特許第6586468号(P6586468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6586468ポリウレタンフォームにおけるオレフィン系気体状噴射剤の貯蔵寿命を延長するための方法
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  • 特許6586468-ポリウレタンフォームにおけるオレフィン系気体状噴射剤の貯蔵寿命を延長するための方法 図000035
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6586468
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォームにおけるオレフィン系気体状噴射剤の貯蔵寿命を延長するための方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20190919BHJP
   C08G 18/40 20060101ALI20190919BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20190919BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20190919BHJP
   C08G 18/18 20060101ALI20190919BHJP
   C08G 18/22 20060101ALI20190919BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20190919BHJP
【FI】
   C08G18/00 F
   C08G18/40 018
   C08G18/42 008
   C08G18/42 002
   C08G18/00 H
   C08G18/48
   C08G18/18
   C08G18/22
   C08G101:00
【請求項の数】24
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-555436(P2017-555436)
(86)(22)【出願日】2016年1月11日
(65)【公表番号】特表2018-502211(P2018-502211A)
(43)【公表日】2018年1月25日
(86)【国際出願番号】US2016012818
(87)【国際公開番号】WO2016115021
(87)【国際公開日】20160721
【審査請求日】2017年9月14日
(31)【優先権主張番号】62/102,289
(32)【優先日】2015年1月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517289055
【氏名又は名称】アイシーピー アドヒーシブス アンド シーランツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】テイラー アンソニー ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】シューメーカー ジュリー エル
(72)【発明者】
【氏名】シンコー アンドリュー ピー
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−517118(JP,A)
【文献】 特開2013−241537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00
C08G 18/18
C08G 18/22
C08G 18/42
C08G 18/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡剤HFO−1234zeを使用してポリウレタンフォームを合成するためのキットであって、当該キットは「A」部配合液と「B」部配合液とからなり、
「A」部配合液はジイソシアネートを含み、
「B」部配合液は発泡剤としてのHFO−1234ze、少なくとも2種の触媒、ポリオール全体の50重量%以上の少なくとも1種の芳香族ポリエステルポリオール、約10重量%以下の脂肪族ポリエーテルポリオール、および約1.5重量%までの水を含み、
前記少なくとも2種の触媒は、少なくとも2個のシクロヘキシル環を含む少なくとも1種の第3級アミン触媒と少なくとも1種の脂肪族金属塩触媒とを含み、
前記少なくとも1種の芳香族ポリエステルポリオールは下記式(1)及び(2)で表される繰り返し単位の群から選ばれる構造を有することを特徴とするキット。
【化1】
式中のnは77°F(25℃)での粘度がおよそ2,000〜4,500cPとなるのに十分な値であり;
【化2】
式中のnは77°F(25℃)での粘度がおよそ2,500〜3,500cPとなるのに十分な値である。
【請求項2】
前記少なくとも1種の芳香族ポリエステルポリオールは、少なくとも2種の芳香族ポリエステルポリオールである、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記「B部」配合液は約1重量%以下の脂肪族ポリエーテルポリオールをさらに含む、請求項1または2に記載のキット。
【請求項4】
前記「B部」配合液は添加された水を基本的に含まない、請求項1〜3のいずれか1項に記載のキット。
【請求項5】
前記「A」部配合液の成分と前記「B」部配合液の成分とを反応させてポリウレタンフォームを調製する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のキット。
【請求項6】
前記少なくとも1種の第3級アミン触媒は、11重量%以下の窒素を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のキット。
【請求項7】
前記少なくとも1種の第3級アミン触媒は、10重量%以下の窒素を含む、請求項6に記載のキット。
【請求項8】
前記脂肪族金属塩は金属アルカン酸塩である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のキット。
【請求項9】
前記金属アルカン酸塩はアルカン酸カリウムである、請求項8に記載のキット。
【請求項10】
