【文献】
Michel Demeule, et al.,High transcytosis of melanotransferrin(p97)across the blood-brain barrier,Journal of Neurochemistry,2002年,Vol.83,p.924-933
【文献】
Reinhard Gabathuler, et al.,Development of a potential protein vector (Neuro Trans)to deliver drugs across the blood-brain barrier,International Congress Series,2005年,Vol.1277,p.171-184
【文献】
Sylvia Rothenberger,Coincident expression and distribution of melanotransferrin and transferrin receptor in human brain capillary endothelium,Brain Research,1996年,Vol.712,p.117-121
【文献】
Joseph Yang, et al.,Deletion of the GPI pre-anchor sequence in human p97-a general approach for generating the soluble form of GPI-linked proteins,Protein Expression & Purification,2004年,Vol.34,p.28-48
【文献】
Delara Karkan, et al.,A Unique Carrier for Delivery of Therapeutic Compounds beyond the Blood-Brain Barrier,PLoS one,2008年,Vol.3, e2469,p.1-14
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記抗体が、それらの抗原結合フラグメントを含めた、トラスツズマブ、セツキシマブ、ダクリズマブ、タネズマブ、3F8、8H9、アバゴボマブ、アデカツムマブ、アフツズマブ、アレムツズマブ、アラシズマブ(ペゴール)、アマツキシマブ、アポリズマブ、バビツキシマブ、ベクツモマブ、ベリムマブ、ベバシズマブ、ビバツズマブ(メルタンシン)、ブレンツキシマブベドチン、カンツズマブ(メルタンシン)、カンツズマブ(ラブタンシン)、カプロマブ(ペンデチド)、カツマキソマブ、シタツズマブ(ボガトクス)、シクスツムマブ、クリバツズマブ(テトラキセタン)、コナツムマブ、ダセツズマブ、ダロツズマブ、デツモマブ、ドロジツマブ、エクロメキシマブ、エドレコロマブ、エロツズマブ、エナバツズマブ、エンシツキシマブ、エプラツズマブ、エルツマキソマブ、エタラシズマブ、ファーレツズマブ、FBTA05、フィギツムマブ、フランボツマブ、ガリキシマブ、ゲムツズマブ、ガニツマブ、ゲムツズマブ(オゾガマイシン)、ギレンツキシマブ、グレムバツムマブ(ベドチン)、イブリツモマブチウキセタン、イクルクマブ、イゴボマブ、インダツキシマブラブタンシン、インテツムマブ、イノツズマブオゾガマイシン、イプリムマブ(MDX−101)、イラツムマブ、ラベツズマブ、レキサツムマブ、リンツズマブ、ロルボツズマブ(メルタンシン)、ルカツムマブ、ルミリキシマブ、マパツムマブ、マツズマブ、ミラツズマブ、ミツモマブ、モガムリズマブ、モキセツモマブ(パスドトクス)、ナコロマブ(タフェナトクス)、ナプツモマブ(エスタフェナトクス)、ナルナツマブ、ネシツムマブ、ニモツズマブ、ニボルマブ、ノイラジアブ(登録商標)(放射性ヨウ素を含むか含まない)、NR−LU−10、オファツムマブ、オララツマブ、オナルツズマブ、オポルツズマブ(モナトクス)、オレゴボマブ、パニツムマブ、パトリツマブ、ペムツモマブ、ペルツズマブ、プリツムマブ、ラコツモマブ、ラドレツマブ、ラムシルマブ、リロツムマブ、リツキシマブ、ロバツムマブ、サマリズマブ、シブロツズマブ、シルツキシマブ、タバルマブ、タプリツモマブ(パプトクス)、テナツモマブ、テプロツムマブ、TGN1412、チシリムマブ、トレメリムマブ、チガツズマブ、TNX−650、トシツモマブ、TRBS07、ツコツズマブ(セルモロイキン)、ウブリツキシマブ、ウレルマブ、ベルツズマブ、ボロシキシマブ、ボツムマブ、およびザルツムマブのうちの1つ以上から選択される、請求項3に記載の結合体。
【発明を実施するための形態】
【0038】
発明の詳細な説明
本発明の実施形態は、血液脳関門(BBB)を通過する輸送能力を有するヒトp97(メラノトランスフェリン)の最小フラグメントの発見に一部基づく。
【0039】
それ故、本発明の実施形態は、ヒトp97の特定のポリペプチドフラグメントおよびその改変体、ポリペプチドフラグメントを含む組成物、付着したか作動可能に連結された目的の薬剤を有するp97フラグメントの結合体または混合物、ならびに関連する使用方法(処置方法、診断方法、および試験方法(医学的画像化など)が含まれる)に関する。
【0040】
本明細書中に記載のヒトp97ポリペプチドフラグメントは、例えば、BBBを通過する薬剤の移行を改善するために治療分野および診断分野で種々の使用法を見出すことができる。また、BBB輸送活性に必要な最小フラグメントを同定することにより、本発明の一定の態様は、より小さなp97ポリペプチドを使用可能であり、それにより、巨大なポリペプチドの合成/産生、精製、および薬学的処方物に関連するいくつかの困難が軽減される。
【0041】
他の利点および利益は、当業者に明らかであろう。
【0042】
定義
他で定義しない限り、本明細書中で使用した全ての技術用語および科学用語は、本発明の属する当業者によって一般に理解される意味を有する。本明細書中に記載の方法および材料と類似するか等価な任意の方法および材料を本発明の実施または試験で使用することができるが、好ましい方法および材料を記載する。本発明の目的のために、以下の用語を以下のように定義する。
【0043】
冠詞「a」および「an」を、本明細書中で、冠詞の文法上の目的語が1つまたは1つを超える(すなわち、少なくとも1つ)をいうために使用する。例として、「要素」は、1つの要素または1つを超える要素を意味する。
【0044】
「約」は、基準の量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、サイズ、含量、重量、または長さの30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1%まで変化する量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、サイズ、含量、重量、または長さを意味する。
【0045】
本明細書中で使用する場合、用語「アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸および天然に存在しないアミノ酸の両方ならびにアミノ酸アナログおよびアミノ酸模倣物を意味することを意図する。天然に存在するアミノ酸には、タンパク質生合成中に利用される20(L)−アミノ酸ならびに例えば4−ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、デスモシン、イソデスモシン、ホモシステイン、シトルリン、およびオルニチンなどの他のアミノ酸が含まれる。天然に存在しないアミノ酸には、例えば、当業者に公知の(D)−アミノ酸、ノルロイシン、ノルバリン、p−フルオロフェニルアラニン、およびエチオニンなどが含まれる。アミノ酸アナログには、天然に存在するアミノ酸および天然に存在しないアミノ酸の修飾形態が含まれる。かかる修飾物には、例えば、アミノ酸上の化学基および化学部分の置換もしくは交換またはアミノ酸の誘導体化による修飾物が含まれ得る。アミノ酸模倣物には、例えば、基準アミノ酸の電荷および電荷間隔の特徴などの機能的に類似の性質を示す有機構造が含まれる。例えば、アルギニン(ArgまたはR)を模倣する有機構造は、類似の分子空間内に存在する正電荷部分を有し、天然に存在するArgアミノ酸の側鎖のe−アミノ基と同一の可動度を有するであろう。模倣物には、アミノ酸またはアミノ酸官能基の最適な間隔および電荷相互作用を維持するための制限された構造物も含まれる。当業者は、どの構造が機能的に等価なアミノ酸アナログおよびアミノ酸模倣物を構成するのかを承知しているか決定することができる。
【0046】
本明細書を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、用語「comprise」、「comprises」、および「comprising」は、言及した工程もしくは要素または工程もしくは要素の群を含むが、任意の他の工程もしくは要素または工程もしくは要素の群を排除しないことを意味すると理解されるであろう。「〜からなる」は、句「〜からなる」に続くあらゆる用語を含み、且つそれに制限されることを意味する。したがって、句「〜からなる」は、列挙した要素が必要または必須であり、他の要素が存在できないことを示す。「〜本質的になる」は、この句の後に列挙された任意の要素を含み、且つ、列挙した要素の開示で特定された活性または作用に干渉も寄与もしない他の要素に制限されることを意味する。したがって、句「〜本質的になる」は、列挙した要素が必要とされるか必須であるが、他の要素が任意選択的であり、他の要素が列挙した要素の活性または作用に実質的に影響を及ぼすかどうかに依存して存在しても存在しなくても良いことを示す。
【0047】
用語「結合体」は、薬剤または他の分子(例えば、生物学的に活性な分子)のp97ポリペプチドへの共有結合的または非共有結合的な付着または連結の結果として形成された物質をいうことを意図する。結合体ポリペプチドの一例は、「融合タンパク質」または「融合ポリペプチド」(すなわち、元は個別のポリペプチドをコードする2つ以上のコード配列の連結によって作製されたポリペプチド)であり、連結されたコード配列の翻訳によって典型的には各々の個別のポリペプチド由来の機能的性質を有する単一の融合ポリペプチドが得られる。
【0048】
本明細書中で使用する場合、用語「機能」および「機能的な」などは、生物学的、酵素的、または治療的な機能をいう。
【0049】
「相同性」は、同一であるか、保存的置換を構成するアミノ酸数の百分率をいう。相同性を、GAP(Deverauxら,Nucleic Acids Research.12,387−395,1984)(本明細書中で参考として援用される)などの配列比較プログラムを使用して決定することができる。この方法では、本明細書中に引用したものと類似するか実質的に異なる長さの配列を、例えば、GAPによって使用される比較アルゴリズムによるアラインメントへのギャップ(かかるギャップは決定されている)の挿入によって比較することができる。
【0050】
「単離された」は、未変性の状態で通常は材料に付随する成分を実質的または本質的に含まない材料を意味する。例えば、「単離ペプチド」または「単離ポリペプチド」などは、本明細書中で使用する場合、その天然の細胞環境および他の細胞成分との会合(すなわち、in vivo基質と有意に会合していない)からのペプチド分子またはポリペプチド分子のin vitro単離および/または精製を含む。
【0051】
用語「連結」、「リンカー」、「リンカー部分」、または「L」を、目的の薬剤からp97ポリペプチドフラグメントを分離するためか、第1の薬剤を別の薬剤から分離するために(例えば、2つ以上の薬剤が連結してp97結合体を形成する場合)使用することができるリンカーをいうために本明細書中で使用する。リンカーは、生理学的に安定であり得るか、酵素分解性リンカー(例えば、タンパク質分解性リンカー)などの放出可能なリンカーを含むことができる。一定の態様では、リンカーは、例えば、p97融合タンパク質の一部としてのペプチドリンカーであり得る。いくつかの態様では、リンカーは、非ペプチドリンカーまたは非タンパク質リンカーであり得る。いくつかの態様では、リンカーは、ナノ粒子などの粒子であり得る。
【0052】
用語「調整」および「変化」には、コントロールと比較して統計的に有意なまたは生理学的に有意な量または程度の「増加」、「増強」、または「刺激」および「減少」または「軽減」が含まれる。「増加」量、「刺激」量、または「増強」量は、典型的には、「統計的に有意な」量であり、組成物の非存在下(例えば、本発明の結合体のポリペプチドの非存在下)またはコントロールの組成物、サンプル、もしくは試験被験体による産生量の1.1倍、1.2倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、またはそれを超える(例えば、500倍、1000倍)(その間の全ての整数および小数点ならびに1超(例えば、1.5、1.6、1.7.1.8など)が含まれる)増加が含まれ得る。「減少」量または「軽減」量は、典型的には、「統計的に有意な」量であり、組成物の非存在下またはコントロール組成物による産生量の1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%減少(その間の全ての整数が含まれる)が含まれ得る。1つの非限定的な例として、コントロールは、薬剤単独に対するp97−薬剤結合体の活性(血液脳関門を通過する輸送/送達の量もしくは速度、中枢神経系組織への分布の速度および/もしくはレベル、ならびに/または血漿、中枢神経系組織、もしくは任意の他の全身または末梢の非中枢神経系組織のCmaxなど)を比較することができる。比較および「統計的に有意な」量の他の例を、本明細書中に記載している。
【0053】
一定の実施形態では、組成物中の任意の所与の薬剤(例えば、融合タンパク質などの、p97結合体)の「純度」を、具体的に定義することができる。例えば、一定の組成物は、例えば、高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)(化合物を分離、同定、および定量するために生化学および分析化学で頻繁に使用されるカラムクロマトグラフィの周知の形態)(決して制限されない)で測定した場合に純度が少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%(その間の全ての小数が含まれる)である薬剤を含むことができる。
【0054】
用語「ポリペプチド」および「タンパク質」を、アミノ酸残基のポリマーならびにその改変体および合成アナログをいうために本明細書中で交換可能に使用する。したがって、これらの用語は、1つ以上のアミノ酸残基が合成の天然に存在しないアミノ酸(対応する天然に存在するアミノ酸の化学的アナログなど)であるアミノ酸ポリマーおよび天然に存在するアミノ酸ポリマーに適用する。本明細書中に記載のポリペプチドは、産物の特定の長さに制限されない。したがって、ペプチド、オリゴペプチド、およびタンパク質はポリペプチドの定義内に含まれ、他で具体的に示さない限り、かかる用語を、本明細書中で交換可能に使用することができる。本明細書中に記載のポリペプチドはまた、発現後修飾(グリコシル化、アセチル化、およびリン酸化など)ならびに天然に存在するおよび天然に存在しない当該分野で公知の他の修飾を含むことができる。ポリペプチドは、タンパク質全体またはそのサブシーケンス、フラグメント、改変体、または誘導体であり得る。
【0055】
「生理学的に切断可能な」または「加水分解可能な」または「分解可能な」結合は、生理学的条件下で水と反応する(すなわち、加水分解される)結合である。結合が水中で加水分解する傾向は、2つの中心原子を結びつける一般的な連結型だけでなく、これらの中心原子に付着する置換基にも依存するであろう。適切な加水分解的に不安定か弱い連結には、以下が含まれるが、これらに限定されない:カルボン酸エステル、リン酸エステル、無水物、アセタール、ケタール、アシルオキシアルキルエーテル、イミン、オルトエステル、チオエステル、チオールエステル、カルボナート、ならびにヒドラゾン、ペプチドおよびオリゴヌクレオチド。
【0056】
「放出可能なリンカー」には、生理学的に切断可能なリンカーおよび酵素分解性リンカーが含まれるが、これらに限定されない。したがって、「放出可能なリンカー」は、自発性加水分解または生理学的条件下でのいくつかの他の機構(例えば、酵素触媒、酸触媒、塩基触媒など)による切断のいずれかを経得るリンカーである。例えば、「放出可能なリンカー」は、駆動力として塩基でプロトン(例えば、イオン化水素原子、Hα)が引き抜かれる脱離反応に関与し得る。本明細書中の目的のために、「放出可能なリンカー」は、「分解性リンカー」と同義である。「酵素分解性連結」は、連結(例えば、1つ以上の酵素酵素(例えば、ペプチダーゼまたはプロテアーゼ)による分解に供されるアミノ酸配列)を含む。特定の実施形態では、放出可能なリンカーのpH7.4、25℃(例えば、生理学的pH、ヒトの体温(例えば、in vivo)での半減期は、約30分間、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約12時間、約18時間、約24時間、約36時間、約48時間、約72時間、または約96時間またはそれ未満である。
【0057】
用語「基準配列」は、一般に、別の配列と比較される核酸コード配列(すなわち、アミノ酸配列)をいう。本明細書中に記載の全てのポリペプチド配列およびポリヌクレオチド配列(名称によって記載されている配列ならびに表および配列表中に記載の配列が含まれる)が基準配列として含まれる。
【0058】
用語「配列同一性」(例えば、「〜と50%同一の配列」を含む)は、本明細書中で使用する場合、配列が比較ウィンドウにわたってヌクレオチド対ヌクレオチドを基本とするかアミノ酸対アミノ酸を基本として同一である程度をいう。したがって、「配列同一率」を、比較ウィンドウにわたる最適にアラインメントした2つの配列の比較、両方の配列中に同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)または同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys、およびMet)が生じる位置の数を決定して適合位置数を得ること、適合位置数を比較ウィンドウ中の総位置数(すなわち、ウィンドウサイズ)で割ること、および結果に100を掛けて配列同一率を得ることによって計算することができる。典型的にはポリペプチド改変体が基準ポリペプチドの少なくとも1つの生物学的活性を維持する、本明細書中に記載の任意の基準配列(例えば、配列表を参照のこと)と少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%配列が同一のヌクレオチドおよびポリペプチドが含まれる。
【0059】
2つ以上のポリヌクレオチド間またはポリペプチド間の配列の関係を説明するために使用される用語には、「基準配列」、「比較ウィンドウ」、「配列同一性」、「配列同一率」および「実質的な同一性」が含まれる。「基準配列」は、少なくとも12個であるが、頻繁には15〜18個、しばしば少なくとも25個の長さのモノマー単位(ヌクレオチドおよびアミノ酸残基が含まれる)である。2つのポリヌクレオチドが、それぞれ、(1)2つのポリヌクレオチド間で類似する配列(すなわち、完全なポリヌクレオチド配列の一部のみ)、および(2)2つのポリヌクレオチド間で相違する配列を含むことができるので、2つ(またはそれを超える)ポリヌクレオチドの間の配列比較を、典型的には、2つのポリヌクレオチドの配列を「比較ウィンドウ」にわたって比較して配列が類似する局所領域を同定および比較することによって行う。「比較ウィンドウ」は、2配列を最適にアラインメントした後にある配列を同数の連続する位置の基準配列と比較する少なくとも6個(通常は約50個〜約100個、より通常には約100個〜約150個)の連続する位置の概念的セグメントをいう。比較ウィンドウは、基準配列(付加や欠失を含まない)と比較した場合に2配列の最適なアラインメントのために約20%以下の付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含むことができる。比較ウィンドウのアラインメントに最適な配列アラインメントを、コンピュータ化されたアルゴリズムの実行(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0,Genetics Computer Group,575 Science Drive Madison,WI,USA中のGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)または観察および選択した任意の種々の方法によって作成された最良のアラインメント(すなわち、結果として比較ウィンドウにわたって最高の相同率が得られる)によって行うことができる。例えば、Altschulら,Nucl.Acids Res.25:3389,1997に開示のプログラムのBLASTファミリーも参照することができる。配列分析の詳細な考察を、Ausubelら、 “Current Protocols in Molecular Biology,” John Wiley &
Sons Inc,1994−1998,Chapter 15のUnit 19.3に見出すことができる。
【0060】
「統計的に有意な」は、結果が偶然に起こった見込みが無いことを意味する。統計的有意性を、当該分野で公知の任意の方法によって決定することができる。一般的に使用されている有意性の基準には、p値が含まれ、これは、帰無仮説が真実である場合に認められた事象が起こる頻度または確率である。得られたp値が有意水準より小さい場合、帰無仮説は棄却される。単純事例では、有意水準を0.05以下のp値で定義する。
【0061】
用語「溶解性」は、p97ポリペプチドフラグメントまたは結合体が液体溶媒に溶解して均一な溶液を形成する性質をいう。溶解性を、典型的には、溶媒の単位体積あたりの溶質の質量(溶媒1kgあたりの溶質のg数、g/dL(100mL)、mg/mlなど)、容積モル濃度、重量モル濃度、モル分率、または濃度の他の類似の記載のいずれかによる濃度として示す。1溶媒量あたりの溶解することができる溶質の最大平衡量は、特定の条件下(温度、圧力、pH、および溶媒の性質が含まれる)でのその溶媒への溶質の溶解性である。一定の実施形態では、溶解性を、生理学的pHまたは他のpH(例えば、pH5.0、pH6.0、pH7.0、またはpH7.4)で測定する。一定の実施形態では、溶解性を、水またはPBSもしくはNaCl(NaPを含むか含まない)などの生理学的緩衝液中で測定する。特定の実施形態では、溶解性を、相対的により低いpH(例えば、pH6.0)および相対的により高い塩(例えば、500mM NaClおよび10mM NaP)で測定する。一定の実施形態では、溶解性を、血液または血清などの体液(溶媒)中で測定する。一定の実施形態では、温度はおよそ室温(例えば、約20、21、22、23、24、25℃)またはおよそ体温(約37℃)であり得る。一定の実施形態では、p97ポリペプチドまたは結合体の室温または約37℃での溶解度は、少なくとも約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、または30mg/mlである。
【0062】
「被験体」には、本明細書中で使用する場合、p97結合体で処置または診断することができる症状を示すか、症状を示すリスクがある任意の動物が含まれる。適切な被験体(患者)には、実験動物(マウス、ラット、ウサギ、またはモルモットなど)、家畜、および飼育動物またはペット(ネコまたはイヌなど)が含まれる。非ヒト霊長類、好ましくはヒト患者が含まれる。
【0063】
「実質的に」または「本質的に」は、ほぼ完全または十分であることを意味する(例えば、いくつかの所与の量の95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)。
【0064】
「実質的に含まない」は、所与の量がほぼ完全にまたは完全に存在しないことをいう(例えば、いくつかの所与の量の10%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%未満)。例えば、一定の組成物は、細胞タンパク質、膜、核酸、内毒素、または他の夾雑物を「実質的に含まない」可能性がある。
【0065】
「処置」または「処置すること」には、本明細書中で使用する場合、疾患または容態の症状または病態に及ぼす任意の所望の影響が含まれ、処置される疾患または容態の1つ以上の測定可能なマーカーの最小の変化または改善でさえ含まれ得る。「処置」または「処置すること」は、疾患もしくは容態またはその関連する症状の完全な根絶または治癒を必ずしも示さない。この処置を受ける被験体は、処置を必要とする任意の被験体である。臨床的改善の例示的なマーカーは、当業者に明らかであろう。
【0066】
用語「野生型」は、天然に存在する供給源から単離した場合に遺伝子または遺伝子産物の特徴を有する遺伝子または遺伝子産物をいう。野生型の遺伝子または遺伝子産物(例えば、ポリペプチド)は、集団中で最も頻繁に認められるものであり、したがって、遺伝子の「正常」形態または「野生型」形態が任意にデザインされる。
【0067】
p97ポリペプチドの配列およびその結合体
本発明の実施形態は、一般に、ヒトp97(メラノトランスフェリン;MTf)のポリペプチドフラグメント、かかるフラグメントを含む組成物、およびその結合体に関する。一定の例では、本明細書中に記載のp97ポリペプチドフラグメントは、輸送活性を有する、すなわち、血液脳関門(BBB)を通過する輸送能力がある。特定の実施形態では、p97フラグメントは、目的の薬剤(治療薬、診断薬、または検出薬など)と共有結合的に、非共有結合的に、または作動可能にカップリングしてp97−薬剤結合体を形成する。薬剤の具体例には、本明細書中に記載され、且つ当該分野で公知の他の薬剤の中で特に小分子およびポリペプチド(抗体など)が含まれる。例示的なp97ポリペプチド配列および薬剤を以下に記載する。p97ポリペプチドの目的の薬剤へのカップリングのための例示的な方法および成分(リンカー基など)も記載する。
【0068】
p97配列。いくつかの実施形態では、p97ポリペプチドは、表1〜7、
図2〜6、または
図9で同定した少なくとも1つのヒトp97フラグメントを含むか、本質的にこれらからなるか、これらからなる。特定の実施形態では、p97ポリペプチドは、少なくとも1つの配列番号2〜18に記載のヒトp97配列を含むか、本質的にこれらからなるか、これらからなる。
【0069】
他の特定の実施形態では、以下でより具体的に記載するように、p97ポリペプチド配列は、表1〜7、
図2〜6、または
図9で同定した少なくとも1つのヒトp97フラグメントと、その長さに沿って、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一または相同な配列を含む。いくつかの実施形態では、p97ポリペプチド配列の改変体は、配列番号2〜18に記載の少なくとも1つのヒトp97配列と、その長さに沿って、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一または相同な配列を含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、p97ポリペプチドは、表1〜7、
図2〜6、または
図9で同定した2、3、4、または5つのp97フラグメントを含むか、本質的にこれらからなるか、これらからなり、任意選択的に、任意の介在p97配列(すなわち、存在する場合、フラグメントの間に存在する配列番号1由来のp97配列)を含む。特定の実施形態では、p97ポリペプチドは、配列番号2〜18中に記載の2、3、4、または5つのp97配列を含むか、本質的にこれらからなるか、これらからなり、任意選択的に、任意の介在p97配列(すなわち、存在する場合、配列番号2〜18の間に存在する配列番号1由来のp97配列)を含む(ヒトp97の一次構造における配列番号2〜18の間の関係については、
図9Aおよび9Bも参照のこと)。一例としてp97ポリペプチドは、配列番号13および14を含むことができ、任意選択的に配列番号1由来の任意の介在p97配列またはその改変体を含む。
【0071】
一定の実施形態では、p97ポリペプチドフラグメントは、およそ、少なくともおよそ、またはおよそ以下の数値まで:5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700.700、710、720、730、またはそれを超えるアミノ酸長(その間の全ての整数および範囲が含まれる)であり、基準p97配列の全てまたは一部を含むことができ(例えば、配列表、表1〜7、表B、
図2〜6および9を参照のこと)、配列番号1によって定義された基準p97フラグメントの任意の隣接するN末端および/またはC末端配列を含む。
【0072】
一定の実施形態では、p97ポリペプチドフラグメントは、約5〜700、5〜600、5〜500、5〜400、5〜300、5〜200、5〜100、5〜50、5〜40、5〜30、5〜25、5〜20、5〜15、5〜10、10〜700、10〜600、10〜500、10〜400、10〜300、10〜200、10〜100、10〜50、10〜40、10〜30、10〜25、10〜20、10〜15、20〜700、20〜600、20〜500、20〜400、20〜300、20〜200、20〜100、20〜50、20〜40、20〜30、20〜25、30〜700、30〜600、30〜500、30〜400、30〜300、30〜200、30〜100、30〜50、30〜40、40〜700、40〜600、40〜500、40〜400、40〜300、40〜200、40〜100、40〜50、50〜700、50〜600、50〜500、50〜400、50〜300、50〜200、50〜100、60〜700、60〜600、60〜500、60〜400、60〜300、60〜200、60〜100、60〜70、70〜700、70〜600、70〜500、70〜400、70〜300、70〜200、70〜100、70〜80、80〜700、80〜600、80〜500、80〜400、80〜300、80〜200、80〜100、80〜90、90〜700、90〜600、90〜500、90〜400、90〜300、90〜200、90〜100、100〜700、100〜600、100〜500、100〜400、100〜300、100〜250、100〜200、100〜150、200〜700、200〜600、200〜500、200〜400、200〜300、または200〜250アミノ酸長であり、基準p97配列の全てまたは一部を含み(例えば、配列表、表1〜7、表B、
図2〜6および9を参照のこと)、配列番号1によって定義された基準p97フラグメントの任意の隣接するN末端および/またはC末端配列を含む。
【0073】
一定の実施形態は、式[X]
n(式中、Xは本明細書中に記載のp97フラグメントであり、nは1〜5の整数である)によって示される1つ以上のp97フラグメント(例えば、2、3、4、または5つのフラグメント)を含む。特定の実施形態では、XはDSSHAFTLDELR(配列番号13)である。
【0074】
特定の実施形態では、p97フラグメントまたはその改変体は、BBBを通過する能力、および任意選択的には、目的の薬剤を、BBBを通過して中枢神経系内に輸送する能力を有する。一定の実施形態では、p97フラグメントまたはその改変体は、p97受容体、LRP1受容体、および/またはLRP1B受容体に特異的に結合することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、p97フラグメントは、それぞれ結合体化およびヨウ素化のために付加することができる1つ以上の末端(例えば、N末端、C末端)システインおよび/またはチロシンを有する。
【0076】
基準p97ポリペプチドの改変体およびフラグメントならびに他の基準ポリペプチドを、以下でより詳細に記載する。
