(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
油圧システム(1)を備える変速機装置(2)であって、前記油圧システム(1)は、変速機入力軸を介して作動可能な油圧ポンプ(43)、および変速機軸を介して作動可能な更なる油圧ポンプ(44)と接続され、および作動状態に応じて前記油圧ポンプ(43)及び前記更なる油圧ポンプ(44)から搬送された油圧流体体積を、変速機部品へと更に導き、該変速機部品の部分は1次圧力回路(46)を介して、および前記変速機部品の更なる部分は、システム圧力弁(47)を介して前記1次圧力回路(46)と接続可能な前記油圧システムの2次圧力回路(54)を介して、油圧流体で附勢可能であり、前記油圧ポンプ(43)の圧力側(45)は、前記1次圧力回路(46)と直接に連結され、および前記システム圧力弁(47)を介して前記2次圧力回路(54)と接続可能であり、一方前記更なる油圧ポンプ(44)の圧力側(64)は、前記2次圧力回路(54)と直接に接続している変速機装置(2)において、前記油圧ポンプ(43)の前記圧力側(45)は、前記2次圧力回路(54)の領域で、弁ユニット(48)を介して、歯車セットとして構成された変速機部品、デュアルクラッチシステム(56)として構成された変速機部品、および前記油圧ポンプ(43)及び前記更なる油圧ポンプ(44)の吸入領域(69)と接続可能であり、および前記更なる油圧ポンプ(44)の前記圧力側(64)は、前記歯車セットと接続し、および前記弁ユニット(48)を介して前記デュアルクラッチシステム(56)と連結可能であることを特徴とする変速機装置(2)。
請求項3に記載の変速機装置であって、前記追加的な弁ユニット(49)および前記逆止弁ユニット(52)が、互いに平行するラインで、前記システム圧力弁(47)と前記弁ユニット(48)の間に配置されることを特徴とする変速機装置。
請求項1〜4の何れか一項に記載の変速機装置であって、前記更なる油圧ポンプ(44)の圧力側(64)と前記油圧ポンプ(43)の圧力側(45)の間に、更なる逆止弁ユニット(65)の応答限界値より大きい正の圧力差がある場合に、前記更なる油圧ポンプ(44)の圧力側(64)が前記更なる逆止弁ユニット(65)を介して前記1次圧力回路(46)と接続に至ることが可能であることを特徴とする変速機装置。
請求項1〜5の何れか一項に記載の変速機装置であって、パイロット制御可能な保持弁(66)が、前記更なる油圧ポンプ(44)の下流に備わり、前記保持弁(66)により、前記更なる油圧ポンプ(44)の搬送圧力(p64)が可変であることを特徴とする変速機装置。
請求項1〜8の何れか一項に記載の変速機装置であって、前記弁ユニット(48)が、パイロット制御圧調整弁(60)の領域で調整可能なパイロット制御圧力(p_VS48)に応じて作動可能であることを特徴とする変速機装置。
請求項9に記載の変速機装置であって、保持弁(66)は、前記弁ユニット(48)に割り当てられた前記パイロット制御圧調整弁(60)を介してパイロット制御可能であることを特徴とする変速機装置。
請求項9または10に記載の変速機装置であって、前記弁ユニット(48)に割り当てられた前記パイロット制御圧調整弁(60)が、下降する制御特性を備えることを特徴とする変速機装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の課題は、油圧システムを備えた変速機装置を提供することである。油圧システムは、変速機入力軸を介して作動可能な油圧ポンプ、および変速機出力軸を介して作動可能な更なる油圧ポンプと接続され、および作動状態に応じて油圧ポンプから搬送された油圧流体体積を、変速機部品へと僅かな労力で更に導き、特に歯車セットとして構成された変速機部品への供給を、変速機装置を備えて構成された車両のセーリング駆動の間も、変速機出力軸を介して作動可能な更なる油圧ポンプを介して、所望の範囲で実現可能である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1に記載の特徴を備える、本発明による変速機装置により解決される。
【0009】
本発明による変速機装置は油圧システムを備え、油圧システムは、変速機入力軸を介して作動可能な油圧ポンプ、および変速機軸を介して作動可能な更なる油圧ポンプと接続され、および作動状態に応じて油圧ポンプから搬送された油圧流体体積を、変速機部品へと更に導き、変速機部品の部分は1次圧力回路を介して、および変速機部品の更なる部分は、システム圧力弁を介して1次圧力回路と接続可能な油圧システムの2次圧力回路を介して、油圧流体で附勢可能であり、油圧ポンプの圧力側は、1次圧力回路と直接に連結され、およびシステム圧力弁を介して2次圧力回路と接続可能であり、一方更なる油圧ポンプの圧力側は、2次圧力回路と直接に接続している。
【0010】
本発明に従い、油圧ポンプの圧力側は、2次圧力回路の領域で、弁ユニットを介して、歯車セットとして構成された変速機部品、デュアルクラッチシステムとして構成された変速機部品、および油圧ポンプの吸入領域と接続可能である。追加的に、更なる油圧ポンプの圧力側は、歯車セットと接続し、および弁ユニットを介してデュアルクラッチシステムと連結可能である。
【0011】
本発明による変速機装置において、変速機部品は、以下に詳述する変速機装置を備えて構成された車両ドライブトレインの4つの駆動領域の間、所望の範囲で同時にドラグトルクを僅かとして、費用対効果に優れた態様で、油圧流体で附勢可能または油圧流体を供給可能であり、ならびに供給不足の状態を、更なる油圧ポンプを介して特に変速機装置の歯車セットを冷却する領域で回避可能であり、およびドラグトルクの原因となる歯車セットの冷却の過供給をも、高い即応性を有して回避可能である。
【0012】
変速機入力軸と連結可能な駆動機関が作動し、および油圧ポンプが作動される第1駆動領域において、変速機入力軸を介して作動可能な油圧ポンプが油圧流体体積を搬送し、一方、変速機出力軸を介して作動可能な更なる油圧ポンプは、同時に車両が静止している場合、搬送体積を供給しない。駆動機関が車両停止時に停止される第2駆動領域において、油圧ポンプおよび更なる油圧ポンプの双方が、油圧流体体積を供給しない。第2駆動領域は、例えば車両の駐車モードまたは交通信号機の前で停止する場合に該当する。車両ドライブトレインの第3駆動領域において、車両ドライブトレインを備えて構成された車両は、ゼロより大きい車両速度で移動し、および駆動機関が作動される。その場合、油圧ポンプおよび更なる油圧ポンプからも油圧流体体積が搬送される。これとは異なり、セーリング駆動とすることも可能な第4駆動領域では、ゼロより大きい車両速度において駆動機関が停止され、更なる油圧ポンプからのみ油圧流体体積が供給される。
【0013】
本発明による変速機装置において、変速機装置を備えた車両ドライブトレインの第1および第3駆動領域では、更なる油圧ポンプにより搬送された油圧流体体積が、例えば歯車セットのための潤滑油ラインへの供給、およびデュアルクラッチシステムの冷却のために使用される。この場合好適にも、関連する接続ラインにおける油圧抵抗は、構造的に可能な最低値にまで低減され、更なる油圧ポンプ、またはいわゆる出力ポンプの油圧的なパワー消費が最小化される。
【0014】
セーリング駆動または第4駆動領域においては、油圧ポンプの領域で、油圧的なパワーを消費しない。追加的に、内燃機関として構成された通常の駆動機関もパワーフリーである。更なる油圧ポンプの搬送圧力が適切な手段で対応して上昇されると、更なる油圧ポンプを、セーリング駆動において変速機装置の作動またはギヤトラッキングのためにも使用可能である。
【0015】
逆止弁ユニットがシステム圧力弁と弁ユニットの間に配置されると、2次圧力回路からシステム圧力弁の方向への不所望な戻り流を、弁ユニットを介して簡単な態様で回避可能であり、および同時に、油圧流体体積を高い即応性を有して、システム圧力弁から弁ユニットの方向へ導くことが可能である。
