(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
リン酸エステル系化合物(IX)を更に含有し、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂(I)と前記ポリプロピレン系樹脂(II)との合計100質量部に対して、前記リン酸エステル系化合物(IX)を5〜30質量部を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」ともいう)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0014】
(樹脂組成物)
本実施形態の樹脂組成物は、強化された難燃性樹脂組成物である。本実施形態の樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル系樹脂(I)と、ポリプロピレン系樹脂(II)と、水素添加ブロック共重合体(III)と、タルク(IV)、ワラストナイト(V)、マイカ(VI)からなる群より選択される1種以上の無機フィラーと、ホスフィン酸塩類(VII)と、ピロリン酸メラミン(VIII)と、任意選択的に、リン酸エステル系化合物(IX)、成分(I)及び成分(II)以外の熱可塑性樹脂(X)、成分(I)〜成分(X)以外のその他の添加剤(XI)を含有する。なお、本実施形態において難燃性に優れるとは、UL94垂直燃焼試験において難燃レベルV−1以上であることを指す。
以下、本実施形態の樹脂組成物の成分について記載する。
【0015】
−ポリフェニレンエーテル系樹脂(I)−
本実施形態で用いられるポリフェニレンエーテル系樹脂(I)としては、特に限定されることなく、例えば、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、及び両者の混合物等が挙げられる。成分(I)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
【0016】
成分(I)の還元粘度は、樹脂組成物の難燃性を更に向上させる観点から、0.25dL/g以上であることが好ましく、0.28dL/g以上であることが更に好ましく、また、0.45dL/g以下であることが好ましく、0.36dL/g以下であることが更に好ましく、0.35dL/g以下であることが特に好ましい。還元粘度は、重合時間や触媒量により制御することができる。
なお、還元粘度は、ηsp/c:0.5g/dLのクロロホルム溶液を用いて、温度30℃の条件下測定することができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0017】
−−ポリフェニレンエーテル−−
ポリフェニレンエーテルとしては、特に限定されることなく、例えば、下記式(3)で表される繰り返し単位構造からなる単独重合体及び/又は下記式(3)で表される繰り返し単位構造を有する共重合体が挙げられる。
【化3】
[式中、R
31、R
32、R
33、及びR
34は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜7の第1級のアルキル基、炭素原子数1〜7の第2級のアルキル基、フェニル基、ハロアルキル基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基、及び少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを隔てているハロ炭化水素オキシ基からなる群より選ばれる一価の基である]
【0018】
このようなポリフェニレンエーテルとしては、特に限定されることなく、公知のものを用いることができる。ポリフェニレンエーテルの具体例としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等の単独重合体;2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールや2−メチル−6−ブチルフェノール等の他のフェノール類との共重合物等の共重合体;が挙げられ、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合物が好ましく、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)が更に好ましい。
【0019】
ポリフェニレンエーテルの製造方法としては、特に限定されることなく、従来公知の方法を用いることができる。ポリフェニレンエーテルの製造方法の具体例としては、例えば、第一銅塩とアミンとのコンプレックスを触媒として用いて、例えば、2,6−キシレノールを酸化重合することによって製造する、米国特許第3306874号明細書等に記載される方法や、米国特許第3306875号明細書、米国特許第3257357号明細書、米国特許第3257358号明細書、特公昭52−17880号公報、特開昭50−51197号公報、特開昭63−152628号公報等に記載される方法等が挙げられる。
【0020】
−−変性ポリフェニレンエーテル−−
変性ポリフェニレンエーテルとしては、特に限定されることなく、例えば、上記のポリフェニレンエーテルに、スチレン系重合体又はその誘導体をグラフト化又は付加させたもの等が挙げられる。グラフト化又は付加による質量増加の割合は、特に限定されることなく、変性ポリフェニレンエーテル100質量%に対して、0.01質量%以上であることが好ましく、また、10質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることが更に好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。
【0021】
変性ポリフェニレンエーテルの製造方法としては、特に限定されることなく、例えば、ラジカル発生剤の存在下又は非存在下で、溶融状態、溶液状態又はスラリー状態において、80〜350℃の条件下で、上記のポリフェニレンエーテルとスチレン系重合体又はその誘導体とを反応させる方法等が挙げられる。
【0022】
本実施形態で用いられるポリフェニレンエーテル系樹脂(I)が、ポリフェニレンエーテルと変性ポリフェニレンエーテルとの混合物である場合には、上記のポリフェニレンエーテルと上記の変性ポリフェニレンエーテルとの混合割合は、特に限定されることなく、任意の割合としてよい。
【0023】
−ポリプロピレン系樹脂(II)−
本実施形態で用いられるポリプロピレン系樹脂(II)としては、特に限定されることなく、例えば、ポリプロピレン、変性ポリプロピレン、及び両者の混合物等が挙げられる。成分(II)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
【0024】
成分(II)の重量平均分子量(Mw)は、樹脂組成物について、燃焼時のドローダウンを抑制し、流動性と機械的強度とのバランスを高める観点から、400,000以上であることが好ましく、700,000以上であることが更に好ましく、750,000以上であることが特に好ましく、また、1,500,000以下であることが好ましく、1,300,000以下であることが更に好ましい。
なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」ともいう)を用いて、従来公知の方法により求めることができ、ここで、移動相としては、特に限定されることなく、例えば、o−ジクロロベンゼンを用いることができ、標準物質としては、特に限定されることなく、例えば、ポリスチレンを用いることができる。重量平均分子量(Mw)は、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0025】
−−ポリプロピレン−−
