特許第6586410号(P6586410)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6586410
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】複輪車両
(51)【国際特許分類】
   B62K 5/025 20130101AFI20190919BHJP
   B62K 17/00 20060101ALI20190919BHJP
   B62H 1/12 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   B62K5/025
   B62K17/00
   B62H1/12 Z
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-250229(P2016-250229)
(22)【出願日】2016年12月23日
(65)【公開番号】特開2018-103691(P2018-103691A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2018年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】特許業務法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】加納 光寿
【審査官】 杉田 隼一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−008770(JP,A)
【文献】 中国実用新案第201415735(CN,Y)
【文献】 特表平05−504706(JP,A)
【文献】 実開昭63−072293(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 5/025
B62H 1/12
B62K 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭乗者の足場を支えるメインフレームと、
転倒防止用の補助輪機構とを備え、
前記補助輪機構は、
前記メインフレームの上面に配設され搭乗者が載るフットプレートと、
前記フットプレートに対向して前記メインフレームの下面に配設される補助輪プレートと、
前記補助輪プレートの前端部の下面に支持される補助輪と、
前記フットプレートの後端部と前記補助輪プレートの後端部を連絡する第1連絡軸と、
前記フットプレートの前端部と前記補助輪プレートの前端部を連絡する第2連絡軸と、
前記メインフレームに設けられ、前記第1連絡軸が貫通し、前記第1連絡軸を支点として前記第1連絡軸および前記第2連絡軸を介して一体とされた前記フットプレートおよび前記補助輪プレートが水平方向に回動可能とされる第1貫通溝と、
前記メインフレームに設けられ、前記第2連絡軸が貫通し、前記第1連絡軸および前記第2連絡軸を介して一体とされた前記フットプレートおよび前記補助輪プレートが水平方向に回動可能とされる第2貫通溝とを備え、
前記第1連絡軸を支点として、前記フットプレートと前記補助輪プレートとを一体として水平方向に回動させることにより、前記補助輪を前記メインフレームの直下領域である収納位置から前記メインフレームの左側外方または右側外方の転倒防止位置に移動させることを特徴とする複輪車両。
【請求項2】
前記補助輪は、前記収納位置において地面より上方に設けられることを特徴とする請求項1に記載の複輪車両。
【請求項3】
前記メインフレームの左右方向の中央部において、前記第1貫通溝は、進行方向に伸長する長穴形状とし、
前記第2貫通溝は、
前記第2連絡軸を水平方向に回動可能とする第1溝部と、
前記第1溝部に連接され、前記メインフレームの左右方向の中央部において、進行方向に伸長する長穴形状の第2溝部とを備え、
前記補助輪の前記収納位置において、前記第2連絡軸が前記第2貫通溝の前記第2溝部にあって前記フットプレートと前記補助輪プレートとを一体として非回動状態とすることを特徴とする請求項1または2に記載の複輪車両。
【請求項4】
前記補助輪機構は、前記メインフレームの左右方向の左側半部および右側半部の各々に左方補助輪機構および右方補助輪機構を備え、
前記左方補助輪機構において、
前記第2貫通溝は、一体とされた前記フットプレートおよび前記補助輪プレートを、前記補助輪の前記収納位置から左側外方に回動可能とし、
前記右方補助輪機構において、
前記第2貫通溝は、一体とされた前記フットプレートおよび前記補助輪プレートを、前記補助輪の前記収納位置から右側外方に回動可能とする
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の複輪車両。
