(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の基礎となる電界結合電力伝送技術を適用した電力伝送回路の基本回路を示す図である。
【0025】
図1に示すように、電界結合電力伝送技術を適用した電力伝送回路は、送電部1と受電部2とを備える。
【0026】
電界結合電力伝送技術は、[背景技術]の欄で上述したように、対向する2枚の金属板からなる電極対により接合容量Ccを形成した状態で、高周波電流を流すことで非接触の電力電送を実現する技術である。
即ち、電源Vfからの電力を送電する送電部1の末端に金属板の送電電極を取り付け、当該電力を受電して負荷Rに供給する受電部2の先端に金属板の受電電極を取り付けて、これら対となる送電電極及び受電電極を対向させて接合容量Ccを形成することで、電界結合電力電送技術が実現される。
【0027】
送電部1は、並列共振回路11と、トランス12とを備えるとともに、交流電源Vfに接続され、電力の供給を受けている。
並列共振回路11は、トランス12を介して交流電源Vfに接続されるものであり、コンデンサC1及びコイルL2を備えている。即ち、コンデンサC1とコイルL2とは、相互に並列に接続されることで、並列共振回路11が構成される。
さらに、コイルL2を二次側巻線として採用し、一次側巻線としてコイルL1を採用することで、トランス12が構成されている。
ここで、コイルL1の巻線数:コイルL2の巻線数=1:nとされているので、一次側の電圧、即ち交流電源Vfの電圧は、トランス12においてn倍に昇圧されて、並列共振回路11に印加される。
並列共振回路の両端には、2つの送電電極が接続される。
【0028】
受電部2は、並列共振回路14と、トランス15とを備える。
並列共振回路14は、受電部2の2つの受電電極が接続されるものであり、コンデンサC2及びコイルL3を備えている。即ち、コンデンサC2とコイルL3とは、相互に並列に接続されることで、並列共振回路14が構成される。
さらに、コイルL3を一次側巻線として採用し、二次側巻線としてコイルL4を採用することで、トランス15が構成されている。
ここで、コイルL3の巻線数:コイルL4の巻線数=n:1とされているので、一次側の電圧、即ち受電電極で受信されて並列共振回路14に印加された電圧は、トランス15において1/n倍に降圧されて、負荷Rに印加される。
【0029】
図2は、本発明が適用される電力供給線路の一実施形態であって、
図1の電力伝送回路を適用した電力供給線路の模式図である。
【0030】
図2に示すように、送電部1は、所定方向に棒状に延在する2本の線路の夫々を送電電極21として機能させている。なお、これらの2本の線路である送電電極21をまとめて、「非接触電力伝送線路23」と呼ぶ。
つまり、移動体である受電部2は、2枚の受電電極22を非接触電力伝送線路23に対向させるように夫々配置させることで、当該非接触電力伝送電路23に沿って自在に移動できるように構成されている。この2枚の受電電極22の夫々と、非接触電力伝送線路23を構成する2本の送電電極21の夫々とにより、2つの接合容量Cc(
図1の左側と右側の夫々の接合容量Cc)が形成される。
つまり、受電部2は、非接触電力伝送線路23の上を自在に移動することができ、当該非接触電力伝送線路23の任意の位置で電力を受け取ることができる。
【0031】
ただし、
図2に示すように送電電極21が長い棒状の線路として構成される場合、線間容量Cuを無視することができない。そこで、線間容量Cuと、送電側インダクタLu(
図1のコイルL2に相当)との間で共振させる。これにより、電力の伝送効率を向上させることができる。
なお、送電側インダクタLuの他に、
図2に示すように、調整用の送電側インダクタLvを入れてもよい(この場合、送電側インダクタLuと調整用の送電側インダクタLvの並列回路が、
図1のコイルL2に相当)。さらにまた、調整用の送電側インダクタLvは、
図2の例では並列に接続されているが、直列に接続されてもよい。
【0032】