【0016】
本発明による変速機装置の更なる有利な実施形態において、追加的な弁ユニットがシステム圧力弁と弁ユニットの間に配置されると、この追加的な弁ユニットを介して、例えばシステム圧力弁から弁ユニットの方向であり、従って2次圧力回路の方向である油圧流体体積流を、例えば変速機装置の作動温度に従って調整可能である。
【0017】
追加的な弁ユニットおよび逆止弁ユニットが、互いに平行するラインで、システム圧力弁と弁ユニットの間に配置されると、一方では2次圧力回路を、作動状態に応じて追加的な弁ユニットを介して油圧流体体積で附勢可能であり、および他方では、追加的な弁ユニットの作動に起因して、2次圧力回路を附勢する際に低下する即応性を、逆止弁ユニットを介する油圧流体体積で、逆止弁ユニットの応答限界値より大きい正の圧力勾配が存在する場合に、僅かな労力で回避可能である。
【0018】
変速機装置の有利な発展実施形態において、更なる油圧ポンプの圧力側と油圧ポンプの圧力側の間に、更なる逆止弁ユニットの応答限界値より大きい正の圧力差がある場合に、更なる油圧ポンプの圧力側が、更なる逆止弁ユニットを介して1次圧力回路と接続に至ることが可能であると、本発明による変速機装置の1次圧力回路を介して油圧流体体積で附勢可能な変速機部品に、更なる油圧ポンプからも僅かな労力で油圧流体体積を供給可能である。
【0019】
パイロット制御可能な保持弁が、更なる油圧ポンプの下流に備わり、保持弁により、更なる油圧ポンプの搬送圧力が可変であると、更なる油圧ポンプの搬送圧力が、本発明による変速機装置に存在する各作動状態に対して、僅かな労力で適応可能である。
【0020】
更なる油圧ポンプの圧力側と油圧ポンプの吸入領域の間にラインが走り、このラインを介して、吸入領域と更なる油圧ポンプの圧力側の間に、追加的な逆止弁ユニットの応答限界値より大きい正の圧力差がある場合に、油圧流体を吸入領域から圧力側の方向へ導くことが可能であると、本発明による変速機装置を備えて構成された車両が後退走行する間であり、更なる油圧ポンプが反対方向に作動されることに起因して、その流れの方向を変化または転換する後退走行の間も、2次圧力回路への供給は、更なる油圧ポンプから僅かな構成上の労力で確保される。
【0021】
油圧ポンプの搬送性能が可変であると、簡単な態様で、変速機部品への供給のために必要な油圧流体体積流を、油圧ポンプを対応して作動させることで、油圧ポンプから発生される油圧流体体積流と等しくすることが可能であり、および過剰な油圧流体体積による損失回転を、本発明による変速機装置の油圧システムにおいて回避可能である。
【0022】
弁ユニットが、パイロット制御圧調整弁の領域で調整可能なパイロット制御圧力に応じて作動可能であると、弁ユニットは、僅かな労力で所望の各作動状態に移行可能である。
【0023】
本発明による変速機装置の、簡単な構造で僅かな労力で作動可能な実施形態において、保持弁は、弁ユニットに割り当てられたパイロット制御圧調整弁を介してパイロット制御可能である。
【0024】
弁ユニットに割り当てられたパイロット制御圧調整弁が下降する制御特性を備えると、デュアルクラッチシステムへの供給および油圧流体の油圧ポンプの吸入領域の方向への送り戻しが、パイロット制御圧調整弁が電気的または機械的に動作不能状態になった場合に保証される。
【0025】
これに対して、弁ユニットに割り当てられたパイロット制御圧調整弁が上昇する制御特性を備えて構成されると、デュアルクラッチシステムの附勢は油圧流体体積で作動されない。これにより、車両の可用性を、存在する各適用ケースに応じて、状況により素早く構築可能である。
【0026】
パイロット制御可能なダイヤフラム弁が、油圧ポンプの圧力側の下流に備わると、デュアルクラッチシステムおよび歯車セットに対して供給可能な各油圧流体体積流を、弁ユニットおよびダイヤフラム弁の制御に応じて、異なる分配度で両ポンプユニットから供給または搬送可能である。
【0027】
油圧ポンプの圧力側が、弁ユニットおよび保持弁を介して歯車セットと連結可能であると、歯車セットに対して、保持弁の作動に応じて規定の油圧流体体積流を供給可能である。この実施形態においては、保持弁がそのスタート位置で閉鎖されていると、変速機入力軸と連結可能な駆動機関のスタートプロセスの間に、システム圧力を1次圧力回路でより迅速に構築可能である。
【0028】
本発明による変速機装置の更なる有利な実施形態において、保持弁は供給される別の圧力信号でもパイロット制御可能である。
【0029】
保持弁の領域に作用可能なパイロット制御圧力が、油圧ポンプと、圧力制限弁として構成されたいわゆる遮断弁の間に存在する圧力に対応すると、油圧ポンプの搬送圧力が低下した場合、更なる追加手段なしで、例えば制御装置の内部ラインを介して、保持弁を保持弁の最大圧力レベルに常に調整する。
【0030】
請求項に記載の特徴、ならびに以下の本発明による対象物の実施形態に関する特徴の双方は、各々の特徴そのものが独立して、または互いに随意に組み合わせて、本発明による対象物を更に発展させるために適している。特徴の各組合せは、本発明の対象物を発展させることに関して制限を与えるものではなく、実質的に、単に例示的な特徴を示すものである。
【0031】
本発明による対象物の更なる利点および有利な実施形態は、請求項、および以下に図面を参考にして原則的に記述する実施形態により明らかとなる。明確さに配慮し、異なる実施形態に関する記載において、構造的および機能的に同一の構成要素には、同一の符号を使用する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、油圧システム1、またはこの場合デュアルクラッチ式変速機として構成された変速機装置2または変速機の油圧作動装置の油圧システムを示す。この油圧システムにおいては、前進走行用に9つの変速比および後退走行用に1つの変速比を入力可能である。変速比は、油圧的に作動可能な5つのピストン‐シリンダ‐ユニット3乃至7を介して調整可能なシフト要素8乃至12により、入力および解除可能である。シフト要素は、この場合シフトロッドとして構成される。作動圧力p_Bは、この場合3つの、パイロット制御されてラインで互いに連結されたシフト弁13乃至15を備える弁ユニット16を介して、ピストン‐シリンダ‐ユニット3乃至7の領域、またはピストンチャンバ3A、3Bまたは4A、4Bまたは5A、5Bまたは6A、6Bまたは7A、7Bの領域で作用可能である。シフト弁13乃至15は、変速比を実現するために、複数の各シフト位置を備える。作動圧力p_Bは、2つの圧力調整弁ユニット17、18の領域において自由に調整可能であり、およびシフト弁13乃至15の方向へ更に導くことが可能である。
【0034】
シフト弁13乃至15は、磁気弁として構成された各パイロット制御圧弁ユニット19、20および21を介して、パイロット制御圧力p_VS13、p_VS14またはp_VS15により、シフト位置の方向へと、各ばねユニット22、23または24に抗して附勢可能である。各ばねユニット22、23または24は、シフト弁13乃至15のうちの1つに、第1シフト位置の方向で作用する。シフト弁13乃至15のパイロット制御圧力p_VS13、p_VS14およびp_VS15は、パイロット制御圧弁ユニット19、20または21に存在する各シフト位置に応じて、ゼロに等しいか、または圧力信号p_redの圧力値に対応する。圧力信号p_redは、減圧弁25の領域でシステム圧力p_sysに応じて調整可能である。
【0035】
圧力調整弁ユニット17および18は、各パイロット制御圧調整弁26、27および各圧力調整弁28、29を備える。各供給圧力またはシステム圧力p_sysは、圧力調整弁28、29の領域において、各パイロット制御圧調整弁26、27の領域に付与可能で、各圧力調整弁28および29の領域に作用可能な、パイロット制御圧力p_VS28またはp_VS29を介して、要求される作動圧力p_Bの各圧力レベルに調整可能である。
