特許第6586687号(P6586687)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6586687
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】保護衣料
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/06 20060101AFI20191001BHJP
   A41D 13/08 20060101ALI20191001BHJP
   A61F 5/02 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
   A41D13/06
   A41D13/08
   A61F5/02 N
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-6241(P2015-6241)
(22)【出願日】2015年1月15日
(65)【公開番号】特開2016-132829(P2016-132829A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年9月14日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ・展示会名 CROSSPRO 2015SPRING&SUMMER展示会 開催場所 岡本株式会社 本社 スポーツ&ウェルネスショールーム(大阪市西区西本町1丁目11−9) 展示日 平成26年7月16日〜7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】592154411
【氏名又は名称】岡本株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】大沼 信秋
(72)【発明者】
【氏名】宗川 知加
(72)【発明者】
【氏名】牧川 方昭
【審査官】 ▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−038230(JP,A)
【文献】 特開2016−084570(JP,A)
【文献】 特表2007−500586(JP,A)
【文献】 特開平10−286275(JP,A)
【文献】 特開2012−012722(JP,A)
【文献】 特開2012−154007(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0130215(US,A1)
【文献】 米国特許第4366813(US,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2009−0085758(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/00−13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用される脚の長手方向へ延伸し、膝関節の内側または外側を通るように配置される第1サポート部と、
前記第1サポート部の対向する2つの長辺のうち膝蓋側に位置する第1長辺から該膝蓋の上縁部に沿って斜め上方向へ延伸して大腿部を周囲し、前記第1長辺と対向する前記第1サポート部の第2長辺に至る第2サポート部と、
前記第1長辺から前記膝蓋の下縁部に沿って斜め下方向へ延伸して下腿部を周囲し、前記第2長辺に至る第3サポート部と、を備え、
前記第1サポート部は、前記第2サポート部および前記第3サポート部よりも幅が大きく、かつ、少なくとも、前記長手方向における第2サポート部の上端と第3サポート部の下端との間隔に相当する長さを有し、
前記第2サポート部と前記第3サポート部とは、前記第1長辺から延伸して前記第2長辺に至るまでの間、互いに接合されず離間していることを特徴とする保護衣料。
【請求項2】
前記第1長辺と前記第2サポート部との接合点である第1接合点、前記第2長辺と前記第2サポート部との接合点である第2接合点、前記第1長辺と前記第3サポート部との接合点である第3接合点、および前記第2長辺と前記第3サポート部との接合点である第4接合点で囲まれる前記第1サポート部の領域が、前記膝関節の側部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の保護衣料。
【請求項3】
少なくとも前記膝関節を被覆するとともに、前記第1サポート部、前記第2サポート部、および前記第3サポート部が設けられた筒状の本体部と、
前記本体部の上端および下端に設けられ、前記本体部を前記脚に固定するアンカー部と、をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の保護衣料。
【請求項4】
前記本体部は、前記保護衣料の着用時に前記膝蓋上に配置される部分を目視で識別可能な識別部を有することを特徴とする請求項に記載の保護衣料。
【請求項5】
前記第1サポート部、前記第2サポート部、前記第3サポート部、前記本体部および前記アンカー部は、編機によって連続的に編成されており、
前記第1サポート部、前記第2サポート部、および前記第3サポート部は、前記本体部よりも編目が小さい、または、前記本体部とは異なる編目構造で編成されている、または、前記本体部よりも編目が小さく、かつ、前記本体部とは異なる編目構造で編成されていることにより、前記本体部よりも周方向の伸縮性が低いことを特徴とする請求項またはに記載の保護衣料。
【請求項6】
前記第2サポート部と前記第3サポート部とは、前記第1サポート部の延伸方向と直交し、かつ、前記第1接合点、前記第2接合点、前記第3接合点および前記第4接合点で囲まれる前記領域の中心を通る仮想平面に対して、略対称となるように設けられていることを特徴とする請求項2に記載の保護衣料。
【請求項7】
膝関節部分に着用するサポーターであることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の保護衣料。
【請求項8】
着用される腕の長手方向へ延伸し、肘関節の内側または外側を通るように配置される第1サポート部と、