ポリプロピレンとしては、特に限定されることなく、例えば、プロピレンを繰り返し単位構造とする単独重合体及び/又は共重合体等が挙げられ、結晶性プロピレン単独重合体、結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体、結晶性プロピレン単独重合体と結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体との混合物が好ましい。
【0026】
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体としては、特に限定されることなく、例えば、結晶性プロピレン単独重合体部分とプロピレン−エチレンランダム共重合体部分とを有するもの等が挙げられる。
【0027】
ポリプロピレンのメルトフローレート(以下、「MFR」ともいう)は、樹脂組成物について、燃焼時のドローダウンを抑制し、流動性と機械的強度とのバランスを高める観点から、0.1g/10分以上であることが好ましく、0.3g/10分以上であることが更に好ましく、また、10g/10分以下であることが好ましく、6g/10分以下であることが更に好ましく、3g/10分以下であることが特に好ましい。
なお、MFRは、ISO1133に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件下で測定することができる。MFRは、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0028】
ポリプロピレンの製造方法としては、特に限定されることなく、公知のものを用いることができる。
ポリプロピレンの製造方法の具体例としては、例えば、三塩化チタン触媒又は塩化マグネシウム等の担体に担持されたハロゲン化チタン触媒等とアルキルアルミニウム化合物とを含む重合触媒組成物の存在下で、温度0〜100℃、圧力3〜100気圧の条件下で、プロピレンを重合する方法等が挙げられる。
上記方法では、重合体の分子量を調整するため、水素等の連鎖移動剤を添加してもよい。
また、上記方法では、重合系に、上記の重合触媒組成物以外に、得られるポリプロピレンのアイソタクティシティ及び重合系の重合活性を高めるため、電子供与性化合物を内部ドナー成分又は外部ドナー成分として、更に含めることができる。これらの電子供与性化合物としては、特に限定されることなく、公知のものを用いることができる。電子供与性化合物の具体例としては、例えば、ε−カプロラクトン、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル、トルイル酸メチル等のエステル化合物;亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリブチル等の亜リン酸エステル;ヘキサメチルホスホリックトリアミド等のリン酸誘導体;アルコキシエステル化合物;芳香族モノカルボン酸エステル;芳香族アルキルアルコキシシラン;脂肪族炭化水素アルコキシシラン;各種エーテル化合物;各種アルコール類;各種フェノール類等が挙げられる。
上記方法における重合方式としては、バッチ式、連続式いずれの方式としてもよく、重合方法としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の溶媒を用いた溶液重合やスラリー重合、更には、無溶媒で、単量体中での塊状重合やガス状重合体中での気相重合方法等としてよい。
【0029】
ポリプロピレンの製造方法の中でも、特に、結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体の製造方法としては、特に限定されることなく、例えば、結晶性プロピレン単独重合体部分を得る第一工程と、該結晶性プロピレン単独重合体部分と、エチレン及び必要に応じて加えられる他のα−オレフィンと、を共重合することによって、結晶性プロピレン単独重合体部分と結合したプロピレン−エチレンブロック共重合体部分を得る第二工程と、を含む方法等が挙げられる。ここで、他のα−オレフィンとしては、特に限定されることなく、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン等が挙げられる。
【0030】
−−変性ポリプロピレン−−
変性ポリプロピレンとしては、特に限定されることなく、例えば、上記のポリプロピレンに、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体(例えば、酸無水物、エステル等)をグラフト化又は付加させたもの等が挙げられる。グラフト化又は付加による質量増加の割合は、特に限定されることなく、変性ポリプロピレン100質量%に対して、0.01質量%以上であることが好ましく、10質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることが更に好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。
【0031】
変性ポリプロピレンの製造方法としては、特に限定されることなく、例えば、ラジカル発生剤の存在下又は非存在下で、溶融状態、溶液状態又はスラリー状態において、30〜350℃の条件下で、上記のポリプロピレンとα,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体とを反応させる方法等が挙げられる。
【0032】
本実施形態で用いられるポリプロピレン系樹脂(II)が、ポリプロピレンと変性ポリプロピレンとの混合物である場合には、上記のポリプロピレンと変性ポリプロピレンとの混合割合は、特に限定されることなく、任意の割合としてよい。
【0033】
−水素添加ブロック共重合体(III)−
本実施形態で用いられる水素添加ブロック共重合体(III)としては、特に限定されることなく、例えば、未変性水素添加ブロック共重合体、変性水素添加ブロック共重合体、及び両者の混合物等が挙げられる。成分(III)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
成分(III)は、前述の成分(I)と前述の成分(II)との混和剤又は耐衝撃性付与剤として作用する。
【0034】
水素添加ブロック共重合体(III)は、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBとを含むブロック共重合体の少なくとも一部が水素添加されたものである。ここで、重合体ブロックBにおける共役ジエン化合物の1,2−ビニル結合量と3,4−ビニル結合量との合計(以下、「全ビニル結合量」ともいう、後述)が30〜90%である。
【0035】
以下、未変性及び変性水素添加ブロック共重合体に関する事項について記載する。
【0036】
−−−ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックA−−−
ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAとしては、特に限定されることなく、例えば、ビニル芳香族化合物の単独重合体ブロック、又はビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体ブロックが挙げられる。
なお、重合体ブロックAにおいて「ビニル芳香族化合物を主体とする」とは、水素添加前の重合体ブロックAにおけるビニル芳香族化合物部分の含有量が、50質量%超であることを指し、該含有量は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、また、100質量%以下としてよい。
【0037】
重合体ブロックAを構成するビニル芳香族化合物としては、特に限定されることなく、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−tert−ブチルスチレン、ジフェニルエチレン等が挙げられ、スチレンが好ましい。上記のビニル芳香族化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