【0077】
p97結合体。上述の通り、一定の実施形態は、目的の薬剤(例えば、小分子、ポリペプチド(例えば、ペプチド、抗体)、ペプチド模倣物、ペプトイド、アプタマー、検出可能な実体、またはその任意の組み合わせ)を連結させたp97ポリペプチドを含む。1つを超える目的の薬剤(例えば、抗体および小分子に結合体化したp97フラグメント)を含む結合体も含まれる。
【0078】
共有結合性の連結が好ましいが、非共有結合性の連結(比較的強力な非共有結合性のタンパク質−リガンド相互作用(ビオチンとアビジンとの間の相互作用など)を利用する連結が含まれる)も使用することができる。p97フラグメントと目的の薬剤との間の直接的な共有結合性または非共有結合性の相互作用を必ずしも必要としない作動可能な連結も含まれ、かかる連結の例には、p97ポリペプチドおよび目的の薬剤を含むリポソーム混合物が含まれる。例示的なタンパク質結合体の生成方法を本明細書中に記載しており、他の方法が当該分野で周知である。
【0079】
小分子。特定の実施形態では、p97フラグメントを、小分子に結合体化する。「小分子」は、合成または生物学的起源(生体分子)であるが、典型的にはポリマーではない有機化合物をいう。有機化合物は、その分子が炭素を含む化学物質の巨大なクラスをいい、典型的には炭酸塩のみを含むもの、炭素の単純酸化物、またはシアニドが除外される。「生体分子」は、一般に、生物によって産生される有機分子(高分子(バイオポリマー)(ペプチド、ポリサッカリド、および核酸なども)および小分子(一次、二次代謝産物、脂質、リン脂質、糖脂質、ステロール、グリセロ脂質、ビタミン、およびホルモンなど)が含まれる)をいう。「ポリマー」は、一般に、典型的には共有結合性の化学結合によって連結された反復構造単位から構成される大分子または高分子をいう。
【0080】
一定の実施形態では、小分子の分子量は、約1000〜2000ダルトン未満、典型的には約300と700ダルトンとの間であり、約50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、500、650、600、750、700、850、800、950、1000、または2000ダルトンが含まれる。
【0081】
一定の小分子は、抗体について記載の「特異的結合」特性を有し得る(以下)。例えば、小分子は、本明細書中に記載の標的に、少なくとも約0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、または50nMの結合親和性(K
d)で特異的に結合することができる。一定の実施形態では、小分子(a small)は、細胞表面受容体または他の細胞表面タンパク質に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、小分子は、少なくとも1つの本明細書中に記載の癌関連抗原に特異的に結合する。特定の実施形態では、小分子は、少なくとも1つの本明細書中に記載の神経系関連抗原、疼痛関連抗原、および/または自己免疫関連抗原に特異的に結合する。
【0082】
例示的な小分子には、細胞毒性薬、化学療法薬、および抗血管新生薬(例えば、種々の癌(中枢神経系の癌および中枢神経系に転移した癌が含まれる)の処置で有用と見なされている薬剤)が含まれる。特定の小分子クラスには、アルキル化剤、代謝拮抗物質、アントラサイクリン、抗腫瘍抗生物質、白金、タイプIトポイソメラーゼインヒビター、タイプIIトポイソメラーゼインヒビター、ビンカアルカロイド、およびタキサンが含まれるが、これらに限定されない。
【0083】
小分子の具体例には、クロラムブシル、シクロホスファミド、シレンジタイド、ロムスチン(CCNU)、メルファラン、プロカルバジン、チオテパ、カルムスチン(BCNU)、エンザスタウリン、ブスルファン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ゲフィチニブ、エルロチニブイダルビシン、テモゾロミド、エピルビシン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、カンプトセシン、イリノテカン、トポテカン、アムサクリン、エトポシド、エトポシドホスファート、テニポシド、テムシロリムス、エベロリムス、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、CT52923、およびパクリタキセル、ならびに任意の上記の薬学的に許容され得る塩、酸、または誘導体が含まれる。
【0084】
小分子のさらなる例には、神経系(例えば、CNS)障害の処置のためにプロテインキナーゼをターゲティングする小分子(イマチニブ、ダサチニブ、ソラフェニブ、パゾパニブ、スニチニブ(sunitnib)、バタラニブ、ゲフィチニブ(geftinib)、エルロチニブ、AEE−788、ジクロロアセタート(dichoroacetate)、タモキシフェン、ファスジル、SB−681323、およびセマキサニブ(SU5416)が含まれる)が含まれる(Chicoら,Nat Rev Drug Discov.8:829−909,2009を参照のこと)。小分子の例には、ドネペジル(donepizil)、ガランタミン、メマンチン、リバスチグミン、タクリン、ラサギリン(rasigiline)、ナルトレキソン、ルビプロストン、サフィナミド、イストラデフィリン、ピマバンセリン、ピトリサント、イスラジピン、プリドピジン(ACR16)、テトラベナジン、およびベキサロテン(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病の処置用);ならびにグラチラマー酢酸塩、フィンゴリモド、ミトキサントロン(例えば、MSの処置用)も含まれる。任意の上記の薬学的に許容され得る塩、酸、または誘導体も含まれる。
【0085】
小分子のさらなる例には、アルキル化剤(チオテパ、シクロホスファミド(サイトキサン(商標))など);スルホン酸アルキル(ブスルファン、インプロスルファン、およびピポスルファンなど);アジリジン(ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、およびウレドーパなど);エチレンイミンおよびメチルアメラミン(アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレン(trietylene)ホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphaoramide)、およびトリメチロールメラミン(trimethylolomelamine)が含まれる);ナイトロジェンマスタード(クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノブエンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなど);ニトロソ尿素(nitrosureas)(カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなど);抗生物質(アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリチアマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ぺプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシンなど);代謝拮抗物質(メトトレキサートおよび5−フルオロウラシル(5−FU)など);葉酸アナログ(デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなど);プリンアナログ(フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなど);ピリミジンアナログ(アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5−FUなど);アンドロゲン(カルステロン、ドロモスタノロンプロピオナート、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなど);抗アドレナル(アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなど);葉酸補充物(フォリン酸(frolinic acid)など);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート(edatraxate);デフォファミン;デメコルシン;ジアジクオン;エフロルニチン(elformithine);エリプチニウムアセタート;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK;ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’−トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビニノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド(例えば、パクリタキセル(タキソール(登録商標)、Bristol−Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)およびドセタキセル(doxetaxel)(タキソテール(登録商標).,Rhne−Poulenc Rorer,Antony,France);クロラムブシル;ゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金アナログ(シスプラチンおよびカルボプラチンなど);ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP−16);イフォスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT−11;トポイソメラーゼインヒビターRFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(difluoromethylomithine)(DMFO);レチノイン酸誘導体(タグレチン(商標)(ベキサロテン)、パンレチン(商標)(アリトレチノイン)など);ONTAK(商標)(デニロイキンジフチトクス);エスペラミシン;カペシタビン;および任意の上記の薬学的に許容され得る塩、酸、または誘導体が含まれる。
【0086】
腫瘍に対するホルモン作用を調節または阻害するように作用する抗ホルモン剤(抗エストロゲン(例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)−イミダゾール、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、およびトレミフェン(フェアストン)が含まれる);および抗アンドロゲン(フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、およびゴセレリンなど)など);および任意の上記の薬学的に許容され得る塩、酸、または誘導体も含まれる。
【0087】
上述の通り、一定の態様では、小分子は他の心毒性薬である。心毒性小分子の特定の例には、アントラサイクリン/アントラキノロン、シクロホスファミド、代謝拮抗物質、抗微小管薬、およびチロシンキナーゼインヒビターが含まれるが、これらに限定されない。心毒性薬の具体例には、本明細書中に記載され、且つ当該分野で公知の他の小分子の中で特に、シクロペンテニルシトシン、5−フルオロウラシル、カペシタビン、パクリタキセル、ドセタキセル(docataxel)、アドリアマイシン、ドキソルビシン(doxorubucin)、エピルビシン、エメチン、イソタミド、マイトマイシンC、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、シスプラチン、サリドマイド、ブスルファン、ビンブラスチン、ブレオマイシン、ビンクリスチン、三酸化ヒ素、メトトレキサート、ロシグリタゾン、およびミトキサントロンが含まれる。
【0088】
ポリペプチド薬剤。特定の実施形態では、目的の薬剤は、ペプチドまたはポリペプチドである。用語「ペプチド」および「ポリペプチド」を本明細書中で互換的に使用するが、一定の例では、用語「ペプチド」は、より短いポリペプチド(例えば、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、または50アミノ酸(その間の全ての整数および範囲(例えば、5〜10、8〜12、10〜15)が含まれる)からなるポリペプチド)をいうことができる。ポリペプチドおよびペプチドは、本明細書中に記載の天然に存在するアミノ酸および/または天然に存在しないアミノ酸から構成され得る。ポリペプチドとしての抗体も含まれる。
【0089】
例示的なポリペプチド薬剤には、リソソーム貯蔵障害に関連するポリペプチドが含まれる。かかるポリペプチドの例には、アスパルチルグルコサミニダーゼ、酸性リパーゼ、システイン輸送体、Lamp−2、α−ガラクトシダーゼA、酸性セラミダーゼ、α−L−フコシダーゼ、β−ヘキソサミニダーゼA、GM2−ガングリオシドアクチベーター(GM2A)、α−D−マンノシダーゼ、β−D−マンノシダーゼ、アリールスルファターゼA、サポシンB、ノイラミニダーゼ、α−N−アセチルグルコサミニダーゼホスホトランスフェラーゼ、ホスホトランスフェラーゼγ−サブユニット、L−イズロニダーゼ、イズロナート−2−スルファターゼ、ヘパラン−N−スルファターゼ、α−N−アセチルグルコサミニダーゼ、アセチルCoA:N−アセチルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコサミン6−スルファターゼ、ガラクトース6−スルファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、N−アセチルガラクトサミン4−スルファターゼ、ヒアルロノグルコサミニダーゼ、スルファターゼ、パルミトイルプロテインチオエステラーゼ、トリペプチジルペプチダーゼI、酸性スフィンゴミエリナーゼ、カテプシンA、カテプシンK、α−ガラクトシダーゼB、NPC1、NPC2、シアリン、およびシアル酸輸送体(そのフラグメント、改変体、および誘導体が含まれる)が含まれる。
【0090】
一定の実施形態には、ポリペプチド(多発性硬化症(MS)の処置のためにしばしば使用されるインターフェロン−β1a(例えば、AVONEX、REBIF)およびインターフェロン−β1b(例えば、Betaseron)などのインターフェロン−βポリペプチドなど)が含まれる。
【0091】
いくつかの実施形態では、前述の通り、ポリペプチド薬剤は、抗体またはその抗原結合フラグメントである。本発明の結合体または組成物において使用される抗体または抗原結合フラグメントは、本質的に任意のタイプであり得る。特定の例には、治療抗体および診断抗体が含まれる。当該分野で周知のように、抗体は、免疫グロブリン分子の可変領域内に存在する少なくとも1つのエピトープ認識部位を介して標的(炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなど)に特異的に結合することができる免疫グロブリン分子である。
【0092】
本明細書中で使用する場合、用語「抗体」は、インタクトなポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体だけでなく、そのフラグメント(dAb、Fab、Fab’、F(ab’)
2、Fvなど)、一本鎖(ScFv)、その合成改変体、天然に存在する改変体、必要な特異性の抗原結合フラグメントを有する抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、および抗原結合部位または必要な特異性のフラグメント(エピトープ認識部位)を含む免疫グロブリン分子の任意の他の改変された立体配置も含む。
【0093】
用語「抗原結合フラグメント」は、本明細書中で使用される場合、目的の抗原に結合する免疫グロブリン重鎖および/または軽鎖の少なくとも1つのCDRを含むポリペプチドフラグメントをいう。これに関して、本明細書中に記載の抗体の抗原結合フラグメントは、治療標的または診断標的に結合する抗体由来のVH配列およびVL配列の1、2、3、4、5、または6つ全てのCDRを含むことができる。
【0094】
用語「抗原」は、抗体などの選択的結合剤によって結合することができ、さらに、その抗原のエピトープに結合することができる抗体を産生させるために動物内で使用することができる分子または分子の一部をいう。抗原は、1つ以上のエピトープを有し得る。
【0095】
用語「エピトープ」には、免疫グロブリンまたはT細胞受容体に特異的に結合することができる任意の決定基、好ましくはポリペプチド決定基が含まれる。エピトープは、抗体が結合する抗原の領域をいう。一定の実施形態では、エピトープ決定基は、分子の化学的に活性な表面基(アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル、またはスルホニルなど)を含み、一定の実施形態では、特異的な三次元構造の特徴および/または特異的な電荷の特徴を有し得る。エピトープは、抗原の一次構造に関して連続または不連続であり得る。
【0096】
抗体などの分子は、この分子が別の細胞または物質と比較して特定の細胞または物質と高頻度、迅速、長期間、および/または高親和性で反応または会合する場合、「特異的結合」または「優先的結合」を示すという。抗体が他の物質への結合と比較して高親和性、高アビディティ、迅速、および/または長期間結合する場合、抗体は、標的に「特異的に結合する」または「優先的に結合する」。例えば、特異的エピトープに特異的にまたは優先的に結合する抗体は、抗体が他のエピトープに結合する場合と比較して高親和性、高アビディティ、迅速、および/または長期間特異的エピトープに結合する抗体である。この定義に関して、例えば、第1の標的に特異的または優先的に結合する抗体(または一部もしくはエピトープ)が、第2の標的に特異的または優先的に結合してもしなくてもよいとも理解される。そのようなものとして、「特異的結合」または「優先的結合」には、排他的結合は(含んでもよいが)必ずしも必要ではない。必須ではないが、一般に、結合という言及は、優先的結合を意味する。
【0097】
免疫学的結合は、一般に、例えば、例示を目的としており、制限されないが、静電気的、イオン的、親水性、および/または疎水性の誘引または反発、立体力、水素結合、ファンデルワールス力、および他の相互作用の結果として、免疫グロブリン分子と免疫グロブリンが特異性を示す抗原との間に生じるタイプの非共有結合性相互作用をいう。免疫学的結合相互作用の強度または親和性を相互作用の解離定数(K
d)で示すことができ、ここで、K
dが小さいほど親和性が高い。選択されたポリペプチドの免疫学的結合性を、当該分野で周知の方法を使用して定量することができる。1つのかかる方法は、抗原結合部位/抗原複合体の形成および解離の速度を測定する必要があり、ここで、これらの速度は、複合体パートナーの濃度、相互作用の親和性、および速度が両方向の影響を等しく受ける幾何学的パラメーターに依存する。したがって、「オン速度定数」(K
on)および「オフ速度定数」(K
off)の両方を、濃度ならびに実際の会合速度および解離速度の計算によって決定することができる。K
off/K
on比は、親和性に関連しない全てのパラメーターを削除することができるので、解離定数K
dに等しい。
【0098】
選択された抗体およびポリペプチドの免疫学的結合特性を、当該分野で周知の方法を使用して定量することができる(Daviesら,Annual Rev.Biochem.59:439−473,1990を参照のこと)。いくつかの実施形態では、抗体または他のポリペプチドは、平衡解離定数が約10
−7M以下または10
−8M以下である場合に抗原またはそのエピトープに特異的に結合するという。いくつかの実施形態では、抗体の平衡解離定数は、約10
−9M以下または10
−10M以下であり得る。一定の例示的実施形態では、抗体または他のポリペプチドは、(抗体または他のポリペプチドが特異的に結合する)本明細書中に記載の抗原または標的に対して少なくとも約0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、または50nMの親和性(K
d)を有する。
【0099】
いくつかの実施形態では、抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは他のポリペプチドは、細胞表面受容体または他の細胞表面タンパク質に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは他のポリペプチドは、細胞表面受容体または他の細胞表面タンパク質のリガンドに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは他のポリペプチドは、細胞内タンパク質に特異的に結合する。
【0100】
一定の実施形態では、抗体もしくはその抗原結合フラグメントまたは他のポリペプチドは、癌関連抗原または癌抗原に特異的に結合する。例示的な癌抗原には、細胞表面受容体などの細胞表面タンパク質が含まれる。かかる細胞表面タンパク質または受容体に結合するリガンドも癌関連抗原として含まれる。特定の実施形態では、抗体または抗原結合フラグメントは、細胞内癌抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、癌抗原に関連する癌は、1つ以上の乳癌、転移性脳腫瘍、前立腺癌、消化管癌、肺癌、卵巣癌、睾丸癌、頭頸部癌、胃癌、膀胱癌、膵臓癌、肝臓癌、腎臓癌、扁平上皮癌、CNSまたは脳の癌、黒色腫、非黒色腫癌、甲状腺癌、子宮内膜癌、上皮腫瘍、骨の癌、または造血性癌である。
【0101】
特定の実施形態では、抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは他のポリペプチドは、少なくとも1つの癌関連抗原または癌抗原(ヒトHer2/neu、Her1/EGF受容体(EGFR)、Her3、A33抗原、B7H3、CD5、CD19、CD20、CD22、CD23(IgE受容体)、C242抗原、5T4、IL−6、IL−13、血管内皮成長因子VEGF(例えば、VEGF−A)VEGFR−1、VEGFR−2、CD30、CD33、CD37、CD40、CD44、CD51、CD52、CD56、CD74、CD80、CD152、CD200、CD221、CCR4、HLA−DR、CTLA−4、NPC−1C、テネイシン、ビメンチン、インスリン様成長因子1受容体(IGF−1R)、α−フェトプロテイン、インスリン様成長因子1(IGF−1)、炭酸脱水酵素9(CA−IX)、癌胎児性抗原(CEA)、インテグリンα
vβ
3、インテグリンα
5β
1、葉酸受容体1、膜貫通糖タンパク質NMB、線維芽細胞活性化タンパク質α(FAP)、糖タンパク質75、TAG−72、MUC1、MUC16(またはCA−125)、ホスファチジルセリン、前立腺特異的膜抗原(PMSA)、NR−LU−13抗原、TRAIL−R1、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー10b(TNFRSF10BまたはTRAIL−R2)、SLAMファミリーメンバー7(SLAMF7)、EGP40汎癌腫抗原、B細胞活性化因子(BAFF)、血小板由来成長因子受容体、糖タンパク質EpCAM(17−1A)、プログラム死−1、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)、再生肝ホスファターゼ3(PRL−3)、前立腺酸性ホスファターゼ、ルイス−Y抗原、GD2(神経外胚葉起源の腫瘍上に発現するジシアロガングリオシド)、グリピカン−3(GPC3)、および/またはメソテリンなど)に特異的に結合する。
【0102】
特定の実施形態では、抗体もしくはその抗原結合フラグメントまたは他のポリペプチドは、ヒトHer2/neuタンパク質に特異的に結合する。本質的に任意の抗Her2/neu抗体、抗原結合フラグメント、または他のHer2/neu特異的結合剤を使用して本発明のp97−抗体結合体を産生することができる。例示的な抗Her2/neu抗体は、例えば、米国特許第5,677,171号;同第5,720,937号;同第5,720,954号;同第5,725,856号;同第5,770,195号;同第5,772,997号;同第6,165,464号;同第6,387,371号;および同第6,399,063号(その内容全体が本明細書中で参考として援用される)に記載されている。
【0103】
いくつかの実施形態では、抗体もしくはその抗原結合フラグメントまたは他のポリペプチドは、ヒトHer1/EGFR(上皮成長因子受容体)に特異的に結合する。本質的に任意の抗Her1/EGFR抗体、抗原結合フラグメントまたは他のHer1−EGFR特異的結合剤を使用して本発明のp97−抗体結合体を産生することができる。例示的な抗Her1/EGFR抗体は、例えば、米国特許第5,844,093号;同第7,132,511号;同第7,247,301号;同第7,595,378号;同第7,723,484号;同第7,939,072号;および同第7,960,516号(その内容全体が本明細書中で参考として援用される)に記載されている。
【0104】
一定の実施形態では、抗体は、抗癌治療抗体などの治療抗体であり、3F8、8H9、アバゴボマブ、アデカツムマブ、アフツズマブ、アレムツズマブ、アラシズマブ(ペゴール)、アマツキシマブ、アポリズマブ、バビツキシマブ、ベクツモマブ、ベリムマブ、ベバシズマブ、ビバツズマブ(メルタンシン)、ブレンツキシマブベドチン、カンツズマブ(メルタンシン)、カンツズマブ(ラブタンシン)、カプロマブ(ペンデチド)、カツマキソマブ、セツキシマブ、シタツズマブ(ボガトクス)、シクスツムマブ、クリバツズマブ(テトラキセタン)、コナツムマブ、ダセツズマブ、ダロツズマブ、デツモマブ、ドロジツマブ、エクロメキシマブ、エドレコロマブ、エロツズマブ、エナバツズマブ、エンシツキシマブ、エプラツズマブ、エルツマキソマブ、エタラシズマブ、ファーレツズマブ、FBTA05、フィギツムマブ、フランボツマブ、ガリキシマブ、ゲムツズマブ、ガニツマブ、ゲムツズマブ(オゾガマイシン)、ギレンツキシマブ、グレムバツムマブ(ベドチン)、イブリツモマブチウキセタン、イクルクマブ、イゴボマブ、インダツキシマブラブタンシン、インテツムマブ、イノツズマブオゾガマイシン、イプリムマブ(MDX−101)、イラツムマブ、ラベツズマブ、レキサツムマブ、リンツズマブ、ロルボツズマブ(メルタンシン)、ルカツムマブ、ルミリキシマブ、マパツムマブ、マツズマブ、ミラツズマブ、ミツモマブ、モガムリズマブ、モキセツモマブ(パスドトクス)、ナコロマブ(タフェナトクス)、ナプツモマブ(エスタフェナトクス)、ナルナツマブ、ネシツムマブ、ニモツズマブ、ニボルマブ、ノイラジアブ(登録商標)(放射性ヨウ素を含むか含まない)、NR−LU−10、オファツムマブ、オララツマブ、オナルツズマブ、オポルツズマブ(モナトクス)、オレゴボマブ、パニツムマブ、パトリツマブ、ペムツモマブ、ペルツズマブ、プリツムマブ、ラコツモマブ、ラドレツマブ、ラムシルマブ、リロツムマブ、リツキシマブ、ロバツムマブ、サマリズマブ、シブロツズマブ、シルツキシマブ、タバルマブ、タプリツモマブ(パプトクス)、テナツモマブ、テプロツムマブ、TGN1412、チシリムマブ、トレメリムマブ、チガツズマブ、TNX−650、トシツモマブ、TRBS07、トラスツズマブ、ツコツズマブ(セルモロイキン)、ウブリツキシマブ、ウレルマブ、ベルツズマブ、ボロシキシマブ、ボツムマブ、およびザルツムマブなどの抗体が含まれる。これらの抗体のフラグメント、改変体、および誘導体も含まれる。
【0105】
特定の実施形態では、抗体は心毒性抗体(すなわち、結合体化されていない形態で投与した場合に心毒性を示す抗体)である。心毒性を示す抗体の具体例には、トラスツズマブおよびベバシズマブが含まれる。
【0106】
特定の実施形態では、p97結合体で使用される抗Her2/neu抗体は、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))またはそのフラグメント、改変体、もしくは誘導体である。ハーセプチン(登録商標)は、ヒト乳癌の処置について承認されたHer2/neu特異的モノクローナル抗体である。一定の実施形態では、Her2/neu結合抗原結合フラグメントは、Her2/neu抗体の1つ以上のCDRを含む。これに関して、いくつかの場合、所望の特異的結合を保持しながら抗体のVHCDR3のみを移入することができることが示されている(Barbasら,PNAS.92:2529−2533,1995)。McLaneら,PNAS USA.92:5214−5218,1995;およびBarbasら,J.Am.Chem.Soc.116:2161−2162,1994も参照のこと。
【0107】
他の特定の実施形態では、本発明の結合体で使用される抗Her1/EGFR抗体は、セツキシマブ(エルビタックス(登録商標))またはそのフラグメントもしくは誘導体である。一定の実施形態では、抗Her1/EGFR結合フラグメントは、セツキシマブなどのHer1/EGFR抗体の1つ以上のCDRを含む。セツキシマブは、頭頸部癌および結腸直腸癌の処置について承認されている。セツキシマブは、ヒトEGFRのN末端タンパク質に特異的な225マウスEGFRモノクローナル抗体のFv(可変;抗原結合)領域、ヒトIgG1重鎖およびκ軽鎖の定常(フレームワーク)領域から構成される。
【0108】
いくつかの実施形態では、抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは他のポリペプチドは、少なくとも1つの神経系障害(末端神経系および/または中枢神経系(CNS)の障害が含まれる)(例えば、の処置)に関連する抗原に特異的に結合する。一定の実施形態では、抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは他のポリペプチドは、疼痛(急性疼痛、慢性疼痛、および神経因性疼痛が含まれる)(例えば、の処置)に関連する抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは他のポリペプチドは、自己免疫障害(神経系またはCNSの自己免疫障害が含まれる)(例えば、の処置)に関連する抗原に特異的に結合する。
【0109】
神経系、疼痛、および/または自己免疫に関連する抗原の例には、α−4(α4)インテグリン、CD20、CD52、IL−12、IL−23、IL−12およびIL−23のp40サブユニット、軸索再生および再軸索形成のインヒビターNogo−AおよびLINGO、IL−23、アミロイド−β(例えば、Aβ
(1−42))、ハンチンチン、CD25(すなわち、IL−2受容体のα鎖)、神経成長因子(NGF)、神経栄養性チロシンキナーゼ受容体タイプ1(TrkA;NGFの高親和性触媒受容体)、ならびにα−シヌクレインが含まれるが、これらに限定されない。これらおよび他の標的は、種々の神経系、疼痛、および/または自己免疫の障害(多発性硬化症(α4インテグリン、IL−23、CD25、CD20、CD52、IL−12、IL−23、IL−12およびIL−23のp40サブユニット、ならびに軸索再生および再軸索形成のインヒビターNogo−AおよびLINGO)、アルツハイマー病(Aβ)、ハンチントン病(ハンチンチン)、パーキンソン病(α−シヌクレイン)、および疼痛(NGFおよびTrkA)など)の処置で有用であると見なされている。
【0110】