前記アルカン酸カリウムはオクタン酸カリウムである、請求項9に記載のキット。
【請求項11】
前記「A」部配合液および前記「B」部配合液を反応させてポリウレタンフォームをスプレーする前に、反応成分の組合せおよび発泡剤を50℃で約48日間にわたり保管することを含む加速劣化試験に付して、当該加速劣化試験後のゲルタイム(Gx)と加速劣化試験前のゲルタイム(Gi)とを測定して触媒活性減衰比(Gx/Gi)を求め、当該触媒活性減衰比が、ポリウレタンスプレーフォームの場合には約2以下になるか、現場注入ポリウレタンフォームの場合には約2.5以下になるかどうかにより「B」部配合液の実用性を判定する、請求項1〜10のいずれか1項に記載のキット。
【請求項12】
ポリウレタンスプレーフォームまたは現場注入ポリウレタンフォームに用いられる、請求項1〜11のいずれか1項に記載のキット。
【請求項13】
気体状HFOにより発泡される2液型ポリウレタンフォームの貯蔵寿命を改良するための方法であって、
ジイソシアネートを含む「A」部配合液を用い、
発泡剤としてのHFO−1234zeと、ポリオール全体の50重量%以上の少なくとも1種の芳香族ポリエステルポリオールと、触媒の組合せと、約1.5重量%以下の水とを含む「B部」配合液を用い、
ここで、前記触媒の組合せは、少なくとも2個のシクロヘキシル環を含む第3級アミン触媒であって、11重量パーセント未満の窒素を有する第3級アミン触媒と、脂肪族金属塩触媒との組合せであり、
初期のゲルタイム(Gi)(秒)と劣化後のゲルタイム(Gx)(秒)とを
測定し、GxをGiで割って触媒活性減衰比(Gx/Gi)を求め、
ここで、前記劣化後のゲルタイム(Gx)は、反応成分の組合せおよび発泡剤を50℃で約48日間にわたり保管することを含む加速劣化試験に付したゲルタイムであり、
触媒活性減衰比(Gx/Gi)が、ポリウレタンスプレーフォームの場合には約2以下になるか、現場注入ポリウレタンフォームの場合には約2.5以下になるかどうかにより、「B部」配合液の実用性を判定する、
ここで、前記少なくとも1種の芳香族ポリエステルポリオールが下記式(1)及び(2)で表される繰り返し単位の群から選ばれる構造を有することを特徴とする方法。
【化1】
式中のnは77°F(25℃)での粘度がおよそ2,000〜4,500cPとなるのに十分な値であり;
【化2】
式中のnは77°F(25℃)での粘度がおよそ2,500〜3,500cPとなるのに十分な値である。
【請求項14】
前記第3級アミン触媒は、重量基準で約10%以下の窒素を有し、
前記「B」部配合液は、0.1〜1.3重量%の水を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第3級アミン触媒は、重量基準で約8%以下の窒素を有し、
前記「B」部配合液は、0.5〜1.0重量%の水を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリウレタンフォームは、約10重量%以下の脂肪族ポリエーテルポリオールを含む、請求項13〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリウレタンフォームは、添加された脂肪族ポリエーテルポリオールを含まない、請求項13〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
「A」部配合液とともに使用して、「A」部配合液の成分と「B」部配合液の成分との反応を介してポリウレタンフォームを合成するための「B」部配合液であって、
「B」部配合液は、発泡剤としてのHFO−1234zeと、少なくとも2種の触媒と、少なくとも1種の芳香族ポリエステルポリオールとを含み、
前記少なくとも2種の触媒は、2つのシクロヘキシル環を持つ第3級アミン触媒と脂肪族金属塩とを含み、
前記少なくとも1種の芳香族ポリエステルポリオールが下記式(1)及び(2)で表される繰り返し単位の群から選ばれる構造を有することを特徴とする「B」部配合液。
【化1】
式中のnは77°F(25℃)での粘度がおよそ2,000〜4,500cPとなるのに十分な値であり、
【化2】
式中のnは77°F(25℃)での粘度がおよそ2,500〜3,500cPとなるのに十分な値である。
【請求項19】
前記「A」部配合液および前記「B」部配合液を反応させてポリウレタンフォームをスプレーする前に、反応成分の組合せおよび発泡剤を50℃で約48日間にわたり保管することを含む加速劣化試験に付して、当該加速劣化試験後のゲルタイム(Gx)と当該加速劣化試験前のゲルタイム(Gi)とを測定し触媒活性減衰比(Gx/Gi)を求め、当該触媒活性減衰比(Gx/Gi)が、ポリウレタンスプレーフォームの場合には約2以下になるか、現場注入ポリウレタンフォームの場合には約2.5以下になるかどうかにより「B」部配合液の実用性を判定する、請求項18に記載の「B」部配合液。
【請求項20】
ポリウレタンフォームを合成する材料の実用性を判定するために触媒活性減衰比を使用する方法であって、
ジイソシアネートを含む「A」部配合液を準備し、
発泡剤としてのHFO−1234zeと、少なくとも2種の触媒と、少なくとも1種の芳香族ポリエステルポリオールとを含む「B」部配合液を準備し、
初期のゲルタイム(Gi)および劣化後のゲルタイム(Gx)を測定し、
ここで、前記劣化後のゲルタイム(Gx)は、反応成分の組合せおよび発泡剤を50℃で約48日間にわたり保管することを含む加速劣化試験に付したゲルタイムであり、
GxをGiで割って触媒活性減衰比(Gx/Gi)を求め、
前記触媒活性減衰比(Gx/Gi)が、ポリウレタンスプレーフォームの場合には約2以下になるか、現場注入ポリウレタンフォームの場合には約2.5以下になるかどうかにより、「B部」配合液の実用性を判定する、
ここで、前記少なくとも2種の触媒は、2個のシクロヘキシル環を含む第3級アミン触媒と脂肪族金属塩触媒とを含み、
前記少なくとも1種の芳香族ポリエステルポリオールが下記式(1)及び(2)で表される繰り返し単位の群から選ばれる構造を有することを特徴とする方法。
【化1】
式中のnは77°F(25℃)での粘度がおよそ2,000〜4,500cPとなるのに十分な値であり、
【化2】
式中のnは77°F(25℃)での粘度がおよそ2,500〜3,500cPとなるのに十分な値である。
【請求項21】