【請求項5】
前記メインフレームは、左右方向の中央部を頂点として左側外方および右側外方に向かうに従って下降して傾斜する山型形状であることを特徴とする請求項4に記載の複輪車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転倒防止用の補助輪を搭載した複輪車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、転倒防止用の補助輪を搭載した複輪車両が特許文献1や2などに開示されている。特許文献1には、車体の支持部に、摺動部と支持扞と、地表より離した補助輪を支え、支持扞にそれぞれ端部を車体に固定した発条を取り付け、補助輪を車輪に平行して備える自転車が開示されている。補助輪を地表より離すことによって、車体が左方向または右方向に傾倒した場合には発条が伸長し、補助輪が接地して転倒が防止されるとしている。
【0003】
特許文献2には、サドル前後及び車輪間の高い位置に連結バーを設置し、連結バー下に滑車付きの子供用椅子などを可動式に吊った自転車が開示されている。転倒時には椅子の下端滑車が接地して天場の連結バーを支え安定させ、傾斜した自転車本体と子供用椅子の支柱間で直角三角形を為し、又子供用椅子は下の滑車と二等辺三角形を形成して安定するため横転が防止できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−64083号公報
【特許文献2】特開2009−255905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や特許文献2に開示された自転車は、いずれも補助輪部の構造が複雑であり、大掛かりであることから、通常の運転の際、補助輪を構成する補助輪部自体が、荷重負荷になりやすく、運転する際の阻害要因になってしまう恐れがある。また、補助輪により自転車の横転は防止可能であるが、自転車が傾斜した状態で継続して運転することや、自転車が傾斜した状態から通常の運転状態である直立した状態へ自立復帰することが困難であることから、使い勝手が悪いという問題がある。
【0006】
本発明は前記従来の問題点を解消するためになされたものであり、簡易な構成で、複輪車両の傾斜による横転を防止し、かつ、傾斜した状態でも継続して運転できると共に、傾斜した状態から通常の運転状態である直立した状態へ自立復帰しやすい補助輪機構を備えた複輪車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため請求項1に係る複輪車両は、搭乗者の足場を支えるメインフレームと、転倒防止用の補助輪機構とを備える。補助輪機構は、メインフレームの上面に配設され搭乗者が載るフットプレートと、フットプレートに対向してメインフレームの下面に配設される補助輪プレートと、補助輪プレートの前端部の下面に支持される補助輪と、フットプレートの後端部と補助輪プレートの後端部を連絡する第1連絡軸と、フットプレートの前端部と補助輪プレートの前端部を連絡する第2連絡軸と、メインフレームに設けられ、第1連絡軸が貫通し、第1連絡軸を支点として第1および第2連絡軸を介して一体とされたフットプレートおよび補助輪プレートが水平方向に回動可能とされる第1貫通溝と、メインフレームに設けられ、第2連絡軸が貫通し、第1および第2連絡軸を介して一体とされたフットプレートおよび補助輪プレートが水平方向に回動可能とされる第2貫通溝とを備え、第1連絡軸を支点として、フットプレートと補助輪プレートとを一体として水平方向に回動させることにより、補助輪をメインフレームの直下領域である収納位置からメインフレームの左側外方または右側外方の転倒防止位置に移動させることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る複輪車両は、請求項1に記載の複輪車両において、補助輪は、収納位置において地面より上方に設けられることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る複輪車両は、請求項1または請求項2に記載の複輪車両において、メインフレームの左右方向の中央部において、第1貫通溝は、進行方向に伸長する長穴形状とし、第2貫通溝は、第2連絡軸を水平方向に回動可能とする第1溝部と、第1溝部に連接され、メインフレームの左右方向の中央部において、進行方向に伸長する長穴形状の第2溝部とを備え、補助輪の収納位置において、第2連絡軸が第2貫通溝の第2溝部にあってフットプレートと補助輪プレートとを一体として非回動状態とすることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る複輪車両は、請求項1乃至3の何れか1項に記載の複輪車両において、補助輪