【0038】
重合体ブロックAの数平均分子量(Mn)は、樹脂組成物の耐熱クリープ性を向上させる観点から、15,000以上であることが好ましく、20,000以上であることが更に好ましく、25,000以上であることが特に好ましく、また、100,000以下であることが好ましい。
なお、数平均分子量(Mn)は、GPC(移動層:クロロホルム、標準物質:ポリスチレン)を用いて、従来公知の方法により求めることができる。数平均分子量(Mn)は、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0039】
−−−共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックB−−−
共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBとしては、特に限定されることなく、例えば、共役ジエン化合物の単独重合体ブロック、又は共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物との共重合体ブロックが挙げられる。
なお、重合体ブロックBにおいて「共役ジエン化合物を主体とする」とは、水素添加前の重合体ブロックBにおける共役ジエン化合物部分の含有量が、50質量%超であることを指し、樹脂組成物の流動性を高める観点から、該含有量は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、また、100質量%以下としてよい。
【0040】
重合体ブロックBを構成する共役ジエン化合物としては、特に限定されることなく、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等が挙げられ、ブタジエン、イソプレン、及びこれらの組み合わせが好ましく、ブタジエンが更に好ましい。上記の共役ジエン化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
【0041】
ここで、重合体ブロックBのミクロ構造(共役ジエン化合物の結合形態)において、1,2−ビニル結合量と3,4−ビニル結合量との合計(全ビニル結合量)は、重合体ブロックBの成分(II)への相溶性を高める観点から、30%以上であり、45%以上であることが好ましく、65%以上であることが更に好ましく、また、90%以下である。
なお、1,2−ビニル結合量及び3,4−ビニル結合量の合計(全ビニル結合量)とは、水素添加前の重合体ブロックBにおける、1,2−ビニル結合量と3,4−ビニル結合量との合計の、1,2−ビニル結合量と、3,4−ビニル結合量と、1,4−共役結合量との合計に対する割合を指す。全ビニル結合量は、赤外分光光度計を用いて測定し、Analytical Chemistry,Volume21,No.8,August 1949に記載の方法に準じて算出することができる。
【0042】
上記の重合体ブロックAと重合体ブロックBとを含むブロック共重合体の合成方法としては、特に限定されることなく、例えば、アニオン重合等の公知の方法が挙げられる。
【0043】
未変性及び変性水素添加ブロック共重合体のブロック共重合体のブロック構造としては、特に限定されることなく、例えば、重合体ブロックAを「A」と、重合体ブロックBを「B」と表すと、成分(III)としては、A−B、A−B−A、B−A−B−A、(A−B−)
4M、A−B−A−B−A等の構造が挙げられる。ここで、(A−B−)
4Mは、四塩化ケイ素(M=Si)、四塩化スズ(M=Sn)等といった多官能カップリング剤の反応残基、又は多官能性有機リチウム化合物等の開始剤の残基等である。
【0044】
未変性及び変性水素添加ブロック共重合体のブロック共重合体の分子構造としては、特に限定されることなく、例えば、直鎖状、分岐状、放射状、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
ブロック共重合体に含まれる重合体ブロックAにおける分子鎖中のビニル芳香族化合物、及び重合体ブロックBにおける分子鎖中の共役ジエン化合物の分布としては、特に限定されることなく、例えば、ランダム、テーパード(分子鎖に沿って単量体部分が増加又は減少するもの)、一部ブロック状、又はこれらの組み合わせ挙げられる。
ブロック共重合体中に重合体ブロックA又は重合体ブロックBのいずれかが複数個以上含まれる場合には、複数の重合体ブロックA又は複数の重合体ブロックB同士は、それぞれ同一構造であってもよいし、異なる構造であってもよい。
【0045】
重合体ブロックAと重合体ブロックBとを含むブロック共重合体全体について、水素添加ブロック共重合体(III)の流動性、耐衝撃性、外観性を向上させ、ウェルド発生を低減する観点から、水素添加前のブロック共重合体におけるビニル芳香族化合物の含有量は、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることが更に好ましく、また、95質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることが更に好ましい。
なお、ビニル芳香族化合物の含有量は、紫外線分光光度計を用いて測定することができる。
【0046】
水素添加前のブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は、5,000以上であることが好ましく、10,000以上であることが更に好ましく、30,000以上であることが特に好ましく、また、1,000,000以下であることが好ましく、800,000以下であることが更に好ましく、500,000以下であることが特に好ましい。
なお、数平均分子量は、GPC(移動層:クロロホルム、標準物質:ポリスチレン)を用いて、従来公知の方法により求めることができる。
【0047】
水素添加前のブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、10以下であることが好ましく、8以下であることが更に好ましく、5以下であることが特に好ましい。
なお、分子量分布(Mw/Mn)は、GPC(移動層:クロロホルム、標準物質:ポリスチレン)を用いて、従来公知の方法により求めた重量平均分子量(Mw)を、前述の数平均分子量(Mn)で除することによって算出することができる。
【0048】
ブロック共重合体を水素添加する方法としては、特に限定されることなく、例えば、(1)Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水添触媒、(2)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩等の遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒、(3)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等の均一系水添触媒を用いて、例えば、反応温度0〜200℃、水素圧力0.1〜15MPaの条件下で、水素添加する方法が挙げられる。
【0049】
未変性及び変性水素添加ブロック共重合体中の重合体ブロックBを構成する共役ジエン化合物部分に対する水素添加率は、特に限定されることなく、樹脂組成物の耐熱性を高める観点から、共役ジエン化合物に由来する二重結合の総量に対して、50%以上であることが好ましく、80%以上であることが更に好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
なお、水素添加率は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて測定することができる。
【0050】
