(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6586550
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】撮像装置とその駆動方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20190919BHJP
【FI】
A61B6/03 321A
A61B6/03 331
【請求項の数】27
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-242594(P2018-242594)
(22)【出願日】2018年12月26日
【審査請求日】2019年4月23日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】711002269
【氏名又は名称】雫石 誠
(72)【発明者】
【氏名】雫石 誠
【審査官】
伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−66690(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0256099(US,A1)
【文献】
特開2009−183559(JP,A)
【文献】
特開2006−68534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 − 6/14
A61B 1/00 − 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出器、該検出器を駆動及び該検出器の出力信号を処理する検出器制御信号処理回路、及び該検出器の出力信号を記録する画像メモリ、及び体軸方向を中心軸として回転する回転部を有するガントリ、該ガントリを載せる架台、及び該ガントリから得られた画像データを処理表示する制御部からなる撮像装置であって、該架台上において該ガントリを該中心軸の方向に移動させる駆動部を有し、該回転部には光源、光源駆動制御回路、これらを駆動するための二次電池、及び回転部インターフェースを内蔵し、かつ該架台はホストインターフェースを有し、該ガントリの該架台上における移動範囲内の所定位置において該回転部インターフェースと該ホストインターフェースが互いに対向する構造からなる撮像装置。
【請求項2】
前記所定位置が前記ガントリの前記移動範囲内の終点にある請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記回転部インターフェースと前記ホストインターフェースが互いに鉛直方向に近接し対向する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記回転部インターフェースと前記ホストインターフェースが互いに前記中心軸方向に近接し対向する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記回転部インターフェースと前記ホストインターフェースが前記所定位置において機械的に接触することにより電気的に接続する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記回転部インターフェースと前記ホストインターフェースが前記所定位置において近接し電磁場の相互作用により電気的に接続する非接触のインターフェースである請求項1に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記ガントリを前記中心軸方向に移動させるための前記駆動部を前記ガントリの内部に有する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記回転部を回転させる駆動モータを前記ガントリの内部に有する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記架台の上部であって前記所定位置にクレードルを有し、かつ該クレードルに前記ホストインターフェースを有する請求項4に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記クレードルに前記回転部の検査と校正に供する検査プローブ、或いは標準サンプルを保持するための保持手段を前記クレードルに設けた請求項9に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記光源がX線光源であって、該X線光源における電子ビーム発生部がカーボンナノ構造体から構成された請求項1に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記回転部の内部に前記検出器制御信号処理回路、前記画像メモリ、及び前記中心軸を挟んで前記光源に対向する位置に前記検出器を有する請求項1に記載する撮像装置。
【請求項13】
前記回転部の外周を取り巻く前記ガントリの内周部の全周に亘って前記検出器を配置した請求項1に記載する撮像装置。
【請求項14】
前記検出器が光電子倍増管型検出器、アバランシェホトダイオード型検出器、又はフォトンカウンティング型検出器のいずれかである請求項12又は請求項13に記載の撮像装置。
【請求項15】
前記回転部の外周部にN極とS極が交互に並ぶように配置した永久磁石を有し、かつ前記回転部の周囲を取り囲む前記ガントリの円周に沿って複数の誘導コイルを配置した請求項12、又は請求項13に記載の撮像装置。
【請求項16】
前記回転部の外周部に沿って複数の誘導コイルを配置し、かつ前記回転部の周囲を取り囲む前記ガントリの円周部に沿ってN極とS極が交互に並ぶように永久磁石を配置した請求項12、又は請求項13に記載の撮像装置。
【請求項17】
前記回転部の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する回生ブレーキ回路を前記誘導コイルに接続した請求項15又は請求項16に記載の撮像装置。
