(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6586427
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】送風/充填/シール装置用滅菌システム
(51)【国際特許分類】
A61L 2/20 20060101AFI20190919BHJP
B67C 7/00 20060101ALI20190919BHJP
A61L 101/02 20060101ALN20190919BHJP
【FI】
A61L2/20
B67C7/00
A61L101:02
【請求項の数】14
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-565124(P2016-565124)
(86)(22)【出願日】2015年1月19日
(65)【公表番号】特表2017-507762(P2017-507762A)
(43)【公表日】2017年3月23日
(86)【国際出願番号】US2015011916
(87)【国際公開番号】WO2015109282
(87)【国際公開日】20150723
【審査請求日】2017年12月18日
(31)【優先権主張番号】61/929,374
(32)【優先日】2014年1月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504298235
【氏名又は名称】ウェイラー エンジニアリング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・エイチ・リード
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ダブリュー・ゴール
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・ディー・スタンリー
【審査官】
井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−272173(JP,A)
【文献】
特表2001−518816(JP,A)
【文献】
特表2004−524085(JP,A)
【文献】
特表2012−518485(JP,A)
【文献】
特表2012−520133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/00−12/14
B67C 3/00−11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填アセンブリを有する、送風、充填及びシール装置のための滅菌システムであって、
前記充填アセンブリを囲んでおり、かつプレナム、滅菌ガス入口及び滅菌ガス出口を形成している覆い部と、
前記滅菌ガス入口と、前記滅菌ガス出口との間の少なくとも1つの滅菌ガス流路を形成している外部配管と、
前記覆い部を通して前記滅菌ガスを循環させるために、前記滅菌ガス入口に隣接している、前記外部配管内に設けられた送風装置と、
前記送風装置と前記滅菌ガス入口との間の滅菌ガス流路内に設けられている、少なくとも1つの高効率粒子吸収(HEPA)フィルターと、
前記送風装置と前記HEPAフィルターとの間の前記外部配管に通じている、加湿器含有加湿された空気用配管と、
前記送風装置と流路で接続されている滅菌ガス源とを備え、
前記滅菌ガスが二酸化窒素を含んでいる、滅菌システム。
【請求項2】
前記外部配管に関連して設けられている湿度センサーをさらに有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記外部配管に関連して設けられている滅菌剤濃度センサーをさらに有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記送風装置の上流側で前記外部配管に前記流路で接続されている洗浄空気配管をさらに有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記覆い部に前記流路で接続されている排気用配管をさらに有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記排気用配管内に設けられた滅菌剤センサーをさらに有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記覆い部に関連して設けられている圧力ゲージと、前記外部配管に関連して設けられている圧力ゲージとをさらに有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
送風、充填及びシール装置における充填アセンブリの滅菌方法であって、
前記充填アセンブリを囲んでおり、かつプレナム、滅菌ガス入口及び滅菌ガス出口を形成している覆い部と、
