(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
液体状の試料が配置される孔を有する支持基板と、該孔を覆うように該支持基板のX線の入射側の面に接着された第1樹脂フィルムと、該支持基板の該第1樹脂フィルムが接着された面の裏面に設けられた接着層と、を有する第1基板と、
前記支持基板が有する孔と対応する位置に孔を有する固定基板と、該固定基板の前記X線の入射側の面に接着された第2樹脂フィルムと、を有し、前記接着層によって前記第1基板と接着される第2基板と、
を有することを特徴とする蛍光X線分析装置用の試料ホルダ。
前記第1基板と、前記第2基板を接着する接着層は、糊剤と、第3樹脂フィルムと、糊剤が積層されて形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の試料ホルダ。
前記第1樹脂フィルム及び第2樹脂フィルムは、ポリプロピレン、ポリエステルまたはポリイミドで形成されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の試料ホルダ。
孔を有する支持基板と、該孔を覆うように該支持基板のX線の入射側の面に接着された第1樹脂フィルムと、該支持基板の該第1樹脂フィルムが接着された面の裏面に設けられた接着層と、を有する第1基板に対して、該孔と前記第1樹脂フィルムで形成される凹部に液体状の試料を滴下する工程と、
前記支持基板が有する孔と対応する位置に孔を有する固定基板と、該固定基板の前記X線の入射側の面に接着された第2樹脂フィルムと、を有する第2基板を、前記接着層によって前記第1基板に貼り合せる工程と、
を有することを特徴とする蛍光X線分析装置用の試料の作製方法。
さらに、前記第1基板の外形状の一部と同じ外形状を有する平面形状であって、前記第1基板が載置される平板部と、前記外形状に対応する部分の縁に沿って、前記平板部の前記第1基板が載置される面に対して立設される前記第1基板を固定するガイド部と、を有する試料ホルダ作成治具に、前記第1基板を載置する工程を含むことを特徴とする請求項12に記載の蛍光X線分析装置用の試料の作製方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載された測定用試料は、多孔質フィルムが用いられている。その為、充填された試料が低粘性や揮発性である場合、試料が多孔質フィルムの孔を通り抜けてしまい、測定することができない。
【0008】
また、気泡溜めを有する容器に液体状の試料を充填する場合、気泡が測定面に位置しないようにするために一定の体積より多くの試料が必要である。その為、当該容器を用いて蛍光X線分析を行う方法は、試料が少量しかない場合には適用できない。
【0009】
さらに、濾紙に滴下された液体の試料を乾燥させた後で蛍光X線分析を行う点滴乾燥法は、液体が乾燥しない材質である場合、適用することができない。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、上面照射型の蛍光X線分析装置で測定を行う場合に、少量かつ点滴乾燥することのできない液体状の試料の測定を可能とする蛍光X線分析装置用の試料ホルダ及び蛍光X線分析装置用の試料の作製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の蛍光X線分析装置用の試料ホルダは、液体状の試料が配置される孔を有する支持基板と、該孔を覆うように該支持基板のX線の入射側の面に接着された第1樹脂フィルムと、該支持基板の該第1樹脂フィルムが接着された面の裏面に設けられた接着層と、を有する第1基板と、前記支持基板が有する孔と対応する位置に孔を有する固定基板と、該固定基板の前記X線の入射側の面に接着された第2樹脂フィルムと、を有し、前記接着層によって前記第1基板と接着される第2基板と、を有することを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の試料ホルダは、請求項1に記載の試料ホルダにおいて、前記固定基板は、可撓性を有することを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の試料ホルダは、請求項2に記載の試料ホルダにおいて、前記固定基板は、前記支持基板よりも薄いことを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