【請求項18】
前記回生ブレーキ回路に電気二重層キャパシタを有する請求項17に記載の撮像装置。
【請求項19】
前記ガントリの前記体軸方向の移動、或いは前記ガントリの撮像動作を制御する制御信号を無線通信により送受信する無線インターフェースを前記制御部と、少なくとも前記ガントリ、前記架台、或いは前記クレードルのいずれかに有する請求項1又は請求項9に記載の撮像装置。
【請求項20】
被験者、或いは測定対象物を載せるための保持手段を前記架台と一体的に形成した請求項1に記載の撮像装置。
【請求項21】
前記ガントリの前記体軸方向における移動を補助するためのガイドレールを前記架台に設けた請求項1に記載の撮像装置。
【請求項22】
前記ガントリの移動中に、前記ガントリが被験者、或いは被測定物に接触することを防止するための保護カバーを前記ガントリの移動方向に沿って前記架台に有する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項23】
少なくとも前記光源、前記検出器、前記画像メモリ、前記二次電池のいずれかが回転部から着脱可能なモジュール構造からなる請求項1、請求項12、或いは請求項13のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項24】
前記ガントリに加え、さらに第二のガントリを前記架台の上部に有する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項25】
請求項1に記載の撮像装置の駆動方法であって、前記ガントリの前記中心軸方向の移動を前記所定位置において停止し、前記回転部インターフェースを介し前記ホストインターフェースから前記二次電池に電力を供給し前記二次電池を充電する撮像装置の駆動方法。
【請求項26】
請求項1に記載の撮像装置の駆動方法であって、前記ガントリの前記中心軸方向に移動開始後、被検体を透過した光信号を前記検出器により電気信号に変換し、該電気信号を前記画像メモリに記録しながら前記回転部を回転させ、前記ガントリの前記中心軸方向の移動を前記所定位置において停止し、前記画像メモリに記録された電気信号を、前記ホストインターフェースを介し読み出す撮像装置の駆動方法。
【請求項27】
請求項17又は請求項18に記載の撮像装置の駆動方法であって、前記ガントリの前記中心軸方向に移動開始後、前記回転部を回転させながら前記光源から出射した光を前記検出器により電気信号に変換し、該電気信号の前記画像メモリへの記録終了後、前記回転部の回転を減速させる工程において、前記誘導コイルに生ずる逆起電力を、前記回生ブレーキ回路を介し前記二次電池又は前記電気二重層キャパシタに充電する撮像装置の駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンピュータトモグラフィー装置等の撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置、例えばX線コンピュータトモグラフィー装置(CT)は、撮像対象物の周囲を回転する回転部を含むガントリ、ガントリの内側を通過するように被験者を載せた寝台を体軸方向に前進又は後退させる寝台移動装置、回転部と電気的接続を可能にするスリップリング、及びスリップリングを介し外部に転送された画像データを処理する画像描出部等を含む操作及びモニター部等から構成されている。回転部の内部には、多数の撮像素子の集合体からなる検出器、検出器からの信号を処理する回路基板、被験者等の撮像対象物を挟んで対向する位置にあるX線発生部、冷却ファン、高電圧電源回路等が内蔵されている。CTは大型、高重量かつ高額な画像診断機器であって、CT本体を設置する建物、電源、及び空調設備等の設置費用に加え、常時機器の性能を最適に保つための維持管理費も大きな負担となっている(特許文献1乃至特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−244330
【特許文献2】特開平2−224746
【特許文献3】特開2001−258873
【特許文献4】特開2005-516343
【特許文献5】特開平4−22100
【特許文献6】特開平11−188029
【特許文献7】特開2016−107062
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
X線CT等の撮像装置を小型・低価格化することにより、広く世界の健康維持に寄与する。特に癌その他の疾病を早期に発見し、増大する医療費を削減することが望まれる。開発途上国、その他遠隔地や過疎地域にあっても、最新かつ高水準の医療サービスを提供することにより、自然災害や地域紛争の結果生じた貧困や格差を解消する。解決すべき課題について以下に詳しく説明する。
【0005】
CTの大型化、或いは高額化する要因には、様々な技術的課題があり、未だ有効な打開策が見出されていない。従来のCTの小型化を阻害する要因の一つは、ガントリの小型・軽量化が困難な点にある。ガントリ内の回転部の内径は、人体が余裕をもって体軸方向に移動し通過できる程度の内径寸法、例えば80cm以上の内径が求められる。X線源や検出器等を搭載するため、ガントリの外径は100cmを超える。また検出器、検出器信号処理回路、X線源、X線源駆動制御回路、空冷ファン等がガントリ内で回転する構造が一般的である。しかし、X線源、X線源駆動制御回路、空冷ファン等は高重量であり、これらを直径80cm以上の円周上で1〜2回転/秒の速度で回転させる場合の慣性モーメントや重量物の回転に伴う振動、騒音等を抑制し装置全体に及ぼす弊害を最小限にする必要がある。被験者を体軸方向に移動させるため、被験者を載せた寝台を定められた速度で前進又は後退させる必要がある。被験者の多様性、即ち体重の幅(数キログラム〜200キログラム)を考慮すると、寝台移動手段もこのような重量範囲をカバーできる堅牢性と寝台の安定移動を確保する必要があり、装置全体がさらに大型化・高重量化することになる。
