(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、PTFEからなる被膜を形成した搬送用ベルトは、膜厚の影響により剛性が高くなり、折り返し部分に用いるプーリ径が小さいベルトコンベヤ等への適用の面で望ましくない。また、ベルトコンベヤのプーリ径が小さいほど、搬送用ベルトの曲げによる応力が大きくなる傾向があり、搬送用ベルト最表面の被覆層の剥がれが生じやすくなる。
【0005】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、搬送物の非付着性に優れるとともに、剛性を抑えつつ被覆層の剥がれを抑制することができる搬送用ベルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた発明は、帆布を芯体とする搬送用ベルトであって、上記帆布の一方の面に積層され、ポリカーボネート系ポリウレタンを主成分とする第1ゴム層と、上記第1ゴム層の上記帆布と反対側の面に積層され、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体を主成分とする被覆層とを備え、上記被覆層が、上記第1ゴム層との接着面に表面修飾基を有する搬送用ベルトである。
【0007】
当該搬送用ベルトは、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体を主成分とする被覆層を最外層に備えるので、搬送物の非付着性に優れる。ポリカーボネート系ポリウレタンを主成分とする第1ゴム層が帆布の一方の面に積層されているので、上記第1ゴム層の上記帆布と反対側の面に積層されるテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体を主成分とする被覆層との接着性が向上する。また、上記第1ゴム層が、ポリカーボネート系ポリウレタンを主成分とすることにより耐湿熱性が向上する。さらに、上記被覆層が、上記第1ゴム層との接着面に表面修飾基を有するので、上記被覆層と第1ゴム層との密着性を向上することができる。ここで、「主成分」とは、最も含有量の多い成分をいい、通常50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上の成分をいう。
【0008】
上記被覆層の平均厚さとしては、50μm以下が好ましい。上記被覆層の平均厚さが50μm以下であることによって、搬送用ベルトの剛性を抑えることができる。
【0009】
上記表面修飾基としては、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基又はこれらの組み合わせが好ましい。上記表面修飾基がこれらの基のいずれかであることによって、上記被覆層と第1ゴム層との密着性をより向上することができる。
【0010】
上記帆布の上記第1ゴム層と反対側の面に積層される第2ゴム層をさらに備え、上記第2ゴム層が、熱可塑性ポリウレタンを主成分とすることが好ましい。当該搬送用ベルトが上記第2ゴム層を備えることで、剛性を抑制しつつ搬送用ベルトの反りを抑制することができる。
【0011】
上記帆布が、長手方向に配置される経糸とこの経糸と交差する緯糸とから構成され、上記緯糸の太さとしては、1780dtex以上2890dtex以下が好ましい。上記帆布の緯糸の太さが上記範囲内であることによって、搬送用ベルトの反りを抑制することができる。
【0012】
ここで、「搬送用ベルト」とは有端状だけでなく、無端状のものも含む概念である。「外側の面」とは、搬送面を意味し、無端状の搬送用ベルトの場合、外側となる面をいう。
【発明の効果】
【0013】
本発明の搬送用ベルトは、搬送物の非付着性に優れるとともに、剛性を抑えつつ被覆層の剥がれを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る搬送用ベルトの実施形態について図面を参照しつつ詳説する。
【0016】
<第1実施形態>
[搬送用ベルト]
図1は、本発明の第1実施形態に係る搬送用ベルト1の模式的断面図である。当該搬送用ベルト1は、帆布5を芯体とする。当該搬送用ベルト1は、帆布5と、帆布5の一方の面に積層される第1ゴム層4と、第1ゴム層4の帆布5と反対側の面に積層される被覆層2とを備える。当該搬送用ベルト1においては、被覆層2が最外層となる。また、第2ゴム層6が、帆布5の第1ゴム層4と反対側の面に積層される。
【0017】
搬送用ベルト1は、被覆層2が外側になるように、図示しない駆動機構によりプーリと連動しながら回転する。従って、被覆層2の外側の面が、搬送面となる。
【0018】
(帆布)
搬送用ベルト1は、帆布5を芯体とする。帆布5は、搬送用ベルト1に加わる張力を保持し、搬送用ベルト1に対して機械的強度を付与するものである。