前記第1サポート部の対向する2つの長辺のうち肘頭側に位置する第1長辺から該肘頭の上縁部に沿って斜め上方向へ延伸して上腕部を周囲し、前記第1長辺と対向する前記第1サポート部の第2長辺に至る第2サポート部と、
前記第1長辺から前記肘頭の下縁部に沿って斜め下方向へ延伸して前腕部を周囲し、前記第2長辺に至る第3サポート部と、を備え、
前記第1サポート部は、前記第2サポート部および前記第3サポート部よりも幅が大きく、かつ、少なくとも、前記長手方向における第2サポート部の上端と第3サポート部の下端との間隔に相当する長さを有し、
前記第2サポート部と前記第3サポート部とは、前記第1長辺から延伸して前記第2長辺に至るまでの間、互いに接合されず離間していることを特徴とする保護衣料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に肘または膝を安定させるための保護衣料に関し、より詳細には、肘関節または膝関節を所定の方向へ誘導する保護衣料に関する。
【背景技術】
【0002】
太腿(大腿部)の外側を覆う腸脛靭帯は、骨盤を構成する腸骨の上端部に位置する腸骨稜から膝と足首とを繋ぐ脛骨の上端付近にかけて延在し、膝関節を安定させる働きがある。この腸脛靭帯は、膝関節の伸展時には大腿骨外側上顆の前方に位置し、屈曲時には大腿骨外側上顆の後方へ移動する。そのため、膝関節を軽度に屈曲させた時に脛骨の内旋が生じ、腸脛靭帯に過度の緊張が加わった場合に、腸脛靭帯と大腿骨外側上顆との間に圧迫や摩擦が生じ、これにより腸脛靭帯炎が生じる。
【0003】
具体的な事例として、ランニングに伴う発症がランナー膝との通称で知られている。すなわち、ランニング動作の「着地」から「蹴りだし」にかけて、膝関節の内反(外方向の捻れ)が生じる。この膝関節の内反によって、腸脛靭帯と大腿骨外側上顆との間に圧迫や摩擦が生じることにより、腸脛靭帯炎が生じる。このような腸脛靭帯炎の対策として、外反方向(内側)へ膝関節を誘導するための保護衣料が知られている。
【0004】
膝の下部に位置する鵞足とは、脛骨の内側付近に位置する縫工筋、薄筋、半腱様筋の腱が扇状に付着した部位を指す。この鵞足部は、ハムストリングによる牽引力が鵞足部に繰り返し加わり、膝関節の屈伸に伴う膝内側に位置する副靭帯の前方繊維と鵞足との間の摩擦が繰り返されることにより、腱の付着部や鵞足滑液包の炎症を生じ、これにより鵞足炎が生じる。鵞足炎は、特に陸上の長・短距離競技やサッカーの競技者に多く見られるスポーツ障害で、膝内側の疼痛及び圧痛、症例により膝の屈伸での軋轢音や腫脹を生じさせる。このような鵞足炎の対策として、内反方向(外側)へ膝関節を誘導する保護衣料が知られている。
【0005】
従来、膝関節を所定の方向へ誘導する技術に関して、特許文献1〜3には各種の保護衣料が提案されている。
【0006】
例えば特許文献1には、膝関節の内反変形を矯正する膝用のサポーターが提案されている。このサポーターでは、本体部を膝関節周囲に着用した状態で、本体部上に保持された帯状部によって内反変形に伴い外側にずれた腓骨小頭部を内側へ押圧することにより、内反変形の矯正を図っている。
【0007】
また、特許文献2には、過度の内旋や外反から肘または膝を保護するサポーターが提案されている。このサポーターは、肘または膝を被覆する本体と、この本体に一体的に設けられたサポート部分とを備える。サポート部分は、膝または肘と係合する係合部と、この係合部の上下両側にそれぞれ位置するアンカー部と、少なくとも一方側のアンカー部と係合部とを接続する接続部とを有し、接続部によってアンカー部と係合部とを接続することにより、肢軸に対する肘または膝の体幹側への変位を抑制している。
【0008】
さらに、特許文献3には、膝関節の内旋や外旋を矯正・軽減する膝用のサポーターが提案されている。このサポーターは、膝関節を被覆するサポーター本体部と、膝関節の内旋方向とは反対方向へ引張しつつ螺旋状にサポーター本体部の外面に巻着されるストラップとを備える。さらに、サポーター本体部の内面またはストラップの内面に、着用時に膝下の脛骨部内側に当接する突出部が付設される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−240022号公報(2010年10月28日公開)
【特許文献2】特開2008−106404号公報(2008年5月8日公開)
【特許文献3】国際公開第2013/021743号(2013年2月14日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述のような従来技術では以下のような課題がある。すなわち、特許文献1では、着用時にサポーターの位置ずれが生じ易く、サポーターによる外反方向への適切な誘導効果を継続して得られないという課題がある。
【0011】
また、特許文献2では、肘頭または膝蓋の周りの係合部がアンカー部に接続されるため、関節の変位を抑制する程度の効果は得られるが、スポーツ障害時に必要となる関節の変位を誘導する効果までは得ることができないという課題がある。
【0012】
さらに、特許文献3では、サポーター本体の外側に別体のストラップが巻着されるため、サポーター全体の厚みが大きくなり、着脱も困難であるという課題がある。
【0013】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、着用時における位置ずれを抑制し、関節に対する高い誘導効果を継続して得ることができる着脱容易なサポーターなどの保護衣料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明に係る保護衣料は、着用される脚の長手方向へ延伸し、膝関節の内側または外側を通るように配置される第1サポート部と、前記第1サポート部の対向する2つの長辺のうち膝蓋側に位置する第1長辺から該膝蓋の上縁部に沿って斜め上方向へ延伸して大腿部を周囲し、前記第1長辺と対向する前記第1サポート部の第2長辺に至る第2サポート部と、前記第1長辺から前記膝蓋の下縁部に沿って斜め下方向へ延伸して下腿部を周囲し、前記第2長辺に至る第3サポート部と、を備えることを特徴としている。
【0015】
