(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記剥離剤組成物中における前記光重合開始剤の配合量は、前記活性エネルギー線硬化性成分100質量部に対して、0.5質量部以上、25質量部以下であることを特徴とする請求項1に記載のセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルム。
前記剥離剤組成物中における前記活性エネルギー線硬化性成分の配合量は、前記アミノ樹脂100質量部に対して、10質量部以上、1000質量部以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルム。
前記剥離剤組成物中における前記ポリオルガノシロキサンの配合量は、前記アミノ樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上、10質量部以下であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルム。
前記剥離剤組成物中における前記酸触媒の配合量は、前記アミノ樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上、20質量部以下であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルム。
前記活性エネルギー線硬化性成分は、1分子中に少なくとも1個のヒドロキシ基を有することを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載のセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルム。
前記ポリオルガノシロキサンは、1分子中に少なくとも1個のヒドロキシ基を有することを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載のセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、本発明者らによって、剥離面の平滑性、生産性、経時安定性等の向上を目的として、熱硬化性樹脂とポリオルガノシロキサンとを含有する剥離剤組成物や、活性エネルギー線硬化性成分と、ポリオルガノシロキサンと、光重合開始剤とを含有する剥離剤組成物を使用して形成された剥離剤層を備える剥離フィルムの開発が進められている。熱硬化性樹脂の例としては、アミノ樹脂と酸触媒との組み合わせが挙げられる。
【0008】
また、上記剥離フィルムにおいて、剥離剤組成物として、熱硬化性樹脂と活性エネルギー線硬化成分とを含有するものを使用した場合、上述したような熱硬化性樹脂および活性エネルギー線硬化成分の一方を含有する剥離剤組成物を使用する場合と比較して、熱および活性エネルギー線のそれぞれのエネルギー印加を抑えて剥離剤組成物を硬化させることができるため、剥離フィルムの生産性の向上が期待できる。このような熱硬化性樹脂と活性エネルギー線硬化成分とを含有する剥離剤組成物を使用して剥離剤層を形成するには、当該剥離剤組成物を含む塗布液を基材の片側に塗布することで塗布層を形成した後、当該塗布層を加熱することにより、アミノ樹脂間の縮合反応を生じさせ、アミノ樹脂による三次元構造を形成する。続いて、当該塗布層に活性エネルギー線を照射することにより、活性エネルギー線硬化性成分間で重合反応を生じさせ、上記三次元構造を補強する。
【0009】
この際、ポリオルガノシロキサンは、アミノ樹脂や活性エネルギー線硬化性成分が形成する構造に取り込まれ、得られる剥離剤層中に分散または偏在して存在することとなる。また、酸触媒は、アミノ樹脂における縮合反応を促進し、光重合開始剤は、活性エネルギー線硬化性成分の重合反応を促進する。
【0010】
ここで、上記剥離剤組成物の塗布液を調製するために、上述した各成分を有機溶剤中にて混合すると、有機溶剤に溶解しない成分が発生して、塗布液が白濁する場合がある。このように白濁した塗布液は、有機溶剤に溶解しない成分の塊を含むため、均一な厚さに塗布することができない。また、当該塗布液を使用して形成される剥離剤層の剥離面には、上記塊に起因した凹凸が生じるため、当該剥離面の平滑性は非常に悪いものとなる。
【0011】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、白濁が生じない剥離剤組成物を使用して形成され、剥離面の平滑性に優れるセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルムおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、基材と、前記基材の片側に設けられた剥離剤層とを備えたセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルムであって、前記剥離剤層が、アミノ樹脂と、活性エネルギー線硬化性成分と、ポリオルガノシロキサンと、酸触媒と、窒素原子を有する光重合開始剤とを含有する剥離剤組成物から形成されたものであり、前記剥離剤組成物中における前記光重合開始剤の配合量は、前記酸触媒100質量部に対して、1質量部以上、300質量部以下であることを特徴とするセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルムを提供する(発明1)。
【0013】
