング31によって操作ノブ26の第一端部24mに向かって付勢される。このような構成によれば、クラッチプレート25とスプラインプレート23とが噛み合わない限り、操作ノブ26がロックされないので、スプラインプレート23との噛合位置に向かってクラッチプレート25を移動させる方向に操作力を加えていた操作ノブ26から手を離せば、コイルスプリング31の付勢力によってクラッチプレート25とともに操作ノブ26が元に戻る。これにより、クラッチ機構C1の噛合状態を確実に把握することができる。
【0104】
また、操作ノブ26は、クラッチプレート25を直接押圧するので、操作ノブ26の操作がコイルスプリング31によって吸収されることがなく、クラッチプレート25をダイレクトに操作することができる。したがって、クラッチプレート25がスプラインプレート23に噛み合っているか否か、操作ノブ26が操作終端位置に到達しているか否かを確実に感知することができる。
【0105】
また、車輪13r側に設けられたガイド溝24gに沿ってガイドピン32が案内されることで、クラッチプレート25を操作するときの操作ノブ26の動作が案内され、操作ノブ26を確実に操作することができる。
【0106】
さらに、操作ノブ26の動作は、ガイドピン32の両端部(凸部)がガイド溝24gによって案内されることで、駆動軸240の軸回りに回転しながらクラッチプレート25を駆動軸240の軸方向に沿ってスプラインプレート23側に移動させるものとなり、クラッチプレート25を確実に移動させることができる。
【0107】
また、このような操作ノブ26の動作は、操作ノブ26とクラッチプレート25との間に生じる摩擦力によって、操作ノブ26とともにクラッチプレート25を回転させることになる。したがって、クラッチプレート25とスプラインプレート23とが噛み合わない場合に、操作ノブ26の回転にともなってクラッチプレート25を回転させて、スプラインプレート23と噛み合いやすくすることができる。これにより、クラッチプレート25とスプラインプレート23との噛合を確実に行うことが可能となる。
【0108】
また、駆動軸240に、クラッチプレート25の操作ノブ26側への移動量を拘束するストッパピン30Aが設けられている。これにより、コイルスプリング31によって操作ノブ26側に向かって付勢されるクラッチプレート25が、駆動軸240から抜けてしまうのを防止することができる。
【0109】
また、操作ノブ26が、操作終端位置であるロック部24kにあることを表示する終端位置表示部として、表示部24Nが形成されている。このような構成によれば、操作者は、操作ノブ26の摘まみ部26bが表示部24Nにあるか否かを視認することによって、クラッチプレート25とスプラインプレート23との噛合状態を確実に認識することができる。
【0110】
(第2の実施形態)
次に、本発明にかかる車輪ユニット、およびそれを備えた手押し移動体の第2の実施形態について説明する。なお、以下に説明する第2の実施形態においては、上記第1の実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。
図20は、本発明の第2の実施形態における車輪ユニットを示す斜視図である。
図21は、本発明の第2の実施形態における車輪ユニットに設けられた駆動ユニットの構成を示す斜視展開図である。
【0111】
(駆動ユニット)
図20、
図21に示すように、駆動ユニット(車輪ユニット)20Bは、減速機付モータ21と、車輪13rと、クラッチ機構C2と、を備えている。
【0112】
(減速機付モータ)
図21に示すように、減速機付モータ21は、ケース210と、ケース210内に設けられたモータ部220と、減速機部230と、駆動軸240を備えている。
【0113】
駆動軸240は、減速機部230の出力部材237に固定される円盤状のベース部241と、ベース部241の中心から突出する出力軸部242と、を一体に備えている。
出力軸部242は、ベース部241側の一定長が断面視円形の支持軸部242aとされ、先端部側の一定長が二方取り加工されて断面視略長円形とされたガイド軸部242bとされている。
【0114】
このような減速機付モータ21は、車輪13rの一方の側に配される。減速機付モータ21は、駆動軸240のベース部241を、車輪13rの中央部に形成されたセンターハブ部13Cに、円環状のスペーサ27を介して押し当てるとともに、センターハブ部13Cに形成された貫通孔13hに出力軸部242を挿入して設けられる。
