特許第6586377号(P6586377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6586377
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】排気浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/20 20060101AFI20190919BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20190919BHJP
   F01N 3/025 20060101ALI20190919BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20190919BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20190919BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   F01N3/20 LZAB
   B01D53/94 400
   B01D53/94 222
   F01N3/025 201S
   F01N3/035 A
   F01N3/035 E
   F01N3/08 G
   F01N3/24 C
   F01N3/24 E
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-32216(P2016-32216)
(22)【出願日】2016年2月23日
(65)【公開番号】特開2017-150357(P2017-150357A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2018年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】内海 尚子
【審査官】 楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/042217(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/125207(WO,A1)
【文献】 特開2009−150279(JP,A)
【文献】 特開2009−091909(JP,A)
【文献】 特開2010−038034(JP,A)
【文献】 特開2010−270616(JP,A)
【文献】 特開2015−152009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00〜 3/38
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路を流れる排気ガスを昇温可能なバーナーと、
前記バーナーの下流に位置し、排気ガスに尿素水を添加する第1添加弁と、
前記第1添加弁の下流に位置し、NOxとアンモニアとを反応させてNOxを還元する第1選択還元型触媒を表層に有して排気ガス中の粒子状物質を捕捉する触媒化DPFと、
前記触媒化DPFの下流に位置し、排気ガスに尿素水を添加する第2添加弁と、
前記第2添加弁の下流に位置し、前記第1選択還元型触媒よりも高い活性温度域を有するとともにNOxとアンモニアとを反応させてNOxを還元する第2選択還元型触媒と、
前記バーナーの駆動、前記第1添加弁による尿素水の添加、および、前記第2添加弁による尿素水の添加を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記バーナーに流入する排気ガスの温度であるバーナー入口温度と前記第1選択還元型触媒の温度である第1触媒温度とを取得し、前記第1選択還元型触媒が活性状態にある第1活性温度よりも前記第1触媒温度が低く、かつ、前記第1活性温度よりも高い設定温度よりも前記バーナー入口温度が低いとき、前記第1選択還元型触媒を前記第1活性温度まで昇温させる昇温モードで前記バーナーを駆動する
排気浄化装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1触媒温度が前記第1活性温度以上であり、かつ、前記バーナー入口温度が前記設定温度よりも低いとき、前記第1選択還元型触媒を活性状態に維持する保温モードで前記バーナーを駆動する
請求項1に記載の排気浄化装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第2選択還元型触媒の温度である第2触媒温度を取得し、
