特許第6586340号(P6586340)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6586340
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】絶縁放熱シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 5/12 20060101AFI20190919BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20190919BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20190919BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20190919BHJP
   C09K 5/14 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   B05D5/12 D
   B05D7/00 A
   B05D3/12 A
   B05D7/24 301G
   B05D7/24 302A
   C09K5/14 E
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-195547(P2015-195547)
(22)【出願日】2015年10月1日
(65)【公開番号】特開2017-64661(P2017-64661A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190611
【氏名又は名称】日東シンコー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】中尾 真樹
【審査官】 横島 隆裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−236142(JP,A)
【文献】 特開平07−162177(JP,A)
【文献】 特開平02−144174(JP,A)
【文献】 特開平08−224733(JP,A)
【文献】 特開2006−191150(JP,A)
【文献】 特開平06−293024(JP,A)
【文献】 特開平06−114855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00−7/26
C09K 5/00−5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機充填剤と樹脂液とを含み、かつ前記樹脂液に熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物を混練して塗布液を作製し、該塗布液を基材上に塗布することにより前記基材上に絶縁層を形成して絶縁放熱シートを製造する絶縁放熱シートの製造方法であって、
前記無機充填剤と前記樹脂液の一部とを含み、かつ、前記塗布液よりも前記無機充填剤の含有率が高い前記樹脂組成物を混練した後、前記樹脂液の残部を投入することにより該樹脂組成物を希釈して前記塗布液を作製する、
絶縁放熱シートの製造方法。
【請求項2】
前記樹脂液の残部を分割投入する、
請求項1に記載の絶縁放熱シートの製造方法。
【請求項3】
前記絶縁層に占める前記無機充填剤の割合は、20〜80体積%である、
請求項1または2に記載の絶縁放熱シートの製造方法。
【請求項4】
JIS K5701に記載の流動性試験に準拠して測定した、希釈前に混練する前記樹脂組成物のスプレッドメータ直径値は、15〜40mmである、
請求項1または2に記載の絶縁放熱シートの製造方法。
【請求項5】
減圧下において、前記混練または前記希釈を行って前記塗布液を作製する、
請求項1乃至のいずれか1項に記載の絶縁放熱シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁放熱シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁放熱シートは、エレクトロニクス分野において、半導体モジュール等に用いられている。この絶縁放熱シートは、無機充填剤と熱硬化性樹脂とを含有する絶縁層と、該絶縁層を支持する基材であって、一方の面に該絶縁層が配されている基材とを有する(特許文献1)。この絶縁放熱シートは、無機充填剤と熱硬化性樹脂を含む樹脂液とを含む樹脂組成物を混練して塗布液を作製し、該塗布液を基材上に塗布し、該塗布液を乾燥して前記基材上に絶縁層を形成することにより製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−191150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の絶縁放熱シートの製造において、前記塗布液を作製する際には、前記無機充填剤と前記熱硬化性樹脂を含む樹脂液との間に形成される界面に、前記樹脂組成物の混練時に大気中から取り込まれた空気が残存するようになる。該界面に残存する空気は、前記塗布液を乾燥した後に前記絶縁層中においてボイド(空気層)を形成する。このボイドは、前記絶縁層の絶縁性を低下させるので、前記絶縁層中のボイドの量は出来る限り少ないのが好ましい。