図3は、本発明が適用される電力供給線路の別の実施形態として、非接触電力伝送線路23に、直流送電線24と、通信線路25とを並走させた場合の線路構造を示す図である。
【0033】
図3の例の非接触電力伝送線路23は、外部導体32と、内部導体33とを備える。
【0034】
非接触電力伝送線路23に対して、直流送電線24が並走している。
つまり、本発明が適用される電力供給線路を、kmオーダーの長距離送電に対応させるためには、電力の長距離送電の問題と、定在波の問題とを解決する必要がある。
本実施形態では、電力の長距離送電の問題を解決すべく、直流送電線24による直流送電が採用されている。
即ち、直流送電は、送電線(本例では直流送電線24)の全断面に電流が流れるため、交流に比べて材料の利用効率が高くなる。さらに、直流送電の場合における電圧は、交流で同じ電力を流す場合の0.707倍の電圧で済ませることができる。さらに、超電導直流送電系との連携も容易になる。
このようなことから、電力伝送部としては直流送電線24を採用している。
【0035】
ただし、電界結合電力伝送技術を適用した非接触電力供給には、100kHz〜10MHz帯程度の高周波電流を流すための交流電源Vfが必要になる。
そこで本実施形態では、直流送電線24を流れる直流を交流に変換するインバータ34が、非接触電力伝送線路23の単位区間51毎に1つずつ設けられている。なお、非接触電力伝送線路23が複数の単位区間51で区分されている理由については、後述する。
【0036】
ここで、各単位区間51のインバータ34は常時駆動しているわけではなく、移動体である受電部2の存在位置に応じて必要となる単位区間51のインバータ34のみが駆動する。直流送電線24にて伝送された直流電力は、駆動しているインバータ34により交流電力に変換される。このインバータ34により変化した交流電力は、送電部1の交流電源Vfから、送電部1を介して受電電極に対して、即ち外部導体32及び内部導体33に対して供給され、さらに非接触で受電部2に供給される。
外部導体32は、直流送電線24と送電部1とに接続されることにより、直流線路の一部として機能するとともに、送電に伴う電磁波放射を低減させている。
【0037】
ここで、非接触電力供給において、交流電源Vfを用いると、送電した高周波が端部で反射されて戻るため、定住波が発生する。
定住波が発生すると、電圧の腹と谷が交互に現れ、高周波線路であれば、電界の谷(電流の腹)と、電流の谷(電界の腹)とが交互に現れる。
【0038】
このとき、電界結合電力伝送技術を適用した非接触電力供給の場合、電界の谷(電流の腹)では受電することができない。仮に、電界の谷(電流の腹)でない場合であっても、電界の谷(電流の腹)に近づけば受電性能は落ちる。
ここで、電界結合電力伝送技術以外の非接触電力供給技術として、磁界結合方式がある。磁界結合方式場合、電界結合電力伝送技術とは逆に、電流の谷(電界の腹)では受電できない。また、電流の谷(電界の腹)でない場合であっても、電流の谷(電界の腹)に近ければ受電性能は落ちる。
【0039】
これを防止するための一つの方法として、受電部2に、電界結合方式(電界結合電力伝送技術)と磁界結合方式との両方の受電手段を持たせて、電界と電流夫々の腹と谷の位置によって受電手段を使い分ける方法がある。
具体的には、電界の谷(電流の腹)では、磁界結合方式により受電し、電流の谷(電界の腹)では、電界結合電力伝送技術を適用した受電を行うという方法である。
【0040】
しかしながら、この電界結合方式と磁界結合方式夫々の受電手段を使い分ける方法の場合、受電部2が、物理的に2つの方式を備えることになるため、受電部2自体を大きくせざるを得なくなるとともに、コストがかさむという問題が生じる。
【0041】
また、磁界結合方式による非接触電力供給の場合は、高周波ノイズの吸収を目的としたフェライトコアを用いる必要があるため、フェライトコア分だけ重量が増大するという問題が生じる。
さらに、電界結合方式と磁界結合方式夫々の受電手段を使い分けるために必要となる電力を供給するため、電流を流す必要があることから、距離が増すほど銅損(インダクタやコイルにおいて、その巻線抵抗成分により発生する損失)が増大するという問題が生じる。