前記第2選択還元型触媒が活性状態にある第2活性温度よりも前記第2触媒温度が低く、かつ、前記第1触媒温度が前記第1活性温度以上であるときには、前記第1添加弁による尿素水の添加を行い、
前記第2触媒温度が前記第2活性温度以上であるときには、前記第2添加弁による尿素水の添加を行う
請求項1または2に記載の排気浄化装置。
【請求項4】
前記バーナーの上流に、排気ガスに含まれる一酸化窒素の一部を二酸化窒素へ酸化する前段酸化触媒を備える
請求項1〜3のいずれか一項に記載の排気浄化装置。
【請求項5】
前記第2選択還元型触媒を通過した排気ガスに含まれるアンモニアを酸化する後段酸化触媒を備える
請求項1〜4のいずれか一項に記載の排気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガスに含まれる窒素酸化物を浄化する排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1のように、排気ガスに含まれる窒素酸化物(以下、NOxという)を浄化する排気浄化装置として、排気ガスに尿素水を添加する添加弁とこの添加弁の下流に位置する選択還元型触媒と用いた尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)が知られている。尿素SCRでは、排気ガスに添加された尿素水が加水分解によりアンモニアに変換される。そして、そのアンモニアを含む排気ガスが選択還元型触媒に流入すると、排気ガス中のNOxがアンモニアと反応して窒素と水とに還元される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−91909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、環境保全等の観点から、上述した尿素SCRを用いた排気浄化装置にはさらなるNOxの浄化性能の向上が求められている。本発明は、排気ガスに含まれるNOxの浄化性能の向上を可能にした排気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する排気浄化装置は、排気通路を流れる排気ガスを昇温可能なバーナーと、前記バーナーの下流に位置し、排気ガスに尿素水を添加する第1添加弁と、前記第1添加弁の下流に位置し、NOxとアンモニアとを反応させてNOxを還元する第1選択還元型触媒を表層に有して排気ガス中の粒子状物質を捕捉する触媒化DPF(DPF:Diesel Particulate Filter)と、前記触媒化DPFの下流に位置し、排気ガスに尿素水を添加する第2添加弁と、前記第2添加弁の下流に位置し、前記第1選択還元型触媒よりも高い活性温度域を有するとともにNOxとアンモニアとを反応させてNOxを還元する第2選択還元型触媒と、前記バーナーの駆動、前記第1添加弁による尿素水の添加、および、前記第2添加弁による尿素水の添加を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記バーナーに流入する排気ガスの温度であるバーナー入口温度と前記第1選択還元型触媒の温度である第1触媒温度とを取得し、前記第1選択還元型触媒が活性状態にある第1活性温度よりも前記第1触媒温度が低く、かつ、前記第1活性温度よりも高い設定温度よりも前記バーナー入口温度が低いとき、前記第1選択還元型触媒を前記第1活性温度まで昇温させる昇温モードで前記バーナーを駆動する。
【0006】
設定温度は、エンジンの暖機完了後、バーナーを駆動しなくとも、第1選択還元型触媒が高い確率のもとで活性状態に維持されるバーナー入口温度である。上記構成によれば、第1選択還元型触媒が不活性状態にあり、かつ、バーナー入口温度が設定温度よりも低いとき、バーナーが昇温モードで駆動される。また、第1選択還元型触媒と排気ガスに含まれる粒子状物質を捕捉するDPFとが同列に配設されている。これにより、第1選択還元型触媒の昇温を効果的に促進させることができるとともに第2選択還元型触媒の昇温も促進させることができる。そのため、エンジンが冷間始動された場合であっても、第1選択還元型触媒によるNOxの還元、および、第2選択還元型触媒によるNOxの還元を早期に実現可能である。その結果、NOxの低減率を向上させることができる。
【0007】
上記排気浄化装置において、前記制御部は、前記第1触媒温度が前記第1活性温度以上であり、かつ、前記バーナー入口温度が前記設定温度よりも低いとき、前記第1選択還元型触媒を活性状態に維持する保温モードで前記バーナーを駆動することが好ましい。