【0005】
一方で、絶縁放熱シートの放熱性は、前記絶縁層中の前記無機充填剤の含有量が多いほど向上する。前記絶縁層中の前記無機充填剤の含有量を多くするには、前記塗布液の作製において、前記塗布液中の前記無機充填剤の含有量を多くする必要がある。しかしながら、前記無機充填剤の含有量を多くして前記塗布液を作製する際に、前記熱硬化性樹脂を含む樹脂液に前記無機充填剤を一括投入すると、前記無機充填剤は、前記樹脂液中において凝集体を形成し、前記樹脂液中に分散しにくくなる。そうすると、前記樹脂液中で凝集体を形成した前記無機充填剤は、前記樹脂液中に高分散された前記無機充填剤に比べて、前記樹脂液との間に形成される界面が大きくなるので、該界面に残存する空気の量が多くなる。このような塗布液を用いて絶縁放熱シートを作製すると、前記絶縁層中に形成される前記ボイドの量が多くなるので、絶縁放熱シートの絶縁性が低下するようになる。つまり、絶縁性の向上と放熱性の向上とはトレードオフの関係にある。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、放熱性の向上と絶縁性の向上とを両立させることができる絶縁放熱シートの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る絶縁放熱シートの製造方法は、
無機充填剤と樹脂液とを含み、かつ前記樹脂液に熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物を混練して塗布液を作製し、該塗布液を基材上に塗布することにより前記基材上に絶縁層を形成して絶縁放熱シートを製造する絶縁放熱シートの製造方法であって、
前記塗布液よりも前記無機充填剤の含有率が高い前記樹脂組成物を混練した後、該樹脂組成物を希釈して前記塗布液を作製する。
【0008】
かかる構成によれば、無機充填剤と熱硬化性樹脂を含む樹脂液とを含む樹脂組成物を混練して作製される塗布液中において、前記無機充填剤の含有量が多い場合であっても、前記無機充填剤を高分散させることができる。そのため、前記塗布液中の前記無機充填剤の含有量を多くできる。また、前記無機充填剤と前記樹脂液との間に形成される界面に残存する空気の量を低減できるので、前記塗布液を用いて製造された絶縁放熱シートの絶縁層に形成されるボイドの量を少なくできる。
つまり、前記塗布液を用いて製造された絶縁放熱シートでは、絶縁性の向上と放熱性の向上とを両立させることができる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、放熱性の向上と絶縁性の向上とを両立させることができる絶縁放熱シートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る絶縁放熱シートの製造フロー図。
図2】一実施形態に係る半導体モジュールを模式的に示す断面図。
図3】他の実施形態に係る半導体モジュールを模式的に示す断面図。
図4】エッチングされた積層体を示す上面図。
図5】耐電圧の測定における配置を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る絶縁放熱シートの製造方法について説明する。
【0012】
本実施形態に係る絶縁放熱シートの製造方法は、無機充填剤と樹脂液とを含み、かつ前記樹脂液に熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物を混練して塗布液を作製し、該塗布液を基材上に塗布することにより前記基材上に絶縁層を形成して絶縁放熱シートを製造する絶縁放熱シートの製造方法であって、前記塗布液よりも前記無機充填剤の含有率が高い前記樹脂組成物を混練した後、該樹脂組成物を希釈して前記塗布液を作製する。
以下では、図1に示すフローに従って絶縁放熱シートを製造する例について説明する。
【0013】
(塗布液作製工程:S1)