【0042】
このような各種各様の問題を生じさせない又は解決すべく、本実施形態では、電界結合方式(電界結合電力伝送技術)のみが採用され、かつ、送信周波数の波長に基づく長さの単位区間51が設けられ、当該単位区間51の中だけで定在波を発生させるようにしている。
本実施形態のように電界結合方式の場合には、伝送線路(
図3の例では非接触電力伝送線路23)の端部をオープンにすることにより、端部で電界を最大値にすることができる。さらに、単位区間51の長さを短く設定して、単位区間51の中央部にインバータ34を配置して、当該単位区間51の両端で反射させるようにすることで、電圧変動を低く抑えることができる。
なお、単位区間51の技術的思想は、電界結合方式に適用できるだけではなく、
図12を用いて後述するように、磁界結合方式に適用することもできる。ただし、磁界結合方式に適用した場合には、端部はショートする必要がある。
【0043】
例えば、6.78MHzで発信した場合の波長(λ)は、44.2mとなり、この1/2波長(λ/2)の22.1m毎に腹または谷が現れる。このため、インバータ34から端部までの距離をλ/12とすれば、電圧の変動は±5%で抑えることができる。
また、インバータ34の両側にλ/12の端部を設ければ、単位区間51はλ/6(=7.4m)となり、電圧値は略一定になる。
例えば、2MHzで発信した場合の波長(λ)は、150mとなり、λ/6は25mになる。
【0044】
このような送信周波数の波長λに基づく長さ(例えばλ/6の長さ)の単位区間51を、繰り返して接続し、その中央部に直流送電線24から電力を得たインバータ34を置くことにより、略一定の電圧区間を全区間で実現することができる。
なお、この点の具体例については、
図5を参照して後述する。
【0045】
次に、通信線路25について説明する。
【0046】
通信線路25は、非接触電力伝送線路23から独立して並走している。
また、通信線路25は、非接触電力伝送線路23から独立して並走し、通信用トランシーバから送受信されている。また、通信線路25の、通信用トランシーバ及び図示せぬ通信用中継増幅器は、直流送電線24に接続され、電力の供給を受けている。
【0047】
通信線路25と、非接触電力伝送線路23とを一体型とした場合、長距離敷設に伴う外部導体接続部61の加工精度の問題が生じる。
即ち、外部導体接続部61の経年変化により、外部導体の接続状態が悪くなると、通信波が反射する等の障害が現れるおそれがある。また、これを防止するために、外部導体接続部61の加工精度を上げようとすると、コスト増大につながる。
【0048】
また、通信信号は、通信線路25により伝送される。従って、非接触電力伝送線路23は、直流電力や非接触電力(高周波の交流電力)を流せば足り、通信線路通信信号を流す必要がない。これにより、加工精度に関しての要求値を低減させ、低コスト化を図ることができる。
なお、この場合の通信信号の周波数帯域は、GHz帯の周波数帯域とする。
【0049】
通信線路25は、長距離を一度に敷設できるものであることが望ましい。
例えば通信線路25は、LCX(漏洩同軸ケーブル)を採用することができる。
図3や、後述の
図4や
図12の通信線路25では、LCXが採用されている。LCXは、量産性があるため品質の一定化が保てるだけでなく、既存製品を利用できるため安価であるという長所があるからである。
【0050】
なお、アンテナを非接触で並走させることにより、受電部2(移動体)側でLCXを活用することもできる。
【0051】
図4は、本発明が適用される電力供給線路のさらに別の実施形態として、非接触電力伝送線路23と直流送電線24とを完全に分離して、独立して併走させた場合の線路構造を示す図である。
【0052】
図4の例の非接触電力伝送線路23は、外部導体32と内部導体33とを備える。
非接触電力伝送線路23に対して、直流送電線41が独立して併走している。また、各外部導体32は、単位区間51毎に、外部導体接続部61で接続されている。