機構は、メインフレームの左右方向の左側半部および右側半部の各々に左方補助輪機構および右方補助輪機構を備え、左方補助輪機構において、第2貫通溝は、一体とされたフットプレートおよび補助輪プレートを、補助輪の収納位置から左側外方に回動可能とし、右方補助輪機構において、第2貫通溝は、一体とされたフットプレートおよび補助輪プレートを、補助輪の収納位置から右側外方に回動可能とすることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る複輪車両は、請求項4に記載の複輪車両において、メインフレームは、左右方向の中央部を頂点として左側外方および右側外方に向かうに従って下降して傾斜する山型形状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る複輪車両では、メインフレームの上面に配設され搭乗者が載るフットプレートに置いた操作者の足により、フットプレートを回動させることにより、フットプレートと補助輪プレートは一体として進行方向に対して水平方向(左右方向)に回動して、容易に補助輪プレートの前端部の下面に支持される補助輪をメインフレームの外側に移動させることができる。これにより、補助輪は、収納位置から転倒防止位置に移動され、複輪車両が傾斜して転倒しそうな場合は、傾斜した方向にフットプレートを回動させて、傾斜した方向のメインフレームの外側に補助輪を移動することができることから、転倒を防止することができる。さらに、外側に補助輪を移動した状態で継続して走行できることから、複輪車両の走行による推進力により、複輪車両を直立状態に自立復帰することができる。
【0013】
請求項2に係る複輪車両では、補助輪が収納位置において地面より上方に設けられることから、複輪車両が直立走行時においては、補助輪は走行の阻害要因になることなく、快適に複輪車両を運転走行することができる。
【0014】
請求項3に係る複輪車両では、補助輪機構を使用しない場合は、フットプレートと補助輪プレートは一体としてメインフレームに非回動状態で保持することができることから、複輪車両が直立走行時において、不用意に補助輪が転倒防止位置であるメインフレームの外側に移動することを抑止することができる。快適に複輪車両を運転走行することができる。
【0015】
請求項4に係る複輪車両では、メインフレームの右側と左側とで独立して補助輪機構を設けることにより、片足で補助輪機構を操作することができる。これにより、複輪車両が傾斜して転倒しそうな場合、補助輪の移動方向の間違いを未然に防止し、確実に傾斜した方向に補助輪を移動させることができることから、安全性を向上することができる。
【0016】
請求項5に係る複輪車両では、メインフレームの山型形状により、メインフレームの右側と左側とで独立して、補助輪を収納位置から転倒防止位置に容易に移動することができる。これにより、複輪車両が傾斜して転倒しそうな場合、スムーズに傾斜した側の補助輪機構が操作されて、確実に傾斜した側のメインフレームの外側に補助輪を移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態に係る補助輪を搭載した複輪車両の側面図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る補助輪機構の(a)側面図、(c)平面図(フットプレート)、(d)底面図(補助輪プレート)および(b)補助輪機構の搭載部分のメインフレームの平面図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る補助輪機構の動作方法を説明する(a)、(c)ロックを解除した場合および(b)、(d)補助輪機構を左右に回動した場合のフットプレートおよび補助輪プレートの平面図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る補助輪機構を備えた複輪車両において、補助輪機構を右方向に回動した状態を説明する前方から見た前面図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る補助輪機構の(a)側面図、(c)平面図(フットプレート)、(d)底面図(補助輪プレート)および(b)補助輪機構の搭載部分のメインフレームの平面図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る補助輪機構の動作方法を説明する(a)、(c)ロックを解除した場合および(b)、(d)補助輪機構の右側のフットプレートを右方向に回動した場合のフットプレートおよび補助輪プレートの平面図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る補助輪機構の(a)通常状態、(b)右側のフットプレートを右方向に回動した場合の前方から見た前面図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係る補助輪機構において、搭載部分のメインフレームを山形にした場合の(a)補助輪機構の搭載部分のメインフレームを前方から見た前面図、(b)補助輪機構の内、右側のフットプレートを右方向に回動した場合の前方から見た補助輪機構を含む前面図である。