【0115】
(クラッチ機構)
図21、
図22に示すように、クラッチ機構C2は、ベアリング22と、スプラインプレート23と、ホルダー24Bと、クラッチプレート25と、操作ノブ(操作部材)36と、を備える。
【0116】
ベアリング22は、ホイール13wの中央部に形成された貫通孔13hに装着されている。このベアリング22の内側に、出力軸部242の支持軸部242aが挿入され、これによって、ホイール13wは、ベアリング22を介して出力軸部242に回転自在に支持される。
ここで、駆動軸240の出力軸部242は、先端部のガイド軸部242bが、ベアリング22を貫通して、ホイール13wの他方の側に突出するよう設けられる。
【0117】
スプラインプレート23は、略円盤状で、その中央部に開口23hが形成されている。開口23hの内周面には、周方向に複数の内歯23gが形成されている。このスプラインプレート23は、ホイール13wのセンターハブ部13Cに形成された凹部13dに収容される。
【0118】
図22は、駆動ユニットを構成するクラッチ機構を示す斜視図である。
図23は、クラッチ機構を構成するホルダーを示す斜視図である。
図22、
図23に示すように、ホルダー24Bは、スプラインプレート23に対し、ホイール13w側とは反対側に配される。ホルダー24Bは、円環状のベース部24aと、ベース部24aの内周部からスプラインプレート23と反対側に向かって延びる筒状部24tと、を一体に備えている。
【0119】
図21に示すように、このホルダー24Bは、センターハブ部13Cの凹部13dに収容されたスプラインプレート23にベース部24aを突き当てた状態で、周方向に間隔を空けて配置された複数のボルト28を、スプラインプレート23に形成された図示しない貫通孔を通してセンターハブ部13Cの凹部13dにねじ込むことで固定される。これにより、ホルダー24Bおよびスプラインプレート23は、ホイール13wのセンターハブ部13Cに固定される。
【0120】
クラッチプレート25は、円盤状で、その外周部に沿って複数の外歯25gが形成されている。クラッチプレート25の中央部には、出力軸部242のガイド軸部242bが挿通される断面略長円形状の軸挿通穴25hが形成されている。クラッチプレート25は、軸挿通穴25hに出力軸部242のガイド軸部242bが挿通されることで、ガイド軸部242bに回転不能、かつガイド軸部242bに沿ってその軸方向にスライド移動可能に保持される。
【0121】
出力軸部242のガイド軸部242bの先端部には、ガイド軸部242bの中心軸に直交する径方向に貫通するストッパピン30Bが設けられている。このストッパピン30Bは、クラッチプレート25に対し、ホイール13w側とは反対側に設けられ、その両端部がガイド軸部242bから径方向に突出するよう設けられている。このストッパピン30Bにより、クラッチプレート25がガイド軸部242bに沿ってホイール13wから離間する方向に移動するストロークを規制する。
【0122】
また、クラッチプレート25とベアリング22との間には、スナップリング29が配されている。このスナップリング29は、出力軸部242のガイド軸部242bの外周面に固定されている。
スナップリング29と、クラッチプレート25との間には、コイルスプリング31が圧縮状態で設けられている。このコイルスプリング31により、クラッチプレート25は、ストッパピン30B側、つまりホイール13wから離間する方向に押圧されている。
ここで、スナップリング29とベアリング22との間、スナップリング29とコイルスプリング31との間には、それぞれ、円環状のシム33が挟み込まれ、クリアランス調整、付勢力調整等がなされている。
【0123】
このような構成において、クラッチプレート25は、通常状態においては、コイルスプリング31の押圧力によって、出力軸部242のガイド軸部242b上においてホイール13wから離間してストッパピン30Bに突き当たるよう位置している。この状態で、クラッチプレート25は、スプラインプレート23とは噛み合わず、クラッチ「断」の状態とされている。
また、クラッチプレート25は、コイルスプリング31の押圧力に抗して出力軸部242のガイド軸部242bに沿ってホイール13w側に移動させると、スプラインプレート23と噛み合い、クラッチ「続」の状態とされる。
【0124】
