特許第6586656号(P6586656)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6586656
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】検出装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/42 20060101AFI20191001BHJP
   G02B 6/32 20060101ALI20191001BHJP
   G01J 1/04 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
   G02B6/42
   G02B6/32
   G01J1/04 Z
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-154774(P2016-154774)
(22)【出願日】2016年8月5日
(65)【公開番号】特開2018-22106(P2018-22106A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2019年1月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591102693
【氏名又は名称】サンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】桜井 康樹
【審査官】 岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】 中国実用新案第204790086(CN,U)
【文献】 特開2007−219514(JP,A)
【文献】 特開平10−062655(JP,A)
【文献】 特開2004−272061(JP,A)
【文献】 特開2011−174763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26−6/27,
G02B 6/30−6/34,
G02B 6/42−6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力光のパワーを検出するための検出装置であって、
受光素子と、前記受光素子を支持し前記受光素子からの信号線を形成するステムと、を含む受光モジュールと、
光伝送路に接続される二本の光ファイバと、前記二本の光ファイバの一端を支持するキャピラリと、を含み、前記二本の光ファイバの一端が前記キャピラリの軸心に沿って支持される光ファイバピッグテールと、
前記二本の光ファイバのうちの一方である入力ファイバの一端からの前記入力光をコリメートして、前記入力光の一部を前記受光素子に案内するように構成されたレンズであって、前記入力光を透過光と反射光とに分離し、前記透過光を前記受光素子に案内し、前記反射光を、前記二本の光ファイバのうちの他方である出力ファイバに案内するように構成されたレンズと、
前記受光モジュール、前記光ファイバピッグテール、及び、前記レンズを内側に保持する筒状の保持体と
前記保持体の前記内側において、前記レンズと前記受光モジュールとの間に配置された壁と、
を備え、前記受光モジュールは、前記光ファイバピッグテール及び前記レンズの径以上であり、前記受光モジュールの軸心、前記光ファイバピッグテールの軸心、及び前記レンズの軸心は、同一軸線上に配列され、前記受光素子は、その受光面の中心が、前記軸線に位置合わせされる前記ステムの軸心から外れた位置に配置され、この位置で受光した前記入力光のパワーに応じた電気信号を出力し、
前記壁は、前記レンズから前記受光素子への前記透過光の正規光路に対応する位置に開口部を有し、前記正規光路に沿って前記レンズから前記受光素子に向かって伝播する前記透過光を、前記開口部を通じて前記受光素子側に通過させ、前記正規光路外を伝播する光の前記受光素子への伝播を抑制するように構成される検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の検出装置であって、
前記受光素子は、その受光面の中心が前記入力光の中心と重なる位置に配置される検出装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の検出装置であって、