【0008】
上記構成によれば、第1選択還元型触媒が活性状態にあり、かつ、バーナー入口温度が設定温度よりも低いとき、バーナーが保温モードで駆動される。これにより、例えばエンジンが低負荷状態にあるときにバーナー入口温度が一時的に設定温度を下回ったとしても、第1選択還元型触媒が不活性状態になることを抑えることができる。その結果、バーナー入口温度が設定温度よりも低くなったとしてもNOxの還元を継続して行うことが可能であることから、NOxの低減率をさらに向上させることができる。
【0009】
上記排気浄化装置にて、前記制御部は、前記第2選択還元型触媒の温度である第2触媒温度を取得し、前記第2選択還元型触媒が活性状態にある第2活性温度よりも前記第2触媒温度が低く、かつ、前記第1触媒温度が前記第1活性温度以上であるときには、前記第1添加弁による尿素水の添加を行い、前記第2触媒温度が前記第2活性温度以上であるときには、前記第2添加弁による尿素水の添加を行うことが好ましい。
【0010】
第1選択還元型触媒は、触媒化DPFの表層である。そのため、第1選択還元型触媒は、触媒化DPFにおける粒子状物質の堆積量が多くなるほど、排気ガスとの接触面積が少なくなることでNOxの還元効率が低下する。この点、上記によれば、第2触媒温度が第2活性温度以上であるときには、第1選択還元型触媒の状態に関わらず、第2添加弁のみで尿素水の添加を行う。これにより、触媒化DPFにおける粒子状物質の堆積に起因してNOxの浄化性能が低下することが抑えられる。また、例えば、バーナーを保温モードで駆動しているときに第1添加弁による尿素水の添加が行われることで、排気ガスの熱に基づく尿素水の加水分解が促進され、第1選択還元型触媒に流入するアンモニアが多くなる。これにより、第1選択還元型触媒の温度低下を抑えつつ、第1選択還元型触媒におけるNOxの還元を効率よく行うことができる。同様に、バーナーを保温モードで駆動しているときに第2添加弁による尿素水の添加が行われることで、排気ガスの熱に基づく尿素水の加水分解が促進され、第2選択還元型触媒に流入するアンモニアが多くなる。これにより、第2選択還元型触媒の温度低下を抑えつつ、第2選択還元型触媒におけるNOxの還元を効率よく行うことができる。
【0011】
上記排気浄化装置は、前記バーナーの上流に、排気ガスに含まれる一酸化窒素の一部を二酸化窒素へ酸化する前段酸化触媒を備えることが好ましい。
エンジンから排出された直後の排気ガスに含まれる窒素酸化物は一酸化窒素が大部分であり、また、アンモニアによる窒素酸化物の還元反応は、一酸化窒素と二酸化窒素とのモル比が1:1に近づくほど反応速度が速くなる。そのため、上記構成によれば、酸化触媒によって排気ガスにおける一酸化窒素と二酸化窒素とのモル比が1:1に近づくことで、各選択還元型触媒における還元反応の反応速度を高めることができる。その結果、NOxの低減率をさらに向上させることができる。
【0012】
上記排気浄化装置は、前記第2選択還元型触媒を通過した排気ガスに含まれるアンモニアを酸化する後段酸化触媒を備えることが好ましい。
上記構成によれば、第2選択還元型触媒から流出したアンモニアの大気への放出を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】排気浄化装置の一実施形態の概略構成を示す概略構成図。
図2】モード選択処理の手順の一例を示すフローチャート。
図3】添加処理の手順の一例を示すフローチャート。
図4】NOx低減率の比較結果の一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1図4を参照して、排気浄化装置の一実施形態について説明する。
図1に示すように、排気浄化装置10は、エンジンからの排気ガスが流れる排気通路11に、上流側から順に、前段酸化触媒20、バーナー21、第1添加弁22、第1選択還元型触媒23(以下、単に第1触媒23という。)を表層に有する触媒化DPF25、第2添加弁26、第2選択還元型触媒27(以下、単に第2触媒27という。)、後段酸化触媒28を備えている。排気通路11は、バーナー21および触媒化DPF25を収容する第1収容部12と、第1収容部12に対して縮径部13を介して接続されて第2触媒27および後段酸化触媒28を収容する第2収容部14とを備えている。
【0015】