操作ノブ36は、クラッチプレート25の位置を出力軸部242のガイド軸部242bに沿って移動させることで、クラッチプレート25とスプラインプレート23の噛み合いを断続する。
【0125】
図24は、クラッチ機構を構成する操作ノブを示す斜視図である。
図21、
図24に示すように、操作ノブ36は、外形略円筒状をなし、一端36a側が閉塞され、他端36b側が開口した有底筒状をなしている。操作ノブ36の一端36a側には、径方向において互いに対向する平面部36c,36cを有した操作部36dが形成されている。操作ノブ36の他端36b側は円筒状で、出力軸部242の先端部が挿入されている。また、操作ノブ36は、他端36bがクラッチプレート25の軸挿通穴25hの外周側に突き当たるよう設けられている。この操作ノブ36の他端36b側には、その内外を貫通するガイド溝(ガイド部、溝)37が形成されている。
【0126】
図24に示すように、ガイド溝37は、クラッチプレート25を出力軸部242のガイド軸部242bに沿って移動させるもので、操作ノブ36の他端36b側において周方向で互いに対向する位置に、二個一対で形成されている。
各ガイド溝37は、操作ノブ36の軸方向に連続して他端36bに一端が開口する導入溝部37aと、導入溝部37aの他端の端部から周方向に延びるスライド溝部37bと、スライド溝部37bに連通するとともに、スライド溝部37bに対して操作ノブ36の周方向に間隔を空けた位置に形成された案内溝部37cと、を備える。
【0127】
案内溝部37cは、スライド溝部37bから操作ノブ36の軸方向に連続し、ベース部24aから離間する方向に延びる第一端部(操作始端位置)37mと、第一端部37mに対して操作ノブ36の周方向に間隔を空けた位置に形成され、操作ノブ36の軸方向に連続する第二端部37nと、第一端部37mと第二端部37nとの間に形成された螺旋状部37h、凸部37j、およびロック部(操作終端位置、ロック機構)37kと、を有する。
【0128】
螺旋状部37hは、第一端部37m側から第二端部37n側に向かって、操作ノブ36の一端36a側に接近するよう形成された螺旋状に形成されている。螺旋状部37hの第二端部37n側の端部には、操作ノブ36の軸方向に沿って一端36a側に突出する凸部37jが形成されている。さらに、凸部37jに隣接して、案内溝部37cの第二端部37nには、操作ノブ36の軸方向に沿って他端36b側に延出するロック部37kが形成されている。
【0129】
この操作ノブ36は、ホルダー24Bの筒状部24t内に挿入配置される。筒状部24tの内側で、出力軸部242のガイド軸部242bの先端部に設けられたストッパピン30Bの両端部30sが、操作ノブ36に形成されたガイド溝37に係合している。
操作ノブ36は、ストッパピン30Bの端部30sが、案内溝部37cの螺旋状部37hで第一端部37m側に位置している状態では、クラッチプレート25および操作ノブ36が、コイルスプリング31の押圧力によって、出力軸部242のガイド軸部242bに沿ってホイール13wから離間する方向にスライドし、クラッチプレート25がストッパピン30Bに突き当たる。この状態で、クラッチプレート25は、スプラインプレート23に対して噛み合わず、クラッチ「断」の状態とされる。
【0130】
この状態から操作ノブ36を所定方向に回すと、ストッパピン30Bが、ガイド溝37の案内溝部37c内で、第一端部37m側から第二端部37n側に向かって周方向に相対的に移動する。すると、ストッパピン30Bが案内溝部37cの螺旋状部37hによって軸方向に押圧される。これにより、操作ノブ36を回転させるにしたがって、操作ノブ36がホルダー24B内でホイール13w側に引き込まれ、操作ノブ36とともにクラッチプレート25が出力軸部242のガイド軸部242bに沿ってスプラインプレート23側に接近する。
【0131】
操作ノブ36をさらに回転させると、ストッパピン30Bが螺旋状部37hに沿って周方向に移動して凸部37jを乗り越え、第二端部37nでロック部37kに入り込む。ストッパピン30Bがロック部37kに入り込んだ状態で、クラッチプレート25がスプラインプレート23の内側に位置し、クラッチプレート25の外歯25gがスプラインプレート23の内歯23gに噛み合う。このとき、ストッパピン30Bがロック部37kに入り込むと、ストッパピン30Bが第二端部37nに突き当たることによって、操作ノブ36のそれ以上の回転が規制される。
【0132】