の試料ホルダは、請求項1乃至3のいずれかに記載の試料ホルダにおいて、前記第1基板と、前記第2基板を接着する接着層は、糊剤と、第3樹脂フィルムと、糊剤が積層されて形成されることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の試料ホルダは、請求項1乃至4のいずれかに記載の試料ホルダにおいて、前記蛍光X線分析装置は、上面照射型の蛍光X線分析装置であることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の試料ホルダは、請求項1乃至5のいずれかに記載の試料ホルダにおいて、前記支持基板と前記固定基板は、色が異なることを特徴とする。
【0017】
請求項7に記載の試料ホルダは、請求項1乃至6のいずれかに記載の試料ホルダにおいて、前記第1樹脂フィルム及び第2樹脂フィルムは、ポリプロピレン、ポリエステルまたはポリイミドで形成されることを特徴とする。
【0018】
請求項8に記載の試料ホルダは、請求項1乃至7のいずれかに記載の試料ホルダにおいて、前記第3樹脂フィルムは、発泡体で形成されることを特徴とする。
【0019】
請求項9に記載の試料ホルダ作成治具は、請求項1乃至8のいずれかに記載の試料ホルダを作成する為の試料ホルダ作成治具であって、前記第1基板の外形状の一部と同じ外形状を有する平面形状であって、前記第1基板が載置される平板部と、前記外形状に対応する部分の縁に沿って、前記平板部の前記第1基板が載置される面に対して立設される前記第1基板を固定するガイド部と、を有することを特徴とする。
【0020】
請求項10に記載の試料ホルダ作成治具は、請求項9に記載の試料ホルダ作成治具において、前記平板部は、前記支持基板の前記孔の外延を示す指標を有することを特徴とする。
【0021】
請求項11に記載の試料ホルダ作成治具は、請求項9または10に記載の試料ホルダ作成治具において、ポリエチレンテレフタラートで形成されることを特徴とする。
【0022】
請求項12に記載の蛍光X線分析装置用の試料の作製方法は、孔を有する支持基板と、該孔を覆うように該支持基板のX線の入射側の面に接着された第1樹脂フィルムと、該支持基板の該第1樹脂フィルムが接着された面の裏面に設けられた接着層と、を有する第1基板に対して、該孔と前記第1樹脂フィルムで形成される凹部に液体状の試料を滴下する工程と、前記支持基板が有する孔と対応する位置に孔を有する固定基板と、該固定基板の前記X線の入射側の面に接着された第2樹脂フィルムと、を有する第2基板を、前記接着層によって前記第1基板に貼り合せる工程と、を有することを特徴とする。
【0023】
請求項13に記載の蛍光X線分析装置用の試料の作製方法は、請求項12に記載の蛍光X線分析装置用の試料の作製方法において、さらに、前記第1基板の外形状の一部と同じ外形状を有する平面形状であって、前記第1基板が載置される平板部と、前記外形状に対応する部分の縁に沿って、前記平板部の前記第1基板が載置される面に対して立設される前記第1基板を固定するガイド部と、を有する試料ホルダ作成治具に、前記第1基板を載置する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
請求項1及び5乃至12に記載の発明によれば、少量かつ点滴乾燥することのできない液体状の試料を、上面照射型の蛍光X線分析装置で測定できる。
【0025】
また、請求項2及び3に記載の発明によれば、試料を試料ホルダに充填する際に、混入する気泡を少なくすることが出来る。
【0026】
また、請求項4に記載の発明によれば、充填した液体状の試料が試料ホルダの外部に滲み出ることを防止できる。
【0027】
また、請求項9乃至11及び13に記載の発明によれば、試料ホルダの作成精度を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための好適な実施の形態(以下、実施形態という)を説明する。
図1は本発明に係る試料ホルダ100を概略的に示す図である。
図1(a)は、試料ホルダ100の断面を示す図であり、
図1(b)は、試料ホルダ100を上側から見た図である。
【0030】
図1に示すように、試料ホルダ100は、第1基板102と、第2基板104と、を有する。第1基板102は、支持基板106と、第1樹脂フィルム108と、接着層110と、糊剤114と、を有する。
【0031】
