特許第6586692号(P6586692)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6586692新規キノン誘導体およびそれを有効成分とする抗トリパノソーマ剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6586692
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】新規キノン誘導体およびそれを有効成分とする抗トリパノソーマ剤
(51)【国際特許分類】
   C07C 50/28 20060101AFI20191001BHJP
   C07D 207/27 20060101ALI20191001BHJP
   C07D 233/94 20060101ALI20191001BHJP
   C07D 249/08 20060101ALI20191001BHJP
   C07D 213/65 20060101ALI20191001BHJP
   C07D 215/227 20060101ALI20191001BHJP
   A61K 31/122 20060101ALI20191001BHJP
   A61K 31/16 20060101ALI20191001BHJP
   A61K 31/4015 20060101ALI20191001BHJP
   A61K 31/4164 20060101ALI20191001BHJP
   A61K 31/4196 20060101ALI20191001BHJP
   A61K 31/4406 20060101ALI20191001BHJP
   A61K 31/4704 20060101ALI20191001BHJP
   A61K 31/166 20060101ALI20191001BHJP
   A61K 31/4172 20060101ALI20191001BHJP
   A61P 33/02 20060101ALI20191001BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20191001BHJP
   C07C 50/30 20060101ALI20191001BHJP
   C07C 233/61 20060101ALI20191001BHJP
   C07C 233/76 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
   C07C50/28CSP
   C07D207/27 Z
   C07D233/94
   C07D249/08 514
   C07D249/08 515
   C07D213/65
   C07D215/227
   A61K31/122
   A61K31/16
   A61K31/4015
   A61K31/4164
   A61K31/4196
   A61K31/4406
   A61K31/4704
   A61K31/166
   A61K31/4172
   A61P33/02
   A61P43/00 121
   C07C50/30
   C07C233/61
   C07C233/76
【請求項の数】11
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2015-108983(P2015-108983)
(22)【出願日】2015年5月28日
(65)【公開番号】特開2016-6043(P2016-6043A)
(43)【公開日】2016年1月14日
【審査請求日】2018年5月28日
(31)【優先権主張番号】特願2014-111675(P2014-111675)
(32)【優先日】2014年5月29日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、独立行政法人科学技術振興機構(現 国立研究開発法人科学技術振興機構) 研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラムフィージビリティスタディステージ探索タイプ 「南米型トリパノソーマに対する新規治療薬リード化合物の探索」にかかる委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
(73)【特許権者】
【識別番号】501410115
【氏名又は名称】学校法人高崎健康福祉大学
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 淳子
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 源司
(72)【発明者】
【氏名】須藤 豊
【審査官】 岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/068322(WO,A1)
【文献】 特開平03−109388(JP,A)
【文献】 Tasdemir, Deniz; Brun, Reto; Yardley, Vanessa; Franzblau, Scott G.; Ruedi, Peter,Antituberculotic and antiprotozoal activities of primin, a natural benzoquinone: in vitro and in vivo studies,Chemistry & Biodiversity,2006年,Vol.3,1230-1237
【文献】 Voak, Andrew A.; Gobalakrishnapillai, Vithurshaa; Seifert, Karin; Balczo, Edina; Hu, Longqin; Hall, Belinda S.; Wilkinson, Shane R.,An Essential Type I Nitroreductase from Leishmania major Can Be Used to Activate Leishmanicidal Prodrugs,Journal of Biological Chemistry,2013年,VOLUME 288 NUMBER 40,28466-28476
【文献】 Fang, Jing; Beattie, Diana S.,Rotenone-insensitive NADH dehydrogenase is a potential source of superoxide in procyclic Trypanosoma brucei mitochondria,Molecular and Biochemical Parasitology,2002年,123,135-142
【文献】 Gu, Lian Quan; Yu, Linda; Yu, Chang An,Effect of substituents of the benzoquinone ring on electron-transfer activities of ubiquinone derivatives,Biochimica et Biophysica Acta, Bioenergetics,1990年,1015,482-492
【文献】 Perri, Steven T.; Moore, Harold W.,Rearrangements of cyclobutenones. Synthesis of benzoquinones from 4-alkenyl-4-hydroxycyclobutenones,Journal of the American Chemical Society,1990年,112,1897-1905