上記の構成では、脚の長手方向へ延伸する第1サポート部を設けることにより、膝関節の屈曲による生地の伸縮が抑制され、その結果、保護衣料の位置ずれを好適に抑制することができる。さらに、膝関節の屈伸動作において、歩行の前進方向を表側、後退方向を裏側、身体の上下中心軸に向かう方向を内側、離れる方向を外側としたとき、膝関節の表側および裏側に比べて、膝関節の内側または外側は相対的に皮膚の移動域が狭いため、膝関節の屈伸動作による生地の縮みが少ない。そのため、脚の長手方向へ延伸する第1サポート部を膝関節の内側または外側に備えることによって、保護衣料の位置ずれをさらに好適に抑制することができる。
【0016】
また、上記の構成では、膝蓋の上縁部に沿って斜め上方向へ延伸して大腿部を周囲する第2サポート部によって、第1サポート部の第2つの長辺(第1長辺・第2長辺)と第2サポート部との接合点が斜め上方向へ引張されるとともに、膝蓋の下縁部に沿って斜め下方向へ延伸して下腿部を周囲する第3サポート部によって、第1サポート部の2つの長辺(第1長辺・第2長辺)と第3サポート部との接合点が斜め下方向へ引張される。そのため、第2サポート部の斜め上方向への引張力と、第3サポート部の斜め下方向への引張力とが合わさって、内反方向または外反方向へ膝関節を誘導することができる。
【0017】
なお、本明細書において、「斜め上方向への引張力」とは、第2サポート部に沿って切断した際に生じる平面の中心に向けて、膝関節の内側または外側の部位を引張する力のことを示し、「斜め下方向への引張力」とは、第3サポート部に沿って切断した際に生じる平面の中心に向けて、膝関節の内側または外側の部位を引張する力のことを示すものとする。
【0018】
このとき、第2サポート部が大腿部を周囲するように設けられており、かつ、第3サポート部が下腿部を周囲するように設けられているため、第2サポート部および第3サポート部による強い引張力を得ることができる。その結果、内反方向または外反方向へ膝関節を効果的に誘導することができる。
【0019】
例えば、膝関節の内側に第1サポート部を配置した場合、第2サポート部および第3サポート部によって膝関節の内側から外側へ向けて引張される。その結果、内反方向へ膝関節を効果的に誘導することができる。
【0020】
一方、膝関節の外側に第1サポート部を配置した場合、第2サポート部および第3サポート部によって、膝関節の外側から内側へ向けて引張される。その結果、外反方向へ膝関節を効果的に誘導することができる。
【0021】
また、第1サポート部、第2サポート部および第3サポート部を一体的に構成することにより個別の脱着等が不要となるため、保護衣料を脱着する際の手間を軽減することができる。
【0022】
したがって、上記の構成によれば、着用時における位置ずれを抑制し、膝関節に対する高い誘導効果を得ることができる着脱容易な保護衣料を実現することができる。
【0023】
また、本発明に係る保護衣料では、前記第1長辺と前記第2サポート部との接合点、前記第2長辺と前記第2サポート部との接合点、前記第1長辺と前記第3サポート部との接合点、および前記第2長辺と前記第3サポート部との接合点で囲まれる前記第1サポート部の領域が、前記膝関節の側部に設けられていてもよい。
【0024】
上記の構成では、第1サポート部と、第2サポート部および第3サポー部との4つの接合点で囲まれる領域によって、膝関節の側部を内反方向または外反方向へ的確に押圧することができる。例えば、膝関節の外側を通るように第1サポート部を配置することによって、膝関節の外側から大腿骨外側上顆を押圧することができる。
【0025】
したがって、上記の構成によれば、より的確に膝関節を内反方向または外反方向へ誘導することができ、その結果、高い誘導効果を得ることができる。
【0026】
また、本発明に係る保護衣料では、前記第1サポート部は、前記第2サポート部および前記第3サポート部よりも幅が大きく、かつ、少なくとも、前記長手方向における第2サポート部の上端と第3サポート部の下端との間隔に相当する長さを有するように設けてもよい。
【0027】
上記の構成によれば、保護衣料の着用時における位置ずれをより効果的に抑制することができるとともに、膝関節を外反方向または内反方向へ誘導する力を長時間保持することができる。
【0028】
また、本発明に係る保護衣料では、少なくとも前記膝関節を被覆するとともに、前記第1サポート部、前記第2サポート部、および前記第3サポート部が設けられた筒状の本体部と、前記本体部の上端および下端に設けられ、前記本体部を前記脚に固定するアンカー部と、をさらに備えてもよい。
【0029】
上記の構成では、第1サポート部、前記第2サポート部、および前記第3サポート部が設けられた筒状の本体部の上端および下端にアンカー部が設けられているため、着用時における保護衣料の位置ずれ、特に、長手方向における保護衣料の位置ずれが抑制される。
【0030】
したがって、上記の構成によれば、保護衣料の位置ずれをより効果的に抑制することができる。
【0031】
また、本発明に係る保護衣料では、前記本体部は、前記保護衣料の着用時に前記膝蓋上に配置される部分を目視で識別可能な識別部を有していてもよい。
【0032】
上記の構成では、使用者は、識別部に基づいて、保護衣料の適切な着用位置を目視で認識することができる。
【0033】
したがって、上記の構成によれば、保護衣料を適切な位置に着用することが容易となり、保護衣料着用時の利便性を向上させることができる。
【0034】
また、本発明に係る保護衣料では、前記第1サポート部、前記第2サポート部、前記第3サポート部、前記本体部および前記アンカー部は、編機によって連続的に編成されており、前記第1サポート部、前記第2サポート部、および前記第3サポート部は、前記本体部よりも編目が小さい、または、前記本体部とは異なる編目構造で編成されている、または、前記本体部よりも編目が小さく、かつ、前記本体部とは異なる編目構造で編成されていることにより、前記本体部よりも周方向の伸縮性が低くてもよい。
【0035】
上記の構成によれば、他の部材との接合なども不要となり保護衣料の生産効率を維持できるとともに、各部材を連続的に編成することにより本体部の表面および裏面に不要な凹凸が生じないため快適な着用感を得ることができるため、好適である。
【0036】