【0036】
パイロット制御圧弁ユニット19乃至20に流体が流れない作動状態においては、シフト弁13乃至15は、割り当てられた各ばねユニット22、23、24により、各々
図1に示す第1シフト位置へ移動される。弁ユニット16がこの作動状態である場合、圧力調整弁ユニット17および18の圧力調整弁28および29は、ピストン‐シリンダ‐ユニット3乃至7から分離される。それにも関わらず、圧力調整弁28および29の領域で作動圧力p_Bが調整される場合、作動圧力p_Bが、シフト弁13乃至15を介してピストン‐シリンダ‐ユニット3乃至7の方向へ更に導かれることはない。シフト弁13乃至15とピストン‐シリンダ‐ユニット3乃至7の間の領域では、圧力制限弁30が、いわゆるボールシャトル弁32乃至41を介して、ピストンチャンバ3A乃至7Bと作動接続に至ることが可能である。従って圧力制限弁30を介して、ピストンチャンバ3A乃至7Bの領域で各圧力レベルを調整可能であり、この圧力レベルを介して、ピストンチャンバ3A乃至7Bの枯渇が、簡単な態様で回避される。圧力制限弁30の応答圧力レベルを上回ると、圧力制限弁30が開放し、油圧流体は、低圧領域31の方向へ、圧力制限弁30を経由して導かれる。
【0037】
存在する各適用ケースに応じて、弁ユニット16を、両圧力調整弁28および29無しでも構成可能である。その場合、供給圧力p_sysは、直接制御型圧力調整弁として構成されたパイロット制御圧調整弁26および27の領域に作用可能であり、およびそこで、作動圧力p_Bに必要な各圧力レベルが直接に調整され、シフト弁13乃至15の方向へ更に導かれる。
【0038】
追加的に作動装置1は、2つの油圧ポンプまたはポンプユニット43、44を備えるポンプ装置42と連結される。第1ポンプユニット42は調整可能なベーンポンプとして、および第2ポンプユニット44は定量ポンプとして構成される。
【0039】
第1ポンプユニット43は、この場合変速機メインポンプである。変速機メインポンプは、詳細には図示されていない変速機入力軸と既知の態様で連結されているため、変速機2の変速機入力軸と接続可能な駆動機関、好適には内燃機関により、駆動可能である。これとは異なり、第2ポンプユニット44は、変速機2を備えて構成された車両ドライブトレインの、この場合は出力部と既知の態様で連結可能な変速機出力軸と連結可能であり、および出力部回転数と等しい作動回転数で作動可能である。第1ポンプユニット43の圧力側45は、1次圧力回路46と接続する。1次圧力回路46にはシステム圧力p_sysが存在し、システム圧力p_sysは、今度はパイロット制御可能なシステム圧力弁47を介して調整可能である。システム圧力弁47の下流には、同様にパイロット制御可能な弁ユニット48が備わる。弁ユニット48は、いわゆる冷却弁である。
【0040】
追加的に、いわゆる熱バイパス弁49が冷却弁48に割り当てられる。熱バイパス弁49は、熱要素50を備えて構成され、クーラー51を介して導かれた油圧流体体積流を、現に存在する作動温度に応じて、所望の範囲で調整可能である。システム圧力弁47は、この場合バイパス弁52を介して、バイパス弁52の応答限界を上回ると、冷却弁48と直に接続される。バイパス弁52の応答限界を下回ると、システム圧力弁47の下流で冷却弁48の方向に導かれた油圧流体体積は、熱バイパス弁49に存在する各作動状態に応じて、全体が冷却弁48の方向へ更に導かれるか、一部分が直接に冷却弁48の方向に導かれ他の部分がクーラー51を介して冷却弁48の方向に導かれるか、または全体がクーラー51を介し、続いて冷却弁48の方向へ更に導かれるかする。
【0041】
図1に示す冷却弁48の第1シフト位置において、1次圧力回路46は、システム圧力弁47の下流に存在する2次圧力回路54の第1領域53と接続される。冷却弁48の第2シフト位置において、1次圧力回路46は、冷却弁48を介して、2次圧力回路54の第1領域53ならびに2次圧力回路54の第2領域55の双方と接続される。第2領域55を介して、変速機2のデュアルクラッチシステム56の2つのクラッチK1およびK2を、作動状態に応じて必要な、各冷却油量で附勢可能である。第2ポンプユニット44の吸入側57は、冷却弁48の第1シフト位置ならびに第2シフト位置の双方において、冷却弁48の領域でシステム圧力弁47から分離される。
【0042】
冷却弁48が、更なるパイロット制御圧調整弁60の領域において調整可能で、冷却弁48に作用するばねユニット59のばね力に抗するパイロット制御圧力p_VS48を介して、第3シフト位置へ移行される場合、1次圧力回路46は、冷却弁48を介して、2次圧力回路54の第2領域55と接続される。それにより、1次圧力回路46からシステム圧力弁47を介して2次圧力回路54へと導かれる油圧流体体積は、その全体が、デュアルクラッチシステム56を冷却するために使用される。
【0043】
2次圧力回路54の第1領域53はこの場合、いわゆる潤滑スピンを備える。潤滑スピンを介して、変速機2の様々な部品を、潤滑および冷却のために油圧流体で附勢する。追加的に、2次圧力回路54の第1領域53によっても、歯車セットを冷却する。歯車セットの冷却の方向に導かれる油圧流体体積流は、歯車セット冷却弁61を介して、変速機2の歯車セットの領域へ導かれる。この領域は、実際に接続される各クラッチK1またはK2に対して割り当てられ、および実際に変速機2を介して導かれるトルクを伝達する。このために、クラッチ弁62、63の領域で調整される各作動圧力は、クラッチK1およびK2のために歯車セット冷却弁61の制御面の領域に作用し、および歯車セット冷却弁61が所望されるシフト位置へと移行され、変速機2の歯車セットにおいて実際にパワーフローに接続される領域に、必要な範囲の冷却油および潤滑油を供給する。この場合第2ポンプユニット44の圧力側64は、逆止弁ユニット65を介して、逆止弁ユニット65が応答限界に達すると、1次圧力回路46と接続される。第2ポンプユニット44の圧力側64の圧力p64は、パイロット制御圧調整弁60を介してパイロット制御可能な圧力制限弁66または保持弁に応じて可変である。
【0044】
第1ポンプユニット43を介して、割り当てられたアクチュエータに対して、必要に応じて油圧が供給される。従って、例えば両クラッチK1およびK2に割り当てられたクラッチ弁62および63、ならびにパークロックシステム67に対して、1次圧力回路46または第1ポンプユニット43から油圧流体が供給される。原則的に第2ポンプユニット44は、独自に低圧回路を実現する2次圧力回路54の第1領域53に対して割り当てられ、歯車セットの冷却のための潤滑スピンならびにいわゆるハングオンクラッチを実現する全輪クラッチ68に、供給する。
【0045】
変速機2を備えて構成された車両ドライブトレインの、この場合には内燃機関として構成された駆動機関が作動され、ならびに変速機入力軸の回転数がゼロを上回り、および同時に車両速度または駆動速度が同様にゼロを上回る通常の駆動状態の間は、変速機2の歯車セットおよび全輪クラッチ68の双方ともが、少なくとも第2ポンプユニット44から、第1領域53を介して油圧流体を供給される。通常、変速機2の歯車セットに対する負荷は、車両速度の上昇につれて増加するため、車両速度に比例するポンプ作動回転数または搬送流量を有する第2ポンプユニット44を介して、所定の作動ポイントにおいて自動的に、必要に応じて追加的に、歯車セットが冷却および潤滑される。
【0046】
