(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の包装体用フィルムは、バリア材と、該バリア材の一方の面に設けられたシーラント材とを備える。
以下、本発明の包装体用フィルムについて、実施形態を挙げて説明する。
【0011】
(第一の実施形態)
本発明の第一の実施形態にかかる包装体用フィルムについて、図面を参照して説明する。
図1の包装体用フィルム1は、基材10と、バリア材20と、シーラント材30とがこの順で積層されたものである。即ち、包装体用フィルム1は、バリア材20と、バリア材20の一方の面に設けられたシーラント材30とを備える。
包装体用フィルム1の厚さは、特に限定されないが、例えば、40〜250μmが好ましく、50〜200μmがより好ましく、60〜150μmがさらに好ましい。上記下限値未満では、包装体用フィルム1の強度が低下するおそれがあり、上記上限値超では、包装体用フィルム1の柔軟性が低下して取り扱いが煩雑になるおそれがある。
【0012】
<基材>
基材10は、樹脂製フィルム、紙、及びこれらの積層体等が挙げられる。
樹脂製フィルムとしては、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート等のポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)等のポリオレフィン、二軸延伸ナイロン等のポリアミド(PA)等、及びこれらの積層体が挙げられる。中でも、PET、ポリプロピレン(PP)、PAが好ましく、二軸延伸PET、OPP、PAがより好ましい。
積層体としては、上記樹脂製フィルム同士の積層体が挙げられる。
この基材10は、その表面や層間に印刷が施されていてもよい。
【0013】
基材10の厚さは、材質や構成等を勘案して決定され、例えば、5〜100μmが好ましく、10〜50μmがより好ましい。上記下限値未満では、包装体用フィルム1の強度が低下するおそれがあり、上記上限値超では、包装体用フィルム1の柔軟性が損なわれ、取り扱いが煩雑になるおそれがある。
【0014】
<バリア材>
バリア材20は、水蒸気バリア性及びガスバリア性を有する。即ち、本発明におけるバリア材は、水蒸気の透過と臭気の透過を抑制する役割を有する。
バリア材20としては、水蒸気の透過と臭気の透過を抑制できるバリア材、水蒸気の透過を抑制できるバリア材と臭気の透過を抑制できるバリア材との積層体が挙げられる。
また、バリア材20として、水蒸気の透過と臭気の透過を抑制できるバリア材と、水蒸気の透過を抑制できるバリア材又は臭気の透過を抑制できるバリア材との積層体を用いてもよい。
水蒸気の透過と臭気の透過を抑制できるバリア材としては、アルミニウム箔、銅箔等の金属箔、アルミニウム等の金属が蒸着された金属蒸着フィルム又はシリカが蒸着されたシリカ蒸着フィルム等が挙げられる。
水蒸気の透過を抑制できるバリア材としては、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、OPP等が挙げられる。
臭気の透過を抑制できるバリア材としては、エチレン−ビニルアルコール重合体(EVOH)、PA、ポリアクリロニトリル(PAN)等が挙げられる。
【0015】
バリア材20の水蒸気透過度は、3g/(m
2・24h)以下が好ましく、1g/(m
2・24h)以下がより好ましい。上記上限値以下であれば、内容物の本来の臭気が維持されやすくなり、異臭が低減されやすくなる。水蒸気透過度は、JIS K7129(2008)のモコン法により求められる。
バリア材20のガス透過度は、5cm
3/(m
2・atm・24h)[=4.93cm
3/(m
2・MPa・24h)]以下が好ましく、1cm
3/(m
2・atm・24h)[=0.987cm
3/(m