支持基板106は、例えば
図1(b)に示すように、直径50mmの円板状の基板であって、中央部に直径32mmの円形状の孔112が設けられる。液体状の試料200は、支持基板106の孔112と、支持基板106に接着された第1樹脂フィルム108と、によって形成される凹部に配置される。支持基板106は、例えば、厚さ0.5〜2mmのポリカーボネート、ポリプロピレンまたはポリエチレンテレフタレート等で形成される。
【0032】
第1樹脂フィルム108は、該孔112を覆うように支持基板106のX線の入射側の面に接着される。具体的には、第1樹脂フィルム108は、支持基板106に設けられた孔112をふさぐように、支持基板106のX線の入射側の面に糊剤114で接着される。当該糊剤114は、接着層110と同じ構成で形成されるのが望ましい。
【0033】
また、第1樹脂フィルム108は、X線透過率が高く、気密性及び液密性を有する厚さ0.1〜25μmの薄い樹脂で形成される。具体的には、例えば、第1樹脂フィルム108は、6μmの厚さのポリプロピレン、ポリエステルまたはポリイミドで形成される。第1樹脂フィルム108が気密性及び液密性を有することで、液体試料を密閉した状態で蛍光X線分析装置1300による測定を行うことができる。また、第1樹脂フィルム108を薄い樹脂で形成することで、蛍光X線分析装置1300による測定結果に含まれる散乱線の影響を低減し、高感度かつ高精度に測定することができる。
【0034】
また、第1樹脂フィルム108は、透明性を有する樹脂で形成される。第1樹脂フィルム108が透明または半透明であれば、液体状の試料200に気泡が混入したか否かを外部から視認できる。
【0035】
接着層110は、糊剤114と、第3樹脂フィルム116と、糊剤114が積層されて形成され、第1基板102と、第2基板104を接着する。具体的には、例えば、接着層110は、芯材の表面と裏面に糊剤114が付された両面テープである。芯材である第3樹脂フィルム116は、例えば、液体状の試料200の浸透を抑制する発泡性を付加したポリオレフィン等の発泡体で形成される。これにより、第1基板102と第2基板104が貼り合わされた後で、液体状の試料200が、第1基板102と第2基板104の界面からにじみ出ることを防止できる。
【0036】
接着層110は、第1基板102と第2基板104が貼り合せられる前の状態では、糊剤114の表面を保護する剥離紙が付される。当該剥離紙は、第1基板102と第2基板104を貼り合せる前に剥離される。
【0037】
第2基板104は、固定基板118と、第2樹脂フィルム120と、糊剤114と、を有する。固定基板118は、支持基板106が有する孔112と対応する位置に孔122を有する。具体的には、例えば
図1(b)に示すように、固定基板118は、直径50mmの円板状の基板であって、支持基板106と同様に中央部に直径32mmの円形状の孔122が設けられる。なお、
図1(a)に示すように、支持基板106に設けられる孔112と固定基板118に設けられる孔122の位置及び大きさは、貼り合せられた後に一致することが望ましい。
【0038】
固定基板118は、可撓性を有する。具体的には、例えば、固定基板118は、高い可撓性を有する、厚さ0.5〜1.5mmのポリカーボネート、ポリプロピレンまたはポリエチレンテレフタレートで形成されてもよいし、当該材料よりも可撓性の高い材料で形成されてもよい。可撓性が高くなるように、固定基板118は、支持基板106よりも薄く形成されてもよい。具体的には、例えば、固定基板118の厚さは0.5mmであり、支持基板106の厚さは0.8mmである。
【0039】
支持基板106と固定基板118は、異なる色で形成される。具体的には、例えば、支持基板106が白色で形成されるのに対して、固定基板118は黒色で形成される。支持基板106と固定基板118とを異なる色にすることで、測定面を容易に識別できる。
【0040】
第2樹脂フィルム120は、固定基板118のX線の入射側の面に接着される。具体的には、第2樹脂フィルム120は、固定基板118に設けられた孔122をふさぐように、固定基板118のX線の入射側の面に接着剤で接着される。X線の入射側の面は、第1基板102と貼り合せられる面である。
【0041】