車両の静止時、または車両速度が低速で同時に歯車セットの領域におけるトルク負荷が高い場合、例えば駆動機関の回転数がほぼ最大であり、および運転手が同時に駆動ブレーキを作動するレーススタートの間は、前述した作動装置1の構成に起因して、変速機2の歯車セットに、追加的に第1ポンプユニット43またはベーンポンプから、システム圧力弁47、バイパス弁52および冷却弁48を介して油圧流体を供給可能である。第1ポンプユニット43からの、第1領域53へのこうした追加的な供給可能性により、原則的に第2ポンプユニット44のサイズがより小型化可能である。
【0047】
車両ドライブトレインの駆動機関が、例えばセーリング駆動等、車両速度が速い間に停止され、および第1ポンプユニット43が油圧流体を搬送しない場合、1次圧力回路46に対して、逆止弁ユニット65を介して、その場合出力回転数またはそれと等しい回転数で作動される第2ポンプユニット44から、油圧流体を供給可能である。第2ポンプユニット44の圧力側64の圧力が圧力制限弁66を介して高められる場合、変速機2または変速機2を備えて構成された車両ドライブトレインにおける所定の駆動ポイントで、例えばギヤのトラッキング、クラッチの冷却等、変速機において制限された機能を、第2ポンプユニット44を介して維持可能である。
【0048】
第2ポンプユニット44は、車両ドライブトレインにおいてそうした駆動状態が進行する間、第2ポンプユニット44の駆動エネルギーを車両質量から引き出し、および直接エネルギー変換するため、電気駆動式の補助ポンプと比較して、車中電気ネットワーク等に不所望な負荷を与えることがなく、更に好適な効率性で駆動可能であり、ならびに構造スペース対必要パワーの比が低減されることを特徴とする。その際、更なる電力消費装置に対しては、追加的な電気駆動式ポンプを備えて構成された車両の電力消費装置に対するよりも、長い時間に亘って電気エネルギーを供給可能である。特にセーリング駆動の間には、発電機で駆動可能な電気機械が装備されている場合、変速機の領域に入力される変速比により、変速機のクラッチを作動圧力で附勢すると同時に、状況によっては蓄電装置の充電さえ可能である。
【0049】
変速機2を備えて構成された車両の速度がゼロよりも大きい限り、駆動機関自体が停止されても、1次圧力回路46の枯渇は回避される。なぜなら1次圧力回路46は、第2ポンプユニット44から、逆止弁ユニット65の開放に必要な正の圧力勾配を上回るよう、第2ポンプユニット44の圧力側64と1次圧力回路46の間で、第2ポンプユニット44から恒久的に油圧流体を供給されるためである。これにより他方では、駆動機関が再スタートする際、所望される変速段を入力し、および同時に変速機2のクラッチを圧迫する等の所望される駆動状態を、大幅な遅滞無く構築可能である。
【0050】
例えば変速機2においてシフトチェンジする間、要求される各シフトを所望の短い作動時間内で遅滞無く実行可能とするために、1次圧力回路46からの両クラッチK1およびK2の冷却は、冷却弁48の領域で停止する。こうした作動状態においては、第2ポンプユニット44を介して、歯車セットに油圧流体を供給可能である。
【0051】
両ポンプユニット43および44は、共通のフィルタユニット70を有する共通の吸入ライン69を備える。走行速度が充分に速い場合、第2ポンプユニット44の吸入充填は、共通の吸入ライン69のために使用され、それにより、両ポンプユニット43および44のエネルギー的負荷を軽減可能である。両ポンプユニット43および44は、共通の吸入ライン69を介して、共通のオイルチャンバ71から油圧流体を吸入する。オイルチャンバ71は、実質的に低圧領域31に対応するか、または低圧領域31と接続される。
【0052】
図2に詳細な態様で示す作動装置1は、ハウジング75を備えて構成される。ハウジング75内には、上記に詳述した制御および調整部品を配置可能であり、ならびにこれら部品を互いに接続する油圧ラインを備える。ハウジング75は、ポンプユニット43および44、または油圧ポンプと連結可能であり、およびこの場合2つのハウジング部分76、77を備える。ハウジング部分76、77は、油圧流体を交換するインターフェイスユニット78の領域で、互いに接続される。
【0053】
この場合、ハウジング部分76は作動装置1の流路板であり、およびハウジング部分77は作動装置1の弁板である。これら流路板と弁板の間には、インターフェイスユニットとして作用する中間板78が挿入され、中間板78により、弁板77と流路板76の間の移行位置を、その都度僅かな労力で、費用対効果に優れた態様で変更可能である。作動装置1または作動装置1のハウジング75は、いわゆる構造ブロックまたはモジュールを実現する。これらは、デュアルクラッチ式変速機の多様に異なる変速機派生ユニットに使用可能であり、デュアルクラッチ式変速機のハウジング部分76および77は、変速機2の変速機部品への供給に必要な制御および調整部品と共に組立て可能であり、ならびにそれら部品のために必要な油圧ラインを備えて構成される。作動装置1は、ハウジング部分76と77の間に装備されたインターフェイスユニット78を介して、各変速機コンセプトに対して適応される。
【0054】
図3乃至
図5は、
図1の作動装置1の冷却弁48の各構造設計を示す。システム圧力弁47を介して冷却弁48の方向へ導かれる油圧流体体積量qzuは、冷却弁48を介して、冷却弁48の3つの出力ラインの間でほぼ随意に分配可能である。冷却弁48は、いわゆる分流器を実現する。3つの出力ラインのうちの常に1つの出力ラインには、分流器を介しては、油圧流体体積が供給されない。その際分流器または冷却弁48には、常に2つのライン抵抗間の比率のみが作用するため、流路断面が充分に大きいと仮定すると、分配回路を介して、追加的な圧力上昇が抑えられる。システム圧力弁47を介して供給する油圧流体体積流qzuを、システム圧力回路54の第1領域53、2次圧力回路54の第2領域55、および両ポンプユニット43と44の吸入充填を行なうライン58の間で、所望の範囲で分配可能とするために、
図3乃至
図5に示す弁回路を提案する。
【0055】
冷却弁48は、この場合7つの弁ポケット48A乃至48Gを備えて構成される。弁ポケット48Gを、パイロット制御圧調整弁60により、パイロット制御圧力p_VS48で継続的に圧迫することで、冷却弁48のバルブスプール79は、ばねユニット59に抗して継続的に移動する。弁ポケット48Eの領域で供給可能な油圧流体体積流qzuは、
図3に示すバルブスプール79の位置では、全体が弁ポケット48Dの方向に導かれるため、2次圧力回路54の第1領域53の方向に更に導かれる。これは、ライン58を介する吸入充填にも、冷却弁48を介するデュアルクラッチシステム56の冷却にも、油圧流体体積が供給されないことを意味する。
図4はバルブスプール79の中間位置を示す。一方、
図5においてバルブスプール79は、ばねユニット59のばね力に抗して、パイロット制御圧力p_VS48により、バルブスプール79の第2端位置に全体が移動されている。
【0056】
図6は、冷却弁48の開放特性を示す。関数A(x)は、バルブスプール79により開放可能な、弁ポケット48Eと48Dの間の冷却弁48の開放面を示し、一方xは、バルブスプール79のストロークに対応する。他方更なる関数B(x)は、バルブスプール79により開放可能な弁ポケット48Eと48Fの間の開放面に対応し、一方関数C(x)は、バルブスプール79のストロークxを介して調整される、弁ポケット48Cと48Bの間の領域における冷却弁48の各開放面を反映する。
【0057】
図3に示す、冷却弁48またはバルブスプール79のスタート位置においては、冷却弁48の領域において、まず弁ポケット48Eと48Dの間の開放面A(x)のみが、歯車セットの冷却または第1領域53の方向に開放される。バルブスプール79のストロークxが、
図3に示す第1端位置から、
図5に示す第2端位置の方向へと増加するにつれて、開放面A(x)は単調に減少する。バルブスプール79が、第1端位置からストローク値x1だけ離れると、まず冷却弁48の領域の流路も、デュアルクラッチシステム56の冷却の方向へと開放するため、進行C(x)が上昇する。C(x)の開放特性は、まずは単調に上昇する。バルブスプール79が、第1端位置からストローク値x2だけ離れて始めて、C(x)の開放特性は、バルブスプール79においてストロークが更に増加するにつれて、今度は単調に下降する。