前段酸化触媒20は、DOC(Diesel Oxdation Catalyst)であり、排気ガス中の炭化水素や一酸化炭素を酸化して水や二酸化炭素に変換するとともに一酸化窒素を酸化して二酸化窒素に変換する。前段酸化触媒20は、例えば耐熱性に優れたステンレスやセラミックからなるフロースルー型のモノリス担体と、このモノリス担体にコーティングされた触媒層とを有する。触媒層は、例えばゼオライトやアルミナからなる粒子状の触媒担体と触媒担体に担持された触媒金属とを有する。触媒金属は、例えば白金、パラジウム、およびロジウム等の白金系元素のうちの少なくとも1種である。
【0016】
バーナー21は、エンジンの燃料を第1収容部12内に供給する供給弁や供給された燃料を着火する着火部等を有し、燃料が燃焼する駆動状態において排気ガスを昇温させる。バーナー21は、燃料の燃焼が開始されると燃料の供給が停止されるまで駆動状態に維持される。バーナー21の出力は、燃料の供給量が多くなると大きくなり、燃料の供給量が少なくなると小さくなる。バーナー21は、例えば第1触媒23を昇温する昇温モードや触媒化DPF25が捕捉した粒子状物質(PM:Particulate Matter)を焼却する再生モードといった複数の制御モードを有している。
【0017】
第1添加弁22は、バーナー21と触媒化DPF25との間に位置するインジェクターであって、第1収容部12を流れる排気ガスに還元剤である尿素水を噴射する。第1添加弁22は、尿素水タンクや機械式ポンプ等を備えた尿素水供給装置29から所定圧力の尿素水が供給されており、開弁時間が長いほど多くの尿素水を噴射する。
【0018】
触媒化DPF25は、排気ガス中の粒子状物質を捕捉するフィルター機能と、第1添加弁22の添加した尿素水が加水分解したアンモニアと排気ガスに含まれるNOxとを反応させてNOxを窒素や水へと還元する還元機能とを有する。触媒化DPF25は、例えば耐熱性に優れたステンレスやセラミックからなるウォールフロー型のフィルター24と、該フィルター24にコーティングされた触媒層である第1触媒23とで構成されている。第1触媒23は、例えばゼオライトやアルミナからなる粒子状の触媒担体と、触媒担体に担持された触媒金属とを有する。触媒金属としては、例えば、銅系、鉄系、バナジウム系の各種金属が挙げられる。第1触媒23は、第1活性温度T1A(例えば150℃)以上であって第1上限温度(例えば350℃)以下の温度範囲を活性温度域として有する。
【0019】
第2添加弁26は、第1収容部12と第2収容部14とを接続する縮径部13に取り付けられたインジェクターであって、縮径部13を流れる排気ガスに対して還元剤である尿素水を噴射する。第2添加弁26は、尿素水供給装置29から所定圧力の尿素水が供給されており、開弁時間が長いほど多くの尿素水を噴射する。
【0020】
第2触媒27は、第2添加弁26の添加した尿素水が加水分解したアンモニアと排気ガ
ス中のNOxとを反応させてNOxを還元する。第2触媒27は、例えばステンレスやセラミックからなるフロースルー型のモノリス担体と、このモノリス担体にコーティングされた触媒層とを有する。触媒層は、例えばゼオライトやアルミナからなる粒子状の触媒担体と、触媒担体に担持された触媒金属とを有する。触媒金属としては、例えば、銅系、鉄系、バナジウム系の各種金属が挙げられる。第2触媒27は、第1触媒23よりも容量が大きく、第1触媒23よりも多くのNOxを還元することが可能である。第2触媒27は、第1触媒23の第1活性温度T1Aよりも高い第2活性温度T2A(例えば「180℃」)以上であって、後述する触媒化DPF25の再生温度よりも高い第2上限温度(例えば「650℃」)以下の比較的高い温度範囲を活性温度域として有する。
【0021】
後段酸化触媒28は、第2触媒27を通過したアンモニアを酸化する。後段酸化触媒28は、例えば耐熱性に優れたステンレスやセラミックからなるモノリス担体と、モノリス担体にコーティングされた触媒層とを有する。触媒層は、例えばゼオライトやアルミナからなる粒子状の触媒担体と、触媒担体に担持された触媒金属とを有する。触媒金属は、例えば白金、パラジウム、およびロジウム等の白金系元素のうちの少なくとも1種である。
【0022】
