【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明ではタケノコの「稈の基部」と「生長途上の緑化した稈の部分」の特質を観察し、その観察結果から手段を得た。
【0011】
まず、タケノコの稈の基部を観察すると「その部分の細胞は硬化している・節間は伸長せず短かい・発根によって稈鞘が外側へ押されて離脱している・稈鞘は付け根から剥離しやすくなっていたため少し無理に剥がしてみたがタケノコへの影響は感じられない」等がみられた。
【0012】
さらに、150cm位まで生長しているタケノコの100cm位の位置において、少し緑化した稈の部分を観察すると「緑化し細胞が少し硬化している・稈の一部を切除してもタケノコは生長を続ける・タケノコの中間当たり数節分の稈鞘の縦半分を除去して残りの縦半分に自然光が当たるようにしたところ露出した稈の方向へ曲がってタケノコの先端が斜め30度位で地面を指した・稈鞘を除去して稈を露出させたところその部分の稈の生長が鈍ったのを確認した後で、今度はアルミホイルで遮光したら稈が再び生長した」等がみられた。
【0013】
前記のタケノコの特質の観察結果をまとめると「タケノコの根元の稈鞘は除去しても問題ない・稈鞘を除去しただけでは節間の生長はあまり抑制されない・光が当たると節間の生長が抑制される」となり、さらに、上記の「背景技術」で示した実験的結果をまとめると「節部の損傷は枯死の原因となる・稈鞘の除去は場合によっては稈の生長停止を起して枯死に至る・芽子を露出させるとほぼ枯死に至る」となる。
【0014】
そこで、タケノコの根元の稈鞘を数節分除去すると、その部分の稈とその次の節の稈鞘が露出し、その「稈、稈鞘の下部」に自然光が当たって稈の緑化と細胞の硬化を開始させると同時に稈鞘下部を透過した光は更に内側に隠れている数枚の稈鞘下部を透過し、そこに隠れている稈の緑化と細胞硬化も開始させることになり、このときの緑化と細胞硬化の開始は稈の生長を抑制して節間は伸びないことになる。
【0015】
したがって、タケノコの根元から先端へ向かって「稈鞘を1枚以上除去し、そこに現れた稈とその次の節の稈鞘下部に光を当てる」という一連の作業を繰り返し行っていくことで節間の短い稈が得られることになり、本発明の試験生産では節間が「5分の1以上」も可能であることが分かった。上述した従来技術の値では「5分の2」と「約3分の1」。
【0016】
本発明での稈鞘の「除去」に関しては、稈鞘を付け根から除去するとそこの節に傷が付きやすく稈が腐敗してタケノコが枯死に至ったりすることを回避するために稈鞘を適当な幅で縦方向に何本にもさいて花弁が開くように外側へ広げて「めくる」又は稈鞘の付け根の部分を残して「切除」の方法を用いる。
【0017】
次に、稈鞘を何本にも「さいた」ときの一本一本を「さいた稈鞘」とする。
【0018】
稈鞘を「めくる」の方法で、例えば、さいた稈鞘を外側へ少し広げた状態(斜めに立った状態=稈の所まで光が少し入る状態)にめくる場合は、斜めに立った状態ではさいた稈鞘が「自然に広がってその形を維持できない」ことがあり、あるいは、例えば、最大に広げた状態(垂れ下がった状態)にめくる場合は、各節のさいた稈鞘が重なり合うため稈の方へ「光や風が入りにくい」ことがある。
【0019】
前記の「自然に広がってその形を維持できない」は、さいた稈鞘下部の柔らかさが原因で起こるものであり、さいた稈鞘が自然に広がる場合はその広がりを防止するために「広がり防止具」としてさいた稈鞘の上部外側に紐などを掛ける。
【0020】
しかし、さいた稈鞘を「斜めに立った状態」に広げたときの全形を横からみると「じょうご状(花が半開したような状態)」に下方へすぼんだ形になっており、この「すぼみ」が原因で広がり防止具が「ずれ落ち」て斜めに立った状態を維持できないため、その解決策として「さいた稈鞘に曲がりをつけてから広げる」という方法を用いる。
【0021】
「さいた稈鞘に曲がりをつけてから広げる」の方法を用いることで、例えば、さいた稈鞘とさいた稈鞘の間から稈が少し見える程度に広げた場合、その曲がりによって
図3のように曲がりをつけたさいた稈鞘3aの上部がタケノコと並行又は並行に近い状態になるため「すぼみ」が解消されて広がり防止具5がずれ落ちにくくなる。
【0022】
また、さいた稈鞘を外側へ「最大に広げた状態(垂れ下がった状態)」にめくる場合は各節のさいた稈鞘が重なり合うため稈の方へ「光や風が入りにくい」という問題が発生しやすく、このような場合もさいた稈鞘に曲がりをつけておくと効果的。
【0023】
