特許第6586534号(P6586534)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6586534
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】タンク装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/08 20060101AFI20190919BHJP
   B65D 88/12 20060101ALI20190919BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   F17C13/08 302B
   B65D88/12 U
   B63B25/16 P
   B63B25/16 101B
【請求項の数】11
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-556889(P2018-556889)
(86)(22)【出願日】2016年5月10日
(65)【公表番号】特表2019-515215(P2019-515215A)
(43)【公表日】2019年6月6日
(86)【国際出願番号】FI2016050306
(87)【国際公開番号】WO2017194819
(87)【国際公開日】20171116
【審査請求日】2018年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】503129903
【氏名又は名称】ワルトシラ フィンランド オサケユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】マリス,マルチン
(72)【発明者】
【氏名】アダモヴィッチ,マチェイ
(72)【発明者】
【氏名】コクツール−グラツェスカ,マウゴジャタ
(72)【発明者】
【氏名】スルソースキー,グジェゴジュ
【審査官】 植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−166192(JP,A)
【文献】 特表2009−517272(JP,A)
【文献】 特表2011−527656(JP,A)
【文献】 特開平8−156872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/08
B63B 25/16
B65D 88/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化天然ガスを貯蔵するためのタンク装置であって、前記装置は、長手方向を定める長手方向軸と横方向を定める横方向軸とを有するマルチローブタンクを有し、前記タンクは、前記横方向に一列に配置された少なくとも3つのタンクセクションを有し、それぞれの前記タンクセクションは、垂直方向に前記タンクを支持するとともに前記長手方向における支持面に対する前記タンクの移動を可能にする第1の支持部と、前記垂直方向に前記タンクを支持する第2の支持部であって、前記第2の支持部のうちの少なくとも1つは、前記長手方向における前記支持面に対する前記タンクの移動を防止する、第2の支持部とにより、前記支持面に対して支持され、前記タンクセクションのうちの1つは、前記垂直方向に前記タンクを支持し且つ前記長手方向における前記支持面に対する前記タンクの移動を可能にし且つ前記横方向における移動を防止する、第3の支持部をさらに備え、前記第1および前記第2の支持部は、前記横方向における前記タンクの収縮および膨張を可能にするように構成される、
タンク装置。
【請求項2】
前記装置の全ての前記第2の支持部は、前記長手方向における前記支持面に対する前記タンクの移動を防止するように構成される、
請求項1に記載のタンク装置。
【請求項3】
前記第1の支持部の各々は、前記横方向における前記タンクの移動を可能にする、
請求項1又は2に記載のタンク装置。
【請求項4】
前記第3の支持部によって支持される前記タンクセクションの前記第1の支持部は、前記横方向における前記タンクの移動を防止するように構成され、他の前記タンクセクションの前記第1の支持部は、前記横方向における前記タンクの移動を可能にするように構成される、
請求項1又は2に記載のタンク装置。
【請求項5】
前記第2の支持部の各々は、前記横方向における前記タンクの移動を可能にする、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のタンク装置。
【請求項6】
前記第3の支持部によって支持される前記タンクセクションの前記第2の支持部は、前記横方向における前記タンクの移動を防止するように構成され、他の前記タンクセクションの前記第2の支持部は、前記横方向における前記タンクの移動を可能にするように構成される、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のタンク装置。
【請求項7】