【0006】
また検出器等がガントリの内部で体軸方向を中心に毎秒1〜2回転程度の速度で回転する。そのため、検出器等の出力信号を外部に読み出すためにスリップリングと呼ばれる機械的接触手段により信号の送受信、或いは電力の授受を行っている。スリップリングによる電気的接続を確実にするには、回転数を低く抑え、かつ検出器からの出力信号線本数を少なくする必要がある。信号線本数を少なくするためには、パラレル信号をシリアル化しスリップリングを介し読み出す方法が採用されている。しかし、大量の撮像データをシリアル伝送すると伝送周波数が上昇するため、高速のラインバッファ素子など専用半導体素子を開発する必要があり、さらに伝送周波数の上昇に伴う消費電力や発熱の増大も避けられない。また、近年、X線被ばく量の低減が強く求められており、その解決策として、一度のX線パルス照射により広い領域を露光しなければならず、その結果、ガントリの高重量化に加え、X線発生装置の大型化が避けられない。同時に体軸方向の受光領域(即ちスライス数)を拡大する必要があり、使用する検出器の受光面積或いは画素数の増大を伴い、さらに高速かつ大容量のデータ伝送と外部の記録媒体への高速リアルタイム記録が求められる。例えば、スライス数が64の場合、1Gbytes/sec以上のデータ処理速度が求められる。大量のデータをリアルタイムで高速記録するには、例えば、RAID(Redundant Arrays of Independent Disks)のような複数台のハードディスクを組み合わせて使用する方策が取られているが、その記録速度は800Mbytes/sec以下のため、何らかのデータ圧縮も必要になる。
【0007】
電力の授受については、特にX線源等対する電力供給が問題となる。近年、スライス幅の拡大に伴い、X線源の大型化、即ち管電流の増大に伴い高電圧発生回路等を含むX線源駆動制御回路に供給する電流量も増大する傾向にある。その結果、スリップリングは、ブラシに対し高速かつ滑らせながら大きな電流を流す必要があり、接触面が発熱し焼き付きの原因となる。そのため、スリップリングやブラシの表面研磨や部材の定期的交換等のメンテナンスが必須となっている。このように、被験者を移動させる寝台やガントリ部等の小型・軽量化が難しく、CTの運搬、移設が困難である。さらに設置するための建屋や床の強度、或いは空調設備を含めた専用の電源設備等にも特別な設計仕様が求められる。このように、CTを導入する場合のコストは、装置自体の導入費用に加え、建屋や空調・電源設備等に要する建築費用、さらには一年を通し装置及び建屋全体の温湿度等の維持管理費や定期的メンテナンス費用等の経費負担の軽減が求められる。
【0008】
上記の解決すべき課題に加え、近年、X線CT等の利用機会が増えるにつれ、被験者のX線被ばくに対する懸念が高まっている。そのため、X線被ばく量を削減することも本発明における解決すべき課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る撮像装置、例えばCTは体軸方向を中心軸として回転する回転部を有するガントリ、ガントリを載せる架台、及び該ガントリから得られた画像データを処理表示或いは撮像装置を操作する制御部から構成され、かつ架台に対しガントリを中心軸の方向に移動させる駆動手段を有し、さらに回転部には光源、光源を駆動する光源駆動制御回路、回転部インターフェースを有し、架台にはホストインターフェースを有し、ガントリの移動範囲内の所定位置において回転部インターフェースとホストインターフェースが互いに対向する構造とする。好適には、所定位置がガントリの移動範囲の終点にあるようにする。また、回転部インターフェースとホストインターフェースが互いに鉛直方向に近接し対向させる。或いは、回転部インターフェースとホストインターフェースが互いに中心軸方向に近接し対向させる。
【0010】
回転部インターフェースとホストインターフェースが所定位置において機械的に接触することにより電気的に接続するようにする。或いは、回転部インターフェースとホストインターフェースが所定位置において互いに近接し非接触状態において電磁場の相互作用により電気的に接続する非接触インターフェースとする。
【0011】
ガントリを中心軸方向に移動させるための駆動手段をガントリの内部に設ける。また、回転部を回転させる駆動モータをガントリの内部に設ける。
【0012】
架台の上部であって所定位置にクレードルを有し、かつクレードルにホストインターフェースを設ける。さらに、クレードルに回転部の検査・校正に供する検査プローブ、或いは標準サンプルを保持するための保持手段をクレードルに設ける。好ましくは、所定位置において回転部を冷却するための冷却機構をクレードルに有する構造とする。
【0013】
回転部の内部には、光源、光源を駆動する光源駆動制御回路に加え少なくとも中心軸を挟んで光源に対向する位置に検出器を有し、さらに検出器を駆動及び検出器の出力信号を処理する検出器制御信号処理回路、検出器の出力信号を記録する画像メモリ、及びこれらを駆動するための二次電池を内蔵させる。好ましくは、二次電池にはリチウムイオン電池を用いる。また、画像メモリには大容量の半導体メモリ、例えば、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、NAND型フラッシュメモリ等の不揮発メモリを用いる。光源はX線光源、或いは近赤外(NIR)光源とする。好ましくは、光源がX線光源であって、X線光源における電子ビーム発生部をカーボンナノ構造体により形成する。検出器は、好ましくはシリコン半導体検出器であって、かつ該シリコン半導体検出器にはAD変換回路が形成された構造とする。好ましくは、検出器を光電子増倍管型検出器、アバランシェホトダイオード(APD)型検出器、又はフォトンカウンティング型検出器のいずれかとする。さらに好ましくは、検出器の上部に放射線遮蔽光ファイバープレート、或いは放射線遮蔽光ファイバープレートの上部にさらに放射線シンチレータを積層した構造とする。