前記「B部」配合液が、前記式(1)で表される芳香族ポリエステルポリオールの少なくとも1つと、前記式(2)で表される芳香族ポリエステルポリオールの少なくとも1つとを含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載のキット。
【請求項22】
前記「B部」配合液が、前記式(1)で表される芳香族ポリエステルポリオールの少なくとも1つと、前記式(2)で表される芳香族ポリエステルポリオールの少なくとも1つとを含む、請求項13〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記式(1)で表される芳香族ポリエステルポリオールの少なくとも1つと、前記式(2)で表される芳香族ポリエステルポリオールの少なくとも1つとを含む、請求項18または19に記載の「B」部配合液。
【請求項24】
前記「B部」配合液が、前記式(1)で表される芳香族ポリエステルポリオールの少なくとも1つと、前記式(2)で表される芳香族ポリエステルポリオールの少なくとも1つとを含む、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載する本発明は、概して、ポリウレタンスプレーフォームの調製に使用される、オゾン破壊係数および地球温暖化係数が低いオレフィン系気体状噴射剤の貯蔵寿命を延長することに関する。
【背景技術】
【0002】
米国環境保護庁(「EPA」)の重要新規代替品政策(Significant New Alternatives Policy)(「SNAP」)プログラムは、大気浄化法(「CAA」)の成層圏オゾン保護条項の下に廃止されつつあるオゾン層破壊物質の代替品を評価および規制するために立案されたプログラムである。
【0003】
モントリオール議定書によりクロロフルオロカーボン(「CFC」)の全廃が定められた。CFCはオゾン破壊係数が高いだけでなく、地球温暖化係数も非常に高いことが知られていた。その次の世代の噴射剤であるハイドロクロロフルオロカーボン(「HCFC」)化合物も、ハイドロフルオロカーボン(「HFC」)化合物への移行により最終的には全廃される。HFC化合物はオゾン層を破壊しないことが知られていたが、地球温暖化係数が依然として高かった。京都議定書ならびにEU法規およびFガス規制(F−Gas regulation)の施行により、地球温暖化係数が低く、かつオゾン層破壊作用を有さない組成物を達成するための試みに従い、HFC噴射剤も廃止されつつある。上述のSNAPプログラムにより代替品として認定されているものの1つがオレフィン系気体状噴射剤であるトランス−1−フルオロ−3,3,3−トリフルオロプロプ−1−エン(商品名Solstice(登録商標)GBA)、ケミカルアブストラクト登録番号29118−24−9である。これは1,1,1,2−テトラフルオロエタン(商品名Dymel(登録商標)HFC−134a)の当座の代替品として、その製造業者により見出されたものである。HFC−134aは地球温暖化係数(「GWP」)が約1600であり、これは地球温暖化効果がCO2の1600倍であることに相当する。Solstice(登録商標)気体状発泡剤(「GBA」)はハイドロフルオロオレフィン噴射剤(「HFO」)であり、オゾン破壊値は約0であり、GWP100は<6である。Solstice(登録商標)GBAの大気寿命は14日間である。Solstice(登録商標)GBAの沸点は−19℃(−3°F)である。
【0004】
本発明は、気体状噴射剤であるトランス−1−フルオロ−3,3,3−トリフルオロプロプ−1−エン(商品名Solstice(登録商標)1234zeまたはSolstice(登録商標)GBA)をポリウレタンフォーム内で発泡させることにより、ポリウレタンフォームを合成するために使用される反応体の貯蔵寿命を延長するのに特に適している。
【0005】
Honeywell製Solstice(登録商標)気体状発泡剤(「GBA」)は、ASTM E−681およびEU A11の試験方法によれば不燃性である。地球温暖化係数(「GWP」)は<1と非常に低く、最大オゾン生成能(「MIR」)、光化学オゾン生成能(「POCP」)が低く、揮発性有機化合物(「VOC」)から除外されている。
【0006】
本出願において使用される「2液型」発泡フォームとは、一方のフォーム主要成分を1個の加圧容器、通常、容器「A」(すなわち、ポリイソシアネート、フルオロカーボン等)で供給すると同時に、他方のフォーム主要成分を別の加圧容器、通常、容器「B」(すなわち、ポリオール、触媒、難燃剤、フルオロカーボン等)で供給するものを意味し、国によって「A」および「B」の呼称が逆の場合もあり得ることが認められている。
【0007】
同じく、本出願において使用される「貯蔵寿命」は、加速劣化を受けたときに、フォームのフォーム高さ、ゲルタイム、密度等の物性が依然として加速劣化前のそれらのパラメータの約20%以内であるポリウレタンフォームを意味する。
【0008】
さらに、本出願において使用される「加速劣化」とは、ボンベ(cylinder)「A」およびボンベ「B」を反応させ、かつポリウレタンフォームをスプレーする前に、反応体の組合せおよび噴射剤を50℃で12〜48日間にわたり保管することを意味する。アレニウス式を用いると、これは室温で3〜12ヶ月間に相当する。
【0009】
さらに、本出願において使用される「およそ」という語もしくはその均等な記号または「約」という語は、ポリウレタンフォーム業界において測定誤差に関して許容されている基準内の値、通常、表示した値の約10パーセント以内の値を意味する。
【0010】
2液型ポリウレタンフォームにおいて、成分「A」および成分「B」は、ノズル内で混合されるとフォーム、すなわち泡を生成する。当然のことながら、吐出後の触媒を含有する2液型ポリウレタンフォームと空気中の水分との化学反応も起こることになるが、ポリウレタンフォームを生成する主な反応は、成分「A」および成分「B」が混合された時点、すなわち吐出ノズル内で互いに接触した際に起こる。したがって、2液型ポリウレタンフォームを塗布するための吐出装置は、1成分を含む吐出装置内に存在する計量機構の設計の問題のみならず、2液型ポリウレタンフォームを混合する要求にも対応しなければならない。
【0011】