前記第3の支持部は、最も中央の前記タンクセクションを支持するように配置される、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のタンク装置。
【請求項8】
前記第3の支持部を備えた前記タンクセクションは、前記長手方向における前記支持面に対する前記タンクの移動を可能にし且つ前記横方向における移動を防止する、第4の支持部をさらに備える、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のタンク装置。
【請求項9】
前記第1の支持部および前記第2の支持部は、前記長手方向において前記第3の支持部と前記第4の支持部との間に配置される、
請求項8に記載のタンク装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のタンク装置を有する航洋船。
【請求項11】
前記タンクの前記長手方向軸は前記船の長手方向軸と平行である、
請求項10に記載の航洋船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1による液化天然ガスを貯蔵するためのタンク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガス、又は概して、混合物を室温でガス状の形態で現れるようにするのに十分揮発性の炭化水素の混合物は、内燃機関の燃料としての燃料油の有利な代替物を構成する。燃料として天然ガスを使用する航洋船では、天然ガスは、典型的には液体の形態で船内に貯蔵され、一般的に使用される頭文字LNG(Liquefied Natural Gas)を生じさせる。天然ガスは、その温度を約−162℃である沸点より下に保つことによって液体の形態に保たれることができる。LNGは通常、大気圧に近い圧力で貯蔵されるが、LNGを貯蔵するために使用される大型タンクは、かなりの静水圧および一定の過剰圧力に耐える必要がある。良好な機械的強度を達成するために、LNGタンクは、典型的には、円筒形または球形容器として構成される。しかし、実用上の理由から、大型LNGタンクは、円筒形のタンクの代わりに、バイローブ(bilobe)またはマルチローブ(multilobe)タンクとして時折設計される。バイローブタンクは、2つの対になる(mating)湾曲した半部、例えば2つの球形のキャップまたは2つの円筒のセグメント(cylindrical segments)を有する。マルチローブタンクは、互いに接合される少なくとも3つの湾曲セクション(sections)を有する。セクションは、部分的な円筒または球であることができる。
【0003】
LNGを貯蔵するのに必要な低温のために、使用中のタンクの寸法および+30℃の温度であり得る空のタンクの寸法は、互いに大きく異なり得る。これは、特に、タンクを船舶の船体にしっかりと取り付けることが重要である船舶において、LNGタンクを支持することを困難にする。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、液化天然ガスを貯蔵するための改良されたタンク装置を提供することである。本発明によるタンク装置の特徴は、請求項1に記載されている。
【0005】
本発明による装置は、長手方向を定める長手方向軸と横方向を画定する横方向軸とを有するマルチローブタンクを有し、タンクは、横方向に一列に配置された少なくとも3つのタンクセクションを有し、各タンクセクションは、長手方向における支持面に対するタンクの移動を可能にする第1の支持部、及び第2の支持部であって、第2の支持部のうちの少なくとも1つは、長手方向における支持面に対するタンクの移動を防止する、第2の支持部により、支持面に対して支持される。タンクセクションのうちの1つは、長手方向における支持面に対するタンクの移動を可能にし且つ横方向における移動を防止する、第3の支持部をさらに備え、第1および第2の支持部は、横方向におけるタンクの収縮および膨張を可能にするように構成される。
【0006】
本発明によるタンク装置により、タンクの膨張および収縮が可能にされるが、タンクは長手方向および横方向の両方において支持面に固定される。
【0007】
本発明の実施形態によれば、装置の全ての第2の支持部は、長手方向における支持面に対するタンクの移動を防止するように構成される。長手方向の力は、したがって、いくつかの支持部によって支持される。
【0008】
本発明の実施形態によれば、第1の支持部の各々は、横方向におけるタンクの移動を可能にする。これは、タンクが横方向および長手方向の両方に収縮および膨張することができることを保証する。代替的には、第3の支持部によって支持されるタンクセクションの第1の支持部は、横方向におけるタンクの移動を防止するように構成され、他のタンクセクションの第1の支持部は、横方向におけるタンクの移動を可能にするように構成される。第1の支持部の1つは、タンクを横方向に固定することができ、タンクは依然として横方向に伸縮することができる。
【0009】