上記発明(発明1)では、剥離剤組成物が窒素原子を有する光重合開始剤を上述した配合量で含有することにより、剥離剤組成物の塗布液に白濁が生じない。そして、剥離剤層がこのような剥離剤組成物の塗布液から形成されることにより、剥離剤層の剥離面が高い平滑性を示す。
【0014】
上記発明(発明1)において、前記剥離剤組成物中における前記光重合開始剤の配合量は、前記活性エネルギー線硬化性成分100質量部に対して、0.5質量部以上、25質量部以下であることが好ましい(発明2)。
【0015】
上記発明(発明1,2)において、前記アミノ樹脂は、メラミン樹脂であることが好ましい(発明3)。
【0016】
上記発明(発明1〜3)において、前記剥離剤組成物中における前記活性エネルギー線硬化性成分の配合量は、前記アミノ樹脂100質量部に対して、10質量部以上、1000質量部以下であることが好ましい(発明4)。
【0017】
上記発明(発明1〜4)において、前記剥離剤組成物中における前記ポリオルガノシロキサンの配合量は、前記アミノ樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上、10質量部以下であることが好ましい(発明5)。
【0018】
上記発明(発明1〜5)において、前記剥離剤組成物中における前記酸触媒の配合量は、前記アミノ樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上、20質量部以下であることが好ましい(発明6)。
【0019】
上記発明(発明1〜6)において、前記活性エネルギー線硬化性成分は、1分子中に少なくとも1個のヒドロキシ基を有することが好ましい(発明7)。
【0020】
上記発明(発明1〜7)において、前記ポリオルガノシロキサンは、1分子中に少なくとも1個のヒドロキシ基を有することが好ましい(発明8)。
【0021】
第2に本発明は、基材と、前記基材の片側に設けられた剥離剤層とを備えたセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルムの製造方法であって、アミノ樹脂と、活性エネルギー線硬化性成分と、ポリオルガノシロキサンと、酸触媒と、窒素原子を有する光重合開始剤とを含有する剥離剤組成物を前記基材の片面側に塗布して、塗布層を形成する工程、および前記塗布層を加熱し、さらに、前記塗布層に対して活性エネルギー線を照射して、前記剥離剤層を形成する工程を含み、前記剥離剤組成物中における前記光重合開始剤の配合量は、前記酸触媒100質量部に対して、1質量部以上、300質量部以下であることを特徴とするセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルムの製造方法を提供する(発明9)。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルムは、白濁が生じない剥離剤組成物を使用して形成され、剥離面の平滑性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔セラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルム〕
図1に示すように、本実施形態に係るセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルム1(以下、単に「剥離フィルム1」という場合がある。)は、基材11と、基材11の一方の面(
図1では上面)に積層された剥離剤層12とを備えて構成される。
【0025】
1.剥離剤層
剥離フィルム1の剥離剤層12は、アミノ樹脂と、活性エネルギー線硬化性成分と、ポリオルガノシロキサンと、酸触媒と、窒素原子を有する光重合開始剤とを含有する剥離剤組成物から形成されたものである。ここで、剥離剤組成物中における当該光重合開始剤の配合量は、酸触媒100質量部に対して、1質量部以上、300質量部以下である。
【0026】
本発明者らによる鋭意研究の結果、剥離剤組成物の塗布液が白濁する現象は、光重合開始剤として窒素原子を含有する化合物を所定の量で使用した場合に、当該光重合開始剤と酸触媒とが有機溶剤に難溶性または不溶性の塩を形成することが原因であると推定された。一方、本実施形態に係る剥離フィルム1では、窒素原子を有する光重合開始剤を上述した量で使用することにより、剥離剤組成物の塗布液を調製した際に、光重合開始剤と酸触媒とからの、難溶性または不溶性の塩の形成が抑制され、塗布液が白濁しない。そして、剥離剤層12は、当該塗布液を使用して形成されているため、その剥離面には難溶性または不溶性の塩に起因した凹凸が生じることがなく、当該剥離面は、非常に高い平滑性を示す。
【0027】
(1)アミノ樹脂
本実施形態に係る剥離フィルム1おいて、剥離剤組成物はアミノ樹脂を含有する。剥離剤組成物から剥離剤層12を形成する際、アミノ樹脂は酸触媒の存在下で縮合反応を行うため、得られる剥離剤層12中には、アミノ樹脂による三次元構造が形成される。アミノ樹脂の縮合反応は、例えば加熱することにより生じさせることができる。剥離剤層12は、上述した三次元構造を含むため、十分な弾性を示すものとなり、これにより、本実施形態に係る剥離フィルム1は優れた剥離性を発揮することができる。なお、本明細書においては、「アミノ樹脂」という語句は、縮合反応を生じ得る成分を指し、必ずしも高分子化合物でなくてもよい。ここにおいて、当該成分は、全く縮合反応を生じていないものであってもよく、または部分的に縮合反応が生じたものであってもよい。
【0028】