未変性及び変性水素添加ブロック共重合体の製造方法としては、特に限定されることなく、公知の製造方法を用いることができる。公知の製造方法の具体例としては、例えば、特開昭47−11486号公報、特開昭49−66743号公報、特開昭50−75651号公報、特開昭54−126255号公報、特開昭56−10542号公報、特開昭56−62847号公報、特開昭56−100840号公報、特開平2−300218号公報、英国特許第1130770号明細書、米国特許第3281383号明細書、米国特許第3639517号明細書、英国特許第1020720号明細書、米国特許第3333024号明細書、及び米国特許第4501857号明細書に記載の方法等が挙げられる。
【0051】
以下、特に、変性水素添加ブロック共重合体に関する事項について記載する。
【0052】
(変性水素添加ブロック共重合体)
変性水素添加ブロック共重合体は、上記の未変性水素添加ブロック共重合体に、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体(例えば、酸無水物、エステル等)をグラフト化又は付加させたものである。
【0053】
グラフト化又は付加による質量増加の割合は、特に限定されることなく、未変性水素添加ブロック共重合体100質量%に対して、0.01質量%以上であることが好ましく、10質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることが更に好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。
【0054】
変性水素添加ブロック共重合体の製造方法としては、特に限定されることなく、例えば、ラジカル発生剤の存在下又は非存在下、溶融状態、溶液状態又はスラリー状態で、80〜350℃の条件下で、上記の未変性水素添加ブロック共重合体とα,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体とを反応させる方法等が挙げられる。
【0055】
−タルク(IV)−
本実施形態で用いられるタルク(IV)は、化学名が含水珪酸マグネシウムである物質であり、一般的に、SiO
2約60%、MgO約30%、結晶水4.8%を主成分とする。
【0056】
タルク(IV)のJIS K−8123に準じて測定した白色度は、93%以上であるが好ましい。
タルク(IV)のレーザー回折法により測定した平均粒子径(D50)は、樹脂組成物の摺動性及び水蒸気バリア性を向上させる観点から、10μm超であることが好ましく、また、20μm未満であることが好ましく、15μm以下であることが更に好ましい。
【0057】
タルク(IV)は、樹脂との親和性を向上させる観点から、公知の表面処理剤を用いて処理されていてもよい。このような表面処理剤としては、特に限定されることなく、例えば、アミノシラン、エポキシシラン等のシランカップリング剤;チタネート系カップリング剤;脂肪酸(飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸);脂環族カルボン酸及び樹脂酸;金属石鹸等が挙げられる。表面処理剤の添加量は、特に限定されることなく、タルク(IV)100質量%に対して、3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることが更に好ましく、実質的に添加されていないことが最も好ましい。
【0058】
タルク(IV)の市販品としては、特に限定されることなく、例えば、日本タルク社製のタルクMS、MS−KY、竹原化学工業社製のハイトロンA等が挙げられる。
【0059】
−ワラストナイト(V)−
本実施形態で用いられるワラストナイト(V)は、化学名が珪酸カルシウム(CaSiO
3)である物質であり、一般的に、主成分としてSiO
2とCaOとをほぼ等量含有し、微量成分としてAl
2O
3、Fe
2O
3等を含有する物質である。
【0060】
ワラストナイト(V)の数平均繊維径は、樹脂組成物の摺動性及び水蒸気バリア性を向上させる観点から、3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることが更に好ましく、7μm以上であることが特に好ましい。
なお、数平均繊維径とは、ワラストナイト(V)を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察することによって測定される、ワラストナイト(V)の繊維一本当たりの平均繊維径(μm)を指す。
【0061】
ワラストナイト(V)は、樹脂との親和性を向上させる観点から、公知の表面処理剤を用いて処理されていてもよい。このような表面処理剤としては、特に限定されることなく、例えば、アミノシラン、エポキシシラン等のシランカップリング剤;チタネート系カップリング剤;脂肪酸(飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸);脂環族カルボン酸及び樹脂酸;金属石鹸等が挙げられる。表面処理剤の添加量は、特に限定されることなく、ワラストナイト(V)100質量%に対して、3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることが更に好ましく、実質的に添加されていないことが最も好ましい。
【0062】
ワラストナイト(V)の市販品としては、特に限定されることなく、例えば、NYCO社製のNYGLOS、NYCO社製のNYAD、竹原化学工業社製のVM−8N等が挙げられる。
【0063】
−マイカ(VI)−
本実施形態で用いられるマイカ(VI)は、鱗片状のケイ酸アルミニウム系鉱物である。マイカ(VI)は、化学組成や外見上の色の違いにより、白マイカ(KAl
2AlSi
3O
10(OH)
2)、黒マイカ(K(Mg,Fe)
3AlSi
3O
10(OH)
2)、金マイカ(KMg
3AlSi
3O
10(OH)
2)、KLi
2Al(Si
4O
10)(OH)
3(鱗マイカ)、NaAl
2(AlSi
3O
10)(OH)
2(ソーダマイカ)、KMg
3(AlSi
3O
10)F
2(フッ素金マイカ)等がある。これらのマイカは、いずれも壁開性を有している。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
【0064】
マイカ(VI)の平均板径は、水蒸気バリア性を向上させる観点から、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることが更に好ましく、50μm以上であることが特に好ましい。
なお、平均板径とは、マイカ(VI)を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察することによって測定される、マイカ(VI)の粒子1個当たりの平均板径(μm)を指す。
【0065】
マイカ(VI)の市販品としては、特に限定されることなく、例えば、西日本貿易(株)製のBHTマイカ、西日本貿易(株)製のスゾライトマイカ、クラレ製のクラライトマイカ等が挙げられる。
【0066】
−ホスフィン酸塩類(VII)−
本実施形態で用いられるホスフィン酸塩類(VII)としては、
下記式(1)で表されるホスフィン酸塩
【化4】
[式中、R
11及びR
12は、各々独立して、直鎖状若しくは分岐状の炭素原子数1〜6のアルキル基及び/又は炭素原子数6〜10のアリール基であり;M
1は、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、ビスマスイオン、マンガンイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン及びプロトン化された窒素塩基からなる群より選ばれる少なくとも1種であり;aは、1〜3の整数であり;mは、1〜3の整数であり;a=mである]
及び
下記式(2)で表されるジホスフィン酸塩
【化5】
[式中、R
21及びR
22は、各々独立して、直鎖状若しくは分岐状の炭素原子数1〜6のアルキル基及び/又は炭素原子数6〜10のアリール基であり;R
