特許第6586473号(P6586473)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6586473石油樹脂、石油樹脂の製造方法及び接着剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6586473
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】石油樹脂、石油樹脂の製造方法及び接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 240/00 20060101AFI20190919BHJP
   C08C 19/02 20060101ALI20190919BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   C08F240/00
   C08C19/02
   C09J201/00
【請求項の数】15
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2017-567601(P2017-567601)
(86)(22)【出願日】2015年12月31日
(65)【公表番号】特表2018-526482(P2018-526482A)
(43)【公表日】2018年9月13日
(86)【国際出願番号】KR2015014584
(87)【国際公開番号】WO2017003057
(87)【国際公開日】20170105
【審査請求日】2018年1月15日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0093774
(32)【優先日】2015年6月30日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】イ,サン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジュン ヒョ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジュン ソク
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ミン シク
【審査官】 岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−001292(JP,A)
【文献】 特開平10−176178(JP,A)
【文献】 特開2000−008067(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2001−0087846(KR,A)
【文献】 国際公開第2004/056882(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0031847(US,A1)
【文献】 特表2018−526483(JP,A)
【文献】 特開昭62−4785(JP,A)
【文献】 特開2008−260951(JP,A)
【文献】 土屋昇三、今井勇、大島昭夫、林日出夫,ジシクロペンタジエン系石油樹脂(第1報)ジシクロペンタジエンの熱重合,石油学会誌,日本,公益社団法人石油学会,1984年,27巻第1号,26-30
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C 19/00− 19/44
C08F 6/00−246/00
C08F 301/00
C09J 1/00−5/10
C09J 9/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される繰り返し単位、及び下記化学式2で表される繰り返し単位を含む、石油樹脂の製造方法であって、
溶媒に混合されたジシクロペンタジエンと炭素数6〜20のオレフィンとの熱重合反応によって重合物を製造するS1段階と、
前記S1段階で製造された重合物が水素化触媒により水素添加反応を経るようにするS2段階とを含んでなる、石油樹脂の製造方法。
<化学式1>
<化学式2>
式中、R1は水素基またはメチル基であり、R2は炭素数3〜18のアルキル基であり、mとnはそれぞれ0〜10の整数である。
【請求項2】
前記S1段階にて、実質上、ジシクロペンタジエン、及び、リニアアルファオレフィン(LAO)だけを用いることを特徴とする、請求項1に記載の石油樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記S1段階における前記オレフィンはリニアアルファオレフィン(LAO)であることを特徴とする、請求項1に記載の石油樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記S1段階における前記オレフィンは、前記ジオレフィン1モルに対して0.1〜2.0のモル比で添加されることを特徴とする、請求項1に記載の石油樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記S1段階は、200〜320℃の温度で0.5〜4時間熱重合反応させることを特徴とする、請求項1に記載の石油樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記S2段階における前記水素化触媒は、ニッケル、パラジウム、コバルト、白金、及びロジウム触媒よりなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の石油樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記S2段階における前記水素化触媒は、前記ジオレフィン1モルに対して0.001〜0.5のモル比で添加されることを特徴とする、請求項1に記載の石油樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記S2段階は、50〜150barの圧力で150〜300℃の温度で水素化反応させることを特徴とする、請求項1に記載の石油樹脂の製造方法。
【請求項9】
下記化学式1で表される繰り返し単位、及び下記化学式2で表される繰り返し単位を含む、石油樹脂。
<化学式1>
<化学式2>
式中、R1は水素基またはメチル基であり、R2は炭素数3〜18のアルキル基であり、mとnはそれぞれ0〜10の整数である。