【0058】
図3乃至
図5に示す冷却弁48の構造設計において、弁ポケット48Eおよび48Cの領域の取り入れ口は、決して同時には弁ポケット48Fおよび48Dと接続されない。この態様は、
図6のグラフから見て取れる。なぜなら開放面A(x)はすでに、開放面B(x)も依然として全体がバルブスプール79により閉鎖されているストローク値x3以降、ゼロと等しいためである。バルブスプール79が、
図5に示す第2端位置に到達すると、バルブスプール79により全体が開放される開放面B(x)は、ストローク値x4以降でようやく単調に上昇する。しかしながら、バルブスプール79の第2端位置において開放面C(x)は、バルブスプール79により、まだ全体が遮断されてはいない。
【0059】
図4に示す、バルブスプール79の中間位置において、弁ポケット48Eと48Cの領域に作用する油圧流体体積流qzuは、実質的に同比率で、第1領域53の方向およびデュアルクラッチシステム56の冷却の方向へ、更に導かれる。内部に存在する流入ポケットまたは弁ポケット48Eおよび48Cが特殊な形状をしているため、この作動ポイントにおいて、バルブスプール79に作用する静止流力が、ほぼ完全に平衡する。
【0060】
弁ポケット48Eおよび48Cの領域に作用する油圧流体体積流qzuの、第1領域53の方向、デュアルクラッチシステム56の冷却の方向、およびライン58または吸入充填の方向への分配を、以下の数式により数学的に表すことが可能である。
【0062】
この場合関数q53は、システム圧力弁47を介して冷却弁48に供給される油圧流体体積流qzuに応じて、冷却弁48を介して第1領域53の方向に導くことの可能な、各油圧流体体積流に対応する。関数q58は、吸入充填58に供給される油圧流体体積流であり、一方関数q55は、デュアルクラッチシステム56の冷却のために、冷却弁48のバルブスプール79において実際に存在する各ストロークxに応じて存在する油圧流体体積流に対応する。
【0063】
図7は、冷却弁48のバルブスプール79により標準化された、各進行q53/qzu、q55/qzuおよびq58/qzuを示す。
図7のグラフからは、例えば、バルブスプール79が第2端位置に達した場合、つまりストローク値x7が存在する場合、冷却弁48に供給される油圧流体体積流qzuが、吸入充填58の方向およびデュアルクラッチシステム56の冷却の方向へは規定の比率、この場合約85%を吸入充填の方向へ、および約15%をデュアルクラッチシステム56の冷却の方向へ、という比率で分配することが分かる。ストローク値x6が存在する場合、吸入充填58の方向への流れは、弁ポケット48Dの領域で絞られ、および同時に、油圧流体体積がデュアルクラッチシステム56の冷却の方向へ導かれる。バルブスプール79のこの位置においては、ストロークx2に対応するバルブスプール79の位置とは対照的に、バルブスプール79に作用する流力が自動的に平衡しない。
【0064】
基本的に、3つの開放面A(x)、B(x)およびC(x)全ての合計が、冷却弁48の油圧的な代替抵抗を表す。弁ポケットを適切なサイズで形成する、または弁の直径を対応したサイズとする場合、冷却弁48の代替抵抗を随意に低減可能である。それに依存することなく、冷却弁48のバルブスプール79は、各フローポケット48B乃至48Eの領域で同一の直径を備える。
【0065】
図1に示す油圧作動装置1の実施形態は、変速機2またはデュアルクラッチ式変速機の部品への供給に適している。なぜなら変速機2へは、互いに独立した両ポンプユニット43および44から油圧流体を供給可能なためである。調整されたベーンポンプである第1ポンプユニット43は、エンジン回転数に連結され、一方、定量ポンプである第2ポンプユニット44は、変速機2の出力軸に連結される。こうした構造設計により、原則的に4つの異なる駆動モードまたは駆動領域が可能である。
【0066】
変速機入力軸と連結可能な駆動機関が駆動している第1駆動モードの間、第1ポンプユニット43は油圧流体体積を搬送し、一方、第2ポンプユニット44は、同時に車両が静止している場合、搬送体積を供給しない。駆動機関が車両停止時に停止される第2駆動モードの間は、第1ポンプユニット43および第2ポンプユニット44の双方が、油圧流体体積を供給しない。第2駆動モードは、例えば駐車モードまたは交通信号機の前で停止する場合に該当する。車両の第3駆動モードは、車両がゼロを上回る車両速度で移動し、および駆動機関が作動されているため、第1ポンプユニット43および第2ポンプユニット44の双方からも油圧流体体積が搬送されることを特徴とする。これとは異なり、セーリング駆動とも呼ばれる第4駆動モードの間は、ゼロを上回る車両速度において駆動機関が停止され、第2ポンプユニット44からのみ油圧流体体積が供給される。
【0067】
図1に示すシフトプランを介して、車両が第1または第3駆動モードで駆動されている場合、第2ポンプユニット44は、歯車セット用の潤滑油ラインに供給し、および全輪クラッチ68を冷却するために使用される。この場合、関連する接続ラインにおける油圧抵抗は、構造的に可能な最低値にまで低減されるため、第2ポンプユニット44の油圧的なパワー消費も僅かである。
【0068】
セーリング駆動においては、第1ポンプユニット43の領域では油圧的なパワーを消費しない。追加的に、内燃機関として構成された通常の駆動機関も、パワーフリーである。パイロット制御圧調整弁60を電気的に制御することにより、油圧的な追加抵抗を活性化可能であり、この追加抵抗は、第2ポンプユニット44の搬送圧力レベルを著しく上昇させる。こうした手段を介して、第2ポンプユニット44を、セーリング駆動の際に変速機を作動させるため、例えばギヤのトラッキング等に使用可能である。
【0069】
駆動機関が作動され、および車両は実質的に停止している第1駆動モード、または第1駆動領域においては、まず第1ポンプユニット43から搬送された超過の油圧流体体積が、第1領域53または歯車セットの冷却の方向へ導かれる。そのために冷却弁48は、
図1に示すスタート位置にある。これにより有利なことに、例えば車両の冷間始動時に、デュアルクラッチシステム56が最初に冷却油で附勢されることがなく、および例えば、変速機2でギヤを入力する際に追加的な悪影響を及ぼすドラグトルクが発生不能である。
【0070】
第3駆動モードにおいては、一般に冷却弁48は、冷却弁48の第3シフト位置へ移行する。デュアルクラッチシステム56は第3シフト位置において、第1ポンプユニット43を介して冷却油で附勢され、一方、2次圧力回路54の第1領域53における歯車セットの冷却に対しては、第2ポンプユニット44から油圧流体体積が供給される。保持弁66は全体が開放される。なぜなら、保持弁66が冷却弁48と同様に、パイロット制御圧調整弁60によりパイロット制御圧力p_VS48で附勢されるためである。こうした手段により有利なことに、第2ポンプユニット44または歯車セットポンプは、極めて僅かな油圧抵抗に抗して搬送すればよい。逆止弁ユニット65またはブリッジ弁は、直前に述べた油圧作動装置1の作動状態の間、閉鎖される。なぜなら、第1ポンプユニット43の領域で発生されるシステム圧力p_sysが、保持弁66の上流の圧力よりも大きいためである。更なる逆止弁ユニット80は、歯車セットポンプ弁とも称され、車両が後退走行する際に安全弁として作動する。なぜならその場合、第2ポンプユニット44は、反対方向に駆動されることに起因して、第2ポンプユニット44の流れの方向を変化または転換させるためである。
【0071】