また、第2樹脂フィルム120は、気密性及び液密性を有する厚さ0.1〜25μmの薄い樹脂で形成される。具体的には、第2樹脂フィルム120は、第1樹脂フィルム108と同様に、ポリプロピレン、ポリエステルまたはポリイミドによって、6μmの厚さで形成される。第2樹脂フィルム120が気密性及び液密性を有することで、液体試料を密閉した状態で蛍光X線分析装置1300による測定を行うことができる。また、第2樹脂フィルム120を薄い樹脂で形成することで、蛍光X線分析装置1300による測定結果に含まれる散乱線の影響を低減し、高精度に測定することができる。
【0042】
第2樹脂フィルム120は、支持基板106と第1樹脂フィルム108とで形成される凹部の開口面を覆うように第1基板102に貼り合わされる。これにより、第2樹脂フィルム120は、当該凹部に充填された液体状の試料200を密閉する。
【0043】
第2基板104に設けられた糊剤114は、固定基板118と第2樹脂フィルム120を貼り合せる。なお、
図1は、固定基板118と第2樹脂フィルム120の間に糊剤114のみが設けられる構成を記載している。しかし、固定基板118と第2樹脂フィルム120の間に、接着層110と同じように、糊剤114と、第3樹脂フィルム116と、糊剤114とが積層された構成が設けられることがより望ましい。
【0044】
続いて、上記試料ホルダ100に液体状の試料200を充填し、蛍光X線分析装置1300用の試料を作製する方法について説明する。
図2及び
図3は、孔112を有する支持基板106と、該孔112を覆うように支持基板106のX線の入射側の面に接着された第1樹脂フィルム108と、接着層110と、を有する第1基板102に対して、該孔112と第1樹脂フィルム108で形成される凹部に液体状の試料200を滴下する工程を示す図である。
【0045】
具体的には、まず、
図2に示すように、第1基板102は、清浄な平らな面に、第1基板102の第1樹脂フィルム108を下に向けた状態で配置される。そして、測定対象である液体状の試料200が、凹部に滴下される。例えば、凹部の直径が32mmであり、支持基板106の厚さが0.8mmである場合、約1mLの試料が滴下される。
【0046】
図3は、液体状の試料200が滴下された後の第1基板102を示す図である。
図3に示すように、試料は、表面張力によって、試料の表面が第1基板102に設けられた接着層110の表面よりも少し高い位置となるように滴下される。そして、
図3では省略しているが、接着層110の表面に付された剥離紙が剥離され、糊剤114が露出する。
【0047】
滴下した試料200を零さないよう、剥離紙は、試料を滴下する前に剥離しておくのが望ましい。また、剥離紙を剥離した支持基板106と固定基板118の質量を予め測定しておき、試料200を充填した試料ホルダ100の質量から差し引いて、充填された試料200の質量を算出し、蛍光X線分析の補正に用いることができる。
【0048】
図4乃至
図6は、支持基板106が有する孔112と対応する位置に孔122を有する固定基板118と、固定基板118のX線の入射側の面に接着された第2樹脂フィルム120と、を有する第2基板104を、接着層110によって第1基板102に貼り合せる工程を示す図である。
【0049】
図4に示すように、試料が滴下された第1基板102に対して、第2樹脂フィルム120が接着された面を第1基板102に向けて、第2基板104が貼り合わされる。固定基板118は、可撓性を有する。そのため、
図5に示すように、第1基板102に対して凸面になるよう第2基板104を弓状にしならせて縁を合わせた後、第2基板104を徐々に貼り合せることで試料に混入する気泡を低減できる。
【0050】
また、
図6に示すように、第1基板102に対して凸面になるよう第2基板104の両端を弓状にしならせて、接着層110の表面よりも少し高い位置となる液体状の試料200の中央部と、第2樹脂フィルム120の中央部と、を接触させた状態から、第2基板104を直径に当たる中央線付近から両端に向けて徐々に貼り合せてもよい。これにより、試料に混入する気泡を低減できる。
【0051】
第2樹脂フィルム120は、透明性を有する樹脂で形成される。第2樹脂フィルム120が透明または半透明であれば、液体状の試料200に気泡が混入しないように視認しながら張り合わせることができる。
【0052】
図7は、試料が充填された後、第1基板102と第2基板104が貼り合わされた状態の試料ホルダ100を示す図である。第1基板102が平らな面に配置された状態で第1基板102と第2基板104が貼り合わされるため、試料が充填された状態でも第1樹脂フィルム108は平坦に張られた状態となる。