【請求項10】
前記石油樹脂は、重量平均分子量が500〜3,000g/molであり、軟化点が10〜150℃であり、色相(APHA color)が1〜100であることを特徴とする、請求項9に記載の石油樹脂。
【請求項11】
前記石油樹脂は、オレフィンに由来する成分を10〜40モル%含むことを特徴とする、請求項9に記載の石油樹脂。
【請求項12】
前記石油樹脂は、1H−NMR測定後のそのスペクトルの結果から、数式1及び数式2で求められる各ピークの面積比について、S1は20%以上であり、S2は50%以上であることを特徴とする、請求項10に記載の石油樹脂。
<数式1>
S1=A1/A3
<数式2>
S2=A2/A3
(式中、A1は前記石油樹脂についての1H−NMR測定後のそのスペクトルの結果における0.8〜1.0ppmのピーク面積であり、A2は1.0〜1.4ppmのピーク面積であり、A3は1.4〜7.5ppmのピーク面積である。)
【請求項13】
前記石油樹脂は、請求項1〜8のいずれか一項の方法によって製造されることを特徴とする、請求項9に記載の石油樹脂。
【請求項14】
下記化学式1で表される繰り返し単位、及び下記化学式2で表される繰り返し単位を含む石油樹脂、
スチレン系ブロックコポリマー(styrenic block copolymers)、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビニルアセテート及びエチレン系ポリオレフィンブロックコポリマー(ethylene based poly olefin block copolymer)から1種以上選択されるポリマー、並びに
合成ワックス、動物性の天然ワックス、植物性の天然ワックス、芳香族系オイル、ナフテンテン系オイル、及びパラフィン系オイルよりなる群から1種以上選択される油分を含有する、接着剤組成物。
<化学式1>
<化学式2>
式中、R1は水素基またはメチル基であり、R2は炭素数3〜18のアルキル基であり、mとnはそれぞれ0〜10の整数である。
【請求項15】
前記接着剤組成物で製造された接着剤の軟化点は50〜150℃であり、溶融粘度は160℃で300〜10,000cpsであり、180℃で200〜8,000cpsであることを特徴とする、請求項14に記載の接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油樹脂、石油樹脂の製造方法及び接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
石油樹脂(炭化水素樹脂(Hydrocarbon Resin))は、代表的な粘着付与剤(Tackifier)であって、接着テープやペイント、インク、ゴム、タイヤなどの製品に、粘着・接着性を持たせる物質として主に用いられる。性状は、常温で液相または固相の熱可塑性樹脂であって、透明な半流動体の液体から薄黄色及び無色透明(Water White)の固体まで様々な形態でありうる。
【0003】
特に、石油樹脂の中でも、水素添加(以下、「水添」という)石油樹脂は、石油化学工場でナフサなどの高温熱分解油の中にある高級不飽和炭化水素を原料にして製造される熱可塑性樹脂であって、熱及び紫外線(UV)に対する安全性に優れるうえ、接着性を与える特性を持っており、医療用品、大工用品、衛生用品などに様々に用いられている。
【0004】
このように石油樹脂を用いる製品が毎年増加しているにも拘らず、現在石油樹脂の主原料として使用されているC5系留分は、その生産量が低下しており、石油樹脂の原料不足の現象が深刻化している。
【0005】
一方、水添石油樹脂などの場合には、製造過程で未反応原料、溶剤、及び低分子量のオリゴマーを完全に除去することが難しいため、高温で接着剤を噴射する、おむつなどの衛生製品を製造する過程で、石油樹脂自体の臭気を誘発し、その臭気が最終製品の包装を外したときに発生したりもする。また、水添石油樹脂は、高温での溶融の際に特有の不快な臭気が発生して作業環境に悪影響を与えるだけでなく、衛生製品に適用する場合には、臭気誘発因子により、敏感でデリケートな皮膚に使用する必要のある消費者のニーズを満足させるには限界があった。
【0006】
したがって、消費者の生活水準が高まるにつれて、衛生製品に用いられる石油樹脂の臭気に対する要求レベルが日増しに高まっているため、石油樹脂の臭気を改善するための技術の開発が切実に求められている。
【0007】
これにより、米国登録特許第5652308号では、メタロセン触媒を用いてC3系モノマーであるプロピレンと、C5系モノマーから製造されるジシクロペンタジエン(Dicyclopentadiene;DCPD)とを共重合させて、C5系モノマーの一部を、C3系モノマーで一部代替させた粘着付与樹脂を開示している。ところが、上記の方法で石油樹脂を製造する場合、酸素と水分に非常に脆弱な高価のメタロセン触媒を使用しなければならないので、工程設計が複雑であり、高い製造コストがかかるだけでなく、収率も30%未満と非常に低いため、実際に実用化するには難しいという問題点があった。
【0008】
また、C3系留分を使用する場合、C3系留分がガス状であるため、液化する工程及び液化維持設備などがさらに必要なので、高圧反応設備などの追加投資費が発生し、高圧反応設備が構築されなければ、実用化し難いという限界点を持つ。
【0009】
また、韓国特許出願第2013−0111233号では、プロピレン(C3系留分)をオレフィンとして用いる石油樹脂の製造方法を提示しているが、これは収率が低く、接着性能に劣るうえ、臭気が十分改善されないという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の主な目的は、石油樹脂原料の需給の問題を解決するとともに、実用化が可能なレベルの製造工程を実現しつつ収率を確保することができ、臭気の問題を改善させた石油樹脂、その製造方法及びそれを含む接着剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、溶媒に混合されたジオレフィンと炭素数〜20のオレフィンとの熱重合反応によって重合物を製造するS1段階と、前記S1段階で製造された重合物が水素化触媒によって水素添加反応を経るようにするS2段階とを含んでなる、石油樹脂の製造方法を提供する。
【0012】
ここで、前記オレフィンは好ましくは炭素数6〜12である。
【0013】