図9】本発明の(a)第1の実施形態に係る補助輪機構、(b)第2の実施形態に係る補助輪機構において、付勢部材(引っ張りバネ)を付加した一例を説明する平面図(フットプレート)である。
図10】本発明の実施形態に係る補助輪の種々の実施形態を説明する図である。
図11】本発明の第2の実施形態に係る補助輪機構の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る補助輪機構を搭載した複輪車両を図面に基づいて説明する。
【0019】
まず、本発明の第1の実施形態に係る補助輪機構を搭載した複輪車両100の基本構成について図1を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施形態に係る補助輪を搭載した複輪車両を側面から見た模式図である。
【0020】
複輪車両100は前輪8から後輪9に亘るメインフレーム1を備えており、かかるメインフレーム1の前端部にはハンドルフレーム2が略水平方向に回動可能に取り付けられている。ハンドルフレーム2の上端部にはハンドル7が固設されており、また、ハンドルフレーム2の下端部に車輪支持フレーム3が固着され、かかる車輪支持フレーム3には、前輪8が回転可能に支持されている。そして、メインフレーム1のやや後方部には操作者10用のフットプレートを兼ねた補助輪機構20が搭載されている。尚、補助輪機構20の補助輪23は、複輪車両100が直立した状態では地面より高い位置にあり、複輪車両100を走行する際には、補助輪23が複輪車両100の運転走行を阻害しないようになっている。補助輪機構20については後述するため、ここでは、詳細は説明しない。
【0021】
搭載された補助輪機構20の後方のメインフレーム1の後端部には後輪9が回転可能に支持されている。後輪9には図示しないインラインモーターが取り付けられており、図示しないバッテリーにより駆動可能に制御される。
【0022】
さらに、メインフレーム1の後端部にはシート支持フレーム4が固着されている。シート支持フレーム4の上端部には上部にシート6を配設したシートベース5が固着されている。図1に示すように、本実施形態では、シート6は通常の複輪車両に比べてやや高いに位置に、前方に傾いた状態で配設されており、これにより、操作者10は立った状態で複輪車両100を操作できるようになっている。
【0023】
次に、本発明の第1の実施形態に係る補助輪機構20について図2から図4を参照して説明する。図2(a)は、複輪車両100に搭載した補助輪機構20の側面図を示した図であり、図2(b)は、補助輪機構20を搭載する部分のメインフレーム1を上から見た平面図である。そして、図2(c)は、搭載した補助輪機構20を上から見た平面図であり、図2(d)は、搭載した補助輪機構20を下から見た底面図である。尚、図示しやすいように、図2(c)においては、補助輪機構20を構成するフットプレート21のみを図示し、メインフレーム1を挟んてその下方にある補助輪プレート22は図示していない。図2(d)においても、補助輪機構20を構成する補助輪プレート22のみを図示し、メインフレーム1を挟んてその上方にあるフットプレート21は図示していない。
【0024】
図2(a)に示すように、補助輪機構20はメインフレーム1を挟んで上方に配置したフットプレート21と下方に配置した補助輪プレート22を備えて構成されている。フットプレート21と補助輪プレート22とは前端部および後端部において連絡軸25および連絡軸26により連絡されている。連絡軸25および連絡軸26の上端部には、それぞれ、フットプレート21と連絡軸25および連絡軸26とを固着する留め部材25aおよび26aが設けられており、連絡軸25および連絡軸26の下端部には、それぞれ、補助輪プレート22と連絡軸25および連絡軸26とを固着する留め部材25bおよび26bが設けられている。これにより、フットプレート21と補助輪プレート22は、下述するように、メインフレーム1を挟んで一体として水平方向に移動する。
【0025】