【0053】
続いて、上記試料ホルダ100を作成する為の試料ホルダ作成治具800について説明する。
図8(a)は、試料ホルダ作成治具800を上面から見た図であり、
図8(b)は、試料ホルダ作成治具800を側面から見た図である。試料ホルダ作成治具800は、平板部802と、ガイド部804と、を有する。
【0054】
平板部802は、第1基板102の外形状の一部と同じ外形状を有する平面形状であって、第1基板102が載置される。具体的には、平板部802は、外形状が円形である第1基板102の一部を切り欠いた外形状を有する平面形状である。例えば、
図8(a)に示すように、平板部802は、図面上第1基板102の中心から同じ距離離れた上側の領域と下側の領域を切り欠いた形状である。また、平板部802は、後述するように、第1基板102の第1樹脂フィルム108が設けられた面が接するように、第1基板102が載置される。
【0055】
なお、平板部802は、支持基板106の孔112の外延を示す指標806を有するようにしてもよい。具体的には、支持基板106の孔112の外延と対応する位置に、ケガキ線や模様等の指標806を設けてもよい。これにより、平板部802に第1基板102を載置した際に、孔112と対応する領域が明確となる。
【0056】
ガイド部804は、外形状に対応する部分の縁に沿って、平板部802の第1基板102が載置される面に対して立設される第1基板102を固定する。具体的には、
図8(a)に示すように、ガイド部804は、平板部802の弧状の部分の縁に沿って、平板部802の第1基板102が載置される面に対して垂直に形成される。なお、ガイド部804は、平板部802に第1基板102が載置された場合に、第1基板102を固定するために、ガイド部804の内側側面と第1基板102の外側側面の隙間が1mm以内となることが望ましい。
【0057】
続いて、上記試料ホルダ作成治具800を用いて試料ホルダ100を作成する方法について説明する。
図9乃至12は、試料ホルダ作成治具800を用いて試料200を試料ホルダ100に充填する工程を示す図である。
【0058】
まず、平板部802の第1基板102が載置される面を清掃する。清掃することで、後述する蛍光X線分析を行う際に、試料ホルダ100に不純物が付着することを防止できる。平板部802に指標806が設けられていることから、測定対象となる試料200が充填される領域と対応する位置が明確となる。従って、指標806の内側を清掃することで不純物の付着による測定精度の低下を防止することが出来る。
【0059】
次に、
図9(a)に示すように、平板部802のガイド部804が形成されている面に対して、第1基板102が載置される。これにより、第1基板102は、ガイド部804によって固定される。
図9(b)は、
図9(a)のIX−IX断面を示す図である。
図9(b)に示すように、第1基板102は、第1樹脂フィルム108が平板部802と接するように載置される。なお、
図9(b)は、接着層110の表面に付された剥離紙が剥離され、糊剤114が露出した状態を示す。
【0060】
次に、
図10(a)及び
図10(b)に示すように、測定対象である液体状の試料200が、凹部に滴下される。当該試料200を滴下する方法は、
図2で示した方法と同様である。なお、
図10(b)は、
図10(a)のX−X断面を示す図である。
【0061】
次に
図11(a)及び
図11(b)に示すように、第2基板104を第1基板102に貼り合せる。
図11(b)は、
図11(a)のXI−XI断面を示す図である。具体的には、
図11(b)に示すように、試料200が滴下された状態において、表面張力によって、試料200の表面が第1基板102に設けられた接着層の表面よりも少し高い位置となっている。試料200が滴下された第1基板102に対して、第2樹脂フィルム120が接着された面を第1基板102に向けて、第2基板104が貼り合わされる。ここで、第1基板102と第2基板104は、平面外形が同じである。これにより、ガイド部804によって、第1基板102と第2基板104は、中心が一致するように貼り合わされる。
【0062】
試料200に気泡が混入しないように、
図5で示した方法と同様に、第1基板102に対して凸面になるよう第2基板104を弓状にしならせて縁を合わせた後、第2基板104を徐々に貼り合せてもよい。また、