上記アミノ樹脂としては、既知のものを使用することができ、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、グアナミン樹脂またはアニリン樹脂を使用することができる。これらの中でも、縮合反応の速度が非常に速いメラミン樹脂を使用することが好ましい。なお、本明細書においては、「メラミン樹脂」という語句は、1種のメラミン化合物の集合物、あるいは、複数種のメラミン化合物および/または当該メラミン化合物が縮合してできる多核体を含む混合物を意味する。
【0029】
上記メラミン樹脂は、具体的には、下記一般式(a)で示されるメラミン化合物、または2個以上の当該メラミン化合物が縮合してなる多核体を含有することが好ましい。
【化1】
【0030】
式(a)中、Xは、−H、−CH
2−OH、または−CH
2−O−Rを示すことが好ましい。これらの基は、上記メラミン化合物同士の縮合反応における反応基を構成する。具体的には、XがHとなることで形成される−NH基は、−N−CH
2−OH基および−N−CH
2−R基との間で縮合反応を行うことができる。また、Xが−CH
2−OHとなることで形成される−N−CH
2−OH基およびXが−CH
2−Rとなることで形成される−N−CH
2−R基は、ともに、−NH基、−N−CH
2−OH基および−N−CH
2−R基との間で縮合反応を行うことができる。
【0031】
上記−CH
2−O−R基において、Rは、炭素数1〜8個のアルキル基を示すことが好ましい。当該炭素数は、1〜6個であることが好ましく、特に1〜3個であることが好ましい。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられ、特にメチル基が好ましい。
【0032】
上記Xは、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、上記Rは、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0033】
メラミン化合物には、一般に、全てのXが−CH
2−O−Rであるフルエーテル型、少なくとも1個のXが−CH
2−OHであり且つ少なくとも1個のXがHであるイミノ・メチロール型、少なくとも1個のXが−CH
2−OHであり且つHであるXが存在しないメチロール型、および、少なくとも1個のXがHであり且つ−CH
2−OHであるXが存在しないイミノ型といった種類が存在する。本実施形態に係る剥離フィルム1では、これらのいずれの型のメラミン化合物を使用してもよい。
【0034】
剥離剤層12を形成するための剥離剤組成物において、メラミン樹脂の重量平均分子量は、350以上であることが好ましく、特に500以上であることが好ましく、さらには700以上であることが好ましい。また、上記重量平均分子量は、10000以下であることが好ましく、特に5000以下であることが好ましく、さらには4000以下であることが好ましい。上記重量平均分子量が350以上であることで、架橋速度が安定し、より平滑な剥離面を形成することができる。一方、重量平均分子量が10000以下であることで、剥離剤組成物の粘度が適度に低いものとなり、基材11上に剥離剤組成物の塗布液を塗布し易くなる。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0035】
(2)活性エネルギー線硬化性成分
本実施形態に係る剥離フィルム1において、剥離剤組成物は活性エネルギー線硬化性成分を含有する。本実施形態に係る剥離フィルム1では、剥離剤層12を形成する際、上述したアミノ樹脂による三次元構造の形成に続いて、剥離剤組成物の塗布層に活性エネルギー線を照射することで、活性エネルギー線硬化性成分の重合反応が進行し、当該成分が上記三次元構造を補強する構造が形成される。上述した三次元構造がさらに補強されることで、剥離剤層12の弾性がより向上し、これにより、本実施形態に係る剥離フィルム1は優れた剥離性を発揮することができる。
【0036】
活性エネルギー線硬化性成分は、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基およびマレイミド基よりなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有するものであることが好ましい。なお、上記アルケニル基としては、ビニル基、アリル基など炭素数2〜10のものが例示される。特に、かかる反応性官能基を、1分子中に2つ以上有することが好ましく、1分子中に3つ以上有することがより好ましい。これにより、剥離剤層12は、硬化性、耐溶剤性および剥離性がより優れたものとなる。
【0037】
上記活性エネルギー線硬化性成分の具体例としては、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中でも、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートおよびペンタエリスリトールテトラアクリレートの少なくとも1種の多官能アクリレートを用いることが好ましい。
【0038】
また、上記活性エネルギー線硬化性成分は、1分子中に少なくとも1個のヒドロキシ基を有することが好ましい。さらに、上記活性エネルギー線硬化性成分は、1分子中に3個以下のヒドロキシ基を有することが好ましく、特に1分子中に2個以下のヒドロキシ基を有することが好ましい。活性エネルギー線硬化性成分が1分子中に少なくとも1個のヒドロキシ基を有することで、アミノ樹脂が当該ヒドロキシ基と反応可能な基を有する場合に、活性エネルギー線硬化性成分とアミノ樹脂とが、これらの基を介して結合することが可能となり、上述した三次元構造をさらに補強することが可能となる。