また、本発明に係る保護衣料では、前記第2サポート部と前記第3サポート部とは、前記第1サポート部の延伸方向と直交し、かつ、前記膝蓋の中心を通る仮想平面に対して、略対称となるように設けられていてもよい。
【0037】
上記の構成によれば、第1サポート部の第2つの長辺(第1長辺・第2長辺)と第2サポート部との接合点における第2サポート部の引張力と、第1サポート部の第2つの長辺(第1長辺・第2長辺)と第3サポート部との接合点における第3サポート部の引張力とを均等化し易くなる。
【0038】
したがって、上記の構成によれば、内反方向または外反方向へ膝関節をより適切に誘導することができる。
【0039】
また、本発明に係る保護衣料では、膝関節部分に着用するサポーターであってもよい。
【0040】
上記の構成によれば、着用時における位置ずれを抑制し、膝関節に対する高い誘導効果を得ることができる着脱容易なサポーターを実現することができる。
【0041】
上記の課題を解決するために、本発明に係る保護衣料は、着用される腕の長手方向へ延伸し、肘関節の内側または外側を通るように配置される第1サポート部と、前記第1サポート部の対向する2つの長辺のうち肘頭側に位置する第1長辺から該肘頭の上縁部に沿って斜め上方向へ延伸して上腕部を周囲し、前記第1長辺と対向する前記第1サポート部の第2長辺に至る第2サポート部と、前記第1長辺から前記肘頭の下縁部に沿って斜め下方向へ延伸して前腕部を周囲し、前記第2長辺に至る第3サポート部と、を備えることを特徴としている。
【0042】
膝関節と同様に、腕の長手方向へ延伸した第1サポート部を設けることにより、肘関節の屈曲による生地の伸縮が抑制され、その結果、保護衣料の位置のずれを好適に抑制することができる。さらに、肘関節の屈伸動作において、肘関節の表側および裏側に比べて、肘関節の内側または外側は相対的に皮膚の移動域が狭いため、肘関節の屈伸動作による生地の縮みが少ない。そのため、肘関節の長手方向へ延伸する第1サポート部を肘関節の内側または外側に備えることによって、保護衣料の位置ずれをさらに好適に抑制することができる。
【0043】
また、上記の構成では、肘頭の上縁部に沿って斜め上方向へ延伸して上腕部を周囲する第2サポート部によって、第1サポート部の第2つの長辺(第1長辺・第2長辺)と第2サポート部との接合点が斜め上方向へ引張されるとともに、肘頭の下縁部に沿って斜め下方向へ延伸して前腕部を周囲する第3サポート部によって、第1サポート部の2つの長辺(第1長辺・第2長辺)と第3サポート部との接合点が斜め下方向へ引張される。そのため、第2サポート部の斜め上方向への引張力と、第3サポート部の斜め下方向への引張力とが合わさって、内反方向または外反方向へ肘関節を誘導することができる。
【0044】
このとき、第2サポート部が上腕部を周囲するように設けられており、第3サポート部が前腕部を周囲するように設けられているため、第2サポート部および第3サポート部による強い引張力を得ることができる。その結果、内反方向または外反方向へ肘関節を効果的に誘導することができる。
【0045】
例えば、肘関節の内側に第1サポート部を配置した場合、第2サポート部および第3サポート部によって、第1サポート部と第2サポート部および第3サポー部との4つの接合点で囲まれる領域が肘関節の内側から外側へ向けて引張される。その結果、内反方向へ肘関節を効果的に誘導することができる。
【0046】
一方、肘関節の外側に第1サポート部を配置した場合、第2サポート部および第3サポート部によって、第1サポート部と第2サポート部および第3サポー部との4つの接合点で囲まれる領域が肘関節の外側から内側へ向けて引張される。その結果、外反方向へ肘関節を効果的に誘導することができる。
【0047】
また、第1サポート部、第2サポート部および第3サポート部を一体的に構成することにより個別の脱着等が不要であるため、保護衣料を脱着する際の手間を軽減することができる。
【0048】
したがって、上記の構成によれば、着用時における位置ずれを抑制し、肘関節に対する高い誘導効果を得ることができる着脱容易な保護衣料を実現することができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、着用時における位置ずれを抑制し、関節に対する高い誘導効果を継続して得ることができる着脱容易な保護衣料を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】(a)〜(d)は、実施形態に係る右足用のサポーターを示す外観図であり、(a)は、正面図であり、(b)は、背面図であり、(c)は、外側側面図であり、(d)は、内側側面図である。
図2】(a)〜(d)は、実施形態に係る左足用のサポーターを示す外観図であり、(a)は、正面図であり、(b)は、背面図であり、(c)は、外側側面図であり、(d)は、内側側面図である。
図3】実施例1の試験方法を説明するための模式図である。
図4】実施例1の試験結果を示すグラフであり、(a)は、上下方向のずれ落ち量を示し、(b)は、左右方向の回転ずれ量を示している。
図5】(a)は、実施例2の試験方法を説明するための模式図であり、(b)は、実施例2の試験結果を示すグラフである。
図6】(a)は、実施例3の試験方法を説明するための模式図であり、(b)は、実施例3の試験結果を示すグラフである。
図7】実施例3の走行時における、被験者AのY−Z方向の膝の移動軌跡を示すグラフである。
図8】(a)〜(f)は、本発明に係る左足用のサポーターの外観を示す図面代用写真である。特に、(a)は、上記サポーターの平面を示す図面代用写真であり、(b)は、上記サポーターの内側(左側)側面を示す図面代用写真であり、(c)は、上記サポーターの正面を示す図面代用写真であり、(d)は、上記サポーターの外側(右側)側面を示す図面代用写真であり、(e)は、上記サポーターの背面を示す図面代用写真であり、(f)は、上記サポーターの底面を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明の実施の一形態について、図1および図2に基づいて説明すれば以下のとおりである。本実施形態では、本発明に係る保護衣料を膝用のサポーターに適用した場合を例にして説明する。ただし、本発明は、膝用のサポーターに限られず、肘用のサポーター、その他各種の保護衣料にも好適に適用することが可能である。