2・MPa・24h)]以下がより好ましい。上記上限値以下であれば、内容物の本来の臭気が維持されやすくなる。ガス透過度は、JIS K7126のモコン法により求められる。
【0016】
バリア材20の厚さは、材質や構成等を勘案して決定される。バリア材20として金属箔、金属蒸着フィルムを用いる場合、バリア材20の厚さは、例えば、6〜20μmが好ましく、7〜12μmがより好ましい。上記下限値未満では、水蒸気バリア性、臭気バリア性が低下するおそれがあり、上記上限値超では、包装体用フィルム1の柔軟性が損なわれ、取り扱いが煩雑になるおそれがある。
バリア材20として樹脂製フィルムを用いる場合、バリア材20の厚さは、例えば、10〜30μmが好ましく、12〜15μmがより好ましい。上記下限値未満では、水蒸気バリア性、臭気バリア性が低下するおそれがあり、上記上限値超では、包装体用フィルム1の柔軟性が損なわれ、取り扱いが煩雑になるおそれがある。
【0017】
<シーラント材>
シーラント材30は、バリア材20側から順に、ラミネート層32と、ゼオライト含有層34と、ヒートシール層36とが配された積層体である。
【0018】
≪ラミネート層≫
ラミネート層32は、主にシーラント材30とバリア材20との接着性を高める役割を有する。
ラミネート層32を構成する樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状LDPE(LLDPE)、MDPE、HDPE、PP等のポリオレフィン、EVOH、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、アイオノマー等が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0019】
ラミネート層32の厚さは、5〜50μmが好ましく、10〜20μmがより好ましい。上記下限値未満では、バリア材20に対するシーラント材30の接着強度が低下するおそれがあり、上記上限値超では、包装体用フィルム1が厚くなりすぎて、柔軟性が損なわれるおそれがある。
【0020】
≪ゼオライト含有層≫
ゼオライト含有層34は、親水性ゼオライト及び疎水性ゼオライトを含有する樹脂フィルムである。
ゼオライト含有層34を構成する樹脂としては、ラミネート層32を構成する樹脂と同様のものが挙げられる。
【0021】
ゼオライト含有層34に含まれるゼオライトは、親水性ゼオライト及び疎水性ゼオライトである。ゼオライト含有層34は、親水性ゼオライトと疎水性ゼオライトとを含有することで、内容物から生じた異臭を吸着し、かつ内容物の本来の臭気を良好に維持できる。
【0022】
親水性ゼオライトは、SiO
2/Al
2O
3で表されるモル比(以下、SiO
2/Al
2O
3比ということがある)が5未満のものである。親水性ゼオライトのSiO
2/Al
2O
3比は、1〜4.9が好ましく、1〜3がより好ましい。上記下限値は、ゼオライトにおける理論上のSiO
2/Al
2O
3比の最低値である。上記上限値以下であれば、内容物の本来の臭気を維持しやすくなる。
【0023】
親水性ゼオライトを構成する塩は、特に限定されないが、Naイオン、Kイオン、Caイオン、Mgイオン等が挙げられ、中でも、内容物の本来の臭気を維持しやすい点から、Naイオン、Caイオンが好ましい。
親水性ゼオライト中の結晶水の量(結晶水量)は、親水性ゼオライト1モル当たり150モル以上が好ましく、200モル以上がより好ましい。前記下限値以上であれば、内容物の本来の臭気を維持しやすくなる。
親水性ゼオライトとしては、例えば、モレキュラーシーブ(商品名、ユニオン昭和株式会社製)、ゼオラム(商品名、東ソー株式会社製)等が挙げられる。
【0024】