排気通路11には、各種のセンサーが取り付けられている。バーナー入口温度センサー31は、前段酸化触媒20とバーナー21との間に位置し、バーナー21に流入する排気ガスの温度であるバーナー入口温度Tbを検出する。第1入口温度センサー32は、第1添加弁22と触媒化DPF25との間に位置し、触媒化DPF25に流入する排気ガスの温度である第1入口温度T1inを検出する。第1出口温度センサー33は、触媒化DPF25と第2添加弁26との間に位置し、触媒化DPF25を通過した排気ガスの温度である第1出口温度T1outを検出する。第2入口温度センサー34は、第2添加弁26と第2触媒27との間に位置し、第2触媒27に流入する排気ガスの温度である第2入口温度T2inを検出する。第2出口温度センサー35は、第2触媒27と後段酸化触媒28との間に位置し、第2触媒27を通過した排気ガスの温度である第2出口温度T2outを検出する。第1NOxセンサー36は、第1添加弁22と触媒化DPF25との間に位置し、触媒化DPF25に流入する排気ガスのNOx濃度である第1NOx濃度C1を検出する。第2NOxセンサー37は、第2添加弁26と第2触媒27との間に位置し、第2触媒27に流入する排気ガスのNOx濃度である第2NOx濃度C2を検出する。排気浄化装置10は、これらの各種センサーが検出した値を示す信号に基づいて、バーナー21の駆動、第1添加弁22による尿素水の添加、および、第2添加弁26による尿素水の添加を制御する制御装置50を備えている。
【0023】
制御装置50は、処理部、記憶部、外部入力部、および、外部出力部等を備えたマイクロコンピュータを中心に構成されており、各種機能部として、触媒温度取得部51、バーナー制御部52、添加制御部53を備えている。なお、制御装置50には、上述した各種センサーに加えて、吸入空気量センサー38からエンジンが吸入する空気の体積流量である吸入空気量Qaを示す信号が入力される。制御装置50は、吸入空気量Qaを排気流量として取り扱う。
【0024】
触媒温度取得部51は、上述した各種温度センサーからの信号に基づいて、第1触媒23の温度である第1触媒温度T1と第2触媒27の温度である第2触媒温度T2とを取得する。触媒温度取得部51は、第1入口温度T1inと第1出口温度T1outとの平均値を演算し、その演算した平均値を第1触媒温度T1として取得する。触媒温度取得部51は、第2入口温度T2inと第2出口温度T2outとの平均値を演算し、その演算した平均値を第2触媒温度T2として取得する。
【0025】
バーナー制御部52は、バーナー21の制御モードを選択するモード選択処理を繰り返し実行し、選択された制御モードに応じてバーナー21の駆動を制御する。このモード選
択処理について図2を参照して説明する。
【0026】
図2に示すように、バーナー制御部52は、例えば触媒化DPF25における差圧に基づいて粒子状物質の堆積量Mを演算し、その演算した堆積量Mが触媒化DPF25の再生が必要となる上限値α未満であるか否かを判断する(ステップS101)。
【0027】
堆積量Mが上限値α以上である場合(ステップS101:NO)、バーナー制御部52は、再生モードを選択し(ステップS102)、モード選択処理を一旦終了する。再生モードを選択したバーナー制御部52は、モード選択処理を中断して再生処理を実行する。再生処理においてバーナー制御部52は、例えば再生処理の開始から所定時間内に第1触媒温度T1が再生温度(例えば「600℃」)に到達するようにバーナー21の出力を制御する。またバーナー制御部52は、第1触媒温度T1が再生温度に到達すると、堆積量Mが下限値β(<α)未満になるまで第1触媒温度T1が再生温度に維持されるようにバーナー21の出力を制御する。バーナー制御部52は、再生処理が終了するとモード選択処理を再開する。
【0028】
一方、堆積量Mが上限値α未満である場合(ステップS101:YES)、バーナー制御部52は、バーナー入口温度Tbが設定温度Tbs(例えば「200℃」)未満であるか否かを判断する(ステップS103)。設定温度Tbsは、エンジンの暖機完了によってバーナー21よりも上流側の排気通路11が十分に昇温し、なおかつ、バーナー21を駆動しなくとも、少なくとも第1触媒23、好ましくは第1および第2触媒23,27の双方が高い確率のもとで活性状態に維持されるバーナー入口温度Tbである。すなわち、設定温度Tbsは、少なくとも第1触媒23を活性状態に維持するうえでバーナー21の駆動が不要となるバーナー入口温度Tbである。この設定温度Tbsは、例えば、実機を用いた実験の結果やシミュレーションの結果に基づいて設定される温度である。バーナー入口温度Tbが設定温度Tbs以上である場合(ステップS103:NO)、バーナー制御部52は、バーナー21を駆動しない停止モードを選択し(ステップS104)、モード選択処理を一旦終了する。停止モードを選択したバーナー制御部52は、バーナー21が駆動状態にあるときは燃料の供給を停止してバーナー21を停止状態に制御し、バーナー21が停止状態にあるときにはそのままの状態を維持する。
【0029】