前記S1段階における前記ジオレフィンは、ジシクロペンタジエン、ピペリレン、ブタジエン及びプロパジエンよりなる群から選ばれる1種以上であり、ジシクロペンタジエンであることが好ましい。
【0014】
前記S1段階における前記オレフィンは、ジオレフィン1モルに対して0.1〜2.0のモル比で添加できる。
【0015】
前記S1段階は、200〜320℃の温度で0.5〜4時間熱重合させることが好ましい。
【0016】
前記S2段階における前記水素化触媒は、ニッケル、パラジウム、コバルト、白金、及びロジウム系触媒よりなる群から選ばれる1種以上であることが好ましく、前記S2段階における水素化触媒は、ジオレフィン1モルに対して0.001〜0.5のモル比で添加できる。また、前記S2段階は、50〜150barの圧力で150〜300℃の温度で水素化反応させることが好ましい。
【0017】
また、本発明は、化学式1で表される繰り返し単位、及び化学式2で表される繰り返し単位を含む石油樹脂を提供する。
【0018】
<化学式1>
【0019】
<化学式2>
【0020】
上記の化学式1及び2において、R1は水素基またはメチル基であり、R2は炭素数3〜18のアルキル基であり、mとnはそれぞれ0〜10の整数である。
【0021】
前記石油樹脂は、重量平均分子量が500〜3,000g/molであり、軟化点が10〜150℃であり、色相(APHA color)が1〜100であることを特徴とする。
【0022】
前記石油樹脂は、前記オレフィンに由来する成分を10〜40モル%含むことを特徴とする。
【0023】
さらに、本発明は、化学式1で表される繰り返し単位、及び化学式2で表される繰り返し単位を含む石油樹脂;スチレン−イソプレンブロックコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−ブタジエンブロックコポリマー、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーなどのスチレン系ブロックコポリマー(styrenic block copolymers)、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビニルアセテート(エチレン酢酸ビニルコポリマー)、及びプロピレン−エチレンコポリマーなどのエチレン系ポリオレフィンブロックコポリマー(ethylene based poly olefin block copolymer)から1種以上選択されるポリマー;及びパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス(microcrystalline wax)などの合成ワックスや動物性の天然ワックス、植物性の天然ワックス、芳香族系オイル、ナフテン系オイル及びパラフィン系オイルよりなる群から1種以上選択される留分を含有する接着剤組成物を提供する。
【0024】
前記接着剤組成物で製造された接着剤の軟化点は50〜150℃であり、溶融粘度は160℃で300cps乃至10,000cpsであり、180℃で200cps乃至8,000cpsであることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る石油樹脂の製造方法は、従来の石油樹脂の原料として使用されたC3系オレフィンを炭素数6〜20のオレフィンで代替することにより、原料の需給問題を解決することができ、これに加えて、従来の石油樹脂の製造方法でジオレフィンとオレフィンの共重合反応のために主に用いられた陽イオン触媒工程を熱重合工程で代替することにより、重合収率を大幅に向上させることができる。
【0026】
特に、本発明の製造方法で製造される石油樹脂は、従来の石油樹脂では改善することができずに特有の不快な臭気が発生していた問題を解決することにより、臭気がほとんど発生しないように改善することとなった。
【0027】
また、前記製造方法によって製造された石油樹脂は、臭気が少なく、接着性能に優れ、軟化点が高く、透明であり、分子量が低く、色相に優れるうえ、天然ゴムや合成ゴムなどの相溶性に優れるため、様々な分野において粘着剤または接着剤として有用に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施例1に係る水添前の重合物のNMRスペクトルである。
図2】本発明の実施例1に係る水添後の石油樹脂のNMRスペクトルである。
図3】本発明の実施例5に係る水添前の重合物のNMRスペクトルである。
図4】本発明の実施例5に係る水添後の石油樹脂のNMRスペクトルである。
図5】本発明の実施例7に係る水添前の重合物のNMRスペクトルである。
図6】本発明の実施例8に係る水添前の重合物のNMRスペクトルである。
図7】本発明の実施例9に係る水添前の重合物のNMRスペクトルである。
図8】本発明の比較例6に係る水添前の重合物のNMRスペクトルである。
図9】本発明の比較例6に係る水添後の石油樹脂のNMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の石油樹脂の製造方法は、溶媒に混合されたジオレフィンと炭素数〜20のオレフィンとの熱重合反応によって重合物を製造するS1段階と、前記S1段階で製造された重合物が水素化触媒によって水素添加反応を経るようにするS2段階とを含む。
【0030】
ここで、本発明は、前記S1段階で前記オレフィンを炭素数6〜20のものにして熱重合することにより、従来の石油樹脂で主原料として使用されたC5系オレフィンの原料需給が難しい問題を解決することもでき、従来の石油樹脂では解決できなかった臭気の問題を解決することもできる。また、このように熱重合で石油樹脂を製造する場合には、従来の石油樹脂の製造方法である陽イオン触媒法において必須の工程であった触媒除去工程を必要とせず、特に収率を90%以上に大幅に向上させることができて好ましい。ここで、前記オレフィンは、炭素数6〜16、好ましくは炭素数6〜12のものを選択することができる。
【0031】
前記S1段階における前記オレフィンは、二重結合が1つまたは2つ以上であり得るが、二重結合が1つであることが好ましく、さらに好ましくは線形オレフィン(linear olefin)である。
【0032】