親水性ゼオライトの平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、5〜50μmが好ましく、5〜30μmがより好ましく、5〜20μmがさらに好ましく、10〜20μmが特に好ましい。上記下限値未満では、ゼオライト含有層34を設ける際に、親水性ゼオライトが二次凝集して粒子径が大きくなりやすく、この二次凝集した粒子がゼオライト含有層34を破損して、ゼオライト含有層34を設けた効果が低下するおそれがある。上記上限値超では、親水性ゼオライトの粒子径が大きすぎて、親水性ゼオライトがゼオライト含有層34を破損して、ゼオライト含有層34を設けた効果が低下するおそれがある。
親水性ゼオライトの平均粒子径は、レーザー回折法により測定される体積標準のメジアン径である。
【0025】
疎水性ゼオライトは、SiO
2/Al
2O
3で表されるモル比が5以上のものである。
本発明においては、疎水性ゼオライトとしてSiO
2/Al
2O
3比が50〜80のものを用いる。かかる疎水性ゼオライトを用いることで、内容物から生じた異臭を選択的に吸着できる。
【0026】
疎水性ゼオライトを構成する塩は、親水性ゼオライトを構成する塩と同様である。
疎水性ゼオライト中の結晶水の量(結晶水量)は、疎水性ゼオライト1モル当たり350モル以下が好ましく、300モル以下がより好ましい。
疎水性ゼオライトとしては、例えば、疎水性モレキュラーシーブ(商品名、ユニオン昭和株式会社製)、ハイシリカゼオライト(商品名、東ソー株式会社製)等が挙げられる。
【0027】
疎水性ゼオライトの平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、1〜50μmが好ましく、1〜30μmがより好ましく、2〜20μmがさらに好ましく、3〜10μmが特に好ましい。疎水性ゼオライトの平均粒子径が、前記の好ましい範囲であると、疎水性ゼオライトが二次凝集等せずに異臭に対して充分に作用でき、異臭の吸着性が高められやすくなる。
【0028】
ゼオライト含有層34中、親水性ゼオライトと疎水性ゼオライトとの合計量(ゼオライト含有量)は、10〜70質量%が好ましく、25〜50質量%がより好ましい。ゼオライト総含有量が上記下限値以上であれば、異臭の吸着性をより高めやすくなり、内容物の本来の臭気を維持しやすくなる。ゼオライト総含有量が上記上限値以下であれば、ゼオライト含有層を欠損なく形成しやすい。
【0029】
親水性ゼオライト/疎水性ゼオライトで表される質量比(以下、「親水/疎水比」ということがある)は、2/8〜7/3が好ましく、3/7〜5/5がより好ましい。親水/疎水比が前記の範囲であると、異臭の選択吸着性が高められ、内容物の本来の臭気を維持しやすくなる。親水性ゼオライト/疎水性ゼオライトで表される質量比が2/8未満であると、異臭の選択吸着性が充分に得られなくなり、内容物の本来の臭気の一部が吸着され、香気成分のバランスが崩れて、コーヒー本来の臭気が感じられ難くなる。
【0030】
ゼオライト含有層34の厚さは、15μm以上であり、15〜100μmが好ましく、20〜80μmがより好ましく、40〜60μmがさらに好ましい。上記の好ましい範囲であると、異臭の吸着性が高められ、内容物の本来の臭気が維持されやすくなる。ゼオライト含有層34の厚さが15μm未満であると、異臭の吸着性が充分に得られなくなる。
【0031】
≪ヒートシール層≫
ヒートシール層は、包装体用フィルムのシール性を高める。
ヒートシール層36としては、ラミネート層32と同様のものが挙げられる。このなかでも、LDPE、LLDPE、MDPE、HDPEが好ましく、LDPE、LLDPEがより好ましい。
ヒートシール層36は、単層構造でもよいし、多層構造でもよい。
また、例えば、ヒートシール層36は、イージーピール性を有してもよい。イージーピール性を有するヒートシール層36としては、相分離をする凝集剥離タイプ及び被着体との界面で剥離する界面剥離タイプ等のいずれの剥離タイプでもよい。
【0032】