【0039】
本実施形態に係る剥離フィルム1において、剥離剤組成物中における活性エネルギー線硬化性成分の配合量は、アミノ樹脂100質量部に対して、10質量部以上であることが好ましく、特に15質量部以上であることが好ましく、さらには75質量部以上であることが好ましい。また、剥離剤組成物中における活性エネルギー線硬化性成分の配合量は、アミノ樹脂100質量部に対して、1000質量部以下であることが好ましく、特に750質量部以下であることが好ましく、さらには500質量部以下であることが好ましい。活性エネルギー線硬化性成分の配合量が上述の範囲となるように、アミノ樹脂と活性エネルギー線硬化性成分とが配合されることで、本実施形態に係る剥離フィルム1は、剥離性、生産性および経時安定性により優れたものとなる。
【0040】
(3)ポリオルガノシロキサン
本実施形態に係る剥離フィルム1において、剥離剤組成物はポリオルガノシロキサンを含有する。これにより、当該剥離剤組成物を使用して形成される剥離剤層12では、剥離面における表面自由エネルギーが適度に低下する。そのため、剥離フィルム1の剥離面上に成形されたセラミックグリーンシートから剥離フィルム1を剥離する際の剥離力が適度に低下し、良好な剥離性が発揮される。
【0041】
本実施形態に係る剥離フィルム1に使用されるポリオルガノシロキサンは、特に限定されず、例えば、下記の一般式(b)で示されるケイ素含有化合物の重合体を使用することができる。
【化2】
【0042】
式(b)中、mは1以上の整数である。また、R
1〜R
8の少なくとも1個は、ヒドロキシ基またはヒドロキシ基を有する有機基であることが好ましい。すなわち、式(b)で表されるポリオルガノシロキサンは、1分子中に少なくとも1個のヒドロキシ基またはヒドロキシ基を有する有機基を含むことが好ましい。また、上記ポリオルガノシロキサン1分子におけるヒドロキシ基またはヒドロキシ基を有する有機基の数の上限は、特に制限されないものの、例えば20個である。ポリオルガノシロキサンがヒドロキシ基またはヒドロキシ基を有する有機基を含むことで、当該ヒドロキシ基と反応可能な基を有するアミノ樹脂に固定される結果、剥離フィルム1の剥離面上に成形されたセラミックグリーンシートに対して、剥離剤層12からポリオルガノシロキサンが移行することが効果的に抑制される。特に、R
3〜R
8の少なくとも1個がヒドロキシ基またはヒドロキシ基を有する有機基であることが好ましい。すなわち、ヒドロキシ基の少なくとも1個は、ポリオルガノシロキサンの末端に存在することが好ましい。ヒドロキシ基が末端に存在することで、ポリオルガノシロキサンが、当該ヒドロキシ基と反応可能な基を有するアミノ樹脂または活性エネルギー線硬化性成分との間で反応し易くなり、上記移行がより効果的に抑制される。
【0043】
式(b)中、R
1〜R
8のうち、ヒドロキシ基以外の基の少なくとも1個は、有機基であることが好ましい。ここで、式(b)中のR
1〜R
8の少なくとも1個がヒドロキシ基である場合、その他のR
1〜R
8に含まれる有機基は、ヒドロキシ基を有する有機基であってもよく、またはヒドロキシ基を有しない有機基であってもよい。一方、式(b)中のR
1〜R
8のいずれもがヒドロキシ基でない場合、その他のR
1〜R
8に含まれる有機基は、ヒドロキシ基を有する有機基であることが好ましい。なお、本明細書において、「有機基」は、後述するアルキル基を含まないものとする。式(b)で表されるポリオルガノシロキサンは、ヒドロキシ基を有する有機基またはヒドロキシ基を有しない有機基を1分子中に少なくとも1個有することが好ましく、特に1〜10個有することが好ましく、さらには1〜5個有することが好ましい。ここで、有機基は、ポリエステル基およびポリエーテル基から選択される1種類以上の有機基であることが好ましい。1分子中にポリエステル基およびポリエーテル基の両方が存在していてもよい。ポリエステル基またはポリエーテル基にヒドロキシ基が含まれる場合、当該ヒドロキシ基はこれらの有機基の末端に存在していてもよく、または、これらの有機基の側鎖に存在していてもよい。ポリオルガノシロキサンが上記有機基を有することで、剥離剤組成物中においてポリオルガノシロキサンとメラミン樹脂とが良好に混合され、硬化の際においてこれらが極端に相分離することが抑制される。
【0044】
式(b)中、R
1〜R
8のうち、上述した基以外の基は、炭素数1〜12のアルキル基であることが好ましい。炭素数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられ、特にメチル基が好ましい。
【0045】
R
1〜R
8は同一であっても異なっていてもよい。また、R
1およびR
2が複数存在する場合、R
1およびR
2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0046】