前記受光モジュールは、前記ステムを貫通する電極ピンを有し、前記ステムの表面上で前記電極ピンに前記受光素子としてのチップ状の受光素子がマウントされ、前記受光素子がポッティング材で被覆された構成にされる検出装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載の検出装置であって、
前記受光モジュールは、前記ステムとしての表面実装用の基体に、前記受光素子としてチップ状の受光素子がマウントされた構成にされる検出装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項のいずれか一項記載の検出装置であって、
前記受光モジュールの最外径は、2.45mm以下である検出装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項のいずれか一項記載の検出装置であって、
前記光ファイバとして、曲げ半径10mm以下の光ファイバを備える検出装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項のいずれか一項記載の検出装置であって、
前記光ファイバとして、クラッド外径125μm以下の光ファイバを備える検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光のパワーを検出するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信ネットワーク内における光通信動作を監視するために、光通信ネットワークには、光パワーモニタが設けられる(例えば特許文献1参照)。光パワーモニタは、例えば光通信デバイスに内蔵されて、光通信信号のパワーを検出し、光通信デバイス内のコントローラに、検出されたパワーの情報を提供する。
【0003】
光通信ネットワークの一例には、WDM(光波長多重通信)ネットワークが含まれる。WDMネットワークの分岐点には、例えば光通信デバイスとしてROADM装置が配置される。ROADM装置には、光通信信号を任意の経路に切り替えるための、及び/又は、光通信信号を分岐/挿入するための光スイッチが設けられる。光パワーモニタは、例えば、このROADM装置に搭載されて、ROADM装置内の光増幅器を制御し最適なパワーで光通信信号を伝送するために利用される。この他、光パワーモニタは、光通信信号を送信/受信する光トランシーバや光トランスポンダ等の光通信デバイスにおいても、光通信信号の制御及び/又は監視に利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0021537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した光通信デバイスには、マルチポート化及び小型化の高いニーズがある。同様に光パワーモニタにも、小型化の高いニーズがある。しかしながら、従来の光パワーモニタの構成では、電気的要素を含む受光部のサイズ、例えばフォトダイオード(PD)を含むPDモジュールのサイズの影響を受けて、小型化することに限界があった。
【0006】
そこで、本開示の一側面によれば、光のパワーを検出するための装置として、小型化可能な装置を提供できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係る検出装置は、入力光のパワーを検出するための検出装置であって、受光モジュールと、光ファイバピッグテールと、レンズと、筒状の保持体と、を備える。
【0008】
受光モジュールは、受光素子と、受光素子を支持するステムと、を備える。ステムは、受光素子からの信号線を形成するように構成される。光ファイバピッグテールは、光伝送路に接続される二本の光ファイバと、二本の光ファイバの一端を支持するキャピラリと、を備え、二本の光ファイバの一端がキャピラリの軸心に沿って支持された構成にされる。
【0009】
レンズは、二本の光ファイバのうちの一方である入力ファイバの一端からの入力光をコリメートして、入力光の一部を受光素子に案内するように構成される。このレンズは、入力光を透過光と反射光とに分離し、透過光を受光素子に案内し、反射光を、二本の光ファイバのうちの他方である出力ファイバに案内するように構成される。レンズは、例えば受光素子に対向する面に入力光を透過光と反射光とに分離する分岐膜を有した構成にされ得
る。
【0010】