特定の実施形態では、p97結合体で使用される抗CD25抗体は、ダクリズマブ(すなわち、ゼナパックス(商標))またはそのフラグメント、改変体、もしくは誘導体である。ダクリズマブは、CD25(IL−2受容体のαサブユニット)に特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体である。他の実施形態では、抗体は、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、またはCD20に特異的に結合するその改変体もしくはフラグメントである。特定の実施形態では、抗体は、アレムツズマブまたはCD52に特異的に結合するその改変体もしくはフラグメントである。一定の実施形態では、抗体は、ウステキヌマブ(CNTO1275)またはIL−12およびIL−23のp40サブユニットに特異的に結合するその改変体もしくはフラグメントである。
【0111】
特定の実施形態では、結合体で使用される抗NGF抗体は、タネズマブまたはそのフラグメント、改変体、もしくは誘導体である。タネズマブは、NGFに特異的に結合し、交感ニューロンおよび感覚ニューロン上に存在する高親和性膜結合触媒受容体であるトロポミオシン関連キナーゼA(TrkA)へのNGFの結合を防止しする。NGFによるTrkA刺激の低下によりかかるニューロンの痛覚伝導活性を阻害すると考えられている。
【0112】
いくつかの実施形態では、抗体もしくはその抗原結合フラグメントまたは他のポリペプチド(例えば、免疫グロブリン様分子、可溶性受容体、リガンド)は、炎症促進性分子(例えば、炎症促進性サイトカインまたはケモカイン)に特異的に結合する。これらおよび関連する実施形態では、p97結合体を使用して、本明細書中に記載の種々の炎症状態を処置することができる。炎症促進性分子の例には、とりわけ、腫瘍壊死因子(TNF)(TNF−αおよびTNF−βなど)、TNFスーパーファミリー分子(FasL、CD27L、CD30L、CD40L、Ox40L、4−1BBL、TRAIL、TWEAK、およびApo3Lなど)、インターロイキン−1(IL−1)(IL−1αおよびIL−1βが含まれる)、IL−2、インターフェロン−γ(IFN−γ)、IFN−α/β、IL−6、IL−8、IL−12、IL−15、IL−17、IL−18、IL−21、LIF、CCL5、GROα、MCP−1、MIP−1α、MIP−1β、マクロファージコロニー刺激因子(MCSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、CXCL2、CCL2が含まれる。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、1つ以上の上記の炎症促進性分子の受容体(とりわけ、TNF受容体(TNFR)、IL−1受容体(IL−1R)、またはIL−6受容体(IL−6R)など)に特異的に結合する。
【0113】
特定の実施形態では、上述のように、抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは他のポリペプチドは、TNF−αまたはTNF−βに特異的に結合する。特定の実施形態では、抗TNF抗体または他のTNF結合ポリペプチドは、アダリムマブ(ヒューミラ(登録商標))、セルトリズマブペゴール(シムジア(登録商標))、エタネルセプト(エンブレル(登録商標))、ゴリムマブ(シムジア(登録商標))、またはインフリキシマブ(レミケード(登録商標))、D2E7、CDP571、もしくはCDP870、またはその抗原結合フラグメントもしくは改変体である。いくつかの実施形態では、TNF結合ポリペプチドは、可溶性の受容体またはリガンド(TNRFSF10B、TRAIL(すなわち、CD253)、TNFSF10、TRADD(腫瘍壊死因子受容体タイプ1関連デスドメインタンパク質)、TRAF(TNF受容体関連因子(TRAFS1〜7が含まれる))、またはRIP(リボソーム不活性化タンパク質)など)である。抗TNF抗体またはTNF結合ポリペプチドを含む結合体を、例えば、本明細書中に記載の種々の炎症状態の処置で使用することができる。かかるp97結合体を、種々の神経学的な容態または障害(アルツハイマー病、卒中、外傷性脳損傷(TBI)、脊柱狭窄症、急性脊髄損傷、および脊髄圧迫など)の処置で使用することもできる(米国特許第6,015,557号;同第6,177,077号;同第6,419,934号;同第6,419,944号;同第6,537,549号;同第6,982,089号;および同第7,214,658号を参照のこと)。
【0114】
特定の実施形態では、前述のように、抗体または抗原結合フラグメントは、IL−1αまたはIL−1βに特異的に結合する。特定の実施形態では、抗IL−1抗体は、カナキヌマブもしくはゲボキズマブまたはIL−1βに特異的に結合するその改変体もしくはフラグメントである。本明細書中に記載のいくつかの炎症状態の中で特に、抗IL−1抗体を含むp97結合体を使用して、クリオピリン関連周期性症候群(CAPS)(家族性寒冷自己炎症症候群、マックル・ウェルズ症候群、および新生児期発症多臓器系炎症性疾患が含まれる)を処置することができる。
【0115】
抗体を、当業者に公知の任意の種々の技術によって調製することができる。例えば、Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988を参照のこと。目的のポリペプチドに特異的なモノクローナル抗体を、例えば、Kohler and Milstein,Eur.J.Immunol.6:511−519,1976の技術およびその改良された技術を使用して調製することができる。ヒト抗体を発現させるためのマウスなどのトランスジェニック動物を利用した方法も含まれる。例えば、Neubergerら,Nature Biotechnology 14:826,1996;Lonbergら,Handbook of Experimental Pharmacology 113:49−101,1994;およびLonbergら,Internal Review of Immunology 13:65−93,1995を参照のこと。特定の例には、REGENEREX(登録商標)のVELOCIMMUNE(登録商標)プラットフォームが含まれる(例えば、米国特許第6,596,541号を参照のこと)。
【0116】
抗体を、ファージディスプレイライブラリーまたは酵母ディスプレイライブラリーの使用によって生成および同定することもできる(例えば、米国特許第7,244,592号;Chaoら,Nature Protocols.1:755−768,2006を参照のこと)。利用可能なライブラリーの非限定的な例には、クローン化ライブラリーまたは合成ライブラリー(ヒト抗体レパートリーの構造多様性が7つの重鎖および7つの軽鎖可変領域の遺伝子によって示されているヒトコンビナトリアル抗体ライブラリー(HuCAL)など)が含まれる。これらの遺伝子の組み合わせにより、マスターライブラリー中に49のフレームワークが得られる。これらのフレームワーク上への高可変遺伝子カセット(CDR=相補性決定領域)の重ねあわせにより、膨大なヒト抗体レパートリーを再現することができる。軽鎖可変領域をコードするヒトドナー起源のフラグメント、重鎖CDR−3、重鎖CDR−1の多様性をコードする合成DNA、および重鎖CDR−2の多様性をコードする合成DNAを使用してデザインしたヒトライブラリーも含まれる。使用に適切な他のライブラリーは、当業者に明らかであろう。本明細書中に記載され、且つ当該分野で公知のp97ポリペプチドを、精製過程、例えば、アフィニティクロマトグラフィ工程で使用することができる。
【0117】
一定の実施形態では、本明細書中に記載の抗体およびその抗原結合フラグメントには、CDRを支持し、CDRの相互の空間的関係を確定する重鎖および軽鎖フレームワーク領域(FR)のセットの間に配置された重鎖および軽鎖のCDRセットが含まれる。本明細書中で使用する場合、用語「CDRセット」は、重鎖または軽鎖のV領域の3つの超可変領域をいう。重鎖または軽鎖のN末端側から、これらの領域を、それぞれ、「CDR1」、「CDR2」、および「CDR3」と命名する。したがって、抗原結合部位は、重鎖および軽鎖のV領域の各々由来のCDRセットを含む6つのCDRを含む。単一のCDR(例えば、CDR1、CDR2、またはCDR3)を含むポリペプチドを、本明細書中で、「分子認識単位」という。多数の抗原−抗体複合体の結晶解析により、CDRのアミノ酸残基が結合した抗原に広範に接触し、抗原は重鎖CDR3と最も広範に接触することが証明されている。したがって、分子認識単位は、主に抗原結合部位の特異性を担う。
【0118】
本明細書中で使用する場合、用語「FRセット」は、重鎖または軽鎖のV領域のCDRセットのCDRを取り囲む4つの隣接するアミノ酸配列をいう。いくつかのFR残基は結合した抗原と接触することができるが、FR、特にCDRのすぐ隣のFR残基は、主にV領域の抗原結合部位への折り畳みを担う。FR内で、一定のアミノ残基および一定の構造特性は非常に高度に保存されている。これに関して、全てのV領域配列は、およそ90アミノ酸残基の内部ジスルフィドループを含む。V領域が結合部位に折りたたまれると、CDRは突出したループモチーフを示し、抗原結合表面が形成される。正確なCDRアミノ酸配列と無関係にCDRループの一定の「基準」構造に折りたたまれた形状に影響を及ぼすFRの保存された高増領域が存在すると一般に認識されている。さらに、一定のFR残基は、抗体の重鎖および軽鎖の相互作用を安定化する非共有結合性のドメイン間接触に関与することが公知である。
【0119】
免疫グロブリン可変ドメインの構造および位置を、Kabat,E.A.ら,Sequences of Proteins of Immunological Interest.4th Edition.アメリカ合衆国保健福祉省.1987およびその最新版を参照して決定することができる。
【0120】
「モノクローナル抗体」は、均一な抗体集団をいい、ここで、モノクローナル抗体は、エピトープの選択的結合に関与するアミノ酸(天然に存在するアミノ酸および天然に存在しないアミノ酸)から構成される。モノクローナル抗体は、高度に特異的で、単一のエピトープに指向する。用語「モノクローナル抗体」は、インタクトなモノクローナル抗体および全長モノクローナル抗体だけでなく、そのフラグメント(Fab、Fab’、F(ab’)
2、Fvなど)、一本鎖(ScFv)、その改変体、抗原結合部分を含む融合タンパク質、ヒト化モノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体、およびエピトープを結合するために必要な特異性および能力を有する抗原結合フラグメント(エピトープ認識部位)を含む免疫グロブリン分子の任意の他の改変された立体配置を含む。抗体の供給源や作製する様式(例えば、ハイブリドーマ、ファージ選択、組み換え発現、トランスジェニック動物)に関して制限されることを意図しない。この用語には、「抗体」の定義における上記の免疫グロブリン全体およびフラグメントなどが含まれる。
【0121】
タンパク質分解酵素パパインは、IgG分子を優先的に切断していくつかのフラグメントを精製し、そのうちの2つ(F(ab)フラグメント)はそれぞれインタクトな抗原結合部位を含む共有結合性ヘテロ二量体を含む。酵素ペプシンによってIgG分子を切断していくつかのフラグメントを得ることができ、このフラグメントには両方の抗原結合部位を含むF(ab’)
2フラグメントが含まれる。本発明の一定の実施形態で用いるFvフラグメントを、IgMの優先的タンパク質分解的切断によって産生することができ、これはIgG免疫グロブリン分子またはIgA免疫グロブリン分子では稀である。しかし、Fvフラグメントは、より一般的には当該分野で公知の組換え技術を使用して誘導する。Fvフラグメントは、未変性の抗体分子の抗原結合性および結合能力の大半を保持する抗原結合部位を含む非共有結合性V
H::V
Lヘテロ二量体を含む。Inbarら,PNAS USA.69:2659−2662,1972;Hochmanら,Biochem.15:2706−2710,1976;およびEhrlichら,Biochem.19:4091−4096,1980を参照のこと。
【0122】
一定の実施形態では、一本鎖FvまたはscFV抗体を意図する。例えば、κボディ(Illら,Prot.Eng.10:949−57,1997);ミニボディ(Martinら,EMBO J 13:5305−9,1994);ダイアボディ(Holligerら,PNAS 90:6444−8,1993);またはヤヌシン(Trauneckerら,EMBO J 10:3655−59,1991;およびTrauneckerら,Int.J.Cancer Suppl.7:51−52,1992)を、所望の特異性を有する抗体の選択に関して本出願の教示にしたがった標準的な分子生物学技術を使用して調製することができる。
【0123】
一本鎖Fv(sFv)ポリペプチドは、ペプチドコードリンカーによって連結されたV
HおよびV
Lをコードする遺伝子を含む遺伝子融合物から発現された共有結合V
H::V
Lヘテロ二量体である(Hustonら(PNAS USA.85(16):5879−5883,1988))。天然には凝集しているが化学的には分離している軽鎖および重鎖のポリペプチドの抗体V領域からsFv分子(抗原結合部位の構造と実質的に類似の三次元構造に折りたたまれるであろう)への変換のための化学構造を識別するための方法は多数記載されている。例えば、Hustonらの米国特許第5,091,513号および同第5,132,405号;およびLadnerらの米国特許第4,946,778号を参照のこと。
【0124】
一定の実施形態では、本明細書中に記載の抗体は、「ダイアボディ」の形態である。ダイアボディはポリペプチドの多量体であり、各ポリペプチドは、免疫グロブリン軽鎖の結合領域を含む第1のドメインおよび免疫グロブリン重鎖の結合領域を含む第2のドメインを含み、この2つのドメインは(例えば、ペプチドリンカーによって)連結されているが、相互に会合して抗原結合部位を形成することはできない。この抗原結合部位は、多量体内の1つのポリペプチドの第1のドメインの多量体内の別のポリペプチドの第2のドメインとの会合によって形成される(WO94/13804号)。抗体のdAbフラグメントは、VHドメインからなる(Wardら,Nature 341:544−546,1989)。ダイアボディおよび他の多価または多特異的フラグメントを、例えば、遺伝子融合によって構築することができる(WO94/13804号;およびHolligerら,PNAS USA.90:6444−6448,1993)を参照のこと)。
【0125】
CH3ドメインに連結したscFvを含むミニボディも含まれる(Huら,Cancer Res.56:3055−3061,1996を参照のこと)。Wardら,Nature.341:544−546,1989;Birdら,Science.242:423−426,1988;Hustonら,PNAS USA.85:5879−5883,1988);PCT/US92/09965号;WO94/13804号;およびReiterら,Nature Biotech.14:1239−1245,1996も参照のこと。
【0126】
二重特異性抗体を使用すべきである場合、これらは、種々の方法(Holliger and Winter,Current Opinion Biotechnol.4:446−449,1993)で製造する(例えば、化学的に調製するかハイブリッドハイブリドーマから調製する)ことができる従来の二重特異性抗体であり得るか、任意の前述の二重特異性抗体フラグメントであり得る。ダイアボディおよびscFvを、Fc領域を使用せずに可変ドメインのみを使用して構築し、それにより、高イディオタイプ反応の影響を潜在的に低下させることができる。
【0127】
二重特異性ダイアボディはまた、二重特異性の全抗体と対照的に、大腸菌内で容易に構築および発現させることができるので、特に有用であり得る。結合特異性が適切なダイアボディ(および抗体フラグメントなどの多数の他のポリペプチド)を、ファージディスプレイ(WO94/13804)を使用してライブラリーから容易に選択することができる。ダイアボディの一方のアームが、例えば、抗原Xに対する特異性を一定に保持する場合、他方のアームが変動するライブラリーを作製することができ、特異性が適切な抗体が選択される。二重特異性の全抗体を、ノブ・イントゥ・ホールエンジニアリングによって作製することができる(Ridgewayら,Protein Eng.,9:616−621,1996)。
【0128】
一定の実施形態では、本明細書中に記載の抗体を、UniBody(登録商標)の形態で提供することができる。UniBody(登録商標)は、ヒンジ領域が除去されたIgG4抗体である(GenMab Utrecht,The Netherlandsを参照のこと;例えば、US20090226421号も参照のこと)。この抗体テクノロジーにより、現在の小抗体形式よりも治療可能時間域がより長いと予測される安定なより小型の抗体形式が得られる。IgG4抗体は不活性と見なされ、したがって、免疫系と相互作用しない。完全ヒトIgG4抗体を、抗体のヒンジ領域の排除によって改変して対応するインタクトなIgG4と比較して明確な安定性を有する半分子フラグメントを得ることができる(GenMab,Utrecht)。IgG4分子はUniBody(登録商標)上に同種抗原(例えば、疾患標的)に結合することができる領域が1つだけ残存しており、したがって、UniBody(登録商標)は標的細胞上のたった1つの部位に一価に結合する。一定の癌細胞表面抗原について、この1価の結合は、同一の抗原特異性を有する2価の抗体を使用して認められるような癌細胞が成長するように刺激する可能性がなく、それ故、UniBody(登録商標)テクノロジーは、従来の抗体を用いた処置に抵抗性を示し得るいくつかの癌タイプのための処置選択肢を提供することができる。小型のUniBody(登録商標)は、いくつかの癌形態を処置する場合に大きな利点を得ることができ、より大きな固形腫瘍により良好に分子が分布し、有効性を増大させる可能性がある。
【0129】
一定の実施形態では、本明細書中に提供した抗体は、ナノボディの形態を取ることができる。ミニボディは、単一の遺伝子によってコードされ、ほとんど全ての原核生物宿主および真核生物宿主(例えば、大腸菌(米国特許第6,765,087号を参照のこと)、カビ(例えば、AspergillusまたはTrichoderma)、および酵母(例えば、Saccharomyces、Kluyvermyces、Hansenula、またはPichia(米国特許第6,838,254号を参照のこと))で効率的に産生される。産生過程は拡大可能であり、何キログラムものナノボディが産生されてきた。ナノボディを、貯蔵期間の長い既製の溶液として処方することができる。ナノクローン法(WO06/079372号を参照のこと)は、B細胞の自動化された高処理選択に基づいた所望の標的に対するナノボディの独自の生成方法である。
【0130】
一定の実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントをヒト化する。これらの実施形態は、一般に組換え技術を使用して調製され、非ヒト種由来の免疫グロブリン由来の抗原結合部位を有し、且つヒト免疫グロブリンの構造および/または配列に基づいた分子の免疫グロブリン構造が残存したキメラ分子をいう。抗原結合部位は、定常ドメイン上に融合された完全な可変ドメインまたは可変ドメイン中の適切なフレームワーク領域上にグラフティングされたCDRのみのいずれかを含み得る。エピトープ結合部位は、野生型であり得るか、1つ以上のアミノ酸置換によって改変することができる。これにより、ヒト個体中の免疫原としての定常領域が排除されるが、外来可変領域に対する免疫応答の可能性が残る(LoBuglioら,PNAS USA 86:4220−4224,1989;Queenら,PNAS USA.86:10029−10033,1988;Riechmannら,Nature.332:323−327,1988)。例示的な抗体のヒト化方法には、米国特許第7,462,697号に記載の方法が含まれる。
【0131】
別のアプローチは、ヒト由来定常領域を提供することだけでなく、再形成してヒト形態に出来るだけ近づけるけるための可変領域の改変することにも焦点を合わせている。重鎖および軽鎖の両方の可変領域が、問題のエピトープに対する応答が異なり、且つ結合能力を決定づける3つの相補性決定領域(CDR)を含み、所与の種で比較的保存されており、且つCDRの足場を提供すると推定されている4つのフレームワーク領域(FR)が隣接していることが公知である。特定のエピトープに関して非ヒト抗体を調製する場合、可変領域を、改変すべきヒト抗体中に存在するFR上に非ヒト抗体由来のCDRをグラフティングすることによって「再形成」または「ヒト化」することができる。このアプローチの種々の抗体への適用については、Satoら,Cancer Res.53:851−856,1993;Riechmannら,Nature 332:323−327,1988;Verhoeyenら,Science 239:1534−1536,1988;Kettleboroughら,Protein Engineering.4:773−3783,1991;Maedaら,Human Antibodies Hybridoma 2:124−134,1991;Gormanら,PNAS USA.88:4181−4185,1991;Tempestら,Bio/Technology 9:266−271,1991;Coら,PNAS USA.88:2869−2873,1991;Carterら,PNAS USA.89:4285−4289,1992;およびCoら,J Immunol.148:1149−1154,1992によって報告されている。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は、全CDR配列が保存されている(例えば、マウス抗体由来の6つ全てのCDRを含むヒト化マウス抗体)。他の実施形態では、ヒト化抗体は、元の抗体と比較して変化した1つ以上のCDR(1、2、3、4、5、6つ)を有し、これらのCDRを、元の抗体由来の1つ以上のCDR「から誘導された」1つ以上のCDRとも呼ぶ。
【0132】
一定の実施形態では、本発明の抗体はキメラ抗体であり得る。これに関して、キメラ抗体は、異なる抗体の異種Fc部分に作動可能連結されたか、そうでなければ融合された抗体の抗原結合フラグメントから構成される。一定の実施形態では、異種Fcドメインはヒト起源である。他の実施形態では、異種Fcドメインは、親抗体由来の異なるIgクラス(IgA(サブクラスIgA1およびIgA2が含まれる)、IgD、IgE、IgG(サブクラスIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4が含まれる)、およびIgMが含まれる)に由来し得る。さらなる実施形態では、異種Fcドメインは、1つ以上の異なるIgクラス由来のCH2ドメインおよびCH3ドメインから構成され得る。ヒト化抗体に関して上述のように、キメラ抗体の抗原結合フラグメントは、本明細書中に記載の抗体の1つ以上のCDRのみ(例えば、本明細書中に記載の抗体の1、2、3、4、5、または6つのCDR)を含み得るか、全可変ドメイン(VL、VH、または両方)を含み得る。
【0133】
ペプチド模倣物。一定の実施形態は、「ペプチド模倣物」を使用する。ペプチドアナログは、テンプレートペプチドに類似の性質を有する非ペプチド薬として医薬品産業で一般的に使用されている。これらの非ペプチド化合物タイプを、「ペプチド模倣物」または「ペプチドの模倣物」と呼ぶ(Luthmanら,A Textbook of Drug Design and Development,14:386−406,2nd Ed.,Harwood Academic Publishers,1996;Joachim Grante,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,33:1699−1720,1994;Fauchere,Adv.Drug Res.,15:29,1986;Veber and Freidinger TINS,p.392(1985);およびEvansら,J.Med.Chem.30:229,1987)。ペプチドの模倣物は、ペプチドの生物学的活性を模倣するが、もはや化学的性質がペプチドではない分子である。ペプチド模倣化合物は、当該分野で公知であり、例えば、米国特許第6,245,886号に記載されている。
【0134】
ペプチド模倣物は、抗体について記載の「特異的結合」特性を有し得る(前述)。例えば、ペプチド模倣物は、本明細書中に記載の標的に、少なくとも約0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、または50nMの結合親和性(K
d)で特異的に結合することができる。いくつかの実施形態では、ペプチド模倣物は、細胞表面受容体または他の細胞表面タンパク質に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、ペプチド模倣物は、少なくとも1つの本明細書中に記載の癌関連抗原に特異的に結合する。特定の実施形態では、ペプチド模倣物は、少なくとも1つの本明細書中に記載の神経系関連抗原、疼痛関連抗原、および/または自己免疫関連抗原に特異的に結合する。
【0135】
ペプトイド。本発明の結合体はまた、「ペプトイド」を含む。ペプチドのペプトイド誘導体は、生物学的活性に重要な構造決定基を保持するがペプチド結合が排除され、それによりタンパク質分解耐性が付与された改変ペプチドの別の形態を示す(Simonら,PNAS USA.89:9367−9371,1992)。ペプトイドは、N置換グリシンのオリゴマーである。それぞれ天然アミノ酸の側鎖に対応する多数のN−アルキル基が記載されている。本発明のペプチドの模倣物には、少なくとも1つのアミノ酸、少数のアミノ酸、または全アミノ酸残基が対応するN置換グリシンに置換された化合物が含まれる。ペプトイドライブラリーは、例えば、米国特許第5,811,387号に記載されている。
【0136】
ペプトイドは、抗体について記載の「特異的結合」特性を有し得る(前述)。例えば、ペプトイドは、本明細書中に記載の標的に、少なくとも約0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、または50nMの結合親和性(K
d)で特異的に結合することができる。一定の実施形態では、ペプトイドは、細胞表面受容体または他の細胞表面タンパク質に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、ペプトイドは、少なくとも1つの本明細書中に記載の癌関連抗原に特異的に結合する。特定の実施形態では、ペプトイドは、少なくとも1つの本明細書中に記載の神経系関連抗原、疼痛関連抗原、および/または自己免疫関連抗原に特異的に結合する。
【0137】
アプタマー。本発明のp97結合体はまた、アプタマーを含む(例えば、Ellingtonら,Nature.346,818−22,1990;およびTuerkら,Science.249,505−10,1990を参照のこと)。アプタマーの例には、核酸アプタマー(例えば、DNAアプタマー、RNAアプタマー)およびペプチドアプタマーが含まれる。核酸アプタマーは、一般に、in vitro選択ラウンドの繰り返しまたは等価な方法(SELEX(試験管内進化法)など)によって操作して、小分子、タンパク質、核酸などの種々の分子標的、さらには細胞、組織、および器官に結合する核酸種をいう。例えば、米国特許第6,376,190号;および同第6,387,620号を参照のこと。
【0138】
ペプチドアプタマーは、典型的には、両末端がタンパク質足場に付着した可変ペプチドループ(典型的にはペプチドアプタマーの結合親和性が抗体の結合親和性に匹敵するレベル(例えば、ナノモル範囲)に増加する二重の構造的拘束)を含む。一定の実施形態では、可変ループ長は約10〜20アミノ酸(その間の全ての整数が含まれる)から構成され得、足場は良好な溶解性および緻密性を有する任意のタンパク質を含むことができる。一定の例示的実施形態は、足場タンパク質として細菌タンパク質チオレドキシン−Aを利用することができ、このタンパク質は、可変ループが還元活性部位内に挿入され(野生タンパク質中の−Cys−Gly−Pro−Cys−ループ)、2つの外側のシステイン鎖がジスルフィド架橋を形成することができる。ペプチドアプタマーの同定方法は、例えば、米国特許出願公開第2003/0108532号に記載されている。
【0139】
アプタマーは、抗体について記載の「特異的結合」特性を有し得る(前出)。例えば、アプタマーは、本明細書中に記載の標的と少なくとも約0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、または50nMの結合親和性(K
d)で特異的に結合することができる。特定の実施形態では、アプタマーは、細胞表面受容体または他の細胞表面タンパク質に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、アプタマーは、少なくとも1つの本明細書中に記載の癌関連抗原に特異的に結合する。特定の実施形態では、アプタマーは、少なくとも1つの本明細書中に記載の神経系関連抗原、疼痛関連抗原、および/または自己免疫関連抗原に特異的に結合する。
【0140】
検出可能な実体。いくつかの実施形態では、p97フラグメントを、「検出可能な実体」に結合体化させる。例示的な検出可能な実体には、ヨウ素ベースの標識、放射性同位体、フルオロフォア/蛍光色素、およびナノ粒子が含まれるが、これらに限定されない。
【0141】
例示的なヨウ素ベースの標識には、ジアトリゾ酸(Hypaque(登録商標)、GE Healthcare)およびそのアニオン型ジアトリゾアートが含まれる。ジアトリゾ酸は、CTスキャンなどの先進X線技術で使用される放射線造影剤である。下記のヨウ素放射性同位体も含まれる。
【0142】
検出可能な実体として使用することができる例示的な放射性同位体には、
32P、
33P、
35S、
3H、
18F、
11C、
13N、
15O、
111In、
169Yb、
99mTC、
55Fe、およびヨウ素同位体(
123I、
124I、
125I、および
131Iなど)が含まれる。これらの放射性同位体は、特定のプロトコールのニーズに適合するように調整することができる異なる半減期、減衰型、およびエネルギーレベルを有する。これらの一定の放射性同位体を、例えば、かかる組織の医学的画像化を改善するためにp97ポリペプチドに結合体化することによってCNS組織を選択的に標的するかより良好に標的にすることができる。
【0143】