【0014】
回転部の外周部にN極とS極が交互に並ぶように配置した永久磁石を配置し、かつ回転部の周囲を取り囲むガントリの円周に沿って複数の誘導コイルを配置する。或いは、回転部の外周部に沿って複数の誘導コイルを配置し、かつ回転部の周囲を取り囲むガントリの円周部に沿ってN極とS極が交互に並ぶように永久磁石を配置する。好ましくは、回転部の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する回生ブレーキ回路を誘導コイルに接続する。また、電気二重層キャパシタを回生ブレーキ回路に設ける。
【0015】
ガントリの体軸方向の移動、或いはガントリの撮像動作を制御する制御信号を無線通信により送受信する無線インターフェースを撮像装置の制御部と、少なくともガントリ、架台、或いはクレードルのいずれかに設ける。また、第二のガントリを架台の上部に追加する。
【0016】
被験者、或いは測定対象物を載せ、又は保持するための寝台等の保持手段を架台と一体的に形成した構造とする。また、ガントリの体軸方向における移動を補助するためのガイドレールを架台に設ける。また、ガントリの移動中に被験者或いは被測定物がガントリに接触することを防止するための保護カバーをガントリの移動方向に沿って架台に設けた構造とする。少なくとも光源、検出器、画像メモリ、二次電池のいずれかが回転部から着脱可能なカートリッジ構造とする。
【0017】
ガントリの中心軸方向に移動開始後、被検体を透過した光信号を検出器により電気信号に変換し、電気信号を画像メモリに記録しながら回転部を回転させ、電気信号の画像メモリへの記録終了後、ガントリの中心軸方向の移動を所定位置において停止し、回転部インターフェースからホストインターフェースを介し画像メモリに記録された電気信号を読み出す撮像装置の駆動方法とする。
【0018】
ガントリの中心軸方向に移動開始後、光源から出射した光を検出器により電気信号に変換し、電気信号を画像メモリに記録しながら回転部を回転させ、電気信号の画像メモリへの記録が終了した後、回転部の回転を減速させる工程において、誘導コイルに生ずる逆起電力を、回生ブレーキ回路を介し二次電池又はキャパシタに充電する撮像装置の駆動方法とする。
【0019】
ガントリの中心軸方向の移動を所定位置において停止し、回転部インターフェースを介しホストインターフェースから二次電池に電力を供給し二次電池を充電する上記撮像装置の駆動方法とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、撮影装置の小型・軽量化、及び低消費電力化が実現し、撮像装置を設置するスペース、建物及び電源、空調設備等の建設コストを大幅に削減できる。加えて、必ずしもガラス基板を使用した大面積TFT検出器を必須とせず、高感度の検出器を使用できるので、被験者の放射線被ばく量を低減することが容易になる。さらにスリップリングやブラシ等を不要としたので、定期的な部品交換やメンテナンス等の常時機器の性能を最適に保つための年間維持経費を大幅に削減できる。また、目的に応じてガントリ部のみ、或いは光源部や検出器カートリッジを交換することにより、整形外科、循環器科、消化器科領域における各種X線画像診断装置、CT、PET等を全て設置するまでもなく、本発明に係る撮像装置一台において異なる医療分野における診断が実現する。また、病院内の手術室や入院病棟であっても、事故等で運び込まれた救急患者或いは重症患者等が検査室まで移動せずに医師がベッドサイドで迅速に初期診断と治療方針を決定することが容易になる。このように撮像装置の小型・軽量化、及び低消費電力化により、一般車両等により移動可能なCT等の実現し、遠隔地や災害発生地域等における迅速かつ的確な初期診断が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】(a)は第一の実施例に係る撮像装置100のX軸方向からみた側面図であり、(b)は同じくY軸方向からみた平面図であり、(c)は同じくZ軸方向から見た平面図である。
【
図2】(a)は撮像装置100のガントリ5の内部にある回転部23の内部構造を説明するためのZ軸方向から見た平面図であり、(b)は回転部23の内部、特に検出器とその周辺回路を説明するための回路構成図である。
【
図3】(a)は撮像装置100のガントリ内部にある回転部23の内部、特にX発生部と高電圧駆動回路を説明するための回路構成図であり、(b)は、本発明の撮像装置の駆動方法を説明するためのフローチャートである。
【
図4】(a)は第二の実施例に係る撮像装置200のX軸方向からみた側面図であり、(b)は非接触インターフェース部(10及び12)におけるワイヤレス給電部分の回路構成を説明するためのブロック図である。
【
図5】(a)は第三の実施例に係る撮像装置300の特にガントリ5の内部の回転部23をZ軸方向からみた平面図であり、(b)及び(c)は、(a)における破線部分39における回転部23の外周とこれを取り囲むガントリ5の内周における電磁誘導を説明するための一部拡大図である。
【
図6】(a)は撮像装置300のガントリ内部にある回転部23の内部、特に回生ブレーキを説明するため回路構成図であり、(b)は回生ブレーキを用いた場合の撮像装置の駆動方法を説明するためのフローチャートである。
【
図7】(a)は回転部23の変形例を説明するためのX軸方向から見た断面構造図であり、(b)は回転部23の他の変形例を説明するためのZ軸方向から見た平面図であり、(c)は、第四の実施例に係る撮像装置400のX軸方向からみた側面図である。
【実施例】
【0022】
本発明では、ガントリの移動方向或いは所謂「体軸方向」をZ軸、Z軸に垂直な面をX−Y平面と定義する。第一の実施例に係る撮像装置100(例えばX線CT)について、
図1乃至
図3を用いて以下に説明する。