さらに、フォーム(フォームは、シェービングクリーム様のコンシステンシーを想定する)の「発泡」性は、成分「A」および成分「B」中に存在するハイドロフルオロオレフィン(「HFO」)噴射剤成分(または類似の成分)により向上する。このHFO成分は、加圧下において液体状態で排出される圧縮気体であり、この液体がより圧力の低い周囲環境に吐出された時点、例えば、液体成分がガンから排出されノズルに流入した時点で気体状態に変化する。
【0012】
ポリウレタンフォームはよく知られているが、その配合は用途に応じて大きく変化する。特に、ポリオールおよびイソシアネートは、通常、容器「B」および容器「A」に別々に保持されるが、他に配合される化学物質はいずれの容器にも装入することができる。その結果として、各容器の液体の重量または粘度が変化するのみならず、成分「A」および成分「B」の混合すべき比率も変化する。本発明に関連する吐出ガンを使用する場合、配合液「A」および配合液「B」の混合比は、一般に、容器「A」および容器「B」が同じサイズになるよう、等しくなるように維持される。しかしながら、容器内の液体の重量(より重要なのは粘度であるが)は、常に互いに異なっている。化学物質配合液「A」および「B」間の粘度の変動を調整するために、容器「A」および容器「B」は、流量が等しくなるように異なる圧力で(通常、不活性ガスと一緒に)装填される。したがって、2液用ガンの計量弁は、異なる液体を異なる圧力で様々な流量において正確な比率で計量しなければならない。(とりわけ)この理由のため、一部の吐出ガンは、様々な配合液の比率の変動に加えて成分間の粘度の変動も補償するように、各計量ロッド/計量弁が別々のバネに対して個別に調整できるように設計されている。現在使用されている典型的な2液用吐出ガンは、2個の別々の1液用吐出ガンが共通の筐体に収容され、その成分が混合室または混合ノズルに排出されると考えることもできる。実際には、ガンの操作者がガンの「動作」を改善しようと比率の設定を調節し、逆に悪化させることが多い。この負の結果を避けるために、比率の調整部をガンの内部に「隠す」必要があるか、または特定の配合液に使用するためのガンとして比率の設定を「固定」するように設計する必要がある。いずれにしてもガンのコストは増加し、比率の設定を特定の配合液に「固定」することにより、吐出ガンの互換性が失われる。
【0013】
2液用ガンの設計が1液用ガンの設計と異なるなおさらなる特徴は、2液用ガンの閉塞しやすさにある。フォームの起泡反応は、成分「A」および成分「B」が互いに接触した時点で開始し、ガンが使用されると、スタティックミキサーが、ミキサー内で生成したポリウレタンフォーム、すなわち泡で閉塞することになるのは明白である。これが、スタティックミキサーを有するノズルが使い捨て品として設計されている理由である。実際は、計量を停止した時点で即座に、ノズルを廃棄しなければならない程度までノズル内にフォームが形成されるわけではない。ある程度の限られた時間が経過するはずである。これは、配合そのもの、スタティックミキサーの設計、および全ての条件が同じであれば、ノズルの設計の関数となる。
【0014】
本発明の吐出ガンは、通常、建築または建設業界向けに販売されている2液型ポリウレタンフォーム「キット」に使用するのに特に適している。通常、小型のキットは、130〜250psiのいずれかに加圧されている2個の直径約7.5インチのボンベ「A」およびボンベ「B」と、ボンベおよび吐出ガンに接続するためのホースの対とを含み、これら全体が、構成要素を収容すると共にフォームを塗布しようとする場所に運搬できるように構成された容器にまとめて収容されている。容器「A」および容器「B」の化学物質が空になったら、場合によりキットを廃棄するか、または容器を再使用することもできる。吐出ガンは交換してもしなくてもよい。吐出ガンはキットに含まれるため、コストを考慮して吐出ガンを比較的安価にすることが求められている。通常、吐出ガンはプラスチック製であり、機械加工される部品の使用は最小限に抑えられている。
【0015】
ここに言及した吐出ガンおよび本発明に関連する吐出ガンのさらなる特徴であり、複数の構成要素を含む他の種類の吐出ガンと大きく異なる点は、これらが通常「エアレス」であり、多くの場合、ガンを清掃するための装備を含まないことにある。すなわち、多くの吐出用または計量用のガンまたは装置、特に多量のフォームを塗布するために使用されるものは、清掃用の空気もしくは溶剤を導入する手段もしくは機構、またはガン内の流路を清掃する手段もしくは機構が装備されているかまたは取り付けられている。
【0016】
上に述べた2液用吐出ガンは商業的に許容される方法で機能するが、ポリウレタンフォームをその場で塗布する状況が増加しており、この種のあらゆる塗布に対して吐出ガンが機能する範囲または能力を改善しなければならないことが一層明白になってきている。一般的な例として、シーラント用途に用いるための吐出ガンは、発泡したポリウレタンの細かい泡を絞るかまたは計量することができるように設計することが必要であり、このキットは、建築業において窓枠および戸枠等の周囲の隙間を封止する目的で販売されている。これとは異なり、断熱材を形成するために販売されているキットには、多量の化学物質の流れを計量するかまたは流動させる能力が求められる。さらに、接着剤用途では、液体を様々なパターンの幅および厚みでスプレーすることが求められる。成分「A」および成分「B」は、これらの用途のそれぞれに合わせて具体的に配合されており、互いに異なっているが、異なる化学物質の配合を含むこの種のあらゆる用途に対応する1つの吐出ガンが必要とされている。
【0017】
上に述べた全ての課題に加えて、噴射剤HFC−134aから噴射剤HFO−1234zeへの切り替えがフォーム業界にさらなる他の状況をもたらした。HFO−1234zeは、配合初期に適切な容器から吐出された場合の性能が許容されるが、貯蔵寿命が非常に限られており、通常、約1ヶ月間である。しかし、この業界において一般的であるように、2液型のボンベには12ヶ月以上の貯蔵寿命が求められる。噴射剤HFO−1234zeを使用した場合、この期間にわたり保管したボンベから合成したポリウレタンフォームは不良品となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