直接検出可能な実体として使用することができるフルオロフォアまたは蛍光色素の例には、フルオレセイン、テトラメチルローダミン、テキサスレッド、およびオレゴングリーン(登録商標)などが含まれる(例えば、Haugland,Handbook of Fluorescent Probes−9th Ed.,2002,Molec.Probes,Inc.,Eugene OR;Haugland,The Handbook:A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies−10th Ed.,2005,Invitrogen,Carlsbad,CA)。発光色素または他の検出可能な色素も含まれる。色素による発光は、可視光または不可視光(紫外線または赤外線など)であり得る。例示的な実施形態では、色素は、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)色素;キサンテン色素(フルオレセインおよびローダミンなど);α位またはβ位にアミノ基を有する色素(ナフチルアミン色素、1−ジメチルアミノナフチル−5−スルホナート、1−アニリノ−8−ナフタレンスルホナート(naphthalende sulfonate)、および2−p−トルイジニル(touidinyl)−6−ナフタレンスルホナートなど);3−フェニル−7−イソシアナトクマリンを有する色素;アクリジン(9−イソチオシアナトアクリジンおよびアクリジンオレンジなど);ピレン、ベンゾオキサジアゾール(bensoxadiazole)、およびスチルベン;3−(ε−カルボキシペンチル)−3’−エチル−5,5’−ジメチルオキサカルボシアニン(CYA)を有する色素;6−カルボキシフルオレセイン(FAM);5および6−カルボキシローダミン−110(R110);6−カルボキシローダミン−6G(R6G);N,N,N’,N’−テトラメチル−6−カルボキシローダミン(TAMRA);6−カルボキシ−X−ローダミン(ROX);6−カルボキシ−4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシフルオレセイン(JOE);ALEXA FLUOR(商標);Cy2;テキサスレッドおよびローダミンレッド;6−カルボキシ−2’,4,7,7’−テトラクロロフルオレセイン(TET);6−カルボキシ−2’,4,4’,5’,7,7’−ヘキサクロロフルオレセイン(HEX);5−カルボキシ−2’,4’,5’,7’−テトラクロロフルオレセイン(ZOE);NAN;NED;Cy3;Cy3.5;Cy5;Cy5.5;Cy7;およびCy7.5;IR800CW、ICG、Alexa Fluor350;Alexa Fluor488;Alexa Fluor532;Alexa Fluor546;Alexa Fluor568;Alexa Fluor594;Alexa Fluor647;Alexa Fluor680、またはAlexa Fluor750であり得る。一定の実施形態は、検出可能な実体(フルオロフォア(例えば、オレゴングリーン(登録商標)、Alexa Fluor488)など)で標識した化学療法薬(例えば、パクリタキセル、アドリアマイシン)への結合体化を含む。
【0144】
ナノ粒子は、通常、約1〜1000nmの範囲のサイズであり、金粒子、銀粒子、および量子ドットなどの多様な化学構造が含まれる。白色光をある入射角で照射した場合、約40〜120nmの範囲の銀または金のナノ粒子は高強度で単色光を散乱するであろう。散乱光の波長は、粒子サイズに依存する。ごく近接した4〜5種の異なる粒子は各々単色光を散乱し、これらが重ね合わされた場合に特異的な固有の色が得られるであろう。銀粒子または金粒子などの誘導体化ナノ粒子を、広範囲の分子(タンパク質、抗体、小分子、受容体リガンド、および核酸が含まれる)に付着させることができる。ナノ粒子の具体例には、金属ナノ粒子および金属ナノシェル(金粒子、銀粒子、銅粒子、白金粒子、カルシウム粒子、複合粒子、金中空球、金コーティングしたシリカナノシェル、およびシリカコーティングした金シェルなど)が含まれる。シリカ、ラテックス、ポリスチレン、ポリカルボナート、ポリアクリラート、PVDFナノ粒子、およびこれらの任意の材料の着色粒子も含まれる。
【0145】
量子ドットは、広範な波長にわたる光によって励起可能な直径約1〜5nmの蛍光結晶である。適切な波長の光による励起の際、これらの結晶は単色光などを発光し、波長はその化学組成およびサイズに依存する。CdSe、ZnSe、InP、またはInAsなどの量子ドットは固有の光学的性質を有し、これらおよび類似の量子ドットは多数の商業的供給元(例えば、NN−Labs,Fayetteville,AR;Ocean Nanotech,Fayetteville,AR;Nanoco Technologies,Manchester,UK;Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)から利用可能である。
【0146】
ポリペプチド改変体およびフラグメント。一定の実施形態は、名称によるか配列識別子を参照して記載される本明細書中に記載の基準ポリペプチド(p97ポリペプチドおよびポリペプチドベースの薬剤(例えば、抗体)が含まれる)の改変体および/またはフラグメントを含む。これらのポリペプチドの野生型配列または最も一般的な配列は当該分野で周知であり、本明細書中に記載の改変体およびフラグメントとの比較のために使用することができる。
【0147】
ポリペプチド「改変体」は、この用語を本明細書中で使用する場合、1つ以上の置換、欠失、付加、および/または挿入によって本明細書中に具体的に開示のポリペプチドと典型的に異なるポリペプチドである。改変体ポリペプチドは生物学的に活性である。すなわち、これらは基準ポリペプチドの酵素活性または結合活性を保有し続ける。かかる改変体は、例えば、遺伝子多型および/または人為的操作に起因し得る。
【0148】
多くの場合、生物学的に活性な改変体は、1つ以上の保存的置換を含むであろう。「保存的置換」は、あるアミノ酸を、ペプチド化学分野の当業者がポリペプチドの二次構造およびハイドロパシー特性が実質的に不変であると予想されるような類似の性質を有する別のアミノ酸と置換することである。上記のように、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの構造を修飾し、所望の特徴を有する改変体ポリペプチドまたは誘導ポリペプチドをコードする機能的分子を依然として得ることができる。本発明のポリペプチドの等価であるかさらに改良された改変体または一部を作製するためにポリペプチドのアミノ酸配列を変更することが望ましい場合、当業者は、典型的には、以下の表Aにしたがって、コードDNA配列の1つ以上のコドンを変化させるであろう。
【0150】
例えば、一定のアミノ酸を、例えば、抗体の抗原結合領域または基質分子上の結合部位などの構造との相互作用的結合能力を相当に喪失することなく、タンパク質構造中の他のアミノ酸と置換することができる。タンパク質の生物学的機能活性を定義するのはタンパク質の相互作用能力および相互作用性であるので、タンパク質配列、そして勿論その根底にあるDNAコード配列中で一定のアミノ酸配列置換を行うことができ、それにもかかわらず、類似の性質を有するタンパク質が得られる。したがって、開示の組成物のペプチド配列または前記ペプチドをコードする対応するDNA配列においてその有用性を大きく喪失することなく種々の変更を行うことができることが期待される。
【0151】
かかる変化の作製において、アミノ酸のハイドロパシー指標を考慮することができる。タンパク質に相互作用性の生物学的機能を付与する際のアミノ酸ハイドロパシー指標の重要性は、当該分野で一般に理解されている(Kyte & Doolittle,1982(本明細書中で参考として援用される))。アミノ酸の相対的なハイドロパシーは、得られたタンパク質の二次構造に依存し、一方でタンパク質の他の分子(例えば、酵素、基質、受容体、DNA、抗体、および抗原など)との相互作用を定義することを認めている。各アミノ酸は、疎水性および電荷特性に基づいてハイドロパシー指標が割り当てられている(Kyte & Doolittle、1982)。これらの値は以下である:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);トレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸塩(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸塩(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);およびアルギニン(−4.5)。一定のアミノ酸を類似のハイドロパシーの指標またはスコアを有する他のアミノ酸と置換することができ、それにより、依然として類似の生物学的活性を有するタンパク質が得られる(すなわち、依然として生物学的機能が等価のタンパク質が得られる)ことが当該分野で公知である。かかる変化の作製において、そのハイドロパシー指標が±2以内であるアミノ酸との置換が好ましく、±1以内が特に好ましく、±0.5以内がさらに特に好ましい。
【0152】
類似のアミノ酸の置換を親水性に基いて有効に行うことができることも当該分野で理解される。米国特許第4,554,101号(その全体が本明細書中で参考として特に援用される)は、タンパク質の最も高い局所平均親水性は、その隣接アミノ酸の親水性に支配されるので、そのタンパク質の生物学的性質と相関すると述べている。米国特許第4,554,101号に詳述のように、以下の親水性値がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸塩(+3.0±1);グルタミン酸塩(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);トレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);トリプトファン(−3.4)。あるアミノ酸を類似の親水性値を有する別のアミノ酸と置換することができ、それにより、依然として生物学的に等価な、特に免疫学的に等価なタンパク質が得られると理解される。かかる変化において、その親水性値が±2以内のアミノ酸置換が好ましく、±1以内が特に好ましく、±0.5以内がさらに特に好ましい。
【0153】
したがって、上記で概説のように、アミノ酸置換は、一般に、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性(例えば、その疎水性、親水性、電荷、およびサイズなど)に基づく。種々の上記特徴を考慮した例示的な置換は当業者に周知であり、以下が含まれる:アルギニンおよびリジン;グルタミン酸塩およびアスパラギン酸塩;セリンおよびトレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシン、およびイソロイシン。
【0154】
アミノ酸置換を、残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性、および/または両親媒性の類似性に基づいてさらに行うことができる。例えば、負電荷アミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれ;正電荷アミノ酸にはリジンおよびアルギニンが含まれ;類似の親水性値を有する無電荷極性頭部基を有するアミノ酸には、ロイシン、イソロイシン、およびバリン;グリシンおよびアラニン;アスパラギンおよびグルタミン;ならびにセリン、トレオニン、フェニルアラニン、およびチロシンが含まれる。保存的変化を示し得る他のアミノ酸群には、以下が含まれる:(1)ala、pro、gly、glu、asp、gln、asn、ser、thr;(2)cys、ser、tyr、thr;(3)val、ile、leu、met、ala、phe;(4)lys、arg、his;and(5)phe、tyr、trp、his。
【0155】
改変体は、非保存的変化も含み得るか、その代わりに含み得る。1つの好ましい実施形態では、改変体ポリペプチドは、約10、9、8、7、6、5、4、3、2アミノ酸未満、またはさらに1アミノ酸の置換、欠失、または付加が未変性の配列と異なる。改変体を、例えば、ポリペプチドの免疫原性、二次構造、酵素活性、および/またはハイドロパシーへの影響が最小のアミノ酸の欠失または付加によって改変することも(その代わりに行うことも)できる。
【0156】
一定の実施形態では、DSSHAFTLDELR(配列番号13)の改変体は、以下の表Bに示す他の生物由来のp97配列に基づき得る。ヒト配列と比較した改変体アミノ酸に下線を引いている。
【0160】
それ故、一定の実施形態では、p97ペプチドは、表B中の配列を含むか、この配列からなるか、本質的にこの配列からなる。特定の態様では、p97ペプチドは、DSSHAFTLDELR(配列番号13)ペプチドのC末端に短いα−ヘリックス(LDEL)を保持している。
【0161】
一定の実施形態では、ポリペプチド配列は、およそ、少なくともおよそ、またはおよそ以下の数値まで:5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、またはそれを超える連続アミノ酸長(その間の全ての整数が含まれる)であり、基準配列の全てまたは一部を含むことができる(例えば、配列表、表1〜7、表B、
図2〜6および9を参照のこと)。
【0162】
他の特定の実施形態では、ポリペプチド配列は、約またはわずか約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、またはそれを超える連続アミノ酸(その間の全ての範囲が含まれる)からなり、基準配列の全てまたは一部を含むことができる(例えば、配列表、表1〜7、表B、
図2〜6および9を参照のこと)。
【0163】
さらに他の特定の実施形態では、ポリペプチド配列は、約10〜1000、10〜900、10〜800、10〜700、10〜600、10〜500、10〜400、10〜300、10〜200、10〜100、10〜50、10〜40、10〜30、10〜20、20〜1000、20〜900、20〜800、20〜700、20〜600、20〜500、20〜400、20〜300、20〜200、20〜100、20〜50、20〜40、20〜30、50〜1000、50〜900、50〜800、50〜700、50〜600、50〜500、50〜400、50〜300、50〜200、50〜100、100〜1000、100〜900、100〜800、100〜700、100〜600、100〜500、100〜400、100〜300、100〜200、200〜1000、200〜900、200〜800、200〜700、200〜600、200〜500、200〜400、または200〜300の連続アミノ酸(その間の全ての範囲が含まれる)であり、基準配列の全てまたは一部を含む。一定の実施形態では、短縮ポリペプチドが基準ポリペプチドの結合特性および/または活性を保持する限り、任意の基準ポリペプチドのC末端領域またはN末端領域を、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、または800、またはそれを超えるアミノ酸、または約10〜50、20〜50、50〜100、100〜150、150〜200、200〜250、250〜300、300〜350、350〜400、400〜450、450〜500、500〜550、550〜600、600〜650、650〜700、700〜750、750〜800、またはそれを超えるアミノ酸(その間の全ての整数および範囲(例えば、101、102、103、104、105)が含まれる)を短縮することができる。典型的には、生物学的に活性なフラグメントは、由来する生物学的に活性な基準ポリペプチドの活性の約1%、約5%、約10%、約25%、または約50%も有する。
【0164】
一般に、改変体は、基準ポリペプチド配列に対して少なくとも約30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の類似性または配列同一性または配列相同性を示すであろう。さらに、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100、またはそれを超えるアミノ酸の付加(例えば、C末端付加、N末端付加、両方)、欠失、短縮、挿入、または置換によって未変性配列または親配列と異なるが、親または基準のポリペプチド配列の性質または活性を保持する配列が意図される。
【0165】
いくつかの実施形態では、改変体ポリペプチドは、基準配列と少なくとも1つであるが、50、40、30、20、15、10、8、6、5、4、3、または2アミノ酸残基未満が異なる。他の実施形態では、改変体ポリペプチドは、基準配列と少なくとも1%であるが、20%、15%、10%、または5%未満の残基が異なる。(この比較にアラインメントが必要である場合、配列を類似性が最大になるようにアラインメントしなければならない。欠失または挿入によって「除外された」配列(すなわち、ミスマッチ)を相違と見なす)
配列間の配列類似性および配列同一性(これらの用語を本明細書中で交換可能に使用する)の計算を以下のように行う。2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列の同一率を決定するために、配列を最適に比較されるようにアラインメントする(例えば、第1および第2のアミノ酸配列または核酸配列内の一方または両方にアラインメントを最適にするためのギャップを挿入することができ、比較のために非相同配列を無視することができる)。一定の実施形態では、比較のためにアラインメントした基準配列の長さは、基準配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、80%、90%、100%である。次いで、対応するアミノ酸の位置またはヌクレオチドの位置でアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列中の位置が第2の配列中の対応する位置と同一のアミノ酸残基またはヌクレオチドで占められる場合、分子はその位置で同一である。
【0166】
2配列間の同一率は、2配列の最適なアライメントのために挿入する必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮して、これらの配列によって共有される同一の位置の数の関数である。
【0167】
配列の比較および2配列間の同一率の決定を、数学アルゴリズムを使用して行うことができる。1つの好ましい実施形態では、2アミノ酸配列間の同一率を、GCGソフトウェアパッケージ内のGAPプログラム内に組み込まれたNeedleman and Wunsch(J.Mol.Biol.48:444−453,1970)アルゴリズムを使用し、Blossum62行列またはPAM250行列のいずれか、ならびにギャップの重み16、14、12、10、8、6、または4および長さの重み1、2、3、4、5、または6を使用して決定する。さらに別の好ましい実施形態では、2ヌクレオチド配列間の同一率を、GCGソフトウェアパッケージ内のGAPプログラムを使用し、NWSgapdna.CMP行列ならびにギャップの重み40、50、60、70、または80および長さの重み1、2、3、4、5、または6を使用して決定する。特に好ましいパラメータセット(および他で特定しない限り使用すべきセット)は、ギャップペナルティ12、ギャップ伸長ペナルティ4、およびフレームシフトギャップペナルティ5を使用したBlossum 62スコアリング行列である。
【0168】
2つのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列間の同一率を、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE.Meyers and W.Millerのアルゴリズム(Cabios.4:11−17,1989)を使用し、PAM120重み残基表、ギャップ長さペナルティ12、およびギャップペナルティ4を使用して決定することができる。
【0169】
本明細書中に記載の核酸配列およびタンパク質配列を、公的データベースを検索するための「問い合わせ配列」として使用して、例えば、他のファミリーメンバーまたは関連配列を同定することができる。Altschulら(1990,J.Mol.Biol,215:403−10)のNBLASTプログラムおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用してかかる検索を行うことができる。BLASTヌクレオチド検索を、NBLASTプログラム、スコア=100、ワードレングス=12を使用して行い、本発明の核酸分子と相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索を、XBLASTプログラム、スコア=50、ワードレングス=3を使用して行い、本発明のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較のためのギャップ挿入アラインメントを得るために、Altschulら(Nucleic Acids Res.25:3389−3402,1997)に記載のようにGapped BLASTを利用することができる。BLASTプログラムおよびGapped BLASTプログラムを利用する場合、各プログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメータを使用することができる。
【0170】
1つの実施形態では、上述の通り、ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドを、BLASTアラインメントツールを使用して評価することができる。局所アラインメントは単純に配列セグメント対からなり、各配列由来の1つを比較する。Smith−WatermanアルゴリズムまたはSellersアルゴリズムの修正により、伸長またはトリミングによってそのスコアを改善することができない全てのセグメント対(高スコアリングセグメント対(HSP)と呼ばれる)が見出されるであろう。BLASTアラインメントの結果は、偶然のみからBLASTスコアを予想することができる見込みを示すための統計的尺度を含む。
【0171】
生スコアSを各アラインメントした配列に関連するギャップ数および置換数から計算し、類似性スコアが高いほどアラインメントの有意性が高くなる。置換スコアは参照表から得られる(PAM、BLOSUMを参照のこと)。
【0172】
ギャップスコアを、典型的には、G(ギャップ開始ペナルティ)およびL(ギャップ伸長ペナルティ)の和として計算する。ギャップの長さnについて、ギャップコストはG+Lnであろう。ギャップコスト(GおよびL)の選択は経験によるが、通例ではGについては高値(10〜15)(例えば、11)およびLについては低値(1〜2)(例えば、1)を選択する。
【0173】
ビットスコアS’は生アラインメントスコアSに由来し、これは使用したスコアリングシステムの統計的特性が考慮されている。ビットスコアをスコアリングシステムに関して正規化し、したがって、このスコアを使用して異なる検索由来のアラインメントスコアを比較することができる。用語「ビットスコア」および「類似度スコア」を、交換可能に使用する。ビットスコアから、アラインメントの優良度が示され、このスコアが高いほどアラインメントが優良である。
【0174】
E値(すなわち期待値)は、類似スコアを有する配列がデータベース中に偶然に生じる見込みを示す。これは、データベース中に偶然起こると期待されるSと等しいかより良好なスコアを有する異なるアラインメント数の予想である。E値が小さいほどアラインメントは有意である。例えば、E値がe
−117のアラインメントは、類似のスコアを有する配列が単純に偶然に起こる可能性が極めて低いことを意味する。さらに、アミノ酸のランダム対をアラインメントするための期待スコアは負である必要があり、そうでなければ長いアラインメントはアラインメントしたセグメントが関連するかどうかとは無関係に高スコアを有する傾向があるであろう。さらに、BLASTアルゴリズムは、適切な置換行列、ヌクレオチド、またはアミノ酸を使用し、ギャップ挿入アラインメントについてはギャップ作製ペナルティおよびギャップ伸長ペナルティを使用する。例えば、BLASTアラインメントおよびポリペプチド配列の比較を、典型的には、BLOSUM62行列、ギャップ伸長ペナルティ11、およびギャップ伸長ペナルティ1を使用して行う。
【0175】
1つの実施形態では、配列類似度スコアを、BLOSUM62行列、ギャップ伸長ペナルティ11、およびギャップ伸長ペナルティ1を使用して行ったBLAST分析から報告する。
【0176】
特定の実施形態では、本明細書中に提供した配列同一性/類似度スコアは、以下のパラメータを使用したGAP Version 10(GCG,Accelrys,San Diego,Calif.)を使用して得た値をいう:GAP重み50および長さ重み3、およびnwsgapdna.cmpスコアリング行列を使用したヌクレオチド配列についての同一率および類似率;GAP重み8および長さ重み2、およびBLOSUM62スコアリング行列を使用したアミノ酸配列についての同一率および類似率(Henikoff and Henikoff,PNAS USA.89:10915−10919,1992)。GAPは、マッチ数を最大にし、且つギャップ数を最小にする2つの完全配列のアラインメントを見出すためにNeedleman and Wunschのアルゴリズム(J Mol Biol.48:443−453、1970)を使用する。
【0177】
1つの特定の実施形態では、改変体ポリペプチドは、基準ポリペプチド配列(例えば、配列表を参照のこと)と任意選択的にアラインメントして少なくとも約50、60、70、80、90、100、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、またはそれを超える(その間の全ての整数および範囲が含まれる)BLASTビットスコアまたは配列類似度スコアを生成することができるアミノ酸配列を含み、ここで、BLASTアラインメントにはBLOSUM62行列、ギャップ伸長ペナルティ11、およびギャップ伸長ペナルティ1を使用した。
【0178】
上述の通り、基準ポリペプチドを、種々の方法(アミノ酸の置換、欠失、短縮、付加、および挿入が含まれる)で変化させることができる。かかる操作方法は、一般に、当該分野で公知である。例えば、基準ポリペプチドのアミノ酸配列改変体を、DNAの操作によって調製することができる。変異誘発およびヌクレオチド配列の変更の方法は、当該分野で周知である。例えば、Kunkel(PNAS USA.82:488−492,1985);Kunkelら,(Methods in Enzymol.154:367−382,1987)、米国特許第4,873,192号、Watson,J.D.ら,(“Molecular Biology of the Gene,” Fourth Edition,Benjamin/Cummings,Menlo Park,Calif.,1987)、およびこれらの引用文献を参照のこと。目的のタンパク質の生物学的活性に影響を及ぼさない適切なアミノ酸置換に関するガイダンスを、Dayhoffら,(1978)Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,D.C.)のモデルで見出すことができる。
【0179】
かかる改変によって作製されたコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングする方法および選択された性質を有する遺伝子産物についてcDNAライブラリーをスクリーニングする方法は、当該分野で公知である。かかる方法を、基準ポリペプチドの組み合わせ変異誘発によって生成された遺伝子ライブラリーの迅速なスクリーニングに適合させることが可能である。一例として、反復アンサンブル変異誘発(REM)(ライブラリー中の機能的変異体の頻度を増大させる技術)をスクリーニングアッセイと組み合わせて使用してポリペプチド改変体を同定することができる(Arkin and Yourvan,PNAS USA 89:7811−7815,1992;Delgraveら,Protein Engineering.6:327−331,1993)。
【0180】
例示的な結合体化方法。p97ポリペプチド配列の目的の他の薬剤への結合体化またはカップリングを、標準的な化学的技術、生化学的技術、および/または分子技術を使用して行うことができる。実際に、利用可能な当該分野で認識されている方法論を使用して本開示を考慮したp97結合体の作製方法は明らかであろう。勿論、本発明のp97結合体の一次成分をカップリングした場合に使用した技術および得られた連結の化学的性質が結合体の各成分の所望の機能性または活性を実質的に妨害しないことが一般に好ましいであろう。
【0181】
使用した特定のカップリングの化学的性質は、生物学的に活性な薬剤(例えば、小分子、ポリペプチド)の構造、生物学的に活性な薬剤内に複数の官能基が存在する可能性、保護/脱保護工程の必要性、および薬剤の化学的安定性などに依存し、当業者はこの化学的性質を容易に決定するであろう。本発明のp97結合体の調製に有用な例示的なカップリングの化学的性質を、例えば、Wong(1991),“Chemistry of Protein Conjugation and Crosslinking”,CRC Press,Boca Raton,Fla.;およびBrinkley “A Brief Survey of Methods for Preparing Protein Conjugates with Dyes,Haptens,and Crosslinking Reagents,” in Bioconjug.Chem.,3:2013,1992に見出すことができる。好ましくは、結合体の結合能力および/または結合活性は、使用した結合体化技術の結果として、例えば、結合体化されていない薬剤または結合体化されていないp97ポリペプチドと比較して実質的に減少しない。
【0182】
一定の実施形態では、p97ポリペプチド配列を、目的の薬剤に直接または間接的にカップリングすることができる。p97ポリペプチド配列と目的の薬剤との間の直接反応は、それぞれが相互反応可能な置換基を保有する場合に可能である。例えば、一方に存在する求核性基(アミノ基またはスルフヒドリル基など)は、他方に存在するカルボニル含有基(無水物または酸ハライドなど)または良好な脱離基(例えば、ハライド)を含むアルキル基と反応することができる。
【0183】
あるいは、リンカー基(非ペプチドリンカーおよびペプチドリンカーが含まれる)を介してp97ポリペプチド配列および目的の薬剤を間接的にカップリングすることが望ましいかもしれない。リンカー基はまた、結合能力、ターゲティング能力、または他の機能性の妨害を回避するために目的の薬剤をp97ポリペプチド配列から遠ざけるためのスペーサーとして機能することができる。リンカー基はまた、薬剤上の置換基の化学反応性を増大させ、したがって、カップリング効率を増大させる働きをし得る。化学反応性の増大はまた、他の場合には増大しなければ不可能と考えられる薬剤または薬剤上の官能基の使用を容易にすることができる。放出可能または安定なリンカーを選択して、p97結合体および付着した目的の薬剤の薬物動態学的を変化せることもできる。例示的な連結基には、例えば、ジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定性基、光解離性基、ペプチダーゼ不安定基、およびエステラーゼ不安定基が含まれる。他の例示的な実施形態では、結合体は、米国特許第5,208,020号または欧州特許第0 425 235 B1号、およびChariら,Cancer Research.52:127−131,1992に開示の連結基などの連結基を含む。さらなる例示的なリンカーを以下に記載する。
【0184】
いくつかの実施形態では、1つを超えるp97ポリペプチド配列を薬剤にカップリングする(またはその逆)ことが望ましいかも知れない。例えば、一定の実施形態では、複数のp97ポリペプチド配列を1つの薬剤にカップリングするか、あるいは、1つ以上のp97ポリペプチドを複数の薬剤に結合体化する。p97ポリペプチド配列は、同一でも異なっていてもよい。特定の実施形態と無関係に、複数のp97ポリペプチド配列を含む結合体を、種々の方法で調製することができる。例えば、1つを超えるポリペプチドを薬剤に直接カップリングすることができるか、複数の付着部位を提供するリンカーを使用することができる。種々の公知のヘテロ二官能性架橋ストラテジーのうちのいずれかを、本発明の結合体の作製のために使用することができる。結合体化/架橋手順中に使用した材料の化学量論の調節によって多数のこれらの実施形態を行うことができると理解されるであろう。
【0185】
