(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るセルスタック装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、セルスタック装置を示す斜視図である。なお、
図1において、いくつかの燃料電池セルの記載を省略している。
【0019】
[セルスタック装置]
図1に示すように、セルスタック装置100は、マニホールド2と、複数の燃料電池セル10と、接合材104とを備えている。
【0020】
[マニホールド]
マニホールド2は、複数の燃料電池セル10にガスを供給するように構成されている。また、マニホールド2は、燃料電池セル10から排出されたガスを回収するように構成されている。
【0021】
図2は、マニホールドの断面図である。
図2において、一部の貫通孔のみを想像線で示している。
図2に示すように、マニホールド2は、ガス供給室21とガス回収室22とを有している。ガス供給室21には、改質器などを介して燃料ガス供給源から燃料ガスが供給される。ガス回収室22は、各燃料電池セル10にて使用された燃料ガスのオフガスを回収する。
【0022】
マニホールド2は、マニホールド本体部23と、仕切板24とを有している。マニホールド本体部23は、内部に空間を有している。マニホールド本体部23は、直方体状である。
【0023】
仕切板24は、マニホールド本体部23の空間をガス供給室21とガス回収室22とに仕切っている。詳細には、仕切板24は、マニホールド本体部23の略中央部において、マニホールド本体部23の長さ方向に延びている。なお、本実施形態では、仕切板24は、マニホールド本体部23の空間を完全に仕切っているが、仕切板24とマニホールド本体部23との間に隙間が形成されていてもよい。
【0024】
ガス供給室21の底面には、ガス供給口211が形成されている。また、ガス回収室22の底面には、ガス排出口221が形成されている。なお、ガス供給口211はガス供給室21の側面又は上面に形成されていてもよいし、ガス排出口221はガス回収室22の側面又は上面に形成されていてもよい。
【0025】
ガス供給口211は、例えば、後述する配列方向(z軸方向)において、マニホールド2の中心Cよりも第1端部201側に配置されている。一方、ガス排出口221は、例えば、配列方向(z軸方向)において、マニホールド2の中心Cよりも第2端部202側に配置されている。
【0026】
図2から
図4に示すように、マニホールド2は、天板231、底板232、及び側板233を有している。なお、この天板231、底板232、及び側板233によって、マニホールド本体部23が構成されている。底板232と側板233とは1つの部材で構成されている。天板231は、側板233の上端部と接合している。なお、天板231と側板233とが1つの部材で構成されており、底板232が側板233の下端部と接合していてもよい。
【0027】
図3に示すように、マニホールド2の天板231は、複数の貫通孔234及び複数の桟部235を有している。また、天板231は、複数の連結補強部236を有している。各貫通孔234は、マニホールド2の内部と外部とを連通している。各貫通孔234は、ガス供給室21及びガス回収室22に開口している。
【0028】
連結補強部236は、貫通孔234を配列方向に横切り、一対の桟部235同士を連結している。すなわち、連結補強部236は、隣り合う一対の桟部235のうち一方の桟部235から、貫通孔234を横切って他方の桟部235まで延びている。
【0029】
貫通孔234は、貫通孔234を横切る連結補強部236によって複数の分割孔に分割されている。なお、本実施形態では、各貫通孔234は、第1分割孔234aと第2分割孔234bとに分割されている。
【0030】
図2に示すように、第1分割孔234aは、ガス供給室21と連通している。また、第2分割孔234bは、ガス回収室22と連通している。連結補強部236は、ガス供給室21とガス回収室22との境界部に配置されている。すなわち、連結補強部236は、平面視(x軸方向視)において、ガス供給室21とガス回収室22との境界部と重複している。なお、本実施形態では、連結補強部236は、平面視(x軸方向視)において、仕切板24と重複している。
【0031】
[燃料電池セル]
図4は、セルスタック装置の断面図を示している。