保持体は、受光モジュール、光ファイバピッグテール、及び、レンズを保持するように構成される。この検出装置において、受光素子は、その受光面の中心がステムの軸心から外れた位置に配置され、この位置で受光した入力光のパワーに応じた電気信号を出力する。
【0011】
受光素子がステムの軸心から外れた受光モジュールの構成は、受光素子がステムの軸心に合わせてステムの中央に配置された受光モジュールの構成よりも、検出装置の小型化を可能にする。電気的要素を含む受光モジュールは、光ファイバピッグテール及びレンズよりも小型化が難しい。従って、保持体のサイズは、受光モジュールのサイズ及び配置に大きな影響を受ける。
【0012】
一方、入力ファイバ及び出力ファイバを備える検出装置では、出力ファイバからの戻り光が受光素子によって受光されないように、受光素子は、キャピラリの軸心の延長線上から離れた位置に配置され、入力ファイバからの入力光は、当該離れた位置で受光素子に受光されるように案内される。
【0013】
即ち、受光素子がステムの軸心に合わせて中央に配置されている場合には、受光素子がキャピラリの軸心から離れた位置に配置されるために、ステムの軸心は、キャピラリの軸心から離れた位置に配置される必要がある。しかしながら、ステムは比較的大径であるために、ステムの軸心がキャピラリの軸心から外れるほど、必要な保持体の径は大きくなり、結果として検出装置の外径を小さくすることができない。
【0014】
これに対し、受光素子がステムの軸心から外れた位置に配置された構成によれば、ステムの軸心をキャピラリの軸心に合わせて、又は、ステムの軸心のキャピラリの軸心からのずれ量を小さく抑えて、受光モジュール、光ファイバピッグテール、及び、レンズを保持することができる。結果として、本開示の一側面によれば、検出装置の外径を小さくすることができる。
【0015】
検出装置の小型化のために、受光モジュール、光ファイバピッグテール、及びレンズは、同一軸線上に配列され得る。この場合、受光素子は、その受光面の中心が、当該軸線に位置合わせされるステムの軸心から外れた位置に配置され得る。この配列及び配置は、検出装置の一層の小型化に貢献する。
【0016】
本開示の一側面によれば、受光素子は、受光面の中心が入力光の中心と重なる位置に配置されてもよい。この配置によれば、受光素子が入力光を効率よく受光することができ、パワーの検出精度が向上する。
【0017】
本開示の一側面によれば、受光モジュールは、光ファイバピッグテール及びレンズの径以上であり得る。上述した構成に基づく小型化の利益は、受光モジュールが、光ファイバピッグテール及びレンズの径以上である検出装置において、より大きくなる。但し、本開示の一側面に係る検出装置は、受光モジュールが、光ファイバピッグテール及びレンズの径以上である形態に限定されない。受光素子を仮にステムの中央に配置したときに、受光モジュールが、他の部品よりも径方向外側にはみ出る場合であって、本開示に係る上述の構成を採用すると、そのはみ出し量をゼロ又は小さくすることができる場合において、本開示に係る上述の構成は、有意義である。
【0018】
本開示の一側面において、受光モジュールは、ステムを貫通する電極ピンを有し、ステムの表面上で当該電極ピンにチップ状の受光素子がマウントされ、当該受光素子がポッテ
ィング材で被覆された構成にされてもよい。この構成は、受光モジュールの小型化に貢献する。受光モジュールは、表面実装用の基体に、チップ状の受光素子がマウントされた構成にされてもよい。受光素子の例には、フォトダイオードが含まれ、チップ状の受光素子の例には、フォトダイオードチップが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】光検出器を含む光通信デバイスの概略構成を表すブロック図である。
図2】上段に光検出器の軸線に沿う断面構造を示し、下段に光検出器の外形を示す、光検出器の概略構成を表す図である。
図3】上段にPDモジュールの平面図を有し、下段にPDモジュールの軸線に沿う断面図を有する、PDモジュールの概略構成を表す図である。
図4】PDチップの表面の概略構成を表す上面図である。
図5】第一変形例のPDモジュールの概略構成を表す断面図である。
図6】第二変形例のPDモジュールの概略構成を表す断面図である。
図7】比較例の光検出器の構成を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本開示の例示的実施形態を図面と共に説明する。