【0052】
〔サポーター1の構成〕
図1の(a)〜(d)は、本実施形態に係る右足用のサポーター1を示す外観図であり、図1の(a)は、正面図であり、図1の(b)は、背面図であり、図1の(c)は、外側側面図であり、図1の(d)は、内側側面図である。
【0053】
また、図2の(a)〜(d)は、本実施形態に係る左足用のサポーター1を示す外観図であり、図2の(a)は、正面図であり、図2の(b)は、背面図であり、図2の(c)は、外側側面図であり、図2の(d)は、内側側面図である。
【0054】
本実施形態に係るサポーター1は、膝(膝関節部分)に着用されて、外反方向(内側)へ膝関節を誘導するものであり、例えば、腸脛靭帯炎の抑制、膝関節の痛みの軽減、またはO脚の矯正などの各種目的のために使用されるものである。
【0055】
図1および図2に示すように、サポーター1は、本体部2、サポート部3、およびアンカー部4を備えている。
【0056】
(本体部2)
本体部2は、伸縮性を有する生地からなり、少なくとも膝関節を被覆するものである。本体部2は、部分的にメッシュ構造が採用されており(図中網掛け部分)、良好な通気性が確保されている。本発明においては、本体部2の生地は編機によって編成しているが、織機により織成した生地を縫着することによっても形成可能である。
【0057】
本体部2の周面には、本体部2よりも伸縮性が低いサポート部3が一体的に設けられている。また、本体部2の上下両端には、伸縮性を有する生地からなるアンカー部4が一体的に設けられている。アンカー部4は、丸編機により本体部2と連続して編成されている。また、用途や目的に応じてずれ落ち防止効果を高めるために、ゴム糸の挿入などにより他の領域よりも締め付けを強めることが可能である。なお、本実施形態では、立位の状態において、使用者の頭頂部が位置する方向を「上」と称し、使用者の足裏が位置する方向を「下」と称する。
【0058】
また、本体部2は、サポーター1の着用時に、膝蓋上に配置される部分を目視で識別可能な識別部21を有している。これにより、使用者は、識別部21に基づいて、サポーター1の適切な着用位置を目視で認識することができるため、サポーター1を適切な位置に着用することが容易となる。この識別部21は、例えば、本体部2の編成組織、度目、または素材などを異ならせることによって形成可能である。
【0059】
(サポート部3)
サポート部3は、本体部2よりも伸縮性が低く、外反方向(内側)へ膝関節を押圧し、内反を抑制するものである。また、サポート部3は、本体部2よりも編目の度目を小さくするとともに、タック編みにより伸縮性を低くしている。なお、タック編みのほか、タック編み以外の編目構造の変化、低伸縮糸の挿入、樹脂などの塗布または貼付などによって伸縮性を低くすることも可能である。サポート部3は、第1サポート部31、第2サポート部32、および第3サポート部33を備えている。
【0060】
第1サポート部31は、脚の長手方向(以下、縦方向と称する。)に沿って延伸し、膝関節の内側または外側(本実施形態では外側)を通るように配置されるものである。膝関節の内側または外側に縦方向へ延伸する第1サポート部31を配置することにより、後述するように、サポーター1の位置ずれを好適に抑制することができる。
【0061】
第1サポート部31は、互いに対向する2つの長辺である、相対的に膝蓋側(膝関節の表側)に位置する第1長辺31aと、該第1長辺31aと対向する(すなわち、相対的に膝関節の裏側に位置する)第2長辺31bとを有している。
【0062】
第2サポート部32は、膝関節の外側に位置する第1サポート部31との接合部分である第1接合点(接合点)P1aおよび第2接合点(接合点)P1bを斜め上方向へ引張するものである。第2サポート部32は、第1サポート部31から膝蓋の上縁部に沿って斜め上方向へ延伸して大腿部を周囲するように設けられている。
【0063】
具体的には、第2サポート部32は、該第2サポート部32の両端が、第1サポート部31の第1長辺31aおよび第2長辺31bにおいて互いに対向する第1接合点P1aおよび第2接合点P1bに、所定の角度でそれぞれ接合されるように設けられている。これにより、第2サポート部32は、第1長辺31aにおける第1接合点P1aから膝蓋の上縁部に沿って斜め上方向へ延伸して大腿部の内側へ至り、該大腿部の内側から斜め下方向へ延伸して、第2長辺31bにおける第2接合点P1bに達することで、大腿部を周囲する。
【0064】
この第2サポート部32の幅は、非着用状態で約1.8cmの幅を一定に保っている。第2サポート部32による効果的な引張力を維持するためには、非着用状態で1.5cm以上の幅とすることが好適である。ただし、第2サポート部32の幅を過剰に大きくすると不要な圧迫感により着用感を悪化させたり、膝関節の動きを阻害するおそれがある。
【0065】
このようにして第2サポート部32を設けることによって、膝関節の外側に位置する第1接合点P1aおよび第2接合点P1bをそれぞれ斜め上方向へ引張することができる。
【0066】
第3サポート部33は、膝関節の外側に位置する第1サポート部31との接合部分である第3接合点(接合点)P2aおよび第4接合点(接合点)P2bを斜め下方向へ引張するものである。第3サポート部33は、第1サポート部31から膝蓋の下縁部に沿って斜め下方向へ延伸して下腿部を周囲するように設けられている。
【0067】
具体的には、第3サポート部33は、該第3サポート部33の両端が、第1サポート部31の2つの長辺(第1長辺31aおよび第2長辺31b)において互いに対向する第3接合点P2aおよび第4接合点P2bに、所定の角度でそれぞれ接合されるように設けられている。これにより、第3サポート部33は、第1長辺31aにおける第3接合点P2aから膝蓋の下縁部に沿って斜め下方向へ延伸して下腿部の内側へ至り、該下腿部の内側から斜め上方向へ延伸して、第2長辺31bにおける第4接合点P2bに達することで、下腿部を周囲する。
【0068】
この第3サポート部33の幅は、第2サポート部32と同様、非着用状態で約1.8cmの幅を一定に保っている。第3サポート部33による効果的な引張力を維持するためには、非着用状態で1.5cm以上の幅とすることが好適である。ただし、第3サポート部33の幅を過剰に大きくすると不要な圧迫感により着用感を悪化させたり、膝関節の動きを阻害するおそれがある。