一方、バーナー入口温度Tbが設定温度Tbs未満である場合(ステップS103:YES)、バーナー制御部52は、第1触媒温度T1が第1活性温度T1A未満であるか否かを判断する(ステップS105)。第1触媒温度T1が第1活性温度T1A未満である場合(ステップS105:YES)、バーナー制御部52は、第1触媒23を昇温させる昇温モードを選択し(ステップS106)、モード選択処理を一旦終了する。昇温モードを選択したバーナー制御部52は、例えば昇温モードの選択から所定時間内に第1触媒温度T1が第1活性温度T1Aに到達するようにバーナー21の出力を制御する。
【0030】
一方、第1触媒温度T1が第1活性温度T1A以上である場合(ステップS105:NO)、バーナー制御部52は、第1活性温度T1A以上にある第1触媒23を保温する保温モードを選択し(ステップS107)、モード選択処理を一旦終了する。保温モードを選択したバーナー制御部52は、第1触媒温度T1と第1触媒温度T1よりも高い第1保温温度T1kとの差に基づいてバーナー21の出力を制御する。バーナー制御部52は、第1触媒温度T1が第1保温温度T1kよりも高いときには、その差に応じた分だけバーナー21の出力を小さくする。またバーナー制御部52は、第1触媒温度T1が第1保温温度T1kよりも低いときには、その差に応じた分だけバーナー21の出力を大きくする。こうしたバーナー21の出力の調整を行うことで、バーナー制御部52は、第1触媒23を第1保温温度T1kに保持する。
【0031】
次に、添加制御部53について説明する。添加制御部53は、第1添加弁22による尿素水の添加、および、第2添加弁26による尿素水の添加を制御する添加処理を繰り返し実行する。この添加処理について図3を参照して説明する。
【0032】
図3に示すように、添加制御部53は、最初に、第2触媒温度T2が第2活性温度T2A以上であるか否かを判断する(ステップS201)。第2触媒温度T2が第2活性温度T2A未満であった場合(ステップS201:NO)、添加制御部53は、第1触媒温度T1が第1活性温度T1A以上であるか否かを判断する(ステップS202)。第1触媒温度T1が第1活性温度T1A未満であった場合(ステップS202:NO)、添加制御部53は、第1および第2触媒23,27の双方が不活性状態にあるものとして、停止処理を実行し(ステップS203)、添加処理を一旦終了する。停止処理において添加制御部53は、尿素水を添加している場合には尿素水の添加を停止し、尿素水を添加していない場合にはそのままの状態を維持する。
【0033】
一方、第1触媒温度T1が第1活性温度T1A以上である場合(ステップS202:YES)、添加制御部53は、第1添加弁22から尿素水を添加する第1添加処理を実行し(ステップS204)、添加処理を一旦終了する。第1添加処理において添加制御部53は、吸入空気量Qaと第1NOx濃度C1とに基づいて、第1触媒23に流入する排気ガスのNOx量である第1NOx量Qn1を演算する。そして添加制御部53は、第1NOx量Qn1に応じた第1添加量Qu1の尿素水が排気ガスに添加されるように第1添加弁22の開閉を制御する。第1添加量Qu1は、例えばNOxとアンモニアとのモル比が1:1となる尿素水の量である。なお、第1添加処理は、バーナー21の制御モードにかかわらずステップS202の条件が満たされたときに実行される。すなわち、第1添加処理は、例えば保温モードや再生モードでバーナー21が駆動されている状態であったとしても、ステップS202の条件が満たされれば実行される。
【0034】
また、ステップS201において第2触媒温度T2が第2活性温度T2A以上である場合(ステップS201:YES)、添加制御部53は、第2添加弁26から尿素水を添加する第2添加処理を実行し(ステップS205)、添加処理を一旦終了する。
【0035】
第2添加処理において添加制御部53は、吸入空気量Qaと第2NOx濃度C2とに基づいて、第2触媒27に流入する排気ガスのNOx量である第2NOx量Qn2を演算する。そして添加制御部53は、第2NOx量Qn2に応じた第2添加量Qu2の尿素水が排気ガスに添加されるように第2添加弁26の開閉を制御する。第2添加量Qu2は、例えばNOxとアンモニアとのモル比が1:1となる尿素水の量である。なお、第2添加処理は、第1添加処理と同様、バーナー21の制御モードにかかわらず、ステップS201の条件が満たされたときに実行される。
【0036】
図4を参照して上述した排気浄化装置の作用について説明する。