【文献】 Enhsen, Alfons; Karabelas, Kostas; Heerding, Julia M.; Moore, Harold W.,Synthesis of hydroxyquinones and related compounds: semisquaric acids, (±)-terreic acid, (±)-perezone and (±)-isoperezone,Journal of Organic Chemistry,1990年,55,1177-1185
【文献】 Jacobsen, N.; Torssell, K.,Synthesis of naturally occurring quinones. Alkylation with the silver ion-peroxydisulfate-carboxylic acid system,Acta Chemica Scandinavica,1973年,27 No.9,3211-3216
【文献】 Luly, Jay R.; Rapoport, Henry,Routes to mitomycins. Application of iminium salts to the synthesis of 7-methoxymitosene,Journal of Organic Chemistry,1982年,47,2404-2413
【文献】 Hibi, Shigeki; et al.,Novel Dual Inhibitors of 5-Lipoxygenase and Thromboxane A2 Synthetase: Synthesis and Structure-Activity Relationships of 3-Pyridylmethyl-Substituted 2-Amino-6-hydroxybenzothiazole Derivatives,Journal of Medicinal Chemistry,1994年,37,3062-3070
【文献】 Karabelas, Kostas; Moore, Harold W.,Trimethylsilylmethyl-1,4-benzoquinones. Generation and trapping of o-quinone methides,Journal of the American Chemical Society,1990年,112,5372-5373
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01P
C07C
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩。
【化1】
式(1)において、R1は炭素数1〜10のアルコキシ基を表す。
2は炭素数1〜10のアルキル基を表す。
3は炭素数3〜10のシクロアルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ヘ
テロアリール基、ヘテロアリールオキシ基、環状アミド基、式(2)で示されるR31、式(3)で示されるR32、式(4)で示されるR33又は式(5)で示される34表す。
4は水素原子を表す。
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
式(2)において、R311は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10
のシクロアルキル基、又は、アリール基を表す。R312は炭素数1〜10のアルキル基、
炭素数3〜10のシクロアルキル基、又は、アリール基を表し、R311及びR312は結合して環を形成してもよい。
式(3)において、R321は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10
のシクロアルキル基、アリール基、又は、ヘテロアリール基を表す。R322は水素原子、
炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、アリール基、又は、ヘテロアリール基を表す。
式(4)において、R331は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10
のシクロアルキル基、アリール基、又は、ヘテロアリール基を表す。R332は水素原子、
炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、アリール基、又は、ヘテロアリール基を表す。
式(5)において、R341は炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、ヘテロアリー
ル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、又は炭素数3〜10のシクロアルキル基を表す。R342は水素原子、又は炭素数1〜10のアルキル基を
表す
【請求項2】
一般式(1)において、R3は炭素数3〜8のシクロアルキルオキシ基、アリール基、
ヘテロアリール基、フェノキシ基、ピリジルオキシ基、一般式(2)で示されるR31、一般式(3)で示されるR32、又は、一般式(4)で示されるR33表す、請求項1に記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項3】
一般式(1)において、R3は一般式(3)で示されるR32(R321はアリール基
、R322はヘテロアリール基)、又は、一般式(4)で示されるR33(R331はアリール基、R332はヘテロアリール基)を表す、請求項1に記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項4】
下記化合物又はその薬理学的に許容される塩。
【化6】
【請求項5】
合物MまたはLである、請求項4に記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩を有効成分とする抗トリパノソーマ剤。
【請求項7】
有効成分としてさらにベンズニダゾールを含む、請求項6に記載の抗トリパノソーマ剤。
【請求項8】
請求項1〜5の何れか一項に記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩を有効成分とする医薬組成物。
【請求項9】
有効成分としてさらにベンズニダゾールを含む、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
南米シャーガス病の治療または予防用である、請求項8または9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
トリパノソーマ虫体に活性酸素産生を惹起する、請求項8〜10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規キノン誘導体に関し、特にトリパノソーマ原虫への高い抗原虫効果を奏する新規キノン誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
シャーガス病は、トリパノソーマ・クルーズ(T. cruzi)という寄生性の原虫による感染症で、中南米やメキシコ、アメリカ南部などを主な地域として、南アメリカ全域の21か国において流行している。感染はこれらの地域の特に貧困地域にみられるが、近年では旅行や移住、交通手段の発達による人々の移動の影響で、流行地以外の地域にも感染が拡がっていて、オーストラリアや日本などのアジア・オセアニア圏、スペインなどのユーロ圏および北アメリカにも感染が見られるようになってきている。