また、前記オレフィンとして選択することが可能な具体例としては、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン及びドデセンよりなる群から選択される1種以上であり、好ましくは線形アルファオレフィン(linear α−olefin)であって、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン及び1−ドデセンよりなる群から選択された1種以上であるのがよい。特に、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン及び1−ドデセンであることが価格や需給の面で好ましい。
【0033】
前記ジオレフィンは、ジシクロペンタジエン、ピペリレン、ブタジエン及びプロパジエンよりなる群から選択される1種以上であることができ、オレフィンとの優れた共重合のためにはジシクロペンタジエンが好ましい。
【0034】
前記ジオレフィンは、オレフィンとの重合反応の前に溶媒に溶解させた後、オレフィンとの熱重合反応を経て石油樹脂に製造される。ここで、前記溶媒は、ジオレフィンを溶解させることができる溶媒であれば制限なく使用することができ、好ましくは、トルエン(toluene)、塩化メチレン(methylene chloride)、ヘキサン(hexane)、キシレン(xylene)、トリクロロベンゼン( trichloro benzene)、アルキルベンゼン(alkyl benzene)などを使用することができる。
【0035】
また、前記溶媒の含有量は、ジオレフィンとオレフィンを十分に溶解させることができる量であれば特に制限なく、おおむね、ジオレフィン1モルに対して2〜10モルであり得る。
【0036】
前記熱重合反応は、200〜320℃の温度で0.5〜4時間行うもので、200℃または0.5時間の未満で熱重合を行う場合には収率が低く、320℃または4時間を超えて熱重合を行う場合にはゲルが形成されるおそれがある。
【0037】
前記S2段階における水素化触媒は、ニッケル、パラジウム、コバルト、白金及びロジウム系金属触媒よりなる群から選択されるものであり得る。パラジウム(Pd)を使用することが、水素添加反応の反応性を向上させる観点から、さらに好ましい。
【0038】
前記水素化触媒は、ジオレフィン1モルに対して0.001〜0.5モルを使用することが好ましい。もしジオレフィン1モルに対して0.001モル未満で使用する場合には、反応性が不足するおそれがあり、0.5モルを超えて使用する場合には、多量の触媒の使用により経済的ではないという欠点がある。
【0039】
前記S2段階は、50〜150barの圧力で150〜300℃の温度で水素化反応させることができる。もし150bar超または300℃超で反応を行う場合には、過酷な反応条件によって分子構造が破壊されるおそれがあり、50bar未満または150℃未満で反応を行う場合には、水素添加反応が十分に行われないという問題点が発生するおそれがある。
【0040】
以上説明した本発明に係る製造方法は、90%以上の高い収率で、臭気がかなり改善された石油樹脂を製造することができる。
【0041】
また、本発明は、化学式1で表される繰り返し単位、及び化学式2で表される繰り返し単位を含む石油樹脂を提供する。
【0042】
<化学式1>
【0043】
<化学式2>
【0044】
上記の化学式1及び2において、R1は水素基またはメチル基であり、R2は炭素数3〜18のアルキル基であり、mとnはそれぞれ0〜10の整数である。
【0045】
本発明の石油樹脂は、臭気の高いジシクロペンタジエンの代わりに、炭素数6〜20のオレフィンが一部重合されて臭気が改善されたものであって、水素添加反応によって、前記化学式1及び化学式2のように二重結合が残っていない、シクロペンタジエンと炭素数6〜20のオレフィンとが重合された構造を持つ。また、本発明の石油樹脂は、ジオレフィンとオレフィンとを共重合させることにより、様々なポリマーとの相溶性を高めて接着力及び凝集力の性能を高めることができる。
【0046】
前記石油樹脂は、重量平均分子量が500〜3,000g/molであり、軟化点が10〜150℃であり、色相(APHA color)が1〜100であることを特徴とする。
【0047】
重量平均分子量が500g/mol未満である場合には、接着力が低下するおそれがあり、重量平均分子量が3000g/molを超える場合には、相溶性が不足するおそれもある。軟化点が10℃未満の場合には、接着力が低下するおそれがあり、軟化点が150℃を超える場合には、製造工程への適用が難しいという面で好ましくない。
【0048】
また、色相(APHA color)は、100を超えると、色相が悪化して接着剤の製造の際に欠点として作用しうる。
【0049】
また、本発明の石油樹脂は、オレフィンに由来する成分が10〜40モル%で含有されうる。前記オレフィンの含有量が10モル%未満である場合には、オレフィン共重合による接着性能改善効果及び臭気改善効果の発現が難しいおそれがあり、40モル%を超える場合には、接着性能が低下するおそれがある。
【0050】
そして、前記石油樹脂は、1H−NMR測定の後に、そのスペクトル結果から数式1及び数式2のように求められる各ピークの面積比について、S1が20%以上であり、S2が50%以上であることが好ましい。
【0051】
<数式1>
S1=A1/A3
【0052】
<数式2>
S2=A2/A3
【0053】
式中、A1は、前記石油樹脂の1H−NMR測定の後の、そのスペクトル結果における0.8〜1.0ppmのピーク面積であり、A2は1.0〜1.4ppmのピーク面積であり、A3は1.4〜7.5ppmのピーク面積である。
【0054】
すなわち、前記石油樹脂は、ピーク面積比S1が20%以上であり、且つ、S2が50%以上であることにより、接着性能向上及び臭気改善というメリットがある。
【0055】
本発明で製造された石油樹脂は、ホットメルト接着剤、感圧型接着剤、インク、ペイント、ロードマーキング用ペイントなどに粘着・接着性能を与えることができ、また、天然ゴム、合成ゴムなどのさまざまな樹脂に配合されて接着剤または粘着剤として有用に使用することができる。
【0056】