上記ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量は1000以上であることが好ましく、特に3000以上であることが好ましく、さらには4000以上であることが好ましい。また、当該重量平均分子量は300000以下であることが好ましく、特に100000以下であることが好ましく、さらには50000以下であることが好ましい。ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量が1000以上であることで、剥離剤層12の剥離面における表面自由エネルギーが適度に低下し、セラミックグリーンシートから剥離フィルム1を剥離する際の剥離力を効果的に低下させることができる。ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量が300000以下であることで、剥離剤組成物の粘度が過度に高くなることが抑制され、剥離剤組成物の塗布液を基材11に塗布し易くなる。
【0047】
剥離剤組成物中におけるポリオルガノシロキサンの配合量は、アミノ樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、特に0.5質量部以上であることが好ましく、さらには1.0質量部以上であることが好ましい。また、剥離剤組成物中におけるポリオルガノシロキサンの配合量は、アミノ樹脂100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、特に5質量部以下であることが好ましく、さらには4質量部以下であることが好ましい。剥離剤組成物中におけるポリオルガノシロキサンの含有量が上述の範囲であることで、剥離剤層12の剥離面の表面自由エネルギーが適度に低下し、優れた剥離力を達成することができる。
【0048】
(4)酸触媒
本実施形態に係る剥離フィルム1において、剥離剤組成物は酸触媒を含有する。剥離剤組成物が酸触媒を含むことにより、アミノ樹脂の縮合反応が効率的に進行し、十分な弾性を示す剥離剤層12が形成される。
【0049】
上記酸触媒の例としては、p−トルエンスルホン酸、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、亜リン酸等が挙げられる。アミノ樹脂として、フルエーテル型メラミン樹脂を主に使用する場合には、縮合反応を効率よく進行できる観点から、酸触媒としてp−トルエンスルホン酸を使用することが好ましい。また、アミノ樹脂として、イミノ・メチロール型メラミン樹脂を主に使用する場合には、同様の観点から、酸触媒としてリン酸を使用することが好ましい。
【0050】
剥離剤組成物中における酸触媒の配合量は、アミノ樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、特に1.0質量部以上であることが好ましく、さらには2.0質量部以上であることが好ましい。また、剥離剤組成物中における酸触媒の配合量は、アミノ樹脂100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、特に15質量部以下であることが好ましく、さらには10質量部以下であることが好ましい。酸触媒の配合量が0.5質量部以上であることで、アミノ樹脂の縮合反応を効率的に進行させることができる。また、酸触媒の配合量が20質量部以下であることで、低分子量成分が三次元構造中に保持され、剥離剤層からの析出を効果的に防止できる。
【0051】
(5)窒素原子を有する光重合開始剤
本実施形態に係る剥離フィルム1において、剥離剤組成物は、窒素原子を有する光重合開始剤を含有する。ここで、剥離剤組成物中における当該光重合開始剤の配合量は、酸触媒100質量部に対して、1質量部以上、300質量部以下である。これにより、剥離剤組成物の塗布液の白濁が生じず、且つ、活性エネルギー線硬化性成分の重合反応を効率的に進行させることができる。また、一般的に、窒素原子を有する光重合開始剤は、窒素原子を有しない光重合開始剤と比較して、活性エネルギー線硬化性成分の重合反応をより効率的に進行させることができる。そのため、本実施形態に係る剥離フィルム1では、剥離剤組成物が、上述のように比較的少ない量の範囲で窒素原子を有する光重合開始剤を含有することにより、得られる剥離剤層において、アミノ樹脂による三次元構造がより強固に補強される。
【0052】
本実施形態に係る剥離フィルム1において、剥離剤組成物中における窒素原子を有する光重合開始剤の配合量は、酸触媒100質量部に対して、1質量部以上であり、10質量部以上であることが好ましく、特に50質量部以上であることが好ましい。また、当該光重合開始剤の配合量は、酸触媒100質量部に対して、300質量部以下であり、270質量部以下であることが好ましく、特に250質量部以下であることが好ましい。当該光重合開始剤の配合量が1質量部未満である場合、光重合開始剤による重合反応を進行させる効果を十分に得ることができず、得られる剥離剤層ではアミノ樹脂による三次元構造の補強が不十分なものとなる。また、当該光重合開始剤の配合量が300質量部を超える場合、剥離剤組成物の塗布液において白濁が生じ、当該塗布液を使用して形成される剥離剤層では、剥離面の平滑性が低いものとなる。
【0053】
剥離剤組成物中における光重合開始剤の配合量は、活性エネルギー線硬化性成分100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、特に1.0質量部以上であることが好ましく、さらには2.0質量部以上であることが好ましい。また、剥離剤組成物中における光重合開始剤の配合量は、活性エネルギー線硬化性成分100質量部に対して、25質量部以下であることが好ましく、特に20質量部以下であることが好ましく、さらには15質量部以下であることが好ましい。光重合開始剤の配合量が0.5質量部以上であることで、活性エネルギー線硬化性成分の重合反応を効率的に進行させることができる。また、光重合開始剤の配合量が25質量部以下であることで、その反応残渣物による悪影響を効果的に低減することができる。