図1(a)は、第一の実施例に係る撮像装置をX軸方向から見た側面図である。撮像装置100は、架台7、及びこれを支える架台支持部(9−1、9−2)、その上部にZ軸方向に移動可能なガントリ5が載せられた構造からなる。後述するように、ガントリ5の内部には回転可能な回転部23があり、その回転中心軸1が図示されている。なお、図示していないを操作・制御部及び表示(モニター)部があり、画像描出回路及びソフトウエア等により再構成された断層像等がモニター上に表示される。ガントリ5をZ軸方向に移動させるための駆動部及び車輪15を内蔵したガントリ移動台車11がガントリ5の下部に取り付けられている。また、以下に詳述するように、ガントリ内の回転部23と架台7との間において電気信号又は電力の授受を行う電気的接続手段が架台の上部(2−1)とガントリ内の回転部側(図示せず)に有する。被験者その他の測定対象物を載せるために寝台3がガントリ5の中空部内をZ軸方向に挿入されている。撮影中はガントリ5のみがZ軸方向に移動し、被験者は寝台3と共に寝台3の上で静止しているので、堅牢かつ精密な被験者移動制御手段は不要である。そのため、撮像装置100自体の軽量化が可能になる。後述するように、ガントリの体軸(Z軸)方向における撮像走査速度を高速化しても、被験者の身体的・精神的負荷や不安を回避できる効果も有する。
【0023】
図1(b)は、撮像装置100をY軸方向から見た平面図である。ガントリ5が架台7の上を移動するためにガントリ移動用レール13が架台7の上部に2本設けられている。ガントリ移動用レール13及び車輪15が金属等の導電性材料であれば、ガントリ移動台車11の内部にある駆動用モータ17に電力を供給し、或いはガントリ移動台車11との間において制御信号等の授受が可能になる。上述の如く、ガントリ内の回転部23と架台7との間において電気信号又は電力の授受を行う電気的接続手段であるホストインターフェース2−1を架台の上部、即ちガントリ5の移動範囲の終点にある所定位置に配置している。本実施例では、寝台3が架台支持部9−1、及び9−2の上部に取り付けられているが、取り外すことも容易である。そのため、寝台3の代わりに他の形状の被験者保持手段を用いても良い。また、寝台3を取り除いて、ガントリ3を架台7から取り外すことも容易であるため、ガントリ5のメンテナンスや交換にも好都合であり、さらに異なる撮像特性、例えば、光源エネルギー(波長)の異なる光源を搭載したガントリに取り換えることも容易になる。
【0024】
図1(c)は、撮像装置100をZ軸方向から見た平面図である。ガントリ5の内部には、回転中心軸1の周囲を回転する回転部23がベアリング(図示せず)等を介し取り付けられている。さらに回転部23を回転させるためのタイミングベルト21がガントリ移動台車11の内部にあるガントリ回転モータ19に取り付けられている。また、回転部23は、回転部インターフェース2−2を有しているので、回転部23の静止時においてホストインターフェース2−1と対向する位置において電気的に接続することができる。なお、好適にはホストインターフェース2−1と回転部インターフェース2−2が対向する位置で停止するようにするため、ホール素子等を用いた位置センサ等を使用することができる。また、ガントリ5をZ軸方向に移動させるためのガントリ移動台車駆動モータ17をガントリ移動台車11の内部に有している。駆動のための電源は、既に説明したように、ガントリ移動用レール13から供給することもできるが、ガントリ移動台車11の内部に二次電池を内蔵することもできる。また、ガントリ5をZ軸方向に移動させるための移動手段として、後述するように(
図4(a)等)、架台支持部9−1或いは9−2側からけん引する構造であってもよい。本構造により、ガントリ内の回転部23の回転手段を移動可能なガントリ移動台車11等に配置したので、従来と異なり、ガントリ部を撮像装置本体に固定させる必要が無く、ガントリ部の移動、取り外し等が容易になる。
【0025】
図2を用いて、撮像装置100の構造、特に回転部23の構造を詳しく説明する。
図2(a)は、撮像装置100のガントリ5の内部にある回転部23の内部構造を説明するZ軸方向から見た平面図である。回転部23の内部には、光源、例えばX線発生部25、高電圧制御回路29、検出器アレー31、検出器周辺回路33、画像メモリ35、二次電池27、回転部インターフェース2−2を有する。即ち、X線発生部25から出射されたX線ビーム26が寝台3に載せられた被験者(図示せず)を透過し、検出器アレー31に到達する。なお、回転部の回転時における重量バランスを調整する重量バランス調整部を設けてもよい。好適には、X線発生部25にカーボンナノチューブ(CNT)等のカーボンナノ材料を電界電子放出源とするX線発生装置を用いる。カーボンナノ材料を冷陰極材料として用いているので、予熱が不要であり従来のX線管を用いた場合に比べ、小型・低消費電力化が可能になり、高電圧制御回路29の小型化や冷却ファンの小型化或いは冷却ファンそのものを不要にできるからである。なお、本実施例では、回転部23の内部に検出器アレー31が内蔵されている構造について説明したが、検出器アレー31が回転部23の内部ではなく、回転部23を取り巻くガントリ5の内周部の全周に亘って配置した構造(図示せず)であってもよい。この場合には、検出器周辺回路の一部、画像メモリ、ガントリ部インターフェース等がガントリ移動台車11の内部に配置される。
【0026】
図2(b)は回転部23の内部、特に検出器31とその周辺回路33を説明するための回路ブロック図である。
図2(a)における周辺回路33には、