さらに、本発明は、化学式1で表される繰り返し単位、及び化学式2で表される繰り返し単位を含む石油樹脂;スチレン−イソプレンブロックコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−ブタジエンブロックコポリマー、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーなどのスチレン系ブロックコポリマー(styrenic block copolymers)、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビニルアセテート、及びプロピレン−エチレンコポリマーなどのエチレン系ポリオレフィンブロックコポリマー(ethylene based poly olefin block copolymer)から1種以上選択されるポリマー;及びパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの合成ワックスや動物性の天然ワックス、植物性の天然ワックス、芳香族系オイル、ナフテン系オイル、及びパラフィン系オイルよりなる群から1種以上選択される油分を含有する接着剤組成物を提供する。
【0057】
前記接着剤組成物で製造された接着剤の軟化点は、50〜150℃であり、溶融粘度は、160℃で300cps乃至10,000cpsであり、180℃で200cps乃至8,000cpsであることを特徴とする。
【0058】
前記接着剤の軟化点が50℃未満の場合には接着力が低下するおそれがあり、前記接着剤の軟化点が150℃を超える場合には製造工程の適用が難しいという面で好ましくない。
【0059】
また、溶融粘度が160℃で10,000cpsを超えると、加工性が低下し、300cps未満では接着力が低下するおそれもあり、溶融粘度が180℃で8,000cpsを超えると、加工性が低下し、200cps未満では接着力が低下するおそれもある。
【0060】
前記接着剤組成物で製造された接着剤は、ホットメルト型の接着剤(HMA、Hot melt adhesive)または感圧型接着剤(HMPSA、Hot melt sensitive adhesive)として使用できる。
【0061】
ホットメルト型接着剤は、相溶性(Compatibility)が100℃以下、硬さ(Hardness)が30以上90以下、オープンタイム(Open time)が5秒以上30秒未満、硬化時間(Set time)が0.1秒以上5秒未満であって、接着剤として優れた物性を持っていることが分かる。
【0062】
感圧型接着剤は、ボールタック(Ball Tack)法で初期40cm以下、老化後40cm以下を示し、剥離強度(Peel strength)法で初期500gf/in以上、老化後500gf/in以上を示し、保持力(Holding power)法で初期30min以上、老化後30min以上を示し、せん断保持力不能温度(SAFT)法で初期40℃以上、老化後40℃以上を示すので、感圧型接着剤として優れた物性を持っていることが分かる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。ところが、下記実施例は、本発明の範囲を制限するものではなく、本発明の理解を助けるためのものと解釈されるべきである。
[実施例]
【0064】
実施例1
1Lのオートクレーブでジシクロペンタジエン(DCPD)1.5molを溶媒たるトルエン4molに溶解させて混合物を作り、ここに1−ヘキセン0.5molを添加し、反応器を締結し、反応温度を270℃に維持しながら2時間熱重合反応させた後、反応を終結した。反応完了の後、生成された重合物を240℃で5分間蒸留して未反応留分を回収し、残った重合物55gを得た。得られた重合物55gに、水添溶媒としてトルエンを1.5倍投入して完全に溶解させ、1Lのオートクレーブに投入した。ここにパラジウム触媒0.2molを投入し、反応器を締結した後、水素圧力80bar、温度230℃で90分間水素添加反応を行った。反応が終了した後、反応生成液を10torrの真空状態にて260℃で10分間蒸留させて水素添加石油樹脂50gを製造した。詳細な各成分は、表1に記載の含有量として製造した。
【0065】
前記製造された水添前の重合物と水添後の石油樹脂とが重合されたかどうかは、核磁気共鳴分光計(Bruke社製の500NMR、14.1tesla)を用いて測定することにより確認したのであり、その結果は図1及び図2の通りである。すなわち、水添前の重合物の構造を確認した1H−NMRスペクトルの結果では、図1のように1H−NMR測定の際に0.85〜0.95ppmの範囲にある1−ヘキセンに由来するメチル基(−CH3)を表示するピーク(Peak)が増加することを確認することができるのであり、同時に、1.20〜1.30ppmの範囲にある1−ヘキセンの<−CH2−>鎖を表示するピークが増加することからみて、DCPDと1−ヘキセンとが共重合されたことが分かる。
【0066】
また、水添後の石油樹脂の構造を確認した1H−NMRスペクトルの結果では、図2のように、1H−NMR測定の際に0.85〜0.95ppmの範囲にある1−ヘキセンのメチル基(−CH3)を表示するピーク(Peak)が増加したのであり、同時に、1.20〜1.30ppmの範囲にある1−ヘキセンの<−CH2−>鎖を表示するピークが増加するので、DCPDと1−ヘキセンとが共重合された樹脂であることが分かるのであり、同時に、4.9〜6.5ppmの範囲にある二重結合ピークが完全に除去されたことを確認することにより、水添が完全に行われることが分かる。
【0067】
ここで、1H−NMRスペクトルの測定方法において、0.85〜0.95ppmの範囲にあるピークはオレフィンのメチル基であり、1.20〜1.30ppmの範囲にあるピークはオレフィンの<−CH2−>鎖のピークであり、4.9〜6.5ppmの範囲にあるピークはジオレフィンの二重結合のピークであって、図1及び図2の結果から分かるように、各ピークの値を比較することにより、DCPDとオレフィン(Olefin)とが共重合されたこと及び水添反応が行われたかどうかについて確認することができる。
【0068】
実施例2〜9及び比較例1〜5
実施例2〜9及び比較例1〜5の石油樹脂は、下記表1に記載された条件に基づいて、実施例1の方法によって製造した。
【0069】
ここで、実施例5で製造された水添前の重合物と水添後の石油樹脂の1H−NMRスペクトルの結果はそれぞれ図3(水添前)及び図4(水添後)に示し、実施例7で製造された水添前の重合物の1H−NMRスペクトルの結果は図5に示し、実施例8の水添前の重合物の1H−NMRスペクトルの結果は図6に示し、実施例9の水添前の重合物の1H−NMRスペクトルの結果は図7に示した。
【0070】
比較例6