業界は、新たに承認されたハイドロフルオロオレフィン系気体状噴射剤が、要求される利用までのより長い貯蔵寿命を有する解決策を必要としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明によれば、HFO−1234ze噴射剤を「A」部(side)および「B」部の両方に使用した場合の貯蔵寿命が少なくとも12ヶ月間となる、発泡安定性を有する2液型ポリウレタンフォームが提供される。
【0020】
本発明のさらに他の態様は、芳香族ポリエステルポリオール含有率が高く、かつ脂肪族ポリエーテルポリオールが約30%以下である、発泡安定性を有する2液型ポリウレタンフォームを提供する。これは後に説明するように、当業者の直感に反している。本発明のより好ましい態様において、脂肪族ポリエーテルポリオール含有率は約10%以下であり、最も好ましくは、脂肪族ポリエーテルポリオール含有率はほぼゼロである。
【0021】
本発明の上述の態様および他の態様は、「B」部に使用される配合液のポリオールの芳香族性を高めることと併せて、少なくとも2個のシクロヘキシル環を有する少なくとも穏和な3級アミン触媒(例えば、Polycat(登録商標)−12)を、金属塩触媒(例えば、オクタン酸カリウム)または2,2−ジモルホリノジエチルエーテル(DMDEE)と一緒に含む触媒パッケージを使用することによって達成される。
【0022】
記載されるのは、ライズ、高さ、初期発泡によるゲルタイムおよびタックタイムを有する2液型ポリウレタンフォームであって、そのライズ、高さ、初期発泡によるゲルタイムおよびタックタイムは、反応体を少なくとも約130psiの加圧下にあるときに加速劣化させた後、発泡剤HFC−134aを使用して発泡させたポリウレタンフォームと比較して、噴射剤HFO−1234zeを使用したそれらのパラメータの約20%以内であり、2液型ポリウレタンフォームは、
「A部」であるジイソシアネートと、
「B部」であるブレンド物であって、
少なくとも1種の芳香族ポリエステルポリオールおよび約10%以下の脂肪族ポリエーテルポリオールと、
少なくとも2種の触媒であって、
少なくとも2個のシクロヘキシル環を含む少なくとも1種の第3級アミン触媒、
少なくとも1種の脂肪族金属塩触媒
を含む少なくとも2種の触媒と、
約1.5重量%までの水と
を含む、「B部」であるブレンド物と
を含む、2液型ポリウレタンフォームである。
【0023】
本発明の一態様では、少なくとも1種の芳香族ポリエステルポリオールは、少なくとも2種の芳香族ポリエステルポリオールである。請求項2のポリウレタンフォームは、約1%以下の脂肪族ポリエーテルポリオールをさらに含む。
【0024】
本発明の他の態様では、ポリウレタンフォームは、添加された水を基本的に含まないであろう。
【0025】
このポリウレタンフォームは、好ましくは、少なくとも2個の芳香族環を含む少なくとも1種の芳香族ポリエステルポリオールと、11重量パーセント以下の窒素、より好ましくは10重量パーセント以下の窒素を含む少なくとも1種の第3級アミン触媒とを含むであろう。
【0026】
ポリウレタンフォームに使用するための2種の触媒のうちの少なくとも1種は脂肪族金属塩であり、より具体的には、金属アルカン酸塩、より具体的にはアルカン酸カリウム、すなわちオクタン酸カリウムである。
【0027】
ボンベ「A」およびボンベ「B」を反応させ、かつポリウレタンフォームをスプレーする前に、反応体の組合せおよび噴射剤を50℃で約48日間にわたり保管することを含む加速劣化に付されたポリウレタンフォームのゲルタイムの触媒活性減衰比は、ポリウレタンスプレーフォームの場合には約2以下に、かつ現場注入ポリウレタンフォームの場合には約2.5以下に増大する。
【0028】
本発明の一態様では、少なくとも2種の芳香族ポリエステルポリオールは、
【化1】
水酸基価(mgKOH/g) 230〜250
水(重量%) 最大0.15
酸価(mgKOH/g) 最大0.6〜1.0
77°F(25℃)での粘度(cP) 2,000〜4,500
当量(平均) 234
分子量(平均) 468
および
【化2】
水酸基価(mgKOH/g) 335〜365
水(重量%) 最大0.15
酸価(mgKOH/g) 最大0.5〜2.0
77°F(25℃)での粘度(cP) 2,500〜3,500
からなる群から選択される。
【0029】
本発明の他の態様では、気体状HFOにより発泡される2液型ポリウレタンフォーム貯蔵寿命を改良するための方法であって、
「B」部配合液に使用されるポリオール全体の50重量%以上の芳香族ポリエステルポリオールを使用するステップであって、前記「B」部配合液は、約1.5重量%以下の水を含む、ステップと、少なくとも2個のシクロヘキシル環を含む第3級アミン触媒であって、11重量パーセント未満の窒素を有する第3級アミン触媒と、脂肪族金属塩触媒との触媒の組合せを使用するステップとを含む、方法が記載される。
【0030】
この第3級アミン触媒は、重量基準で約10%以下の窒素を有し、「B」部配合液は、0.1〜1.3重量%の水を有する。
【0031】
この3級アミン触媒は、重量基準で約8%以下の窒素を有し、「B」部配合液は、0.5〜1.0重量%の水を有する。
【0032】
上述の方法により合成されるポリウレタンフォームは、約10%以下の脂肪族ポリエーテルポリオールを含み、より好ましくは、添加された脂肪族ポリエーテルポリオールを含まない。
【0033】
本発明の一態様では、本発明の方法は、少なくとも2種の芳香族ポリエステルポリオールを添加するステップをさらに含む。
【0034】
ボンベ「A」およびボンベ「B」を反応させ、かつポリウレタンフォームをスプレーする前に、反応体の組合せおよび噴射剤を50℃で約48日間にわたり保管することを含む加速劣化に付されたポリウレタンフォームのゲルタイの触媒活性減衰比は、ポリウレタンスプレーフォームの場合には約2以下に、かつ現場注入ポリウレタンフォームの場合には約2.5以下に増大する。
【0035】
この方法は加速試験を採用しており、この試験では、方法はポリウレタンフォームの実用性を判定するために前記ポリウレタンフォームのゲルタイムの触媒活性減衰比を使用し、前記方法は、ボンベ「A」およびボンベ「B」を反応させる前に、反応体の組合せおよび噴射剤を50℃で約48日間にわたり保管することを含む加速劣化に付されたポリウレタンフォームのゲルタイムに関する触媒活性減衰比を算出するステップと、ポリウレタンフォームをスプレーするステップと、ゲルタイムの触媒活性減衰比を測定するステップと、増大が、ポリウレタンスプレーフォームの場合には約2以下であるか否か、および現場注入ポリウレタンフォームの場合には約2.5以下であるか否かを決定するステップとを含む。