図2(b)に示すように検出器駆動制御回路41、信号増幅・アナログデジタル(AD)変換回路43、信号走査・制御回路45、デジタル信号処理回路47、パラレルシリアル変換回路49等を含んでいる。図示するように、検出器アレー31には、複数の検出器ユニット30が円弧状に、或いはスライス数を増やすためにZ軸方向にも規則的に並んでいる。検出器ユニット30には、例えば、小型の電子増倍型検出器(ホトマル)やアバランシェ効果(APD)を利用した増幅型検出器、フォトンカウンティング型検出器等を用いることができる。また、アナログデジタル(AD)変換回路をオンチップ化したCMOS型或いはCCD型検出器を使用することができるので、高速かつ低ノイズの読み出しが実現する。或いは、複数の検出器アレーの位置合わせ精度が高く、軽量化が容易なCMOS型検出器を使用することもできる(例えば、特許文献7)。これらの検出器ユニットは高感度、或いは低ノイズであるため、必ずしもスライス数の多い大面積の検出器ユニット、例えばガラス基板上にTFTを積層した検出器等を必要としない。そのため、X線照射(被ばく)量を減少させ、或いは短時間パルス照射によるZ軸方向の高速走査が容易になる。また、後述するように、X線照射面積を拡大する必要がないので、X線発生部に必要な高電圧電流を増大させることもない。また回転部23のZ軸方向の薄型化による軽量化に加え、特に電界電子放出源として使用するカーボンナノ材料の安定性や耐久性を向上させることができる。
【0027】
検出器アレー31から出力される検出器信号は、信号増幅・AD変換回路43によりデジタルデータ(例えば16ビット)に変換され、信号走査・制御回路45を経由してデジタル信号処理回路47に送られ必要な画像処理が加えられる。デジタル信号処理回路47から送られた画像データを直接記録するために回転部23の内部に画像メモリ35を内蔵している。パラレルシリアル変換せずに直接画像メモリ35に記録することができるので、高速書き込みが可能になる。画像メモリ35には、磁気記録媒体も使用できるが、記録速度、及び信頼性の観点から、DRAMやNAND形フラッシュメモリ等の半導体メモリが好適である。他方、撮像終了後であって、回転部23の回転及びガントリ5の移動停止後に画像データを画像メモリ35から読み出す場合には、撮像時と異なりリアルタイムで読み出す必要がないので、パラレルシリアル変換回路49により、シリアルデータとして、ホストインターフェース2−2に出力すれば良い。シリアル化することにより、ホストインターフェース2−2における端子数を減らせる効果も有する。ホストインターフェース2−2と回転部インターフェース2−1からなる電気的接続手段においては、回転部23の回転部インターフェース2−1の内部に複数のコネクタ6があり、その形状が凹状の受け構造である。他方、架台7上部におけるホストインターフェース2−2の側にはコネクタ4が複数あり、その形状は凸状である。コネクタ4をコネクタ6に挿入することにより電気的接続が可能になる。このように、機械的電気接点であるスリップリングを使用せず、回転部23の静止時おいて内部に記録・蓄積した画像データを回転部インターフェース2−1からホストインターフェース2−2に読み出す。そのため、上述のスリップリング使用時の弊害を解消でき、かつ回転部23の高速回転、例えば毎秒5回転以上の高速化回転も容易になる。このように、回転部5の軽量化と回転部5の回転速度の高速化により、ガントリ5を体軸(Z軸)方向に高速移動できるため、スライス数を増やすことなく、X線被ばく量を軽減することができる。
【0028】
図3(a)は撮像装置100の回転部23の内部にあるX線発生部25と光源駆動回路29を説明するための回路構成図である。X発生部25は、カーボンナノ材料電子ビーム発生冷陰極25Cと陽極ターゲット25Aから構成されている。光源駆動回路29は、電圧昇圧回路29−1と高電圧制御回路29−2から構成されている。好適には、光源駆動回路29は、スイッチング電源及びパワー半導体を用いることにより、トランスレスの小型・軽量・低消費電力の高電圧電源部とする。二次電池27には、例えば、リチウムイオン電池を用いることができる。このように、リチウムイオン電池27の直流電圧を光源駆動回路29により昇圧し、かつタイミングコントロールされた高電圧パルスをX線発生部25に印加することができる。なお、リチウムイオン電池27は、図示していない電池残量検知回路及び充電回路により、回転部23の静止時において回転部インターフェース2−2とホストインターフェース2−1を介し充電される。
図3(b)は、本実施例の撮像装置100の駆動方法を説明するためのフローチャートである。図示するように、ガントリ5の移動及び回転部23の回転を開始後、X線照射による撮像が開始される。検出器アレー31から得られたデジタルデータはリアルタイムで画像メモリ35に記録される。
図2(b)に示したように、デジタルデータは、パラレルシリアル変換するまでもなく、パラレルデータのまま画像メモリ35に記録することができる。撮像終了後、ガントリは所定位置に停止し、回転部インターフェース2−2からホストインターフェース2−1を介し画像メモリ35に記録されたデータが読み出され、操作・制御部において画像の再構成処理後、モニター上に表示される。また、並行してリチウムイオン電池27を充電する。
【0029】
図4(a)は、第二の実施例に係る撮像装置200のX軸方向からみた側面図である。第一の実施例と異なる部分について以下に詳述する。
図4(a)に示すように、撮像装置200には、架台7からY軸方向に直立する部分9−3があり、これをクレードルと呼ぶ。クレードル9−3は、ガントリ5を待機させるスペース(破線部37)があり、ガントリ5の回転部23の回転部インターフェース2−2が非接触のインターフェース構造12から構成され、ホストインターフェース2ー1が非接触のインターフェース構造10から構成されている。これらは互いに対向して近接した状態で非接触の給電、即ち回転部23の内部のリチウムイオン電池への充電、及び回転部23とホスト側との間でデータや信号の授受を行う。第一の実施例と異なる点は、回転部インターフェース側の12とホストインターフェース側の10が互いに回転中心軸1の方向に近接し対向する構造にある。本構造により、ガントリ5がZ軸方向に移動する方向において非接触インターフェース12が非接触のインターフェース10に近接することができる。ガントリ5の内部には回転部23があり、回転中心軸1の周囲を回転するが、その駆動方法は第一の実施例(