【0019】
帆布5は、
図1中、X方向で示される長手方向に配置される経糸10とこの経糸と交差する緯糸11とから構成され織物である。経糸10及び緯糸11を構成する糸の種類については特に限定されないが、例えばポリエステル糸、ナイロン糸、綿糸、レーヨン糸等を挙げることができる。帆布5を構成する糸としては、強度及び柔軟性に優れ、寸法安定性も良く、燃焼時に窒素酸化物等の有毒ガスを発生しない点から、ポリエステル糸が好ましい。また、帆布5の織り構造については特に限定されない。
【0020】
上記緯糸11の太さの下限としては1500dtexが好ましく、1780dtexがより好ましい。上記太さの下限が上記範囲内であることによって、搬送用ベルト1の反りを抑制することができる。一方、上記緯糸11の太さの上限としては3000dtexが好ましく、2890dtexがより好ましい。上記太さの上限が上記範囲内であることによって、搬送用ベルト1の剛性を抑えることができる。
【0021】
経糸10の太さの下限としては280dtexが好ましく、560dtexがより好ましい。上記太さの下限が上記範囲内であることによって、搬送用ベルト1の強度を向上することができる。一方、経糸10の太さの上限としては2200dtexが好ましく、1100dtexがより好ましい。上記太さの上限が上記範囲内であることによって、搬送用ベルト1の剛性を抑えることができる。
【0022】
帆布5には、第1ゴム層4との接着性を向上させるために、例えばウレタン樹脂接着剤溶液を含浸させるプライマー処理を施してもよい。
【0023】
帆布5の平均厚さの下限としては0.1mmが好ましく、0.3mmがより好ましい。上記平均厚さの上限としては1mmが好ましく、0.8mmがより好ましい。帆布5の平均厚さが上記範囲内であることによって、搬送用ベルト1の剛性を抑えることができる。
【0024】
(第1ゴム層)
第1ゴム層4は、ポリカーボネート系ポリウレタンを主成分とする。ポリカーボネート系ポリウレタンを主成分とすることにより、搬送用ベルト1の耐湿熱性、耐薬品性、機械物性等を向上できる。また、第1ゴム層4の一方の面に積層される被覆層との接着性が向上する。
【0025】
第1ゴム層4は、ポリカーボネート系ポリウレタン以外に、必要に応じて、エーテル系ポリウレタン、カプロラクトン系ポリウレタン等の他の樹脂を含有していてもよい。また、第1ゴム層4は、ベルト用のポリカーボネート系ポリウレタンに添加される酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、抗菌剤、防カビ等の公知の添加剤を含有していてもよい。
【0026】
上記ポリカーボネート系ポリウレタンとしては、公知のものを使用することができる。ポリカーボネート系ポリウレタンの製造方法は特に限定されないが、典型的には、イソシアネート化合物及びポリカーボネートジオール化合物を反応させる方法が挙げられる。
【0027】
イソシアネート化合物としては、例えば
フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’−トリジンジイソシアネート(TODI)、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等の芳香族ジイソシアネート;
シクロペンタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート;
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。これらのイソシアネート化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0028】
上記他の樹脂として、上述したポリウレタン系樹脂以外では、例えばポリオレフィン、ポリシクロオレフィン、ポリジエン、ポリスチレン、スチレン共重合体、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリアミド、熱硬化性ポリウレタン、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。
【0029】
第1ゴム層4の平均厚さの下限としては、0.1mmが好ましく、0.4mmがより好ましい。第1ゴム層4の平均厚さが上記下限未満である場合、搬送用ベルト1の優れた強度が得られないおそれがある。一方、第1ゴム層4の平均厚さの上限としては、1mmが好ましく、0.7mmがより好ましい。第1ゴム層4の平均厚さが上記上限を超える場合、剛性が高くなり、プーリ径の小さい搬送装置に使用することが困難となるおそれがある。
【0030】
(第2ゴム層)