本工程は、無機充填剤と熱硬化性樹脂を含む樹脂液とを含む樹脂組成物を混練して塗布液を作製する工程である。前記樹脂液には、必要に応じて熱硬化性樹脂を溶解させるための媒体が含まれてもよい。ここで、「必要に応じて熱硬化性樹脂を溶解させるための媒体」とは、熱硬化性樹脂の性状が固体である場合、または液体であるが粘性が極めて高い場合に、熱硬化性樹脂を溶解させるため、または熱硬化性樹脂の粘性を低下させるために加える媒体のことを意味する。例えば、エポキシ樹脂は、単量体のときは液体であるが、二量体以上になると固体になる。このような場合、樹脂液を得るには、固体の熱硬化性樹脂を溶解させるための媒体を加える必要がある。このような媒体として、溶剤や反応性希釈剤などが用いられる。溶剤や反応性希釈剤は、固体の熱硬化性樹脂を溶解可能なものであれば特に限定されない。例えば、溶剤としては、メチルエチルケトン(MEK)、メチルベンゼン(TOL)、シクロペンタンなどが用いられる。これらの溶剤は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、反応性希釈剤としては、アルキルモノグリシジルエーテル、アルキルフェノールモノグルシジルエーテル、アルキルジグリシジルエーテルなどが用いられる。これらの反応性希釈剤は、前記溶剤の場合と同様に、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
本工程において、無機充填剤には、熱硬化性樹脂よりも熱伝導率が高いものが用いられる。例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ガリウム、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、ダイアモンドなどの粒子が挙げられる。中でも、窒化ホウ素は、電気絶縁体の中で最も高い熱伝導率を示すので、無機充填剤として該化合物を用いるのが好ましい。無機充填剤は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
また、熱硬化性樹脂には、これらに限定される訳ではないが、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などが用いられる。
【0016】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂などの各種のエポキシ樹脂を用いることができる。これらのエポキシ樹脂は、単独で用いてもよいし、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの樹脂は変性されていてもよい。
【0017】
フェノール樹脂としては、例えば、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂などが用いられる。
中でも、トリフェニルメタン型フェノール樹脂は、耐熱性に優れる点で有利である。
【0018】
なお、熱硬化性樹脂にエポキシ樹脂を用いる場合、用いるエポキシ樹脂に対応する硬化剤や硬化促進剤を加えて、該エポキシ樹脂の熱硬化性を調整してもよい。
エポキシ樹脂に加える硬化剤の例として、例えば、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、トリエチレンテトラミンなどのアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤などを挙げることができる。
また、エポキシ樹脂を硬化させる硬化剤として、上記のノボラック型フェノール樹脂を用いることもできる。
硬化促進剤の例として、例えば、イミダゾール類、トリフェニルフォスフェイト(TPP)、三フッ化ホウ素モノエチルアミンなどのアミン系硬化促進剤などを挙げることができる。
【0019】
また、熱硬化性樹脂にフェノール樹脂を用いる場合も同様に、用いるフェノール樹脂に対応する硬化剤を加えて、該フェノール樹脂の熱硬化性を調整することができる。
フェノール樹脂に加える硬化剤の例として、例えば、ヘキサメチレンテトラミン、各種の二官能以上のエポキシ化合物、イソシアネート類、トリオキサン及び環状ホルマールなどを挙げることができる。
【0020】
本発明において、塗布液作製工程は、塗布液よりも無機充填剤の含有率が高い樹脂組成物を混練(第1の工程)した後、該樹脂組成物を希釈(第2の工程)して前記塗布液を作製する。次に、第1および第2の工程について説明する。
なお、以下では、塗布液よりも無機充填剤の含有率が高い樹脂組成物のことを高濃度樹脂組成物と呼び、該高濃度樹脂組成物を希釈するものを希釈液と呼ぶ。
【0021】
<第1の工程>
本工程で用いる高濃度樹脂組成物は、以下のように調製することができる。例えば、無機充填剤が一種類の場合、塗布液に含まれる樹脂液の一部に無機充填剤の一部または全部を投入してなる樹脂組成物を混練することにより、高濃度樹脂組成物を調製することができる。
無機充填剤が二種以上の場合、塗布液に含まれる樹脂液の一部に一の無機充填剤の全部を加えてなる樹脂組成物を混練することにより、高濃度樹脂組成物を調製することができる。あるいは、塗布液に含まれる樹脂液の一部に一の無機充填剤の全部と他の充填剤の一部とを加えることにより、高濃度樹脂組成物を調製することができる。