図1に示す本実施形態の光通信デバイス1は、光伝送路Lに接続されたタップ付き光検出器10を備える。図1では、単一の光検出器10を備える光通信デバイス1を示す。しかしながら、光通信デバイス1は、マルチポート通信デバイスであってもよく、ポート毎の光伝送路にそれぞれ光検出器10を備えた構成にされてもよい。光通信デバイス1は、例えば、光通信ネットワーク上の送信デバイス、受信デバイス、及び、中継デバイスのうちの任意のデバイスであり得る。光通信デバイス1は、管理及び/又は監視目的で光通信ネットワークに接続される管理/監視デバイスであってもよい。
【0021】
光検出器10は、光伝送路Lからの入力光のパワーを検出し、そのパワーに応じた電気信号を検出信号として光通信デバイス1内のコントローラ70に入力する。入力光は、光通信デバイス1が外部装置から受信した光通信信号、光通信デバイス1が外部装置に送信する光通信信号、及び、光通信デバイス1がROADM装置等の中継器である場合の転送信号のうちの任意の信号であり得る。
【0022】
光検出器10は、例えば図2に示すように構成される。図2に示す光検出器10は、PDモジュール20と、光ファイバピッグテール30と、GRINレンズ40と、これらを保持する筒状ケース60と、を主に備える。この光検出器10は、PDモジュール20、光ファイバピッグテール30、及び、GRINレンズ40の夫々の軸心が、筒状ケース60の軸心に位置合わせされて、同一軸線C上に整列配置された構成にされる。
【0023】
PDモジュール20は、図3に示すように、受光素子としてのフォトダイオード(PD)チップ21と、PDチップ21を支持する円柱状のステム23と、PDチップ21を被覆して保護する透明樹脂層25と、を備える。ステム23は、ステム23の表面から裏面に貫通する一対の導電性電極ピン23A,23Bを備える。ステム23の電極ピン23A,23Bの周囲には、気密封止用ガラス24が設けられる。
【0024】
電極ピン23Aの先頭部分には、PDチップ21がマウントされ、電極ピン23Bの先頭部分は、PDチップ21にワイヤボンド接合される。具体的には、電極ピン23Aは、PDチップ21の裏面に形成されたカソード電極に電気的に接続され、電極ピン23Bは、PDチップ21の表面に形成されたアノード電極に電気的に接続される。即ち、電極ピン23A,23Bは、PDチップ21からの引き出し線として機能し、PDチップ21への給電線及びPDチップ21からの信号線として機能する。
【0025】
この電極ピン23A,23Bは、コントローラ70に接続される。コントローラ70は、この電極ピン23A,23Bを通じてPDチップ21から入力されるパワーの検出信号に基づき、所定の処理を実行する。処理の例には、光増幅器のゲインを調整する処理、及び、パワーの検出値を表示する処理が含まれる。
【0026】
PDチップ21は、図4に示すように、GRINレンズ40側を向く表面中央部に、円形の受光面21Aを有し、その表面の角部にアノード電極21Bを備える。PDチップ21は、その裏面に図示しないカソード電極を備える。このPDチップ21は、受光面21Aでの受光量(受光パワー)に応じた電気信号を上記検出信号として、ステム23の電極ピン23A,23Bを通じてコントローラ70に入力する。
【0027】
また、透明樹脂層25は、ポッティング加工により形成される。即ち、透明樹脂層25は、ステム23内の電極ピン23AにPDチップ21がマウントされた状態で、ステム23及びPDチップ21上にポッティング材が塗布され、硬化されることにより形成される。
【0028】
この他、光ファイバピッグテール30は、光伝送路Lに接続される二本の光ファイバ31A,31Bと、光ファイバ31A,31Bが挿入される円柱状の二芯キャピラリ33と、光ファイバ31A,31Bを保護するルースチューブ35と、を備える。
【0029】
キャピラリ33には、その軸心に沿って、光ファイバ31A,31Bが並列配置される。具体的に、光ファイバ31A,31Bは、キャピラリ33の中心から互いに反対方向に僅かに離れて並列配置される。二芯キャピラリ33には、このように配置される光ファイバ31A,31Bの一端を支持する。キャピラリ33の直径は、例えば1mmであり得る。
【0030】
これらの二本の光ファイバ31A,31Bの内の一方の光ファイバ31Aは、光検出器10にパワー検出対象の光通信信号を入力するための入力ファイバ31Aとして用いられる。他方の光ファイバ31Bは、光通信信号を光伝送路Lに戻すための出力ファイバ31Bとして用いられる。
【0031】