一定の例示的な実施形態では、スクシンイミジルエステル官能基を含む薬剤とアミノ基を含むp97ポリペプチドとの間の反応によりアミド連結が形成され、オキシカルボニルイミダゾール(oxycarbonylimidizaole)官能基を含む薬剤とアミノ基を含むP97ポリペプチドとの間の反応によりカルバマート連結が形成され、p−ニトロフェニルカルボナート官能基を含む薬剤とアミノ基を含むP97ポリペプチドとの間の反応によりカルバマート連結が形成され、トリクロロフェニルカルボナート官能基を含む薬剤とアミノ基を含むP97ポリペプチドとの間の反応によりカルバマート連結が形成され、チオエステル官能基を含む薬剤とN末端アミノ基を含むP97ポリペプチドとの間の反応によりアミド連結が形成され、プロピオンアルデヒド(proprionaldehyde)官能基を含む薬剤とアミノ基を含むP97ポリペプチドとの間の反応により第二級アミン連結が形成される。
【0186】
いくつかの例示的な実施形態では、ブチルアルデヒド官能基を含む薬剤とアミノ基を含むP97ポリペプチドとの間の反応により第二級アミン連結が形成され、アセタール官能基を含む薬剤とアミノ基を含むP97ポリペプチドとの間の反応により第二級アミン連結が形成され、ピペリドン官能基を含む薬剤とアミノ基を含むP97ポリペプチドとの間の反応により第二級アミン連結が形成され、メチルケトン官能基を含む薬剤とアミノ基を含むP97ポリペプチドとの間の反応により第二級アミン連結が形成され、トレシラート官能基を含む薬剤とアミノ基を含むP97ポリペプチドとの間の反応により第二級アミン連結が形成され、マレイミド官能基を含む薬剤とアミノ基を含むP97ポリペプチドとの間の反応により第二級アミン連結が形成され、アルデヒド官能基を含む薬剤とアミノ基を含むP97ポリペプチドとの間の反応により第二級アミン連結が形成され、ヒドラジン官能基を含む薬剤とカルボン酸基を含むP97ポリペプチドとの間の反応により第二級アミン連結が形成される。
【0187】
特定の例示的な実施形態では、マレイミド官能基を含む薬剤とチオール基を含むP97ポリペプチドとの間の反応によりチオエーテル連結を形成し、ビニルスルホン官能基を含む薬剤とチオール基を含むP97ポリペプチドとの間の反応によりチオエーテル連結を形成し、チオール官能基を含む薬剤とチオール基を含むP97ポリペプチドとの間の反応によりジスルフィド連結を形成し、オルソピリジルジスルフィド官能基を含む薬剤とチオール基を含むP97ポリペプチドとの間の反応によりジスルフィド連結を形成し、ヨードアセトアミド官能基を含む薬剤とチオール基を含むP97ポリペプチドとの間の反応によりチオエーテル連結を形成する。
【0188】
特定の実施形態では、アミン−スルフヒドリル架橋剤を、結合体の調製のために使用する。1つの好ましい実施形態では、例えば、架橋剤はスクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシラート(SMCC)(Thermo Scientific)であり、この架橋剤は、中程度の長さのシクロヘキサン安定化スペーサーアーム(8.3オングストローム)の反対側の末端にNHS−エステルおよびマレイミド反応基を含むスルフヒドリル架橋剤である。SMCCは、その後のp97ポリペプチド配列との反応のためのスルフヒドリル反応性のマレイミド活性化された薬剤(例えば、ポリペプチド、抗体)を作製するために使用することができる非切断性の膜透過性架橋剤である。NHSエステルは、pH7〜9で第一級アミンと反応して安定なアミド結合を形成する。マレイミドは、pH6.5〜7.5でスルフヒドリル基と反応して安定なチオエーテル結合を形成する。したがって、SMCCのアミン反応性NHSエステルが薬剤の第一級アミンと迅速に架橋し、次いで、得られたスルフヒドリル反応性マレイミド基がp97のシステイン残基との反応に利用されて目的の特定の結合体を得ることができる。
【0189】
一定の特定の実施形態では、p97ポリペプチド配列を、架橋を容易にするために(例えば、マレイミド活性化された薬剤への架橋を容易にするために)露呈したスルフヒドリル基を含むように改変する。より特定の実施形態では、p97ポリペプチド配列を、保護されたチオールスルフヒドリル基を付加するために第一級アミンを修飾する試薬で修飾する。さらにより特定の実施形態では、試薬N−スクシンイミジル−S−アセチルチオアセタート(SATA)(Thermo Scientific)を使用して、チオール化p
97ポリペプチドを生成する。
【0190】
他の特定の実施形態では、マレイミド活性化された薬剤を、適切な条件下でチオール化p97ポリペプチドと反応させて本発明の結合体を生成する。これらの反応物中でのSMCC、SATA、薬剤、およびp97ポリペプチドの比を操作することによって異なる化学量論、分子量、および性質を有する結合体を生成することが可能であると理解されるであろう。
【0191】
さらに他の例示的な実施形態では、結合体を、二官能性タンパク質カップリング剤(N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシラート、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(アジピミド酸ジメチルHCLなど)、活性エステル(スベリン酸ジスクシンイミジルなど)、アルデヒド(グルタルアルデヒドなど)、ビス−アジド化合物(ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス−ジアゾニウム誘導体(ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミンなど)、ジイソシアナート(トルエン2,6−ジイソシアナートなど)、およびビス−活性フッ素化合物(1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼンなど)など)を使用して作製する。特定のカップリング剤には、ジスルフィド連結を得るためのN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)(Carlssonら,Biochem.J.173:723−737[1978])およびN−スクシンイミジル−4−(2−ピリジルチオ)ペンタノアート(SPP)が含まれる。
【0192】
本明細書中で考察した特定の架橋ストラテジーは、本発明の結合体の生成で使用することができる適切な結合体化ストラテジーの多数の例のほんの一部である。種々の他の二官能性または多官能性の試薬(ホモ官能性およびヘテロ官能性の両方)(Pierce Chemical Co.,Rockford,ILのカタログ中に記載の試薬など)をリンカー基として使用することができることが当業者に明らかであろう。例えば、アミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、または酸化炭水化物残基によってカップリングすることができる。かかる方法論を記載した文献が多数存在する(例えば、Rodwellらの米国特許第4,671,958号)。
【0193】
特定の実施形態は、p97ポリペプチドと薬剤との間の結合体化を容易にするための1つ以上のアルデヒドタグを使用することができる(米国特許第8,097,701号および同第7,985,783号(参考として援用される)を参照のこと)。ここで、ホルミルグリシン生成酵素(FGE)の作用によるアルデヒドタグのスルファターゼモチーフでの酵素修飾により、ホルミルグリシン(FGly)残基が生成される。次いで、FGly残基のアルデヒド部分を、目的の部分のポリペプチドへの部位特異的付着のための化学的ハンドルとして利用することができる。いくつかの態様では、目的の部分は、小分子、ペプトイド、アプタマー、またはペプチド模倣物である。いくつかの態様では、目的の部分は、別のポリペプチド(抗体など)である。
【0194】
したがって、特定の実施形態は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれを超える異種スルファターゼモチーフを含むp97ポリペプチドまたはポリペプチド薬剤を含み、ここで、モチーフは、以下の構造:
X
1Z
1X
2Z
2X
3(配列番号19)
(式中、Z
1はシステインまたはセリンであり;Z
2はプロリン残基またはアラニン残基であり;X
1は存在しても不在でもよく、存在する場合、任意のアミノ酸であり、X
1は、異種スルファターゼモチーフがアルデヒドタグ化ポリペプチドのN末端に存在する場合に存在することが好ましく;X
2およびX
3は、それぞれ独立して、任意のアミノ酸である)を含む。
【0195】
上記モチーフを有するポリペプチドを、FGE酵素によって修飾してFGly残基を有するモチーフを生成することができ、上述の通り、次いで、このモチーフを例えば、リンカー部分を介した薬剤(第2のポリペプチドなど)の部位特異的付着のために使用することができる。かかる修飾を、例えば、FGE酵素を発現する哺乳動物細胞、酵母細胞、または細菌細胞中のスルファターゼモチーフ含有ポリペプチド(例えば、p97、抗体)の発現または単離FGE酵素での単離ポリペプチドのin vitro修飾によって行うことができる(Wuら,PNAS.106:3000−3005,2009;Rush and Bertozzi,J.Am Chem Soc.130:12240−1,2008;およびCarlsonら,J Biol Chem.283:20117−25,2008を参照のこと)。
【0196】
それ故、いくつかの実施形態は、ホルミルグリシン残基を有する1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれを超える異種スルファターゼモチーフを含むp97ポリペプチドまたはポリペプチド薬剤(例えば、抗体)を含み、ここで、モチーフは、以下の構造:
X
1(FGly)X
2Z
2X
3(配列番号20)
(式中、FGlyはホルミルグリシン残基であり;Z
2はプロリン残基またはアラニン残基であり;X
1は存在しても不在でもよく、存在する場合、任意のアミノ酸であり、X
1は、異種スルファターゼモチーフがアルデヒドタグ化ポリペプチドのN末端に存在する場合に存在することが好ましく;X
2およびX
3は、それぞれ独立して、任意のアミノ酸である)を含む。
【0197】
特定の実施形態では、X
1、X
2、およびX
3は、それぞれ独立して、脂肪族アミノ酸、硫黄含有アミノ酸、または極性の無電荷アミノ酸である。例えば、X
1は、L、M、V、S、またはTであり得;X
2および/またはX
3は、独立して、S、T、A、V、G、またはCであり得る。
【0198】
いくつかの実施形態では、異種スルファターゼモチーフは、(a)16アミノ酸残基長未満(約4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15残基長が含まれる)であり得るか、(b)ポリペプチドのN末端に位置し得るか、(c)ポリペプチドのC末端に位置し得るか、(d)ポリペプチド起源のアミノ酸配列の内部部位に位置し得るか、(e)ポリペプチドの末端ループ中に位置し得るか、(f)ポリペプチドの翻訳後修飾部位(例えば、グリコシル化部位)に位置し得るか、その任意の組み合わせであり得る。
【0199】
いくつかの実施形態は、(i)スルファターゼモチーフ(またはアルデヒドタグ)含有p97ポリペプチド、および(ii)薬剤(A)(アルデヒド反応基で官能化された小分子など)の結合体に関し、ここで、(i)および(ii)は、スルファターゼモチーフのFGly残基およびアルデヒド反応基を介して共有結合性に連結している。かかる結合体は、以下の一般的構造:
p97(FGly)−R
1−A
(式中、R
1は少なくとも1つのアルデヒド反応性連結であり;FGlyは異種スルファターゼモチーフ内のホルミルグリシン残基である)のうちの1つを有することができる。
【0200】
いくつかの実施形態は、(i)スルファターゼモチーフ(またはアルデヒドタグ)含有p97ポリペプチド、および(ii)アルデヒド反応基で官能化されたポリペプチド薬剤(pA)(逆も同じ)の結合体に関し、ここで、(i)および(ii)は、スルファターゼモチーフのFGly残基およびアルデヒド反応基を介して共有結合性に連結している。かかる結合体は、以下の一般的構造:
p97(FGly)−R
1−pAまたはp97−R
1−(FGly)pA
(式中、R
1は少なくとも1つのアルデヒド反応性連結であり;FGlyは異種スルファターゼモチーフ内のホルミルグリシン残基である)のうちの1つを有することができる。
【0201】
薬剤または非アルデヒドタグ含有ポリペプチド(例えば、抗体、p97ポリペプチド)を、1つ以上のアルデヒド反応基(アミノオキシ、ヒドラジド、およびチオセミカルバジドなど)で官能化し、次いで、少なくとも1つのFGly残基を介してアルデヒドタグ含有ポリペプチドに共有結合性に連結してアルデヒド反応性連結を形成することができる。アミノオキシ官能化薬剤(または非アルデヒドタグ含有ポリペプチド)の付着によりFGly残基と官能化薬剤(または非アルデヒドタグ含有ポリペプチド)との間にオキシム連結が作製され;ヒドラジド官能化薬剤(または非アルデヒドタグ含有ポリペプチド)の付着によりFGly残基と官能化薬剤(または非アルデヒドタグ含有ポリペプチド)との間にヒドラジン連結が作製され;チオセミカルバジド官能化薬剤(または非アルデヒドタグ含有ポリペプチド)の付着によりFGly残基と官能化薬剤(または非アルデヒドタグ含有ポリペプチド)との間にヒドラジンカルボチアミド連結が作製される。それ故、これらおよび関連する実施形態では、R
1は、シッフ塩基を含む連結(オキシム連結、ヒドラジン連結、またはヒドラジンカルボチアミド連結など)であり得る。
【0202】
一定の実施形態は、(i)スルファターゼモチーフ(またはアルデヒドタグ)含有p97ポリペプチドおよび(ii)スルファターゼモチーフ(またはアルデヒドタグ)含有ポリペプチド薬剤(A)の結合体を含み、ここで、(i)および(ii)は、各FGly残基を介して、任意選択的に二官能性のリンカー部分またはリンカー基を介して共有結合性に連結している。例えば、一定のp97結合体は、以下の構造:
p97(FGly)−R
1−L−R
2−(FGly)A
(式中、R
1およびR
2は同一または異なるアルデヒド反応性連結であり;Lはリンカー部分であり、p97(FGly)はアルデヒドタグ含有p97ポリペプチドであり、(FGly)Aはアルデヒドタグ含有薬剤(抗体または他のポリペプチドベースの薬剤など)である)を含むことができる。
【0203】
単なる例として、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの異種スルファターゼモチーフは、p97ポリペプチドのC末端およびポリペプチドベースの薬剤のN末端に存在し得る。他の実施形態では、少なくとも1つの異種スルファターゼモチーフは、p97ポリペプチドのN末端およびポリペプチドベースの薬剤のC末端に存在し得る。さらなる他の実施形態では、少なくとも1つの異種スルファターゼモチーフは、p97ポリペプチドのN末端およびポリペプチドベースの薬剤のN末端に存在し得る。さらなる実施形態では、少なくとも1つの異種スルファターゼモチーフは、p97ポリペプチドのC末端およびポリペプチドベースの薬剤のC末端に存在し得る。上述の通り、少なくとも1つの異種モチーフは、p97ポリペプチドおよび/またはポリペプチドベースの薬剤中の内部位置に存在し得る。当業者は、他の組み合わせが可能であると認識するであろう。
【0204】
R
1およびR
2のアルデヒド反応性連結を、(i)アルデヒドタグのホルミルグリシン(FGly)残基と(ii)前記アルデヒド反応基で官能化されたリンカー部分(例えば、2つのアルデヒド反応基(同一でも異なっていてもよい)を有する二官能化リンカー)との間の共有結合を形成する任意のアルデヒド反応基によって独立して形成することができる。アルデヒド反応基の例には、アミノオキシ基、ヒドラジド基、およびチオセミカルバジド基が含まれ、これらは、FGly残基を有するシッフ塩基含有連結(それぞれ、オキシム連結、ヒドラジン連結、およびヒドラジンカルボチアミド連結が含まれる)を形成するであろう。それ故、R
1およびR
2は、独立して、シッフ塩基を含む連結(オキシム連結、ヒドラジン連結、またはヒドラジンカルボチアミド連結など)であり得る。
【0205】
いくつかの実施形態では、アルデヒドタグ含有p97ポリペプチドおよびアルデヒドタグ含有薬剤を、多官能化リンカー(例えば、二官能化リンカー)を介して連結し(例えば、共有結合的に連結し)、後者を同一または異なるアルデヒド反応基で官能化する。これらおよび関連する実施形態では、アルデヒド反応基は、リンカーによりp97ポリペプチドと薬剤との間にその各FGly残基を介して共有結合性の架橋を形成可能である。リンカー部分には、1つ以上のアルデヒド反応基で官能化することができ、好ましくは二官能化または多官能化することができる任意の部分または化学的部分が含まれる。特定の例には、ペプチド、水溶性ポリマー、検出可能な実体、他の治療化合物(例えば、細胞傷害性化合物)、ビオチン/ストレプトアビジン部分、およびグリカンが含まれる(Hudakら,J Am Chem Soc.133:16127−35,2011を参照のこと)。グリカン(またはグリコシド)の具体例には、アミノオキシグリカン(グリコシルN−ペンテノイルヒドロキサマート中間体から構成される高次グリカンなど)が含まれる(前出)。例示的なリンカーを本明細書中に記載し、これらのリンカーを当該分野の日常的技術にしたがってアルデヒド反応基で官能化することができる(例えば、Carricoら,Nat Chem Biol.3:321−322,2007;および米国特許第8,097,701号および同第7,985,783号を参照のこと)。
【0206】
p97結合体を、種々の「クリック化学」技術(モジュール式であり、広範で収率が非常に高く、非クロマトグラフ法によって除去することができ、且つ立体特異的であり得るが必ずしもエナンチオ選択性ではない主に無害の副生成物を生成する反応が含まれる)によって調製することもできる(Kolbら,Angew Chem Int Ed Engl.40:2004−2021,2001を参照のこと)。特定の例には、アジドとアルキンのヒュスゲン1,3−双極子付加環化を使用する結合体化技術(「アジド−アルキン付加環化」反応とも呼ばれる)が含まれる(Heinら,Pharm Res.25:2216−2230,2008を参照のこと)。アジド−アルキン付加環化反応の非限定的な例には、銅触媒アジド−アルキン付加環化(CuAAC)反応およびルテニウム触媒アジド−アルキン付加環化(RuAAC)反応が含まれる。
【0207】
CuAACは、広範な温度で作用し、水性条件およびpH4〜12の範囲で影響を受けず、広範な官能基を許容する(Himoら,J Am Chem Soc.127:210−216,2005を参照のこと)。活性Cu(I)触媒を、例えば、還元剤としてアスコルビン酸ナトリウムを使用してCu(I)塩またはCu(II)塩から生成することができる。この反応によって1,4置換生成物が形成され、領域特異性となる(Heinら,前出を参照のこと)。
【0208】
RuAACは、アジドの末端アルキンへの付加環化を触媒することができるペンタメチルシクロペンタジエニルルテニウムクロリド[Cp
*RuCl]複合体を利用し、それにより、位置選択的に1,5二置換1,2,3−トリアゾールが得られる(Rasmussenら,Org.Lett.9:5337−5339,2007を参照のこと)。さらに、CuAACと対照的に、RuAACを内部アルキンと共に使用して、全置換1,2,3−トリアゾールを得ることもできる。
【0209】
したがって、一定の実施形態は、アジド側鎖またはアルキン側鎖を有する少なくとも1つの非天然アミノ酸(内部および末端(例えば、N末端、C末端)の非天然アミノ酸が含まれる)を含むp97ポリペプチドを含む。一定のこれらのp97ポリペプチドを、アジド側鎖またはアルキン側鎖を含む非天然アミノ酸のin vivoまたはin vitro(例えば、無細胞系)組込みによって形成することができる。例示的なin vivo技術には、例えば改変大腸菌を使用した細胞培養技術(Travis and Schu
ltz,The Journal of Biological Chemistry.285:11039−44,2010;およびDeiters and Schultz,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters.15:1521−1524,2005を参照のこと)が含まれ、例示的なin vitro技術には無細胞系(Bundy,Bioconjug Chem.21:255−63,2010を参照のこと)が含まれる。
【0210】
いくつかの実施形態では、アジド側鎖を有する少なくとも1つの非天然アミノ酸を含むp97ポリペプチドを、少なくとも1つのアルキン基を含む薬剤(またはリンカー)(アルキン側鎖を有する少なくとも1つの非天然アミノ酸を含むポリペプチド薬剤など)へのアジド−アルキン付加環化によって結合体化する。他の実施形態では、アルキン側鎖を有する少なくとも1つの非天然アミノ酸を含むp97ポリペプチドを、少なくとも1つのアジド基を含む薬剤(またはリンカー)(アジド側鎖を有する少なくとも1つの非天然アミノ酸を含むポリペプチド薬剤など)へのアジド−アルキン付加環化によって結合体化する。それ故、一定の実施形態は、1,2,3−トリアゾール連結を介して薬剤に共有結合性に連結したp97ポリペプチドを含む結合体を含む。
【0211】
特異的p97結合体を、以下のそれぞれの構造(I)または(II):
【0213】
(式中、Rはp97ポリペプチドであり、R
lは目的の薬剤(またはリンカー)であるか、Rは目的の薬剤(またはリンカー)であり、R
lはp97ポリペプチドである)を含めるための以下のCuAACベースの反応またはRuAACベースの反応によって形成することができる。
【0214】
一定の実施形態では、アジド側鎖を有する非天然アミノ酸および/またはアルキン側鎖を有する非天然アミノ酸は、末端アミノ酸(N末端、C末端)である。一定の実施形態では、1つ以上の非天然アミノ酸は内部非天然アミノ酸である。
【0215】
例えば、一定の実施形態は、アルキン基を含む薬剤に結合体化したアジド側鎖を有するN末端非天然アミノ酸を含むp97ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態は、アルキン基を含む薬剤に結合体化したアジド側鎖を有するC末端非天然アミノ酸を含むp97ポリペプチドを含む。特定の実施形態は、アジド側鎖を含む薬剤に結合体化したアルキン側鎖を有するN末端非天然アミノ酸を含むp97ポリペプチドを含む。さらなる実施形態は、アジド側鎖を含む薬剤に結合体化したアルキン側鎖を有するC末端非天然アミノ酸を含むp97ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態は、アルキン基を含む薬剤に結合体化したアジド側鎖を有する少なくとも1つの内部非天然アミノ酸を含むp97ポリペプチドを含む。さらなる実施形態は、アジド側鎖を含む薬剤に結合体化したアルキン側鎖を有する少なくとも1つの内部非天然アミノ酸を含むp97ポリペプチドを含む。
【0216】
特定の実施形態は、アルキン側鎖を有するN末端非天然アミノ酸を含むポリペプチド薬剤に結合体化したアジド側鎖を有するN末端非天然アミノ酸を含むp97ポリペプチドを含む。他の実施形態は、アルキン側鎖を有するC末端非天然アミノ酸を含むポリペプチド薬剤に結合体化したアジド側鎖を有するC末端非天然アミノ酸を含むp97ポリペプチドを含む。さらに他の実施形態は、アルキン側鎖を有するC末端非天然アミノ酸を含むポリペプチド薬剤に結合体化したアジド側鎖を有するN末端非天然アミノ酸を含むp97ポリペプチドを含む。さらなる実施形態は、アルキン側鎖を有するN末端非天然アミノ酸を含むポリペプチド薬剤に結合体化したアジド側鎖を有するC末端非天然アミノ酸を含むp97ポリペプチドを含む。
【0217】
他の実施形態は、アジド側鎖を有するN末端非天然アミノ酸を含むポリペプチド薬剤に結合体化したアルキン側鎖を有するN末端非天然アミノ酸を含むp97ポリペプチドを含む。なおさらなる実施形態は、アジド側鎖を有するC末端非天然アミノ酸を含むポリペプチド薬剤に結合体化したアルキン側鎖を有するC末端非天然アミノ酸を含むp97ポリペプチドを含む。さらなる実施形態は、アジド側鎖を有するC末端非天然アミノ酸を含むポリペプチド薬剤に結合体化したアルキン側鎖を有するN末端非天然アミノ酸を含むp97ポリペプチドを含む。なおさらなる実施形態は、アジド側鎖を有するN末端非天然アミノ酸を含むポリペプチド薬剤に結合体化したアルキン側鎖を有するC末端非天然アミノ酸を含むp97ポリペプチドを含む。
【0218】
(a)(i)アジド側鎖を有する少なくとも1つの非天然アミノ酸を含むp97ポリペプチドと少なくとも1つのアルキン基を含む薬剤(例えば、アルキン側鎖を有する非天然アミノ酸)との間;または(ii)アルキン側鎖を有する少なくとも1つの非天然アミノ酸を含むp97ポリペプチドと少なくとも1つのアジド基を含む薬剤(例えば、アジド側鎖を有する非天然アミノ酸)との間のアジド−アルキン付加環化反応を行う工程;および(b)反応物からp97結合体を単離し、それにより、p97結合体を生成する工程を含む、p97結合体の生成方法も含む。
【0219】
p97結合体が融合ポリペプチドである場合、融合ポリペプチドを、一般に、標準的な技術を使用して調製することができる。しかし、好ましくは、融合ポリペプチドを、本明細書中に記載され、且つ当該分野で公知の発現系での組換えポリペプチドとして発現する。本発明の融合ポリペプチドは、p97ポリペプチド配列の1つまたは複数のコピーを含むことができ、且つ目的のポリペプチドベースの薬剤(例えば、抗体その抗原結合フラグメント)の1つまたは複数のコピーを含むことができる(任意の所望の配置で存在する)。
【0220】
融合タンパク質について、p97ポリペプチド、ポリペプチド薬剤(例えば、抗体)、および任意選択的なペプチドリンカー成分をコードするDNA配列を個別にアセンブリし、次いで、適切な発現ベクターにライゲートすることができる。一方のポリペプチド成分をコードするDNA配列の3’末端を、ペプチドリンカーを使用するか使用しないで他方のポリペプチド成分をコードするDNA配列の5’末端に配列の読み枠がインフレームであるようにライゲートする。ライゲートしたDNA配列を、適切な転写調節エレメントまたは翻訳調節エレメントに作動可能に連結する。DNA発現を担う調節エレメントを、第1のポリペプチドをコードするDNA配列に対して5’方向のみで位置づける。同様に、翻訳終止シグナルおよび転写終止シグナルを終了させるのに必要な終止コドンは、ほとんどのC末端ポリペプチドをコードするDNA配列に対して3’の方向にのみ存在する。これにより、両成分ポリペプチドの生物学的活性を保持する単一の融合ポリペプチドに翻訳される。
【0221】
類似の技術(主に、プロモーター、終止コドン、および転写終止シグナルなどの調節エレメントの配置)を、非融合結合体の産生のための非融合タンパク質(例えば、p97ポリペプチド)およびポリペプチド薬剤(例えば、抗体剤)の組換え産生に適用することができる。
【0222】
本発明のポリヌクレオチドおよび融合ポリヌクレオチドは、p97ポリペプチド配列をコードする核酸の1つまたは複数のコピーを含むことができ、そして/またはポリペプチド薬剤をコードする核酸の1つまたは複数のコピーを含むことができる。
【0223】
いくつかの実施形態では、対象とされるp97ポリペプチド、ポリペプチド薬剤、および/またはp97−ポリペプチド融合物をコードする核酸を宿主細胞に直接移入し、細胞を、コードされたポリペプチドの発現を誘導するのに十分な条件下でインキュベートする。本開示のポリペプチド配列を、当業者に周知の標準的な技術を使用して本明細書中に提供したポリペプチド配列および核酸配列と組み合わせて調製することができる。
【0224】
したがって、一定の関連する実施形態によれば、本明細書中に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたは融合ポリヌクレオチドを含む組換え宿主細胞を提供する。宿主細胞中でのp97ポリペプチド、ポリペプチド薬剤、またはp97−ポリペプチド薬剤融合物の発現を、適切な条件下でのポリヌクレオチドを含む組換え宿主細胞の培養によって都合よく行うことができる。発現による産生後、ポリペプチドを、任意の適切な技術を使用して単離および/または精製し、次いで、必要に応じて使用することができる。
【0225】
種々の異なる宿主細胞中でのポリペプチドのクローニングおよび発現のための系は周知である。適切な宿主細胞には、細菌系、哺乳動物細胞系、酵母系、およびバキュロウイルス系が含まれる。当該分野で利用可能な異種ポリペプチド発現のための哺乳動物細胞株には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、HEK−293細胞、およびNSOマウス黒色腫細胞などが含まれる。一般的な好ましい細菌宿主は大腸菌である。大腸菌などの原核細胞中でのポリペプチドの発現は、当該分野で十分に確立されている。概説については、例えば、Pluckthun,A.Bio/Technology.9:545−551(1991)を参照のこと。培養における真核細胞中での発現もまた、ポリペプチドの組換え産生の選択肢として当業者が利用可能である(Ref,Curr.Opinion Biotech.4:573−576,1993;およびTrillら,Curr.Opinion Biotech.6:553−560,1995を参照のこと)。
【0226】
適切な調節配列(プロモーター配列、終結配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子、および必要に応じた他の配列が含まれる)を含む適切なベクターを選択するか構築することができる。ベクターは、必要に応じて、プラスミド、ウイルス(例えば、ファージ、すなわちファージミド)であり得る。さらなる詳細については、例えば、Molecular Cloning:a Laboratory Manual:2nd edition,Sambrookら,1989,Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照のこと。例えば、核酸構築物の調製における核酸の操作、変異誘発、配列決定、細胞へのDNAの移入および遺伝子発現、ならびにタンパク質分析のための多数の公知の技術およびプロトコールは、Current Protocols in Molecular Biology,Second Edition,Ausubelら編,John Wiley & Sons,1992またはその後の最新情報に詳述されている。
【0227】
用語「宿主細胞」を、1つ以上の本明細書中に記載のポリペプチドをコードする核酸配列が導入されているか導入することができ、選択された目的の遺伝子(任意の本明細書中に記載のポリペプチドをコードする遺伝子など)をさらに発現するか発現することができる細胞をいうために使用する。この用語は、選択した遺伝子が存在する限り、子孫が元の親と同一の形態学的性質または遺伝子構造であるかどうか無関係な親細胞の子孫を含む。宿主細胞を、一定の特徴、例えば、スルファターゼモチーフ内のシステイン残基またはセリン残基をホルミルグリシン(FGly)残基に変換するためのホルミルグリシン生成酵素(FGE)の発現、または非天然アミノ酸(結合体化を容易にするためのアジド側鎖、アルキン側鎖、または他の所望の側鎖を有する非天然アミノ酸が含まれる)をポリペプチドに組み込むことができるアミノアシルtRNAシンテターゼの発現について選択することができる。
【0228】