上述の高濃度樹脂組成物を調製する例は単なる例示に過ぎない。使用する樹脂液の種類、または使用する無機充填剤の種類に応じて、あるいはその両者に応じて、適宜変更することができる。
高濃度樹脂組成物を調製するのに用いる樹脂液の量は、塗布液に含まれる樹脂液の30〜80体積%であると好ましい。該樹脂液の量が30体積%を下回ると無機充填剤の周囲に樹脂液がコーティングされず、無機充填剤と樹脂液との間に界面が形成されにくくなるので、ボイドが抜け切れないという問題が生じ、該樹脂液の量が80体積%を上回ると高濃度樹脂組成物の流動性が向上し過ぎるため混合時の機械応力によりボイドを除去することができないという問題が生じるからである。
また、JIS K5701:2000に記載の流動性試験に準拠して測定した、高濃度樹脂組成物のスプレッドメータ直径値は、15〜40mmの範囲にあると好ましい。スプレッドメータ直径値が15mmを下回ると、無機充填剤と樹脂液との間に界面が形成されにくくなるので、ボイドが抜け切れないという問題が生じ、スプレッドメータ直径値が40mmを上回ると流動性が向上し過ぎるためボイドを除去することができないという問題が生じるからである。ここで、スプレッドメータ直径値とは、測定試料である液体と固体との混合物の60秒後の広がり直径の値を意味する。
高濃度樹脂組成物の混練は、ボールミル、プラネタリーミキサー、ホモジナイザー、三本ロールミル、ディスパーなどの各種の撹拌装置を用いて行われる。
なお、高濃度樹脂組成物では、無機充填剤は団子状に凝集した凝集体をなしている。この凝集体は、機械的な力を加えることによって容易に解膠(かいこう)される軟凝集体である。
【0022】
<第2の工程>
本工程で用いる希釈液は、高濃度樹脂組成物の調製に応じて以下のように調製できる。例えば、無機充填剤が一種類であって、その全部を高濃度樹脂組成物に含有させる場合、希釈液は、塗布液に含まれる樹脂液の残部(高濃度樹脂組成物に含有される樹脂液を除外したもの)を用いることができる。また、無機充填剤が一種類であって、その一部を高濃度樹脂組成物に含有させる場合、希釈液は、塗布液に含まれる樹脂液の残部に無機充填剤の残部を加えてなる樹脂組成物を混練することにより調製できる。
無機充填剤が二種類以上であって、一の無機充填剤を高濃度樹脂組成物に含有させる場合、希釈液は、塗布液に含まれる樹脂液の残部に他の無機充填剤の全部を加えてなる樹脂組成物を混練することにより調製できる。また、無機充填剤が二種以上であって、一の無機充填剤の全部と他の無機充填剤の一部とを高濃度樹脂組成物に含有させる場合、希釈液は、塗布液に含まれる樹脂液の残部に他の無機充填剤の残部を加えてなる樹脂組成物を混練することにより調製できる。希釈液に加える無機充填剤は、高濃度樹脂組成物中では混練するのが難しいフュームドシリカ(微粒子シリカ)であるのが好ましい。希釈液に無機充填剤を加える場合は、上述の第1の工程の例と同様に、ボールミルなどの撹拌装置を用いて、無機充填剤と熱硬化性樹脂を含む樹脂液とを混練する。
上述の希釈液を調製する例は単なる例示に過ぎない。高濃度樹脂組成物の調製態様に応じて、適宜変更することができる。
なお、希釈液は、その流動性が高濃度樹脂組成物の流動性に比べて大きくなるように、例えば、JIS K5701:2000に記載の流動性試験に準拠して測定したスプレッドメータ直径値が70mm以上の範囲になるように調製される。
【0023】
上述のように高濃度樹脂組成物および希釈液を調製した後、該高濃度樹脂組成物を希釈液で希釈することにより塗布液が作製される。具体的には、無機充填剤が軟凝集体をなしている高濃度樹脂組成物を撹拌混練しながら希釈液を分割投入し、撹拌に起因する機械的な力によって、前記無機充填剤の軟凝集体を解膠する。前記軟凝集体がこのように解膠されることにより、無機充填剤は樹脂液中に高分散されるようになる。これにより、無機充填剤と樹脂液との間に形成される界面を小さくできるので、該界面に残存する空気の量を少なくできる。この工程で高濃度樹脂組成物に加えられる希釈液の総量は、高濃度樹脂組成物100体積部に対して、20〜60体積部である。
なお、希釈液を分割して加えるときの分割回数および該分割回数ごとの希釈液の添加量は、高濃度樹脂組成物に含有される無機充填剤および熱硬化性樹脂の種類に応じて、または高濃度樹脂組成物中での無機充填剤と熱硬化性樹脂との配合比率に応じて、あるいはその両者に応じて、適宜選択される。例えば、無機充填剤に窒化ホウ素を、熱硬化性樹脂にエポキシ樹脂をそれぞれ選んで、無機充填剤100質量部に対して熱硬化性樹脂を55質量部含有するように高濃度樹脂組成物を調製した場合、希釈液は、2回に分けて、高濃度樹脂組成物100体積部に対して25体積部ずつ加えられる。希釈液を加えるときの高濃度樹脂組成物の撹拌混練は、上述の第1の工程の例と同様に、ボールミルなどの撹拌装置を用いて行う。