図4に示すように、燃料電池セル10は、マニホールド2の天板231から上方に延びている。燃料電池セル10は、板状であって、基端部101及び先端部102を有している。燃料電池セル10は、基端部101がマニホールド2に取り付けられている。すなわち、マニホールド2は、各燃料電池セル10の基端部101を支持している。本実施形態では、燃料電池セル10の基端部101は下端部を意味し、燃料電池セル10の先端部102は上端部を意味する。
【0032】
図4及び
図5に示すように、燃料電池セル10は、支持基板4、複数の第1ガス流路41、複数の第2ガス流路42、及び複数の発電素子部5を有している。また、燃料電池セル10は、連通流路30を有している。
【0033】
[支持基板]
支持基板4は、マニホールド2から上方に延びている。支持基板4は、扁平状であり、基端部43と先端部44とを有している。基端部43及び先端部44は、支持基板4の長さ方向(x軸方向)における両端部である。本実施形態では、支持基板4の基端部43は下端部を意味し、支持基板4の先端部44は上端部を意味する。本実施形態では、支持基板4は、幅方向(y軸方向)に比べて長さ方向(x軸方向)の寸法の方が長いが、長さ方向よりも幅方向の寸法の方が長くてもよい。
【0034】
図5に示すように、支持基板4は、第1主面45と、第2主面46とを有している。第1主面45と第2主面46とは、互いに反対を向いている。第1主面45及び第2主面46は、各発電素子部5を支持している。第1主面45及び第2主面46は、支持基板4の厚さ方向(z軸方向)を向いている。また、支持基板4の各側面47は、支持基板4の幅方向(y軸方向)を向いている。各側面47は、湾曲していてもよい。
【0035】
支持基板4は、電子伝導性を有さない多孔質の材料によって構成される。支持基板4は、例えば、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)から構成される。または、支持基板4は、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とY
2O
3(イットリア)とから構成されてもよいし、MgO(酸化マグネシウム)とMgAl
2O
4(マグネシアアルミナスピネル)とから構成されてもよい。支持基板4の気孔率は、例えば、20〜60%程度である。この気孔率は、例えば、アルキメデス法、又は微構造観察により測定される。
【0036】
支持基板4は、緻密層48によって覆われている。緻密層48は、第1ガス流路41及び第2ガス流路42から支持基板4内に拡散されたガスが外部に排出されることを抑制するように構成されている。本実施形態では、緻密層48は、支持基板4の第1主面45、第2主面46、及び各側面47を覆っている。なお、本実施形態では、緻密層48は、後述する電解質7と、インターコネクタ91とによって構成されている。緻密層48は、支持基板4よりも緻密である。例えば、緻密層48の気孔率は、0〜7%程度である。
【0037】
[第1及び第2ガス流路]
図4に示すように、複数の第1ガス流路41及び複数の第2ガス流路42は、支持基板4内に形成されている。第1及び第2ガス流路41、42は、燃料電池セル10の基端部101から先端部102に向かって延びている。本実施形態では、第1及び第2ガス流路41、42は、支持基板4内を上下方向に延びている。第1及び第2ガス流路41、42は、支持基板4を貫通している。
【0038】
各第1ガス流路41は、支持基板4の幅方向(y軸方向)において互いに間隔をあけて配置されている。各第1ガス流路41は、実質的に等間隔に配置されていることが好ましい。また、各第2ガス流路42は、支持基板4の幅方向(y軸方向)において互いに間隔をあけて配置されている。各第2ガス流路42は、実質的に等間隔に配置されていることが好ましい。
【0039】
第1ガス流路41は、基端部411及び先端部412を有している。第1ガス流路41の基端部411はマニホールド2側に位置する。また、第1ガス流路41の先端部412は、基端部411の反対側の端部である。なお、本実施形態において、第1ガス流路41の下端部が基端部411であり、第1ガス流路41の上端部が先端部412である。
【0040】