第2の支持部は同様の方法で構成されることができる。したがって、第2の支持部の各々は、横方向におけるタンクの移動を可能にすることができる。代替的には、第3の支持部によって支持されるタンクセクションの第2の支持部は、横方向におけるタンクの移動を防止するように構成されることができ、他のタンクセクションの第2の支持部は、横方向におけるタンクの移動を可能にするように構成される。
【0010】
本発明の実施形態によれば、第3の支持部は、最も中央のタンクセクションを支持するように配置される。したがって、タンクは、タンクの長手方向の中心線に関して対称に収縮し、重心は変化しない。
【0011】
本発明の実施形態によれば、第3の支持部を備えたタンクセクションは、長手方向における支持面に対するタンクの移動を可能にし且つ横方向における移動を防止する、第4の支持部をさらに備える。第4の支持部は、垂直軸周りのタンクの回転(spinning)を防ぐ。
【0012】
本発明の実施形態によれば、第1の支持部および第2の支持部は、長手方向において第3の支持部と第4の支持部との間に配置される。第3の支持部および第4の支持部をタンクの端部の近くに配置することによって、より小さい横方向の力が、タンクが垂直軸周りに回転することを防ぐために必要とされる。
【0013】
本発明による航洋船は、上で定義したタンク装置を有する。
【0014】
本発明の実施形態によれば、タンクの長手方向軸は船の長手方向軸と平行である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の実施形態が、以下に添付の図面を参照してより詳細に説明される。
【0016】
図1】LNGタンク装置を有する船舶の断面図を示す。
図2図1のタンク装置の上面図を示す。
図3】タンク装置の側面図を示す。
図4】支持部を持つLNGタンクの側面図を示す。
図5】タンク用支持部を示す。
図6】タンクの端面図を示す。
図7】支持部を持つタンクの上面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1乃至3は、船舶2のLNGタンク装置を示している。装置は、LNGタンク1を有する。LNGタンク1は、液化天然ガスを貯蔵するように構成された容器である。天然ガスは、その温度を約−162℃である沸点より下に維持することによって液体形態に保たれる。LNGタンク1は、船舶2の長手方向中心線の周りに配置されたタンクホールド3内に配置されている。LNGタンク1は、船舶2の1つ又は複数のエンジンで燃料として使用される液化ガスを貯蔵する。
【0018】
LNGタンク1は、単一のシェル構造を有する。LNGを保持するスペースは、耐寒性材料で作られたシェル6によって形成される。「耐寒性材料」という表現は、液化天然ガスの温度に耐えることができる材料を指す。材料の最低設計温度は最大で−165℃でなければならない。材料は、例えば、ステンレス鋼であり得る。適切な材料は、例えば、9%ニッケル鋼、低マンガン鋼、タイプ304、304L、316、316L、321および347のようなオーステナイト鋼、並びにオーステナイトFe−Ni合金(36%ニッケル)である。断熱層(insulation layer)7が、シェル6の周りに配置されている。断熱層7は、例えばポリウレタンで作られることができる。
【0019】
LNGタンク1は、マルチローブタンクである。「マルチローブタンク」という表現は、湾曲断面輪郭を有し、タンク1のシェル6が少なくとも2つの側部に波状の形状を有するように互いに接合されている、少なくとも3つのセクションを有するタンクを指す。図の実施形態では、LNGタンク1は、それぞれが部分円筒の形状を有する5つのセクション1a、1b、1c、1d、1eを有する。セクション1a、1b、1c、1d、1eの長手方向中心線は互いに平行である。最も中央のセクション1cは、2つの垂直面により水平な円筒からセグメントを切断することによって形成された形状を有する。他のセクション1a、1b、1d、1eはそれぞれ、1つの垂直面により水平な円筒からセグメントを切断することによって形成された形状を有する。タンク1のセクション1a、1b、1c、1d、1eは水平面内で一列に配置されている。タンク1はしたがって波状の上面と波状の下面とを有する。最も外側のセクション1a、1eは、LNGタンク1の中央の3つのセクション1b、1c、1dよりも短い。セクション1a、1b、1c、1d、1eの端部は、エンドキャップ4a、4b、4c、4d、4e、5a、5b、5c、5d、5eによって閉じられている。エンドキャップは、球状キャップまたは球状キャップの一部の形状を有することができる。
【0020】
タンク1は、図7に最もよく見られ得る、長手方向を定める長手方向軸19と、横方向を定める横方向軸20とを有する。タンク1は、第1の端部27と第2の端部28とを有する。タンク1は、タンク1を垂直方向に支持するとともにタンク1の水平面内での移動を制限する支持部によって、船2の船体によって形成され得る支持面21に対して支持される。支持構造は、特に図4乃至7を参照して説明される。
【0021】
タンク1の各セクション1a、1b、1c、1d、1eは、第1の支持部22および第2の支持部23によって支持面21に支持されている。第1の支持部22は、第1の端部27の近くに配置され、第2の支持部23は、タンク1の第2の端部28の近くに配置される。第1の支持部22は支持部の第1の列を形成し、第2の支持部23は支持部の第2の列を形成する。第1の支持部22および第2の支持部23のそれぞれは、対応するタンクセクション1a、1b、1c、1d、1eの下面の形状に適合する湾曲した上面を有する。熱膨張のために、タンク1の寸法は著しく変化し得る。例えば、タンク1が使用されているとき、その温度は約−162℃でなければならない。空のタンク1は、+30℃の温度を有することができる。タンク1の膨張および収縮を可能にするために、支持部のうちの1列は、長手方向のタンク1の移動を可能にするように構成されている。図面の実施形態では、第1の支持部22は、長手方向のタンク1の移動を可能にする。第1の支持部22はまた、横方向のタンク1の移動を可能にし、これは、その方向のタンク1の膨張を可能にする。しかし、第1の支持部22のうちの1つは、タンク1を横方向に固定することもでき、タンク1は依然として収縮および拡張することができる。第2の支持部23は、長手方向のタンク1の移動を防止するように構成されている。タンク1の位置はしたがって長手方向に固定されているが、第1の端部27と第2の端部28は、第2の支持部23によって規定される固定点から外側に長手方向に移動することを可能にされる。全ての第2の支持部23が、長手方向のタンク1の移動を防止する必要はないが、第2の支持部23の1つがタンク1の長手方向の移動を防止することが十分であり得る。第2の支持部23のうちの1つだけが長手方向の移動を防止する場合、第2の支持部23が最も中央のタンクセクション1cを支持することが好ましい。2つ以上の第2の支持部23が長手方向の移動を防止する場合、それらがタンク1の長手方向の中心線に対して対称に配置されることが好ましい。全ての第2の支持部23、又は第2の支持部23のうちの1つを除く全てはまた、横方向のタンク1の移動を可能にする。したがって、タンク1は横方向に自由に膨張することができる。第2の支持部23のうちの1つは、タンク1を横方向に固定することができるが、これは必ずしも必要ではない。第2の支持部23のうちの1つと第1の支持部22のうちの1つがタンク1を横方向に固定する場合、それらは同じタンクセクションを支持すべきである。
【0022】
タンク装置は、第3の支持部24をさらに備えている。第3の支持部24は、長手方向のタンク1の移動を可能にするが、横方向の移動を防止する。第3の支持部24はしたがって、横方向にタンク1を固定する。タンク1の横方向位置は第3の支持部24によって固定されているので、第1の支持部22および第2の支持部23は全て、横方向のタンク1の移動を可能にする。図の実施形態では、第3の支持部24は、最も中央のタンクセクション1cを支持するように配置されている。したがって、タンク1の長手方向中心線の位置は動かず、タンク1は中心線1の周りで膨張および収縮する。これは、タンク1の重心位置が変化しないので、船舶において特に有利である。
【0023】
図の実施形態では、タンク装置は、第4の支持部25をさらに備えている。また、第4の支持部25は、長手方向のタンク1の移動を可能にするが、横方向の移動を防止する。第4の支持部25は、第3の支持部24と同じタンクセクションを支持するように構成されている。第4の支持部25は、タンク1が垂直軸の周りに回転しないことを確実にする。第3の支持部24は、タンク1の第1の端部27の近くに配置され、第4の支持部25は、タンク1の第2の端部28の近くに配置される。第1の支持部22および第2の支持部23はしたがって、タンク1の長手方向に第3の支持部24と第4の支持部25との間にある。第3の支持部24および第4の支持部25をタンク1の対向する端部27、28に近接して配置することにより、垂直軸まわりのタンク1の回転を防止するために、より小さい横方向の支持力が必要とされる。
【0024】
図5は、第3の支持部24または第4の支持部25として使用することができる支持部の例を示す。支持部24、25は、支持面21に取り付けられることができる支持要素30を含む。レール29は、レール29が支持要素30の長手方向に動くことができるように、支持要素30に対して支持される。レール29に加えられる横方向の力は、レール29の両側に配置された側方支持部32によって支えられる。補強板31が、タンクセクション1a、1b、1c、1d、1eのうちの1つの底部に取り付けられている。補強板31は、タンク1のシェル6に溶接され、追加の補強部材として機能する。
【0025】
当業者であれば、本発明が上述の実施形態に限定されるものではなく、添付の請求項の範囲内で変更され得ることが理解されよう。例えば、タンクは、3つのセクションのみ、又は5より多いセクションを有することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7