【0024】
このように、高濃度樹脂組成物を希釈液で希釈することにより、無機充填剤が樹脂液中に高分散されるメカニズムについては定かではない。このメカニズムについて、本願発明者は、本発明の塗布液作製工程では、従来の塗布液作製工程に比べて、軟凝集体をなす無機充填剤と樹脂液との濡れ性が向上するので、該軟凝集体をなす無機充填剤において、無機充填剤間の空隙に取り込まれた空気が樹脂液に置換され易くなり、無機充填剤の軟凝集体が解膠され易くなったためだと考察している。
【0025】
なお、第1の工程の混練または第2の工程の希釈は減圧下で行われてもよい。これらの工程が減圧下で行われると、第1の工程後に得られる高濃度樹脂組成物および第2の工程後に得られる樹脂組成物において、樹脂液と無機充填剤との間に形成される界面に残存する空気を十分に除去できるからである。なお、本明細書において、減圧とは、温度25℃において、圧力が−50〜−100kPaの範囲にあることを意味する。前記圧力の範囲は、−70〜−90kPaであるのが好ましい。
また、無機充填剤を加えて希釈液を調製する場合も、樹脂液と無機充填剤との間に形成される界面に残存する空気を除去するために、無機充填剤を含む希釈液を減圧下で混合してもよい。
【0026】
(塗布工程:S2)
このように調製された前記樹脂組成物は基材上に塗布される。前記樹脂組成物は、無機充填剤が樹脂液中に高分散されているので、基材上にムラなく均一に塗布し易い。
前記樹脂組成物が塗布される基材の材質は特に限定されるものではない。例えば、ポリエステル樹脂フィルム、ポリオレフィン樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタラート樹脂フィルムなどの樹脂フィルム、銅箔、アルミニウム箔、ニッケル箔などの金属箔を用いることができる。
中でも、前記基材には、外形加工性がよく、安価であるという点において、ポリエチレンテレフタラート樹脂フィルムを用いることが好ましい。
前記基材は、前記樹脂組成物を塗布する面に粗化処理、離型処理などの処理がされていてもよいし、未処理であってもよい。
前記基材は、原料シートを連続的に効率良く製造するという観点から、長尺状であるのが好ましい。
本工程では、長尺状の基材を巻き取った基材ロールをコーティング装置に装着し、該コーティング装置において、基材に連続的に樹脂組成物を塗布する。コーティング装置として、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ナイフコーター、コンマコーター、ダイレクトコーターなどを用いることができる。
【0027】
(乾燥工程:S3)
塗布工程において樹脂組成物が塗布された基材は、乾燥により液体成分が除去される。液体成分が除去された樹脂組成物は、被膜状をなして基材上に堆積される。この被膜状の堆積物が絶縁放熱シートの絶縁層となる。前記絶縁層に占める前記無機充填剤の割合は、20〜80体積%である。この割合が20体積%を下回ると、熱伝導率が低下するという問題が生じ、80体積%を上回ると、絶縁性が低下するという問題が生じる。
なお、上記の液体成分の除去は、例えば、樹脂組成物が塗布された基材を、一般的な加熱乾燥炉中を所定の時間をかけて通過させることで実施できる。
本明細書においては、絶縁層は、熱伝導率が5W/m・K以上であり、体積抵抗率が1×1013Ω・cm以上であることが好ましい。
【0028】
乾燥工程を経た基材は所望の大きさに切断される。これにより、本発明の一実施形態に係る絶縁放熱シートが製造される。切断は、ポンチおよびダイスを用いたパンチングプレスなどで行うことができる。
【0029】
以上のように、本実施形態に係る製造方法によれば、無機充填剤と熱硬化性樹脂を含む樹脂液とを含む樹脂組成物を混練して作製される塗布液中において、前記無機充填剤の含有量が多い場合であっても、前記無機充填剤を高分散させることができる。そのため、前記塗布液中の前記無機充填剤の含有量を多くできる。また、前記無機充填剤と前記樹脂液との間に形成される界面に残存する空気の量を低減できるので、前記塗布液を用いて製造された絶縁放熱シートの絶縁層に形成されるボイドの量を少なくできる。
つまり、前記塗布液を用いて製造された絶縁放熱シートでは、絶縁性の向上と放熱性の向上とを両立させることができる。
【0030】
次に、本発明の一実施形態に係る半導体モジュールについて、図2を参照しながら説明する。
本実施形態に係る半導体モジュール100は、絶縁放熱シート10上に配された半導体素子30を備えた半導体モジュール100であって、絶縁放熱シート10は、上記実施形態に係る絶縁放熱シートの製造方法で製造された絶縁放熱シート10である。
【0031】
本実施形態に係る半導体モジュール100は、図2に示すように、半導体素子30が樹脂モールドされてなるモジュール本体100xと、半導体素子30が発する熱を放熱するための放熱用部材20との間に、絶縁放熱シート10が介在されて構成される。