前記滅菌ガス入口と、前記滅菌ガス出口との間の少なくとも1つの滅菌ガス流路を形成している外部配管と、
前記覆い部を通して前記滅菌ガスを循環させるために、前記滅菌ガス入口に隣接している、前記外部配管内に設けられた送風装置と、
前記送風装置と前記滅菌ガス入口との間の滅菌ガス流路内に設けられている、少なくとも1つの高効率粒子吸収(HEPA)フィルターと、
前記送風装置と前記HEPAフィルターとの間の前記外部配管に通じている、加湿器含有加湿された空気用配管と、
前記送風装置と流路で接続されている滅菌ガス源とを備え、
前記滅菌ガスが二酸化窒素を含んでいる、送風、充填及びシール装置のための滅菌システムを用いた滅菌方法であって、
滅菌ガス1リットル当たり、10〜20ミリグラムの二酸化窒素を含み、相対湿度50%〜75%の滅菌ガスを供給するように、二酸化窒素と、加湿された空気とを組み合わせる工程と、
18℃〜30℃の範囲の温度で、少なくとも20分の時間期間の間、前記充填アセンブリを前記滅菌ガスに接触させる工程と、
次に、少なくとも65℃の温度で、少なくとも20分間、空気により充填アセンブリを洗浄し、残留二酸化窒素を除去する工程とを備える、滅菌方法。
【請求項9】
送風、充填及びシール装置における充填アセンブリの滅菌方法であって、
前記充填アセンブリを囲んでおり、かつプレナム、滅菌ガス入口及び滅菌ガス出口を形成している覆い部と、
前記滅菌ガス入口と、前記滅菌ガス出口との間の少なくとも1つの滅菌ガス流路を形成している外部配管と、
前記覆い部を通して前記滅菌ガスを循環させるために、前記滅菌ガス入口に隣接している、前記外部配管内に設けられた送風装置と、
前記送風装置と前記滅菌ガス入口との間の滅菌ガス流路内に設けられている、少なくとも1つの高効率粒子吸収(HEPA)フィルターと、
前記送風装置と前記HEPAフィルターとの間の前記外部配管に通じている、加湿器含有加湿された空気用配管と、
前記送風装置と流路で接続されている滅菌ガス源とを備え、
前記滅菌ガスが二酸化窒素を含んでいる、送風、充填及びシール装置のための滅菌システムを用いた滅菌方法であって、
少なくとも20分の時間期間の間、50%〜75%の範囲の相対湿度を有し、二酸化窒素を含む滅菌ガスに、前記充填アセンブリを接触させる、滅菌方法。
【請求項10】
送風、充填及びシール装置における充填アセンブリの滅菌方法であって、
前記充填アセンブリを囲んでおり、かつプレナム、滅菌ガス入口及び滅菌ガス出口を形成している覆い部と、
前記滅菌ガス入口と、前記滅菌ガス出口との間の少なくとも1つの滅菌ガス流路を形成している外部配管と、
前記覆い部を通して前記滅菌ガスを循環させるために、前記滅菌ガス入口に隣接している、前記外部配管内に設けられた送風装置と、
前記送風装置と前記滅菌ガス入口との間の滅菌ガス流路内に設けられている、少なくとも1つの高効率粒子吸収(HEPA)フィルターと、
前記送風装置と前記HEPAフィルターとの間の前記外部配管に通じている、加湿器含有加湿された空気用配管と、
前記送風装置と流路で接続されている滅菌ガス源とを備え、
前記滅菌ガスが二酸化窒素を含んでいる、送風、充填及びシール装置のための滅菌システムを用いた滅菌方法であって、
前記充填アセンブリに、加湿された空気と、1リットル当たり、10〜20ミリグラムの範囲の量の二酸化窒素とを含み、相対湿度が50%〜75%である滅菌ガスを、少なくとも20分の時間期間の間、接触させる工程を備える、滅菌方法。
【請求項11】
前記充填アセンブリを、20分〜30分の時間期間の間、加湿された二酸化窒素ガスと接触させる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記充填アセンブリを、18℃〜30℃の範囲の温度で、加湿された二酸化窒素ガスと接触させる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記充填アセンブリを、周囲温度で、加湿された二酸化窒素ガスと接触させる、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記滅菌ガスを、前記充填アセンブリに接触させる前に、HEPAフィルターを通過させる、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、2014年1月20日付で出願されているUS仮出願第61/929,374による利益を請求するものであり、このUS仮出願の内容を、本明細書中に全体として援用する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、送風/充填/シール装置並びにこのような送風/充填/シール装置を利用した無菌パッケージに関する。
【背景技術】
【0003】