送電部1の交流電源Vfは、
図3の例と同様に、電界結合電力伝送技術を適用した非接触電力供給用の電源である。
【0053】
また、
図4の例の電力供給線路は、
図3の例と同様に、通信線路25が、非接触電力伝送線路23から独立して並走し、また、交流電源に接続されている。
この場合、
図3の例と同様に、通信線路25と、非接触電力伝送線路23夫々について、加工精度を低コストなものとすることができるが、外部導体32ついては、直流送電線41の一部として機能せずに独立した形態となることから、
図3の例の電力供給線路と比べて材料コストが増大する。
【0054】
次に、
図5を参照して、単位区間51について改めて説明する。
【0055】
図5は、単位区間51と施工モジュール52の適用例を示す図である。
図5(a)は、短い施工モジュール52を複数個組み合わせて単位区間51を構成した場合を示している。
【0056】
上述したように、単位区間51とは、送電周波数の波長λに基づいて電圧変動が少ない長さで設定された区間をいい、定在波を発生させる単位である。
施工モジュール52とは、施工上交換可能な機能単位をいう。つまり、単位区間51は1以上の施工モジュール52により構成される。
【0057】
図5(a)に示すように、単位区間51が複数の施工モジュール52で構成される場合、外部導体32については、各施工モジュール52の夫々が外部導体接続部61により接続される。
一方、内部導体33については、原則として、各施工モジュール52の夫々が内部導体接続部62により接続される。ただし、単位区間51の端部となる施工モジュール52については開放される。つまり、単位区間51の境界において内部導体33間の接続は行わない。これにより、非接触電力供給用の高周波を反射させることができるので、単位区間51内だけで定在波を発生させることができる。
このような
図5(a)の構成をとる場合には、施工モジュール52同士の接合は、外部導体32及び内部導体33ともに、機械的及び電気的に接続する。
【0058】
この場合、送電部1に取り付ける共振用インダクタについては、n(nは整数値)個の施工モジュール52により単位区間51が構成される場合、n個の施工モジュール52の夫々に、施工モジュール52の内部導体33と外部導体32との間の容量Cmk(kは1乃至nの整数値)と送電周波数で共振するインダクタLmkが取り付けられる。このとき、施工モジュール52の長さを揃える必要はない。
また、送電部1には、外部に共振用(マッチング用)インダクタLm0を取り付け、ここから電力供給することができる。
【0059】
図5(b)は、単位区間51と施工モジュール52とが同じである場合、即ち、1つの施工モジュール52により単位区間51を構成した場合を示している。
この場合、外部導体32のみが、隣接する施工モジュール52(単位区間51)同士接続される。つまり、施工モジュール52同士の接合は、外部導体32について、機械的及び電気的に接続する。
図5(b)に示す構成をとる場合、例えば、単位区間51が7mであれば、単位区間線路を工場で作成して、ロングボディトラックで運搬し、トンネル等の施工場所で接合、固定、配線等を容易に行うことが可能となる。
【0060】
図5(b)に示す構成をとる場合は、マッチング用のトランス12やインバータ34を工場で取り付け、調整した後に出荷することができる。なお、微調整は、
図2の模式図に示した送電側インダクタLvで行うことができる。
【0061】
このように1以上の施工モジュール52により構成される単位区間51を、
図5に示すように繰り返して接続し、その中央部に直流送電線24から電力を得たインバータ34を置くことにより、略一定の電圧区間を全区間で実現することができる。
【0062】
なお、交流電源Vfは、最低限の電力を得て、受電部2、図示なきサーバー、隣接交流電源等からの信号を検知しており、受電部2が近接するとウェークアップする。
また、交流電源Vfは、隣接する交流電源Vfがともに動作する際には、同期をとり発信する。
【0063】