例えば、車両速度に比例して搬送された体積流が、第2ポンプユニット44の領域において、歯車セットの冷却および潤滑に必要な量に充分でない場合等、変速機2の歯車セットの領域で、追加的な冷却油量が必要とされる、変速機2を備えて構成された車両ドライブトレインの特別な駆動状態の間、冷却弁48は第2シフト位置へ移動する。第2シフト位置において、システム圧力弁47は、冷却弁48を介して、2次圧力回路54の第1領域53ならびに第2領域55の双方と接続する。
【0072】
変速機2を備えて構成された車両ドライブトレインの第4駆動モードにおいて、冷却弁48は第1シフト位置にある。第1シフト位置において、バルブスプール79はばねユニット59により、
図1に示す第1端位置へ全体が移動される。この場合保持弁66は、作用するパイロット制御圧力p_VS48無しで機能し、および第2ポンプユニット44の圧力側64の領域で、第2ポンプユニット44の搬送流にほぼ依存しない規定の圧力レベルを調整する。ブリッジ弁80を介して、第1ポンプユニット43のシステム圧力流路、および特に減圧弁25であって、電磁圧力調整器またはパイロット制御圧調整弁26、27、60および81乃至85、ならびに電磁弁19乃至21に接続された減圧弁25に、第2ポンプユニット44から油圧流体体積が供給される。これにより、例えばピストン‐シリンダ‐ユニット3乃至7、ならびにデュアルクラッチシステム56は、第2ポンプユニット44により油圧流体で附勢可能および作動可能であり、
図8に示す、保持弁66の下降する制御特性が可能となる。
【0073】
図8は、パイロット制御圧力p_VS48を介する、保持弁66の停留曲線を示す。パイロット制御圧力p_VS48は、パイロット制御圧調整弁60の領域で調整可能である。
図8のグラフから、保持弁66上流の圧力p64は、パイロット制御圧力p_VS48Aまで、その最大値p64_maxを有することが分かる。パイロット制御圧力値p_VS48が上昇するのと共に、圧力p64は、第2パイロット制御圧力値p_VS48Bまで継続的に下降し、およびこのパイロット制御圧力値p_VS48B以後、その最小値p64_minを有する。
【0074】
図1に対して代替的に、
図9に示すように、冷却弁48は保持弁66を介して、2次圧力回路54の第1領域53と作動接続するか、作動接続に至ることが可能である。これにより有利なことに、駆動機関のスタートの間、1次圧力回路46の領域で、システム圧力p_sysが必要に応じて幾分迅速に構築される。その際保持弁66はそのスタート位置にある。パイロット制御圧力p_VS48が実質的にゼロに等しく、および、この場合には閉鎖された作動状態にある保持弁60領域で流れがない場合、冷却弁48を介して保持弁66の上流で供給する油圧流体体積流は、ブリッジ弁65の上流の圧力がその応答限界より大きいか、または応答限界に等しい場合、1次圧力回路46へ導かれる。
【0075】
図10は、
図1の油圧作動装置の実施形態の発展形態を示す。この発展形態においては、パイロット制御圧調整弁60は、上昇する電流‐圧力‐特性曲線を有する圧力調整器である。これにより有利なことに、パイロット制御圧調整弁60において電気的または機械的動作不能状態が発生した場合、
図1の作動装置1の実施形態におけるのと同様に、デュアルクラッチシステム56の冷却は作動されない。追加的には、パイロット制御圧調整弁60において電気的または機械的な動作不能状態が発生した場合、デュアルクラッチシステム56の冷却に加えて吸入充填も作動される。上昇する電流‐圧力‐特性曲線を有する圧力調整器を使用することで、存在する各適用ケースに応じて、状況により素早く車両を使用可能とする。
【0076】
図11に示す、
図1の油圧作動装置の更なる実施形態においては、保持弁66が、供給される別の圧力信号によりパイロット制御される。保持弁66の領域に作用可能なパイロット制御圧力p_VS66は、第1ポンプユニット43と、いわゆる遮断弁86の間に存在する圧力に該当する。遮断弁86は、圧力制限弁として構成される。
【0077】
作動装置1のこの実施形態により有利なことに、第1ポンプユニット43の搬送圧力が低下した場合、更なる追加手段なしで、例えば制御装置の内部ラインを介して、保持弁66を保持弁66の最大圧力レベルに常に調整する。特に、変速機2の作動温度が低く、そのために油圧作動装置1の領域で使用される油圧流体の作動温度も低い場合には、2次圧力回路54の第1領域53を介して変速機2の歯車セットを冷却することに起因して、無視できないほどのドラグトルクが発生する。
【0078】
こうした理由から、以下に詳述するアプローチを介して、ポンプ装置42、つまり第1ポンプユニット43および第2ポンプユニット44に搬送される油圧流体体積流を制御し、歯車セットに必要な冷却油流が、第1ポンプユニット43および第2ポンプユニット44から供給する油圧流体体積流に対応するよう調整を試みる。デュアルクラッチシステム56および歯車セット用に供給する各冷却油流は、前述の範囲で、エンジン側で作動される調整可能なベーンポンプ43および出力側で作動される歯車セットポンプ44を介して搬送される。
【0079】
歯車セットポンプの44の搬送量は、前述の範囲で走行速度に依存する。一方、ベーンポンプ53の搬送量は、電磁的に制御可能なパイロット制御段またはパイロット制御圧調整弁82を介して調整可能である。さらに、両ポンプユニット43および44から供給する油圧流体体積流の合計は、冷却弁48を対応して制御することにより、パイロット制御圧調整弁60を介して分配可能である。ポンプユニット43および44の供給する搬送体積を分配し、変速機2がデュアルクラッチシステム56および歯車セットの領域で必要とする冷却油流を、両ポンプユニット43および44の搬送体積と等しくする必要がある。
【0080】
デュアルクラッチシステム56の冷却ならびに歯車セットの冷却の双方に使用可能な各油圧流体体積流は、冷却弁48および第1ポンプユニット43の下流に装備されたダイヤフラム弁87の制御に応じて、異なる分配度で両ポンプユニット43および44から供給または搬送される。このために、冷却弁48はパイロット制御圧調整弁60により、およびダイヤフラム弁87はパイロット制御圧調整弁82により、対応するパイロット制御圧力で附勢される。
【0081】
冷却弁48がいわゆる中央位置にある場合、第1ポンプユニット43の冷却油体積流は、専らデュアルクラッチシステム56の冷却に使用される。一方、第2ポンプユニット44から搬送された油圧流体体積流は、変速機2の歯車セットを潤滑および冷却するために、2次圧力回路54の第1領域53に供給される。冷却弁48は、デュアルクラッチシステム56の領域で負荷が高く、同時に歯車セットの負荷が僅かである場合、中央位置へと移行する。冷却弁48のバルブスプール79が、バルブスプール79の第1端位置にある場合、冷却弁48を介してデュアルクラッチシステム56の方向へ導かれる冷却油流は、実質的にゼロに等しい。その場合ベーンポンプ43および歯車セットポンプ44の搬送体積は、実質的に全体が変速機2の歯車セットの冷却または潤滑に使用される。
【0082】
冷却弁48は、いわゆる分流器を実現し、分流器は2つの圧力源から供給を受ける。
図12は冷却弁48の代替回路図を示す。冷却弁48は、両ポンプユニット43および44から、各油圧流体体積流q43またはq44で附勢される。冷却弁48の流れは、流出する油圧流体体積流53として第1領域53の方向で、および流出する油圧流体体積流q56の形状でデュアルクラッチシステム56の方向で実現される。冷却弁48へと流れる両油圧流体体積流q43およびq44は、冷却弁48のバルブスプール79の位置に応じて、デュアルクラッチシステム56および歯車セットの方向へ異なる分配度で、第1領域53を介して更に導かれる。変速機2のデュアルクラッチシステム56および歯車セット用に必要な各冷却油体積流q56およびq53は、熱モデルにより決定される。追加的に、歯車セットポンプ44の搬送体積は、常に温度および走行速度に応じて算出される。