また、図2(d)に示すように、補助輪プレート22の前端部の下面には、左右端に補助輪23、23が、上端に回転軸24aを設けた補助輪ケース24内に回転可能に取り付けられている。回転軸24aの上端部は補助輪プレート22の下面に固着されていると共に、回転軸24aの下端部に対して補助輪ケース24が水平方向に回転可能に取り付けられている。すなわち、補助輪ケース24と補助輪23とで構成された補助輪部29は、キャスターのように水平方向に回転可能に補助輪プレート22の下面に取り付けられているのである。
【0026】
図2(b)に示すように、補助輪機構20を搭載するメインフレーム1の部分には、連絡軸25および連絡軸26がメインフレーム1を貫通するための貫通溝27および28が設けられている。連絡軸25が貫通する貫通溝27は、前方方向(進行方向)を頂点とする円弧状の貫通溝27aと貫通溝27aの中央で接続され後方に伸長する貫通溝27bとから構成されている。そして、貫通溝27aと貫通溝27bの溝の幅は、貫通する連絡軸25の軸径よりやや大きくなっており、連絡軸25は、貫通溝27を貫通した状態で貫通溝27aや貫通溝27bに沿って移動可能になっている。
【0027】
連絡軸26が貫通する貫通溝28は、メインフレーム1の中央部に前後方向に伸長する楕円形状の溝となっており、貫通溝28の溝の幅は、貫通する連絡軸26の軸径よりやや大きくなっており、連絡軸26は、貫通溝28を貫通した状態で貫通溝28に沿って前後に移動可能になっている。
【0028】
補助輪機構20を使用しない場合は、図2(c)および図2(d)に示すように、連絡軸25はメインフレーム1の貫通溝27の貫通溝27bに、また、連絡軸26はメインフレーム1の貫通溝28の後方部に位置することにより、補助輪機構20はメインフレーム1の中心部に保持される。
【0029】
複輪車両100が傾斜して横転しそうになる場合は、補助輪機構20を使用する。図3(a)および図3(c)に示すように、まず、補助輪機構20を前方(進行方向)に移動する。例えば、操作者10がフットプレート21上に乗っている足のつま先に体重移動させることにより、フットプレート21とメインフレーム1との間の摩擦力に抗してフットプレート21を前方に移動させることができる。これにより、連絡軸25はメインフレーム1の貫通溝27の貫通溝27bから貫通溝27aに移動すると共に、連絡軸26はメインフレーム1の貫通溝28の前方部に移動する。これにより、図3(b)および図3(d)に示すように、補助輪機構20は連絡軸26を支点として、貫通溝27aの円弧状の溝に沿って水平方向に回動させて(図3(b)、(d)の図中(1))、補助輪23をメインフレーム1の外側に移動するため、複輪車両100の横転を防止することができるのである。
【0030】
補助輪23が地面に接地すると補助輪ケース24が回転して(図3(d)の図中(2))、進行方向に補助輪23が回転可能になる。すなわち、本実施形態にかかる補助輪機構20を使用することにより、複輪車両100が傾斜して横転しそうになっても、補助輪23により横転が防止できると共に、補助輪23が複輪車両100の進行方向に合わせて回転可能となるため、複輪車両100が傾斜した状態でも継続して運転走行が可能になるのである。そして、複輪車両100が傾斜した状態で継続して走行することにより、その推進力により複輪車両100が直立状態に自立復帰させることができる。複輪車両100が直立状態に自立復帰したら、補助輪機構20をメインフレーム1の中心部に戻して保持する。
【0031】
図4は、複輪車両100が進行方向に対して右方向に傾斜した場合に(図4の図中(1))、補助輪機構20を右方向に回動させた状態(図4の図中(2))を前方から見た図である。補助輪機構20を右方向に回動することにより、補助輪23を複輪車両100のメインフレーム1の右外側に移動させて、横転を防止すると共に、複輪車両100が傾斜した状態であっても安定して継続走行することができる。
【0032】
次に、本発明の第2の実施形態に係る補助輪機構40について図5から図7を参照して説明する。図5(a)は、複輪車両100に搭載した補助輪機構40の側面図を示した図であり、図5(b)は、補助輪機構40を搭載する部分のメインフレーム1を上から見た平面図である。そして、図5(c)は、搭載した補助輪機構40を上から見た平面図であり、図5(d)は、搭載した補助輪機構40を下から見た底面図である。尚、図示しやすいように、図5(c)においては、補助輪機構40を構成するフットプレート41,42のみを図示し、メインフレーム1を挟んでその下方にある補助輪プレート43、44は図示していない。図5(d)においても、補助輪機構40を構成する補助輪プレート43,44のみを図示し、メインフレーム1を挟んでその上方にあるフットプレート41,42は図示していない。
【0033】
図5(a)に示すように、補助輪機構40はメインフレーム1を挟んで上方に配置したフットプレート41、42と下方に配置した補助輪プレート43、44とから構成されている。フットプレート41と補助輪プレート43とは前端部および後端部において連絡軸49および連絡軸51により連絡されている。そして、フットプレート42と補助輪プレート44とは前端部および後端部において連絡軸50および連絡軸52により連絡されている。