次に、非接触電力伝送線路23の構造について説明する。
図6は、非接触電力伝送線路23の断面構造を示す図である。
図6(a)及び(b)は、不平衡線路構造の非接触電力伝送線路23の構造を示す図である。
図6(c)及び(d)は、平衡線路構造の非接触電力伝送線路23の構造を示す図である。
【0064】
図6(a)及び(b)に示すように、不平衡線路構造の非接触電力伝送線路23は、送電電極として機能する外部導体32と、外部導体32の内部に配置された、送電電極として機能する1つの内部導体33とで構成されている。
外部導体32と、内部導体33とは、共振用インダクタLmで接続されている。
なお、共振用インダクタLmは、外部導体32の外部に出してもよい。
【0065】
また、
図6(c)または(d)に示すように、平衡線路構造の非接触電力伝送線路23は、外部導体32と、外部導体32の内部に配置された2本の内部導体33とで構成されている。
2本の内部導体33の夫々は、2つの送電電極の夫々として機能し、共振用インダクタLmで接続されている。つまり、平衡線路構造の非接触電力伝送線路23における外部導体32は、送電には寄与しない(送電電極として機能しない)が、非接触電力伝送線路23からの電子放射に対するシールド、線路の固定、走行車のレール等に用いられる。
なお、共振用インダクタLmは、外部導体32の外部に出してもよい。
【0066】
次に、受電部2について説明する。
図7は、本発明の基礎となる電界結合電力伝送技術を適用した電力供給線路における、受電部2の回路と、非接触電力伝送線路23の構造を示す図である。
【0067】
図7の受電部2が備える並列共振回路14は、共振用インダクタに対し並列にn
2Rの抵抗が付いた状態と等価である。このため、n
2Rを大きくすることで並列共振回路14のQ値を大きくすることができる。
【0068】
並列共振回路14のQ値を大きくすることで、受電部2の入力インピーダンスがn
2Rとなり、線路のインピーダンスZ
0よりも十分に大きくすることにより、同一単位区間51の線路上で、同時に複数台の受電部2を走行させることができる。
【0069】
線路上の電圧分布が略一定であり、線路のインピーダンスをZ
0、受電部2の台数をmとした場合に、Z
0=n
2R/mとなったときに、最大の受電効率を得ることができる。
【0070】
受電部2は移動し、隣接する線路間で台数が増減するため、必ずしも上述の関係を保つことはできないが、Z
0とn
2R/mとを近似させることにより、伝送効率を高く保つことができる。
【0071】
受電体2の台数が判り、各受電体2の夫々に通信伝達することができるときには、nまたはRを変化させることにより、上述の関係を保つことができる。
【0072】
このような対策を講じることにより、同一単位区間51の線路上で、複数台の受電部2を同時走行させることができる。
【0073】
なお、受電部2の受電電極のサイズは、内部導体33の単位区間51の境界におけるギャップの大きさよりも十分に大きいものとする。これにより、ギャップ通過時に接合容量Ccが少し小さくなるが、問題なく通過することができる。
【0074】
また、受電部2に、電池を搭載することで、多少の受電不調区間があったとしても問題なく通過することができる。
また、受電部2は、線路に付けられたリニアマーカーを読むことにより、自分の位置を知ることができる。
【0075】
図8は、受電部2が移動体である場合の、本発明が適用される電力供給線路の断面構造を示す図である。
【0076】
図8の例では、外部導体32の外側に、直流送電線24及び通信線路25が並走している。
例えば直流送電線24及び通信線路25は、単位区間51のアルミニウムブロックを接続した後に、現場施工で後付けができる構造とし、コーキング材等で外部導体32に固定されている。
外部導体32と内部導体33との間は、絶縁層34によって区切られている。
【0077】
図8(a)は、移動・通信・作用部17(
図1の受電部2に相当)が備える駆動輪18を、外部導体32の上面を走行させるように配置させた例を示している。