第2ガス流路42は、基端部421及び先端部422を有している。第2ガス流路42の基端部421は、マニホールド2側に位置する。また、第2ガス流路42の先端部422は、基端部421の反対側の端部である。なお、本実施形態において、第2ガス流路42の下端部が基端部421であり、第2ガス流路42の上端部が先端部422である。
【0041】
第1ガス流路41は、第1分割孔234aを介して、マニホールド2のガス供給室21と連通している。第2ガス流路42は、第2分割孔234bを介して、マニホールド2のガス回収室22と連通している。
【0042】
図4に示すように、第1ガス流路41と第2ガス流路42とは、燃料電池セル10の先端部102において互いに連通している。すなわち、第1ガス流路41と第2ガス流路42とは、それぞれの先端部412,422において互いに連通している。詳細には、第1ガス流路41と第2ガス流路42とが、連通流路30を介して連通している。
【0043】
各第1ガス流路43の流路断面積の合計値が、各第2ガス流路44の流路断面積の合計値よりも大きくすることができる。
【0044】
[発電素子部]
図5に示すように、各発電素子部5は、支持基板4の第1主面45及び第2主面46に支持されている。なお、第1主面45に形成される発電素子部5の数と第2主面46に形成される発電素子部5の数とは、互いに同じであってもよいし異なっていてもよい。また、各発電素子部5の大きさは、互いに異なっていてもよい。
【0045】
各発電素子部5は、第1及び第2ガス流路41、42が延びる方向(x軸方向)に沿って配列されている。詳細には、各発電素子部5は、支持基板4上において、基端部43から先端部44に向かって互いに間隔をあけて配置されている。すなわち、各発電素子部5は、支持基板4の長さ方向(x軸方向)に沿って、間隔をあけて配置されている。なお、各発電素子部5は、後述する電気的接続部9によって、互いに直列に接続されている。
【0046】
発電素子部5は、支持基板4の幅方向(y軸方向)に延びている。発電素子部5は、支持基板4の幅方向において第1部分51と第2部分52とに区画される。なお、第1部分51と第2部分52との厳密な境界はない。例えば、燃料電池セル10をマニホールド2に取り付けた状態において、支持基板4の長さ方向視(x軸方向視)において、ガス供給室21とガス回収室22との境界と重複する部分を、第1部分51と第2部分52との境界部とすることができる。
【0047】
支持基板4の厚さ方向視(z軸方向視)において、第1ガス流路41は、発電素子部5の第1部分51と重複している。このため、発電素子部5の第1部分51は、主に各第1ガス流路41から燃料ガスが供給される。また、支持基板4の厚さ方向視(z軸方向視)において、第2ガス流路42は、発電素子部5の第2部分52と重複している。このため、発電素子部5の第2部分52は、主に各第2ガス流路42から燃料ガスが供給される。なお、複数の第1ガス流路41のうち、一部の第1ガス流路41が第1部分51と重複していなくてもよい。同様に、複数の第2ガス流路42のうち、一部の第2ガス流路42が第2部分52と重複していなくてもよい。
【0048】
図6は、第1ガス流路41に沿って切断した燃料電池セル10の断面図である。なお、第2ガス流路42に沿って切断した燃料電池セル10の断面図は、第2ガス流路42の流路断面積が異なる以外は、
図6と同じである。
【0049】
発電素子部5は、燃料極6、電解質7、及び空気極8を有している。また、発電素子部5は、反応防止膜11をさらに有している。燃料極6は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。燃料極6は、燃料極集電部61と燃料極活性部62とを有する。
【0050】
燃料極集電部61は、凹部49内に配置されている。凹部49は、支持基板4に形成されている。詳細には、燃料極集電部61は、凹部49内に充填されており、凹部49と同様の外形を有する。各燃料極集電部61は、第1凹部611及び第2凹部612を有している。燃料極活性部62は、第1凹部611内に配置されている。詳細には、燃料極活性部62は、第1凹部611内に充填されている。
【0051】
燃料極集電部61は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極集電部61は、NiO(酸化ニッケル)とY
2O