【0054】
光重合開始剤としては、窒素原子を有するものであれば特に限定されないが、例えば、α−アミノアルキルフェノン系化合物が挙げられる。
【0055】
α−アミノアルキルフェノン系化合物としては、例えば、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モリフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ジメチルアミノ−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等が挙げられる。これらの中でも、特に2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モリフォリノプロパン−1−オンを使用することが好ましい。これらは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0056】
(6)その他の成分
剥離剤組成物は、上記成分の他、架橋剤、反応抑制剤、増感剤、帯電防止剤、硬化剤等を含有していてもよい。
【0057】
(7)厚さ
剥離剤層12の厚さは、0.1μm以上であることが好ましく、特に0.5μm以上であることが好ましく、さらには0.75μm以上であることが好ましい。また、当該厚さは、5μm以下であることが好ましく、特に4μm以下であることが好ましく、さらには3μm以下であることが好ましい。当該厚さが0.1μm以上であることで、剥離剤層12としての機能を効果的に発揮することができる。一方、当該厚さが5μm以下であることで、剥離フィルム1をロール状に巻き取った際のブロッキングの発生を効果的に抑制することができる。
【0058】
2.基材
剥離フィルム1の基材11は、剥離剤層12を積層することができれば特に限定されるものではない。かかる基材11としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリプロピレンやポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリ酢酸ビニルなどのプラスチックからなるフィルムが挙げられ、単層であってもよいし、同種又は異種の2層以上の多層であってもよい。これらの中でもポリエステルフィルムが好ましく、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく、さらには二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。ポリエチレンテレフタレートフィルムは、加工時、使用時等において、埃等が発生しにくいため、例えば、埃等によるセラミックスラリー塗工不良等を効果的に防止することができる。さらに、ポリエチレンテレフタレートフィルムに帯電防止処理を行うことで、有機溶剤を使用するセラミックスラリーを塗工する際の静電気による発火を防止したり、塗工不良等を防止する効果を高めることができる。
【0059】
また、この基材11においては、その表面に設けられる剥離剤層12との密着性を向上させる目的で、所望により片面又は両面に、酸化法や凹凸化法などによる表面処理、あるいはプライマー処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸化処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン、紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶射処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は、基材フィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にコロナ放電処理法が効果及び操作性の面から好ましく用いられる。
【0060】
基材11の厚さは、10μm以上であることが好ましく、特に15μm以上であることが好ましく、さらには20μm以上であることが好ましい。また、当該厚さは、300μm以下であることが好ましく、特に200μm以下であることが好ましく、さらには125μm以下であることが好ましい。
【0061】
3.セラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルムの物性等
本実施形態に係る剥離フィルム1では、剥離剤層12の剥離面における算術平均表面粗さ(Ra)が、20nm以下であることが好ましく、特に15nm以下であることが好ましく、さらには10nm以下であることが好ましい。本実施形態に係る剥離フィルム1では、上述した剥離剤組成物を使用して剥離剤層12を形成していることにより、上記の範囲の高い平滑性を達成することができる。なお、本明細書における算術平均表面粗さ(Ra)は、JIS B0601:2013に準拠して、接触型粗さ計(例えば、ミツトヨ社製のSV3000S4)を用いて測定される粗さ曲線より求められるものとする。
【0062】
なお、剥離剤組成物の塗布液が白濁した場合、剥離剤層の表面に白濁の原因である不溶成分が付着して突起を生じる。この突起は、一般的に数10μmから数100μmの大きさを有し、目視で確認できるサイズとなる。
【0063】