排気浄化装置10では、排気ガスに含まれる粒子状物質を捕捉するDPFを触媒化DPF25とすることによってDPFと触媒とが同じ位置に配設されている。そのため、DPFの下流に第1触媒23が位置する構成に比べて第1および第2触媒23,27に流入する排気ガスの温度低下が抑えられることから、バーナー21の駆動によって第1および第2触媒23,27を効果的に昇温させることができる。これにより、第1触媒温度T1が第1活性温度T1Aに到達する時期、および、第2触媒温度T2が第2活性温度T2Aに到達する時期が早まることで、第1触媒23によるNOxの還元、および、第2触媒27によるNOxの還元を早期に実現可能である。その結果、NOxの低減率を向上させることができる。
【0037】
図4は、NOxの低減率を連邦テスト法(FTP:Federa Test Proc
edure)のコールドスタートで比較した結果の一例を示すグラフである。実施例1,2の排気浄化装置は上述した排気浄化装置10である。実施例1は、第1および第2触媒23,27の触媒金属として銅系の金属を用いたものであり、実施例2は、第1および第2触媒23,27の触媒金属として鉄系の金属、あるいは、バナジウム系の金属を用いたものである。一方、比較例の排気浄化装置は、触媒化DPF25に代えて、DPFとDPFの下流に位置する第1選択還元型触媒とを備えたものである。図4に示すように、実施例1,2では、比較例に比べてNOxの低減率が約10%向上することが認められた。
【0038】
上記実施形態の排気浄化装置によれば、以下に列挙する作用効果が得られる。
(1)バーナー入口温度Tbが設定温度Tbs未満であり、かつ、第1触媒温度T1が第1活性温度T1A未満であるとき、バーナー21が昇温モードで駆動される。また、排気ガスに含まれる粒子状物質を捕捉するDPFを触媒化DPF25とすることによってDPFと触媒とが同列に配設されている。そのため、バーナー21の駆動により、第1および第2触媒23,27の昇温を効果的に促進させることができる。これにより、エンジンが冷間始動された場合であっても、第1触媒23によるNOxの還元、および、第2触媒27によるNOxの還元を早期に実現可能である。その結果、NOxの低減率を向上させることができる。
【0039】
(2)バーナー入口温度Tbが設定温度Tbs未満であり、かつ、第1触媒温度T1が第1活性温度T1A以上であるとき、バーナー21が保温モードで駆動される。これにより、例えばエンジンが低負荷状態にあるときにバーナー入口温度Tbが一時的に設定温度Tbsを下回ったとしても、第1触媒23が不活性状態になることを抑えることができる。その結果、バーナー入口温度Tbが設定温度Tbsよりも低くなったとしてもNOxの還元が継続して行われることから、NOxの低減率をさらに向上させることができる。
【0040】
(3)バーナー21が保温モードや再生モードで駆動されている状態であっても、各触媒温度が所定条件(ステップS201あるいはステップS202)を満たすと第1添加処理あるいは第2添加処理が行われる。そのため、バーナー21の駆動中に第1添加処理が実行されることにより、第1触媒23に流入するまえに加水分解する尿素水が多くなり、第1触媒23の温度低下を抑えつつ第1触媒23におけるNOxの還元を効率よく行うことができる。また、バーナー21の駆動中に第2添加処理が実行されることにより、第2触媒27に流入するまえに加水分解する尿素水が多くなり、第2触媒27の温度低下を抑えつつ第2触媒27におけるNOxの還元を効率よく行うことができる。
【0041】
(4)第1触媒23は、触媒化DPF25の表層であるため、触媒化DPF25における堆積量Mが多くなるほど排気ガスとの接触面積が小さくなり、NOxの還元量が低下する。この点、排気浄化装置10では、第2触媒温度T2が第2活性温度T2A以上であるときには、第1触媒23の活性状態にかかわらず、第2添加弁26のみで尿素水の添加を行う。これにより、触媒化DPF25におけるPMの堆積に起因して、排気浄化装置10のNOx浄化性能の低下を抑えることができる。また、余剰な尿素水の添加が抑えられることから、尿素水の消費量を抑えることができる。
【0042】
(5)エンジンから排出された直後の排気ガスに含まれる窒素酸化物は一酸化窒素が大部分であり、また、アンモニアによる窒素酸化物の還元反応は、一酸化窒素と二酸化窒素とのモル比が1:1に近づくほど反応速度が速くなる。この点、排気浄化装置10は、バーナー21の上流に、排気ガスに含まれる一酸化窒素の一部を二酸化窒素に変換する前段酸化触媒20を備えている。そのため、前段酸化触媒20によって排気ガスにおける一酸化窒素と二酸化窒素とのモル比が1:1に近づくことで、第1および第2触媒23,27における還元反応の反応速度を高めることができる。その結果、NOxの低減率をさらに向上させることができる。
【0043】