ヒートシール層36の厚さは、材質等を勘案して決定され、例えば、5〜130μmが好ましく、5〜90μmがより好ましく、10〜60μmがさらに好ましく、10〜50μmが特に好ましく、20〜50μmが最も好ましい。ヒートシール層36の厚さが上記下限値以上であると、加熱処理した際に、ゼオライト含有層の親水性ゼオライト及び疎水性ゼオライトが活性化されやすくなり、また、該活性化された状態が保持されやすくなる。ヒートシール層36の厚さが上記上限値以下であると、異臭の吸着性が高められやすくなり、内容物の本来の臭気が維持されやすくなる。
【0033】
<包装体用フィルムの製造方法>
包装体用フィルム1の製造方法は、上記バリア材とシーラント材から積層フィルムを製造する工程(積層フィルム製造工程)と、該積層フィルムに加熱処理を施す工程(加熱処理工程)とを備える。
【0034】
≪積層フィルム製造工程≫
積層フィルム製造工程では積層フィルムが製造される。積層フィルムの製造方法としては、従来公知の製造方法が挙げられ、例えば以下の方法が挙げられる。
本実施形態の積層フィルムの製造方法は、基材10を得る工程(基材製造工程)と、シーラント材30を得る工程(シーラント材製造工程)と、基材10とバリア材20とシーラント材30とを積層する工程(積層工程)とを備える。
【0035】
基材製造工程で基材10を得る方法は、基材10の材質や構成等に応じて、インフレーション法、Tダイ法、共押出法等、従来公知の方法から選択される。
【0036】
シーラント材製造工程でシーラント材30を得る方法は、シーラント材30の材質や構成等に応じて、従来公知の方法から選択される。
シーラント材30を得る方法としては、例えば、Tダイ共押出機、インフレーション共押出機等を用いた共押出法によって、ラミネート層32とゼオライト含有層34とヒートシール層36との積層体であるシーラント材30を得る方法が挙げられる。
【0037】
積層工程で基材10とバリア材20とシーラント材30とを積層する方法は、例えばドライラミネート法等の従来公知の方法から選択される。
ドライラミネート法では、例えば、積層しようとする一方の材に接着剤を塗布し、乾燥後にこれを他の材に圧着して積層フィルムが得られる。得られた積層フィルムは、例えばロール状に巻き取られる。
【0038】
≪加熱処理工程≫
上記のようにして積層フィルムを製造した後、積層フィルムに加熱処理を施す加熱処理工程を行う。
積層フィルムを加熱処理することでゼオライト含有層中の親水性ゼオライト及び疎水性ゼオライトが活性化される。親水性ゼオライトが活性化されることで、内容物の本来の臭気が維持されやすくなる。疎水性ゼオライトが活性化されることで、異臭の吸着性が高められる。
本発明におけるゼオライト含有層は、バリア材とヒートシール層との間に設けられる。即ち、ゼオライト含有層が、直接、外気(水蒸気)と接触しない構成とされている。これにより、加熱処理が施された際に、ゼオライト含有層の親水性ゼオライト及び疎水性ゼオライトが充分に活性化される。また、該活性化された状態が保持されやすくなる。
加熱処理の温度は、30〜60℃であり、35〜50℃が好ましい。
加熱処理の温度が前記下限値未満であると、疎水性ゼオライト及び親水性ゼオライトの活性化が不充分となり、異臭の吸着性及び内容物の本来の臭気の維持性が充分に得られない。加熱処理の温度が前記上限値超であると、積層体を構成するフィルムが熱により損傷を受ける場合がある。
加熱処理の時間は、5時間以上であり、5〜96時間が好ましく、12〜48時間がより好ましい。加熱処理の時間が前記下限値未満であると、疎水性ゼオライト及び親水性ゼオライトの活性化が不充分となり、異臭の吸着性及び内容物の本来の臭気の維持性が充分に得られない。一方、加熱処理の時間が上記上限値を超えても、親水性ゼオライト及び疎水性ゼオライトがそれ以上活性化されず、加熱処理の時間が無駄となり生産性が低下するおそれがある。
積層フィルムの加熱処理は、従来公知の恒温室等で行うことができる。