1Lのオートクレーブでジシクロペンタジエン(DCPD)2.0molを溶媒たるトルエン4molに溶解させ、反応器を締結した後、反応温度を270℃に維持し、2時間後に反応を終結した。反応完了の後、生成された重合物を240℃で5分間蒸留して未反応留分を回収し、残った重合物57gを得た。
【0071】
得られた重合物57gに、水添溶媒としてトルエンを1.5倍投入して完全に溶解させ、これを1Lのオートクレーブに仕込んだ。ここにパラジウム触媒0.2molを投入し、反応器を締結した後、水素圧力80bar、温度230℃で90分間、水素添加を行った。反応が終了した後、反応生成液を10torrの真空状態にて260℃で10分間蒸留させて、水素添加石油樹脂53gを製造した。詳細な各成分は、表1に記載された含有量として製造した。
【0072】
製造された水添前の重合物と水添後の石油樹脂とが重合されたかどうかは、核磁気共鳴分光計(Bruke社製の500NMR、14.1tesla)を用いて測定することにより確認し、その結果は、図8及び図9に示した。
【0073】
比較例7及び8
比較例7及び8の石油樹脂は、下記表1に記載された条件に基づいて、比較例6の方法によって製造した。
【0074】
比較例9及び10
1Lのオートクレーブでジシクロペンタジエン(DCPD)を溶媒たるトルエン500mlに溶解させ、重合調節剤であるトリシクロデセン(tricyclodecene;TCDE)を投入した。ここに開始剤を添加し、反応器を締結した後、オレフィンを投入し、前記混合物に触媒を入れて反応を行った。前記反応温度を40℃に維持し、2時間後に反応を終結した。反応完了の後、生成された重合物を300gの水に混ぜて触媒を分離させた後、240℃で5分間蒸留して未反応留分を回収し、残った重合物を得た。
【0075】
得られた重合物300gに、水添溶媒としてトルエンを1.5倍投入して完全に溶解させ、1Lのオートクレーブに仕込んだ。ここにパラジウム触媒60gを投入し、反応器を締結した後、水素圧力80bar、温度230℃で90分間水素添加を行った。反応が終了した後、反応生成液を5torrの真空状態にて250℃で5分間蒸留させて水素添加石油樹脂を製造した。詳細な各成分は、表1に記載された含有量として製造した。
【0076】
【表1】
【0077】
<樹脂の特性評価方法>
(1)収率
収率は下記の式によって求めたものである。
収率(%)=得られた樹脂(g)/投入されたモノマーの和(g)*100
【0078】
(2)軟化点
軟化点は、環球式軟化点試験法(Ring and ball softening method)(ASTM E 28)を用いて測定した。環状の枠に樹脂を溶かして投入し、グリセリン入りのビーカーに据え置いた後、樹脂入りの環に球を載置し、温度を分当たり2.5℃ずつ昇温させ、樹脂が溶けて球が落ちるときの温度(軟化点)を測定し、表3に記載した。
【0079】
(3)分子量
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(PL GPC−220)によりポリスチレン換算の重量平均分子量、数平均分子量及びz−平均分子量を測定した。測定する水素添加石油樹脂は、0.34重量%の濃度となるように1,2,4−トリクロロベンゼンに溶解させてGPCに288μLを注入した。GPCの移動相は、1,2,4−トリクロロベンゼンを使用し、1mL/分の流速で流入した。その分析は130℃で行った。カラムは、2つのガードカラム(Guard column)と1つのPL5μm mixed−Dとを直列に連結した。検出器としては示差走査熱量計を用いて10℃/minで250℃まで昇温して測定し、N2雰囲気の下で分析を行ってセカンドスキャン(2nd scan)まで分析し、その結果を表3に記載した。
【0080】
表3に記載されたMwは重量平均分子量を意味し、MWDはMw/Mnを意味する。
【0081】
(4)重合物中のオレフィン含有量の分析
核磁気共鳴分光法(Bruker社製の500NMR、14.1tesla)を用いた1H−NMRスペクトルの結果から、重合物内のオレフィン含有量(mol%)を分析することができる。
【0082】
(5)色相(APHA)
色相はASTM D1544で測定した。具体的には、水素添加石油樹脂10.0gをトルエン10.0gに溶かした後、断面が長方形の石英セル(Cell)(横5cm、縦4cm、及び経路長さ50mm)に投入した。このセルをPFX195 COLORMETERに装着した後、稼働してAPHA色度(APHA color)を測定した。
【0083】
(6)比重
比重はASTM D71で測定した。具体的には、水素添加石油樹脂5gを200℃のホットプレート(hotplate)に溶かした後、球状の環に注ぎ、環から球状に固まった水素添加石油樹脂のみを取り外して比重計(QUALITEST:Densimeter SD−200L)に入れ、比重を測定した。
【0084】
(7)臭気強度
男女5人を対象にして石油樹脂の臭気強度に対する評価を行った。石油樹脂10gを100mlのビーカーに入れ、このビーカーを30分間180℃のオーブンに入れる。熱い状態でビーカーを取り出し、石油樹脂から発生する臭気を評価する。臭気強度評価方法では、直接、臭いを嗅いで下記表2の分類表上の数値に分類した後、0点から5点までの点数を与えるようにして平均点数を測定した。
【0085】
【表2】
【0086】
<樹脂の特性評価結果>
上述の方法で測定された結果を、下記表3に示した。
【0087】
【表3】
【0088】
表3に示すように、実施例1乃至8は90%以上の収率を持っていることを確認することができる。また、実施例1乃至8は、比較例1乃至8に比べて臭気がかなり改善されたことを確認することができる。
【0089】
比較例1は、韓国特許出願第2013−0111233号のようにプロピレンを用いて石油樹脂を製造したものである。比較例1の場合は、収率が大幅に低下し、比重が高く、臭気がかなり高いことを確認することができる。
【0090】
また、比較例9及び10の場合は、陽イオン触媒を用いて重合したものであり、収率が著しく低下し、分子量及び分子量分布度がかなり高いことが分かる。
【0091】
従って、本発明に係る石油樹脂の製造方法は、陽イオン触媒の存在下に約40℃の低温重合によって重合した後、水素添加反応する従来の石油樹脂の製造方法とは異なり、触媒なしで約200〜300℃の高温熱重合によって重合して水素添加反応することにより、別途の触媒除去工程が必要なく、これにより収率を高めて生産性を著しく上昇させるとともに、臭気レベルもほぼ同等か、より優れたレベルを達成したことが分かる。