現在、世界では1億人にシャ−ガス病への感染のリスクがあると言われており、患者数はおよそ800万人、年間12,000人が死亡していると推定されている。また、シャーガス病
による身体への障害などによる失業や収益の低下は社会的かつ経済的に大きな損失を生んでいる。
【0003】
シャーガス病の原因となるのはキネトプラスト類の寄生原虫であるトリパノソーマ・クルーズである。このトリパノソーマ・クルーズは、吸血昆虫であるサシガメが媒介する。サシガメは吸血すると同時に糞便を排出するという習性を持つ昆虫で、トリパノソーマ・クルーズに感染しているサシガメがヒトを吸血する際に糞便と共にトリパノソーマ・クルーズが排出される。サシガメに刺された部位は発赤や膨張とともにかゆみを生じ、吸血部位を掻き壊したり、掻いた指で目の粘膜や口腔内に糞便が混入したりといったことによりトリパノソーマ・クルーズがヒトの体内に入り込み、感染に至る。この他に輸血や臓器移植などの血液を介した感染や、感染した状態の母親から生まれてくる子供への垂直感染が一般的なヒトからヒトへの感染経路である。
【0004】
トリパノソーマ・クルーズは、サシガメやヒトの体内において発育段階によりいくつかの形態をとることが知られていて、トリポマスティゴート(錐鞭毛型)、アマスティゴート(無鞭毛型)、エピマスティゴート(上鞭毛型)という三形態に分類される。ヒトへの感染においては、傷口(咬傷)や粘膜などからヒト体内に侵入し血液中での形態がトリポマスティゴート、体内から近傍の細胞内に侵入・増殖する形態が、アマスティゴートである。
【0005】
シャーガス病の病態については、急性期症状と慢性期症状という二つのステージが挙げられる。急性期症状では発熱やリンパ節の膨張など風邪とよく似た症状が現れるが、多くの場合ではしばらくすると自然に症状が消失し、体内にトリパノソーマ・クルーズを残したまま無症候状態になってしまう。症状が分かりにくいためにシャーガス病であると認識されずに、慢性期症状に至るまで放置されがちである。
慢性期は、初期感染の10〜25年後に多く見られ、心臓疾患や消化器疾患、神経系疾患や臓器の肥大化などの深刻な症状に陥る。一般的な症状としては、胸の痛みや動悸、めまいや末梢浮腫が挙げられ、ひどい場合には心筋症をおこすまで悪化し、不整脈や血栓塞栓症、心臓麻痺などにより死に至る。
【0006】
シャーガス病における現行の治療薬にはベンズニダゾールとニフルチモックスの2つが挙げられる。しかしながら、どちらもシャーガス病に対して有用な治療薬であるとは言い難い。その問題点としては、慢性期における有効性が低く、急性期における使用に限られているという点や、耐性を持ったトリパノソーマ・クルーズの種類によって、有効性に地域差が出てしまっていることが挙げられる。また、数多くの副作用が存在するということ
が挙げられ、ニフルチモックスの場合は、消化障害(上腹部での腹部の痛み、吐き気と嘔吐、食欲不振、体重減少)を、ベンズニダゾールの場合は、血液疾患と過敏性の皮膚炎を引き起こすことがある。他にも、治療に長い期間(30〜90日)を要することや、小児には使用できず、妊娠中は禁忌であるということ、専門的知識を持った医師によるモニタリングの必要性などが問題点として挙げられている。
近年、細胞性粘菌Dictyostelium discoideumの柄細胞分化誘導因子(Differentiation-inducing factor)及びその誘導体がトリパノソーマの感染や増殖を阻害する効果を有す
ることが分かった(特許文献1)。また、本発明者らにより、キノン構造を有するkomaroviquinoneが抗トリパノソーマ活性を有することが発見された(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-025671号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】上原記念生命科学財団研究報告集,26(2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、抗トリパノソーマ活性を有する、新規な化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らはキノン誘導体について鋭意研究を行ったところ、一般式(1)で表される新規なキノン誘導体を見出し、さらに前記キノン誘導体及びそれらの薬理学的に許容される塩が抗トリパノソーマ活性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、下記一般式(1)で示される化合物又はその薬理学的に許容される塩に関する。本発明はまた、前記化合物を有効成分として含む抗トリパノソーマ剤及びトリパノソーマ症治療薬に関するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のキノン誘導体は、トリパノソーマ症の原因であるトリパノソーマ・クルーズという寄生性の原虫に対して低用量の投与で殺トリパノソーマ効果を示す。また、天然のキノン誘導体であるkomaroviquinoneに比べ、短工程かつ大量に供給することができる。さ
らには、細胞毒性が低いため、既存薬であるベンズニダゾールに比べて副作用の低減効果を奏する。本発明のキノン誘導体は、血液中での形態(トリポマスティゴート)および細胞内に侵入して増殖する形態(アマスティゴート)のいずれに対しても有効であり、抗トリパノソーマ剤及びトリパノソーマ症治療薬としては大変優れた薬剤である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】T. cruziの生活環を示す図。アメリカCDC(Centers for Disease Control and Prevention)のホームページより抜粋。
図2】血流型トリパノソーマに対する本発明化合物の抗原虫効果を示す図。
図3】マウスモデルを用いたin vivoにおける本発明化合物の抗原虫効果を示す図。
図4】血流型虫体における各化合物による活性酸素種産生を示す図。
図5】宿主細胞における各化合物によるミトコンドリア膜電位変化を示す図。
図6】血流型トリパノソーマに対する本発明化合物Mとベンズニダゾールの併用効果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明を詳しく説明する。
本発明の化合物は、式(1)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩である。
【化1】
式(1)において、R1は水素原子、ハロゲン、炭素数1〜10(好ましくは1〜5)
のアルキル基、炭素数1〜10(好ましくは1〜5)のアルコキシ基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキルオキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルケニルオキシ基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数2〜5のアルキニルオキシ基、アミノ基、又は炭素数1〜10のアルキルチオ基を表す。好ましくは、R1は炭素数が1〜10のアルコキシ基を表す。
2は水素原子、ハロゲン、炭素数1〜10(好ましくは1〜5)のアルキル基、炭素
数1〜10(好ましくは1〜5)のアルコキシ基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキルオキシ基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルケニルオキシ基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数2〜5のアルキニルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ヘテロアリール基、又はヘテロアリールオキシ基を表す。好ましくは、R2は炭素数1〜10のアルキル基を表す。