【0032】
モジュール本体100xは、半導体素子30と、半導体素子30のヒートシンクとして機能する金属板40とを備え、平置き配置された金属板40の上面側にハンダ50によって固定された状態で半導体素子30を備えている。
半導体素子30は、金属板40の上面の面積に比べて小さいものであり、本実施形態においては、ベアチップの形式で金属板40に搭載されている。
【0033】
本実施形態のモジュール本体100xは、その外殻をなす角筒状のケース60を備え、ケース60は、平面視における形状が金属板40よりも一回り大きく、かつ、正面視における形状が、絶縁放熱シート10、金属板40、および半導体素子30の厚みを合算した高さよりも高く形成されている。
すなわち、ケース60は、絶縁放熱シート10、金属板40、および半導体素子30の全てを内包できる大きさを有している。
また、モジュール本体100xは、金属板40を囲むようにケース60を配置させていて、ケース60の側壁を貫通してケース60の内外に延びるリードフレーム70を備えている。リードフレーム70を介して、半導体素子30に電力が供給される。
【0034】
また、モジュール本体100xにおいては、リードフレーム70のケース60内における端部と半導体素子30とがボンディングワイヤ80によって電気的に接続され、かつ、ケース60内の空きスペースに、封止樹脂が隙間なく充填されてなるモールド部90が形成されている。
本実施形態におけるモールド部90は、半導体素子30、および金属板40を埋設させている。
そして、本実施形態の絶縁放熱シート10は、半導体素子30が搭載されている面とは反対側の面となる金属板40の下面に配されている。
本実施形態の絶縁放熱シート10は、平面視における形状が金属板40の下面と略同一の形状であり、金属板40の下面外縁40eと絶縁層11の外縁とを揃えた状態で、金属板40の下面に接着されている。
また、本実施形態の絶縁放熱シート10は、モールド部90に上面側を埋設させ、かつ放熱用部材20が無い状態においては、その下面側が露出するように半導体モジュール30を形成するのに用いられている。
すなわち、本実施形態の半導体モジュール100は、モールド部90の下面が絶縁放熱シート10の基材12の下面と略面一な状態となるように形成されている。
【0035】
なお、本実施形態においては、放熱用部材20として、上面が金属板40の下面よりも大きな平坦面となった板状の基板部21と基板部21の下面から複数のフィンを垂下させてなるフィン部22とを備える放熱フィンが用いられている。
【0036】
本実施形態の絶縁放熱シート10は、基材12を金属箔によって形成させている。絶縁放熱シート10は、図2においては、基材12の下面側のみをモジュール本体100xの下面において露出させている。そして、基材12の、モジュール本体100xの下面に対する露出面が、モジュール本体100xから放熱用部材20への主たる放熱面として利用されている。
【0037】
また、本実施形態の絶縁放熱シート10は、基材12が接着性を示すものではないので、モジュール本体100xに対して放熱用部材20が接着固定されることによって放熱用部材20に当接されている。
より具体的には、本実施形態の絶縁放熱シート10は、間に放熱グリースを介在させて放熱用部材20の基板部21の上面に当接されている。
【0038】
上述のように本実施形態の半導体モジュール100は、金属板40に半導体素子30が直に載置されていて、半導体素子30と金属板40とが略同電位となっている。
したがって、絶縁放熱シート10は、金属板40から放熱用部材20までの間に良好なる伝熱経路を形成させるとともに、金属板40と放熱用部材20との電気的な接続が遮断された状態となるように半導体モジュール100に備えられている。
【0039】
本実施形態の絶縁放熱シート10は、絶縁層11中に形成されるボイドの量が少なく、かつ絶縁層11中の無機充填剤の含有量を多くできる。そのため、本実施形態の絶縁放熱シート10は、優れた放熱性と絶縁性とを示す。
したがって、半導体モジュール100の動作時における半導体素子30のシャンクション温度が過度に上昇することを防止でき、半導体モジュール100の故障を防いで耐用期間を長くすることができる。
【0040】
上述のような効果を発揮するのは、必ずしも図1に示した構成の半導体モジュール100に限られない。図3に示した構成の半導体モジュール100’においても、同様の効果を得ることができる。
以下、図3を参照しながら、他の実施形態に係る半導体モジュール100’について説明する。なお、図3において、図2と同様の参照番号が付されている要素は、図2と同じ要素である。したがって、図2の半導体モジュール100と説明が重複する部分については適宜説明を省略する。
【0041】