【0036】
本発明のこれらおよび他の目的は、図面、詳細な説明および添付の特許請求の範囲に照らして考えることにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】噴射剤HFO−1234zeを使用すると共に様々な3級アミン触媒を使用した場合の触媒活性減衰比(「CDR」)の、ポリウレタンフォームの特性値予測手段(predictive prognosticator)としてのプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本特許出願を出願した時点において本出願人が知っていた最良の形態を例示することを目的として、本発明を実施するための最良の形態をここに説明する。本実施例および図面は例示のみを目的としており、本発明を限定することを意図するものではなく、本発明は請求項の範囲および趣旨により判断される。
【0039】
現在、低圧スプレー用ポリウレタンフォームに使用されるHFC−134aの代替としてSNAPが唯一承認している許容されるものは、Honeywell Solstice(登録商標)GBA発泡剤である。この分子は大気中で分解するように設計されていたため、ポリウレタンフォームの化学者または配合技術者に、分子固有のオレフィン系構造に基づく大きい技術的課題を提示している。
【0040】
この分子に関する最も重要な課題は、低圧スプレー式ポリウレタンフォーム業界における貯蔵寿命に関する高い要求を満たすであろう製品を配合することにある。現在配合されている製品は約200〜250psiの圧力下でボンベに加圧注入されている。この製品は最終用途に基づく幅広い範囲の温度に曝され、定量装置等を利用することなく送出される。
【0041】
今日までの研究から、Solstice(登録商標)1234zeをHFC−134aの当座の代替として使用し、配合液中の噴射剤のみを置き換えた場合、Solstice(登録商標)1234ze噴射剤分子が分解し、発泡させたフォーム系が不良品となることが判明している。
【0042】
Solstice(登録商標)1234zeは所望のODPおよびGWP特性を有しているが、この噴射剤は、長期間にわたり保管(加速試験手順における3ヶ月間、すなわち50℃で12日間を超える期間の保管と定義される)すると、「B」部容器内において、HFC−134a等の従来の発泡剤を使用して発泡させた同種のフォームと比較して、ポリウレタンフォームの最終特性に悪影響を与えるようにポリオールおよび他の添加剤と相互作用する。スプレー後の2液型ポリウレタンフォームは、標準的なポリウレタンフォームの構成成分を使用した場合、次に例示するように、このオレフィン系噴射剤に起因して不良品となる。
【0043】
【表1】
【0044】
「A」部および「B」部の噴射剤の量は、粘度の差を補い、吐出比が約1:1となるように調整したことに留意されたい。さらに、業界において標準的であるように、気体状噴射剤に加えて他の不活性ガスも含有させることができる。
【0045】
【表2】
【0046】
加速劣化試験を用いると、この短時間で、HFO−1234zeで発泡させたフォームは劣化し、後に例示するように表面外観に劣るものになる。これと比較して、HFC−134aで発泡させたポリウレタンフォームは加速劣化試験後も外観が基本的に変わらなかった。許容されるCDR比は、スプレーフォームの場合には約2未満であり、現場注入フォームの場合には約2.5未満となる。上の結果から明らかなように、4.24というCDRはいずれの用途にも許容できない。したがって、ポリウレタンフォーム合成に使用される両方のポリオールの組成変更と併せて、触媒パッケージの改良が必要であることが直ちに分かる。
【0047】
HFO−1234zeで発泡させた2液型発泡ポリウレタンフォームに関するさらなる知見として、下に示すように、気泡構造の低下、フォームのライズ/高さの低下、および独立気泡率の低下が挙げられる。
【0048】
独立気泡率等の物性が損なわれると、R値/kファクター(熱伝導率)の低下および空気遮断性能の低下等のさらなる不良を招く。これらは業界における多くの用途に重要な性能特性である。劣化したボンベから発泡させたフォームは、塗布後にライズをほとんどまたは全く示さなかった。表面は、発泡剤が揮散したことを示していた。フォームは数時間後も非常に軟かく、内部では依然として硬化反応が起こっていた(切断すると粘着性を有していた)。フォームの気泡構造および全体的な外観は非常に悪かった。
【0049】
注目すべきさらなる不良として密度の増加が挙げられ、その結果として、製品の歩留まりが大幅に低下するうえに、圧縮強度や引張強度等において劣ったものになる。HFO−1234ze噴射剤に関する他の注目すべき不良は、要求される貯蔵期間にわたり、難燃剤であるリン酸トリス(2−クロロイソプロピル)(「TCPP」)と相溶しないことにある。TCPPは最も一般的に使用されている難燃剤であり、SPF/建築基準等に基づくE84 クラスIの要求を満たすため、約40%の量で添加することが必要である。HFO−1234zeを用いて試験した系は、従来のポリエーテル/ポリエステルポリオールブレンド物を「B」部に使用した場合、添加量が20%を大幅に超えると不良品となる。これは、クラスI等級を達成しようとする場合に問題となり、本発明に従い配合を改良しない限りフォームの用途が大幅に制限される。
【0050】
現行の世代のHFC−134a等の噴射剤分子は炭素−炭素二重結合を含まない。新規なHFO−1234ze分子は、地球温暖化係数が低く維持されるよう、分解するように設計されているため、二重結合を含む。この設計はモントリオール議定書および京都議定書の発効に対処するためのものであった。この二重結合は他の多くの化学反応の一環として攻撃されやすく、現在、ポリウレタンフォームに使用されている加圧された系内でも分解が起こるであろう。
【化3】
【0051】