したがって、かかる核酸を宿主細胞に導入する工程を含む方法も意図される。核酸の導入は、任意の利用可能な技術を使用することができる。真核細胞について、適切な技術には、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン、エレクトロポレーション、リポソーム媒介トランスフェクション、およびレトロウイルスまたは他のウイルス(例えば、ワクシニア、または昆虫細胞用のバキュロウイルス)を使用した形質導入が含まれ得る。細菌細胞について、適切な技術には、塩化カルシウム形質転換、エレクトロポレーション、およびバクテリオファージを使用したトランスフェクションが含まれ得る。導入後、例えば、遺伝子発現条件下での宿主細胞の培養によって核酸から発現させるか発現を可能にすることができる。1つの実施形態では、核酸を、宿主細胞のゲノム(例えば、染色体)に取り込む。標準的な技術にしたがってゲノムを使用した組換えを促進する配列を含めることによって取り込みを促進することができる。
【0229】
本発明はまた、一定の実施形態では、特定のポリペプチド(本明細書中に記載のp97ポリペプチド、ポリペプチド薬剤、またはp97−ポリペプチド薬剤融合タンパク質など)を発現するために発現系中で本明細書中に記載の核酸構築物を使用する工程を含む方法を提供する。
【0230】
上述の通り、一定のp97結合体(融合タンパク質など)は、1つ以上のリンカー基(非ペプチドリンカー(例えば、非タンパク質リンカー)およびペプチドリンカーが含まれる)を使用することができる。かかるリンカーは安定なリンカーまたは放出可能なリンカーであり得る。
【0231】
例示的な非ペプチドの安定性連結には、スクシンイミド、プロピオン酸、カルボキシメチラート連結、エステル、カルバマート、アミド、アミン、カルバミド、イミン、脂肪族C−C結合、チオエーテル連結、チオカルバマート、およびチオカルバミドなどが含まれる。一般に、加水分解的に安定な連結は、生理学的条件下で約1〜2%から5%/日未満の加水分解率を示す連結である。
【0232】
例示的な非ペプチドの放出性連結には、カルボン酸エステル連結、リン酸エステル連結、無水物連結、アセタール連結、ケタール連結、アシルオキシアルキルエーテル連結、イミン連結、オルトエステル連結、チオエステル連結、チオールエステル連結、カルボナート連結、およびヒドラゾン連結が含まれる。加水分解的に不安定なまたは弱い連結のさらなる例示的な実施形態には、以下が含まれるが、これらに限定されない:−O
2C−(CH
2)
b−O−(式中、bは1〜5である)、−O−(CH
2)
b−CO
2−(CH
2)
c−(式中、bは1〜5であり、cは2〜5である)、−O−(CH
2)
b−CO
2−(CH
2)
c−O−(式中、bは1〜5であり、cは2〜5である)、−(CH
2)
b−OPO
3−(CH
2)
b’−(式中、bは1〜5であり、b’は1〜5である)、−C(O)−(NH−CHR−CO)
a−NH−CHR−(式中、aは2〜20であり、Rは、α−アミノ酸上に見いだされる置換基である)、−O−(CH
2)
b−CO
2−CHCH
2−CH
2−(式中、bは1〜5である)、−O−C
6H
4−CH=N−(CH
2)
b−O−(式中、bは1〜5である)、および−O−(CH
2)
b−CH
2−CH=N−(CH
2)
b−O−(式中、各bは、独立して、1〜5である)。
【0233】
放出可能なリンカーの他の例は、ベンジル脱離ベースのリンカー、トリアルキルロックベースのリンカー(またはトリアルキルロックラクトン化ベースのリンカー)、ビシンベースのリンカー、および酸不安定性リンカーであり得る。その内で、酸不安定性リンカーは、ジスルフィド結合、ヒドラゾン含有リンカー、およびチオプロピオナート含有リンカーであり得る。
【0234】
細胞への内在化中または内在化の際に放出可能なまたは切断可能なリンカーも含まれる。これらのリンカー基からの薬剤の細胞内放出機構には、ジスルフィド結合の還元による切断(例えば、Spitlerの米国特許第4,489,710号)、光解離性結合の照射による切断(例えば、Senterらの米国特許第4,625,014号)、誘導体化アミノ酸側鎖の加水分解による切断(例えば、Kohnらの米国特許第4,638,045号)、血清補体媒介加水分解による切断(例えば、Rodwellらの米国特許第4,671,958号)、および酸触媒加水分解による切断(例えば、Blattlerらの米国特許第4,569,789号)が含まれる。1つの実施形態では、酸不安定性リンカーを使用することができる(Cancer Research 52:127−131,1992;および米国特許第5,208,020号)。
【0235】
一定の実施形態では、「水溶性ポリマー」を、p97ポリペプチド配列の目的の薬剤へのカップリングのためのリンカーにおいて使用する。「水溶性ポリマー」は、水溶性であり、通常は実質的に非免疫原性であり、通常は原子分子量が約1,000ダルトンを超えるポリマーをいう。水溶性ポリマーを介した2つのポリペプチドの付着は、かかる修飾が血清半減期の増加(例えば、タンパク質分解安定性の増加および/または腎臓クリアランスの減少)によって治療指数を増加させることができるので、望ましい可能性がある。さらに、1つ以上のポリマーの付着により、タンパク質医薬品の免疫原性が減少し得る。水溶性ポリマーの特定の例には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、またはポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのコポリマーなどが含まれる。
【0236】
いくつかの実施形態では、水溶性ポリマーの有効流体学的分子量は、約10,000Da超、約20,000〜500,000Da超、約40,000Da〜300,000Da超、約50,000Da〜70,000Da超、通常は約60,000Da超である。「有効流体学的分子量」は、水ベースのサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)によって決定した場合のポリマー鎖の有効な水溶媒和サイズをいう。水溶性ポリマーがポリアルキレンオキシド反復単位(エチレンオキシド反復単位など)を有するポリマー鎖を含む場合、各鎖の原子分子量は、約200Daと約80,000Daとの間または約1,500Daと約42,000Daとの間であり得、2,000〜約20,000Daが特に興味深い。直鎖、分枝鎖、および末端荷電水溶性ポリマーも含まれる。
【0237】
アルデヒドタグ化ポリペプチド間のリンカーとして有用なポリマーは、広範な分子量およびポリマーサブユニットを有することができる。これらのサブユニットは、生物学的ポリマー、合成ポリマー、またはその組み合わせを含むことができる。かかる水溶性ポリマーの例には、以下が含まれる:デキストランおよびデキストラン誘導体(硫酸デキストラン、P−アミノ架橋デキストリン、およびカルボキシメチルデキストリンが含まれる)、セルロースおよびセルロース誘導体(メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースが含まれる)、デンプンおよびデキストリン、ならびにデンプンの誘導体および加水分解物(hydroylacte)、ポリアルキレングリコール(polyalklyene glycol)およびその誘導体(ポリエチレングリコール(PEG)、メトキシポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールホモポリマー、ポリプロピレングリコールホモポリマー、エチレングリコールのプロピレングリコールとのコポリマー(ここで、前記ホモポリマーおよびコポリマーは非置換であるか、1つの末端がアルキル基、ヘパリンおよびヘパリンのフラグメント、ポリビニルアルコールおよびポリビニルエチルエーテル、ポリビニルピロリドン、アスパルトアミド、およびポリオキシエチル化ポリオール、デキストランおよびデキストラン誘導体、デキストリンおよびデキストリン誘導体と置換されている)が含まれる)。具体的に記載した水溶性ポリマーの種々の誘導体も含まれると認識されるであろう。
【0238】
水溶性ポリマー、特に、ポリエチレングリコール「PEG」などのポリアルキレンオキシドベースのポリマーが当該分野で公知である(Poly(ethylene glycol)Chemistry:Biotechnical and Biomedical
Applications,J.M.Harris,Ed.,Plenum Press,New York,N.Y.(1992);およびPoly(ethylene glycol)Chemistry and Biological Applications,J.M.Harris and S.Zalipsky,Eds.,ACS(1997);ならびに国際特許出願:WO90/13540号、WO92/00748号、WO92/16555号、WO94/04193号、WO94/14758号、WO94/17039号、WO94/18247号、WO94/28937号、WO95/11924号、WO96/00080号、WO96/23794号、WO98/07713号、WO98/41562号、WO98/48837号、WO99/30727号、WO99/32134号、WO99/33483号、WO99/53951号、WO01/26692号、WO95/13312号、WO96/21469号、WO97/03106号、WO99/45964号、および米国特許第4,179,337号;同第5,075,046号;同第5,089,261号;同第5,100,992号;同第5,134,192号;同第5,166,309号;同第5,171,264号;同第5,213,891号;同第5,219,564号;同第5,275,838号;同第5,281,698号;同第5,298,643号;同第5,312,808号;同第5,321,095号;同第5,324,844号;同第5,349,001号;同第5,352,756号;同第5,405,877号;同第5,455,027号;同第5,446,090号;同第5,470,829号;同第5,478,805号;同第5,567,422号;同第5,605,976号;同第5,612,460号;同第5,614,549号;同第5,618,528号;同第5,672,662号;同第5,637,749号;同第5,643,575号;同第5,650,388号;同第5,681,567号;同第5,686,110号;同第5,730,990号;同第5,739,208号;同第5,756,593号;同第5,808,096号;同第5,824,778号;同第5,824,784号;同第5,840,900号;同第5,874,500号;同第5,880,131号;同第5,900,461号;同第5,902,588号;同第5,919,442号;同第5,919,455号;同第5,932,462号;同第5,965,119号;同第5,965,566号;同第5,985,263号;同第5,990,237号;同第6,011,042号;同第6,013,283号;同第6,077,939号;同第6,113,906号;同第6,127,355号;同第6,177,087号;同第6,180,095号;同第6,194,580号;同第6,214,966号(参考として援用される)を参照のこと)。
【0239】
例示的な目的のポリマーには、ポリアルキレンオキシド、ポリアミドアルキレンオキシド、またはその誘導体(式−−(CH
2−−CH
2−−O)−−のエチレンオキシド反復単位を含むポリアルキレンオキシドおよびポリアミドアルキレンオキシドが含まれる)を含むポリマーが含まれる。さらなる例示的な目的のポリマーには、分子量が約1,000ダルトンを超える式−−[C(O)−−X−−C(O)−−NH−−Y−−NH]
n−または−−[NH−−Y−−NH−−C(O)−−X−−C(O)]
n−−(式中、XおよびYは、同一でも異なっていてもよく、分枝鎖または直鎖であり得る2価のラジカルであり、nは2〜100、通常は2〜50の個別の整数であり、XおよびYのいずれかまたは両方が直鎖または分枝鎖であり得る生体適合性の実質的に非抗原性の水溶性反復単位を含む)のポリアミドが含まれる。
【0240】
さらなる例示的な水溶性反復単位は、式−−(CH
2−−CH
2−−O)−−または−−(CH
2−−CH
2−−O)−−のエチレンオキシドを含む。かかる水溶性反復単位数は有意に変化することができ、かかる単位の通常の数は2〜500、2〜400、2〜300、2〜200、2〜100、最も通常には2〜50である。例示的な実施形態は、XおよびYの一方または両方が以下から選択される水溶性反復単位である:−−((CH
2)
n1−−(CH
2−−CH
2−−O)
n2−−(CH
2)−−または−−((CH
2)
n1−−(O−−CH
2−−CH
2)
n2−−(CH
2)
n1−−)(式中、n1は1〜6、1〜5、1〜4、最も通常には1〜3であり、n2は、2〜50、2〜25、2〜15、2〜10、2〜8、最も通常には2〜5である)。さらなる例示的な実施形態は、いくつかあるバリエーションのうちで、Xが−−(CH
2−−CH
2)−−であり、Yが−−(CH
2−−(CH
2−−CH
2−−O)
3−−CH
2−−CH
2−−CH
2)−−−または−−(CH
2−−CH
2−−CH
2−−(O−−CH
2−−CH
2)
3−−CH
2)−−である水溶性反復単位である。
【0241】
一定の実施形態では、ペプチドリンカー配列を使用して、p97結合体の成分を分離またはカップリングすることができる。例えば、ポリペプチド−ポリペプチド結合体について、ペプチドリンカーは、確実に各ポリペプチドがその二次構造および三次構造に折りたたまれるのに十分な距離で成分を分離することができる。かかるペプチドリンカー配列を、本明細書中に記載されており、且つ当該分野で周知の標準的な技術を使用して、結合体(例えば、融合タンパク質)に組み込むことができる。適切なペプチドリンカー配列を、以下の要因に基いて選択することができる:(1)可動性の伸長高次構造を採用する能力;(2)第1および第2のポリペプチド上の機能的エピトープと相互作用することができる二次構造を採用できないこと;および(3)ポリペプチド機能性エピトープと反応し得る疎水性残基または荷電残基の欠如。リンカーとして有用に使用することができるアミノ酸配列には、Marateaら,Gene 40:39−46,1985;Murphyら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:8258−8262,1986;米国特許第4,935,233号、および米国特許第4,751,180号に開示のアミノ酸配列が含まれる。
【0242】
一定の例示的な実施形態では、ペプチドリンカーは、約1〜5アミノ酸、5〜10アミノ酸、5〜25アミノ酸、5〜50アミノ酸、10〜25アミノ酸、10〜50アミノ酸、10〜100アミノ酸、または任意のその間の範囲のアミノ酸である。他の例示的な実施形態では、ペプチドリンカーは、約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、またはそれを超えるアミノ酸長を含む。特定のリンカーは、約1〜200アミノ酸、1〜150アミノ酸、1〜100アミノ酸、1〜90アミノ酸、1〜80アミノ酸、1〜70アミノ酸、1〜60アミノ酸、1〜50アミノ酸、1〜40アミノ酸、1〜30アミノ酸、1〜20アミノ酸、1〜10アミノ酸、1〜5アミノ酸、1〜4アミノ酸、1〜3アミノ酸の全アミノ酸長、または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、60、70、80、90、100、もしくはそれを超えるアミノ酸を有することができる。
【0243】
ペプチドリンカーは、本明細書中の他の場所に記載されており、且つ当該分野で公知の任意の1つ以上の天然に存在するアミノ酸、天然に存在しないアミノ酸、アミノ酸アナログ、および/またはアミノ酸模倣物を使用することができる。リンカーとして有用に使用することができる一定のアミノ酸配列には、Marateaら,Gene 40:39−46,1985;Murphyら,PNAS USA.83:8258−8262,1986;米国特許第4,935,233号、および米国特許第4,751,180号に開示のアミノ酸配列が含まれる。特定のペプチドリンカー配列は、Gly残基、Ser残基、および/またはAsn残基を含む。他の中性に近いアミノ酸(ThrおよびAlaなど)も、必要に応じてペプチドリンカー配列中で使用することができる。
【0244】
一定の例示的なリンカーには、以下のGly、Ser、および/またはAsn含有リンカーが含まれる:[G]
x、[S]
x、[N]
x、[GS]
x、[GGS]
x、[GSS]
x、[GSGS]
x(配列番号21)、[GGSG]
x(配列番号22)、[GGGS]
x(配列番号23)、[GGGGS]
x(配列番号24)、[GN]
x、[GGN]
x、[GNN]
x、[GNGN]
x(配列番号25)、[GGNG]
x(配列番号26)、[GGGN]
x(配列番号27)、[GGGGN]
x(配列番号28)リンカー(式中、xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20、またはそれを超える数である)。これらのアミノ酸および関連するアミノ酸の他の組み合わせが当業者に明らかであろう。
【0245】
特定の実施形態では、リンカー配列は、3つのグリシン残基を含むGly3リンカー配列を含む。特定の実施形態では、可動性リンカーを、DNA結合部位およびペプチド自体の両方をモデリングすることができるコンピュータプログラム(Desjarlais & Berg,PNAS.90:2256−2260,1993;およびPNAS.91:11099−11103,1994)を使用するかファージディスプレイ法によって合理的にデザインすることができる。
【0246】
ペプチドリンカーは、生理学的に安定であり得るか、放出可能なリンカー(生理学的分解性リンカーまたは酵素分解性リンカー(例えば、タンパク質分解性リンカー)など)が含まれ得る。一定の実施形態では、1つ以上の放出可能なリンカーにより、結合体の半減期がより短くなり、且つクリアランスがより迅速になり得る。これらおよび関連する実施形態を使用して、例えば、血流中のp97結合体の溶解性および血液循環寿命を向上させることができる一方で、薬剤を血流中に(またはBBBを通過して)送達させることもでき、リンカーの分解後、p97配列を実質的に含まない。これらの態様は、ポリペプチドまたは他の薬剤が、p97配列に持続的に結合体化した時に活性の減少が認められる場合に特に有用である。本明細書中に提供したリンカーの使用により、かかる抗体は、結合体化形態である場合にその治療活性を維持することができる。これらおよび他の方法では、p97結合体の性質を、長期間にわたって抗体の生物活性および循環半減期のバランスをとるようにより有効に調整することができる。
【0247】
本発明の特定の実施形態での使用に適切な酵素分解性連結には、以下が含まれるが、これらに限定されない:セリンプロテアーゼ(トロンビン、キモトリプシン、トリプシン、エラスターゼ、カリクレイン、またはサブチリシン(substilisin)など)によって切断されるアミノ酸配列。トロンビン切断性アミノ酸配列の実例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:−Gly−Arg−Gly−Asp−(配列番号29)、−Gly−Gly−Arg−、−Gly−Arg−Gly−Asp−Asn−Pro−(配列番号30)、−Gly−Arg−Gly−Asp−Ser−(配列番号31)、−Gly−Arg−Gly−Asp−Ser−Pro−Lys−(配列番号32)、−Gly−Pro−Arg−、−Val−Pro−Arg−、および−Phe−Val−Arg−。エラスターゼ切断性アミノ酸配列の実例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:−Ala−Ala−Ala−、−Ala−Ala−Pro−Val−(配列番号33)、−Ala−Ala−Pro−Leu−(配列番号34)、−Ala−Ala−Pro−Phe−(配列番号35)、−Ala−Ala−Pro−Ala−(配列番号36)、および−Ala−Tyr−Leu−Val−(配列番号37)。
【0248】
本発明の特定の実施形態での使用に適切な酵素分解性連結には、マトリックスメタロプロテイナーゼ(コラゲナーゼ、ストロメライシン、およびゼラチナーゼなど)によって切断することができるアミノ酸配列も含まれる。マトリックスメタロプロテイナーゼ切断性アミノ酸配列の実例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:−Gly−Pro−Y−Gly−Pro−Z−(配列番号38)、−Gly−Pro−、Leu−Gly−Pro−Z−(配列番号39)、−Gly−Pro−Ile−Gly−Pro−Z−(配列番号40)、および−Ala−Pro−Gly−Leu−Z−(配列番号41)(式中、YおよびZはアミノ酸である)。コラゲナーゼ切断性アミノ酸配列の実例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:−Pro−Leu−Gly−Pro−D−Arg−Z−(配列番号42)、−Pro−Leu−Gly−Leu−Leu−Gly−Z−(配列番号43)、−Pro−Gln−Gly−Ile−Ala−Gly−Trp−(配列番号44)、−Pro−Leu−Gly−Cys(Me)−His−(配列番号45)、−Pro−Leu−Gly−Leu−Tyr−Ala−(配列番号46)、−Pro−Leu−Ala−Leu−Trp−Ala−Arg−(配列番号47)、および−Pro−Leu−Ala−Tyr−Trp−Ala−Arg−(配列番号48)(式中、Zはアミノ酸である)。ストロメライシン切断性アミノ酸配列の実例は、−Pro−Tyr−Ala−Tyr−Tyr−Met−Arg−(配列番号49)であり、ゼラチナーゼ切断性アミノ酸配列の例は、−Pro−Leu−Gly−Met−Tyr−Ser−Arg−(配列番号50)である。
【0249】
本発明の特定の実施形態での使用に適切な酵素分解性連結には、アンギオテンシン変換酵素によって切断することができるアミノ酸配列(例えば、−Asp−Lys−Pro−、−Gly−Asp−Lys−Pro−(配列番号51)および−Gly−Ser−Asp−Lys−Pro−(配列番号52)など)も含まれる。
【0250】
本発明の特定の実施形態での使用に適切な酵素分解性連結には、カテプシンBによって切断することができるアミノ酸配列(例えば、−Val−Cit−、−Ala−Leu−Ala−Leu−(配列番号53)、−Gly−Phe−Leu−Gly−(配列番号54)、および−Phe−Lys−など)も含まれる。
【0251】
しかし、一定の実施形態では、1つ以上の非ペプチドリンカーまたはペプチドリンカーのいずれかは任意である。例えば、第1および第2のポリペプチドが機能的ドメインを分離し、且つ立体障害を防止するために使用することができる非必須N末端および/またはC末端アミノ酸領域を有する融合タンパク質ではリンカー配列は必要ないかもしれない。
【0252】
本明細書中に記載のp97ポリペプチドおよびp97ポリペプチド結合体の機能的性質を、当業者に公知の種々の方法(例えば、親和性/結合アッセイ(例えば、表面プラズモン共鳴、競合阻害アッセイ)、細胞毒性アッセイ、細胞生存度アッセイ、細胞増殖または分化アッセイ、in vitroモデルまたはin vivoモデルを使用する癌細胞および/または腫瘍増殖阻害が含まれる)を使用して評価することができる。例えば、本明細書中に記載の結合体を、受容体内在化に及ぼす影響、in vitroおよびin vivoでの有効性など(血液脳関門を通過する輸送速度が含まれる)について試験することができる。かかるアッセイを、当業者に公知の十分に確立されているプロトコール(例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Greene Publ.Assoc.Inc.& John Wiley & Sons,Inc.,NY,NY);Current Protocols in Immunology(Edited by:John E.Coligan,Ada M.Kruisbeek,David H.Margulies,Ethan M.Shevach,Warren Strober 2001 John Wiley & Sons,NY,NY)を参照のこと)または市販のキットを使用して行うことができる。
【0253】
使用方法および薬学的組成物
本発明の一定の実施形態は、本明細書中に記載のp97ポリペプチドおよびp97結合体の組成物の使用方法に関する。かかる方法の例には、例えば、一定の器官/組織(神経系の器官/組織など)の医用画像のためのp97結合体の使用を含む処置方法および診断方法が含まれる。具体的な実施形態は、中枢神経系(CNS)の障害もしくは容態またはCNS成分を有する障害もしくは容態の診断および/または処置方法を含む。
【0254】
したがって、一定の実施形態は、本明細書中に記載のp97結合体を含む組成物を投与する工程を含む、処置を必要とする被験体の処置方法を含む。本明細書中に記載のp97結合体を含む組成物を投与する工程を含む、被験体の神経系(例えば、中枢神経系組織)への薬剤の送達方法も含まれる。一定のこれらおよび関連する実施形態では、本方法により、例えば、薬剤のみを含む組成物による送達と比較して、中枢神経系組織への薬剤の送達速度が増大する。
【0255】
いくつかの例では、被験体は、CNSの疾患、障害、または容態を有し、ここで、末梢組織と比較して血液脳関門を介したCNS組織への治療薬の送達の増大は、例えば、末梢組織への薬剤の曝露に関連する副作用の低下によって処置を改善させることができる。例示的なCNSの疾患、障害、および容態には、原発性および転移性のCNS癌、リソソーム蓄積症、神経変性疾患(アルツハイマー病など)、および自己免疫疾患(多発性硬化症など)が含まれる種々の癌が含まれる。
【0256】
したがって、一定の実施形態は、中枢神経系(CNS)、任意選択的には脳の癌の処置方法であって、ここで、処置を必要とする被験体は、かかる癌を有するか、かかる容態の発症リスクがある、方法に関する。いくつかの実施形態では、癌は、CNSの原発性癌(脳の原発性癌など)である。例えば、方法は、神経膠腫、髄膜腫、下垂体腺腫、前庭神経鞘腫、原発性CNSリンパ腫、または未分化神経外胚葉性腫瘍(髄芽腫)の処置方法であり得る。いくつかの実施形態では、神経膠腫は、星状細胞腫、乏突起膠腫、上衣腫、または脈絡叢乳頭腫である。一定の実施形態では、原発性のCNSまたは脳の癌は、多形性膠芽細胞腫(巨細胞膠芽腫(giant cell gliobastoma)または神経膠肉腫など)である。
【0257】
特定の実施形態では、癌は、CNSの転移性癌(例えば、脳に転移した癌)である。かかる癌の例には、乳癌、肺癌、尿生殖路癌、胃腸管癌(例えば、結腸直腸癌、膵癌)、骨肉腫、黒色腫、頭頸部癌、前立腺癌(例えば、前立腺腺癌)、およびリンパ腫が含まれるが、これらに限定されない。したがって、一定の実施形態は、治療有効量の本明細書中に開示の結合体の患者への(例えば、投与後に、すなわち、当業者に公知の適切なコントロールと比較して統計的に有意な様式で癌の転移を阻害、防止、または遅延させる量での)投与によって癌の転移を処置、阻害、または防止する方法を含む。特定の実施形態では、被験体は、当該分野で公知の癌の中で特に中枢神経系に依然として転移していない癌(1つ以上の上記の癌が含まれる)を有する。
【0258】
特定の実施形態では、癌(細胞)は、1つ以上のHer2/neu、B7H3、CD20、Her1/EGF受容体、VEGF受容体、PDGF受容体、CD30、CD52、CD33、CTLA−4、またはテネイシンを発現または過剰発現する。
【0259】
他の癌(乳癌、前立腺癌、消化管癌、肺癌、卵巣癌、睾丸癌、頭頸部癌、胃癌、膀胱癌、膵臓癌、肝臓癌、腎臓癌、扁平上皮癌、黒色腫、非黒色腫癌、甲状腺癌、子宮内膜癌、上皮腫瘍、骨の癌、または造血性癌が含まれる)の処置も含まれる。それ故、一定の実施形態では、p97結合体によって処置される癌細胞は、癌抗原(ヒトHer2/neu、Her1/EGF受容体(EGFR)、Her3、A33抗原、B7H3、CD5、CD19、CD20、CD22、CD23(IgE受容体)、C242抗原、5T4、IL−6、IL−13、血管内皮成長因子VEGF(例えば、VEGF−A)VEGFR−1、VEGFR−2、CD30、CD33、CD37、CD40、CD44、CD51、CD52、CD56、CD74、CD80、CD152、CD200、CD221、CCR4、HLA−DR、CTLA−4、NPC−1C、テネイシン、ビメンチン、インスリン様成長因子1受容体(IGF−1R)、α−フェトプロテイン、インスリン様成長因子1(IGF−1)、炭酸脱水酵素9(CA−IX)、癌胎児性抗原(CEA)、インテグリンα
vβ
3、インテグリンα
5β
1、葉酸受容体1、膜貫通糖タンパク質NMB、線維芽細胞活性化タンパク質α(FAP)、糖タンパク質75、TAG−72、MUC1、MUC16(またはCA−125)、ホスファチジルセリン、前立腺特異的膜抗原(PMSA)、NR−LU−13抗原、TRAIL−R1、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー10b(TNFRSF10BまたはTRAIL−R2)、SLAMファミリーメンバー7(SLAMF7)、EGP40汎癌腫抗原、B細胞活性化因子(BAFF)、血小板由来成長因子受容体、糖タンパク質EpCAM(17−1A)、プログラム死−1、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)、再生肝ホスファターゼ3(PRL−3)、前立腺酸性ホスファターゼ、ルイス−Y抗原、GD2(神経外胚葉起源の腫瘍上に発現するジシアロガングリオシド)、グリピカン−3(GPC3)、および/またはメソテリンなど)を過剰発現するか、これらに関連する。
【0260】
癌(CNSの癌が含まれる)処置のためのp97結合体の使用を、他の治療方法と組み合わせることができる。例えば、p97結合体を含む組成物を、他の治療的介入(対症ケア、照射療法、手術、移植、免疫療法、ホルモン療法、光力学療法、抗生物質治療、またはその任意の組み合わせが含まれる)の前、間、または後に被験体に施すことができる。対症ケアには、脳浮腫、頭痛、認知障害、および嘔吐を軽減するためのコルチコステロイドの投与ならびに痙攣を軽減するための抗痙攣薬の投与が含まれる。照射療法には、伝統的な手術とさらに組み合わせることができる全脳照射、分割照射療法、および放射線手術(定位手術的照射など)が含まれる。
【0261】
特定の併用療法では、p97−抗体結合体の抗体部分はセツキシマブを含み、p97−セツキシマブ結合体を、放射線療法と組み合わせて頭頸部の局所的または領域的に進行した扁平上皮癌を有する被験体の処置のために使用する。他の態様では、p97−セツキシマブ結合体を、5−フルオロウラシル(5−FU)を使用した白金ベースの治療と組み合わせて頭頸部の再発性の局所領域的疾患または転移性扁平上皮癌を有する被験体の処置のために使用する。いくつかの態様では、p97−セツキシマブ結合体を、EGFR発現結腸直腸癌を有し、且つイリノテカンベースの化学療法に抵抗性を示す被験体の処置のためにイリノテカンと組わせて使用する。
【0262】