【0034】
連絡軸49および連絡軸51の上端部には、それぞれ、フットプレート41と連絡軸49および連絡軸51とを固着する留め部材49aおよび51aが設けられており、連絡軸49および連絡軸51の下端部には、それぞれ、補助輪プレート43と連絡軸49および連絡軸51とを固着する留め部材49bおよび51bが設けられている。これにより、フットプレート41と補助輪プレート43は、下述するように、メインフレーム1を挟んで一体として水平方向に移動する。
【0035】
連絡軸50および連絡軸52の上端部には、それぞれ、フットプレート42と連絡軸50および連絡軸52とを固着する留め部材50aおよび52aが設けられており、連絡軸50および連絡軸52の下端部には、それぞれ、補助輪プレート44と連絡軸50および連絡軸52とを固着する留め部材50bおよび52bが設けられている。これにより、フットプレート42と補助輪プレート44は、下述するように、メインフレーム1を挟んで一体として水平方向に移動する。
【0036】
また、図5(a)および(d)に示すように、補助輪プレート43、44の前端部の下面には、それぞれ、補助輪45、46が取り付けられている。
【0037】
補助輪45は、上端に回転軸47aを設けた補助輪ケース47内に回転可能に取り付けられている。そして、回転軸47aの上端部は補助輪プレート43の下面に固着されていると共に、回転軸47aの下端部に対して補助輪ケース47が水平方向に回転可能に取り付けられている。すなわち、上記第1の実施形態と同様、補助輪ケース47と補助輪45とで構成された補助輪部57は、キャスターのように水平方向に回転可能に補助輪プレート43の下面に取り付けられているのである。
【0038】
補助輪46は、上端に回転軸48aを設けた補助輪ケース48内に回転可能に取り付けられている。そして、回転軸48aの上端部は補助輪プレート44の下面に固着されていると共に、回転軸48aの下端部に対して補助輪ケース48が水平方向に回転可能に取り付けられている。すなわち、上記補助輪部57と同様、補助輪ケース48と補助輪46とで構成された補助輪部58は、キャスターのように水平方向に回転可能に補助輪プレート44の下面に取り付けられているのである。
【0039】
図5(b)に示すように、補助輪機構40を搭載するメインフレーム1の部分には、連絡軸49および連絡軸51がメインフレーム1を貫通するための貫通溝53および55が設けられている。さらに、連絡軸50および連絡軸52がメインフレーム1を貫通するための貫通溝54および56が設けられている。
【0040】
連絡軸49が貫通する貫通溝53は、右端部を頂点として左後方に伸長する円弧状の貫通溝53aと貫通溝53aの右端部に接続して後方に伸長する貫通溝53bとから構成されている。そして、貫通溝53aと貫通溝53bの溝の幅は、貫通する連絡軸49の軸径よりやや大きくなっており、連絡軸49は、貫通溝53を貫通した状態で貫通溝53aや貫通溝53bに沿って移動可能になっている。
【0041】
連絡軸50が貫通する貫通溝54は、左端部を頂点として右後方に伸長する円弧状の貫通溝54aと貫通溝54aの左端部に接続して後方に伸長する貫通溝54bとから構成されている。そして、上記貫通溝53と同様、貫通溝54aと貫通溝54bの溝の幅は、貫通する連絡軸50の軸径よりやや大きくなっており、連絡軸50は、貫通溝54を貫通した状態で貫通溝54aや貫通溝54bに沿って移動可能になっている。
【0042】
連絡軸51が貫通する貫通溝55は、メインフレーム1の貫通溝53の貫通溝53bの後方位置に前後方向に伸長する楕円形状の溝となっており、貫通溝55の溝の幅は、貫通する連絡軸51の軸径よりやや大きくなっており、連絡軸51は、貫通溝55を貫通した状態で貫通溝55に沿って前後に移動可能になっている。
【0043】
連絡軸52が貫通する貫通溝56は、メインフレーム1の貫通溝54の貫通溝54bの後方位置に前後方向に伸長する楕円形状の溝となっており、貫通溝56の溝の幅は、貫通する連絡軸52の軸径よりやや大きくなっており、連絡軸52は、貫通溝56を貫通した状態で貫通溝56に沿って前後に移動可能になっている。
【0044】
補助輪機構40を使用しない場合は、図5(c)および図5(d)に示すように、連絡軸49はメインフレーム1の貫通溝53の貫通溝53bに、また、連絡軸51はメインフレーム1の貫通溝55の後方部に位置することにより、補助輪機構40のフットプレート41と補助輪プレート43はメインフレーム1の中心左側に保持されると共に、連絡軸50はメインフレーム1の貫通溝54の貫通溝54bに、また、連絡軸52はメインフレーム1の貫通溝56の後方部に位置することにより、補助輪機構40のフットプレート42と補助輪プレート44はメインフレーム1の中心右側に保持される。