第2ゴム層6は、帆布5の第1ゴム層4と反対側の面に積層される。被覆層2は、製造時の熱による収縮応力が大きく、搬送用ベルト1の反りが発生しやすい。当該搬送用ベルト1が第2ゴム層6を備えることで、搬送用ベルト1の反りを抑制することができる。第2ゴム層6は、熱可塑性ポリウレタンを主成分とする。第2ゴム層6は、熱可塑性ポリウレタン以外に、必要に応じて、他の樹脂を含有していてもよく、ベルト用の熱可塑性ポリウレタンに添加される公知の添加剤を含有していてもよい。
【0031】
上記熱可塑性ポリウレタンとしては、公知のものを使用することができる。上記熱可塑性ポリウレタンとしては、例えば第1ゴム層4と同様のポリカーボネート系ポリウレタンの他、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリオレフィン系ポリウレタン等が挙げられる。熱可塑性ポリウレタンの製造方法は特に限定されないが、ポリカーボネート系ポリウレタンと同様、典型的には、およそ等モルのポリイソシアネート化合物及びポリオール化合物、並びに鎖延長剤を例えば60℃以上220℃以下で反応させる方法が挙げられる。
【0032】
ポリオール化合物としては、上述したジオール系のポリカーボネート系ポリオール以外に、例えばポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール等が挙げられる。これらのポリオール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0033】
ポリエステル系ポリオールとしては、例えば
イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸又はこれらのジアルキルエステル;アジピン酸、グルタル酸、コハク酸等の脂肪族ジカルボン酸又はこれらのジアルキルエステル等から選択された少なくとも1種のジカルボン酸又はこれらのジアルキルエステルと、
エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等のC
2−10アルカンジオール;ジエチレングリコール等のジ又はトリC
2−10アルカンジオールなどから選択された少なくとも1種のアルカンジオール成分との反応生成物などが挙げられる。
【0034】
アジピン酸をジカルボン酸成分のベースとしたポリエステル系ポリオールの具体例としては、ポリエチレンアジぺート(PEA)、ポリジエチレンアジぺート(PDA)、ポリプロピレンアジペート(PPA)、ポリテトラメチレンアジペート(PBA)、ポリヘキサメチレンアジペート(PHMA)、これらの成分を組み合わせた共重合体等が挙げられる。なお、ポリエステル系ポリオールには、ラクトン類(ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトンなどのC
3−14ラクトン)の単独重合体又は共重合体も含まれる。
【0035】
ポリエーテル系ポリオールとしては、例えば
エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン等のアルキレンオキサイドの単独又は共重合体;
テトラメチレンエーテルグリコールを含んでなる単独又は共重合体;
ヒドロキシ基に対してC
2−4アルキレンオキサイド1〜5モルが付加した付加体等のビスフェノールA又は水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加体などが挙げられる。
【0036】
ポリオレフィン系ポリオールとしては、例えばポリブタジエンポリオール、水素化ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、ひまし油変性ポリオール、ブタジエンとスチレン又はアクリロニトリルとの共重合体の末端に水酸基を導入したもの等が挙げられる。
【0037】
これらのポリオール化合物の中で、耐熱性を向上させる観点から、ポリカーボネート系ポリオールがより好ましい。
【0038】
第2ゴム層6の平均厚さの下限としては、0.1mmが好ましく、0.3mmがより好ましい。上記平均厚さが上記下限未満である場合、搬送用ベルト1の反りを抑制できないおそれがある。一方、第2ゴム層6の平均厚さの上限としては、1mmが好ましく、0.8mmがより好ましい。上記平均厚さが上記上限を超える場合、剛性が高くなり、プーリ径の小さい搬送装置に使用することが困難となるおそれがある。
【0039】
(被覆層)
被覆層2は、搬送用ベルト1の表面を保護する機能を有する。被覆層2はテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)を主成分とする。被覆層2がFEPを主成分とすることにより、搬送物の非付着性に優れる。
【0040】