いくつかの例では、被験体は、リソソーム蓄積症を有するか、これを有するリスクが有る。したがって、一定の方法は、処置を必要とする被験体におけるリソソーム蓄積症、任意選択的に中枢神経系に関連するリソソーム蓄積症の処置に関する。例示的なリソソーム蓄積症には、アスパルチルグルコサミン尿症、コレステロールエステル蓄積症、ウォルマン病、シスチン蓄積症、ダノン病、ファブリー病、ファーバー脂肪肉芽腫症、ファーバー病、フコース蓄積症、ガラクトシアリドーシスタイプI/II、ゴーシェ病タイプI/II/III、ゴーシェ病、グロボイド細胞白質ジストロフィ(globoid cell leucodystrophy)、クラッベ病、糖原貯蔵障害II、ポンぺ病、GM1−ガングリオシドーシスタイプI/II/III、GM2−ガングリオシドーシスタイプI、テイ・サックス病、GM2−ガングリオシドーシスタイプII、サンドホフ病、GM2−ガングリオシドーシス、α−マンノシドーシスタイプI/II、β−マンノシドーシス、異染性白質ジストロフィ(metachromatic leucodystrophy)、ムコリピドーシスタイプI、シアリドーシスタイプI/IIムコリピドーシスタイプII/III I−細胞疾患、ムコリピドーシスタイプIIIC偽性ハーラーポリジストロフィ、ムコ多糖体沈着症タイプI、ムコ多糖体沈着症タイプII、ハンター症候群、ムコ多糖体沈着症タイプIIIA、サンフィリッポ症候群、ムコ多糖体沈着症タイプIIIB、ムコ多糖体沈着症タイプIIIC、ムコ多糖体沈着症タイプIIID、ムコ多糖体沈着症タイプIVA、モルキオ症候群、ムコ多糖体沈着症タイプIVBモルキオ症候群、ムコ多糖体沈着症タイプVI、ムコ多糖体沈着症タイプVII、スライ症候群、ムコ多糖体沈着症タイプIX、多発性スルファターゼ欠損症、神経セロイドリポフスチノーシス、CLN1バッテン病、ニーマン・ピック病タイプNB、ニーマン・ピック病、ニーマン・ピック病タイプC1、ニーマン・ピック病タイプC2、濃化異骨症、シンドラー病タイプI/II、シンドラー病、およびシアル酸蓄積症が含まれる。これらおよび関連する実施形態では、p97ポリペプチドを、本明細書中に記載のように、リソソーム蓄積症に関連する1つ以上のポリペプチドに結合体化することができる。
【0263】
一定の例では、被験体は、任意選択的にCNSの自己免疫障害および/または神経変性障害を有するか、有するリスクがある。それ故、処置を必要とする被験体における中枢神経系(CNS)の変性障害または自己免疫障害の処置方法も含まれる。例えば、特定の実施形態では、CNSの変性障害または自己免疫障害は、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、または多発性硬化症(MS)である。それ故、一定の実施形態は、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、またはMSを有する被験体にp97結合体を投与する工程を含む。特定の実施形態では、p97ポリペプチドを、アルツハイマー病についてはアミロイド−β(例えば、Aβ
(1−42))、ハンチントン病についてはハンチンチン、パーキンソン病についてはα−シヌクレイン、またはMSについてはα4インテグリン、CD25、もしくはIL−23に特異的に結合する抗体または他の薬剤に結合体化する。いくつかの実施形態では、p97ポリペプチドを、MS処置のためにインターフェロン−βポリペプチドに結合体化する。特定の実施形態では、p97ポリペプチドを、MS処置のためにダクリズマブに結合体化する。
【0264】
処置を必要とする被験体における疼痛の処置方法も含まれる。例には、急性疼痛、慢性疼痛、および神経因性疼痛(その組み合わせが含まれる)が含まれる。いくつかの態様では、疼痛は中枢作用の構成要素(中心性疼痛症候群(CPS)など)を有し、ここで、疼痛は、CNS(脳、脳幹、および/または脊髄が含まれる)の損傷または機能障害に関連する。特定の実施形態では、p97ポリペプチドを、NGFまたはTrkAに特異的に結合する抗体または他の薬剤に結合体化する。特定の実施形態では、p97ポリペプチドを、疼痛の処置、任意選択的に、膝または臀部の骨関節炎、慢性腰痛、骨の癌の疼痛、または間質性膀胱炎の処置のためのタネズマブに結合体化する。
【0265】
処置を必要とする被験体における炎症または炎症状態の処置方法も含む。「炎症」は、一般に、有害な刺激(病原体、損傷細胞(例えば、創傷)、および刺激物質など)に対する組織の生物学的応答をいう。用語「炎症応答」は、いくつかの本明細書中に記載され、且つ当該分野で公知の機構の中で特に、炎症が生じ、そして調節される特定の機構(例示にすぎないが、免疫細胞の活性化または移動、サイトカイン産生、血管拡張(キニン遊離が含まれる)、繊維素溶解、および凝血が含まれる)をいう。理想的には、炎症は、罹患組織の傷害性の刺激を除去し、治癒過程を惹起するための身体の防御的試みである。炎症の非存在下では、創傷および感染は決して治癒せず、組織の進行性の破壊が生命を脅かす状況に陥るであろう。他方では、過剰な炎症または慢性炎症は、種々の疾患(いくつかの本明細書中に記載され、且つ当該分野で公知の疾患の中で特に、枯草熱、アテローム性動脈硬化症、および関節リウマチなど)に関連し得る。
【0266】
本発明のp97結合体は、急性炎症、慢性炎症、またはその両方を調整することができる。被験体のニーズに応じて、一定の実施形態は急性炎症または炎症応答の軽減に関し、一定の実施形態は慢性炎症また慢性炎症応答の軽減に関する。
【0267】
急性炎症は、恐らく有害な刺激に対する身体の最初の応答に関し、血液から損傷組織への血漿および白血球の移動の増加を含む。急性炎症は、短期間の過程であり、典型的には、数分または数時間以内に開始され、傷害性刺激が除去された際に終了する。急性炎症を、任意の1つ以上の発赤、発熱、腫脹、疼痛、および機能喪失によって特徴づけることができる。発赤および発熱は、主に深部体温での炎症部位への血流の増加に起因し、腫脹は流動物の蓄積に原因し、疼痛は典型的には神経終末を刺激する化学物質の放出に起因し、機能喪失は複数の原因を有する。
【0268】
急性炎症応答は、主に、局所免疫細胞(常在マクロファージ、樹状細胞、組織球、クッパー細胞(Kuppfer cells)、およびマスト細胞など)によって開始される。感染、熱傷、または他の傷害の発症時、これらの細胞は活性化され、炎症の臨床徴候を担う炎症メディエーター(血管作用性アミンおよびエイコサノイドなど)を放出する。血管拡張およびそれによる血流量の増加により、発赤および発熱を引き起こす。血管透過性の増加により、血漿タンパク質および流動物が組織内に滲出および漏出し、それにより腫脹を引き起こす。ブランジキニンなどのメディエーターの一定の放出により、疼痛に対する感受性が増大し、血管が変化して好中球などの白血球が遊走または血管外遊出され、典型的には、局所免疫細胞による走化性勾配に沿って遊走する。
【0269】
急性炎症応答はまた、予め形成された血漿タンパク質調整物質からなり、炎症応答を開始および伝播するように並行して作用する1つ以上の無細胞の生化学的カスケード系を含む。これらの系には、主に細菌によって活性化される補体系ならびに主に一定の感染、熱傷、または他の外傷によって引き起こされる組織損傷型などの壊死によって活性化される凝血系および繊維素溶解系が含まれる。それ故、p97結合体を使用して、急性炎症、または任意の1つ以上の個別の急性炎症応答を調整することができる。
【0270】
慢性炎症(延長および遅延された炎症応答)は、炎症部位に存在し、しばしば同時またはほぼ同時の破壊および炎症過程からの組織の治癒を誘導する細胞型の進行性の変化によって特徴づけられる。細胞レベルでは、慢性炎症応答は、種々の免疫細胞(単球、マクロファージ、リンパ球、形質細胞、および線維芽細胞など)を含み、主に顆粒球によって媒介される急性炎症と対照的に、慢性炎症は主に単核球(単球およびリンパ球など)によって媒介される。慢性炎症はまた、種々の炎症メディエーター(IFN−γおよび他のサイトカイン、成長因子、反応性酸素種、および加水分解性酵素など)を含む。慢性炎症は何ヶ月または何年も持続し、望ましくない組織破壊および線維症を引き起こし得る。
【0271】
慢性炎症の臨床徴候は、疾病の持続時間、炎症性病変、原因、および解剖学的罹患領域に依存する(例えば、Kumarら,Robbins Basic Pathology−8
th Ed.,2009 Elsevier,London;Miller,LM,Pathology Lecture Notes,Atlantic Veterinary College,Charlottetown,PEI,Canadaを参照のこと)。慢性炎症は、種々の病的状態または疾患(例えば、いくつかの本明細書中に記載され、且つ当該分野で公知のもの中で特に、アレルギー、アルツハイマー病、貧血、大動脈弁狭窄症、関節炎(関節リウマチおよび骨関節炎など)、癌、鬱血性心不全、線維筋痛、線維症、心臓発作、腎臓不全、狼瘡、膵炎、卒中、手術合併症、炎症性肺疾患、炎症性腸疾患、アテローム性動脈硬化症、および乾癬が含まれる)に関連する。それ故、p97結合体を使用して、慢性炎症を処置または管理するか、任意の1つ以上の個別の慢性炎症応答を調整するか、任意の1つ以上の慢性炎症に関連する疾患または容態を処置することができる。
【0272】
一定の実施形態では、p97結合体は、炎症に関与する種々の細胞の活性化、炎症性分子分泌(例えば、サイトカインまたはキニンの分泌)、増殖、活性、遊走、または接着の調整などによって細胞レベルで炎症応答を調整することができる。かかる細胞の例には、免疫細胞および血管細胞が含まれる。免疫細胞には、例えば、顆粒球(好中球、好酸球、および好塩基球など)、マクロファージ/単球、リンパ球(B細胞、キラーT細胞(すなわち、CD8+T細胞)、ヘルパーT細胞(すなわち、CD4+T細胞(T
h1細胞およびT
h2細胞が含まれる))、ナチュラルキラー細胞、γδT細胞、樹状細胞、および肥満細胞など)が含まれる。血管細胞の例には、平滑筋細胞、内皮細胞、および線維芽細胞が含まれる。1つ以上の免疫細胞または血管細胞に関連する炎症状態(好中球媒介性炎症状態、マクロファージ媒介性炎症状態、およびリンパ球媒介性炎症状態が含まれる)の調整方法も含まれる。
【0273】
一定の実施形態では、p97結合体は、炎症性分子(血漿由来炎症性分子および細胞由来炎症性分子が含まれる)のレベルまたは活性を調整することができる。炎症促進性分子および抗炎症性分子が含まれる。血漿由来炎症性分子の例には、任意の1つ以上の補体系、キニン系、凝血系、および繊維素溶解系のタンパク質または分子が含まれるが、これらに限定されない。補体系メンバーの例には、約6分子のC1q、2分子のC1r、および2分子のC1sを含む分子複合体として血清中に存在するC1、C2(aおよびb)、C3(aおよびB)、C4(aおよびb)、C5、ならびにC5a、C5b、C6、C7、C8、およびC9の膜侵襲複合体が含まれる。キニン系の例には、ブランジキニン、カリジン、カリクレイン(kallidreins)、カルボキシペプチダーゼ、アンギオテンシン変換酵素、および中性エンドペプチダーゼが含まれる。
【0274】
細胞由来炎症性分子の例には、リソソーム顆粒内に含まれる酵素、血管作用性アミン、エイコサノイド、サイトカイン、急性期タンパク質、および可溶性ガス(一酸化窒素など)が含まれるが、これらに限定されない。血管作用性アミンは、少なくとも1つのアミノ基を含み、血管を標的にしてその透過性を変化させて血管拡張させる。血管作用性アミンの例には、ヒスタミンおよびセロトニンが含まれる。エイコサノイドは、20炭素必須脂肪酸の酸化によって作製されたシグナル伝達分子をいい、プロスタグランジン、プロスタサイクリン、トロンボキサン、およびロイコトリエンが含まれる。
【0275】
p97結合体はまた、急性期タンパク質のレベルまたは活性を調整することもできる。急性期タンパク質の例には、C反応性タンパク質、血清アミロイドA、血清アミロイドP、およびバソプレシンが含まれる。一定の例では、急性期タンパク質の発現は、一定範囲の望ましくない全身作用(アミロイド症、発熱、血圧上昇、発汗低下、倦怠、無食欲、および傾眠が含まれる)を引き起こし得る。したがって、p97結合体は、急性期タンパク質のレベルもしくは活性、その全身作用、またはその両方を調整することができる。
【0276】
一定の実施形態では、p97結合体は、局所炎症、全身炎症、またはその両方を軽減する。一定の実施形態では、p97結合体は、局所炎症または局所炎症応答を軽減または維持(すなわち、さらなる増大を防止)することができる。一定の実施形態では、p97結合体は、全身炎症または全身炎症応答を軽減または維持(すなわち、さらなる増大を防止)することができる。
【0277】
一定の実施形態では、炎症または炎症応答の調整は、1つ以上の組織または器官と関連し得る。かかる組織または器官の非限定的な例には、皮膚(例えば、真皮、表皮、皮下の層)、毛嚢、神経系(例えば、脳、脊髄、末梢神経、髄膜(硬膜、クモ膜、および軟膜が含まれる))、聴覚系または平衡器官(例えば、内耳、中耳、外耳)、呼吸器系(例えば、鼻、気管、肺)、胃食道組織(gastroesophogeal tissue)、胃腸系(例えば、口腔、食道、胃、小腸、大腸、直腸)、脈管系(例えば、心臓、血管、および動脈)、肝臓、胆嚢、リンパ系/免疫系(例えば、リンパ節、リンパ濾胞、脾臓、胸腺、骨髄)、泌尿生殖系(例えば、腎臓、尿管、膀胱、尿道、子宮頸部、ファロピウス管、卵巣、子宮、外陰、前立腺、尿道球腺、精巣上体(epidiymis)、前立腺、精嚢、精巣)、骨格筋系(例えば、骨格筋、平滑筋、骨、軟骨、腱、靭帯)、脂肪組織、乳房、および内分泌系(例えば、視床下部、下垂体、甲状腺、膵臓、副腎)が含まれる。したがって、p97結合体を使用して、任意のこれらの組織または器官に関連する炎症を調整し、それによって、これらの組織または器官の炎症に関連する容態または疾患を処置することができる。
【0278】
特定の実施形態では、炎症状態は、神経系または中枢神経系の構成要素(脳、脊髄、および/または髄膜の炎症が含まれる)を有する。特定の実施形態では、CNSの炎症状態は、髄膜炎(例えば、細菌性、ウイルス性)、脳炎(例えば、感染または急性播種性脳脊髄炎などの自己免疫性炎症によって引き起こされる)、サルコイドーシス、新形成に関連する非転移性疾患である。神経系またはCNSに関連する炎症状態の特定の例には、髄膜炎(すなわち、脳および脊髄を覆う保護膜の炎症)、脊髄炎、脳脊髄炎(encaphaloymyelitis)(例えば、筋痛性脳脊髄炎、急性散在性脳脊髄炎、播種性脳脊髄炎または多発性硬化症、自己免疫性脳脊髄炎)、くも膜炎(すなわち、くも膜(中枢神経系の神経を取り囲んで保護する膜の1つ)の炎症)、肉芽腫、薬物誘導性炎症、または髄膜炎、神経変性疾患(アルツハイマー病、卒中、HIV−認知症など)、脳炎(ウイルス性脳炎および細菌性脳炎など)、寄生虫感染、炎症性脱髄性障害、および自己免疫障害(CNSのCD8+T細胞媒介性自己免疫疾患など)が含まれるが、これらに限定されない。さらなる例には、パーキンソン病、重症筋無力症、運動ニューロパシー、ギラン・バレー症候群、自己免疫性ニューロパシー、ランバート・イートン筋無力症候群、腫瘍随伴性神経学的疾患、腫瘍随伴性小脳萎縮、非腫瘍随伴性スティッフマン症候群、進行性小脳萎縮、ラスムッセン脳炎、筋萎縮性側索硬化症、シデナム舞踏病、ジルドラトゥレット症候群、自己免疫性多腺性内分泌症、異常免疫ニューロパシー、後天性神経性筋強直症、多発性関節拘縮、視神経炎、全身強直症候群、卒中、外傷性脳損傷(TBI)、脊柱狭窄症、急性脊髄損傷、および脊髄圧迫が含まれる。
【0279】
上述の通り、神経系またはCNSの感染に関連する炎症も含まれる。神経系の炎症に関連する細菌感染の具体例には、連鎖球菌感染(B群連鎖球菌(例えば、サブタイプIII)および肺炎レンサ球菌(例えば、セロタイプ6、9、14、18、および23)など)、大腸菌(例えば、K1抗原保有)、リステリア・モノサイトゲネス(例えば、セロタイプIVb)、ナイセリア感染(Neisseria meningitidis(髄膜炎菌)など)、ブドウ球菌感染、ヘモフィルス感染(Haemophilus influenzaeタイプBなど)、クレブシエラ(Klebsiella)、および結核菌が含まれるが、これらに限定されない。髄膜隙に侵入する可能性のある鼻腔中または大脳シャントまたは関連するデバイス(例えば、心室外ドレーン、オマヤレザバー)を装着したヒトにおいて細菌がもたらす主に頭蓋に対する外傷に関連するブドウ球菌およびシュードモナスならびに他のグラム陰性桿菌による感染も含まれる。神経系の炎症に関連するウイルス感染の具体例には、エンテロウイルス、単純ヘルペスウイルスタイプ1および2、ヒトTリンパ球向性ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス(水疱および帯状疱疹)、ムンプスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびリンパ球脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)が含まれるが、これらに限定されない。髄膜炎はまた、スピロヘータ(Treponema pallidum(梅毒)およびBorrelia burgdorferi(ライム病)など)、寄生虫(マラリア(例えば、大脳マラリア)など)、真菌(Cryptococcus neoformansなど)、ならびにアメーバ(ameoba)(Naegleria fowleriなど)による感染に起因し得る。
【0280】
髄膜炎または神経系炎症の他の形態もまた、髄膜への癌の拡大(悪性髄膜炎)、一定の薬物(非ステロイド性抗炎症薬、抗生物質、および静脈内免疫グロブリンなど)、サルコイドーシス(または神経サルコイドーシス)、結合組織障害(全身性エリテマトーデスなど)、および一定の脈管炎の形態(血管壁の炎症状態)(ベーチェット病など)に関連し得る。類表皮嚢胞および類皮嚢胞は、クモ膜下腔内への刺激物の放出によって髄膜炎を生じ得る。したがって、p97結合体を使用して、任意の1つ以上のこれらの容態を処置または管理することができる。
【0281】
上述の通り、一定の被験体は、他の心毒性薬(すなわち、その結合体化されていない形態で心毒性を示す薬剤(p97に結合体化していない薬剤))を使用した治療を受ける予定であるか、治療中であるか、治療を受けていた。かかる被験体は、薬剤のみの投与と比較してp97−薬剤結合体の投与から恩恵を受け得る。これは、p97がそのBBB輸送特性が異なると考えられる機構によって他の心毒性薬に対して心保護作用を発揮することができることが理由の一部であるからである。それ故、かかる被験体を、種々の病状(本明細書中に記載のCNSの疾患および末梢の非CNS組織に関連する疾患が含まれる)のためにp97−心毒性薬結合体で処置することができる。
【0282】
例示的な心毒性薬は、本明細書中の他の場所に記載されており、周知のin vivo診断技術およびin vitroスクリーニング技術にしたがって同定することができる。Bovelliら,2010,supra;Inoueら,AATEX 14,Special Issue,457−462,2007;およびDorrら,Cancer Research.48:5222−5227,1988を参照のこと。
【0283】
例えば、心毒性の疑いのある薬剤を使用した治療を受ける被験体を、LV収縮機能障害および拡張機能障害、心臓弁膜症、心包炎および心内膜液滲出、ならびに頸動脈病変を評価するための画像化技術によってモニタリングすることができる。LV短縮率およびLVEFは、例えば化学療法中の心機能評価のためのLV収縮機能の最も一般的な指標である。また、ドプラ誘導拡張期指標は、治療を受けた患者におけるLV機能障害の初期徴候を示し、その結果、僧帽弁拡張期血流パターン、初期ピーク流速度対心房ピーク流(E/A)比、E波の減速時間、および等容性弛緩期の評価は、収縮機能障害が起こる前の弛緩期のLV機能の変化の検出に有用であり得る。パルス組織ドプラを標準的なドプラ心エコー試験中に行うことができ、これは、心筋拡張期弛緩および収縮期機能(E’波、A’波、およびS波の速度)に関する定量的情報を得るのに信頼できる。LV側方僧帽弁輪の組織ドプラは、予後の役割が認識されており、僧帽弁流入のPWドプラと組み合わせて、LV充満圧の程度に関する正確な情報が得られる。LV心筋機能の初期の変化を、複数のLV部位のパルス組織ドプラによって同定し、この変化は心毒性の関連する決定要因であり得る。
【0284】
特定の実施形態では、心毒性薬は化学療法薬であり、被験体は癌を有する。癌の具体例には、乳癌、前立腺癌、消化管癌、肺癌、卵巣癌、睾丸癌、頭頸部癌、胃癌、膀胱癌、膵臓癌、肝臓癌、腎臓癌、扁平上皮癌、CNSまたは脳の癌(本明細書中に記載)、黒色腫、非黒色腫癌、甲状腺癌、子宮内膜癌、上皮腫瘍、骨の癌、および造血性癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0285】
特定の実施形態では、被験体は、Her2/neu発現癌(乳癌、卵巣癌、胃癌、侵襲性子宮癌、または転移性癌(転移性CNS癌など)など)を有し、p97ポリペプチドをトラスツズマブに結合体化する。かかる患者は、特にCNS癌についてp97とトラスツズマブとの組み合わせに起因する治療相乗作用からだけでなく、p97の潜在的な心保護作用に起因するトラスツズマブの心毒性の低下からも恩恵を受け得る。
【0286】
本明細書中に記載の1つ以上の疾患または容態を有する被験体の同定方法は、当該分野で公知である。
【0287】
被験体の器官または組織の構成要素を画像化する方法であって、(a)ヒトp97(メラノトランスフェリン)ポリペプチドまたはその改変体を含む組成物を被験体に投与する工程であって、p97ポリペプチドが検出可能な実体に結合体化されている、工程と、(b)被験体、器官、または組織中の検出可能な実体を視覚化する工程とを含む、方法も含まれる。
【0288】
特定の実施形態では、器官または組織の構成要素は、中枢神経系(例えば、脳、脳幹、脊髄)を含む。特定の実施形態では、器官または組織の構成要素は、脳またはその一部(例えば、脳の実質)を含む。
【0289】
種々の方法を使用して、被験体、器官、または組織中の検出可能な実体を視覚化することができる。例示的な非侵襲性の方法は、X線撮影法(透視検査および射影X線写真など)、CTスキャンまたはCATスキャン(コンピュータ断層撮影法(CT)またはコンピュータ体軸断層撮影法(CAT))(X線CTスキャン、陽電子放出断層撮影(PET)、または単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)のいずれかを使用する)、および一定のタイプの磁気共鳴画像法(MRI)(特に、造影剤を利用する方法)(その組み合わせが含まれる)が含まれる。
【0290】
単なる例として、陽電子放出造影剤または放射性同位体(
18Fなど)を使用してPETを行うことができ、γ線放射造影剤または放射性同位体(
201TI、
99mTC、
123I、および
67Gaなど)を使用してSPECTを行うことができ、造影剤または放射性同位体(
3H、
13C、
19F、
17O、
23Na、
31P、および
129Xeなど)およびGd(ガドリニウム(gadolidinium);キレート化有機Gd(III)錯体)を使用してMRIを行うことができる。任意の1つ以上のこれらの例示的造影剤または放射性同位体を、画像化のためにp97ポリペプチドに結合体化するか、そうでなければp97ポリペプチド中に組込み、被験体に投与することができる。例えば、p97ポリペプチドを、1つ以上のこれらの放射性同位体で直接標識することができるか、1つ以上のこれらの放射性同位体造影剤または本明細書中に記載の任意の他の造影剤を含む分子(例えば、小分子)に結合体化することができる。
【0291】
in vivoでの使用(例えば、ヒト疾患の処置、医用画像、または試験)のために、本明細書中に記載の結合体を、一般に、投与前に薬学的組成物に組み込む。薬学的組成物は、生理学的に許容され得るキャリアまたは賦形剤と組み合わせた1つ以上の本明細書中に記載のp97ポリペプチドまたは結合体を含む。
【0292】
薬学的組成物を調製するために、有効量または所望の量の1つ以上のp97ポリペプチドまたは結合体を、特定の投与様式に適切であることが当業者に公知の任意の薬学的キャリアまたは賦形剤と混合する。薬学的キャリアは、液体、半液体、または固体であり得る。非経口、皮内、皮下、または局所への適用のために使用される溶液または懸濁液には、例えば、滅菌希釈剤(水など)、生理食塩水(例えば、リン酸緩衝生理食塩水;PBS)、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗菌薬(ベンジルアルコールおよびメチルパラベンなど);抗酸化剤(アスコルビン酸および亜硫酸水素ナトリウムなど)およびキレート剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など);緩衝液(酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、およびリン酸緩衝液など)が含まれ得る。静脈内投与する場合、適切なキャリアには、生理的食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、ならびに増粘剤および溶解補助剤(グルコース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびその混合物など)を含む溶液が含まれる。
【0293】
本明細書中に記載のポリペプチドおよび結合体を、純粋な形態または適切な薬学的組成物の形態で、類似の用途の薬剤の許容された任意の投与様式によって投与することができる。薬学的組成物を、ポリペプチドまたは結合体または結合体含有組成物を生理学的に許容され得るキャリア、希釈剤、または賦形剤と組み合わせることによって調製することができ、これを固体、半固体、液体、または気体の調製物(錠剤、カプセル、散剤、顆粒、軟膏、溶液、坐剤、注射液、吸入剤、ゲル、ミクロスフィア、およびエアロゾルなど)に処方することができる。さらに、他の薬学的に有効な成分(本明細書中の他の場所に記載の他の抗癌剤が含まれる)および/または適切な賦形剤(塩、緩衝液、および安定剤など)は、組成物内に存在し得るが、必須ではない。
【0294】
種々の異なる経路(経口、非経口、鼻、静脈内、皮内、皮下、または局所が含まれる)によって投与することができる。好ましい投与様式は、処置または防止される容態の性質に依存する。
【0295】
キャリアは、例えば、使用される投薬量および濃度で曝露される細胞または哺乳動物に無毒の薬学的に許容され得るキャリア、賦形剤、または安定剤が含まれ得る。しばしば、生理学的に許容され得るキャリアは、pH緩衝化水溶液である。生理学的に許容され得るキャリアの例には、リン酸、クエン酸、および他の有機酸などの緩衝液;抗酸化剤(アスコルビン酸が含まれる);低分子量(約10未満の残基)ポリペプチド;タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなど);親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど);アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリジンなど);モノサッカリド、ジサッカリド、および他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンが含まれる);キレート剤(EDTAなど);糖アルコール(マンニトールまたはソルビトールなど);塩形成対イオン(ナトリウムなど);および/または非イオン性界面活性剤(ポリソルベート20(TWEEN(商標))ポリエチレングリコール(PEG)、およびポロキサマー(PLURONICS(商標))など)が含まれる。
【0296】
一定の態様では、p97ポリペプチド配列および薬剤を、各々か、個別にか、または依存の結合体としてか、粒子(例えば、ナノ粒子、ビーズ、脂質処方物、脂質粒子、またはリポソーム(例えば、免疫リポソーム))に結合するか、粒子内にカプセル化する。例えば、特定の実施形態では、p97ポリペプチド配列を粒子表面に結合させ、目的の薬剤を粒子表面に結合させ、そして/または粒子内にカプセル化する。いくつかのこれらおよび関連する実施形態では、p97ポリペプチドおよび薬剤を、粒子自体(例えば、ナノ粒子、リポソーム)のみを介して相互に共有結合性にまたは作動可能に連結させ、且つ任意の別の方法では相互に共有結合性に結合させない(すなわち、これらを同一粒子に個別に結合させる)。他の実施形態では、p97ポリペプチドおよび薬剤を、最初に本明細書中に記載のように(例えば、リンカー分子を介して)相互に共有結合性または非共有結合性に結合体化し、次いで、粒子(例えば、免疫リポソーム、ナノ粒子)に結合させるか粒子内にカプセル化する。特定の実施形態では、粒子はリポソームであり、組成物は、1つ以上のp97ポリペプチド、1つ以上の目的の薬剤、およびリポソームを形成するための脂質混合物(例えば、リン脂質(界面活性を有する混合脂質鎖))を含む。いくつかの態様では、リポソーム構造の形成によって共有結合性の結合体化を必要とすることなくp97ポリペプチドおよび薬剤が作動可能に連結されるように、p97ポリペプチドおよび薬剤を脂質/リポソーム混合物と個別に混合する。他の態様では、p97ポリペプチドおよび薬剤を、本明細書中に記載のように最初に共有結合性または非共有結合性に相互に結合体化し、次いで、脂質と混合してリポソームを形成する。p97ポリペプチド、薬剤またはp97−薬剤結合体を、例えば、コアセルベーション技術または界面重合(例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン−マイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタクリラート)マイクロカプセル)によって調製したマイクロカプセル中、コロイド薬物送達系中(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、およびナノカプセル)またはマクロエマルジョン中に捕捉することができる。かかる技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th edition,Oslo,A.,Ed.,(1980)に開示されている。粒子またはリポソームは、他の治療薬または診断薬(細胞毒性薬など)をさらに含むことができる。
【0297】
正確な投薬量および処置の持続時間は、処置される疾患の関数であり、公知の試験プロトコールを使用するか、当該分野で公知のモデル系において組成物を試験し、それから外挿することによって経験的に決定することができる。比較臨床試験も行うことができる。投薬量はまた、緩和すべき容態の重症度によって異なり得る。薬学的組成物を、一般に、望ましくない副作用を最小にしながら治療的に有用な効果が発揮されるように処方および投与する。組成物を1回投与することができるか、間隔をあけて投与すべきいくつかのより小さな用量に分割することができる。任意の特定の被験体のために、特定の投薬レジメンを各必要性に応じて長期間にわたって調整することができる。
【0298】
したがって、これらおよび関連する薬学的組成物の典型的な投与経路には、経口、局所、経皮、吸入、非経口、舌下、口内、直腸、膣、および鼻腔内が含まれるが、これらに限定されない。用語「非経口」には、本明細書中で使用する場合、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内への注射または注入技術が含まれる。本発明の一定の実施形態の薬学的組成物を、患者への組成物の投与の際に組成物中に含まれる有効成分が生物学的に利用可能なように処方する。被験体または患者に投与される組成物は、例えば、錠剤が単回投薬単位であり得る場合に1つ以上の投薬単位の形態を取ることができ、エアロゾル形態の本明細書中に記載の結合体の容器は複数の投薬単位を保持することができる。かかる投薬形態の実際の調製方法は公知であり、当業者に明らかであろう。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition(Philadelphia College of Pharmacy and Science,2000)を参照のこと。投与すべき組成物は、任意の事象において、目的の疾患または容態の処置のための治療有効量の本明細書中に記載のp97ポリペプチド、薬剤または結合体を含むであろう。
【0299】
薬学的組成物は、固体または液体であり得る。1つの実施形態では、組成物が、例えば、錠剤または散剤の形態であるように、キャリアは粒子である。組成物が、例えば、経口用油、注射液、またはエアロゾル(例えば、吸入投与に有用)である場合、キャリアは液体であり得る。経口投与を意図する場合、薬学的組成物は固体または液体のいずれかが好ましく、本明細書中で固体または液体と見なされる範囲内に半固体、半液体、懸濁液、およびゲル形態が含まれる。