23は、直鎖状若しくは分岐状の炭素原子数1〜10のアルキレン基、炭素原子数6〜10のアリーレン基、炭素原子数6〜10のアルキルアリーレン基又は炭素原子数6〜10のアリールアルキレン基であり;M
2は、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、ビスマスイオン、マンガンイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン及びプロトン化された窒素塩基からなる群より選ばれる少なくとも1種であり;bは、1〜3の整数であり;nは、1〜3の整数であり;jは、1又は2の整数であり;b・j=2nである]
からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0067】
また、ホスフィン酸塩類(VII)は、上記式(1)で表されるホスフィン酸塩と上記式(2)で表されるジホスフィン酸塩との混合物としてもよい。
【0068】
このようなホスフィン酸塩類(VII)としては、特に限定されることなく、例えば、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸マグネシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸マグネシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸マグネシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛、メチル−n−プロピルホスフィン酸カルシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸マグネシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸アルミニウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸亜鉛、メタンジ(メチルホスフィン酸)カルシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)マグネシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)アルミニウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)亜鉛、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)カルシウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)マグネシウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)アルミニウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)亜鉛、メチルフェニルホスフィン酸カルシウム、メチルフェニルホスフィン酸マグネシウム、メチルフェニルホスフィン酸アルミニウム、メチルフェニルホスフィン酸亜鉛、ジフェニルホスフィン酸カルシウム、ジフェニルホスフィン酸マグネシウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ジフェニルホスフィン酸亜鉛が挙げられ、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛であることが好ましく、ジエチルホスフィン酸アルミニウムであることが更に好ましい。
【0069】
ホスフィン酸塩類(VII)の市販品としては、特に限定されることなく、例えば、クラリアントジャパン社製のExolit(登録商標) OP1230、OP1240、OP1311、OP1312、OP930、OP935等が挙げられる。
【0070】
−ピロリン酸メラミン(VIII)−
本実施形態で用いられるピロリン酸メラミン(VIII)は、メラミンとピロリン酸(リン酸の2量体)とを反応させることによって得られる。
【0071】
ピロリン酸メラミン(VIII)の市販品としては、特に限定されることなく、例えば、Sunshine Commercial & Industrial Corp製のMPP−B等が挙げられる。
【0072】
−リン酸エステル系化合物(IX)−
本実施形態で任意選択的に用いられるリン酸エステル系化合物(IX)としては、特
に限定されることなく、樹脂組成物の難燃性向上の効果を有するリン酸エステル化合物全般(リン酸エステル化合物、縮合リン酸エステル化合物等)としてよく、例えば、トリフェニルフォスフェート、フェニルビスドデシルホスフェート、フェニルビスネオペンチルホスフェート、フェニル−ビス(3,5,5'−トリメチル−ヘキシルホスフェート)、エチルジフェニルホスフェート、2−エチル−ヘキシルジ(p−トリル)ホスフェート、ビス−(2−エチルヘキシル)−p−トリルホスフェート、トリトリルホスフェート、ビス−(2−エチルヘキシル)フェニルホスフェート、トリ−(ノニルフェニル)ホスフェート、ジ(ドデシル)−p−トリルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジブチルフェニルホスフェート、2−クロロエチルジフェニルホスフェート、p−トリルビス(2,5,5'−トリメチルヘキシル)ホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、ビスフェノールA・ビス(ジフェニルホスフェート)、ジフェニル−(3−ヒドロキシフェニル)ホスフェート、ビスフェノールA・ビス(ジクレジルホスフェート)、レゾルシン・ビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシン・ビス(ジキシレニルホスフェート)、2−ナフチルジフェニルフォスフェート、1−ナフチルジフェニルフォスフェート、ジ(2−ナフチル)フェニルホスフェート等が挙げられる。
【0073】
特に、リン酸エステル系化合物(IX)としては、
下記式(4)
【化6】
[式中、Q
41、Q
42、Q
43、Q
44は、各々独立して、炭素原子数1〜6のアルキル基であり;R
41、R
42は、各々独立して、メチル基であり;R
43、R
44は、各々独立して、水素原子又はメチル基であり;xは0以上の整数であり;p
1、p
2、p
3、p
4は、それぞれ、0〜3の整数であり;q
1、q
2は、それぞれ、0〜2の整数である]
又は
下記式(5)
【化7】
[式中、Q
51、Q
52、Q
53、Q
54は、各々独立して、炭素原子数1〜6のアルキル基であり;R
51は、メチル基であり;yは0以上の整数であり;r
1、r
2、r
3、r
4は、それぞれ、0〜3の整数であり;s
1は、それぞれ、0〜2の整数である]
で表される芳香族縮合リン酸エステル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とするもの好ましい。
【0074】
なお、上記式(4)及び上記式(5)で表される縮合リン酸エステル化合物は、それぞれ複数種の分子を含んでよく、各分子について、nは、1〜3の整数であることが好ましい。
【0075】
上記式(4)及び上記式(5)で表される縮合リン酸エステル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とする好適なリン酸エステル系化合物(IX)では、全体として、nの平均値が1以上であることが好ましい。上記の好適なリン酸エステル系化合物(IX)は、一般に、nが1〜3である化合物を90%以上含む混合物として入手することができ、nが1〜3である化合物以外に、nが4以上である多量体やその他の副生成物を含む。
【0076】
−成分(I)及び成分(II)以外の熱可塑性樹脂(X)−