【0069】
このようにして第3サポート部33を設けることによって、膝関節の外側に位置する第3接合点P2aおよび第4接合点P2bをそれぞれ斜め下方向へ引張することができる。
【0070】
サポーター1では、第1接合点P1aおよび第2接合点P1bが大腿骨下端の側面に、第3接合点P2aおよび第4接合点P2bが脛骨上端側面に位置しており、第1接合点P1a、第2接合点P1b、第3接合点P2aおよび第4接合点P2bで囲まれる押圧領域Rが膝関節の外側に位置するように設けられている。
【0071】
すなわち、第1接合点P1a、第2接合点P1b、第3接合点P2a、および第4接合点P2bの4点で囲まれる押圧領域Rが膝関節である大腿骨と脛骨との結節部の外側(側部)およびその近傍を覆うように設けられている。
【0072】
これにより、第2サポート部32が第1接合点P1aおよび第2接合点P1bを斜め上方向へ引張する力と、第3サポート部33が第3接合点P2aおよび第4接合点P2bを斜め下方向へ引張する力とが合わさって、第1接合点P1a、第2接合点P1b、第3接合点P2aおよび第4接合点P2bで囲まれる押圧領域Rに集中する。その結果、膝関節の外側から内側へ向けて押圧する力が、より的確に膝関節に伝わり、外反方向へ膝関節をより適切に誘導することができる。
【0073】
なお、サポーター1の位置ずれをより好適に抑制するために、第1サポート部31の幅は、第2サポート部32および第3サポート部33の幅より大きく(約3倍程度)、かつ、縦方向における第1サポート部31の長さは、少なくとも第2サポート部32の上端から第3サポート部33の下端の間隔に相当する長さ以上であることが望ましい。これにより、サポーター1の着用時における位置ずれをより効果的に抑制することができるとともに、膝関節を外反方向に誘導する力を保持することができる。本実施形態では、第1サポート部31の幅を、第2サポート部32および第3サポート部33の幅の約3倍とし、縦方向の長さは第2サポート部32の上端から第3サポート部33の下端の間隔に相当する長さとしている。
【0074】
また、第2サポート部32と第3サポート部33とは、第1サポート部31の延伸方向に直交し、かつ、膝蓋の中心(識別部21の中心)を通る仮想平面に対して、略対称(略面対称)となるように設けられていることが好ましい。これにより、押圧領域Rに対する、第2サポート部32の引張力と第3サポート部33の引張力とを均等化し易くなるため、押圧領域Rが膝関節の外側から内側へ向けて引張され、その結果、膝関節をより適切に外反方向へ誘導することができる。
【0075】
(アンカー部4)
アンカー部4は、本体部2よりも伸縮性が低い筒状(環状)部材であり、サポーター1(本体部2およびサポート部3)を脚に固定(締着)するものである。アンカー部4は、本体部2の上下両端にそれぞれ設けられており、アンカー部4が大腿部および下腿部をそれぞれ緊締することによってサポーター1を脚に固定する。
【0076】
アンカー部4は、本体部2の上端に設けられた上端アンカー部41、および本体部2の下端に設けられた下端アンカー部42を備えており、いずれも丸編機にて本体部2と連続して編成されている。
【0077】
上端アンカー部41は、本体部2の上端側の開口部に設けられ、大腿部を緊締することによってサポーター1を固定するものである。
【0078】
下端アンカー部42は、本体部2の下端側の開口部に設けられ、下腿部を緊締することによってサポーター1を固定するものである。
【0079】
上端アンカー部41および下端アンカー部42を設けることにより、着用時におけるサポーター1の位置ずれ、特に、縦方向におけるサポーター1の位置ずれを効果的に抑制することができる。
【0080】
なお、縦方向における上端アンカー部41の幅は、該縦方向における下端アンカー部42の幅よりも大きいことが好ましい。これにより、上端アンカー部41による緊締力を相対的に高めることができるため、上端アンカー部41によって本体部2の上端側を大腿部に確実に固定することができる。したがって、サポーター1がズレ落ち難くなるため、サポーター1の縦方向の位置ずれをより効果的に抑制することができる。
【0081】
このサポーター1は、上端アンカー部41の幅を約8cm、下端アンカー部42の幅を約4cmとしているがこれに限らない。ただし、これらの上端アンカー部41および下端アンカー部42の幅が過剰に大きい場合、不要な圧迫感により着用感を悪化させたり、血流を阻害するおそれがある。
【0082】
また、上端アンカー部41および下端アンカー部42の内面、すなわち、脚に当接する面に、滑り止め効果のある糸の編み込みや樹脂などの貼付または塗布などの方法により滑り止め構造が設けられていてもよい。これにより、サポーター1の縦方向の位置ずれをさらに効果的に抑制することができる。
【0083】
〔サポーター1の効果〕
膝関節の屈伸動作に伴い膝の形状は変化し、この膝の形状変化に合わせてサポーターの形状も変化する。このとき、膝の形状変化の動きにサポーターが付随できなくなった場合に、サポーターの回転方向(周方向)および縦方向(軸方向)の位置ずれが生じる。このようなサポーターの位置ずれは、例えば、膝関節屈曲時に伸びたサポーターの生地が膝関節伸展時に急激に元の形状に戻ろうとする際に生じ得る。
【0084】
そこで、脚の長手方向へ延伸した第1サポート部31を設けることにより、膝関節の屈曲による生地の伸縮が抑制され、その結果、サポーター1の位置のずれを好適に抑制することができる。さらに、膝関節の屈伸動作において、歩行の前進方向を表側、後退方向を裏側、身体の上下中心軸に向かう方向を内側、離れる方向を外側としたとき、膝関節の表側および裏側に比べて、膝関節の内側または外側は相対的に皮膚の移動域が狭いため、膝関節の屈伸動作による生地の縮みが少ない。そのため、脚の長手方向へ延伸する第1サポート部を膝関節の内側または外側に備えることによって、サポーター1の位置ずれをさらに好適に抑制することができる。
【0085】