図1(c))と同様に、ガントリ回転モータ19、及び回転部回転用ベルト21(図示せず)による回転である。後述するように、回転部23を回転子、これを取り囲むガントリ5の内周を固定子とするダイレクトドライブ(DD)モータ構造としても良い。また、ガントリ移動用レール13から給電されない場合は、ガントリ内に二次電池(図示せず)を内蔵することもできる。他方、第一の実施例とは異なり、架台支持部9−1又はクレードル9−3、及び架台7の内部に設けたガントリけん引モータ14、及びガントリけん引ベルト8によりガントリ5を体軸(Z軸)方向に移動させる例を開示している。
【0030】
クレードル9−3のガントリ収納部37の内部には、上記の非接触ホストインターフェース10以外に、試料保持部20が設けられている。試料とは、例えば、回転部23の内部の検出器や光源部が正常に機能しているか否かを事前にテストするための被測定物であって標準サンプル、或いはファントムと呼ばれるものである。また、クレードル内に回転部23の検査或い校正を目的とする検査プローブ(図示せず)を設けても良い。さらに、例えば、収納部37の内部には、ガントリ5の内部の温度を下げるため、冷却ガス、例えば、空気や窒素ガスの供給口16があり、他方、回転部23には供給口16と嵌合する開口部18が設けられている。このように、クレードル9−3には、ガントリの安定駆動、或いは安全性や性能等の維持管理に必要な機能を付加することができる。
【0031】
図4(b)は非接触インターフェース部(10及び12)における電磁誘導方式のワイヤレス給電に係る回路構成の一例を説明するためのブロック図である。図示するように、ホストインターフェース側(10)の回路構成は、商用電源を直流に変換するAC/DCコンバータ、高周波の方形波を出力する高周波インバータ、これを正弦波に変換する波形変換回路、安全確保のための絶縁トランス等を介し一次コイルL1につながっている。他方、二次コイルL2は、高周波を直流に戻す整流平滑回路、逆流阻止ダイオード等を介し、負荷、例えば二次電池等に接続している。他方、制御信号或いは画像データ等の送受信には、例えば、近接場磁界結合にもとづくワイヤレス通信方式(図示せず)を使用する。データ転送速度をGビット/秒程度の高速化が可能だからである。なお、上記ワイヤレス給電とワイヤレス通信を同一のコイル、或いはアンテナを使用して行う方式であってもよい。
【0032】
図5(a)は第三の実施例に係る撮像装置300の特にガントリ内の回転部分をZ軸方向からみた側面図であり、
図5(b)及び
図5(c)は、(a)における破線部分39の構造を説明するための一部拡大図である。以下に説明するように、第二の実施例と異なる点は、回転部23の内部又はガントリ内に回生ブレーキ回路50を内蔵し、かつ回転部23の周囲に電磁誘導コイルを有する点にある。或いは、回転部23を取り囲むガントリ5の内部に回生ブレーキ回路50を有していてもよい。これに相当する破線部分39の拡大図が
図5(c)である。まず、
図5(b)の場合は、回転部23の鉄心部32−1の周囲に電磁誘導コイル36−1が巻かれ、対向するガントリの内周に沿って交互にN極とS極が並んだ永久磁石、例えばネオジウム磁石が配置されている。本構成の場合、回転部23の内部に有する二次電池27を電源として交流電圧を発生させ電磁誘導コイル36−1に印加することにより、回転部23が回転する。他方、破線部分39の拡大図が
図5(c)の場合は、ガントリの内周に沿って鉄心部32−2の周囲に電磁誘導コイル36−2が巻かれ、対向する回転部23の外周に沿って交互にN極とS極が並んだ永久磁石、例えばネオジウム磁石が配置されている。本構成の場合、ガントリ5の内部に有する二次電池(図示せず)を電源として交流電圧を発生させ電磁誘導コイル36−2に印加することにより、回転部23が回転する。言い換えると、いずれの場合も回転部23を回転子とし、ガントリ5の内部側を固定子とするダイレクトドライブ(DD)モータを構成していると考えることができる。
【0033】
本実施例における回生ブレーキ50について
図6(a)を用いて以下に説明する。本発明に係るCT等は、回転部23の回転開始後に撮像動作に入り、撮像終了後に回転部23の回転運動を止める。即ち、一度の撮像動作において回転開始と回転停止を短時間内に行うので、回転部23の回転運動エネルギーを有効に活用することは二次電池の消耗を軽減し、省エネルギーにも貢献する。
図6(a)は回転部23の内部に設けた回生ブレーキ50を説明するため回路構成図である。二次電池27には双方向DC-DCコンバータ42の一端が接続され、さらに、誘導コイル36に接続している。これは、二次電池27が放電しダイレクトドライブ(DD)モータとして動作するモードである。他方、誘導コイル36からはAC-DCコンバータを介しキャパシタ、好適には電気二重層キャパシタ44につながり、さらに双方向DC-DCコンバータ42につながっている。これは、回生ブレーキ回路部分であって、回転部23の回転運動エネルギーを誘導コイル36に発生した逆起電力に変換し、電気二重層キャパシタ44を充電する。また、双方向DC-DCコンバータ42を介し二次電池27を充電することもできる。一般に、キャパシタのエネルギー回収効率は90%以上であり、二次電池充電時の60%前後に比べると高効率である。特に、本実施例のように回転部23が減速し(回収し)、すぐにまた回転部23を回転(放電)させる場合に好適である。以上は、
図5(b)の構造を前提とした場合である。これに対し
図5(c)の場合は、
図1のガントリ5或いはガントリ移動台車11の内部に二次電池、誘導コイル16、及び回生ブレーキ回路50を有する構造であり、基本動作は上述の通りである。なお、双方向DC-DCコンバータ42には、降圧チョッパ回路と昇圧チョッパ回路を組み合わせた回路方式、或いはDSP(Digital Signal Processor)とADコンバータを用いたPWM(Pulse Width Modulation)方式等を用いることができる。