本実施形態で任意選択的に用いられる、成分(I)及び成分(II)以外の熱可塑性樹脂(X)としては、特に限定されることなく、例えば、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン等が挙げられる。
【0077】
−成分(I)〜成分(X)以外のその他の添加剤(XI)−
本実施形態で任意選択的に用いられる、成分(I)〜成分(X)以外のその他の添加剤(XI)としては、特に限定されることなく、例えば、ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物のブロック共重合体、オレフィン系エラストマー、酸化防止剤、金属不活性化剤、熱安定剤、成分(VII)〜成分(IX)以外の難燃剤(ポリリン酸アンモニウム系化合物、水酸化マグネシウム、芳香族ハロゲン系難燃剤、シリコーン系難燃剤、ホウ酸亜鉛等)、フッ素系ポリマー、可塑剤(低分子量ポリエチレン、エポキシ化大豆油、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類等)、三酸化アンチモン等の難燃助剤、耐候(光)性改良剤、ポリオレフィン用造核剤、スリップ剤、成分(IV)、成分(V)、成分(VI)以外の無機又は有機の充填材や強化材(カーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、ガラス繊維、ガラスフレーク、導電性カーボンブラック等)、各種着色剤、離型剤等が挙げられる。
【0078】
以下、本実施形態の樹脂組成物の成分の割合について記載する。
【0079】
本実施形態の樹脂組成物における成分(I)の含有量は、樹脂組成物の難燃性、摺動性、成形流動性を高める観点から、成分(I)と成分(II)との合計100質量部に対して、50質量部以上であり、60質量部以上であることが好ましく、65質量部以上であることが更に好ましく、また、99質量部以下であり、80質量部以下であることが好ましく、75質量部以下であることが更に好ましい。
【0080】
本実施形態の樹脂組成物における成分(II)の含有量は、樹脂組成物の難燃性、摺動性、成形流動性を高める観点から、成分(I)と成分(II)との合計100質量部に対して、1質量部以上であり、20質量部以上であることが好ましく、25質量部以上であることが更に好ましく、また、50質量部以下であり、40質量部以下であることが好ましく、35質量部以下であることが更に好ましい。
【0081】
本実施形態の樹脂組成物における成分(III)の含有量は、成分(I)と成分(II)との合計100質量部に対して、樹脂組成物の難燃性、摺動性、成形流動性を高める観点から、2質量部以上であり、3質量部以上であることが更に好ましく、5質量部以上であることが特に好ましく、また、成形片からの剥離を抑制する観点から、20質量部以下であり、15質量部以下であることが更に好ましい。
【0082】
本実施形態の樹脂組成物における成分(IV)と成分(V)と成分(VI)との合計の含有量は、成分(I)と成分(II)との合計100質量部に対して、樹脂組成物の機械的特性、異種材料との密着強度、水蒸気バリア性を向上させる観点から、1質量部以上であり、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることが更に好ましく、また、樹脂組成物の摺動性を向上させる観点から、50質量部以下であり、45質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることが更に好ましい。
【0083】
なお、本実施形態の樹脂組成物中の成分(IV)と成分(V)と成分(VI)との合計の含有量は、例えば、樹脂成分の良溶媒を用いて樹脂成分を完全に溶解させた後に残った残渣分を乾燥させて秤量することによって算出することができる。
【0084】
本実施形態の樹脂組成物における成分(VII)と成分(VIII)との含有量の合計は、樹脂組成物の難燃性を向上させる観点から、成分(I)と成分(II)との合計100質量部に対して、3質量部以上であり、5質量部以上であることが好ましく、7質量部以上であることが更に好ましく、また、15質量部であり、13質量部以下であることが好ましく、12質量部以下であることが更に好ましい。
ここで、成分(VII)の成分(VIII)に対する質量割合は、樹脂組成物の難燃性を向上させる観点から、1以上であることが好ましく、1.2以上であることが更に好ましく、また、4以下であることが好ましく、3以下であることが更に好ましい。
【0085】
本実施形態の樹脂組成物における成分(IX)の含有量は、樹脂組成物の難燃性、摺動性、成形流動性をバランスよく高める観点から、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることが更に好ましく、また、30質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることが更に好ましい。
【0086】
本実施形態の樹脂組成物における成分(X)の含有量は、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されることなく、例えば、0〜400質量部としてよい。
【0087】
(樹脂組成物の製造方法)
本実施形態の樹脂組成物は、前述の成分(I)〜成分(VIII)、及び必要に応じて、成分(IX)〜成分(XI)を溶融混練することによって製造することができる。
本実施形態の樹脂組成物の製造方法は、成分(I)〜成分(VIII)、及び必要に応じて、成分(IX)〜成分(XI)を溶融混練することができる限り、特に限定されない。より詳細には、本実施形態の樹脂組成物の製造方法としては、下記の第1の製造方法、第2の製造方法が好ましい。
【0088】
第1の製造方法は、成分(I)の全量、並びに、成分(II)及び成分(III)の全部又は一部を溶融混練して、混練物を得る工程(1−1)と、
該工程(1−1)で得られた混練物に対して、成分(VII)及び成分(VIII)の全部又は一部、並びに、成分(II)及び成分(III)の残部(但し、工程(1−1)で成分(II)及び成分(III)の全部を用いた場合を除く)を添加し、更に溶融混練して、混練物を得る工程(1−2)と、
該工程(1−2)で得られた混練物に対して、成分(VII)及び成分(VIII)の残部(但し、工程(1−2)で成分(VII)及び成分(VIII)の全部を用いた場合を除く)を添加し、更に溶融混練して、混練物を得る工程(1−3)と、
該工程(1−3)で得られた混練物に対して、成分(IV)、成分(V)、成分(VI)の全量を添加し、更に溶融混練する工程(1−4)と、を含む。
【0089】
第2の製造方法は、成分(I)の全量、並びに、成分(II)及び成分(III)の全部又は一部を溶融混練して、混練物を得る工程(2−1)と、
該工程(2−1)で得られた混練物に対して、成分(II)及び成分(III)の残部(但し、工程(2−1)で成分(II)及び成分(III)の全部を用いた場合を除く)を添加し、更に溶融混練して、混練物を得る工程(2−2)と、
該工程(2−2)で得られた混練物に対して、成分(VII)及び成分(VIII)の全部を添加し、更に溶融混練する工程(2−3)と、
該工程(2−3)で得られた混練物に対して、成分(IV)、成分(V)、成分(VI)の全量を添加し、更に溶融混練する工程(2−4)と、を含む。
【0090】
これらの第1の製造方法及び第2の製造方法のように、溶融混練時において、成分(VII)及び成分(VIII)の添加のタイミングを遅くすることによって、成分(VII)及び成分(VIII)の分解を効果的に抑制することができ、その結果、難燃性に優れた樹脂組成物を得ることができる。なお、成分(VII)及び成分(VIII)の添加のタイミングを遅くする手法としては、例えば、溶融混練機の下流側の原料供給口からこれらを添加する手法等が挙げられる。
【0091】