3(イットリア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とCSZ(カルシア安定化ジルコニア)とから構成されてもよい。燃料極集電部61の厚さ、及び凹部49の深さは、50〜500μm程度である。
【0052】
燃料極活性部62は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極活性部62は、NiO(酸化ニッケル)とGDC(ガドリニウムドープセリア)とから構成されてもよい。燃料極活性部62の厚さは、5〜30μmである。
【0053】
電解質7は、燃料極6上を覆うように配置されている。詳細には、電解質7は、一のインターコネクタ91から他のインターコネクタ91まで長さ方向に延びている。すなわち、支持基板4の長さ方向(x軸方向)において、電解質7とインターコネクタ91とが交互に配置されている。また、電解質7は、支持基板4の第1主面45、第2主面46、及び各側面47を覆っている。
【0054】
電解質7は、支持基板4よりも緻密である。例えば、電解質7の気孔率は、0〜7%程度である。電解質7は、イオン伝導性を有し且つ電子伝導性を有さない緻密な材料から構成される焼成体である。電解質7は、例えば、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、LSGM(ランタンガレート)から構成されてもよい。電解質7の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
【0055】
反応防止膜11は、緻密な材料から構成される焼成体である。反応防止膜11は、平面視において、燃料極活性部62と略同一の形状である。反応防止膜11は、電解質7を介して、燃料極活性部62と対応する位置に配置されている。反応防止膜11は、電解質7内のYSZと空気極8内のSrとが反応して電解質7と空気極8との界面に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制するために設けられている。反応防止膜11は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O
2(ガドリニウムドープセリア)から構成され得る。反応防止膜11の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
【0056】
空気極8は、反応防止膜11上に配置されている。空気極8は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極8は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O
3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、LSF=(La,Sr)FeO
3(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O
3(ランタンニッケルフェライト)、LSC=(La,Sr)CoO
3(ランタンストロンチウムコバルタイト)等から構成されてもよい。また、空気極8は、LSCFから構成される第1層(内側層)とLSCから構成される第2層(外側層)との2層によって構成されてもよい。空気極8の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0057】
[電気的接続部]
電気的接続部9は、隣り合う発電素子部5を電気的に接続するように構成されている。電気的接続部9は、インターコネクタ91及び空気極集電膜92を有する。インターコネクタ91は、第2凹部612内に配置されている。詳細には、インターコネクタ91は、第2凹部612内に埋設(充填)されている。インターコネクタ91は、電子伝導性を有する緻密な材料から構成される焼成体である。インターコネクタ91は、支持基板4よりも緻密である。例えば、インターコネクタ91の気孔率は、0〜7%程度である。インターコネクタ91は、例えば、LaCrO
3(ランタンクロマイト)から構成され得る。或いは、(Sr,La)TiO
3(ストロンチウムチタネート)から構成されてもよい。インターコネクタ91の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0058】
空気極集電膜92は、隣り合う発電素子部5のインターコネクタ91と空気極8との間を延びるように配置される。例えば、