剥離フィルム1の剥離面上に成形されたセラミックグリーンシートから、当該剥離フィルム1を剥離する際に要する剥離力は、適宜設定することができるが、5mN/20mm以上であることが好ましく、特に10mN/20mm以上であることが好ましい。また、当該剥離力は、100mN/20mm以下であることが好ましく、特に50mN/20mm以下であることが好ましい。なお、当該剥離力の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0064】
剥離フィルム1の厚さは、10μm以上であることが好ましく、特に15μm以上であることが好ましく、さらには20μm以上であることが好ましい。また、当該厚さは、305μm以下であることが好ましく、特に200μm以下であることが好ましく、さらには125μm以下であることが好ましい。
【0065】
4.セラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルムの製造方法
実施形態に係る剥離フィルム1は通常の方法により製造することができる。例えば、上述の剥離剤組成物を有機溶剤で希釈することで塗布液を調製し、当該塗布液を基材11の片面側に塗布して、塗布層を形成した後、当該塗布層を加熱する。この加熱の前に、塗布層を乾燥してもよい。この加熱により、アミノ樹脂の縮合反応が生じ、三次元構造が形成される。加熱の後に、当該塗布層に対して活性エネルギー線を照射する。活性エネルギー線の照射によって、活性エネルギー線硬化性樹脂の重合反応が生じ、上記三次元構造が補強される。以上により、剥離剤層12が形成される。
【0066】
上記有機溶剤としては特に制限はなく、様々なものを用いることができる。例えばトルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素化合物をはじめ、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、アセトン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びこれらの混合物等が用いられる。特に、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールとの混合液を使用することが好ましい。
【0067】
上記塗布液の塗布方法としては、例えば、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ダイコート法などが使用できる。
【0068】
上記加熱の加熱温度としては、90℃以上であることが好ましく、特に110℃以上であることが好ましい。また、当該加熱温度としては、140℃以下であることが好ましく、特に130℃以下であることが好ましい。さらに、上記加熱の加熱時間としては、10秒以上であることが好ましく、特に20秒以上であることが好ましい。また、当該加熱温度としては、120秒以下であることが好ましく、特に70秒以下であることが好ましい。
【0069】
活性エネルギー線としては、通常、紫外線、電子線等が用いられ、紫外線が特に好ましい。活性エネルギー線の照射量は、エネルギー線の種類によって異なるが、例えば紫外線の場合には、光量で50mJ/cm
2以上が好ましく、特に100mJ/cm
2以上が好ましい。また、紫外線の照射量は、光量で1000mJ/cm
2が好ましく、特に500mJ/cm
2が好ましい。電子線の場合には、0.1kGy以上が好ましく、また、50kGy以下が好ましい。
【0070】
本実施形態に係る剥離フィルム1は、剥離剤層12が、上述した剥離剤組成物の塗布液を使用して形成される。当該剥離剤組成物の塗布液では、光重合開始剤と酸触媒とによる難溶性または不溶性の塩が形成されず、塗布液が白濁しない。そのため、剥離剤層12の剥離面には難溶性または不溶性の塩に起因した凹凸が生じることがなく、当該剥離面が非常に高い平滑性を示すものとなる。
【0071】
5.セラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルムの使用方法
剥離フィルム1は、セラミックグリーンシートを製造するために使用することができる。具体的には、剥離剤層12の剥離面に対し、チタン酸バリウムや酸化チタンなどのセラミック材料を含有するセラミックスラリーを塗工した後、当該セラミックスラリーを乾燥させることでセラミックグリーンシートを得ることができる。塗工は、例えば、スロットダイ塗工方式やドクターブレード方式等を用いて行うことができる。
【0072】
セラミックスラリーに含まれるバインダー成分の例としては、ブチラール系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。また、セラミックスラリーに含まれる溶媒の例としては、有機溶媒、水系溶媒等が挙げられる。
【0073】
本実施形態に係る剥離フィルム1は、上述の通り、剥離面が高い平滑性を示すため、当該剥離フィルム1を使用することで、ピンホールや厚みむら等の欠陥の無い、優れた品質を有するセラミックグリーンシートを成形することができる。
【0074】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0075】
例えば、基材11における剥離剤層12の反対側の面、または基材11と剥離剤層12との間には、帯電防止層等の他の層が設けられてもよい。
【実施例】
【0076】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0077】