広がり防止具5には、紐やテープなどを一周させて結んだ輪、リング状のもの、筒状のもの、袋の底を切り取ったような状態のもの等を用いる。
【0024】
「さいた稈鞘の曲がりのつけ方」としては、例えば、稈鞘を何本にもさいてから
図1のようにさいた稈鞘3をさく前のようにタケノコに密着させ、その上部を縛り(紐4などで)、縛った部分を手で握ってさいた稈鞘3を一斉に下方へずらす。この結果さいた稈鞘3は
図2のように尺取虫のように「たわんだ状態」になり、さいた稈鞘3に一斉に曲がりをつけることができる。数節分のさいた稈鞘をまとめて縛ってたわませることもできる。
【0025】
図2のさいた稈鞘3をたわませた状態で形がつくまで放置してから、さいた稈鞘3を縛っている紐4などを外すと、曲がりのついたさいた稈鞘3aができる。
【0026】
あるいは、さいた稈鞘の下部とタケノコとの間に「詰め物」を挟んでからさいた稈鞘の中間あたりを紐などでタケノコに縛るとさいた稈鞘が一斉にたわんで
図2と同様な状態になって曲がりをつけることができる。
【0027】
前記の「詰め物」には、ビニールや布その他の物をドーナツ状に丸めたもの、ドーナツ状のもの、中空のドーナツ状のもの、ドーナツ状盤の内側や外側の縁の部分がL字形やT字形になったもの(L字形やT字形の横線の部分を円弧にしてもよい)等を用いる。
【0028】
曲がりのついたさいた稈鞘を少し広げた状態にする場合は、
図3のように曲がりをつけたさいた稈鞘3aの上部外側を広がり防止具5で取り囲んでそれ以上に広がるのを防ぐ。
【0029】
一つの広がり防止具5で数節分(数枚分)の稈鞘をまとめて行ってもよい。
【0030】
次に、稈鞘を切除する場合は、稈鞘の付け根の部分を残して切除する。例えば、節より5cmの所(高さ)で切り取ってもよい。
【0031】
以上の「さいた稈鞘に曲がりをつけてから広げる」の方法を稈鞘の柔らかい部分に用いて稈を露出させる作業を「タケノコの根元、又は途中から先端へ向かって時間をおいて繰り返し行っていく」。
【0032】
次に、稈鞘をめくるときに、稈鞘が稈を一周以上も取り巻いて二重になった部分があるから、必要に応じて二重の部分の片方を切除して一重にする。
【0033】
次に、同じ地下茎でつながっていると思われるタケノコで本発明を実施していないタケノコは伐採することを基本とする。
【0034】
次に、前記の「稈鞘を適当な幅で縦方向に何本にもさいて花弁が開くように外側へ広げて「めくる」」を施した稈鞘は自然離脱に任せるか、少し萎れてきたら付け根の部分を残して「切除」してもよい。
【0035】
前記の「稈鞘の付け根の部分を残して「切除」」を施した後にできる切り口や露出した稈には雨が掛からないように雨避けをする。
【0036】
次に、竹の枝になる「芽子」のある節の稈鞘に関しては、芽子が十分に隠れる幅で稈鞘を残して芽子を保護しそれ以外の部分は前記の方法で「めくる、又は切除」する。
【0037】
芽子を保護するために残している稈鞘を短くしたいときは、芽子がある程度生長しないと頭が出ない程度の十分な長さを残して切除する。
【0038】
次に、露出させた稈に当てる「光」に関しては「直射日光以外の自然光」又は「人工光」を用いる。直射日光は白色の「プラスチック板・ビニール波板・布・ビニールシート」や黒の遮光シートなどを透過させて用いる。
【0039】
光の当たる時間が長いほど稈は緑化し細胞は硬化して生長が抑制されるため、光の当て方は「昼間だけ自然光を当てる」又は「昼間は自然光、夜間は人工光を当てる」又は「トタンや布やシートなどでタケノコ全体を覆い、その中で人工光を昼夜を通して当てる」を選択して用いる。
【0040】
次に、直立から屈曲までの形の稈を得るには、タケノコの稈鞘はギプスの役割をして稈が簡単には曲がらないが、本発明では稈が露出した状態になるため稈が曲がりやすく自ら曲がったりするので、タケノコの一か所以上の場所に「紐や針金を掛けて引っ張る・棒で押す・アルミホイルや黒い布や黒いビニールシートなどの遮光物で必要箇所の縦半分を遮光して光の明暗で稈の曲がりをコントロールする」の方法で目的の形の稈に整形する。
【0041】
次に、稈の保湿に関しては、稈を露出させると乾燥によって稈の表面に傷が生じることがあるから、これを防止するために天候次第で白色または透明なビニールなどの保湿物で露出した部分の稈、又はタケノコ全体を覆って保湿する。
【0042】
次に、雨に関しては、雨水が掛かると稈や稈鞘を切除した部分にカビや腐敗菌などか繁殖してタケノコを枯死させることがある。その防止にビニール波板・ビニールシート・プラスチック板などで覆って雨が掛かるのを防ぐ。