【0045】
複輪車両100が傾斜して横転しそうになる場合は、補助輪機構40を使用する。例えば、複輪車両100が右方向に傾斜して横転しそうになる場合は、図6(a)および図6(c)に示すように、まず、補助輪機構40のフットプレート42と補助輪プレート44を前方(進行方向)に移動する。例えば、フットプレート42上に乗っている操作者10の右足のつま先に体重移動させることにより、フットプレート42とメインフレーム1との間の摩擦力に抗してフットプレート42を前方に移動させることができる。これにより、連絡軸50はメインフレーム1の貫通溝54の貫通溝54bから貫通溝54aに移動すると共に、連絡軸52はメインフレーム1の貫通溝56の前方部に移動する。これにより、図6(b)および図6(d)に示すように、補助輪機構40のフットプレート42と補助輪プレート44は連絡軸52を支点として、貫通溝54aの円弧状の溝に沿って右水平方向に回動させて(図6(b)、(d)の図中(1))、補助輪46をメインフレーム1の右外側に移動するため、複輪車両100の横転を防止することができるのである。
【0046】
補助輪46が地面に接地すると補助輪ケース48が回転して(図6(d)の図中(2))、進行方向に補助輪46が回転可能になる。すなわち、複輪車両100が傾斜して横転しそうになっても、補助輪46により横転が防止できると共に、補助輪46が複輪車両100の進行方向に合わせて回転可能となるため、複輪車両100が傾斜して状態でも継続して運転走行が可能になるのである。そして、複輪車両100が直立状態に自立復帰したら、補助輪機構40のフットプレート42と補助輪プレート44をメインフレーム1の中心右側に戻して保持することができる。
【0047】
複輪車両100が左方向に傾斜して横転しそうになる場合は、上記同様、操作者10の左足のつま先に体重移動させることにより、補助輪機構40のフットプレート41と補助輪プレート43を左水平方向に回動し、補助輪45をメインフレーム1の左外側に移動させて、複輪車両100の横転を防止することができる。そして、補助輪45が複輪車両100の進行方向に合わせて回転するため、複輪車両100が傾斜した状態でも継続して運転走行することができる。そして、複輪車両100が傾斜した状態で継続して走行することにより、その推進力により複輪車両100が直立状態に自立復帰させることができる。複輪車両100が直立状態に自立復帰したら、補助輪機構40のフットプレート41と補助輪プレート43をメインフレーム1の中心左側に戻して保持する。
【0048】
図7(a)は、補助輪機構40を使用しない状態において前方から見た図であり、図7(b)は、複輪車両100が進行方向に対して右方向に傾斜した場合に、補助輪機構40のフットプレート42と補助輪プレート44を右方向に回動させた状態(図7(b)の図中(1))において前方から見た図である。補助輪機構40のフットプレート42と補助輪プレート44を右方向に回動することにより、補助輪46を複輪車両100のメインフレーム1の右外側に移動させて、横転を防止すると共に、複輪車両100が傾斜した状態であっても安定して継続走行することができる。
【0049】
図8(a)は、上記第2の実施形態において、補助輪機構40を搭載するメインフレーム1の部分をメインフレーム1の幅方向の中心を頂点として左右方向にはやや下方に傾斜した山型にした一例を示した図である。メインフレーム1の幅方向の中心を頂点として左右方向に下方に傾斜を設けることにより、複輪車両100が左右方向に傾斜した場合、フットプレートと補助輪プレートが一体としてスムーズに回動させて、補助輪をメインフレーム1の右外側或いは左外側に移動させて転倒を防止すると共に、複輪車両100が傾斜した状態であっても安定して継続走行することができる。
【0050】
図8(b)は、図8(a)に示したメインフレーム1に補助輪機構40を搭載した状態を前方から見た図である。図8(a)のように、メインフレーム1の中心を頂点として左右方向にはやや下方に傾斜した
【0051】
図9は、上記第1の実施形態である補助輪機構20および上記第2の実施形態である補助輪機構40に付勢部材を付加した一例を示したものである。図9(a)は、上記第1の実施形態である補助輪機構20においてフットプレート21の後端部とメインフレーム1との間に引っ張りバネ36を取り付けた例である。そして、図9(b)は、上記第2の実施形態である補助輪機構40においてフットプレート41および42のそれぞれの後端部とメインフレーム1との間に引っ張りバネ59および60を取り付けた例である。このように、フットプレートに引っ張りバネを取り付けることにより、補助輪機構20或いは補助輪機構40を使用しない場合はフットプレートと補助輪プレートがメインフレーム1の中心位置でしっかりと保持されると共に、補助輪機構20或いは補助輪機構40が使用した(フットプレートと補助輪プレートが回動した)後には、メインフレーム1の中心位置にスムーズに戻すことができる。