また、操作ノブ36の操作者は、ストッパピン30Bがロック部37kに入り込むとともに、ストッパピン30Bが第二端部37nに周方向から突き当たることを感知することができる。
このようにして、クラッチプレート25をスプラインプレート23にかみ合わせて、クラッチを「続」の状態とすることができる。
【0133】
ここで、
図22に示すように、操作ノブ36の向きが、クラッチを「続」の状態にあることを使用者が認識出来るよう、ホルダー24Bの筒状部24tにおいて操作ノブ36の外周側に位置する部分に、「ON」といった表示部24Nを形成することができる。すなわち、ストッパピン30Bの端部30sがロック部37kに位置しているときに、操作ノブ36の平面部36cが、「ON」の表示部24Nに一致するようにする。これにより、操作者は、操作ノブ36の向きと表示部24Nとを視認することで、クラッチが「続」の状態にあるか否かを容易に認識することができる。
【0134】
このようにして操作ノブ36を所定方向に回転させるとき、クラッチプレート25の外歯25gとスプラインプレート23の内歯23gの位相が周方向にずれていて、外歯25gと内歯23gとが干渉して噛み合わないことがある。この場合、ストッパピン30Bは、ロック部37kに入り込む手前に位置し、螺旋状部37hの第二端部37nに突き当たらない。したがって、操作ノブ36の操作者は、ストッパピン30Bがロック部37kに入り込んで回転がロックされたことを感知することができない。
【0135】
言い換えると、クラッチプレート25がスプラインプレート23の内側に入り込んでクラッチプレート25の外歯25gがスプラインプレート23の内歯23gに噛み合わない限り、ストッパピン30Bがロック部37kに入り込まない。したがって、操作ノブ36がロックされず、操作者が操作ノブ36を離すと、コイルスプリング31の押圧力によって、操作ノブ36が回転して元の位置に戻ってしまう。したがって、操作ノブ36の操作者は、ストッパピン30Bがロック部37kに入り込んで回転がロックされていないことを容易に感知することができる。
【0136】
また、クラッチを「続」の状態とするために操作ノブ36を所定方向に回転させても、クラッチプレート25の外歯25gとスプラインプレート23の内歯23gの位相が周方向にずれていて、外歯25gと内歯23gとが干渉して噛み合わない場合、操作ノブ36をさらに回転させる。すると、操作ノブ36とクラッチプレート25との間に生じる摩擦力によって、操作ノブ36とともにクラッチプレート25を回転させ、スプラインプレート23と噛み合いやすくすることができる。
【0137】
クラッチを「続」の状態から「断」の状態に移行させるには、操作ノブ36を一旦ホイール13w側に押し込んだ後、上記とは反対方向に回転させる。すると、ストッパピン30Bが操作ノブ36の一端36a側に移動してロック部37kから抜け出した後、凸部37jを乗り越えて螺旋状部37hに移動する。さらに操作ノブ36を回転させれば、ストッパピン30Bが螺旋状部37hに沿って周方向に移動しながら操作ノブ36の他端36b側に相対的に移動する。
【0138】
これにより、操作ノブ36およびクラッチプレート25が、コイルスプリング31の押圧力によって押圧されながら、スプラインプレート23から離脱してホイール13wから離間する方向にスライドする。ストッパピン30Bが螺旋状部37hで第一端部37mに突き当たると、操作ノブ36のそれ以上の回転が規制される。これにより、操作ノブ36の操作者は、操作ノブ36の回転が規制されることによって、クラッチが「断」状態となったことを感知することができる。
【0139】
ストッパピン30Bが案内溝部37cで第一端部37mに突き当たった状態にあるとき、操作ノブ36を押し込んで回転させると、ストッパピン30Bがスライド溝部37bを通り、導入溝部37aに入り込む。これにより、操作ノブ36を、ホルダー24Bの筒状部24t内から引き出すことができる。これによって、操作ノブ36をホルダー24Bから取り外して、メンテナンス等を行うことができる。
【0140】
図15、
図16に示すように、駆動ユニット20Bは、上記第1の実施形態で示した駆動ユニット20Aと同様、ブラケット100を介してフレーム11に装着されている。ここで、これら駆動ユニット20Bと、ブラケット100とから、電動アシスト車輪ユニットBが構成されている。
【0141】
(効果)