【0300】
経口投与のための固体組成物として、薬学的組成物を、散剤、顆粒、圧縮錠、丸薬、カプセル、チューインガム、またはウェハなどに処方することができる。かかる固体組成物は、典型的には、1つ以上の不活性希釈剤または食用キャリアを含むであろう。さらに、1つ以上の以下が存在することができる:結合剤(カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、微結晶性セルロース、トラガカントゴム、またはゼラチンなど);賦形剤(デンプン、ラクトース、またはデキストリンなど)、崩壊剤(アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、プリモゲル、およびトウモロコシデンプンなど);潤滑剤(ステアリン酸マグネシウムまたはステロテックスなど);流動促進剤(コロイド状二酸化ケイ素など);甘味剤(スクロースまたはサッカリンなど);香味物質(ペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジフレーバーなど);および着色剤。薬学的組成物がカプセル形態(例えば、ゼラチンカプセル)である場合、薬学的組成物は、上記タイプの材料に加えて、液体キャリア(ポリエチレングリコールまたは油など)を含むことができる。
【0301】
薬学的組成物は、液体、例えば、エリキシル、シロップ、溶液、乳濁液、または懸濁液の形態であり得る。液体は、2つの例を挙げると、経口投与用または注射による送達用であり得る。経口投与と意図する場合、好ましい組成物は、本発明の化合物に加えて、1つ以上の甘味剤、防腐剤、色素/着色剤、および香味増強剤を含む。注射による投与を意図する組成物では、1つ以上の界面活性剤、防腐剤、湿潤薬、分散剤、懸濁剤、緩衝液、安定剤、および等張剤を含めることができる。
【0302】
溶液、懸濁液、または他の類似の形態である液体薬学的組成物は、1つ以上の以下のアジュバントを含むことができる:滅菌希釈剤(注射用蒸留水、生理食塩水(好ましくは生理的食塩水)、リンゲル液、等張塩化ナトリウム、固定油(合成モノグリセリドまたはジグリセリド(溶剤または懸濁媒質としての役割を果たし得る)、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の溶剤など);抗菌薬(ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなど);抗酸化剤(アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなど);キレート剤(エチレンジアミン四酢酸など);緩衝液(酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、またはリン酸緩衝液など)、および張度を調整するための薬剤(塩化ナトリウムまたはデキストロースなど)。非経口調製物を、アンプル、使い捨てのシリンジ、またはガラス製またはプラスチック製の多用量バイアル中に封入することができる。生理的食塩水は好ましいアジュバントである。注射用薬学的組成物は無菌であることが好ましい。
【0303】
非経口または経口投与のいずれかを意図する液体薬学的組成物は、適切な投薬量が得られるような量の本明細書中に開示のp97ポリペプチドまたは結合体を含むべきである。典型的には、目的の薬剤のこの量は、組成物中において少なくとも0.01%である。経口投与を意図する場合、この量は、組成物の0.1重量%と約70重量%との間で変化し得る。一定の経口薬学的組成物は、約4%と約75%との間の目的の薬剤を含む。一定の実施形態では、本発明の薬学的組成物および薬学的調製物を、希釈前に非経口投薬単位が0.01重量%〜10重量%の目的の薬剤を含むように調製する。
【0304】
キャリアが溶液、乳濁液、軟膏、またはゲル基剤を適切に含むことができる場合、薬学的組成物は、局所投与を意図することができる。基剤は、例えば、1つ以上の以下を含むことができる:ペトロラタム、ラノリン、ポリエチレングリコール、蜜蝋、鉱油、希釈剤(水およびアルコールなど)、ならびに乳化剤および安定剤。増粘剤は、局所投与用の薬学的組成物中に存在することができる。経皮投与を意図する場合、組成物は、経皮貼布またはイオン導入デバイスを含むことができる。
【0305】
薬学的組成物は、例えば、直腸内で融解して薬物を放出する坐剤の形態で、直腸投与を意図し得る。直腸投与用組成物は、適切な非刺激性賦形剤として油脂性基剤を含むことができる。かかる基剤には、ラノリン、カカオバター、およびポリエチレングリコールが含まれるが、これらに限定されない。
【0306】
薬学的組成物は、固体または液体の投薬単位の物理的形態を改変する種々の材料を含むことができる。例えば、組成物は、有効成分周囲にコーティングシェルを形成する材料を含むことができる。コーティングシェルを形成する材料は、典型的には不活性であり、例えば、糖、シェラック、および他の腸溶コーティング剤から選択することができる。あるいは、有効成分を、ゼラチンカプセルにカプセル化することができる。固体または液体の薬学的組成物は、結合体または薬剤に結合し、それにより、化合物の送達を補助する薬剤を含むことができる。この能力で作用することができる適切な薬剤には、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体、1つ以上のタンパク質またはリポソームが含まれる。
【0307】
薬学的組成物は、エアロゾルとして投与することができる投薬単位から本質的になり得る。用語「エアロゾル」を、コロイド性の系から圧縮パッケージからなる系までの範囲の種々の系を示すために使用する。液化ガスまたは圧縮ガスによるか、有効成分を分注する適切なポンプシステムによって送達することができる。エアロゾルを、有効成分を送達するための単相系、二相系、または三相系で送達することができる。エアロゾルの送達には、必要な容器、アクチベーター、バルブ、およびサブコンテナなどを含み、これらが共にキットを形成し得る。当業者は、過度に実験を行うことなく、好ましいエアロゾルを決定することができる。
【0308】
本明細書中に記載の結合体を含む組成物を、身体からの急速な排出から結合体を防御するキャリア(持続放出性の処方物またはコーティングなど)を使用して調製することができる。かかるキャリアには、制御放出処方物(挿入物およびマイクロカプセル化送達系)および生分解性の生体適合性ポリマー(エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、ポリオルソエステル、ポリ乳酸、および当業者に公知の他のポリマーなど)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0309】
薬学的組成物を、薬学分野で周知の方法論によって調製することができる。例えば、注射による投与を意図する薬学的組成物を、本明細書中に記載の結合体、および、任意選択的に1つ以上の塩、緩衝液、および/または安定剤を含む組成物を、滅菌蒸留水と組み合わせて溶液を形成することによって調製することができる。均一な溶液または懸濁液の形成を容易にするために、界面活性剤を添加することができる。界面活性剤は、水性送達系中での結合体の溶解または均一な懸濁を容易にするために結合体と非共有結合性に相互作用する化合物である。
【0310】
組成物を治療有効量で投与することができ、治療有効量は、種々の要因(使用した特定の化合物(例えば、結合体)の活性;化合物の代謝安定性および作用期間;患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別、および食事;投与の様式および時間;排出速度;薬物の組み合わせ;特定の障害または容態の重症度;および治療を受ける被験体が含まれる)に応じて変化するであろう。一般に、治療有効1日量は(70kgの哺乳動物について)、約0.001mg/kg(すなわち、約0.07mg)〜約100mg/kg(すなわち、約7.0g)であり、好ましくは、治療有効用量は(70kgの哺乳動物について)は、約0.01mg/kg(すなわち、約0.7mg)〜約50mg/kg(すなわち、約3.5g)であり、より好ましくは、治療有効用量(70kgの哺乳動物について)は、約1mg/kg(すなわち、約70mg)〜約25mg/kg(すなわち、約1.75g)である。
【0311】
本明細書中に記載の結合体を含む組成物を、本明細書中に記載のように、1つ以上の他の治療薬の投与と同時、投与前、または投与後に投与することもできる。例えば、1つの実施形態では、結合体を、抗炎症剤と共に投与する。抗炎症剤または抗炎症薬には、ステロイドおよび糖質コルチコイド(ベタメタゾン、ブデソニド、デキサメタゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロンが含まれる)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)(アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、メトトレキサート、スルファサラジン、レフルノミド、抗TNF薬、シクロホスファミド、およびミコフェノラートが含まれる)が含まれるが、これらに限定されない。
【0312】
かかる併用療法は、本発明の化合物および1つ以上のさらなる活性薬剤を含む単一の薬学的投薬形態の投与、ならびに本発明の結合体および各活性薬剤をその個別の薬学的投薬処方物中に含む組成物の投与を含むことができる。例えば、本明細書中に記載の結合体および他の活性薬剤を、患者に錠剤またはカプセルなどの単一の経口投薬組成物中で共に投与することができるか、各薬剤を個別の経口投薬処方物で投与することができる。同様に、本明細書中に記載の結合体および他の活性薬剤を、単一の非経口投薬組成物中で(生理食塩水または他の生理学的に許容され得る溶液中など)共に患者に投与することができるか、各薬剤を個別の非経口投薬処方物で投与することができる。個別の投薬処方物を使用する場合、結合体および1つ以上のさらなる活性薬剤を含む組成物を、本質的に同時に(すなわち、一斉に)または個別にずらした時間で(すなわち、連続的および任意の順序で)投与することができ、併用療法は全てのこれらのレジメンが含まれると理解される。
【0313】
以下の実施例を例示のために示すが、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0314】
実施例1
ヒトメラノトランスフェリン(P97)フラグメントの生成
血液脳関門(BBB)輸送のin vitroモデルでの試験のためのp97フラグメントを生成するために、臭化シアン(CNBr)およびトリプシンを使用してヒトメラノトランスフェリン(p97)の選択的な化学的消化および酵素的消化を行った。
【0315】
CNBr消化:ヒトp97の500μLタンパク質サンプル(10mg/ml)に、2.664mlの88%ギ酸および166.5μLの5M CNBrを含むアセトニトリルを添加した。サンプルをボルテックスし、アルミニウム箔で覆い、ドラフト内にて室温で24時間インキュベートした。反応を停止させるために、10体積のMSグレードの水を添加した。消化材料を−80℃で凍結し、一晩凍結乾燥させた。サンプルを精製するまで−20℃で保存した。消化材料を5mLの0.1%ギ酸に再溶解し、WatersのSep−Pack C8 12ccカートリッジを使用して精製した。精製された消化材料を−80℃で凍結し、一晩凍結乾燥させた。次いで、凍結乾燥させた生成物を、−20℃で保存した。表1は、CNBr消化物由来の推定p97フラグメントの例を示す。
【0316】
【表1-5】
【0317】
消化生成物および精製生成物についてSDS−PAGE分析を行った。未変性タンパク質サンプルおよび消化タンパク質サンプルを4〜12%Bis−Trisゲル上にロードし、ゲルを200Vの定電圧を使用して35分間、開始電流114mAおよび終了電流65mAで泳動した。電気泳動後、ゲルを、それぞれ200mLのMilli−Q水を使用して5分間ずつ3回リンスした。次いで、ゲルを、20mLのGelCode Blue染色試薬を使用して一晩染色し、その後に200mLのMilli−Q水で1時間脱色した。SDS−PAGE分析を
図1に示す(レーン1、空;レーン2、青文字(Blue Latter)を参照のこと;レーン2〜5、空;レーン6、50μg未消化p97;レーン7〜9、空;レーン10、50μg CNBr消化p97;レーン11〜12、空)。レーン6(未消化タンパク質サンプル)は、p97タンパク質が夾雑物を有することを示す多数のバンドを有していた。レーン10(CNBr消化物)および巨大な消化物フラグメントとして認められる少なくとも3つのバンド。
【0318】
これら3つのバンドを切り出し、トリプシンを使用してゲル内消化させ、抽出し、LC−MS/MS分析によって分析した。結果を
図3〜6に示す。
図3は、ヒトp97のCNBr消化物のMS/MS分析によって同定されたp97フラグメントの配列範囲マップを示す。
図3Aはバンド1の結果を示し、
図3Bはバンド2の結果を示し、
図3Bはバンド3の結果を示す。
【0319】
図4Aは、バンド1中に検出されたペプチドのヒトp97のアミノ酸配列とのマッチングを示す。適合したペプチドの配列範囲を太字で示す。
図4Bは、一定の物理的特徴と共に各ペプチドを列挙している。
図5Aは、バンド2中に検出されたペプチドのヒトp97のアミノ酸配列とのマッチングを示す。適合したペプチドの配列範囲を太字で示す。
図5Bは、一定の物理的特徴と共に各ペプチドを列挙している。
図6Aは、バンド3中に検出されたペプチドのヒトp97のアミノ酸配列とのマッチングを示す。適合したペプチドの配列範囲を太字で示す。
図6Bは、一定の物理的特徴と共に各ペプチドを列挙している。
【0320】
トリプシン消化:ヒトp97の500μLタンパク質サンプル(10mg/ml)に、0.5mlの25mM重炭酸アンモニウムを添加した。50μlの200mM DTT(25mMアンビック含有)を添加し、37℃で30分間還元した。200μlの200mMヨードアセトアミド(25mMアンビック含有)を添加し、遊離システインを37℃で30分間アルキル化した。次に、250μgのブタトリプシン(Promega)をサンプルに添加し、37℃で一晩消化した。消化材料をWatersのOasis HLB 6ccカートリッジを使用して精製した。精製された消化材料を−80℃(80C)で凍結し、一晩凍結乾燥させた。凍結乾燥した生成物を−20℃で保存した。
【0321】
MS分析のために、凍結乾燥したp97トリプシン消化物を1mLの0.1%ギ酸および3%アセトニトリルで再水和した。1μgをC18カラムにロードし、LTQ Orbitrap Velos質量分析計(Thermo)に注入した。MS/MS分析は、サンプルがいくつかのタンパク質夾雑物を含むことを示したが、p97トリプシン消化が成功したことも確認された。
【0322】
結果を
図2に示す。
図2A〜2Dは、MS/MS分析によって同定された溶液中のヒトp97のトリプシン消化物のp97フラグメントのリストを示し、
図2Eはその分析の配列範囲マップを示す。
【0323】
実施例2
血液脳関門のin vitroモデルにおけるp97フラグメントの試験
関連および推定BBBのin vitroモデルを使用したp97ペプチドフラグメント混合物の血液脳関門(BBB)の通過を評価するための実験を行った(Cecchelliら,Adv.Drug Deliv.Rev.36:165−178,1999を参照のこと)。モデルは、in vivo BBBを忠実に模倣するために膠細胞と共培養した脳毛細血管内皮細胞を利用する(Lundquistら,Pharm.Res.16:976−981,2002を参照のこと)。
【0324】
細胞ベースのBBBモデル:脳毛細血管機能を研究するためのin vitro系を提供するために、in vivo BBBを忠実に模倣する共培養過程を、フィルターの片側で脳毛細血管内皮細胞を培養し、反対側で支持膠細胞を培養することによって確立した。具体的には、内皮細胞を、フィルターの上部区画中で培養し、膠細胞をプラスチック製の6ウェルプレート上の下部区画中で培養した(
図7および8を参照のこと)。これらの条件下で、内皮細胞は、適切な内皮マーカー(例えば、第VIII因子関連抗原、非血栓形成表面、プロスタサイクリンの産生、アンギオテンシン変換酵素活性)を保持し、BBBの関連する特徴(例えば、密着結合の存在、少数の飲小胞、モノアミンオキシダーゼ活性、γ−グルタミルトランスペプチダーゼ活性、P−糖タンパク質活性、低密度リポタンパク質の特異的受容体、およびトランスフェリン)も保持している。
【0325】
膠細胞培養。膠細胞の初代培養物を、新生ラット大脳皮質から単離した(Booher & Sensenbrenner,Neurobiology.2:97−105,1972)。髄膜の除去後、脳組織を穏やかにナイロン篩にかけた。10%(v/v)仔ウシ胎児血清(FCS、ウシ胎児血清と同一:FBS)、2mMグルタミン、および50μg.ml
−1のゲンタマイシンを補足したDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)を、脳組織の分離および膠細胞の成長のために使用した。播種3週間後、膠細胞培養物は安定化し、星状膠細胞(約60%)、乏突起膠細胞、および小膠細胞から構成された(Descampsら,Glia.42:46−58,2003)。
【0326】
フィルターインサートの調製。培養プレートインサート(Transwell PE 3μm細孔サイズ;直径24mm,COSTAR,3452/Transwell PC 3μm細孔サイズ;直径24mm,COSTAR,3414)の上側を、ラット尾コラーゲンでコーティングした。
【0327】
脳毛細血管内皮細胞の膠細胞との共培養。膠細胞を、プラスチック製6ウェルプレート中に約1.25×10
5細胞/mlの濃度でプレートし、5%CO
2下にて37℃でインキュベートした。1週間に2回培地を交換した。播種3週間後、膠細胞培養物は安定化するようになった。次いで、継代数3で凍結した内皮細胞のサブクローンを、直径60mmのゼラチンコーティングしたペトリ皿上で培養した。コンフルエントな内皮細胞をトリプシン処理し、密度4×10
5細胞/mlでフィルターの上側にプレートした。共培養のために使用した培地は、10%(v/v)仔ウシ血清(CS)および10%(v/v)ウマ血清(HS)、2mMグルタミン、および50μg/mlのゲンタマイシンを補足したDMEMであり、1ng/mlの塩基性線維芽細胞成長因子を1日おきに添加した。これらの条件下で、内皮細胞は、約12日後にコンフルエントな単層を形成した。
【0328】
ルシファーイエローを、BBBモデルの完全性を確認するための試験ペプチドの評価における傍細胞マーカーとして使用した。この小型の親水性分子は脳透過性が低く、その内皮透過係数によって内皮細胞単層の完全性が明らかとなり、それにより、有用なコントロールとして役立つ。実験当日、リンゲル−HEPES(NaCl、150mM;KCl、5.2mM;CaCl
2、2.2mM;MgCl
2 6H
2O、0.2mM;NaHCO
3、6mM;HEPES、5mM;グルコース、2.8mM)を、6ウェルプレートの下部区画(反管腔側)に添加した(ウェルあたり3mL)。内皮細胞を含むか含まないフィルターを、リンゲル−HEPES溶液にて37℃で10分間洗浄して血清の形跡を最小にし、次いで、6ウェルプレートの各ウェルに移した。ルシファーイエロー(20μM)と組み合わせてペプチドフラグメントを含む、体積1mLのリンゲル−HEPES溶液を、ウェルの上部区画(管腔側)に入れた。
【0329】
実験を、コンフルエントな内皮細胞単層を含むフィルターを使用して3連で行うか(BBB完全性試験またはペプチドフラグメント通過の評価用)、コラーゲンのみをコーティングした空のフィルターを使用して3連で行った(フィルター試験)。ロッキングプラットフォーム上にて37℃で120分間インキュベートした。インキュベーション期間の終了後、以下に詳述するように、管腔側および反管腔側の液体のアリコートを蛍光計数のために回収して膜完全性を評価し(ルシファーイエロー)、LC/MS分析を行って空のフィルターまたは内皮単層のp97ペプチドフラグメントの通過を評価した。
【0330】
蛍光分析。ルシファーイエロー(20μM)を、BBBの透過性をモニタリングするための傍細胞マーカーとして使用し、蛍光カウンター(Flouroskan Ascent,Thermolabs Systems)によって分析した。3連の各下部区画および初期溶液(試験ペプチドおよびルシファーイエローを含有)由来の代表的サンプル中の蛍光を決定した。反管腔側(下部区画)については、200μLのアリコートを96ウェルプレートに添加して蛍光計数によって測定し、管腔側(上部区画)については、T0分およびT120分由来の20μLのアリコートを96ウェルプレートに添加して蛍光計数によって測定した。
【0331】
トリプシン消化物のLC/MS分析。各ウェルから300μlを取り出し、各時点/画分/細孔サイズについて単一のチューブにプールした。500μlの0.1%ギ酸を、酸性化のために各サンプルに添加した。ペプチドを、WatersのOasis HLB 10ccカートリッジを使用して精製し、精製したペプチドを−80℃で凍結し、一晩凍結乾燥させた。サンプルを30μl(20%アセトニトリル、0.1%FA)で再水和した。15μlの各サンプルを、LTQ Orbitrap Velos質量分析計(Thermo)におけるLC−MS/MSによって分析し、データ(生ファイル)を、Proteome Discoverer 1.3.0.339ソフトウェアスイート(Thermo Scientific)を使用して分析した。ピークリストを、Uniprot−SwissprotデータベースのMascot2.3サーバにサブミットした。高信頼度で検出された各タンパク質の上位3つのペプチドのピーク領域を計算した。
【0332】
細孔サイズ0.3μmおよび0.4μmの両方について、120分後に管腔側区画および反管腔側区画中にトリプシンペプチドが検出された。上位3つのp97ペプチドのピーク領域に基づいて、管腔側の反管腔側に対するペプチド比は約2:1であった。特異的p97ペプチドの結果を、以下の表2(細孔サイズ3ミクロン)および表3(細孔サイズ4ミクロン)に示す。
【0333】
【表2-1】
【0334】
【表2-2】
【0335】
【表2-3】
【0336】
【表2-4】
【0337】
【表3-1】
【0338】
【表3-2】
【0339】
【表3-3】
【0340】
【表3-4】
【0341】
CNBr消化物のLC/MS分析。各ウェルから300μlを取り出し、各時点/画分/細孔サイズについて単一のチューブにプールした。500μlの0.1%ギ酸を、酸性化のために各サンプルに添加した。CNBrタンパク質フラグメントを、Sep=Pak Vac 12cc C8カートリッジを使用して精製した。精製したフラグメントを−80℃で凍結し、一晩凍結乾燥させた。CNBrフラグメントを25mM重炭酸アンモニウムで再水和し、DTTで還元し、ヨードアセトアミドでアルキル化した。DTTの分割添加によってアルキル化を停止させた。次いで、6μgの精製ブタトリプシンを各ウェルに添加し、サンプルを37℃のインキュベーターに一晩置いた。翌朝に、ペプチドを、WatersのOasis HLB 10ccカートリッジを使用して精製した。精製したペプチドを−80℃で凍結し、一晩凍結乾燥させた。サンプルを30μl(20%アセトニトリル、0.1%FA)で再水和した。15μlの各サンプルを、LTQ Orbitrap Velos質量分析計(Thermo)におけるLC−MS/MSによって分析し、データ(生ファイル)を、Proteome Discoverer 1.3.0.339ソフトウェアスイート(Thermo Scientific)を使用して分析した。ピークリストを、Uniprot−SwissprotデータベースのMascot2.3サーバにサブミットした。高信頼度で検出された各タンパク質の上位3つのペプチドのピーク領域を計算した。
【0342】
細孔サイズ0.3μmおよび0.4μmの両方について、120分後に管腔側区画および反管腔側区画中にCNBrp97フラグメント由来のトリプシンペプチドが検出された。上位3つのp97ペプチドのピーク領域に基づいて、管腔側の反管腔側に対するペプチド比は約200:1であった。特異的p97ペプチドの結果を、以下の表4(細孔サイズ3ミクロン)および表5(細孔サイズ4ミクロン)に示す。3つの個別のp97CNBrフラグメント由来のトリプシンペプチドが検出された(
図9Bを参照のこと)。
【0343】
【表4-1】
【0344】
【表4-2】
【0345】
【表5-1】
【0346】
【表5-2】
【0347】
1つの可能な基準として反管腔側120/管腔側120ピーク領域比を使用して、最高のBBB輸送活性を有するp97ペプチドを、以下の表6(トリプシン消化物)および表7(CNBr消化物)に示す。しかし、反管腔側120領域の値を示す表2〜5中の任意のp97フラグメントがBBB輸送活性を有することが潜在的に興味深いかもしれない。
【0348】
【表6】
【0349】
【表7】
【0350】
実施例3
血液脳関門のin vivoモデルにおけるp97フラグメント
p97(Mtf)フラグメント(DSSHAFTLDELR;配列番号13)をモノクローナル抗体(mAb)に結合体化し、コントロールタンパク質と共にマウスに末梢投与し、脳組織内への分布についてコントロールタンパク質と比較試験した。定量的検出のために、日常的技術にしたがって全試験タンパク質をアレクサフルオル647(AF647)で標識した。
【0351】
以下の試験タンパク質を調製した:AF647標識モノクローナル抗体(mAb)、AF647標識MTf−mAb結合体(MTf−mAb;MTfは可溶性ヒトp97である)、AF647標識MTf
PEP−mAb結合体(MTf
PEP−mAb;MTF
PEPはヒトp97のDSSHAFTLDELRYC(配列番号92)フラグメントである);および抗体を含まないAF647標識MTfフラグメント(MTf
PEP)。MTf−mAbおよびMTf
PEP−mAb結合体の合成経路を、
図10中に示す。
【0352】
AF647標識被験物質を、以下の表8中の研究デザインにしたがってマウスに投与した。
【0353】
【表8】
【0354】
試験タンパク質の投与2時間後、テキサスレッドを投与し、動物を屠殺し、脳組織を取り出した。脳組織の中央環状切片および大脳皮質由来の無作為な5〜6野を冷凍切片にした。次いで、共焦点顕微鏡法を実施して試験タンパク質の脳生体内分布を評価した。
【0355】
共焦点顕微鏡法のために、蛍光標識した細胞の共焦点画像を、A Leica AOBS SP8レーザー走査型共焦点顕微鏡(Leica,Heidelberg,Germany)を使用して得た。励起波長は、405(DAPI)、595nm(テキサスレッド)、および653nm(AF647)であり、80MHz白色光レーザーを使用して、各発光シグナルを回収した。全ての画像およびスペクトルデータ(DAPI以外)を、高感度HyD検出器を使用して作成した。サンプル由来の後方散乱発光シグナルを、波長可変フィルター(AOBS)によって伝送した。
【0356】
三次元(3D)画像/体積分率分析のために、3Dスタック体積のための一連の二次元(2D)画像(1024×1024ピクセル)を得た。およそ0.3ミクロンの至適切片厚(z軸)を有する3Dスタック画像を、20ミクロン脳組織切片から得た。各組織体積のために、z切片画像をコンパイルし、Imaris(BITPLANE Scientific Software)を使用して三次元画像を修復した。5つ以上の異なる大脳皮質領域から記録した3D画像データセットに基づいて体積を評価した。ガウス雑音除去フィルターを適用してフォアグラウンドとバックグラウンドとの間の境界を画定し、ヒストグラム中の低い方の閾値を、バックグラウンドボクセル値を可能な限り全て排除するように設定した。この閾値を超える全ボクセル値の和を、体積と確定した。
【0357】
V
BC(脳毛細血管中の試験タンパク質の体積分率)、V
BP(脳実質中の試験タンパク質の体積分率)、およびV
TOT(脳毛細血管および脳実質中の試験タンパク質の体積分率)を計算した。
図11に示すように、結合体化されていないmAbは、脳実質中の低分布によって示されるように、BBBを効率的に通過しなかった。対照的に、MTfまたはMTf
PEPのいずれかへのmAbの結合体化により、脳実質へのmAbの分布が約5倍に増加した。また、結合体化されていないMTf
PEPは、BBBを効率的に通過して脳実質に分布した。これらの結果は、p97のフラグメントへの結合体化を使用して抗体などのポリペプチドのBBBを通過した脳などのCNS組織への送達を有意に改善することができることを示す。
【0358】
実施例4
p97ペプチド結合体
p97
PEPフラグメント(DSSHAFTLDELR;配列番号13)を、44kd試験タンパク質であるセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)に結合体化した。この結合体をコントロールタンパク質と共にマウスに末梢投与し(IV注射による)、脳組織中への分布についてコントロールタンパク質と比較試験した。定量的検出のために、日常的技術にしたがって全試験タンパク質をアレクサフルオル680(AF680)で標識した。
【0359】
以下の試験タンパク質を調製した:AF680標識HRP(HRP);AF680標識MTf
PEP−HRP結合体(MTF
PEP−HRP;MTF
PEPはヒトp97のDSSHAFTLDELRYC(配列番号92)フラグメントである)。結合体化およびヨウ素化のためにC末端のシステイン残基およびチロシン残基をMTfペプチドにそれぞれ添加した。HRP結合体の合成経路を、
図12中に示す。
【0360】
AF680標識被験物質を、以下の表9中の研究デザインにしたがってマウスに投与した。
【0361】
【表9】
【0362】
試験タンパク質の投与2時間後、トマトレクチン−FITC(80μgを10分間)を投与して脳脈管構造を染色後、10mlヘパリン処理生理食塩水で心臓内灌流し、脳組織を取り出し、顕微鏡分析のために処理した。脳組織の中央環状切片由来の3つの無作為領域を冷凍切片にし、冷アセトン/メタノールで固定し、顕微鏡法のためにマウントした。次いで、三次元(3D)共焦点顕微鏡法を実施して、試験タンパク質の脳生体内分布を評価した。
【0363】
結果を
図13A〜
図13Cに示す。
図13AはPBSの結果を示し、
図13BはAF680標識HRPの結果を示し、
図13CはAF680標識MTf
PEP−HRP結合体の結果を示す。
図13Aおよび
図13Bは、脳組織中にAF680標識は検出不可能であることを示す。対照的に、
図13Cは、矢印で示すように、検出可能なAF680標識を示す。これらの結果は、DSSHAFTLDELRペプチドへの結合体化が目的のタンパク質のBBBを通過した脳組織内への送達を有意に強化することができることを示す。
【0364】
本明細書中に記載の種々の実施形態を組み合わせてさらなる実施形態を提供することができる。本明細書中で言及され、そして/または出願データシートに列挙された全ての米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、および非特許刊行物は、その全体が本明細書中で参考として援用される。実施形態の態様を、必要に応じて種々の特許、出願、および刊行物の概念を使用して修正してなおさらなる実施形態を得ることができる。
【0365】
上記の詳細な説明を考慮して実施形態に対するこれらのおよび他の変更形態を得ることができる。一般に、以下の特許請求の範囲では、使用用語を、明細書および特許請求の範囲中に開示の特定の実施形態に特許請求の範囲を制限すると解釈すべきではなく、かかる特許請求の範囲が権利を与えられる等価物の全範囲と共に全ての可能な実施形態が含まれると解釈すべきである。したがって、特許請求の範囲は開示によって制限されない。