前述の製造方法において各成分の溶融混練を行うために好適に用いられる溶融混練機としては、特に限定されることなく、例えば、単軸押出機や二軸押出機等の多軸押出機等の押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等による加熱溶融混練機等が挙げられるが、特に、混練性の観点から、二軸押出機が好ましい。二軸押出機としては、具体的には、コペリオン社製のZSKシリーズ、東芝機械(株)製のTEMシリーズ、日本製鋼所(株)製のTEXシリーズが挙げられる。
【0092】
以下、単軸押出機や二軸押出機等の多軸押出機等の押出機を用いた場合の好適な実施形態について記載する。
押出機の種類や規格等は、特に限定されることなく、公知のものとしてよい。
押出機のL/D(バレル有効長/バレル内径)は、20以上であることが好ましく、30以上であることが更に好ましく、また、75以下であることが好ましく、60以下であることが更に好ましい。
押出機の構成は、2箇所以上の異なる原料供給口と、2箇所以上の真空ベントと、1箇所以上の液添ポンプ(後述)を備えていることが好ましい。また、これら設備の配置に関して、原料が流れる方向に対し上流側に第1原料供給口、該第1原料供給口よりも下流に第1真空ベント、該第1真空ベントよりも下流に第2原料供給口、該第2原料供給口よりも下流に液添ポンプ、該液添ポンプよりも下流に第3原料供給口、該第3原料供給口よりも下流に第2真空ベントを備えていることが、難燃性と物性発現の観点から更に好ましい。
また、第2、第3原料供給口における原料の供給方法としては、特に限定されることなく、各原料供給口の上部開放口から単に添加する方法としても、サイド開放口から強制サイドフィーダーを用いて添加する方法としてもよく、特に、安定供給の観点から、サイド開放口から強制サイドフィーダーを用いて添加する方法が好ましい。
【0093】
各成分を溶融混練する際、溶融混練温度は、通常270〜320℃である。上記温度は、難燃性及び諸物性を発現させる観点から、第1原料供給口から第2原料供給口の間と、第2原料供給口より下流の部分で設定温度を変えることが好ましく、具体的には、第1原料供給口から第2原料供給口の間の温度設定を270〜300℃とし、第2原料供給口より下流の部分の温度設定を300〜320℃とするのがよい。スクリュー回転数は、特に限定されることなく、通常100〜1200rpmとしてよいが、難燃性及び諸物性を発現させる観点から、200〜700rpmとすることが好ましい。
【0094】
液状の原料を添加する場合、押出機シリンダー部分において液添ポンプ等を用いて、液状の原料をシリンダー系中に直接送り込むことによって、添加することができる。液添ポンプとしては、特に限定されることなく、例えば、ギアポンプやフランジ式ポンプ等が挙げられ、ギアポンプが好ましい。このとき、液添ポンプにかかる負荷を小さくし、原料の操作性を高める観点から、液状原料を貯めておくタンク、該タンクと液添ポンプ間との配管や、該ポンプと押出機シリンダーと間の配管等の液状の原料の流路となる部分、をヒーター等を用いて加熱して、液状の原料の粘度を小さくしておくことが好ましい。
【0095】
(成形体)
本実施形態の成形体は、前述の本実施形態の樹脂組成物からなる。
本実施形態の樹脂組成物の成形体としては、特に限定されることなく、例えば、自動車部品、電気機器の内外装部品、その他の部品等が挙げられる。自動車部品としては、特に限定されることなく、例えば、バンパー、フェンダー、ドアーパネル、各種モール、エンブレム、エンジンフード、ホイールキャップ、ルーフ、スポイラー、各種エアロパーツ等の外装部品;インストゥルメントパネル、コンソールボックス、トリム等の内装部品;自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等に搭載される二次電池電槽部品;リチウムイオン二次電池部品等が挙げられる。また、電気機器の内外装部品としては、特に限定されることなく、例えば、各種コンピューター及びその周辺機器、その他のOA機器、テレビ、ビデオ、各種ディスクプレーヤー等のキャビネット、シャーシ、冷蔵庫、エアコン、液晶プロジェクターに用いられる部品等が挙げられる。その他の部品としては、金属導体又は光ファイバーに被覆を施すことによって得られる電線・ケーブル、固体メタノール電池用燃料ケース、燃料電池配水管、水冷用タンク、ボイラー外装ケース、インクジェットプリンターのインク周辺部品・部材、家具(椅子等)、シャーシ、水配管、継ぎ手等が挙げられる。
【0096】
(成形体の製造方法)
本実施形態の成形体は、前述の本実施形態の樹脂組成物を成形することによって製造することができる。
本実施形態の成形体の製造方法としては、特に限定されることなく、例えば、射出成形、押出成形、押出異形成形、中空成形、圧縮成形等が挙げられ、本発明の効果をより効果的に得る観点から、射出成形が好ましい。
【実施例】
【0097】
以下、実施例を挙げて本発明の実施の形態を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0098】
実施例及び比較例の樹脂組成物に用いた原材料を以下に示す。
【0099】
−ポリフェニレンエーテル系樹脂(I)−
(I−i):2,6−キシレノールを酸化重合して得た、還元粘度(ηsp/c:0.5g/dLのクロロホルム溶液)0.33のポリフェニレンエーテル
(I−ii):2,6−キシレノールを酸化重合して得た、還元粘度(ηsp/c:0.5g/dLのクロロホルム溶液)0.42のポリフェニレンエーテル
なお、還元粘度は、ηsp/c:0.5g/dLのクロロホルム溶液を用いて、温度30℃の条件下測定した。
【0100】
−ポリプロピレン系樹脂(II)−
(II−i):MFR=0.4g/10分のポリプロピレン単独重合体
(II−ii):MFR=5.9g/10分のポリプロピレン単独重合体
(II−iii):MFR=15g/10分のポリプロピレン単独重合体
なお、MFRは、ISO1133に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件下で測定した。
【0101】
−水素添加ブロック共重合体(III)−
下記の通り、合成される重合体
公知の方法により、重合体ブロックAをポリスチレンからなるものとし、重合体ブロックBをポリブタジエンからなるものとして、ブロック構造を有するブロック共重合体を合成した。公知の方法により、合成したブロック共重合体に水素添加を行った。重合体の変性は行わなかった。得られた未変性水素添加ブロック共重合体の物性を下記に示す。
(III−i)B−A−B−A型
水素添加前のブロック共重合体におけるポリスチレンの含有量:44%、水素添加前のブロック共重合体の数平均分子量(Mn):95,000、ポリスチレンブロックの数平均分子量(Mn):41,800、ポリブタジエンブロックの数平均分子量(Mn):53,200、水素添加前のブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn):1.06、水素添加前のポリブタジエンブロックにおける全ビニル結合量(1,2−ビニル結合量):75%、ポリブタジエンブロックを構成するポリブタジエン部分に対する水素添加率:99.9%
(III−ii)A−B−A型
水素添加前のブロック共重合体におけるポリスチレンの含有量:65%、水素添加前のブロック共重合体の数平均分子量(Mn):53,500、ポリスチレンブロックの数平均分子量(Mn):34,800、ポリブタジエンブロックの数平均分子量(Mn):18,700、水素添加前のブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn):1.23、水素添加前のポリブタジエンブロックにおける全ビニル結合量(1,2−ビニル結合量):9%、ポリブタジエンブロックを構成するポリブタジエン部分に対する水素添加率:99.9%