被覆層2は、第1ゴム層4との接着面に表面修飾基を有する。被覆層2が第1ゴム層4との接着面に上記表面修飾基を有するので、被覆層2と第1ゴム層4との密着性を向上することができる。上記表面修飾基としては、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基又はこれらの組み合わせが好ましい。上記表面修飾基がこれらの基のいずれかであることによって、被覆層2と第1ゴム層4との密着性をより向上することができる。
【0041】
上記表面修飾基は、プラズマ処理等の物理的処理、ケミカルエッチング等の化学的処理など、いずれの処理によるものであってもよいが、これらの中では、接着性の観点からプラズマ処理による表面修飾基が好ましい。
【0042】
上記FEPは、市販品として例えば、ダイキン工業社の商品名として、ネオフロンFEPフィルムB−1等を用いることができる。
【0043】
被覆層2の平均厚さの上限としては、100μmが好ましく、50μmがより好ましい。被覆層2の平均厚さが上記上限を超える場合、搬送用ベルト1の剛性が高くなりすぎるおそれがある。一方、被覆層2の平均厚さの下限としては14μmが好ましく、25μmがより好ましい。被覆層2の平均厚さが上記下限未満である場合、被覆層の破れが発生しやすくなるおそれがある。
【0044】
当該搬送用ベルト1は、以上の特性を有しているので、プーリ径が小さいベルトコンベヤ用の搬送用ベルトとして好適に用いることができる。また当該搬送用ベルト1は、水分が多く、粘着性のある食品等の搬送にも好適に用いることができる。
【0045】
[搬送用ベルトの製造方法]
以下、第1実施形態に係る搬送用ベルトの製造方法の一例について説明する。当該搬送用ベルトの製造方法は、特に限定されないが、
(1)ゴム層積層工程
(2)被覆層積層工程
を備える。以下、各工程について説明する。
【0046】
(ゴム層積層工程)
ゴム層積層工程では、帆布に第1ゴム層及び第2ゴム層を積層する。本工程では、押出成形により帆布の一方の面に第1ゴム層を積層する。帆布は、予めウレタン樹脂接着剤溶液を含浸させるプライマー処理が施される。押出成形方法としては、品質の安定性及びコストの観点から押出ラミネーション法が好ましい。具体的には、ポリカーボネート系ポリウレタンを主成分とする第1ゴム層用樹脂組成物をTダイにより押出成形を行いつつ、帆布とラミネートし、帆布に第1ゴム層を積層する。押出成形においては、加熱温度としては、例えば160℃以上220℃以下の範囲で行われる。次に、帆布の第1ゴム層とは反対側の面に第2ゴム層を上記第1ゴム層と同様の方法で積層する。
【0047】
(被覆層積層工程)
被覆層積層工程では、ゴム層積層工程で得られた積層体の第1ゴム層の帆布と反対側の面に被覆層を積層する。被覆層の積層は、上記積層体と、FEPを主成分とし、プラズマ処理による表面修飾基を有する被覆層用フィルムとを熱圧着することにより行う。上記熱圧着においては、被覆層用フィルムの表面修飾基を有する面が、第1ゴム層との接着面となるように熱圧着が行われる。上記熱圧着は、例えばロートキュアによる連続圧縮成型機を用いる。このようにして被覆層用フィルムを基体形成用の上記積層体の表面にラミネートする。ロートキュアにおける加圧条件としては、例えば10kg/cm
2以上100kg/cm
2とすることができる。
【0048】
次に、上記被覆層が積層された積層体を冷却する。冷却の方法としては、例えば空冷、水冷等が挙げられる。冷却の温度及び時間の条件としては特に限定されないが、設定条件としては、例えば形成される積層体の内部温度を10℃以上40℃以下に冷却できる条件が挙げられる。
【0049】
当該搬送用ベルトは、所定のサイズに切断した後、ジョイント加工によって積層体の端部同士を接合することにより、無端の搬送用ベルトを形成することができる。接合部分の接着剤としては例えばウレタン系接着剤を用いることができる。ジョイント加工としては、例えばラップジョイント方式、フィンガージョイント方式、ダブルフィンガージョイント方式等を用いることができる。
【0050】
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【実施例】
【0051】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0052】
[実施例1〜6及び比較例1〜7]
実施例1〜6及び比較例1〜7について、表1に示す被覆層形成用樹脂と第1ゴム層及び第2ゴム層形成用のポリウレタンとを材料として含む搬送用ベルトを作製した。実施例1〜6及び比較例1〜7は、上述の搬送用ベルトの製造方法に基づいて搬送用ベルトを作製した。始めに、押出ラミネーション法により帆布に第1ゴム層形成用組成物であるポリウレタンを薄膜状に溶融押出しをしながら圧接してこれら一体化させ、基体形成用の積層体を形成した。次に、ロートキュアにより基体形成用の積層体と、被覆層形成用フッ素樹脂を主成分とする被覆層用フィルムとを155℃で熱圧着した後、冷却した。次に、押出ラミネーション法により上記積層体の帆布の第1ゴム層と反対側の面に、第2ゴム層形成用組成物であるポリウレタンを薄膜状に溶融押出しをしながら圧接し、これらを一体化することにより積層体を形成した。第1ゴム層の平均厚さ0.3mm、帆布の平均厚さ0.6mm及び第2ゴム層の平均厚さ0.5mmの搬送用ベルトを作製した。