【0052】
ここで、メインフレーム1はメインフレームの一例であり、フットプレート21、41、42はフットプレートの一例であり、補助輪プレート22、43、44は補助輪プレートの一例であり、補助輪23、45、46は補助輪の一例である。補助輪機構20および40は補助輪機構の一例であり、連絡軸26、51、52は第1連絡軸の一例であり、連絡軸25、49、50は第2連絡軸の一例である。貫通溝28、55、56は第1貫通溝の一例であり、貫通溝27、53、54は第2貫通溝の一例である。
【0053】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることが、理解されるべきである。
【0054】
例えば、補助輪は上記実施形態で示したものに限定するものではなく、図10に示すように、様々な形態が採用できる。図5(a)は、上記実施形態の補助輪であるが、図10(b)に示すように、球体30aを採用してもよい。球体30aを補助輪に採用することにより、補助輪が地面に接触した場合にも、球体30aは様々の方向に回転可能であることから、補助輪が走行を阻害することを防止できる。
【0055】
また、上記実施形態では、補助輪はフットプレートの下方に配置されるところ、図10(c)や図10(d)に示すように、2輪以上の構成であってもよい。例えば、図10(c)の場合、補助輪の接地点は2点あるため、図10(a)の補助輪23に比べて、安定して複輪車両100の傾きを支えることができるため、より高い安全性が期待できる。また、図10(d)のように2つの補助輪が回転軸34aを中心に上下方向に回動可能にしてもよい。これにより、地面が凸凹の場合でも安定して複輪車両100の傾きを支えることができることから、図10(c)の場合と同様、より高い安全性が期待できる。尚、図10は、上記第1の実施形態における例を示したものであるが、上記第2の実施形態においても同様に様々な形態の補助輪が採用可能であることは言うまでもない。
【0056】
また、上記実施形態では、フットプレートと補助輪プレートとを一体として回動して、補助輪をメインフレーム1の外側に移動したが、フットプレートの下面に補助輪を取り付けてもよい。図11は上記第2の実施形態の変形例として、その一例を説明した図である。貫通溝53、54に代えて図11(b)に示す貫通溝80、81のようにすることにより、図11(c)に示すように、左右に配設したフットプレート71、72のそれぞれの下面に補助輪73と補助輪ケース75とで構成する補助輪部84および補助輪74と補助輪ケース76とで構成する補助輪部85を取り付けることができる。補助輪73、74をメインフレーム1の外側に移動する場合は、上記第2の実施形態の場合と同じ方法で実施可能である。図11に示すような構成にすることにより、上記実施形態で採用した補助輪プレートが不要になることから、補助輪機構の構成を簡易にして、コストを低減することができる。
【0057】
また、上記実施形態では、操作者10が立った状態で複輪車両100を操作できるようにシート6を上方に、かつ、斜めに配置したが、本発明は、これに限定するものではない。操作者10がシート6に座った状態で操作ができるように、シート6を下方に、かつ、略水平に配置してもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、貫通溝27、53および54の貫通溝27a、53bおよび54は円弧形状としたが、これに限定するものではない。フットプレートと補助輪プレートとが一体として水平方向に回動し、補助輪がメインフレーム1の外側に移動できればよいのであって、例えば、連絡軸25、49および50が自由に移動できる幅広な溝形状であってもよいし、その他の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1・・メインフレーム
2・・ハンドルフレーム
3・・車輪支持フレーム
6・・シート
7・・ハンドル
8・・前輪
9・・後輪
20、40・・補助輪機構
21、41、42・・フットプレート
22、43、44・・補助輪プレート
23、45、46・・補助輪
25、26、49,50、51,52・・連絡軸
27,28、53,54,55,56・・貫通溝
100・・複輪車両
図1
図2
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