現在、HFO−1234zeを典型的な「B」部のポリウレタンフォーム反応体と接触させる場合、芳香族ポリエステルポリオールを高含有量とすることがHFO−1234zeの貯蔵寿命に貢献するようである。脂肪族ポリエーテルポリオールおよび/または脂肪族ポリエーテルポリオール/ポリエステルポリオールブレンド物は、HFC−134aを使用して発泡させるポリウレタンフォームに従来使用されているが(表I参照)、HFO−1234zeで発泡させる配合液には、少なくとも大部分の量を芳香族ポリエステルポリオールに切り替えるという直感に反する手法が必要となる。発泡剤HFO−1234zeを使用する改良された配合を表IIIに例示する。
【0052】
【表3】
【0053】
本発明の一態様では、PS 2352およびTB−350等の2種の芳香族ポリエステルポリオールが「B部」配合液に使用される。すなわち、両者は粘度、水酸基価および酸価が類似している。これらの成分の主な違いの少なくとも一部はベンゼン環への結合にあり、PS 2352は高分子鎖が環のオルト位に結合しており、一方、TB−350は高分子鎖が環のパラ位に結合している。
【0054】
PS 2352
【化4】
水酸基価(mgKOH/g) 230〜250
水(重量%) 最大0.15
酸価(mgKOH/g) 最大0.6〜1.0
77°F(25℃)での粘度(cP) 2,000〜4,500
当量(平均) 234
分子量(平均) 468
色(ガードナー) 4
77°F(25℃)での密度(lb/U.S.gal) 9.9
77°F(25℃)での比重 1.19
【0055】
TB−350
【化5】
水酸基価(mgKOH/g) 335〜365
水(重量%) 最大0.15
酸価(mgKOH/g) 最大0.5〜2.0
77°F(25℃)での粘度(cP) 2,500〜3,500
色(ガードナー) 4〜5
77°F(25℃)での比重 1.233
官能基数 2.2
【0056】
2種の芳香族ポリエステルポリオールは好ましい組合せのようであるが、特定の作用理論または作用機序に束縛されることなく、必要なのは1種のみの芳香族ポリエステルポリオールであると考えられている。予備実験の結果から、PS 2352ポリエステルを100%使用すると、TB 350を100%使用した場合(他の成分は全て同一のまま)と同様に、許容されるポリウレタンフォームが生成し、硬化後の製品は外観も良好であることが示された。また、少量の、例えば約30%未満の脂肪族ポリエーテルポリオールを添加しても、許容されるポリウレタンフォームが生成するであろうと考えられており、より好ましくは、約10%未満の脂肪族ポリエーテルポリオールであり、最も好ましくは、脂肪族ポリエーテルポリオールなしである。
【0057】
ベンゼン環による遮蔽を行わずに3ヶ月間の劣化試験を行った後に合成されたフォームを試験すると、つぶれが生じたり、砕けたりする。芳香族で遮蔽する試みを行わずに合成されたフォームは全て許容できないものとなった。
【0058】
これに伴い分析した特性を表IVにまとめる。表に示すように、先に述べた加速劣化試験手順を用いて合成されたフォームは、全て触媒活性減衰比パラメータの上限である約2(スプレーフォームの場合)および約2.5(現場注入フォームの場合)を下回っていた(これらが1.0〜1.28未満の範囲にあったことに注目されたい)。
【0059】
【表4】
【0060】
ポリエーテルポリオールからポリエステルポリオール系に変更することの影響を明らかにするために対照実験を行い、上述のポリエステルポリオールであるPS 2352およびTB 350と、業界に通常使用されているポリエーテルポリオール、すなわちVoranol 360およびPoly G 30−280のみを使用した系とを比較する試験を行った。実験を表Vにまとめる。
【0061】
【表5】
【0062】
上に使用したVoranol 360は、公称分子量が約610であり、平均水酸基価が約4.5であるショ糖/グリセリン(30/70)高剛性ポリエーテルポリオールである。これは寸法安定性を得るために高い官能基数(例えば、約4.4〜4.5)を有する多官能性ポリエーテルポリオールである。Poly G 30〜280は、公称分子量が約600であり、平均水酸基価(mgKOH/g)が約274であり、酸価が最大0.05であるポリエーテルトリオールである。
【0063】
上で合成したフォームを、先に定めた加速試験手順を用いて試験した。表VIにまとめる。
【0064】
【表6】
【0065】
容易に分かるように、かつ業界での直観に大きく反するように、ポリエステルポリオールの組合せは、加速試験を用いた研究において12ヶ月間にわたり効果を維持し、特に触媒活性減衰比から明らかなように、加速試験手順を用いた全期間にわたり閾値である約2未満(スプレーフォームの場合)および約2.5未満(現場注入フォームの場合)を下回っていた。さらに、独立気泡率およびR値は許容範囲内であった。これは、加速劣化試験開始から9ヶ月間にわたり確かに触媒活性減衰比を目標値未満に維持していたが、R値および独立気泡率が許容値を超えていたポリエーテルポリオールの組合せとは対照的である。硬化後のフォームのくずれは顕著であり、分析に耐える試料が得られないほどであった。
【0066】
フォーム触媒系
上述の立体障害芳香族ポリエステルポリオールに加えて、非従来的な触媒の組合せが必要である。Polycat(登録商標)12(穏和なアミン触媒)は、中心窒素(「N」)原子に対する立体障害効果がかなり高い。これは、3個の第3級アミンを有するPolycat(登録商標)5(高活性アミン触媒)には見られない。重要なことの少なくとも1つは、触媒のうちの1種がDabco(登録商標)K 15を含むことが必要なことにある。触媒の大手製造業者(Air Products)は、Polycat(登録商標)12を中程度の効果を有する現場注入用触媒と評価している。配合液が水分を0.9%含むと泡化反応(R−NCO+H2O=R−NH2+CO2)が開始され、それによって多量の熱が発生してDabco(登録商標)K−15(オクタン酸カリウム)塩が溶媒和し、全体として良好な相乗触媒作用を供するのに十分に早い段階で、十分な活性を呈するようになると考えられている。Dabco(登録商標)K−15(オクタン酸カリウム)を多量に添加することも、許容されるスプレーポリウレタンフォーム配合液においてPolycat(登録商標)12を作用させるために重要であると考えられている。Dabco(登録商標)K−15はこの用途に有効であるが、他の金属塩(これらに限定されるものではないが、同じくカリウム系触媒であるDabco(登録商標)TMR 20等)も有効であると考えられている。