【0053】
(被覆層)
被覆層形成用樹脂としては、FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、及びプラズマ処理による官能基含有FEPフィルムとしてダイキン工業社のネオフロンFEPフィルムB−1を用い、ケミカルエッチングによる官能基含有PTFEフィルムとして淀川ヒューテック社のヨドフロンPTFE片面表面処理フィルムを用いた。
【0054】
(第1ゴム層)
第1ゴム層形成用ポリウレタンとしては、ポリカーボネート系ポリウレタン(東ソー社のミラクトランE985PTFO)又はポリエーテル系ポリウレタン(東ソー社のミラクトランE385MTGA)を用いた。
【0055】
(帆布)
帆布は、ポリエステル短繊維の紡績糸の経糸およびポリエステルのモノフィラメント糸の緯糸で織成された織物を用いた。経糸は20番手の2本撚りとし、緯糸の太さは表1に示した。
【0056】
(第2ゴム層)
第2ゴム層形成用ポリウレタンとしては、ポリカーボネート系ポリウレタン(東ソー社のミラクトランE985PTFO)を用いた。
【0057】
<評価>
以上のようにして得られた実施例1〜6及び比較例1〜7について、付着性、曲げ剛性、被覆層の密着性、反り及び小プーリに対する適応性を評価した。評価結果を下記表1に示す。なお、表中の「−」は、該当する構成を有さないことを示す。
【0058】
(付着性)
小麦粉500g、砂糖50g、水300gを混合し、十分練ったパン生地を搬送ベルト上の所定の範囲に直接載せて3日間放置し、ある程度まで固化させた。次に、生地を剥がして付着量を目視判定により11段階に点数付けした。基準として、全く残らない場合を10点とし、ほとんど剥がれることなく残った場合を0点とした。
図2に付着量の基準例(a)〜(f)を示す。7点以上は良好、6点はやや良好、5点以下は不良と評価できる。
【0059】
(曲げ剛性)
曲げ剛性の評価は、試験片として幅25mm、長さ150mmを正曲げでリング状にしたベルトを、適用プーリ径の大きさに近い高さである3cmまで変形させ、その時の荷重を測定した。荷重の測定値が、直径30mmの小プーリに適用可能な範囲である250g未満の場合を小プーリ適用可とし、250g以上の場合は適用不可とした。
【0060】
(被覆層の密着性)
JIS K6854−2(1999)剥離接着強さ試験方法に準拠して180度剥離試験を行い、被膜層とゴム層との剥離状態を観察することにより、耐久性を評価した。測定器としてオートグラフを用い、剥離速度50mm/min、測定幅25mmの条件下で測定した。
被覆層の密着性が高いために、被覆層が剥がれることなく被覆層の破れが生じた場合を「良好」とした。一方、被覆層の密着性が低いためにフィルムが容易に剥がれた場合を「不良」とし、2段階評価を行った。
【0061】
(反り)
ベルトを平たんな箇所に置き、水平面からのベルト端部の高さ(反り)を測定した。反りが2mm未満の場合はA、2mm以上20mm未満の場合はB、20mm以上40mm未満の場合はC、40mm以上の場合はDと評価できる。A、B及びCが搬送用ベルトとして使用可能な範囲である。
【0062】
【表1】
【0063】
表1に示すように、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体を主成分とする被覆層及びポリカーボネート系ポリウレタンを主成分とする第1ゴム層を備える実施例1〜6は、非付着性、曲げ剛性、被覆層の密着性及び反りの高さの全て良好であった。また、上記被覆層の平均厚さが50μm未満であるとともに、帆布の緯糸の太さが1780dtex以上2890dtex以下であり、かつ第2ゴム層を備える実施例6は、剛性を抑制しつつ、製造時の熱による収縮応力が大きい被覆層に起因する搬送用ベルトの反りを抑制する効果が優れていた。
【0064】
一方、これに対して、表面修飾基を有さない被覆層を備える比較例1、及びポリエーテル系ポリウレタンを主成分とする第1ゴム層を備える比較例2並びに比較例4は、被覆層の密着性が劣っていた。また、被覆層を有さない比較例3及びPTFEからなる被覆層を備える比較例5〜比較例7は、非付着性が実施例よりも劣っていた。さらに、比較例5は、被覆層の膜厚が100μmであることから曲げ剛性が292gと高い値になったが、帆布の緯糸の太さが1100dtexであり、第2ゴム層を備えていないことから、反りを抑制する効果が非常に劣っていた。