なお、この加熱処理工程が施された積層フィルムと、そうでない積層フィルムとは、例えば両者の接着剤の硬化状態の分析を行うこと等で判別できる。
【0039】
<包装体>
本実施形態の包装体は、本実施形態の包装体用フィルムが用いられたものである。包装体としては、例えば、包装体用フィルム1のヒートシール層36同士をヒートシールして製袋された袋が挙げられる。包装体の形態としては、例えば、合掌貼り袋、三方シール袋、四方シール袋、ガゼット袋、スタンド袋、これらのチャック付き袋等が挙げられる。
また、例えば、包装体としては、開口部を有する容器本体と、包装体用フィルム1からなる蓋体とを備え、容器本体の開口部周縁にヒートシール層36を当接し、前記包装体用フィルム1を容器本体にヒートシールした容器が挙げられる。この場合の容器本体の材質としては、特に限定されず、例えば、PET、金属、紙等が挙げられる。
【0040】
本実施形態の包装体用フィルムによれば、異臭の選択吸着性に優れ、内容物の本来の臭気の維持性に優れる。
このため、本実施形態の包装体用フィルムは、コーヒー(コーヒー豆)、緑茶や紅茶等の茶(茶葉)等の、異臭(オフフレーバー)の抑制、内容物の本来の臭気の維持が求められる飲料や食品等の包装用フィルムとして好適である。特にコーヒーには、その独特な臭気の維持や、異臭(オフフレーバー)の抑制が求められる。本実施形態の包装体用フィルムは、内容物の本来の臭気の維持性、異臭の抑制性に優れており、焙煎されたコーヒー豆又はその粉砕体の包装用として好適である。
また、本発明の包装体用フィルムから製袋されてなる包装体によれば、上記の飲料や食品等を包装して保管した場合でも、保管中の飲料や食品の本来の臭気が維持され、異臭が抑制されるため、保管後に包装体を開封した際に、飲料や食品の本来の臭気が充分に感じられる。
【0041】
(第二の実施形態)
本発明の第二の実施形態にかかる包装体用フィルムについて、図面を参照して説明する。
図2の包装体用フィルム100は、バリア材120と、シーラント材30とがこの順で積層されたものである。即ち、包装体用フィルム100は、バリア材120と、バリア材120の一方の面に設けられたシーラント材30とを備える。
本実施形態において、第一の実施形態と異なる点は、バリア材120が基材を兼ねている点である。
【0042】
バリア材120は、第一の実施形態における基材10とバリア材20とを兼ねる材質である。
バリア材120としては、PET、OPP、CPP、HDPE、MDPE等、第一の実施形態における基材10と同様の樹脂製フィルムに、アルミニウム等の金属が蒸着された金属蒸着フィルム又はシリカが蒸着された蒸着フィルムが挙げられる。この中でも金属蒸着フィルムが好ましい。
バリア材120として蒸着フィルムを用いることで、水蒸気の透過と臭気の透過を抑制することができる。
【0043】
バリア材120の厚さは、第一の実施形態における基材10の厚さと同様である。
包装体用フィルム100の製造方法としては、従来公知の製造方法を採用できる。例えば、バリア材120として蒸着フィルムを得、バリア材120の蒸着面とラミネート層32とが当接するように、バリア材120とシーラント材30とを重ね、これを押圧しつつ加熱する方法が挙げられる。
【0044】
本実施形態によれば、包装体用フィルムを薄肉化できるため、柔軟性のさらなる向上を図れる。
【0045】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、シーラント材がラミネート層を備えるが、本発明はこれに限定されず、ラミネート層を省略し、ゼオライト含有層がラミネート層を兼ねてもよい。ただし、バリア材とシーラント材との接着性をより高める観点からは、ラミネート層を備えることが好ましい。
【実施例】
【0046】
以下、実施例を示して本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