【0092】
そして、実施例1、実施例5及び比較例6の1H−NMRスペクトルの結果から各ピークの面積比を求めた結果によれば、表4に示すように、実施例1及び5では、S1が20%以上であり、S2が50%以上であることを確認することができた。
【0093】
【表4】
【0094】
次に、接着剤を製造して接着剤としての性能を評価した。
【0095】
<接着剤の性能評価方法>
相溶性、粘度及び軟化点は、樹脂の特性評価方法で使用した方法を採用した。
【0096】
(1)硬さ(Hardness、A)
124ASTM規格のShoreA硬度計を用いて測定した。測定するサンプルを平らな地面に敷いて、硬度計の尖った部分でサンプルを刺し、測定される値を記録した。
【0097】
(2)オープンタイム(Open time)
規格JIT社製のホットメルトテスター(hot melt tester)でオーブンタイム(Open time)を測定した。横5cm×縦5cmの段ボールに一定量の接着剤を塗布し、横5cm×縦10cmの段ボールを付着させた後、0から5秒ずつ増やしながら段ボールが脱着されるときの力を記録した。グラフを描いたとき、急激に下がり始める時間を記録した。
【0098】
(3)硬化時間(Set time)
規格JIT社製のホットメルトテスター(hot melt tester)で設定時間(Set time)を測定した。横5cm×縦5cmの段ボールに一定量の接着剤を塗布し、横5cm×縦10cmの段ボールを付着させた後、0から0.5秒ずつ増やしながら段ボールが脱着されるときの力を記録した。グラフを描いたとき、Y軸の力の値が一定になり始める時間を記録した。
【0099】
(4)剥離強度(Peel strength)
UTM機器を活用して測定した。まず、PETフィルムにサンプル(接着剤)を25マイクロメートルの厚さに塗布してテープを製造した。これをSUS−304鋼板に付着させた。PETフィルムが付着している部分をUTMグリップに装着した後、30mm/minの速度で測定した。ここで、UTM装備に入力される数値が、接着力(kgf/in)を意味する。
【0100】
(5)粘着力の評価:ボールタック(Ball Tack)
粘着力をASTM D3121の方法で評価した。
【0101】
接着剤が20〜30マイクロメートルで塗られた試験片テープを横10cm、縦50cmにカットした。一端にBall tack tester(JIS Z0237)を置き、その角度を標準傾斜角30度にして設置し、その上にSteel ball No.9を転がし、転がった距離を測定した。ボールが少なく転がれば転がるほど、Tackの性能は優れるのである。
【0102】
(6)接着力の評価:保持力(Holding power)
接着力をASTM D3330の方法で評価した。
【0103】
接着剤が20〜30マイクロメートルで塗られた試験片テープを、横2インチ、縦6インチにカットした。試験片を離型紙に付着させ、横1インチ、縦2インチにした後、洗浄したSUS 304鋼板に付着させた(この際、くっ付かない試験片が約2cm以上となるように付着させ、測定に必要な部分をCheminstruments社製のRoll down機器を活用してRollを1回往復して圧着させた)。SUS 304鋼板に付いていない試験片が約2cmとなるようにハサミで切った。SUS 304鋼板にくっ付いていない試験片を粘着力(Cohesion)測定用リングに挿し、通過する試験片と接着させた。固定用スコッチテープで試験片が接着されたSUS 304鋼板の横端を基準に、平行に前後それぞれ2個ずつ付け、ステープラーでCohesion測定用リングとSUS 304鋼板との間に、平行に2つを打って固定させた。SUS 304鋼板に試験片が横1インチ、縦1インチ付いているように、残りの付いている試験片を切った。
【0104】
せん断試験オーブン(Shear test oven)内のSUS鋼板スタンドに掛けておいた。試験片に付けられた保持力(holding power)測定用リングに1kgの錘を掛けておいた。タイマーに、錘が落ちた時間を記録した。
【0105】
(7)接着力の評価:せん断保持力不能温度(SAFT)
接着力をASTM D3654の方法で評価した。
【0106】
接着剤が20〜30マイクロメートルで塗られた試験片テープを、2インチ×6インチに切った。試験片を離型紙に付け、横1インチ、縦2インチに作った後、洗浄したSUS 304鋼に付着させた(この際、くっ付かない試験片が約2cm以上となるように付け、測定に必要な部分をCheminstruments社製のRoll down機器を活用してRollを1回往復して圧着させた)。SUS 304鋼板に付いていない試験片が約2cmとなるようにハサミでカットした。SUS 304鋼板に付いていない試験片を粘着力(Cohesion)測定用リングに挿し、通過する試験片と接着させた。固定用スコッチテープで試験片が接着されたSUS 304鋼板の横端を基準に、平行に前後それぞれ2つずつ付け、ステープラーでCohesion測定用リングとSUS 304鋼板との間に平行に2つを打って固定させた。SUS 304鋼板に試験片が横1インチ、縦1インチ付いているように、残りの付いている試験片を切った。
【0107】
せん断試験オーブン(Shear test oven)内のSUS鋼板スタンドに掛けておいた。試験片に付けられたholding power測定用リングに1kgの錘を掛けておいた。そして、オーブンの温度を0.4度/分で昇温させて、錘が落ちるときの温度を記録した。
【0108】
(8)耐熱性の評価
試験管にサンプル10gを計量した後、180℃のオーブンでAgingを行った。24時間の後、ガードナー比色計(Gardner color scale)で評価した。ガードナー色度(Gardner color)は、全部で18段階の色があり、肉眼で最も近い色の段階の色相を記録した。
【0109】
(9)粘度(Viscosity)
ブルックフィールド(Brookfield)社製の粘度計を使用した。HT−2DB chamberを活用し、Spindle No.27に10.5gの試料を投入した。所望の測定温度に昇温させた後、30分間の安定化時間を持つようにした。攪拌軸のRPMを、0.5から開始して、トルク(Torque)が50%の値を持つときの粘度値を記録した。
【0110】
(10)軟化点(Softening point)