光ファイバ31A,31Bのキャピラリ33に支持される端部とは反対側の端部は、図示しないコネクタを通じて光伝送路Lに接続される。具体的に、入力ファイバ31Aは、光伝送路Lの内、光検出器10よりも伝送方向上流に位置する光伝送路L1に接続され、出力ファイバ31Bは、光伝送路Lの内、光検出器10よりも伝送方向下流に位置する光伝送路L2に接続される。
【0032】
GRINレンズ40は、キャピラリ33に隣接して、キャピラリ33と同一の軸線C上に設けられる。即ち、GRINレンズ40の軸心は、キャピラリ33の軸心と同じ軸線C上に位置合わせされる。キャピラリ33が支持する入力ファイバ31Aからの光は、このように配置されたGRINレンズ40に入力される。GRINレンズ40は、入力光をコリメートし、そのコリメート光をPDモジュール20の受光面21Aに導くように構成される。GRINレンズ40は、例えば、キャピラリ33と同一径のレンズ、具体的には直径1mmのレンズとして構成される。
【0033】
GRINレンズ40は、PDモジュール20の受光面21A側を向く端面に分岐膜40Aを有する。分岐膜40Aは、GRINレンズ40の本体を通じて到来する入力ファイバ31Aからの光を、透過光と反射光とに分離する。分岐膜40Aには、透過光と反射光との光量比が所定比となる分岐膜が選択される。透過光の比率は、入力光に対して例えば1
%以下である。
【0034】
この分岐膜40Aを備えることによって、GRINレンズ40は、入力ファイバ31Aからの入力光の一部(透過光)をPDモジュール20の受光面21Aに案内する。また、GRINレンズ40は、分岐膜40Aで分離された入力光の反射光成分を、出力ファイバ31Bに案内する。反射光成分は、出力ファイバ31Bに至るGRINレンズ40内の経路で集光されて、出力ファイバ31Bに入力される。
【0035】
図2において実線で示される矢印A1は、入力ファイバ31Aからの入力光の内、受光面21Aに伝播する透過光の経路を概略的に示す。図2において一点鎖線で示される矢印A2は、分岐膜40Aからの反射光の経路を概略的に示す。図2において一点鎖線で示される矢印A3は、反射光の戻り光を示す。反射光の一部は、出力ファイバ31Bを通じて光伝送路L下流に伝播せず、戻り光として、GRINレンズ40からPDモジュール20側の空間へと伝播する。
【0036】
光検出器10では、この戻り光が受光面21Aに到達するのを抑制するために、GRINレンズ40から一定間隔空けて、PDモジュール20が配置される。PDモジュール20とGRINレンズ40とが離れていることにより、PDモジュール20側では正当な透過光と戻り光との間に一定の距離が設けられる。このため、PDモジュール20は、正当な透過光を選択的に受光面21Aで受光することができる。ここでいう正当な透過光は、戻り光及びその他の迷光ではない意図的に受光面21Aに導いた入力光の分岐膜40Aからの透過光のことを言う。
【0037】
付言すると、戻り光やその他の迷光が受光面21Aで受光されるのを抑制するために、GRINレンズ40とPDモジュール20との間には、開口部50Aを有するアパーチャ壁50が設けられる。このアパーチャ壁50の開口部50Aは、透過光の正規光路に対応する位置に設けられ、透過光の正規光路以外から到来する光が受光面21Aで受光されるのを抑制する。
【0038】
また、PDモジュール20、光ファイバピッグテール30、及び、GRINレンズ40を内部に保持する筒状ケース60は、第一部品61と、第二部品62と、第三部品63とが連結されて構成される。第一部品61は、その内部に光ファイバピッグテール30及びGRINレンズ40を保持する。第二部品62は、GRINレンズ40とPDモジュール20とを所定間隔空けて配置し、その内部空間に、透過光の伝播経路を形成する部品として機能する。第三部品63は、アパーチャ壁50と一体に構成され、内部にPDモジュール20を保持する。
【0039】
筒状ケース60は、これら第一部品61、第二部品62、及び、第三部品63の組合せにより、PDモジュール20、光ファイバピッグテール30、及びGRINレンズ40を収納及び保持する収納体及び保持体として構成される。第一部品61、第二部品62、及び、第三部品63は、互いに同一の外径を有し、その外径は、例えば、1.8mmである。この外径を有する筒状ケース60内には、例えば、直径(最外径)が1.3mmのPDモジュール20が配置される。
【0040】