ここで、膝関節の屈伸動作において、膝関節の表側および裏側に比べて、膝関節の内側または外側は相対的に皮膚の移動域が狭く、膝関節の屈伸動作による膝の形状変化およびそれに追随する生地の伸縮の影響を受け難い。そのため、膝関節の外側に配置された、縦方向へ延伸する低伸縮性の第1サポート部31を備えることによって、サポーター1の位置ずれを好適に抑制することができる。
【0086】
したがって、本実施形態によれば、着用時における位置ずれを抑制し、膝関節に対する高い誘導効果を継続して得ることができる着脱容易なサポーター1を実現することができる。
【0087】
なお、本実施形態では、第1サポート部31と第2サポート部32とが、第1サポート部31を挟んで互いに対向する第1接合点P1aおよび第2接合点P1bで接合され、第1サポート部31と第3サポート部33とが、第1接合点P1aおよび第2接合点P1bよりも下方に位置し、かつ、第1サポート部31を挟んで互いに対向する第3接合点P2aおよび第4接合点P2bで接合されているが、本発明はこの構成に限られない。第2サポート部32および第3サポート部33の両端が、第1サポート部31の第1長辺31aおよび第2長辺31bにおける共通の接合点に接合された構成であってもよい。
【0088】
このような構成であっても、第2サポート部32および第3サポート部33によって、外反方向へ膝関節を誘導することが可能である。
【0089】
〔その他の適用例〕
(適用例1)
本発明に係るサポーター1は、縦(長手)方向へ延伸する第1サポート部31を膝関節の内側に配置することにより、内反方向(外側)へ膝関節を効果的に誘導することも可能である。
【0090】
この場合、サポーター1は、縦方向へ延伸し、膝関節の内側を通るように配置される第1サポート部31と、第1サポート部31の対向する2つの長辺のうち膝蓋側に位置する第1長辺31aから該膝蓋の上縁部に沿って斜め上方向へ延伸して大腿部を周囲し、前記第1長辺31aと対向する第1サポート部31の第2長辺31bに至る第2サポート部32と、第1長辺31aから膝蓋の下縁部に沿って斜め下方向へ延伸して下腿部を周囲し、第2長辺31bに至る第3サポート部33とを備える。
【0091】
上記の構成によれば、第2サポート部32および第3サポート部33によって内側から外側へ向かって膝関節が誘導されるため、内反方向へ膝関節を効果的に誘導するサポーター1を実現することができる。
【0092】
(適用例2)
また、本発明に係るサポーター1は、膝用のサポーターに限られず、肘用のサポーターにも好適に適用することが可能である。すなわち、本発明に係るサポーター1は、第1サポート部31を肘関節の外側に配置することにより、外反方向(内側)へ肘関節を効果的に誘導することが可能である。
【0093】
この場合、サポーター1は、縦(長手)方向へ延伸し、肘関節の外側を通るように配置される第1サポート部31と、第1サポート部31の対向する2つの長辺のうち肘頭側に位置する第1長辺31aから該肘頭の上縁部に沿って斜め上方向へ延伸して上腕部を周囲し、第1長辺31aと対向する第1サポート部31の第2長辺31bに至る第2サポート部32と、第1長辺31aから肘頭の下縁部に沿って斜め下方向へ延伸して前腕部を周囲し、第2長辺31bに至る第3サポート部33とを備える。
【0094】
上記の構成によれば、第2サポート部32および第3サポート部33によって外側から内側へ向かって肘関節が押圧されるため、外反方向へ肘関節を効果的に誘導するサポーター1を実現することができる。
【0095】
(適用例3)
また、本発明に係るサポーター1は、第1サポート部31を肘関節の内側に配置することにより、内反方向(外側)へ肘関節を効果的に誘導することも可能である。
【0096】
この場合、サポーター1は、縦(長手)方向へ延伸し、肘関節の内側を通るように配置される第1サポート部31と、第1サポート部31の対向する2つの長辺のうち肘頭側に位置する第1長辺31aから該肘頭の上縁部に沿って斜め上方向へ延伸して上腕部を周囲し、第1長辺31aと対向する第1サポート部31の第2長辺31bに至る第2サポート部32と、第1長辺31aから肘頭の下縁部に沿って斜め下方向へ延伸して前腕部を周囲し、第2長辺31bに至る第3サポート部33とを備える。
【0097】
上記の構成によれば、第2サポート部32および第3サポート部33によって内側から外側へ向かって肘関節が誘導されるため、内反方向へ肘関節を効果的に誘導するサポーター1を実現することができる。
【実施例1】
【0098】
以下、本発明の一実施例について、図3図4に基づいて説明すれば以下のとおりである。本実施例では、本発明に係るサポーター1による、位置ずれの抑制効果について検証した。
【0099】
本実施例では、本発明の実施例であるサポーター1とは別に、比較対象として、第1サポート部31を設けない比較例1のサポーターを準備した。すなわち、比較例1のサポーターは、サポート部3として、環状の第2サポート部32および環状の第3サポート部33のみを設けたものである。
【0100】
図3は、本実施例の試験方法を説明するための模式図である。
【0101】
〔試験方法〕
(1)被験者に各サポーターを着用させ、図3に示すように、立位の状態で、サポーター1の上端アンカー部41の最上部および大腿部(右足:前後左右、左足:前後左右、計8箇所)に目印をつけた。
(2)トレッドミルにて7km/hの速度で3分間走行した。
(3)走行後、立位の状態で、大腿部の目印から上端アンカー部41の目印までの距離を測定した。
【0102】
〔試験結果〕
図4は、本実施例の試験結果を示すグラフであり、(a)は、上下方向の位置ずれ(ずれ落ち)量を示し、(b)は、左右(回転)方向の位置ずれ量を示している。この図4に示すグラフは、比較例1のサポーターの位置ずれ量を100%としたとき、サポーター1の位置ずれ量の比率をまとめたものである。なお、図4の(a)に示すずれ落ち量は、8箇所の目印で測定された値の平均値を示している。
【0103】
図4の(a)に示すように、サポーター1では、上下方向の位置ずれ、すなわち、サポーター1の軸方向の位置ずれが平均して20%軽減される傾向がみられた。また、図4の(b)に示すように、サポーター1では、左右(回転)方向、すなわち、サポーター1の周方向の位置ずれが平均して30%以上軽減される傾向がみられた。