なお、ビニル芳香族化合物の含有量は、紫外線分光光度計を用いて測定した。数平均分子量(Mn)は、GPC(移動層:クロロホルム、標準物質:ポリスチレン)を用いて、従来公知の方法により求めた。分子量分布(Mw/Mn)は、GPC(移動層:クロロホルム、標準物質:ポリスチレン)を用いて、従来公知の方法により求めた重量平均分子量(Mw)を、前述の数平均分子量(Mn)で除することによって算出した。全ビニル結合量は、赤外分光光度計を用いて測定し、Analytical Chemistry,Volume21,No.8,August 1949に記載の方法に準じて算出した。水素添加率は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて測定した。
【0102】
−タルク(IV)−
(IV−i):日本タルク社製「タルクMS」(レーザー回折法により測定した平均粒子径(D50)=14μm、JIS K−8123に準じて測定した白色度=93%)
(IV−ii):竹原化学工業社製「ハイトロンA」(レーザー回折法により測定した平均粒子径(D50)=3μm、JIS K−8123に準じて測定した白色度=93%)
(IV−iii):日本タルク社製「MS−KY」(レーザー回折法により測定した平均粒子径(D50)=23μm、白色度=91%)
【0103】
−ワラストナイト(V)−
(V−i):NYCO社製「NYGLOS 8」(数平均繊維径:8μm)
(V−ii):NYCO社製「NYAD 1250」(数平均繊維径:3μm)
【0104】
−マイカ(VI)−
(VI):西日本貿易(株)製「スゾライトマイカ 200HK」(平均板径:75μm)
【0105】
−ホスフィン酸塩類(VII)−
(VII):クラリアントジャパン社製「Exolit OP1230」(式(1)に該当)
【0106】
−ピロリン酸メラミン(VIII)−
(VIII−i):Sunshine Commercial & Industrial Corp製「MPP−B」
【0107】
−リン酸エステル系化合物(IX)−
(IX):大八化学社製「E890」(縮合リン酸エステル系化合物)
【0108】
−成分(I)及び成分(II)以外の熱可塑性樹脂(X)−
特に用いなかった。
【0109】
−成分(I)〜成分(VIII)以外のその他の添加剤(XI)−
(XI):日本電気硝子社製「ECS03T−249」(平均繊維径:13μm)
【0110】
特に、比較例の樹脂組成物に用いた原材料を以下に示す。
(VIII−x):日産化学工業社製「ホスメル」(ポリリン酸メラミン)
【0111】
実施例及び比較例における物性の測定方法(1)〜(6)を以下に示す。
(1)難燃性
得られた樹脂組成物ペレットを、シリンダー温度240℃に設定した小型射出成形機(商品名:IS−100GN、東芝機械社製)に供給し、金型温度60℃、射出圧力60MPaの条件で成形し、UL94垂直燃焼試験測定用試験片(1.6mm厚み)を5本作製した。UL94垂直燃焼試験方法に基づいて、これら5本の試験片の難燃性を評価した。10秒間の接炎後、炎を離してから炎が消えるまでの燃焼時間をt1(秒)とし、再び10秒間の接炎後、炎を離してから炎が消えるまでの燃焼時間をt2(秒)とし、各5本について、t1及びt2の平均を平均燃焼時間として求めた。一方、t1及びt2を合わせた10点の燃焼時間のうち最大のものを最大燃焼時間として求めた。そして、UL94規格に基づいて、V−0、V−1、V−2、HBの判定を行った。特に、難燃レベルV−1以上の判定の場合に、望ましい樹脂組成物と判定した。
【0112】
(2)摺動性
得られた樹脂組成物ペレットを、シリンダー温度250℃、に設定した小型射出成形機(商品名:IS−100GN、東芝機械社製)に供給し、金型温度60℃、射出圧力70MPa、射出時間20秒、冷却15秒の条件で成形し、評価用ISOダンベルを作製した。
このISOダンベルについて、往復動摩擦摩耗試験機(商品名:AFT−15MS型、東洋精密(株)製)を用いて、荷重2kg、線速度30mm/秒、往復距離10mm、環境温度23℃、往復回数1500回の条件で、試験を行い、ここで、1500回目における摩擦係数μを測定した。相手材料としては、SUS球(SUS304、R=2.5mm)を用いた。評価基準としては、測定値が低い値であるほど、摺動性が良好であると判定した。
【0113】
(3)成形流動性
得られた樹脂組成物ペレットについて、ISO 1133に準拠して、温度250℃、荷重10kgの条件で、メルトフローレート(MFR)(g/10分)を測定した。評価基準としては、測定値が高い値であるほど、成形流動性が良好であると判定した。
【0114】
(4)剛性(曲げ弾性率)
(2)において作製したISOダンベルについて、ISO 178に準拠して、曲げ弾性率(MPa)の評価を行った。評価基準としては、測定値が高い値であるほど、剛性が良好であると判定した。
【0115】
(5)異種材料との密着性
得られた樹脂組成物ペレットを、シリンダー温度250℃に設定した射出成形機(商品名:EC60、東芝機械社製)に供給し、金型温度60℃、射出圧力70MPa、射出時間20秒、冷却15秒の条件で成形し、ISOダンベルを作製した。
このISOダンベルを精密カットソーを用いて長手方向に二等分し、射出成形を行った際に用いた金型と同じ金型にはめ込んだ。
次いで、新興化成(株)製「スーパートリブレンHD0400」(スチレン系エラストマー)を、シリンダー温度200℃に設定した射出成形機に供給し、金型温度50℃、射出圧力45MPaの条件で、上記スーパートリブレンHD0400を、樹脂組成物のISOダンベルの切削片をはめ込んでおいた金型に射出することによって、金型の中央部で樹脂組成物とこれとは異種の材料とが物理的に密着した状態の評価用ISOダンベルを得た。
この評価用ISOダンベルを引張試験機にセットし、チャック間距離115mm、引張速度50mm/分の条件で引張試験を行い、樹脂組成物とこれとは異種の材料との密着面が引き剥がされた際の破断力(N)を測定した。評価基準としては、測定値が高い値であるほど、異種材料との密着性が良好であると判定した。
【0116】
(6)水蒸気バリア性
得られた樹脂組成物ペレットを射出成形して、平板(100mm×100mm×1mm)を得た。この平板について、JIS K7129B法(モコン法)に準拠して、ガスバリア試験装置(商品名:PERMATRAN W3/31、モコン社製)を用いて、温度40℃、湿度90%RHの条件で、水蒸気透過度(g/m
2・24時間)を評価した。評価基準としては、測定値が高い値であるほど、水蒸気バリア性が良好であると判定した。
【0117】
以下、各実施例及び各比較例について詳述する。
(実施例1〜35、比較例1〜43)
樹脂組成物の製造に用いる溶融混練機として、二軸押出機(コペリオン社製、ZSK−25)を用いた。押出機のL/Dは、35とした。
二軸押出機の構成は、原料が流れる方向について上流側に第1原料供給口、該第1原料供給口よりも下流に第2原料供給口、該第2原料供給口よりも下流に液添ポンプ、該液添ポンプよりも下流に第3原料供給口を備え、第1原料供給口と第2原料供給口との間、及び第3原料供給口よりも下流に真空ベントを備えるものとした。
また、第2、第3原料供給口における原料の供給方法としては、サイド開放口から強制サイドフィーダーを用いて添加する方法とした。
そして、上記の通り設定した二軸押出機に、成分(I)〜成分(XI)を表1に示す組成で供給し、これらを溶融混練して、ペレット体の樹脂組成物を製造した。混練条件は、押出機バレル温度(第1原料供給口から第2原料供給口まで):270℃、押出機バレル温度(第2原料供給口からダイヘッドまで):320℃、スクリュー回転数300rpm、吐出量15kg/時間とした。
各実施例及び各比較例について、前述の測定方法(1)〜(6)により物性試験を行った。結果を表1に示す。
【0118】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0119】
表1に示す通り、実施例1〜35の樹脂組成物は、比較例1〜43の樹脂組成物と比較して、優れた難燃性及び剛性を保持しながら、摺動性、異種材料との密着強度、及び水蒸気バリア性に優れた樹脂組成物及び成形体を得られることが分かった。