3は水素原子、炭素数1〜10(好ましくは1〜5)のアルキル基、炭素数3〜10
のシクロアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ヘテロアリール基、ヘテロアリールオキシ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、環状アミノ基、環状アミド基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルケニルオキシ基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数2〜5のアルキニルオキシ基、式(2)で示されるR31、式(3)で示されるR32、式(4)で示されるR33、式(5)で示されるR34、又は式(6)で示されるR35表す。
4は水素原子、ハロゲン、又は、炭素数1〜10(好ましくは1〜5)のアルキル基
を表す。好ましくは、R4は水素原子を表す。
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
式(2)において、R311は水素原子、炭素数1〜10(好ましくは1〜5)のアルキ
ル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、又は、アリール基を表す。R312は炭素数1
〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、又は、アリール基を表し、R311及びR312は結合して環を形成してもよい。
式(3)において、R321は水素原子、炭素数1〜10(好ましくは1〜5)のアルキ
ル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、アリール基、又は、ヘテロアリール基を表す。R322は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基
、アリール基、又は、ヘテロアリール基を表す。
式(4)において、R331は水素原子、炭素数1〜10(好ましくは1〜5)のアルキ
ル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、アリール基、又は、ヘテロアリール基を表す。R332は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基
、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、アリール基、又は、ヘテロアリール基を表す。
式(5)において、R341は炭素数1〜10(好ましくは1〜5)のアルキル基、アリ
ール基、ヘテロアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基を表す。R342は水素原子、又は炭素数1〜1
0のアルキル基を表す。
式(6)において、R351は、炭素数1〜10(好ましくは1〜5)のアルキル基、炭
素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。R352は、水素原子、炭素数1
〜10のアルキル基を表す。
【0015】
以下、本発明の新規生理活性化合物であるキノン誘導体について具体的に説明する。以下に各置換基の具体例及び好適例を示すが、本発明化合物の範囲はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書においては、特に記載のない限り、「アリール基」及び「ヘテロアリール基」とは、5員若しくは6員環の単環、又はナフト環を表し、また、「ヘテロアリール基」には、1以上の炭素環式芳香族環及び/又は複素環式芳香族環がシクロアルキルまたは非芳香族複素環に縮合した基、例えばベンゾシクロペンタン、ベンゾシクロヘキサンが含まれる。さらに、「アリール基」及び「ヘテロアリール基」は1又は2以上の置換基を有していてもよい。好ましい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、ニトロ基等が挙げられる。
【0016】
1で表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
1で表されるアルキル基は、1又は2以上の置換基を有していてもよく、分岐してい
てもよい。好ましい置換基としては、フッ素原子、アリール基、ヘテロアリール基が挙げ
られる。
1で表されるアルコキシ基は1又は2以上の置換基を有していてもよく、分岐してい
てもよい。好ましい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、又は、非芳香族複素環等が挙げられる。R1で表
されるアルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、n‐プロポキシ基、イソプロポキシ基、n‐ブトキシ基等が挙げられる。
1で表されるアルケニル基、アルケニルオキシ基、アルキニル基、アルキニルオキシ
基、は、置換基として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、又は炭素数3〜6のシクロアルキル基を有していてもよい。
1で表されるアミノ基は、置換基として、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6
のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基を有していてもよく、前記置換基としてのアルケニル基は、さらに置換基として、ハロゲン化されていてもよいフェニル基又はピリジル基を有していてもよい。
1として好ましいものは、水素、ハロゲン、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素
数1〜10のアルコキシ基が挙げられる。
【0017】
1は、さらに好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基であり、特に好ましくはメト
キシ基である。
【0018】
2で表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
2で表されるアルコキシ基又はアルキル基は、1又は2以上の置換基を有していても
よく、分岐していてもよい。好ましい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基等が挙げられる。R2で表される
アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、n‐プロポキシ基、イソプロポキシ基、n‐ブトキシ基等が挙げられる。R2で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル
基、n‐プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
2で表されるアルケニル基、アルケニルオキシ基、アルキニル基、又はアルキニルオ
キシ基は、1又は2以上の置換基を有していてもよく、分岐していてもよい。好ましい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基が挙げられる。