【0104】
このように、本実施例において、上下方向および左右方向の位置ずれを抑制するサポーター1の効果が認められた。
【実施例2】
【0105】
以下、本発明の他の実施例について、図5に基づいて説明すれば以下のとおりである。本実施例では、本発明に係るサポーター1による外反方向への膝関節の誘導効果を検証した。
【0106】
本実施例では、本発明の実施例であるサポーター1と、実施例1で使用した比較例1のサポーターを用いて、第1サポート部31の有無による、外反方向への膝関節の誘導効果の変化を検証した。
【0107】
図5の(a)は、本実施例の試験方法を説明するための模式図であり、図5の(b)は、本実施例の試験結果を示すグラフである。
【0108】
〔試験方法〕
(1)成人男性3名の被験者の膝蓋外側に、図5の(a)に示すように加速度センサーを取り付け、加速度センサーの上から各サポーターを着用した。
(2)トレッドミルにて7km/hの速度で3分間走行した。走行中の約10秒間のデータを取得し、取得したデータを解析した。なお、加速度センサーの出力値は、モバイルデータレコーダ ZR−MDR10(OMRON社製)を用い、サンプリング周波数100Hzで計測した。
(3)サポーター1を着用した際の加速度センサーの出力と、比較例1のサポーターを着用した際の加速度センサーの出力とを比較した。
【0109】
〔試験結果〕
図5の(b)に示すグラフは、加速度センサーからの出力値から移動距離を算出し、図5の(a)に示すZ方向(膝から外側へ向かう方向)の移動距離の平均をまとめたものである。
【0110】
このグラフにおいて、移動量がプラス(プラス)の場合、膝関節が内反方向(外側)へ移動したことを示し、移動量がマイナス(−)の場合、膝関節が外反方向(内側)へ移動したことを示している。また、Z方向のプラス側への移動量が小さいほど、膝関節の内反方向への移動が抑制され、膝関節が外反方向へ誘導されていることを示している。
【0111】
図5の(b)に示すように、被験者3人中2人が、サポーター1を着用することにより、第1サポート部31が設けられていない比較例1のサポーターを着用する場合に比べて、膝関節が外反方向へ誘導されている傾向がみられた。
【0112】
このように、本実施例において、膝関節を外反方向へ効果的に誘導するサポーター1の誘導効果が認められた。
【実施例3】
【0113】
本発明のさらに他の実施例について、図6図7に基づいて説明すれば以下のとおりである。本実施例では、本発明に係るサポーター1による、外反方向への膝関節の誘導効果を、実施例2とは異なる比較対象および条件で検証した。
【0114】
本実施例では、本発明の実施例であるサポーター1とは別に、比較対象として、サポート部3を設けない比較例2のサポーターを準備した。すなわち、比較例2のサポーターは、本体部2およびアンカー部4から構成されたものである。
【0115】
〔試験方法〕
(1)実施例2と同様に、成人男性3名の被験者の膝蓋外側に加速度センサーを取り付け、加速度センサーの上から各サポーターを着用した。
(2)トレッドミルにて7km/hの速度で3分間走行した。走行中の約10秒間のデータを取得し、取得したデータを解析した。
(3)サポーターを着用しない際の加速度センサーの出力、比較例2のサポーターを着用した際の加速度センサーの出力と、サポーター1を着用した際の加速度センサーの出力とを比較した。
【0116】
〔試験結果〕
図6の(a)は、本実施例の試験方法を説明するための模式図であり、図6の(b)は、実施例3の試験結果を示すグラフである。図6の(b)に示すグラフは、加速度センサーからの出力値から移動距離を算出し、図6の(a)に示すZ方向(膝から外側へ向かう方向)の移動距離の平均をまとめたものである。
【0117】
図6の(b)に示すように、被験者3人中3人が、第1サポート部31が設けられたサポーター1を着用することにより、サポーターを着用しない場合およびサポート部3が設けられていない比較例2のサポーターを着用する場合に比べて、膝関節が外反方向へ誘導されている傾向がみられた。
【0118】
図7は、本実施例の走行時における、被験者AのY−Z方向の膝の移動軌跡を示すグラフである。なお、Y方向は膝から前方へ向かう方向である(図6の(a)参照)。
【0119】
図7に示すように、サポーター1を着用することにより、サポーターを着用しない場合およびサポート部3が設けられていない比較例2のサポーターを着用する場合に比べて、膝の移動軌跡のばらつきが低減される傾向がみられた。
【0120】
このように、本実施例において、膝関節を外反方向へ効果的に誘導するサポーター1の効果、並びに、走行時における膝の動きを安定させるサポーター1の効果が認められた。
【0121】
〔補足〕
なお、参考のために、本発明に係るサポーター1の外観を図8の(a)〜(f)に示す。図8の(a)〜(f)は、本発明に係る左足用のサポーター1の外観を示す図面代用写真である。特に、図8の(a)は、サポーター1の平面を示す図面代用写真であり、図8の(b)は、サポーター1の内側(左側)側面を示す図面代用写真であり、図8の(c)は、サポーター1の正面を示す図面代用写真であり、図8の(d)は、サポーター1の外側(右側)側面を示す図面代用写真であり、図8の(e)は、サポーター1の背面を示す図面代用写真であり、図8の(f)は、サポーター1の底面を示す図面代用写真である。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は、肘関節または膝関節を外反方向または内反方向へ誘導する保護衣料に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0123】
1 サポーター(保護衣料)
2 本体部
3 サポート部
4 アンカー部
21 識別部
31 第1サポート部
31a 第1長辺
31b 第2長辺
32 第2サポート部
33 第3サポート部
41 上端アンカー部
42 下端アンカー部
P1a 第1接合点(接合点)
P1b 第2接合点(接合点)
P2a 第3接合点(接合点)
P2b 第4接合点(接合点)
R 押圧領域(領域)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8