〔実施例1〕
アミノ樹脂としてのフルエーテル型メチル化メラミン樹脂(日本カーバイド社製,製品名「MW−30」,重量平均分子量608,分子量分布(Mw/Mn)1.005)100質量部(固形分として換算した量、以下同じ)と、活性エネルギー線硬化性成分としてのペンタエリスリトールトリアクリレート(新中村化学社製,製品名「A−TMM−3L」)100質量部と、ポリオルガノシロキサンとしてのポリエーテル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン(ビックケミー・ジャパン社製,製品名「BYK−377」)2.0質量部と、酸触媒としてのp−トルエンスルホン酸(日立化成社製,製品名「ドライヤー900」)4.0質量部と、光重合開始剤としての2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(Ciba社製,製品名「Irgacure907」)5.0質量部とをメチルエチルケトンとイソプロピルアルコールとの混合溶剤にて混合し、固形分18質量%の剥離剤組成物の塗布液を得た。
【0078】
得られた塗布液を、基材としての二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:25μm)の片面にマイヤーバー♯5により均一に塗布し、塗布層を得た。次いで、塗布層を120℃で30秒間加熱した後、窒素雰囲気下にて高圧水銀ランプで塗布層側から50mJ/cm
2の紫外線を照射することで、剥離剤組成物を硬化させ、基材上に厚さ1.2μmの剥離剤層が積層された剥離フィルムを得た。
【0079】
なお、基材および剥離剤層の厚さは、反射式膜厚計(フィルメトリックス社製,製品名「F20」)を用いて測定した。
【0080】
〔実施例2〜4〕
活性エネルギー線硬化性成分、酸触媒および光重合開始剤の配合量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして剥離フィルムを得た。
【0081】
〔実施例5〕
アミノ樹脂として、125質量部のイミノ型メチル化メラミン樹脂(日本カーバイド社製,製品名「MX−730」,重量平均分子量1508,分子量分布(Mw/Mn)1.18)を使用した以外は、実施例1と同様にして剥離フィルムを得た。
【0082】
〔比較例1〕
活性エネルギー線硬化性成分および光重合開始剤の配合量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして剥離フィルムを得た。
【0083】
〔試験例1〕(白濁の評価)
実施例および比較例において調製した剥離剤組成物の塗布液について、白濁の有無を目視にて確認した。塗布液が白濁していない例については○と、塗布液が白濁している例については×と評価した。結果を表1に示す。
【0084】
〔試験例2〕(平滑性の評価)
実施例および比較例において製造した剥離フィルムについて、剥離剤層の剥離面の平滑性を目視にて評価した。剥離面に凹凸が発生していない例については○と、剥離面に凹凸が発生している例については×と評価した。結果を表1に示す。
【0085】
〔試験例3〕(剥離力の測定)
チタン酸バリウム(BaTiO
3;堺化学工業社製,製品名「BT−03」)100質量部、ポリビニルブチラール(積水化学工業社製,製品名「エスレックB・KBM−2」)10質量部、およびフタル酸ジオクチル(関東化学社製,製品名「フタル酸ジオクチル鹿1級」)5質量部に、トルエン69質量部およびエタノール46質量部を加え、ボールミルにて混合分散させて、セラミックスラリーを調製した。
【0086】
実施例および比較例にて製造してから常温で48時間保管した剥離フィルムにおいて、剥離剤層の剥離面に、アプリケーターを用いて上記セラミックスラリーを均一に塗工し、その後、乾燥機にて80℃で1分間乾燥させた。これにより、剥離フィルム上に厚さ3μmのセラミックグリーンシートが得られた。このようにして、セラミックグリーンシート付剥離フィルムを製造した。
【0087】
このセラミックグリーンシート付剥離フィルムを、室温23度、湿度50%の雰囲気下に24時間静置した。次に、セラミックグリーンシートにおける剥離フィルムとは反対側の面に対し、アクリル粘着テープ(日東電工社製,製品名「31Bテープ」)を貼付し、その状態で20mm幅に裁断した。これを測定サンプルとした。
【0088】
当該測定サンプルの粘着テープ側を平板に固定し、引張試験機(島津製作所社製,製品名「AG−IS500N」)を用いて180°の剥離角度、100mm/分の剥離速度でセラミックグリーンシートから剥離フィルムを剥離し、剥離するのに必要な力(剥離力;mN/20mm)を測定した。結果を表1に示す。
【0089】
なお、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
[アミノ樹脂]
MW−30:フルエーテル型メチル化メラミン樹脂(日本カーバイド社製,製品名「MW−30」,重量平均分子量608,分子量分布(Mw/Mn)1.005)
MX−730:イミノ型メチル化メラミン樹脂(日本カーバイド社製,製品名「MX−730」,重量平均分子量1508,分子量分布(Mw/Mn)1.18)
【0090】
【表1】
【0091】
表1から明らかなように、実施例で調製した塗布液は白濁しておらず、剥離剤層の剥離面が高い平滑性を示した。さらに、実施例で得られた剥離フィルムでは、セラミックグリーンシートから剥離する際に適度な剥離力で剥離することが可能であった。