【0067】
ここで示唆されるのは、この配合における触媒および/または共触媒が以下の表VIIに示す換算された比率の窒素を含まなければならないことである。好ましくは、この比率は、重量基準で窒素10%未満、より好ましくは7%未満である。
【0068】
【表7】
【0069】
Dabco(登録商標)K−15(オクタン酸カリウム)/DEG(ジエチレングリコール)
【化6】
【0070】
Polycat(登録商標)−12(N,N−ジシクロヘキシルメチルアミン)
【化7】
【0071】
DMDEE(2,2’−ジモルホリノジエチルエーテル)
【化8】
【0072】
Polycat(登録商標)−5(N,N,N’,N’,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン)
【化9】
【0073】
Polycat(登録商標)−8(N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン)
【化10】
【0074】
N,N−ジメチルヘキシルアミン
【化11】
【0075】
特定の作用理論または機構に束縛されることなく、「B」部のアミン触媒において、シクロヘキシル環に帰属される立体障害が増大すると共に、ポリオール中に存在する芳香族(例えば、ベンゼン)環が増加すると、強力な塩基/発泡剤の相互作用に対する立体障害の度合いが高まると共に、極性を有するポリウレタンB部配合液の電荷密度も安定すると考えられている。
【0076】
芳香族による遮蔽の利益が得られない場合、例えば、Polycat(登録商標)−5およびPolycat(登録商標)−8を用いた場合、フォームの性能は著しく低下した。これは以下に示す実験から実証された。
【0077】
【表8】
【0078】
上で合成したフォームを、先に定めた加速試験手順を用いて試験した。表IXにまとめる。
【0079】
【表9】
【0080】
金属アルカン酸塩と、その部分中に少なくとも2個の芳香族環を有する穏和な3級アミン触媒との触媒の組合せのみが安定な系となり、さらに図1に例示するように、加速試験手順を用いた場合の触媒活性減衰比が、要求を満たす範囲内である約2未満(スプレーフォームの場合)および約2.5未満(現場注入フォームの場合)となる。
【0081】
可塑剤
スプレーポリウレタンフォーム配合液は、通常、可塑剤を30〜40%含むが、製造業者、すなわちHoneywellは、多量のリン酸トリス(1−クロロ−2−プロピル)(「TCPP」)+Solstice(登録商標)GBAは、安定性にとって望ましくない組合せであることを伝えている。しかしながら、芳香族ポリエステルポリオールのみを使用する好ましい組合せでは、これは認められない。
【化12】
リン酸トリス(1−クロロ−2−プロピル)
【0082】
難燃剤(テトラブロモフタル酸ジオール)
ポリウレタン組成物には従来の難燃剤がよく用いられているが、これは任意的である。
【化13】
【0083】
界面活性剤
従来の界面活性剤の組合せは約0.5〜2重量%で使用される。
Tegostab(登録商標)B−8433 ポリエーテルポリジメチルシロキサンコポリマー整泡剤
Dabco(登録商標)LK(登録商標)−443 非シリコーン系有機界面活性剤
【0084】
水分
水分も、水がより多く存在すると発泡剤(>1.5%)の役割を果たすようであるが、貯蔵寿命に悪影響を及ぼす。但し、水分含有量が低ければ(<1.0%)許容される。しかしながら、表Xに示すように、一部の構造用途は水を基本的に含まないことが求められる。
【0085】
【表10】
【0086】
上で合成したフォームを、上に定めた加速試験手順を用いて試験した。表XIにまとめる。
【0087】
【表11】
【0088】
様々な用途に合成したフォームは、少なくとも次に示す特性を示すであろう。表XIIに示す。
【0089】
【表12】
【0090】
知見
温度は保管の要素であり、温度が低下すると貯蔵寿命が向上するようである。
【0091】
ここまで少なくとも以下に示すことを例示してきた:芳香族ポリエステルポリオールの含有量を高くする(ポリエーテルポリオールは芳香族性をほとんどまたは一切有しないことが認められている)。芳香族ポリエステルポリオール含有量が100%であるSPF配合液は、1年間の貯蔵寿命を示す。難燃剤の選択が重要であり、芳香族含有量がより高い難燃剤、例えば、PHT 4ジオールが補助となる。より芳香族性が低いもの、例えばTCPPは、高濃度で使用するとさらに貯蔵寿命を短縮させるようである。特定の理論または作用の態様に束縛されることなく、B部に存在するベンゼン環を増加させることにより、強力な塩基/発泡剤の相互作用に対する立体障害の度合いが高くなると同時に、極性を有するポリウレタンB部配合液の電荷密度も安定させることが想定されている。
【0092】
現在、HFC−134aの許容される代替として低圧スプレーポリウレタンフォーム業界において唯一承認されているものは、Honeywell Solstice GBA発泡剤である。この分子は大気中で分解するように設計されていたため、ポリウレタンフォームの化学者または配合技術者に、分子固有の構造に起因する大きい技術的課題を提示している。
【0093】
分子に関する最大の課題は、低圧スプレーポリウレタンフォーム業界における貯蔵寿命に関する高い要求を満たすであろう製品を配合することにある。本発明者らの製品は、約200〜250psiの圧力下でボンベに加圧注入される。製品は最終用途に応じた幅広い範囲の温度に曝され、定量装置を利用することなく送出される。
【0094】
現時点において本出願人が知っている最良の形態を説明する目的で、本発明を実施するための最良の形態を説明してきた。実施例は例示のみを目的とするものであり、本発明を限定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲の範囲および利点により判断される。本発明を好ましい実施形態および代替的な実施形態を参照しながら説明してきた。本明細書を読み理解することにより、修正形態および変更形態が想到されるであろうことは明白である。この種のあらゆる修正形態および変更形態が、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲を逸脱しない限り包含されることが意図されている。
図1