(6)前段酸化触媒20では、未燃燃料も酸化される。そのため、その酸化された分だけバーナー21に流入する排気ガスを昇温させることができる。これにより、バーナー21の駆動にともなう燃料消費量を低減することができる。
【0044】
(7)第2触媒27の下流に後段酸化触媒28が配設されていることにより、第2触媒27から流出した未燃燃料やアンモニアを酸化することができる。これにより、これら未燃燃料およびアンモニアの大気への放出を抑えることができる。
【0045】
(8)第2触媒温度T2が第2活性温度T2A以上であるときもバーナー入口温度Tbおよび第1触媒温度T1に応じてバーナーが駆動されることで、第1および第2触媒23,27の双方が不活性状態になることを抑えることができる。
【0046】
(9)第2選択還元型触媒27が再生温度よりも高い温度域を活性温度域として有することで触媒化DPF25の再生処理中も第2添加処理を行うことができる。これにより、再生処理中にバーナー21から発生するNOxも浄化することができる。
【0047】
上記実施形態は以下のように適宜変更して実施することもできる。
・排気ガスに含まれるNOxを低減させるうえでは、後段酸化触媒28は割愛された構成であってもよい。
【0048】
・排気浄化装置10は、前段酸化触媒20が割愛された構成であってもよい。
・第2触媒温度T2が第2活性温度T2A以上であるとき、その上流側に位置している第1触媒23も第1活性温度T1A以上である可能性が非常に高い。そのため、添加制御部53は、第2触媒温度T2が第2活性温度T2A以上であるときに、第1添加処理および第2添加処理の双方を実行してもよい。すなわち、添加制御部53は、第1NOx量Qn1に応じた第1添加量Qu1の尿素水を第1添加弁22から添加し、第2NOx量Qn2に応じた第2添加量Qu2の尿素水を第2添加弁26から添加してもよい。
【0049】
・保温モードにおいて、バーナー制御部52は、第1触媒温度T1が第1保温温度T1kよりも高くなることを条件にバーナー21を停止し、第1触媒温度T1が第1保温温度T1kよりも低くなることを条件にバーナー21を駆動してもよい。すなわち、バーナー制御部52は、バーナー21の出力の調整ではなく、バーナー21の停止と駆動とを繰り返すことにより、第1触媒温度T1を第1保温温度T1kに保持するようにしてもよい。
【0050】
・バーナー制御部52は、制御モードから保温モードが割愛された構成であってもよい。この場合、バーナー制御部52は、第1触媒温度T1が第1活性温度T1A以上であるか否かに応じて停止モードと昇温モードとを繰り返す。
【0051】
・選択還元型触媒においては、その触媒温度に応じてNOxを還元可能な最大値を有する。そのため、第1添加処理において、バーナー制御部52は、第1NOx量Qn1のNOxを還元可能な量を最大値として、第1触媒温度T1に応じて第1添加量Qu1を制御してもよい。なお、第2添加量Qu2についても同様である。
【0052】
・設定温度Tbsは、バーナー21を駆動しなくとも第1触媒23のみが高い確率のもとで活性状態に維持されるバーナー入口温度Tbに設定されていればよい。
・第2選択還元型触媒27は、活性温度域に第1選択還元型触媒23の活性温度域よりも高い温度域を有していればよい。すなわち、第2選択還元型触媒27は、第2上限温度が第1上限温度よりも高ければよく、第2活性温度T2Aが第1活性温度T1Aと同じ温度であってもよい。
【0053】
・触媒温度取得部51は、第1入口温度T1inと第1出口温度T1outの平均値を第1触媒温度T1として取得する構成に限られない。例えば、第1入口温度T1inを第1触媒温度T1として取得する構成であってもよいし、第1出口温度T1outを第1触媒温度T1として取得する構成であってもよい。こうした構成によれば、排気浄化装置10の構成の簡素化を図ることができる。なお、第2触媒温度T2についても同様である。
【符号の説明】
【0054】
10…排気浄化装置、11…排気通路、12…第1収容部、13…縮径部、14…第2収容部、20…前段酸化触媒、21…バーナー、22…第1添加弁、23…第1選択還元型触媒、24…フィルター、25…触媒化DPF、26…第2添加弁、27…第2選択還元型触媒、28…後段酸化触媒、29…尿素水供給装置、31…バーナー入口温度センサー、32…第1入口温度センサー、33…第1出口温度センサー、34…第2入口温度センサー、35…第2出口温度センサー、36…第1NOxセンサー、37…第2NOxセンサー、38…吸入空気量センサー、50…制御装置、51…触媒温度取得部、52…バーナー制御部、53…添加制御部。
図1
図2
図3
図4