図3に示す半導体モジュール100’は、絶縁放熱シート10’に基材を備えていない点において、図2に示す半導体モジュール100とは異なる。
【0042】
また、半導体モジュール100’は、絶縁放熱シート10’の絶縁層11’がケース60’の平面形状と同等に形成されていて、かつ、モールド部90’が金属板40’の下面と略面一となるように形成されている点においても図2に示す半導体モジュール100と異なっている。
【0043】
そして、絶縁層11’は、絶縁層11’を除いた半導体モジュール100’の主要部であるモジュール本体100x’の下面に接着させて用いられ、金属板40’に対する絶縁を施して半導体モジュール100’を構成するように用いられる。
【0044】
また、絶縁層11’は、図3に示すように、モジュール本体100x’と放熱用部材20’との間に介在させて用いられている。
【0045】
なお、絶縁放熱シート10’を用いて、図3に示すような半導体モジュール100’を構成する場合、絶縁放熱シート10’の絶縁層11’をモジュール本体100x’側に先に接着させた後に絶縁層11’を用いて、さらに放熱用部材20’を接着させるようにしてもよい。また、これとは逆に、一旦絶縁層11’を放熱用部材20’の基板部21’の上面に接着させて絶縁層付放熱用部材を作製した後で、該絶縁層付放熱用部材をモジュール本体100’に接着させるようにしてもよい。
さらに、モジュール本体100x’と放熱用部材20’との間に絶縁層11’を挟持させて熱プレスするなどして絶縁層11’をモジュール本体100x’と放熱用部材20’とに同時に接着させるようにしてもよい。
【0046】
このような場合も、絶縁放熱シート10’が優れた絶縁性と放熱性とを示すことから、絶縁放熱シート10’を備えた半導体モジュール100’は、その耐用期間を長くすることができる。
なお、図3に示す半導体モジュール100’において、絶縁放熱シート10’が基材を備えるように構成されてもよいことは言うまでもない。
【0047】
また、本発明においては、絶縁放熱シート10,10’の形成材料とした樹脂組成物は、モールド部90,90’やケース60,60’などの形成に用いることもできる。
【実施例】
【0048】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。以下の実施例は本発明をさらに詳細に説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0049】
[樹脂組成物の調製]
以下の手順に従って、本発明の実施例に係る樹脂組成物および比較例に係る樹脂組成物を調製した。
【0050】
(実施例に係る樹脂組成物の調製)
無機充填剤として窒化ホウ素(平均粒径:8μm)を、樹脂液としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ等量:475、軟化点:65℃)を、それぞれ用いた。撹拌装置であるハイビスディスパーミックス(プライミクス社製、3D−5型)の撹拌槽に、無機充填剤20gと樹脂液17g(無機充填剤100質量部に対して85質量部)とを加え、無機充填剤および樹脂液を減圧下(−85kPa)で混練(撹拌速度:20rpm)し、樹脂液中に無機充填剤が団子状に凝集した高濃度樹脂組成物を調製した。次に、前記ハイビスディスパーミックスの撹拌槽において、該高濃度樹脂組成物に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ等量:475、軟化点:65℃)を含む希釈液を2回に分けて、高濃度樹脂組成物100体積部に対して25体積部ずつ投入し、減圧下(−85kPa)で混練して樹脂組成物を調製した。
【0051】
(比較例に係る樹脂組成物の調製)
無機充填剤として窒化ホウ素(平均粒径:8μm)を、樹脂液としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ等量:475、軟化点:65℃)を、それぞれ用いた。撹拌装置であるハイビスディスパーミックス(プライミクス社製、3D−5型)の撹拌槽に、無機充填剤20gと樹脂液34g(無機充填剤100質量部に対して170質量部)とを投入し、無機充填剤および樹脂液を減圧下(−85kPa)で混練(撹拌速度:20rpm)して樹脂組成物を調製した。
【0052】
[絶縁放熱シートの作製]
基材たる銅箔(面積:2500cm)に、実施例および比較例に係る樹脂組成物(厚み:約200μm)をそれぞれ塗工した。塗工方法としては、コーター方式、ロール トゥ ロールを採用し、乾燥条件としては、120℃で5分間とした。このようにして、実施例および比較例に係る樹脂組成物について樹脂シートをそれぞれ作製した。
実施例および比較例に係る樹脂シートのそれぞれについて、基材と接していない面同士が向かい合うように、2枚の同種の樹脂シートを重ね合わせて、温度:100℃、圧力:8MPa、時間:20分間の条件で熱プレスし、金属箔を備えた絶縁放熱シート(絶縁層厚さ:0.22±0.04mm)を作製した。