本第2の実施形態によれば、クラッチプレート25とスプラインプレート23とが噛み合ったときのみ、ストッパピン30Bが、操作ノブ36のロック部37kに到達する、すなわち、クラッチプレート25とスプラインプレート23とが噛み合わない限り、ストッパピン30Bが操作ノブ36のロック部37kに到達しない。これにより、ストッパピン30Bが操作ノブ36のロック部37kに係合するか否かにより、クラッチ機構C2の噛合状態を容易に感知することができる。
【0142】
また、クラッチプレート25がスプラインプレート23と噛み合ったときに、ストッパピン30Bがロック部37kに係合して操作ノブ36の回転が拘束されることで、クラッチプレート25とスプラインプレート23との噛合状態が維持される。
さらに、操作ノブ36の回転がロック部37kによって拘束されることを感知することによって、クラッチ機構C2の噛合状態を確実に感知することができる。
【0143】
また、クラッチプレート25とスプラインプレート23とが噛み合わない限り、操作ノブ36がロックされないので、スプラインプレート23との噛合位置に向かってクラッチプレート25を移動させる方向に操作力を加えていた操作ノブ36から手を離せば、コイルスプリング31の付勢力によってクラッチプレート25とともに操作ノブ36が元に戻る。これにより、クラッチ機構C2の噛合状態を確実に把握することができる。
【0144】
さらに、操作ノブ36は、クラッチプレート25を直接押圧するので、操作ノブ36の操作がコイルスプリング31によって吸収されることがなく、クラッチプレート25をダイレクトに操作することができる。したがって、クラッチプレート25がスプラインプレート23に噛み合っているか否かを確実に感知することができる。
【0145】
また、車輪13r側に設けられたガイド溝37に沿ってストッパピン30Bが案内されることで、クラッチプレート25を操作するときの操作ノブ36の動作が案内され、操作ノブ36を確実に操作することができる。
【0146】
さらに、操作ノブ36の動作は、ストッパピン30Bの両端部30tがガイド溝37によって案内されることで、駆動軸240の軸回りに回転しながらクラッチプレート25を駆動軸240の軸方向に沿ってスプラインプレート23側に移動させるものとなり、クラッチプレート25を確実に移動させることができる。
このような操作ノブ36の動作は、操作ノブ36とクラッチプレート25との間に生じる摩擦力によって、操作ノブ36とともにクラッチプレート25を回転させることになる。したがって、クラッチプレート25とスプラインプレート23とが噛み合わない場合に、操作ノブ36の回転にともなってクラッチプレート25を回転させて、スプラインプレート23と噛み合いやすくすることができる。これにより、クラッチプレート25とスプラインプレート23との噛合を確実に行うことが可能となる。
【0147】
また、駆動軸240に、クラッチプレート25の操作ノブ36側への移動量を拘束するストッパピン30Bが設けられている。このような構成によれば、コイルスプリング31によって操作ノブ36側に向かって付勢されるクラッチプレート25が、クラッチが「断」の時に操作ノブ36と接触して抵抗になることを防止できる。
【0148】
さらに、操作ノブ36が、操作終端位置であることを表示する表示部24Nが形成されている。このような構成によれば、操作者は、操作ノブ36の向きが表示部24Nに一致していることを視認することによって、クラッチプレート25とスプラインプレート23との噛合状態を確実に認識することができる。
【0149】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上述の各実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
【0150】
例えば、上記各実施形態において、操作ノブ26、36を螺旋状に回転させることで、クラッチプレート25を押圧するようにしたが、これに限らない。クラッチプレート25を、スプラインプレート23に向かって接離するよう、操作ノブ26、36を、プランジャ等によって、直動動作させることも可能である。
【0151】
また、上記各実施形態では、手押し移動体として電動アシストシルバーカー10を例に挙げたが、もちろん、これに限らず、ベビーカーや、ショッピングカート、リハビリテーション用歩行車、台車等にも本発明を同様に適用することができる。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。