【0083】
まず走行モードにおいて周期的に、冷却弁48の最適な制御領域が決定される。この場合、以下に詳説するように、
図13においてパイロット制御圧調整弁60の作動電流i60に関して示す制御領域A乃至D2が関連する。ゼロに等しい作動電流i60の領域と第1作動電流値i60Aの間に延在する制御領域Aは、追加的に、この場合は下部制御領域と称される更なる2つの作動領域に細分化される。制御領域Aの第1下部制御領域は、作動電流値i60Aよりも小さい作動電流値i60A1にまで延在する。より小さい作動電流値i60A1に至るまで、第1ポンプユニット43から供給する油圧流体体積流q43は、冷却弁48を介して大部分が、両ポンプユニット43および44の吸入充填q43(58)へと、ライン58を介して排出される。より小さい部分q43(56)は、デュアルクラッチシステム46の冷却用に、冷却弁48を介して第2領域55の方向へ更に導かれる。
【0084】
作動電流値i60が上昇するにつれて、吸入充填用に提供された油圧流体体積q43(58)は一定で減少する。一方、デュアルクラッチシステム56の冷却用に提供された油圧流体体積部分q43(56)は、制御領域Aの第2下部制御領域において増加する。パイロット制御圧調整弁60に作動電流値i60Aが流れる場合、第1ポンプユニット43から供給する全油圧流体体積q43が、冷却弁48の領域で、デュアルクラッチシステム56の冷却用に、2次圧力回路54の第2領域55の方向へ導かれる。第1制御領域Aに接続する第2制御領域Bの間は、ベーンポンプ43から供給する油圧流体体積q43は、専らデュアルクラッチシステム56の冷却用に使用される。一方、変速機2の歯車セットは、第1制御領域Aならびに第2制御領域Bの双方内で、専ら歯車セットポンプ44から、油圧流体体積q44(53)で冷却および潤滑のために附勢される。
【0085】
作動電流i60が更に上昇するにつれて、冷却弁48のバルブスプール79も更に調整され、および冷却弁48が第3制御領域C内で作動する。第3制御領域Cは、今度は第2制御領域Bに接続する。冷却弁48の第3制御領域C内では、ベーンポンプ43によりデュアルクラッチシステム56の方向へ導かれた油圧流体体積q43(56)が一定で下降する。一方、ベーンポンプ43から搬送された油圧流体体積q43が増加し、2次圧力回路54の領域53を介して歯車セットを冷却するために使用される。歯車セットポンプ44から供給する油圧流体体積流q44の場合は、まず作動電流i60が上昇するにつれて、進行q44(53)に従い増加して、より僅かな範囲で歯車セットの方向へ、および進行q44(56)に従い、増加する範囲でデュアルクラッチシステム56の方向へ導かれる。作動電流i60が更に上昇するにつれて、歯車セットポンプ44から搬送された油圧流体体積流q44のうち、デュアルクラッチシステム56の方向へ導かれた部分q44(56)は、再度ゼロ方向へ低下する。一方、変速機2の歯車セットの方向へ導かれた部分q44(53)は、歯車セットポンプ44から搬送された油圧流体体積流q44の全体が歯車セットの方向へ導かれるまで、再度上昇する。第3制御領域Cには、今度は第4制御領域Dが接続する。第4制御領域D内では、ベーンポンプ43および歯車セットポンプ44から搬送された油圧流体体積流の全体が、歯車セットの冷却用に、2次圧力回路54の第1領域53を介して導かれる。第4制御領域D内では、デュアルクラッチシステム56は冷却されない。
【0086】
追加的に制御領域D1において、パルス幅変調制御を、作動電流値i60Bとi60Cの間の領域で実行可能である。制御領域D1に接続する制御領域D2内で、保持弁66を切換える。
【0087】
各作動状態に応じた最適な、冷却弁48の制御領域A乃至D2を決定可能とするために、
図14に示すアプローチを実行する。アプローチは、第1ステップS1で始動する。第1クエリステップS2の間、例えば駆動機関の回転数が400 r/minより小さいかどうかを確認する。照会結果が肯定であれば、パイロット制御圧調整弁60にはi60Cより大きなパイロット制御圧力値が流れ、および冷却弁48を制御領域D2内で作動させる。第1クエリステップS2の照会結果が否定であれば、第2クエリステップS3へ分岐する。第2クエリステップS3の間、デュアルクラッチシステム56の冷却が要求されているかどうかを確認する。対応する要求が存在しない場合、クエリステップS3から第3クエリステップS4へ分岐する。しかしながら、デュアルクラッチシステム56を冷却する、対応する要求が存在する場合、冷却弁48を制御領域D内で作動させる。
【0088】
第3クエリステップS4の間、変速機2の歯車セットを、実際に歯車セットポンプ44から供給する油圧流体体積流よりも大きな油圧流体体積流で附勢するという要求が存在する場合、ベーンポンプ43が実際に、デュアルクラッチシステム56を冷却するために必要な油圧流体体積よりも大きな油圧流体体積を搬送しているかどうかを確認する。照会結果が肯定であれば、冷却弁48を第3制御領域C内で作動させる。一方、第3クエリステップS4の紹介結果が否定であれば、第4クエリステップS5へ分岐する。第4クエリステップS5の間、デュアルクラッチシステム56が、歯車セットポンプ44から油圧流体体積で附勢可能であるかどうかを確認する。この場合、第4クエリステップS5の間、デュアルクラッチシステム56の領域に、歯車セットポンプ44から供給可能であって、および歯車セットの冷却のために第1領域53で供給不足を発生させない冷却油需要があるかどうかを確認する。
【0089】
第4クエリステップS5のクエリが肯定の紹介結果へ導かれる場合、冷却弁48を第3制御領域C内で作動する。一方照会結果が否定であれば、第5クエリステップS6を介して、ライン58の方向へ冷却弁48を介して導かれる油圧流体体積流が、デュアルクラッチシステム56の領域において、要求される冷却性能に達しない大きさかどうかを確認する。これは、ライン58を介して導かれる最小体積流が、デュアルクラッチシステム56を、所望される範囲では冷却しない大きさである場合に該当する。照会結果が肯定であれば、冷却弁48を制御領域D1内で作動させる。
【0090】
照会結果が否定であれば、第6クエリステップS7の間、ベーンポンプ43が、デュアルクラッチシステム56の方向にデュアルクラッチシステム56を冷却するために導かれる油圧流体体積流よりも、大きな油圧流体体積流を搬送するかどうかを確認する。第6クエリステップS7の照会結果が肯定であれば、冷却弁48を第1制御領域A内で作動する。一方、照会結果が否定であれば、第2制御領域B内での冷却弁48の作動を誘起する分岐ステップS8へ分岐する。
【0091】
冷却弁48の各制御領域A乃至D2を、前述のアプローチを介して決定した後、ベーンポンプ43の搬送体積を、選択された各制御領域A乃至D2に応じて決定する。冷却弁49を前述のように制御することで、ベーンポンプ43の搬送性能を状況に応じて調節可能となり、従ってベーンポンプ43の油圧的動力損失も燃料消費を最適化して調整可能である。
【0092】
基本的に冷却弁48は、デュアルクラッチシステム56の方向へ導かれる体積流量q56、および歯車セットの方向へ導かれる体積流q53を、各々以下の数式に従う関連性により調整するよう制御する。
【0094】
この場合、数式の符号f43は、ベーンポンプ43により供給する各油圧流体体積流q43の分配因子に対応し、および数式の符号f44は、歯車セットポンプ44により供給する油圧流体体積流q44の、冷却弁48のバルブスプール79のストロークを介するデュアルクラッチシステム56の方向への分配度に対応する。
図15は、ベーンポンプ43および歯車セットポンプ44の特性曲線f43およびf44の、デュアルクラッチシステム56へ供給する冷却弁48のバルブスプール79の位置に応じた進行を示す。因子f43は0と1の間の値を、および因子f44は0と約0.2の間の値をとる。