【0019】
2として好ましいものは、水素、ハロゲン、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素
数1〜10のアルコキシ基が挙げられる。
【0020】
2として、更に好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基であり、特に好ましくは、
イソプロピル基である。
【0021】
3で表されるアルキル基又はアルコキシ基は、1又は2以上の置換基を有していても
よく、分岐していてもよい。好ましい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜6のアルキル基、環状アミン、環状アミド、アリール基、ヘテロアリール基等が挙げられる。R3で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n‐プロピル基、
イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。R3で表されるア
ルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n‐プロポキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。
3で表されるシクロアルキル基は、1又は2以上の置換基を有していてもよい。好ま
しい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6の
アルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基等が挙げられる。R3で表されるシクロアルキ
ル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
3で表されるシクロアルキルオキシ基は、1又は2以上の置換基を有していてもよい
。好ましい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基等が挙げられる。R3で表されるシクロアルキルオキシ基としては、シ
クロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、又はシクロオクチルオキシ基が挙げられる。
3で表されるアルケニル基、アルケニルオキシ基、アルキニル基、又はアルキニルオ
キシ基は、置換基として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、アリール基又はヘテロアリール基を有していてもよい。
3で表されるヘテロアリール基としては、ピリジル基、ピリミジル基、イミダゾリル
基、トリアゾリル基等が挙げられる。
【0022】
式(2)で表される置換基R31における置換基R311及びR312で表されるアルキル基は分岐していてもよく、1又は2以上の置換基を有していてもよく、1又は2以上の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基等が挙げられる。R311及びR312で表されるアルキル基は、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、n‐プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。
置換基R311及びR312で表されるシクロアルキル基は1又は2以上の置換基を有していてもよく、1又は2以上の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基等が挙げられる。R311
及びR312で表されるシクロアルキル基としては、それぞれ独立して、シクロプロピル基
、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
置換基R311及びR312で表されるアリール基は1又は2以上の置換基を有していてもよく、1又は2以上の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基等が挙げられる。R311及びR312で表されるアリール基としては、それぞれ独立して、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
また、R311及びR312は、結合して環構造を形成していてもよい。
【0023】
式(3)で表される置換基R32における置換基R321で表されるアルキル基は分岐して
いてもよく、1又は2以上の置換基を有していてもよく、1又は2以上の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基等が挙げられる。R321で表されるアルキル基としては、メチル基
、エチル基、n‐プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
置換基R321で表されるシクロアルキル基は、1又は2以上の置換基を有していてもよ
く、1又は2以上の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基等が挙げられる。R321で表さ
れるシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
置換基R321で表されるアリール基は、1又は2以上の置換基を有していてもよく、1
又は2以上の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基等が挙げられる。R321で表されるア
リール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
置換基R321で表されるヘテロアリール基は、1又は2以上の置換基を有していてもよ
く、1又は2以上の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基等が挙げられる。置換基R321
で表されるヘテロアリール基としては、ピリジル基、ピリミジル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基等が挙げられる。
【0024】
式(3)で表される置換基R32における置換基R322で表されるアルキル基は分岐して
いてもよく、1又は2以上の置換基を有していてもよく、1又は2以上の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基等が挙げられる。R322で表されるアルキル基としては、メチル基
、エチル基、n‐プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
置換基R322で表されるシクロアルキル基は、1又は2以上の置換基を有していてもよ
く、1又は2以上の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基等が挙げられる。R322で表されるシクロアルキル基として
は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
置換基R322で表されるアリール基は、1又は2以上の置換基を有していてもよく、1
又は2以上の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基等が挙げられる。R322で表されるア
リール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
置換基R322で表されるