(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る電気化学セル及びセルスタック装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態では、電気化学セルの一例として燃料電池セル、より具体的には固体酸化物形燃料電池セル(SOFC)を用いて説明する。
図1は、セルスタック装置を示す斜視図である。なお、
図1において、いくつかの燃料電池セルの記載を省略している。
【0019】
[セルスタック装置]
図1に示すように、セルスタック装置100は、マニホールド2と、複数の燃料電池セル10と、を備えている。
【0020】
[マニホールド]
マニホールド2は、燃料電池セル10にガスを供給するように構成されている。また、マニホールド2は、燃料電池セル10から排出されたガスを回収するように構成されている。マニホールド2は、ガス供給室21(ガス供給部の一例)とガス回収室22(ガス回収部の一例)とを有している。ガス供給室21にはガス供給管101が接続されており、ガス回収室22にはガス回収管102が接続されている。ガス供給室21には、ガス供給管101を介して燃料ガスが供給される。また、ガス回収室22内の燃料ガスは、ガス回収管102を介してマニホールド2から回収される。
【0021】
マニホールド2は、マニホールド本体部23と、仕切板24とを有している。マニホールド本体部23は、内部に空間を有している。マニホールド本体部23は、直方体状である。
【0022】
図2に示すように、マニホールド本体部23の上板部231には、複数の貫通孔232が形成されている。各貫通孔232は、マニホールド本体部23の長さ方向(z軸方向)に間隔をあけて並んでいる。各貫通孔232は、マニホールド本体部23の幅方向(y軸方向)に延びている。各貫通孔232は、ガス供給室21及びガス回収室22と連通している。なお、各貫通孔232は、ガス供給室21と連通する部分とガス回収室22と連通する部分とに分かれていてもよい。
【0023】
仕切板24は、マニホールド本体部23の空間をガス供給室21とガス回収室22とに仕切っている。詳細には、仕切板24は、マニホールド本体部23の略中央部において、マニホールド本体部23の長さ方向に延びている。仕切板24は、マニホールド本体部23の空間を完全に仕切っている必要は無く、仕切板24とマニホールド本体部23との間に隙間が形成されていてもよい。
【0024】
[燃料電池セル]
燃料電池セル10は、マニホールド2から上方に延びている。詳細には、燃料電池セル10は、下端部がマニホールド2に取り付けられている。各燃料電池セル10は、主面同士が対向するように並べられている。また、各燃料電池セル10は、マニホールド2の長さ方向に沿って間隔をあけて並べられている。すなわち、燃料電池セル10の配列方向は、マニホールド2の長さ方向に沿っている。なお、各燃料電池セル10は、マニホールド2の長さ方向に沿って等間隔に配置されていなくてもよい。
【0025】
図3及び
図4に示すように、燃料電池セル10は、支持基板4と、複数の発電素子部5と、連通部材3と、を有している。各発電素子部5は、支持基板4の第1主面45及び第2主面46に支持されている。なお、第1主面45に形成される発電素子部5の数と第2主面46に形成される発電素子部5の数とは、互いに同じであってもよいし異なっていてもよい。また、各発電素子部5の大きさは、互いに異なっていてもよい。
【0026】
[支持基板]
支持基板4は、マニホールド2から上下方向に延びている。詳細には、支持基板4は、マニホールド2から上方に延びている。支持基板4は、扁平状であり、第1端部41と第2端部42とを有している。第1端部41及び第2端部42は、支持基板4の長さ方向(x軸方向)における両端部である。
【0027】
支持基板4の第1端部41は、マニホールド2に取り付けられる。例えば、支持基板4の第1端部41は、接合材などによってマニホールド2の上板部231に取り付けられる。詳細には、支持基板4の第1端部41は、上板部231に形成された貫通孔232に挿入されている。なお、支持基板4の第1端部41は、貫通孔232に挿入されていなくてもよい。このように支持基板4の第1端部41がマニホールド2に取り付けられることによって、支持基板4の第1端部41は、ガス供給室21及びガス回収室22と連結している。
【0028】
支持基板4は、複数の第1ガス流路43と、複数の第2ガス流路44とを有している。第1ガス流路43は、支持基板4内を上下方向に延びている。すなわち、第1ガス流路43は、支持基板4の長さ方向(x軸方向)に延びている。第1ガス流路43は、支持基板4を貫通している。各第1ガス流路43は、支持基板4の幅方向(y軸方向)において互いに間隔をあけて配置されている。なお、各第1ガス流路43は、等間隔に配置されていることが好ましい。支持基板4は、長さ方向(x軸方向)よりも幅方向(y軸方向)の寸法の方が長くてもよい。
【0029】
図4に示すように、隣り合う第1ガス流路43のピッチp1は、例えば、1〜5mm程度である。この隣り合う第1ガス流路43のピッチp1は、第1ガス流路43の中心間の距離である。例えば、第1ガス流路43のピッチp1は、第1端部41、中央部、及び第2端部42のそれぞれにおいて測定したピッチの平均値とすることができる。
【0030】
第1ガス流路43は、支持基板4の第1端部41から第2端部42に向かって延びている。燃料電池セル10をマニホールド2に取り付けた状態において、第1ガス流路43は、第1端部41側において、ガス供給室21と連通している。
【0031】
第2ガス流路44は、支持基板4内を上下方向に延びている。すなわち、第2ガス流路44は、支持基板4の長さ方向(x軸方向)に延びている。第2ガス流路44は、第1ガス流路43と実質的に平行に延びている。
【0032】
第2ガス流路44は、支持基板4を貫通している。各第2ガス流路44は、支持基板4の幅方向(y軸方向)において互いに間隔をあけて配置されている。なお、各第2ガス流路44は、等間隔に配置されていることが好ましい。
【0033】
隣り合う第2ガス流路44のピッチp2は、例えば、1〜5mm程度である。この隣り合う第2ガス流路44のピッチp2は、第2ガス流路44の中心間の距離である。例えば、第2ガス流路44のピッチp2は、第1端部41、中央部、及び第2端部42のそれぞれにおいて測定したピッチの平均値とすることができる。なお、各第2ガス流路44間のピッチp2は、各第1ガス流路43間のピッチp1と実質的に等しいことが好ましい。
【0034】
第2ガス流路44は、支持基板4の第2端部42から第1端部41に向かって延びている。燃料電池セル10をマニホールド2に取り付けた状態において、第2ガス流路44は、第1端部41側において、マニホールド2のガス回収室22と連通している。
【0035】
隣り合う第1ガス流路43と第2ガス流路44とのピッチp0は、例えば、1〜10mm程度である。この隣り合う第1ガス流路43と第2ガス流路44とのピッチp0は、第1ガス流路43の中心と第2ガス流路44の中心との距離である。例えば、ピッチp0は、支持基板4の第1端面411において測定することができる。
【0036】
隣り合う第1ガス流路43と第2ガス流路44とのピッチp0は、隣り合う第1ガス流路43のピッチp1よりも大きい。また、隣り合う第1ガス流路43と第2ガス流路44とのピッチp0は、隣り合う第2ガス流路44のピッチp2よりも大きい。
【0037】
第1ガス流路43と第2ガス流路44とは、支持基板4の第2端部42側において互いに連通している。詳細には、第1ガス流路43と、第2ガス流路44とが、連通部材3の連通流路30を介して連通している。
【0038】
第1ガス流路43及び第2ガス流路44は、第1ガス流路43内におけるガスの圧力損失が第2ガス流路44内におけるガスの圧力損失よりも小さくなるように構成されている。なお、本実施形態のように第1ガス流路43及び第2ガス流路44のそれぞれが複数本ある場合、各第1ガス流路43内におけるガスの圧力損失の平均値が、各第2ガス流路44内におけるガスの圧力損失の平均値よりも小さくなるように、第1ガス流路43及び第2ガス流路44が構成される。
【0039】
例えば、各第1ガス流路43の流路断面積は、各第2ガス流路44の流路断面積よりも大きくすることができる。なお、第1ガス流路43の数と第2ガス流路44との数とが異なる場合は、各第1ガス流路43の流路断面積の合計値が、各第2ガス流路44の流路断面積の合計値よりも大きくすることができる。
【0040】
特に限定されるものではないが、各第2ガス流路44の流路断面積の合計値は、各第1ガス流路43の流路断面積の合計値の20〜95%程度とすることができる。なお、第1ガス流路43の流路断面積は、例えば、0.5〜20mm
2程度とすることができる。また、第2ガス流路44の流路断面積は、例えば、0.1〜15mm
2程度とすることができる。
【0041】
なお、第1ガス流路43の流路断面積は、第1ガス流路43が延びる方向(x軸方向)と直交する面(yz平面)で切断した切断面における第1ガス流路43の流路断面積を言う。また、第1ガス流路43の流路断面積は、第1端部41側の任意の箇所における流路断面積と、中央部の任意の箇所における流路断面積と、第2端部42側の任意の箇所における流路断面積との平均値とすることができる。
【0042】
また、第2ガス流路44の流路断面積は、第2ガス流路44が延びる方向(x軸方向)と直交する面(yz平面)で切断した切断面における第2ガス流路44の流路断面積を言う。また、第2ガス流路44の流路断面積は、第1端部41側の任意の箇所における流路断面積と、中央部の任意の箇所における流路断面積と、第2端部42側の任意の箇所における流路断面積との平均値とすることができる。
【0043】
図3に示すように、支持基板4は、第1主面45と、第2主面46とを有している。第1主面45と第2主面46とは、互いに反対を向いている。第1主面45及び第2主面46は、各発電素子部5を支持している。第1主面45及び第2主面46は、支持基板4の厚さ方向(z軸方向)を向いている。また、支持基板4の各側面47は、支持基板4の幅方向(y軸方向)を向いている。各側面47は、湾曲していてもよい。
図1に示すように、各支持基板4は、第1主面45と第2主面46とが対向するように配置されている。
【0044】
図3に示すように、支持基板4は、発電素子部5を支持している。支持基板4は、電子伝導性を有さない多孔質の材料によって構成される。支持基板4は、例えば、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)から構成される。または、支持基板4は、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とY
2O
3(イットリア)とから構成されてもよいし、MgO(酸化マグネシウム)とMgAl
2O
4(マグネシアアルミナスピネル)とから構成されてもよい。支持基板4の気孔率は、例えば、20〜60%程度である。この気孔率は、例えば、アルキメデス法、又は微構造観察により測定される。
【0045】
支持基板4は、緻密層48によって覆われている。緻密層48は、第1ガス流路43及び第2ガス流路44から支持基板4内に拡散されたガスが外部に排出されることを抑制するように構成されている。本実施形態では、緻密層48は、支持基板4の第1主面45、第2主面46、及び各側面47を覆っている。なお、本実施形態では、緻密層48は、後述する電解質7と、インターコネクタ91とによって構成されている。緻密層48は、支持基板4よりも緻密である。例えば、緻密層48の気孔率は、0〜7%程度である。
【0046】
[発電素子部]
複数の発電素子部5が、支持基板4の第1主面45及び第2主面46に支持されている。各発電素子部5は、支持基板4の長さ方向(x軸方向)に配列されている。詳細には、各発電素子部5は、支持基板4上において、第1端部41から第2端部42に向かって互いに間隔をあけて配置されている。すなわち、各発電素子部5は、支持基板4の長さ方向(x軸方向)に沿って、間隔をあけて配置されている。なお、各発電素子部5は、後述する電気的接続部9によって、互いに直列に接続されている。
【0047】
発電素子部5は、支持基板4の幅方向(y軸方向)に延びている。発電素子部5は、支持基板4の幅方向において第1部分51と第2部分52とに区画される。なお、第1部分51と第2部分52との厳密な境界はない。例えば、燃料電池セル10をマニホールド2に取り付けた状態において、支持基板4の長さ方向視(x軸方向視)において、ガス供給室21とガス回収室22との境界と重複する部分を、第1部分51と第2部分52との境界部とすることができる。
【0048】
支持基板4の厚さ方向視(z軸方向視)において、第1ガス流路43は、発電素子部5の第1部分51と重複している。また、支持基板4の厚さ方向視(z軸方向視)において、第2ガス流路44は、発電素子部5の第2部分52と重複している。なお、複数の第1ガス流路43のうち、一部の第1ガス流路43が第1部分51と重複していなくてもよい。同様に、複数の第2ガス流路44のうち、一部の第2ガス流路44が第2部分52と重複していなくてもよい。
【0049】
図5は、第1ガス流路43に沿って切断した燃料電池セル10の断面図である。なお、第2ガス流路44に沿って切断した燃料電池セル10の断面図は、第2ガス流路44の流路断面積が異なる以外は、
図5と同じである。
【0050】
発電素子部5は、燃料極6、電解質7、及び空気極8を有している。また、発電素子部5は、反応防止膜11をさらに有している。燃料極6は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。燃料極6は、燃料極集電部61と燃料極活性部62とを有する。
【0051】
燃料極集電部61は、凹部49内に配置されている。凹部49は、支持基板4に形成されている。詳細には、燃料極集電部61は、凹部49内に充填されており、凹部49と同様の外形を有する。各燃料極集電部61は、第1凹部611及び第2凹部612を有している。燃料極活性部62は、第1凹部611内に配置されている。詳細には、燃料極活性部62は、第1凹部611内に充填されている。
【0052】
燃料極集電部61は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極集電部61は、NiO(酸化ニッケル)とY
2O
3(イットリア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とCSZ(カルシア安定化ジルコニア)とから構成されてもよい。燃料極集電部61の厚さ、及び凹部49の深さは、50〜500μm程度である。
【0053】
燃料極活性部62は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極活性部62は、NiO(酸化ニッケル)とGDC(ガドリニウムドープセリア)とから構成されてもよい。燃料極活性部62の厚さは、5〜30μmである。
【0054】
電解質7は、燃料極6上を覆うように配置されている。詳細には、電解質7は、一のインターコネクタ91から他のインターコネクタ91まで長さ方向に延びている。すなわち、支持基板4の長さ方向(x軸方向)において、電解質7とインターコネクタ91とが交互に配置されている。また、電解質7は、支持基板4の第1主面45、第2主面46、及び各側面47を覆っている。
【0055】
電解質7は、支持基板4よりも緻密である。例えば、電解質7の気孔率は、0〜7%程度である。電解質7は、イオン伝導性を有し且つ電子伝導性を有さない緻密な材料から構成される焼成体である。電解質7は、例えば、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、LSGM(ランタンガレート)から構成されてもよい。電解質7の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
【0056】
反応防止膜11は、緻密な材料から構成される焼成体である。反応防止膜11は、平面視において、燃料極活性部62と略同一の形状である。反応防止膜11は、電解質7を介して、燃料極活性部62と対応する位置に配置されている。反応防止膜11は、電解質7内のYSZと空気極8内のSrとが反応して電解質7と空気極8との界面に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制するために設けられている。反応防止膜11は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O
2(ガドリニウムドープセリア)から構成され得る。反応防止膜11の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
【0057】
空気極8は、反応防止膜11上に配置されている。空気極8は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極8は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O
3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、LSF=(La,Sr)FeO
3(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O
3(ランタンニッケルフェライト)、LSC=(La,Sr)CoO
3(ランタンストロンチウムコバルタイト)等から構成されてもよい。また、空気極8は、LSCFから構成される第1層(内側層)とLSCから構成される第2層(外側層)との2層によって構成されてもよい。空気極8の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0058】
[電気的接続部]
電気的接続部9は、隣り合う発電素子部5を電気的に接続するように構成されている。電気的接続部9は、インターコネクタ91及び空気極集電膜92を有する。インターコネクタ91は、第2凹部612内に配置されている。詳細には、インターコネクタ91は、第2凹部612内に埋設(充填)されている。インターコネクタ91は、電子伝導性を有する緻密な材料から構成される焼成体である。インターコネクタ91は、支持基板4よりも緻密である。例えば、インターコネクタ91の気孔率は、0〜7%程度である。インターコネクタ91は、例えば、LaCrO
3(ランタンクロマイト)から構成され得る。或いは、(Sr,La)TiO
3(ストロンチウムチタネート)から構成されてもよい。インターコネクタ91の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0059】
空気極集電膜92は、隣り合う発電素子部5のインターコネクタ91と空気極8との間を延びるように配置される。例えば、
図5の左側に配置された発電素子部5の空気極8と、
図5の右側に配置された発電素子部5のインターコネクタ91とを電気的に接続するように、空気極集電膜92が配置されている。空気極集電膜92は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。
【0060】
空気極集電膜92は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O
3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、LSC=(La,Sr)CoO
3(ランタンストロンチウムコバルタイト)から構成されてもよい。或いは、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)から構成されてもよい。空気極集電膜92の厚さは、例えば、50〜500μm程度である。
【0061】
[連通部材]
図4に示すように、連通部材3は、支持基板4の第2端部42に取り付けられている。そして、連通部材3は、第1ガス流路43と第2ガス流路44とを連通させる連通流路30を有している。詳細には、連通流路30は、各第1ガス流路43と各第2ガス流路44とを連通する。連通流路30は、各第1ガス流路43から各第2ガス流路44まで延びる空間によって構成されている。連通部材3は、支持基板4に接合されていることが好ましい。また、連通部材3は、支持基板4と一体的に形成されていることが好ましい。なお、連通流路30の数は、第1ガス流路43の数よりも少ない。本実施形態では、一本の連通流路30のみによって、複数の第1ガス流路43と複数の第2ガス流路44とが連通されている。
【0062】
連通部材3は、例えば、多孔質である。また、連通部材3は、その外側面を構成する緻密層31を有している。緻密層31は、連通部材3の本体よりも緻密に形成されている。例えば、緻密層31の気孔率は、0〜7%程度である。この緻密層31は、連通部材3と同じ材料や、上述した電解質7に使用される材料、結晶化ガラス等によって形成することができる。
【0063】
[配置関係]
支持基板4は、第1端部41側において第1端面411を有し、第2端部42側において第2端面421を有している。第1端面411は、マニホールド2側を向く端面であり、第2端面421は、第1端面411と反対側を向く端面である。
図4において、第1端面411は下端面であり、第2端面321は上端面である。
【0064】
第1端面411と発電素子部5との距離Lに対する、隣り合う第1ガス流路43と第2ガス流路44とのピッチp0の割合(p0/L)は、3.3以下である。また、距離Lに対するピッチp0の割合(p0/L)は0.02以上である。なお、第1端面411と発電素子部5との距離Lは、詳細には、複数の発電素子部5のうち、最も第1端面411側にある発電素子部5と第1端面411との距離である。例えば、第1主面45と第2主面46との両方に発電素子部5が配置されている場合、第1主面45又は第2主面46に配置された全ての発電素子部5のうち、最も第1端面411側にある発電素子部5と第1端面411との距離である。
【0065】
また、
図6に示すように、第1端面411と発電素子部5との距離Lを測定する際における発電素子部5とは、燃料電池セル10の正面視(z軸方向視)において、空気極8と燃料極活性部62とが重複する活性領域Aを言う。すなわち、第1端面411と発電素子部5との距離Lとは、第1端面411から活性領域Aまでの距離を意味する。なお、本実施形態の
図6に示す例では、空気極8の方が燃料極活性部62よりも小さいため、第1端面411と発電素子部5との距離Lは、第1端面411から空気極8までの距離とすることができる。この距離Lは、例えば、隣り合う第1ガス流路43と第2ガス流路44との中心を通るxz面で燃料電池セル10を切断して測定することができる。
【0066】
このように、距離Lに対するピッチp0の割合(p0/L)を3.3とすることによって、
図4の矢印Gに示すように、ガスを第1ガス流路43から第2ガス流路44に向かって支持基板4内を流すことができる。すなわち、第1端面411から活性領域Aまでの不活性領域において、ガスを第1ガス流路43から第2ガス流路44に向かって支持基板4内を流すことができる。また、距離Lに対するピッチp0の割合(p0/L)を0.02以上とすることによって、発電効率の低下を抑制することができる。
【0067】
また、第1ガス流路43と発電素子部5との距離Tよりも、ピッチp0の方が大きいように構成されている。この構成によれば、第1ガス流路43内を流れて発電素子部5に到達した燃料ガスが、第1ガス流路43から第2ガス流路44へと流れるよりも、発電素子部5において優先的に利用され、発電効率を向上させることができる。なお、第1ガス流路43と発電素子部5との距離Tとは、
図5に示すように、第1ガス流路43から燃料極活性部62までの距離を意味する。
【0068】
[発電方法]
上述したように構成されたセルスタック装置100では、マニホールド2のガス供給室21に水素ガスなどの燃料ガスを供給するとともに、燃料電池セル10を空気などの酸素を含むガスに曝す。すると、空気極8において下記(1)式に示す化学反応が起こり、燃料極6において下記(2)式に示す化学反応が起こり、電流が流れる。
(1/2)・O
2+2e
−→O
2− …(1)
H
2+O
2−→H
2O+2e
− …(2)
【0069】
詳細には、ガス供給室21に供給された燃料ガスは、各燃料電池セル10の第1ガス流路43内を流れ、各発電素子部5の燃料極6において、上記(2)式に示す化学反応が起こる。各燃料極6において未反応であった燃料ガスは、第1ガス流路43を出て連通部材3の連通流路30を介して第2ガス流路44へ供給される。そして、第2ガス流路44へ供給された燃料ガスは、再度、燃料極6において上記(2)式に示す化学反応が起こる。第2ガス流路44を流れる過程において燃料極6において未反応であった燃料ガスは、マニホールド2のガス回収室22へ回収される。
【0070】
上述したように、ガス供給室21に供給される燃料ガスは、基本的には、各第1ガス流路43→連通流路30→各第2ガス流路44の順に流れる。一方、第1ガス流路43を流れる燃料ガスのうち一部は、矢印Gのように、発電素子部5よりも第1端部41側において、第1ガス流路43から第2ガス流路44に向かって支持基板4の内部を流れる。そして、第2ガス流路44からガス回収室22に送られる。この未反応の燃料ガスは、ガス回収室22から回収されて、例えば、ガスバーナで燃やされる。このため、セルスタック装置100が瞬間的に燃料利用率100%となった場合であっても、ガスバーナでの失火を抑制することができる。
【0071】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0072】
変形例1
上記実施形態では、第1ガス流路43と第2ガス流路44とは、連通部材3が有する連通流路30によって連通されていたが、この構成に限定されない。例えば、
図7に示すように、支持基板4が、内部に連通流路30を有していてもよい。この場合、セルスタック装置100は、連通部材3を備えていなくてもよい。この支持基板4内に形成された連通流路30によって、第1ガス流路43と第2ガス流路44とが連通されている。
【0073】
変形例2
各第1ガス流路43の流路断面積は、互いに異なっていてもよい。また、各第2ガス流路44の流路断面積は、互いに異なっていてもよい。また、第1ガス流路43の流路断面積は、第2ガス流路44の流路断面積と実質的に同じであってもよいし、第2ガス流路44の流路断面積よりも小さくてもよい。
【0074】
変形例3
上記実施形態では、第2ガス流路44の数は、第1ガス流路43の数と同じであったが、第2ガス流路44の数はこれに限定されない。例えば、
図8に示すように、第2ガス流路44の数は、第1ガス流路43の数よりも少なくてもよい。
【0075】
変形例4
第1ガス流路43は、その長さ方向(x軸方向)において、均一な流路断面積を有していなくてもよい。特に、第1ガス流路43の流路断面積は、燃料ガス濃度が低くなる第2端部42に近付くほど小さくなっていてもよい。また、第2ガス流路44は、その長さ方向(x軸方向)において、均一な流路断面積を有していなくてもよい。特に、第2ガス流路44の流路断面積は、燃料ガス濃度が低くなる第1端部41に近付くほど小さくなっていてもよい。この構成によれば拡散性が向上し界面近傍に存在するNiがNiOに変化することを抑制することができる。
【0076】
変形例5
上記実施形態では、第1及び第2ガス流路43,44は、円形状の断面を有しているが、第1及び第2ガス流路43,44の断面形状は、矩形状や楕円形状であってもよい。
【0077】
変形例6
上記実施形態では、支持基板4は、複数の第1ガス流路43を有しているが、1つの第1ガス流路43のみを有していてもよい。同様に、支持基板4は、複数の第2ガス流路44を有しているが、1つの第2ガス流路44のみを有していてもよい。
【0078】
変形例7
上記実施形態では、第1主面45に配置された各発電素子部5は、互いに直列に接続されているが、第1主面45に配置された各発電素子部5の全てが直列に接続されている必要は無い。なお、第2主面46に配置された各発電素子部5についても同様である。
【0079】
変形例8
燃料電池セル10において、第1主面45に形成された各発電素子部5と第2主面46に形成された各発電素子部5との間は、互いに電気的に接続されていなくてもよいし、複数の箇所で電気的に接続されていてもよい。
【0080】
変形例9
上記実施形態では、各発電素子部5は、第1主面45と第2主面46との両面に配置されているが、どちらか一方の面のみに配置されていてもよい。
【0081】
変形例10
各燃料電池セル10の幅は、互いに異なっていてもよい。また、各発電素子部5の幅は、互いに異なっていてもよい。例えば、ある支持基板4に形成された各発電素子部5の幅と、別の支持基板4に形成された各発電素子部5の幅とは、異なっていてもよい。
【0082】
変形例11
実施形態では、連通部材3は多孔質であるが、連通部材3は金属によって構成されていてもよい。具体的には、連通部材3は、Fe−Cr合金、Ni基合金、又はMgO系セラミックス材料(支持基板4と同じ材料でも良い)などによって構成することができる。
【0083】
変形例12
上記実施形態では、連通部材3の連通流路30は空間によって構成されていたが、連通部材3の連通流路30の構成はこれに限定されない。例えば、
図9に示すように、連通部材3の連通流路30は、連通部材3内に形成された複数の気孔によって構成することができる。
【0084】
変形例13
上記実施形態のマニホールド2では、1つのマニホールド本体部23を仕切板24で仕切ることによって、ガス供給室21とガス回収室22とを画定しているが、マニホールド2の構成はこれに限定されない。例えば、2つのマニホールド本体部23によってマニホールド2を構成することもできる。この場合、1つのマニホールド本体部23がガス供給室21を有し、別のマニホールド本体部23がガス回収室22を有している。
【0085】
変形例14
上記実施形態の燃料電池セル10は、各発電素子部5が支持基板4の長さ方向(x軸方向)に配列されている、いわゆる横縞型の燃料電池セルであるが、燃料電池セル10の構成はこれに限定されない。例えば、燃料電池セル10は、支持基板4の第1主面45に1つの発電素子部5が支持された、いわゆる縦縞型の燃料電池セルであってもよい。この場合、支持基板4の第2主面46に一つの発電素子部5が支持されていてもよいし、支持されていなくてもよい。
【0086】
変形例15
上記実施形態では、本発明の電気化学セルを固体酸化物形燃料電池セル(SOFC)として用いているが、これに限定されない。例えば、本発明の電気化学セルを固体酸化物形電解セル(SOEC)として用いることもできる。このように、本発明に係る電気化学セルを固体酸化物形電解セルとして用いた場合、例えば、次のような効果を得ることができる。
【0087】
固体酸化物形電解セル10は、第1ガス流路43および第2ガス流路44の順に水蒸気ガスを流して、水素ガスと酸素ガスとを生成する。ここで、生成されて第2ガス流路44を流れる水素ガスが、発電素子部5よりも第1端部41側において、支持基板4内を流れて第1ガス流路43へと流れる。この結果、第1端部41側に配置された発電素子部5の燃料極6に供給される水蒸気ガスに水素ガスが混入し、燃料極6のニッケルが酸化することを抑制することができる。
【実施例】
【0088】
以下に実施例及び比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0089】
(試験A)
試験Aでは、距離Lに対するピッチp0の割合(p0/L)と、失火の有無との関係を確認した。まず、
図4に示すような形状のセルスタック装置100をサンプルNo.1〜16として作製した。なお、各セルスタック装置100において、燃料電池セル10の数は1つである。サンプルNo.1〜16において、距離Lに対するピッチp0の割合(p0/L)を変えている。各セルスタック装置100における燃料電池セル10の高さ(x軸方向の寸法)は50〜1000mm、幅(y軸方向の寸法)は10〜500mmとした。
なお、支持基板4の厚さ、及び気孔率は、燃料電池セルに一般的に用いられる支持基板と同程度(厚さ:1.5〜5mm程度、気孔率20〜60%程度)とした。なお、各サンプルにおいて、第1端面411と発電素子部5との距離Lに対する、隣り合う第1ガス流路43と第2ガス流路44とのピッチp0の割合(p0/L)以外の構成は、基本的には同じとした。
【0090】
(評価方法)
以上のように作製した各セルスタック装置100において、ガス供給室21を介して燃料電池セル10の第1ガス流路43に水素ガスを供給するとともに、燃料電池セル10を空気に曝した。水素ガスは、燃料電池セルに水素ガスを供給する際の一般的な範囲(5〜100kPa程度)の供給圧で供給した。そして、第1ガス流路43、連通流路30、第2ガス流路44の順で流れてガス回収室22に回収されたオフガスをガスバーナで燃焼させた。そして、定常運転(燃料利用率80%運転)から燃料利用率100%運転にパルス変動させ、燃料利用率100%運転を0.5秒間継続させたときのオフガス燃焼の火炎温度を測定することで失火の有無を確認した。なお、燃料利用率100%運転とは、発電素子部5まで到達した水素ガスが燃料電池セル10の発電に全て使用される運転を言う。また、ガスバーナに供給する空気量は、燃料利用率80%運転時のオフガス内の水素が完全燃焼する酸素量の2倍の酸素量を含むような量とした。この空気の流量は、燃料利用率80%運転時と燃料利用率100%運転時とで一定とした。
【0091】
【表1】
【0092】
表1に示すように、サンプルNo.1〜13において火炎温度は、600度以上を維持しており、失火は生じていなかった。一方、サンプルNo.14〜16では、火炎温度が低下し続けて測定が困難なため、失火が生じていると判断できる。以上の結果より、距離Lに対するピッチp0の割合(p0/L)を3.3以下とすることによって、失火を防止することができることが分かった。
【0093】
(試験B)
試験Bでは、試験Aで作製したサンプルNo.1〜16に対して、燃料利用率80%運転時の出力電圧を測定することによって、発電効率を評価した。その結果を表1に示す。なお、表1におけるp0/Lが1のとき、すなわち、サンプルNo.9における出力電圧を基準にし、これより5%以上低下したサンプルの評価を「×」とし、サンプルNo.9の出力電圧より5%以上低下していないサンプルの評価を「〇」とした。
【0094】
表1に示すように、サンプルNo.1〜2において発電効率が低く、サンプルNo.3〜16では発電効率が良好であることが分かった。この結果より、サンプルNo.3〜16のように距離Lに対するピッチp0の割合(p0/L)を0.020以上とすることによって、発電効率の低下を抑制できることができることが分かった。
【解決手段】電気化学セル10は、多孔質の支持基板4と、発電素子部5とを備えている。支持基板4は、少なくとも1つの第1ガス流路43と、少なくとも1つの第2ガス流路44とを有する。第1ガス流路43は、第1端部41から第2端部42に向かって延び、ガス供給室21と連通する。第2ガス流路44は、第2端部42側において第1ガス流路43と連通する。第2ガス流路44は、第2端部42から第1端部41に向かって延び、ガス回収室22と連通する。支持基板4の第1端部41側における第1端面411と発電素子部5との距離Lに対する、隣り合う第1ガス流路43と第2ガス流路44とのピッチp0の割合(p0/L)は、3.3以下である。