図6の左側に配置された発電素子部5の空気極8と、
図6の右側に配置された発電素子部5のインターコネクタ91とを電気的に接続するように、空気極集電膜92が配置されている。空気極集電膜92は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極集電部82は、酸素イオン伝導性を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0059】
空気極集電膜92は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O
3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、LSC=(La,Sr)CoO
3(ランタンストロンチウムコバルタイト)から構成されてもよい。或いは、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)から構成されてもよい。空気極集電膜92の厚さは、例えば、50〜500μm程度である。
【0060】
[連通部材]
図4に示すように、連通部材3は、支持基板4の先端部44に取り付けられている。そして、連通部材3は、第1ガス流路41と第2ガス流路42とを連通させる連通流路30を有している。詳細には、連通流路30は、各第1ガス流路41の先端部412と各第2ガス流路42の先端部422とを連通する。連通流路30は、各第1ガス流路41から各第2ガス流路42まで延びる空間によって構成されている。連通部材3は、支持基板4に接合されていることが好ましい。また、連通部材3は、支持基板4と一体的に形成されていることが好ましい。
【0061】
連通部材3は、例えば、多孔質である。また、連通部材3は、その外側面を構成する緻密層31を有している。緻密層31は、連通部材3の本体よりも緻密に形成されている。例えば、緻密層31の気孔率は、0〜7%程度である。この緻密層31は、連通部材3と同じ材料や、上述した電解質7に使用される材料、結晶化ガラス等によって形成することができる。
【0062】
図1に示すように、各燃料電池セル10は、主面同士が対向するように配列されている。また、各燃料電池セル10は、配列方向(z軸方向)に沿って配列されている。本実施形態では、各燃料電池セル10は、配列方向に沿って等間隔に配置されているが、等間隔でなくてもよい。
【0063】
[燃料電池セルの取付構造]
図4に示すように、燃料電池セル10の基端面103は、天板231と対向している。すなわち、燃料電池セル10の基端部101は、貫通孔234内に挿入されていない。
図7に示すように、燃料電池セル10の基端面103は、貫通孔234を覆っている。第1分割孔234aは、複数の第1ガス流路41と連通している。また、第2分割孔234bは、複数の第2ガス流路42と連通している。なお、連結補強部236は、燃料電池セル10の基端面103のうち、第1ガス流路41と第2ガス流路42との間の領域と、接合材104を介して、対向している。本実施形態では、燃料電池セル10の基端面103は、下端面を意味する。
【0064】
貫通孔234は、配列方向(z軸方向)の寸法が、各ガス流路41、42の直径よりも大きい。詳細には、第1分割孔234aは、配列方向の寸法が、第1ガス流路41の直径よりも大きい。また、第2分割孔234bは、配列方向の寸法が、第2ガス流路43の直径よりも大きい。このように構成されているため、燃料電池セル10の変形などによって燃料電池セル10の基端部101の位置が設計値から多少ずれた場合であっても、貫通孔234と各ガス流路41,42とが連通する状態を維持できる。
【0065】
燃料電池セル10の基端面103は、外周縁部と、外周縁部に囲まれた中央部とを有している。基端面103の中央部は、貫通孔234と対向している。すなわち、燃料電池セル10の基端面103は、平面視(x軸方向視)において、貫通孔234よりも一回り大きい。
【0066】
図8に示すように、燃料電池セル10の基端部101は、接合材104によって、天板231に固定されている。接合材104は、燃料電池セル10の基端部101に沿って環状に形成されている。
【0067】
図9に示すように、接合材104は、燃料電池セル10の基端面103とマニホールド2の天板231との隙間に充填されている。なお、