本実施例において使用した材料は下記のとおりである。
【0047】
(使用材料)
<基材>
・PA:ナイロン、ハーデンフィルム N1102(商品名)、東洋紡株式会社製。
・PET:ルミラー(商品名)、東レフィルム加工株式会社製。
<バリア材>
・Al:アルミニウム箔、株式会社UACJ製。
・EVOH:エバール(商品名)、クラレ株式会社製。
・Al蒸着PET:VM−PET(商品名)、東レフィルム加工株式会社製。
<シーラント材>
・PE:LLDPE、リックス(商品名)、東洋紡株式会社製。
<ゼオライト>
・親水性ゼオライト:平均粒子径=10μm、Naイオン、SiO
2/Al
2O
3比=2.3、結晶水量=240モル。
・疎水性ゼオライト:平均粒子径=4μm、Naイオン、SiO
2/Al
2O
3比=70、結晶水量=276モル。
【0048】
(実施例1〜7、比較例1〜6)
<実施例1〜7、比較例2〜3、5>
≪積層フィルム製造工程≫
表1の基材、バリア材及びシーラント材を積層して実施例1〜7及び比較例2〜3、5の構成に従った積層フィルムを製造した。シーラント材は、各層の構成原料が共押出機により成形されたものである。また、ラミネート層がバリア材と当接するように基材とバリア材とシーラント材とを重ねてドライラミネートした。
なお、実施例2、6は、バリア材が基材を兼ねる構成であり、バリア材のPETが最外層となる配置である。また、実施例6は、Al蒸着PETの一方の面にEVOHを積層してバリア材としたものである。
≪加熱処理工程≫
得られた積層フィルムを、表1に示す温度及び時間で加熱処理して、実施例1〜7、比較例2〜3、5の包装体用フィルムを製造した。
<比較例1、6>
バリア材を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして、包装体用フィルムを製造した。この際、ラミネート層が基材と当接するように基材とシーラント材とを配置した。
<比較例4>
加熱処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例4の積層フィルムを製造した。(以下、比較例4の積層フィルムも、他の実施例と同様に「包装体用フィルム」という。)
【0049】
【表1】
【0050】
(評価方法)
各例で得られた包装体用フィルムを用い、200mm×300mmの平袋を作製した。
次いで、コーヒー豆を焙煎し、焙煎後のコーヒー豆300gを、上記の平袋に入れ密封した後、30℃、湿度50%RHの環境下において1カ月間保管した。
保管後の平袋を開封し、その際に感じるコーヒー本来の臭気及び異臭を、パネラー5名が下記判断基準により採点した。パネラー5名の採点結果の平均値を下記評価基準に分類して評価した。
評価結果を表2に示す。
【0051】
[コーヒー本来の臭気の判断基準]
4点:本来の臭気が弱まらずに残存している。
3点:本来の臭気がやや弱まっている。
2点:本来の臭気が半分程度に弱まっている。
1点:本来の臭気が非常に弱まっている。
0点:本来の臭気を感じない。
[コーヒー本来の臭気の評価基準]
◎:3点以上。
○:2点以上3点未満。
△:1点以上2点未満。
×:1点未満。
【0052】
[異臭の判断基準]
4点:非常に強い異臭を感じる。
3点:やや強い異臭を感じる。
2点:弱い異臭を感じる。
1点:異臭をわずかに感じる。
0点:異臭を全く感じない。
[異臭の評価基準]
◎:1点未満。
○:1点以上2点未満。
△:2点以上3点未満。
×:3点以上。
【0053】
(総合評価)
上記「コーヒー本来の臭気」、「異臭」の評価結果に基づき、各例の包装体用フィルムを下記のように分類して総合評価した。総合評価がA、Bのものを合格とした。
A:上記「コーヒー本来の臭気」、「異臭」の各評価において、評価結果がすべて「◎」のもの。
B:上記「コーヒー本来の臭気」、「異臭」の各評価において、評価結果が、少なくとも1つは「○」であり、かつ、「△」、「×」がないもの。