図8(a)の例における移動・通信・作用部17は、非接触電力伝送線路23上を移動するための駆動輪18と、移動時の横揺れを防ぐためのガイド輪19とを備える。また、外部導体32及び内部導体33の2つの送信電極に夫々対向する面に受電電極22を備え、送電部1から外部導体32及び内部導体33を介して電力の供給を受けている。
【0078】
図8(b)は、移動・通信・作用部17(
図1の受電部2に相当)が備える駆動輪18が、内部導体33の上面と、外部導体の側面とを走行するよう配置された例を示している。
【0079】
図8(b)の例における移動・受電部20(
図1の受電部2に相当)は、内部導体33の上面を走行する駆動輪に挟まれ、且つ、内部導体33に近接するように配置されている。また、受電電極22を備え、送電部1から内部導体33を介して電力の供給を受けている。
【0080】
図8(a)と(b)とは、用途により使い分けることができる。
【0081】
通信線路25には、後述する
図11に示す低減衰化処置を施してもよい。
【0082】
通信線路25は、一定の区間毎に増幅するものとし、増幅に必要な電力は、直流送電線24より受電する。
直流送電線24からの電力の出力は、直流送電線24の被覆をねじで貫通させるとともに、外部導体32の一部である酸化被膜を剥ぐことによって受電する。
受電部2と通信線路25は、電磁的に接続されている。
【0083】
図9は、非平衡線路に対する受電電極22の配置の例を示した図である。
英文字で示した受電電極22は、外部導体32から受電した場合の例を示しており、いずれか1つの組を採用する。
ギリシャ文字で示した受電電極22は、内部導体33から受電した場合を示し、いずれか1つを採用する。
【0084】
図9に示すように、外部導体32からの受電を、外部導体32の外側で受け取る例として、AまたはE−E´の組み合わせがある。この場合、変位電流が空間に放出されるおそれがあるため、シールドカバー21を付けることにより、変位電流の放出を防ぐ。
【0085】
図9に示すように、外部導体32からの受電を、外部導体32の内部で受け取る例として、B−B´、C−C´、D−D´がある。
この例の場合、放射電界をシールドする外部導体32の内部に受電電極を取り付けるが、外部導体32からの受電を、外部導体32の外側で受け取る場合と同様に、受電電極22をシンメトリーに配置することとする。これにより、放射電界が相互に打ち消されることとなる。
【0086】
図10(a)乃至(i)は、平衡線路における受電電極22の配置の例を示したものである。
図10に示すように、外部導体32の内部に配置された2本の内部導体33夫々に、受電電極22を配置する組み合わせの例として、A−A´、B−B´、C−C´、D−D´、E−E´、F−F´、G−G´、H−H´、I−I´J−J´がある。
いずれもの場合も、受電電極をシンメトリーに配置することにより、放射電界が相互に打ち消されるようにする。
【0087】
図11は、通信線路25における通信信号の減衰を低減させるための対策を示す図である。
図11(a)は、何らの対策を講じていない通信線路25を示す図である。
図11(b)は、金属シールド29で通信線路25を囲んだ場合を示す図である。
図11(c)は、金属シールド29の開口端にアンテナを挿入している状態を示す図である。
【0088】
図11(a)に示すように、何らの対策を講じていない通信線路25は、スリット27から電磁エネルギー28が放射されるため、距離減衰が大きくなる。
これに対し、
図11(b)に示すように、通信線路25を極薄金属等のシールドで囲んだ場合には、電磁波放射が低減するため、距離減衰を小さくすることができる。
【0089】
通信線路25から電磁波を受信したり、送信したりする場合には、
図11(c)に示すように、金属シールド29の端部に挿入型アンテナ30を差し込んでスライドさせる方法がある。このような構造とすることにより、受電部2の移動に伴い、挿入型アンテナ30を移動させることができる。
なお、挿入型アンテナ30が挿入されていない場合は、自動的に