送風/充填/シール装置が、医薬製品、特に生物学的薬剤及び蛋白質などのような物質の無菌パッケージに広く用いられている。無菌パッケージ状態を確保するために、これらの装置における、薬剤製品の経路及び充填装置を、その都度滅菌しなければならない。このような滅菌は、通常、110℃〜125℃の温度で、高い圧力の蒸気によりなされている。しかしながら、入手可能な蒸気滅菌技術は煩雑であり、かつより大きな体積の製品に適用する場合、時間を要する。
【発明の概要】
【0004】
送風/充填/シール装置用の滅菌システムは、送風/充填/シール装置の容器充填アセンブリを囲っている覆い部を有しており、この覆い部は、プレナムを形成しており、このプレナムは、外部滅菌ガス配管と制限された流路で繋がっている。
【0005】
ガス配管と共に前記覆い部と、少なくとも1つの高効率粒子吸収(HEPA)フィルターとが、滅菌ガスが循環される閉じたループを形成している。
【0006】
特に、前記滅菌システムは、充填アセンブリを囲んでおり、かつ滅菌ガス入口及び滅菌ガス出口を形成している、覆い部を備えている。外部配管は、前記滅菌ガス入口と、前記滅菌ガス出口との間の少なくとも1つの滅菌ガス流路を形成している。送風装置は、滅菌ガスを、前記覆い部及びHEPAフィルターを通って循環させるように、前記滅菌ガス入口に隣接している外部配管に備えられており、前記HEPAフィルターは、前記送風装置と、前記覆い部の前記滅菌ガス入口との間の滅菌流路に配置されている。送風装置に接続されている滅菌ガス源が、前記滅菌システムに、二酸化窒素、二酸化塩素、蒸気化された過酸化水素などの滅菌剤を含む滅菌ガスを供給する。
【0007】
好ましくは、前記充填アセンブリ及び覆い部の滅菌は、滅菌ガス1リットル当たり、二酸化窒素を約10〜約20ミリグラム含む滅菌ガス供給するために、二酸化窒素と、相対湿度が約50%〜約75%の加湿空気とを組み合わせ、さらに充填アセンブリ及び覆い部を、約18℃〜約30℃の温度で、少なくとも20分の時間期間の間、前記滅菌ガスに接触させることにより達成される。しかる後、前記充填アセンブリに空気を、少なくとも50℃(約122°F)の温度で、覆い部の体積及び充填アセンブリの幾何学的な形状に応じて、少なくとも20分、好ましくは約30分〜約45分間、流すことにより、残留二酸化窒素を除去する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の送風/充填/シール装置を有する滅菌システムを表す模式的フロー図である。
【0009】
送風/充填/シール技術は、特別の無菌液体パッケージ技術であり、この技術は、特定の容器製造技術に関連し、そこでは、容器は、人の関与を伴うことなく、一連の工程において、熱可塑材料から成形され、充填され、シールされる。この容器への充填及びシールは、送風/充填/シール装置の内側の滅菌された囲まれたスペースにおいて行われる。充填アセンブリの典型的な例は、Weiler達のUS特許第4,671,762、Weiler達のUS特許第4,997,014に示されており、これらの内容の全体を本明細書において援用することとする。送風/充填/シール装置の技術は、容器の滅菌、無菌充填及び容器のシールの3つの工程において、コントロールされた状態において、自動で無菌パッケージを製造する方法を提供する。
【0010】
最初に、ポリプロピレン、ポリエチレン、などのような熱可塑性樹脂を最終的な容器となるチューブ状の形状(パリソン)となるように押し出す。所望の長さのパリソンが、開かれた金型部分間に押し出された後に、金型部分を閉じ、押し出されたパリソンからパリソン・セグメントを切り出す。パリソン・セグメントの上部を保持し、開き、パリソンの底部を、閉じられた金型部分により挟み、閉成する。このパリソン・セグメント及び金型を、次に、充填ゾーンに移動する。充填ゾーンでは、1またはそれ以上の数の送風及び充填ノズルを備えている充填アセンブリが位置している。
【0011】
次に、送風及び充填ノズルが、パリソン・セグメントと金型の首部との間にシールが形成されるまで、パリソン・セグメントに向かって降下される。滅菌され、ろ過された圧縮空気が、パリソン・セグメント内に導入され、この圧縮空気が、金型のキャビティに対して、前記パリソン・セグメントに拡がり、容器本体を形成する。送風サイクルが完了した後に、滅菌空気が容器本体から排気され、滅菌液体製品が充填ノズルを用いて、容器内に秤取される。充填サイクルが完了した時に、充填ノズルが後退し、分離されているシール用金型がパリソン・セグメントの上部を閉じ、形成され、かつ充填された容器をシールする。
【0012】
送風/充填/シール装置の充填アセンブリは、無菌充填状態を確保するために、その都度滅菌されねばならない。これまで、滅菌工程は、覆い部の殺菌工程と、製品経路の内部の蒸気滅菌とを用いて行われていた。
図1は、覆い部と、覆い部により囲まれた充填アセンブリのための改良された乾式滅菌システムを示すものであり、この滅菌システムは、二酸化窒素などの滅菌剤を含む滅菌ガスを用いて、10