C:上記「コーヒー本来の臭気」、「異臭」の各評価において、評価結果が、少なくとも1つは「△」であり、かつ、「×」がないもの。
D:上記「コーヒー本来の臭気」、「異臭」の各評価において、評価結果が、少なくとも1つは「×」であるもの。
【0054】
【表2】
【0055】
表2に示すように、本発明を適用した実施例1〜7は、総合評価が「A」であった。
一方、基材としてPAを用い、バリア材を備えない包装体用フィルム(比較例1)を用いた場合、コーヒー本来の臭気の残存性が充分でなく、異臭の抑制が充分でなかった。
これは、外部の水蒸気が包装体内に透過し、コーヒー本来の臭気に含まれる水溶性の高い香気成分を取り込んだことにより、コーヒー本来の臭気の残存性が低下するとともに、香気成分のバランスが崩れて、異臭(オフフレーバー)を感じることになったものと考えられる。
ゼオライト含有層が10μmPEの包装体用フィルム(比較例2)を用いた場合、コーヒー本来の臭気の残存性が充分でなく、異臭の抑制が充分でなかった。
これは、ゼオライト含有層の厚みが充分でなく、ゼオライト含有層の疎水性ゼオライトに異臭が充分に吸着されず、異臭(オフフレーバー)を感じるようになったこと、包装体内の水蒸気が親水性ゼオライトに充分に吸着されずに包装体内にとどまり、これにコーヒー本来の臭気が取り込まれるとともに、臭気成分のバランスが崩れ、コーヒー本来の臭気を感じ難くなったためと考えられる。
【0056】
ゼオライト含有層における親水性ゼオライトと疎水性ゼオライトの親水/疎水比が1/9の包装体用フィルム(比較例3)を用いた場合、コーヒー本来の臭気の残存性が充分でなく、異臭の抑制が充分でなかった。
これは、ゼオライト含有層における疎水性ゼオライトの割合が大きすぎ、異臭の選択吸着性が充分に得られなくなり、ゼオライト含有層にコーヒー本来の臭気の一部が吸着され、コーヒー本来の臭気の残存性が低下するとともに、臭気成分のバランスが崩れ、異臭(オフフレーバー)を感じるようになったためと考えられる。
加熱処理を行わなかった包装体用フィルム(比較例4)を用いた場合、コーヒー本来の臭気の残存性が充分でなく、異臭の抑制が充分でなかった。
これは、熱処理を行わなかったことで、ゼオライト含有層の疎水性ゼオライト及び親水性ゼオライトが充分に活性化されず、疎水性の高い異臭成分が疎水性ゼオライトに充分に吸着されず、異臭(オフフレーバー)を感じるようになったこと、包装体内の水蒸気が親水性ゼオライトに充分に吸着されずに包装体内にとどまり、これにコーヒー本来の臭気が取り込まれるとともに、臭気成分のバランスが崩れ、コーヒー本来の臭気を感じ難くなったためと考えられる。
【0057】
ヒートシール層を有しない包装体用フィルム(比較例5)を用いた場合、コーヒー本来の臭気の残存性が充分でなく、異臭の抑制が充分でなかった。
これは、ヒートシール層を有しないことにより、ゼオライト含有層が、直接、水蒸気と接触することになり、熱処理を行っても疎水性ゼオライト及び親水性ゼオライトの活性化が不充分となったこと、さらに、該活性化された状態も保持され難くなったためと考えられる。これにより、疎水性の高い異臭成分が疎水性ゼオライトに充分に吸着されず、異臭(オフフレーバー)を感じるようになり、包装体内の水蒸気が親水性ゼオライトに充分に吸着されずに包装体内とどまり、これにコーヒー本来の臭気が取り込まれるとともに、臭気成分のバランスが崩れ、コーヒー本来の臭気を感じ難くなったためと考えられる。
基材としてPETを用い、バリア材を備えない包装体用フィルム(比較例6)を用いた場合、コーヒー本来の臭気の残存性が充分でなかった。
これは、臭気の透過を抑制できず、コーヒー本来の臭気を包装体内にとどめることができなかったためと考えられる。
以上の結果から、本発明を適用することで、内容物の本来の臭気を維持でき、異臭(オフフレーバー)を低減できることが確認できた。