図11(b)に示すように、通信線路25が金属シールド29で囲まれた状態に戻る。
【0090】
通信線路25を、金属シールド29等のシールド材で囲むことにより、外部に不要な電磁波を漏洩させなくて済む。
これにより、制御情報等の外部漏洩に伴うハッカー等への情報漏洩を防止することができる。同時に、他の機器への電磁妨害も防止することができる。
【0091】
制御線路として機能する通信線路25をシールドすることにより、周辺システムからの電磁妨害に対する耐性を高めることができる。また、同時に、ハッカー等からの電磁的妨害を排除することができるため、高い信頼性を有するシステムを構築することが可能となる。
【0092】
受電部2が移動し、受電電極22が送電電極21(非接触電力伝送線路23)上を移動する場合には、送電電極21と受電電極22との間の物理的なギャップを維持する必要がある。
【0093】
特に、レール材に押出型材を使用する場合には、低コストで作ることができるという長所がある反面、機械的精度が悪いという短所がある。しかしながら、長距離線路を低コストで作るためには、押出型材で作ったレールでも対応できるようにする必要がある。
したがって、受電部2は、電極間隔を制御し、または摩擦を低減させるための何らかの手段を備える必要がある。
【0094】
電極間隔を制御し、または摩擦を低減させるため方法としては、送電電極21と受電電極22とを接触させる方法と、両者を非接触とする方法がある。
【0095】
送電電極21と受電電極22とを接触させる方法としては、電極表面に、強度があり、且つ、摺動性を有する材料をコーティングする方法がある。
例えば、DLC(Diamond Like Carbon)等がある。
【0096】
または、電極表面の損傷を防ぐため、送電電極21と受電電極22とを、触れるか触れない程度の軽い接触をさせることとしてもよい。
または、摩擦を低減させるため、超音波を電極に加えてもよい。
または、摩擦を低減させるため、電極自体を回転体またはキャタピラ状にしてもよい。
または、送電電極21と受電電極22との間隔を制御するために、ピエゾ素子を用いてもよい。この場合、ピエゾ素子が接触を検知し、直ぐに離すという動作を繰り返すこととする。
【0097】
送電電極21と受電電極22との間を非接触とする方法としては、機械的精度により、極接近させる方法がある。
または、精密に間隔を制御するため、ピエゾ素子を用いてもよい。この場合、センサーにより、接触をさせないように制御を行う。
【0098】
または、電極の離隔のため、送電電極21と受電電極22との間に空気膜を置いてもよい。
例えば、ポンプによって電極間に空気を送風する方法、電極に空気取り入れ開口を作り、移動時に空気を取り込んで浮上させる方法等がある。
【0099】
または、磁気的方法により、送電電極21と受電電極22とを離隔してもよい。
例えば、変動磁界により反発力を得て電極を浮かせる方法、永久磁石を配列させて電極を浮かせる方法等がある。
【0100】
または、超音波浮上や超電導浮上により、電極を浮かせ、送電電極21と受電電極22とを離隔してもよい。
または、ギャップ間空間をバリア放電によりプラズマ化することにより導電率を高め、ワイドギャップでも送信ができるようにしてもよい。
【0101】
図3に示す、非接触電力伝送線路23に、直流送電線24と、通信線路25を並走させる線路構造、または、
図4に示す、非接触電力伝送線路23と直流送電線24とを完全に分離させた線路構造については、電界結合方式(電界結合電力電送技術)のみならず、磁界結合方式の非接触電力伝送線路に対しても適用することができる。
【0102】
図12は、磁界結合方式に外部導体32及び直流送電線24を適用した場合を示す図である。
【0103】
図12で示すように、単位区間51内には、ループ電流35があるため、単位区間51内に受電部2がある時にのみ、単位区間51内にループ電流を流すことができる。
これにより、単位区間外の不要な場所にまで電流を流すことがなくなるため、銅損を低減させることができる。
【0104】