−6のような高い滅菌保証レベルを実現するように、比較的低い温度で利用され得るものである。
【0013】
図1を参照して、覆い部10は送風/充填/シール装置の充填アセンブリ(図示せず)を囲んでおり、覆い部10はプレナム、滅菌ガス入口12,14、並びに外部配管18と制限された流路で接続されている滅菌ガス出口16とを形成している。
【0014】
送風装置20は、滅菌ガス入口12,14に隣接している外部配管内に設けられており、覆い部10を通って滅菌ガスを循環させるように機能する。高効率粒子吸収(HEPA)フィルター22,24が、送風装置20と、一対の滅菌ガス入口12,14との間に配置されている。HEPAフィルターにおける圧力降下を極小化するためには、上記循環滅菌ガスループ内において、1つのHEPAフィルターを設けることが適切であるが、並列接続されている2またはそれ以上のHEPAフィルターを設けることも好ましい。
【0015】
滅菌源26は、二酸化窒素のような滅菌剤を供給するものであるが、滅菌源26は、外部配管18に、従って、制限された流路を介して、送風装置20に接続されており、この制限された流路は、供給配管28、空圧バルブ30、外部配管18並びに配管44,46,88により形成されている。マニホールド82は、システムの圧力調整装置に接続されており、この圧力調整装置は、配管86と、配管86内に設けられたリリーフバルブ84とを備えている。滅菌サイクルの間のシステムの圧力は、通常、150パスカルを超えておらず、システムの圧力がこの値を超えた時に、リリーフバルブ84が開いた状態とされる。通常の滅菌サイクルの間には、気圧制御バルブ32が開いた状態とされ、二酸化窒素を含む滅菌ガスが、送風装置20の動作により、HEPAフィルター22,24及び覆い部10を通り循環される。配管18内に設けられている圧力ゲージ34及びサーミスター36が、外部配管18内の循環している滅菌ガスの圧力及び温度をそれぞれモニターしている。圧力ゲージ74は、覆い部10内の圧力を測定している。
【0016】
湿度センサー38及び滅菌濃度センサー40が、配管44内において、配管46により、バルブ42を介して配管18に直列に動作可能に接続されている。滅菌サイクルの間、滅菌ガスの一部が、配管44,46,88を通り流れ、供給配管28内に流入する。供給配管28は、配管18に対して制限された流路を構成するように接続されている。
【0017】
効果的な滅菌のためには、滅菌ガスは、約50%RH〜約75%RHの範囲の予め定めた相対湿度(RH)を有していなければならない。必要な湿度は、バルブ54及び配管56を通して、加湿器52により与えられ、この加湿器52は、水ポンプ60の駆動により、(図示しない)適切な水源から水を受け取る。
【0018】
源26からの二酸化窒素のような滅菌剤と組み合わされた空気が、滅菌ガスを構成する。任意のメイクアップ用空気が、この滅菌システムに必要に応じてバルブ62及び配管64を通して供給される。源26は、センサー40からの信号に基づいて、必要に応じて、形成された滅菌剤も供給する。
【0019】
滅菌サイクルが完了した後に、洗浄用空気が、洗浄配管50内のバルブ48を通してシステムに導入され、この洗浄配管50は、送風装置20の上流側で外部配管18に動作可能に接続されている。洗浄用空気は、好ましくは約65℃の温度で、少なくとも20分間の間滅菌システムを循環される。
【0020】
洗浄用空気は、バルブ70で制御されている洗浄用空気出口ポート66及び出口配管68を通り、覆い部10から滅菌システムを出ていき、排出前にスクラバー72に入る。スクラバー72が、滅菌サイクル完了後に二酸化窒素のような残留滅菌剤を除去する。滅菌剤センサー76は、バルブ78及び80により、出口配管68に動作可能に接続されており、出口配管68内の滅菌剤の濃度を測定する。洗浄用空気が、HEPAフィルターハウジングを囲むように配置されているヒーターにより、充填アセンブリ内の製品経路の蒸気滅菌から得られる熱の伝導または対流あるいは他の適切な方法により加熱される。
【0021】
滅菌ガスは、源26のような適切な源からの二酸化窒素のような滅菌剤と、相対湿度約50%〜約75%の加湿された空気とを組み合わせることにより、調製される。二酸化窒素が滅菌剤の場合、滅菌ガス中の二酸化窒素の量は、滅菌ガス1リットル当たり約10〜約20ミリグラム(mg/L)である。
【0022】
滅菌サイクルの間、充填アセンブリが、約18℃〜約30℃の温度で少なくとも20分、好ましくは、周囲温度で20〜約30分の間、滅菌ガスに接触される。
【0023】
前述した議論及び例は、例示的なものであり、これらに限定するように解釈されるべきではない。本発明の精神及び範囲内において、各部分のさらなる他の変形や再構成が、当業者において可能であり、容易である。