続いて、本実施形態の光検出器10が有する特徴的な構成を詳述する。本実施形態によれば、PDチップ21は、ステム23の軸心から外れた位置に配置される。具体的に、PDチップ21は、その中心及び受光面21Aの中心Oがステム23の軸心から外れた位置に配置され、この位置で受光した入力光のパワーに応じた電気信号を上記検出信号として出力するように構成される。ステム23の軸心は、本実施形態においてPDモジュール20の軸心に一致し、筒状ケース60内で、光ファイバピッグテール30及びGRINレン
ズ40と同一の軸線C上に配置される。こうした配置において、PDチップ21は、受光面21Aの中心が入力光(正当な透過光)の中心と重なる位置に配置される。
【0041】
一例によれば、PDモジュール20は、最外径が1.3mmのPDモジュール20であり、1.3mmの直径を有するステム23を備える。このステム23において、電極ピン23A,23Bの夫々は、電極ピン23A,23Bの各中心線がステム23の軸心から0.28mm離れるように配置される。従って、電極ピン23A,23Bは、ステム23の軸心を挟んで互いに0.56mm離れるように配置される。一例によれば、電極ピン23Aの先端部分は、PDチップ21をマウントするための直径0.3mm以上の平坦な表面を有し、そこに、一辺の長さが0.27mm〜0.29mmの正方形状又は長方形状のPDチップ21がマウントされる。PDチップ21は、例えば、その中央部に、直径100μmの受光面21Aを有した構成にされる。
【0042】
このPDモジュール20の構成によれば、PDチップ21がステム23の軸心に合わせて中央に配置されている図7に示す光検出器100の構成と比較して、効率的に、PDモジュール20、光ファイバピッグテール30、及び、GRINレンズ40を筒状ケース60内に収めることができて、筒状ケース60の径を小さくすることができる。従って、このPDモジュール20の構成によれば、小型の光検出器10を構成することができる。
【0043】
図7に示す光検出器100では、PDチップ121がステム123の軸心に合わせて中央に配置されたPDモジュール120を有するため、PDチップ121の受光面の中心を入力光の中心に合わせるためには、PDモジュール120及びそのステム123の軸心を、GRINレンズ140及び光ファイバピッグテール130と同一の軸線上に配置することができない。そして、PDモジュール20,120の小型化は、光ファイバピッグテール30,130及びGRINレンズ40,140より難しいため、PDモジュール20,120の径は通常、光ファイバピッグテール30,130及びGRINレンズ40,140以上である。このため、筒状ケース160の軸方向に、PDモジュール120、光ファイバピッグテール130、及び、GRINレンズ140を射影したときの面積は、上記実施形態の光検出器10と比較して大きくなる。
【0044】
従って、この光検出器100では、上記実施形態の光検出器10と比較して、ケース160の径を大きくしなければ、PDモジュール120、光ファイバピッグテール130及びGRINレンズ140をケース160内に収めることができない。
【0045】
これに対し、本実施形態の光検出器10によれば、図7に見られるような光検出器100内の無駄なスペースを低減することができる。従って、本実施形態の光検出器10の構成によれば、光検出器を小型に構成することができる。
【0046】
以上には、最外径が1.3mmのPDモジュール20を備える光検出器10の例を説明した。しかしながら、PDモジュール20の最外径は、これに限定されない。例えば、PDモジュール20の最外径は、1.3mm以下であってもよいし、1.3mmより大きくてもよい。高速光通信ネットワークの用途及び光通信デバイス1の小型化を考慮すれば、PDモジュール20の好ましい最外径は、およそ2.45mm以下である。
【0047】
GRINレンズ140としては、直径1mmのレンズと共に普及している直径1.8mmのレンズが用いられてもよい。光通信デバイス1の小型化を考慮すれば、光通信デバイス1内での光ファイバ31A,31Bの良好な取り回しのために、光検出器10には、光ファイバ31A,31Bとして曲げ半径が小さい光ファイバが採用されるのがよい。
【0048】
普及している光ファイバとしては、曲げ半径30mmの光ファイバが知られている。し
かしながら、上記良好な取り回しのためには、光ファイバ31A,31Bとして、曲げ半径10mm以下の光ファイバが用いられるのがよく、曲げ半径5mm以下の光ファイバが用いられてもよい。光通信デバイス1の小型化を考慮すれば、光検出器10には、クラッド外径125μm以下の光ファイバが用いられるのがよく、クラッド外径80μm以下の光ファイバが用いられてもよい。