インバータの配線及びループ電流35の端部は、E字型コアが通過できる構造とする。
【0105】
図12に示す直流送電線24は、1本に限定されることはない。即ち、
図4に示す非接触電力伝送線路23と、直流送電線24とが、完全に分離しているように、2本線であってもよい。
【0106】
以上本発明の各種実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
換言すると、本発明が適用される電力供給システムは、次のような構成であれば足り、上述した実施形態を含め各種各様な実施形態を取ることができる。
【0107】
即ち、本発明が適用される電力供給システムは、
電界結合電力伝送技術を適用した電力供給システム(例えば
図3の電力供給システム)であって、
所定の波長の交流電源からの電力を送電する電力伝送線路(例えば
図3の非接触電力伝送線路23)と、
受電電極(例えば
図2の受電電極22)を有し、前記電力伝送線路に沿って移動し、前記電力伝送線路のうち前記受電電極と対向する部位を送電電極として、当該送電電極と当該受電電極とにより接合容量を形成することにより前記電力伝送線路から電力を受電して負荷に供給する受電部(例えば
図2の受電部2)と、
前記電力伝送線路に直流電力を伝送するための直流線路(例えば
図3の直流送電線24)と、
を備え、
前記電力伝送線路は、
前記所定の波長に基づく長さを有する単位であって、前記交流電源からの定在波を発生させる単位を単位区間(例えば
図5の単位区間51)として、
複数の前記単位区間が繰り返して配置されることにより構成され、
複数の前記単位区間の夫々は、前記直流線路を伝送する直流電力を、前記所定の波長を有する交流電力に変換するインバータ(例えば
図3のインバータ34)を有する。
【0108】
これにより、電界結合電力電送技術を適用した電力供給システムにおいて、電力の長距離伝送が可能であり、任意地点で電力が取り出せ、かつ通信をすることが可能な技術を確立することができる。
【0109】
ここで、前記単位区間は、施工の単位となる1以上の施工モジュール(例えば
図5(a)の施工モジュール52)から構成され、
前記施工モジュールは、前記電力供給線路の線間容量と共振させるインダクタ(例えば
図5のインダクタLm1乃至Lmn)を有する
ようにすることができる。
【0110】
前記受電部は、
線路上の電圧分布が略一定なとき、線路のインピーダンスをZ
0とし、受電部2の台数をmとしたときに、
Z
0=n
2R/mとなるように、パラメータを調整し又は近傍範囲内に置くことができる。
これにより、最大の受電効率を得ることができる。
【0111】
前記電力伝送線路は、内空の構造を有する外部導体(例えば
図9の外部導体32)と、前記外部導体の内空部に配置される内部導体(例えば
図9の内部導体33)とからなる不平行線路構造を有し、
前記外部導体と前記接合容量を形成する前記受電電極は、前記外部導体の外側において対向して配置され、
当該受電電極を覆うシールドカバー(例えば
図9のシールドカバー21)を有する、
ことができる。
【0112】
前記電力伝送線路は、内空の構造を有する外部導体(例えば
図9の外部導体32)と、前記外部導体の内空部に配置される内部導体(例えば
図9の内部導体33)とからなる不平行線路構造を有し、
前記外部導体と前記接合容量を形成する前記受電電極は、前記外部導体の内側において対向して配置され、
前記受電電極の夫々は、放射電界が相互に打ち消されるようにシンメトリーに配置されている(例えば
図9のように配置されている)、
ようにすることができる。
【0113】
漏洩同軸線路により構成される、通信をするための通信線路(例えば
図3の通信線路25)をさらに備える、
ようにすることができる。
【0114】
前記通信線路は、金属シールド(例えば
図11の金属シールド29)により覆われており、
前記通信線路からの電磁波を送受信するためのアンテナであって、前記受電部の移動に応じて移動可能なアンテナ(例えば
図11の挿入型アンテナ30)が、前記金属シールドの端部に挿入されている、
ようにすることができる。