軟化点は、環球式軟化点試験法(Ring and ball softening method)(ASTM E 28)を用いて測定した。環状の枠に樹脂を溶かして投入し、グリセリン入りのビーカーに据え置いた後、樹脂入りの環に球を載置し、温度を分当たり2.5℃ずつ昇温させ、樹脂が溶けて球が落ちるときの温度(軟化点)を測定し、表3に記載した。
【0111】
<接着剤の製造方法>
接着剤A
ポリマーとしてのDow chemical社製のInfuse 9807(metallocene catalyzed ethylene based poly olefin block copolymer)20wt%、オイルとしてのKL−240(ミチャン石油化学社製)20wt%と、及び実施例と比較例で活用された石油樹脂60wt%を含む混合物100重量部に対し、抗酸化剤(ソンウォン産業社製のSongnox 1010)0.75重量部を混合することにより、me−PE減圧型接着剤(HMPSA、hot melt pressure sensitive adhesive)である実施例2、6、8及び9、比較例4及び6の接着剤A(HMPSA)を製造した。
【0112】
製造条件は、100mlのビーカーに前記4種(石油樹脂、ポリマー、オイル、抗酸化剤)の原料を入れ、180℃で4時間攪拌して製造したのであり、詳細な重量部及び特性評価の結果は、表5に示す。
【0113】
【表5】
【0114】
上記の表において、*老化後(Aged)は、各試料を70℃で3日間放置した後に測定した結果を示すものである。
【0115】
接着剤B
ポリマーとしてのExxonmobil chemical社製のVistamaxx 6202(metallocene catalyzed poly propylene)20wt%及びEvonik社製のVestoplast 703(Amorphous propylene−ethylene copolymer)7.5wt%、オイルとしてのKL−240(ミチャン石油化学社製)22.5wt%、及び実施例と比較例で用いられた石油樹脂50wt%を含む混合物100重量部に対し、抗酸化剤(ソンウォン産業社製のSongnox 1010)0.75重量部を混合して、HMPSA接着剤(me−PP based HMPSA)である実施例2、6、8及び9、比較例4及び6の接着剤B(HMPSA)を製造した。
【0116】
製造条件は、100mlのビーカーに前記4種(石油樹脂、ポリマー、オイル、抗酸化剤)の原料を入れ、180℃で4時間攪拌して製造したのであり、詳細な重量部及び特性評価の結果は、表6に示す。
【0117】
【表6】
【0118】
上記の表において、*老化後(Aged)は、各試料を70℃で3日間放置した後に測定した結果を示すものである。
【0119】
接着剤C
ポリマーとしてのKraton polymer社製のSIS D−1161(Styrene−Isoprene−Styrene Block Colpolymer)25wt%、オイルとしてのKL−240(ミチャン石油化学社製)18wt%、及び実施例と比較例で使用された石油樹脂57wt%を含む混合物100重量部に対して、抗酸化剤(ソンウォン産業社製のSongnox 1010)0.75重量部を混ぜて、HMPSA接着剤(SIS based HMPSA)の実施例2、6、8及び9、比較例4及び6の接着剤C(HMPSA)を製造した。
【0120】
製造条件は、100mlのビーカーに前記4種(石油樹脂、ポリマー、オイル、抗酸化剤)の原料を入れ、180℃で4時間攪拌して製造したのでありであり、詳細な重量部及び特性評価の結果は、表7に示す。
【0121】
【表7】
【0122】
接着剤D
ポリマーとしてのDow chemical社製のAffinity 1950GA(metallocene catalyzed poly ethylene)40wt%、ワックスとしてのSasol C−80(Sasol社製)20wt%、及び実施例と比較例で使用された石油樹脂40wt%を混ぜて、HMA接着剤(me−PE based HMA)である実施例2、6、7及び8、比較例4、6、7及び9の接着剤D(HMA)を製造した。
【0123】
製造条件は、100mlのビーカーに前記4種の原料を入れ、180℃で1時間攪拌して製造することであり、詳細な重量部及び特性評価結果は、表8に示す。
【0124】
【表8】
【0125】
接着剤E
ポリマーとしてのArkema社製のEVA 28/400(Ethylene Vinyl Acetate、VA contents 28%、MI 400)40wt%、ワックスとしてのSasol C−80(Sasol社製)20wt%、及び実施例と比較例で使用された石油樹脂40wt%を混ぜて、HMA接着剤(EVA based HMA)である実施例2、6、7及び8、比較例4、6、7及び9の接着剤E(HMA)を製造した。
【0126】
製造条件は、100mlのビーカーに前記4種の原料を入れ、180℃で1時間攪拌して製造したのであり、詳細な重量部及び特性評価結果は、表9に示す。
【0127】
【表9】
【0128】
接着剤F
ポリマーとしてのEvonik社製のVestoplast 703(Amorphous propylene−ethylene copolymer)40wt%、ワックスとしてのSasol C−80(Sasol社製)20wt%、及び実施例と比較例で使用された石油樹脂40wt%を混ぜて、HMA接着剤(APAO based HMA)である実施例2、6、7及び8、比較例4、6、7及び9の接着剤F(HMA)を製造した。
【0129】
製造条件は、100mlのビーカーに前記4種の原料を入れ、180℃で1時間攪拌して製造したのであり、詳細な重量部及び特性評価結果は、表10に示す。
【0130】
【表10】
【0131】
前記接着剤A乃至Fを通じて、本発明の接着剤は、接着力が増加し、臭気が改善され、耐熱性が向上するということを確認することができる。
【0132】
以上で本発明の内容の特定の部分を詳細に記述したところ、当該分野における通常の知識を有する者にとって、このような具体的技術は単に好適な実施様態に過ぎないものであり、これにより本発明の範囲が制限されるものではない。よって、本発明の実質的な範囲は、添付された特許請求の範囲の請求項とそれらの等価物によって定義されるというべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9