【0034】
図6(b)は本実施例における回生ブレーキを用いた場合の駆動方法を説明するためのフローチャートである。図示するように、ガントリの移動及び回転部23の回転開始後、X線照射による撮像が開始される。検出器アレーから得られたデジタルデータはリアルタイムで画像メモリに記録される。すでに説明したように、デジタルデータは、パラレルシリアル変換するまでもなく、パラレルデータのまま画像メモリに記録することができる。撮像終了後、回転部23の回転運動エネルギーが誘導コイルに逆起電力を生じさせ電気エネルギーとして回収し、キャパシタ又は二次電池を充電しつつ回転運動は減速する。最終的にガントリは所定位置に停止し、回転部インターフェースからホストインターフェースを介し画像メモリに記録されたデータが読み出され、図示していない操作・制御部において画像の再構成処理後、モニター上に撮影情報が表示される。また、並行して二次電池を充電する。
【0035】
回転部23の変形例を
図7(a)、及び
図7(b)、さらにガントリ部分の変形例を
図7(c)に示す。
図7(a)は、回転部23をX軸方向からみた側面図である。回転部23の内部に組み込まれる構成要素であるX線発生部25は、ターゲット部材の劣化や電子ビーム発生冷陰極材料、本実施例ではカーボンナノ材料の消耗等により、使用頻度に応じた交換が必要である。同様に、検出器アレー31も、使用する半導体部品等の放射線損傷、或いは積層するX線シンチレータ材料の湿度依存性などの理由から交換が必要になる場合がある。そこで本実施例では、カートリッジ構造のX線発生部25mと検出器アレー31mにより、回転部23から脱着可能とした。図示するように、回転部23にはカートリッジ構造のX線発生部25mと検出器アレー31mが挿入されるスペース25fと31f(いずれも破線部)が形成されている。カートリッジ構造は、X線発生部25と検出器アレーに限定されず、例えば、記録容量増大に対応するため、画像メモリ35をカートリッジ構造とすることもできる。
【0036】
図7(b)は、回転部23の他の変形例をZ軸方向から見た平面図である。本実施例では、X線発生部25とさらに、X線発生部25−2、及びこれらに中心軸1に対し対向する位置に検出器アレー31、及び検出器アレー31−2を有する。検出器アレー31と検出器アレー31−2は、Z軸方向にずれた位置に、即ちシフトさせて配置してもよい。また、X線発生部25とX線発生部25−2は、同時にX線を照射しても時間差を置いて照射してもよい。さらに、X線発生部25とX線発生部25−2は異なる管電圧(波長)による分光解析を行っても良い。
【0037】
図7(c)は、第四の実施例に係る撮像装置400のX軸方向から見た側面図である。本実施例では、ガントリ部が2台(ガントリ5とガントリ5−2)架台7上に搭載されている。さらに、クレードル部も2台(9−3と9−4)有しており、特にクレードル9−4は、被験者及び寝台(図示せず)が通り抜けられるようにドーナツ形の中空構造になっている。ガントリを複数台、例えばX線CT検査用ガントリとPET(ポジトロンエミッショントモグラフィー)検査用ガントリの組み合わせや、X線CT検査用ガントリと近赤外拡散光イメージング用ガントリの組み合わせのように、異なる検査を一台の撮像装置で実現することが容易になる。また、複数のガントリ部は、個々に駆動する場合、或いは互いに連動して稼働させることもできる。なお好適には、ガントリ部が体軸方向に移動中に回転部或いはガントリ部から出力される信号、例えば、被験者の透視画像をモニターできるようにするため、無線通信インターフェースをガントリ部又は回転部と操作・制御部との間に有する構造としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0038】
整形外科、循環器科、消化器科領域等異なる医療分野及び異なる光源エネルギーに対するマルチ画像診断が実現する。
【符号の説明】
【0039】
1:回転中心軸、2−1:回転部インターフェース、2−2:ホストインターフェース、3:寝台、4:凸型接続端子、5:ガントリ、6:凹型接続端子、7:架台、8:ガントリけん引ベルト、9−1、9−2:架台支持部、9−3:クレードル、10:非接触ホストインターフェース 11:ガントリ移動台車、12:非接触回転部インターフェース、13:ガントリ移動用レール、14:ガントリけん引モータ、15:ガントリ下部の車輪、16:供給口、17:ガントリ移動台車駆動モータ、18:開口部、19:ガントリ回転モータ、20:試料保持部、21:回転部回転用ベルト、23:回転部、25、25−2:X線発生部、25C:カーボンナノ材料電子ビーム発生冷陰極、25A:陽極ターゲット、26:X線ビーム、27:二次電池、29:光源駆動回路、29−1:電圧昇圧回路、29−2:高電圧制御回路、30:検出器ユニット、31、31−2:検出器アレー、33:検出器周辺回路、35:画像メモリ、36:誘導コイル、37:ガントリ収納部、39:回転部5の外周とガントリ部23の外周の一部分、41:検出器駆動制御回路、42:双方向DC-DCコンバータ、43:信号増幅・AD変換回路、44:電気二重層キャパシタ、45:信号走査・制御回路、47:デジタル信号処理回路、49:パラレルシリアル変換回路、50:回生ブレーキ回路、51:被験者保護部材
【要約】
【課題】CT等の撮像装置の小型・軽量化、低消費電力化、低被曝化により移動や設置を容易にし、癌その他疾病等の早期発見と治療に役立てる。
【解決手段】架台上を体軸方向に前進又は後退するガントリを備え、ガントリ内の回転部に光源、光源駆動回路、及び回転部インターフェースを有する撮像装置、及びガントリの停止状態においてガントリ内の画像メモリに記録された撮像データを架台上の所定位置にあるホストインターフェースへ読み出す。
【選択図】
図1