【0053】
実施例および比較例に係る樹脂組成物について、樹脂液中での無機充填剤の分散性を示す尺度となるスプレッドメータ直径値をそれぞれ測定した。また、前記絶縁放熱シートを用いて実施例および比較例に係る耐電圧測定試料を作製し、各耐電圧測定試料について絶縁放熱シートの絶縁層の絶縁性の尺度となる耐電圧を測定した。さらに、前記絶縁放熱シートを用いて実施例および比較例に係る熱拡散率測定試料を作製し、各熱拡散率測定試料について測定した熱拡散率の値を用いて、絶縁放熱シートの放熱性の尺度となる熱伝導率を算出した。
各パラメータの測定方法、各測定試料の作製方法、および熱伝導率の算出方法を以下に記載した。
【0054】
[スプレッドメータ直径値]
JIS K−5701:2000に記載の流動性試験に準拠して、平行板粘度計(安田精機製作所製、型式506−B)を用いて、実施例および比較例に係る樹脂組成物のスプレッドメータ直径値をそれぞれ測定した。
【0055】
[耐電圧]
耐電圧は、波高率が1.34〜1.48の間にあり、50または60Hzの周波数の電圧を印加でき、最大電圧がAC10kV(実効値)である絶縁破壊装置により測定した。測定方法の詳細については、図4および5を参照しながら以下に説明する。
75±1mm×65±1mmの絶縁放熱シートの片側の銅箔13を剥離し、該剥離面にアルミ板を積層し加熱して、アルミ板を絶縁放熱シートに一体化させ、さらに加熱して積層体を完全に硬化させて、図4に示す耐電圧測定試料14を得た。図5に示すように、試料14を油槽15の絶縁油16(JIS C2320:1999)中でアルミ板側を下にして黄銅性円板電極17(Φ:40mm)上に置き、試料14の上に、試料14の略中央部分で接するように黄銅性球状電極18(Φ:15mm、重さ:50g)を置いた。絶縁油16は20±10℃に保ち、試料14にAC3.0kV(実効値)を1分間印加した。そして、絶縁破壊が生じていない場合には、速やかにAC0.5kV(実効値)上げて1分間印加し、絶縁破壊が生じるまでAC0.5kV(実効値)間隔(0.5kV(実効値)ステップ、1分間印加)で昇圧した。
なお、絶縁破壊の判断基準として、カットオフ電流を10mAとした。そして、絶縁破壊が生じた電圧より0.5kV(実効値)低い印加電圧を耐電圧とした。
【0056】
[熱伝導率]
上記と同じ絶縁放熱シートの両面から、金属箔である銅箔をエッチングにより除去し、該シートから1辺が10mm±0.5mmとなるように樹脂硬化体を矩形状に切り出し、該樹脂硬化体の両面に反射防止剤(ファインケミカルジャパン株式会社製、品番:FC−153)を塗布したものを熱拡散率測定試料とした。
熱伝導率の値は、キセノンフラッシュアナライザー(NETZSCH社製、LFA−447型)を用いて前記熱拡散率測定試料について測定した熱拡散率の値に、JIS 7123:1987に準拠して熱流速DSCにて測定した比熱の値、およびJIS K 7122:1999に準拠して水中置換法にて測定した密度の値を乗じて算出した。前記熱拡散率の値は、3個の測定試料について測定した熱拡散率の値を算術平均して求めた。また、前記熱拡散率の測定は、測定試料1個について5点行い、各測定試料について、最大値と最小値を除外した3点の値を算術平均したものを測定値とした。
【0057】
スプレッドメータ直径値および耐電圧の測定結果、および熱伝導率の算出結果を表1に示した。
【0058】
【表1】
【0059】
表1より、実施例に係る樹脂組成物は、比較例に係る樹脂組成物と比べて、スプレッドメータ直径値が小さく、つまり流動性が低く、実施例に係る樹脂組成物を用いて作製した耐電圧測定試料および熱拡散率測定試料は、比較例に係る樹脂組成物を用いて作製した各測定試料に比べて、耐電圧および熱伝導率が共に高くなることが分かった。この結果から、実施例に係る樹脂組成物では無機充填剤が高分散されていて、該樹脂組成物を用いて絶縁放熱シートを製造すると、絶縁性および放熱性に優れた絶縁放熱シートが得られることが分かった。
【0060】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態および変形が可能とされたものである。また、上述の実施形態および実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。つまり、本発明の範囲は、実施形態および実施例ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内およびそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0061】
10…絶縁放熱シート、11…絶縁層、30…半導体素子
図1
図2
図3
図4
図5