【0049】
上記実施形態では、ステム23の表面に露出する電極ピン23Aに、PDチップ21がマウントされ、PDチップ21がポッティング材で被覆されたPDモジュール20が採用されているが、光検出器10には、上記PDモジュール20に代えて、別構造の受光モジュールが搭載されてもよい。
【0050】
[第一変形例]
光検出器10には、PDモジュール20に代えて、図5に示すTO(CAN)型のPDモジュール80が搭載されてもよい。PDモジュール80は、ポッティング材に代えて、金属ケース81によってPDチップ21が覆われた構成にされる。金属ケース81は、PDチップ21への入力光の経路に開口部を有し、開口部は、透明材料83で封止される。ステム23に対するPDチップ21の配置は、上述のPDモジュール20と同様である。
【0051】
TO(CAN)型のPDモジュール80によれば、金属ケース81をステム23に接合するための部位が必要であるために、ステム23の径が大きくなる傾向にある。従って、光検出器10の小型化のためには、ポッティング加工型のPDモジュール20を用いるのが好ましいかもしれない。
【0052】
[第二変形例]
光検出器10には、PDモジュール20に代えて、図6に示す表面実装型のPDモジュール90が搭載されてもよい。PDモジュール90は、電極パッド91A,91Bがパターニングされた表面実装用の基板として構成される円板状ステム91にPDチップ21が実装された構成にされる。ステム91は、その表面に、アノード電極パッド91A及びカソード電極パッド91Bを有する。カソード電極パッド91Bには、PDチップ21が、PDチップ21のカソード電極と接続されるように実装される。アノード電極パッド91Aは、PDチップ21のアノード電極とワイヤボンド接合される。
【0053】
ステム91の電極パッド91A,91Bは、図示しないスルーホールを通じて、ステム91の裏面に設けられた各電極パッド91A,91Bに対応する表面実装用のランド96A,96Bにそれぞれ電気的に接続される。
【0054】
ステム91の表面には、PDチップ21を覆う金属ケース93が配置される。金属ケース93は、第一変形例のPDモジュール80と同様、PDチップ21への入力光の経路に開口部を有する。開口部は、透明材料95で封止される。このように構成されるPDモジュール90は、ステム91裏面のランド96A,96Bを通じて、サブマウント基板97に表面実装される。
【0055】
[その他]
以上に、本開示の例示的実施形態を説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。例えば、光検出器10は、光通信デバイスへの用途に限定されない。GRINレンズ40は、他のコリメータレンズに置き換えられてもよい。例えば、GRINレンズ40は、非球面レンズに置き換えられてもよい。本開示の技術が、上述した例示的寸法に限定されず、様々な寸法の光検出器に適用できることは言うまでもない。
【0056】
上記実施形態における1つの構成要素が有する機能は、複数の構成要素に分散して設けられてもよい。複数の構成要素が有する機能は、1つの構成要素に統合されてもよい。上記実施形態の構成の一部は、省略されてもよい。上記実施形態の構成の少なくとも一部は、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換されてもよい。特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0057】
1…光通信デバイス、10…光検出器、20…PDモジュール、21…PDチップ、21A…受光面、21B…アノード電極、23…ステム、23A…電極ピン、23B…電極ピン、25…透明樹脂層、30…光ファイバピッグテール、31A,31B…光ファイバ、33…キャピラリ、40…GRINレンズ、40A…分岐膜、60…筒状ケース、61…第一部品、62…第二部品、63…第三部品、80…PDモジュール、81…金属ケース、83…透明材料、90…PDモジュール、91…ステム、91A,91B…電極パッド、93…金属ケース、95…透明材料、96A,96B…ランド、C…軸線、L,L1,L2…光伝送路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7