図10に示すように、接合材104は、基端面103の外周縁と天板231との間に充填されている。そして、接合材104は、基端面103の中央部と天板231との間には充填されていない。すなわち、第1ガス流路41及び第2ガス流路42と、貫通孔234とが連通するように、第1ガス流路41及び第2ガス流路42と、貫通孔234との間には接合材104は充填されていない。
【0068】
図9に示すように、接合材104は、燃料電池セル10の幅方向の中央部に位置する中央領域A1と、幅方向の端部に位置する端部領域A2と、を有する。接合材104の中央領域A1は、燃料電池セル10の基端面103と天板231との間に充填された接合材104のうち、燃料電池セル10の幅方向の中心近傍の領域を言う。具体的には、接合材104の中央領域A1は、接合材104を燃料電池セル10の幅方向(y軸方向)に5等分したうちの中央の領域を言う。また、接合部104の端部領域A2は、接合材104を燃料電池セル10の幅方向に5等分したうちの端部の領域を言う。
【0069】
中央領域A1における気孔径は、端部領域A2における気孔径よりも大きい。例えば、中央領域A1における気孔径は、0.01〜0.95mm程度である。また、端部領域A2における気孔径は、0.005〜0.25mm程度である。中央領域A1における気孔径は、端部領域A2における気孔径の1.1〜100倍程度である。なお、中央領域A1における気孔径は、他の領域における気孔径よりも大きい。
【0070】
気孔径は、気孔の円相当径の値とする。気孔の円相当径の値は、接合材104の断面画像を画像解析することによって求めることができる。なお、円相当径とは、接合材104の断面画像を画像解析することによって求められる気孔の面積に相当する真円の、直径を意味する。
【0071】
具体的には、まず、燃料電池セル10の基端面103とマニホールド2の天板231との隙間に充填されている接合材104を燃料電池セル10の主面と平行な面(X−Y平面)で切断することによって、接合材104の断面を形成する。
【0072】
この接合材104の断面をFE−SEMで撮影し、接合材104の断面画像を作成する。なお、FE−SEMによって撮影する際、燃料電池セル10の基端面103と天板231とがFE−SEMの視野内に収まる範囲で拡大する。
【0073】
このFE−SEMによって撮影された断面画像をMVTec社製の画像解析ソフトHALCONによって解析する。なお、この画像解析ソフトによって、中央領域A1及び端部領域A2の全範囲をそれぞれ解析する。そして、中央領域A1及び端部領域A2のそれぞれを解析して得られた気孔径のうち、中央領域A1及び端部領域A2のそれぞれで気孔径の大きいものから順に10個ずつを選定する。この10個の気孔径を平均したものを中央領域A1及び端部領域A2のそれぞれの気孔径とする。なお、気孔径が大きいものほど、応力緩和効果が高い。
【0074】
なお、中央領域A1及び端部領域A2における気孔径は、例えば、熱処理前に添加される有機成分を含有する造孔材の大きさを調整することによって制御できる。
【0075】
図4に示すように、接合材104は、連結補強部236と燃料電池セル10の基端面103との間に充填されている。このため、ガス供給室21内の燃料ガスが、連結補強部236と燃料電池セル10の基端面103との隙間を介してガス回収室22へと流れることを防止することができる。
【0076】
接合材104は、例えば、結晶化ガラスである。結晶化ガラスとしては、例えば、SiO
2−B
2O
3系、SiO
2−CaO系、またはSiO
2−MgO系が採用され得る。なお、本明細書では、結晶化ガラスとは、全体積に対する「結晶相が占める体積」の割合(結晶化度)が60%以上であり、全体積に対する「非晶質相及び不純物が占める体積」の割合が40%未満のガラスを指す。なお、接合材104の材料として、非晶質ガラス、ろう材、またはセラミックス等が採用されてもよい。具体的には、接合材104は、SiO
2−MgO−B
2O
5−Al
2O
3系及びSiO
2−MgO−Al
2O
3−ZnO系よりなる群から選ばれる少なくとも一種である。
【0077】
図9に示すように、燃料電池セル10の基端面103とマニホールド2の天板231との距離は、燃料電池セル10の幅方向(y軸方向)において異なっている。燃料電池セル10の幅方向の中央部における燃料電池セル10の基端面103とマニホールド2の天板231との距離d1は、燃料電池セル10の幅方向の端部における燃料電池セル10の基端面103とマニホールド2の天板231との距離d2よりも大きい。