【0095】
パイロット制御圧調整弁60の領域において、冷却弁48のバルブスプール79に要求される各位置を調整するために作用する各作動電流i60を決定可能とするために、例えば以下に詳説するアプローチを実行可能である。
【0096】
ベーンポンプ43から最適な作動ポイントで供給する油圧流体体積流q43は、デュアルクラッチシステム56を冷却するために必要な冷却油体積流q56の合計、および歯車セットの冷却のために供給する冷却油体積流q53から決定する。ここから更に、歯車セットポンプ44から供給する油圧流体体積流q44を引く。続いて
図15の特性曲線f43およびf44は、ベーンポンプ43の最適な油圧流体体積流および歯車セットポンプ44から供給する体積流とを有して走る。また続いて、パイロット制御圧調整弁60の様々な位置で、以下のマトリックスが算出可能であるかどうかを確認する。
【0098】
この場合第1括弧は、冷却弁48のいわゆる分配マトリックスを表す。マトリックスの条件を満たすことができない限り、パイロット制御圧調整弁60は、前述された第1の特殊ケースに従って制御される。この特殊ケースの間、冷却弁48はいわゆる中央位置にある。中央位置は、特にクラッチ負荷が高くおよび歯車負荷が僅かである場合に、変速機2の領域において制御される。
【0099】
マトリックスの設定条件が満たされるまで、このアプローチが実行される。その際、存在する各作動状態に応じて調整される冷却弁48のバルブスプール79の位置を、僅かな労力で、補間により決定可能である。
【0100】
基本的に、パイロット制御圧調整弁60の制御のストラテジーは、ベーンポンプ43により供給する冷却油流を最小値にまで低減するものである。なぜなら、ベーンポンプ43は、歯車セットポンプ44よりも高い圧力領域で作動するためである。従ってこれにより、両ポンプユニット43および44の領域での損失が低減される。追加的に、歯車セット冷却用の歯車セットポンプ44の冷却油流を第1領域53で最小化し、ドラグトルクを低減する。歯車セットポンプ44から供給する超過の油圧流体体積流は、デュアルクラッチシステム56を冷却するために使用される。
【0101】
油圧ラインの枯渇を避けるために、クラッチ弁62、63、ならびにハングオンクラッチ68に割り当てられた更なるクラッチ弁88は、いわゆる先行充填弁89および90と作動接続に至ることが可能である。通常は、変速機の油圧作動装置の複数の圧力調整弁が、共通の先行充填弁により分割される。先行充填弁の領域において、油圧ラインにおける、ある最低圧力が調整される。典型値は0.2乃至0.4バールである。先行充填弁は多くの場合、プレート弁のようなばね附勢型ポペット弁として構成される。先行充填弁自体は、関連する油圧制御体積に対して規定の最小流量が存在する場合にのみ、一定の先行充填圧力を調整可能である。最小流量が、例えば関連する弁の漏れにより達成される場合、例えば駆動機関の作動開始直後には、関連する圧力レベルが定義されない。
【0102】
さらに、構造スペースおよびコスト的な理由から、通常は先行充填弁の個数が最小となるよう配慮する。しかしながら、これによって不利なことに、関連するネットワークトポロジーが著しく複雑となる。なぜなら少なくとも2つ、しばしば5つにまでなる圧力調整弁が共通流路に接続され、この流路が今度は対応する先行充填弁を介して、その後、例えばオイルチャンバ71であるオイルサンプに接続されるためである。従って構成部品の個数低減は、ラインの配索を複雑化して達成されるものである。関連する各パイロット制御段、または関連する各パイロット制御圧調整弁に流体が流れない場合、関連するアクチュエータにより常に先行充填圧力レベルが作用する。
【0103】
これまでに既知の油圧作動装置は、複数の圧力調整弁用の先行充填弁の個数を、可及的に低減して備えるよう構成されており、特に以下の欠点を有する。
【0104】
アクチュエータ、クラッチ、シフト用シリンダー等は先行充填ラインを介して流体が排出されるため、関連するラインの断面サイズが比較的大きい。追加的に、接続される弁の個数に応じた先行充填ラインが、作動装置のハウジング全体を交差する。そのために必要な構造スペースは、不利なことに、もはや残りのネットワークトポロジーをアンバンドリングするためには使用できない。
【0105】
更に不利な点として、流路断面が大きいにも係らず、低い作動温度で作用するライン抵抗に起因して、クラッチの領域における押出し時間が著しく長くなる。3/2‐圧力調整弁のタンク接続部が、関連する先行充填弁からどの程度離れているかにより、排出時間は追加的に、著しく分散する可能性もある。こうした理由から、排出過程のための温度変化が、個々のシフト動作の即応性に、無視できない範囲で影響を及ぼす可能性がある。さらに不利な点として、厳密性を理由に必要な活発な先行充填が原因で、漏出損失が発生し、それにより全効率が低下する。
【0106】
クラッチの開放時、つまり接続された圧力調整弁のうちの少なくとも1つが、先行充填弁を介して急速に排出される場合、先行充填ラインの領域で、圧力が短時間に上昇する。全ての他の、好適には開放されたクラッチまたはギヤアクチュエータは、その場合それらの共通の先行充填圧力レベルを介して、より高い圧力レベルで附勢される。こうした作動状態の間、例えば圧力センサの校正等は実行不可能である。先行充填ラインの領域において、現に存在する油圧流体体積の作動温度に応じて先行充填が活発に行なわれていない場合、不利なことに、先行充填圧力が再び正しく構築されるまでにかかる時間が、全体で10秒をも上回る可能性がある。従って、特に変速機の作動温度が低い場合には、校正過程を全く実行不可能である。
【0107】
クラッチ弁62、63および88、ならびに圧力調整弁28および29、またはギヤ弁は、いわゆるばね附勢型スプール弁として構成される。これは、調整弁62、63、88または28、29のバルブスプールが、対応して制御されることなく、関連するパイロット制御段83、84、85または26または27を介して、機械的な端部ストッパに対して作用する各ばね力に導かれることを意味する。この場合調整弁62、63、88または28および29のバルブスプールは、調整弁62乃至29のタンク接続部と、関連する各先行充填ラインの間に、充分な開放断面を確保するために、比較的大きいストロークを移動する。関連するパイロット制御段83、84、85または26、27が、各パイロット制御圧力を調整弁62乃至29の領域に作用させると即座に、バルブスプールが各ばね力に抗し、現に存在する端位置から移動する。大きなストロークに起因して、制御挙動および調整挙動において、制御信号と、要求される作動圧力または連結圧力が対応して調整される時点との間に、著しいデッドタイムが発生する。この場合、バルブスプールが通るべき各ストロークが大きくなるほど、圧力構築の即応性はより強く低減する。
【0108】
前述した、実質的に5つの主な欠点は、バルブスプールに一体化された先行充填弁により除かれるか、または
図16に示す油圧作動装置1の油圧トポロジーにより回避される。各圧力調整弁62、63、88および28、29は、オイルサンプまたは共通のオイルチャンバに直に接続される。構造的にこれらの接続は、関連するキャストポケットに直に構成される。油圧作動装置1のこの領域の枯渇を避けるために、圧力調整弁62乃至29は、
図16に示す範囲で、作用可能な各パイロット制御圧力に対して同様に作用するばねユニットを備えて構成される。これにより、圧力調整弁62乃至29の領域にパイロット制御圧力が作用していない場合、独立した各先行充填圧力が、圧力調整弁62乃至29自体を介して調整される。
【0109】
図16に示す油圧作動装置1の構造設計により、圧力調整弁62乃至29の間に、先行充填ラインを介する連結部が存在しない。追加的に、圧力調整弁62乃至29のバルブスプールの先行充填圧力を独立して調整することで、活発な先行充填がもはや必要とされなくなる。