図6で示した方法と同様に、第1基板102に対して凸面になるよう第2基板104の両端を弓状にしならせて、接着層の表面よりも少し高い位置となる液体状の試料200の中央部と、第2樹脂フィルム120の中央部と、を接触させた状態から、第2基板104を直径に当たる中央線付近から両端に向けて徐々に貼り合せてもよい。
【0063】
図12(a)及び
図12(b)は、試料200が充填された後、第1基板102と第2基板104が貼り合わされた状態の試料ホルダ100を示す図である。
図12(b)は、
図12(a)のXII−XII断面を示す図である。
図12(b)に示すように、第1基板102と第2基板104は中心が一致するように貼り合わされる。これにより、試料ホルダ100を蛍光X線分析装置1300に載置する際に、試料ホルダ100がX線分析装置の試料台1302に嵌合しない事態を防止することができる。例えば、試料台1302に試料ホルダ100を載置する凹部が設けられている場合、当該凹部に試料ホルダ100が嵌合しない事態を防止することができる。
【0064】
続いて、上記試料ホルダ100を用いて蛍光X線分析を行う方法について、
図13を用いて説明する。なお、蛍光X線分析装置1300は、上面照射型の蛍光X線分析装置1300であるが、蛍光X線分析装置1300自体は従来技術と同様である為、詳細な説明は省略する。
【0065】
図13に示すように、蛍光X線分析装置1300は、試料台1302と、X線源1304と、検出器1306と、計数器1308と、分析部1310と、を有する。試料台1302は、測定対象となる試料が載置される。具体的には、
図13に示すように、液体状の試料200が充填された試料ホルダ100は、第1基板102に接着された第1樹脂フィルム108を上側にして、試料台1302に載置される。
【0066】
X線源1304は、蛍光X線を発生させる1次X線を、試料ホルダ100の表面に照射する。具体的には、X線源1304は、試料ホルダ100の第1樹脂フィルム108の中央部に1次X線を照射する。2次X線が照射された液体状の試料200は、2次X線を出射する。
【0067】
液体状の試料200が充填され、薄い第1樹脂フィルム108及び第2樹脂フィルム120で密閉された試料ホルダ100は、真空下で破裂する恐れがある。従って、測定は、常圧下で行う。軽元素を分析する場合には、光学系光路でのX線吸収を低減させるため、ヘリウムパージ下で測定を行う。
【0068】
検出器1306は、SDD等の検出器1306である。検出器1306は、2次X線の強度を測定し、測定した2次X線のエネルギーに応じた波高値を有するパルス信号を出力する。
【0069】
計数器1308は、検出器1306の測定強度として出力されるパルス信号を、波高値に応じて計数する。具体的には、例えば、計数器1308は、マルチチャンネルアナライザであって、検出器1306の出力パルス信号を、2次X線のエネルギーに対応した各チャンネル毎に計数し、2次X線の強度として出力する。なお、2次X線を分光する場合には、分光された2次X線を測定する検出器1306の出力を取得する計数器1308は、分光されたエネルギーに対応する波高値範囲のみのパルス信号を計数するシングルチャンネルアナライザであってもよい。
【0070】
分析部1310は、計数器1308の計数結果から、試料に含まれる元素を定量分析する。具体的には、例えば、分析部1310は、計数器1308の計数結果を用い、検量線法やFP(ファンダメンタルパラメータ)法により定量分析する。
【0071】
以上のように、本発明によれば、少量かつ点滴乾燥することのできない液体状の試料200を、上面照射型の蛍光X線分析装置1300で測定できる。また、試料に混入する気泡を低減し、かつ、薄い第1樹脂フィルム108を用いることで、高感度に精度良く測定を行うことが出来る。
【0072】
本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。蛍光X線分析装置1300の構成は一例であって、これに限定されるものではない。上記の実施例で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成する構成で置き換えてもよい。また、本発明による試料ホルダ100を、第1樹脂フィルム108が下側になるように載置し、X線管や検出器等が試料の下側に配置された下面照射型の蛍光X線分析装置を用いて測定することもできる。