【0078】
燃料電池セル10の基端面103とマニホールド2の天板231との距離は、幅方向(y軸方向)の両端部から中央部に向かって徐々に大きくなる。燃料電池セル10の基端面103は、幅方向(y軸方向)の中央部が幅方向の両端部よりも天板231から離れるように湾曲している。例えば、燃料電池セル10の正面視(z軸方向視)において、基端面103は、円弧状に形成されている。
【0079】
本実施形態では、燃料電池セル10の基端面103は、幅方向の両端部において、天板231と当接している。詳細には、燃料電池セル10の基端面103は、幅方向の両端部の一部が天板231と当接している。
【0080】
燃料電池セル10の幅方向の中央部における燃料電池セル10の基端面103とマニホールド2の天板231との距離d1は、例えば、0.02〜1mm程度である。この距離d1は、例えば、燃料電池セル10を幅方向に5等分したうちの中央部の基端面103と天板231との距離を任意の3箇所で測定してそれらを平均したものである。
【0081】
また、燃料電池セル10の幅方向の端部における燃料電池セル10の基端面103とマニホールド2の天板231との距離d2は、例えば、0.01〜0.3mm程度である。この距離d2は、例えば、燃料電池セル10を幅方向に5等分したうちの端部の基端面103と天板231との距離を任意の3箇所で測定してそれらを平均したものである。
【0082】
[発電方法]
上述したように構成されたセルスタック装置100では、マニホールド2のガス供給室21に水素ガスなどの燃料ガスを供給するとともに、燃料電池セル10を空気などの酸素を含むガスに曝す。すると、空気極8において下記(1)式に示す化学反応が起こり、燃料極6において下記(2)式に示す化学反応が起こり、電流が流れる。
(1/2)・O
2+2e
−→O
2− …(1)
H
2+O
2−→H
2O+2e
− …(2)
【0083】
詳細には、ガス供給室21に供給された燃料ガスは、各燃料電池セル10の第1ガス流路41内を流れ、各発電素子部5の燃料極6において、上記(2)式に示す化学反応が起こる。各燃料極6において未反応であった燃料ガスは、第1ガス流路41を出て連通流路30を介して第2ガス流路42へ供給される。そして、第2ガス流路42へ供給された燃料ガスは、再度、燃料極6において上記(2)式に示す化学反応が起こる。第2ガス流路42を流れる過程において燃料極6において未反応であった燃料ガスは、マニホールド2のガス回収室22へ回収される。
【0084】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0085】
変形例1
上記実施形態では、中央領域A1における気孔径は、端部領域A2における気孔径よりも大きいが、これに限定されない。例えば、中央領域A1における気孔径は、端部領域A2における気孔径よりも小さくてもよい。この場合、中央領域A1における気孔率が、端部領域A2における気孔率よりも大きい。
【0086】
例えば、中央領域A1における気孔率は、5〜60%程度である。そして、端部領域A2における気孔率は、0.5〜20%程度である。中央領域A1における気孔率は、端部領域A2における気孔率よりも4〜50%程度大きい。なお、中央領域A1における気孔率は、他の領域における気孔率よりも大きい。
【0087】
気孔率は、接合材104の断面画像を画像解析することによって求められる。具体的には、上述した気孔径を求める方法と同様の方法で、FE−SEMで接合材104の断面画像を作成する。そして、この接合材104の断面画像をMVTec社製の画像解析ソフトHALCONによって画像解析する。この画像解析後の断面画像上で、接合材104を構成する材料部分と気孔部分とのそれぞれの面積占有率を求め、気孔部分の面積占有率を気孔率とする。なお、気孔率は、中央領域A1及び端部領域A2のそれぞれの全範囲を対象として算出する。
【0088】
なお、中央領域A1及び端部領域A2における気孔率は、例えば、熱処理前に添加される有機成分を含有する造孔材の大きさ及び量(体積割合)を調整することによって制御できる。
【0089】
変形例2
中央領域A1における気孔径が、端部領域A2における気孔径よりも大きく、且つ、中央領域A1における気孔率が、端部領域A2における気孔率よりも大きくてもよい。
【0090】
変形例3
上記実施形態では、燃料電池セル10の基端面103が湾曲していたが、これに限定されない。例えば、
図11に示すように、天板231が湾曲していてもよい。すなわち、天板231は、幅方向の中央部が幅方向の両端部よりも燃料電池セル10の基端面103から離れるように湾曲している。例えば、燃料電池セル10の正面視(z軸方向視)において、天板231の桟部235は、円弧状に湾曲している。
【0091】
また、
図12に示すように、燃料電池セル10の基端面103が湾曲し、且つ天板231の桟部235が湾曲していてもよい。
【0092】
変形例4
上記実施形態では、燃料電池セル10の幅方向の中央部における燃料電池セル10の基端面103とマニホールド2の天板231との距離d1は、燃料電池セル10の幅方向の端部における燃料電池セル10の基端面103とマニホールド2の天板231との距離d2よりも大きくなっているが、これに限定されない。
【0093】
例えば、
図13に示すように、燃料電池セル10の基端面103と天板231との距離が幅方向において実質的に一定であってもよい。また、燃料電池セル10の基端面103と天板231との距離が燃料電池セル10の幅方向の中央部よりも端部の方が大きくてもよい。
【0094】
変形例5
上記実施形態では、連結補強部236は、燃料電池セル10の境界領域403における基端面103と対向しているがこれに限定されない。連結補強部236は、第1領域401又は第2領域402における基端面103と対向する位置に形成されていてもよい。
【0095】
変形例6
図14に示すように、接合材104は、一部が貫通孔234と重なるように、貫通孔234と第1又は第2ガス流路41,42との間にはみ出ていてもよい。また、接合材104の一部が、第1又は第2ガス流路41,42の基端部411、421の内壁面を覆っていてもよい。この接合材104によって、第1又は第2ガス流路41,42の基端部411,421の強度を向上させることができる。
【0096】
また、接合材104の一部が、貫通孔234の内壁面の少なくとも一部を覆っていてもよい。これにより、接合材104が天板231から剥離することを抑制できる。
【0097】
変形例7
図15に示すように、セルスタック装置100は、連通部材3を備えていなくてもよい。この場合、例えば、支持基板4内に連通流路30が形成されていてもよい。この連通流路30は、支持基板4の先端部44において、幅方向(y軸方向)に延びている。
【0098】
変形例8
上記実施形態では、貫通孔234は、複数の分割孔234aに分割されているが、貫通孔234の構成はこれに限定されない。例えば、
図16に示すように、貫通孔234は複数の分割孔234aに分割されていなくてもよい。すなわち、天板231は、連結補強部236を有していなくてもよい。
【0099】
変形例7
上記実施形態の燃料電池セル10は、各発電素子部5が支持基板4の長さ方向(x軸方向)に配列されている、いわゆる横縞型の燃料電池セルであるが、燃料電池セル10の構成はこれに限定されない。例えば、燃料電池セル10は、支持基板4の第1主面45に1つの発電素子部5が支持された、いわゆる縦縞型の燃料電池セルであってもよい。この場合、支持基板4の第2主面46に一つの発電素子部5が支持されていてもよいし、支持されていなくてもよい。
【0100】
変形例8
上記実施形態では、燃料電池セル10からのオフガスをマニホールド2のガス回収室22によって回収しているが、これに限定されない。例えば、燃料電池セル10の先端部からオフガスを排出して燃焼させてもよい。この場合、マニホールド2は、仕切板24を有しておらず、ガス供給室21とガス回収室22とに分かれていなくてよい。
【解決手段】セルスタック装置100は、マニホールド2、板状の燃料電池セル10、及び接合材104を備えている。マニホールド2は、貫通孔を含む天板231を有する。燃料電池セル10は、貫通孔を覆うように天板231と対向する基端面103を有する。接合材104は、天板231と燃料電池セル10の基端面103との隙間に充填される。接合材104は、燃料電池セル10の幅方向の中央部に位置する中央領域A1と、幅方向の端部に位置する端部領域A2と、を有する。中央領域A1における気孔径は、端部領域A2における気孔径よりも大きい。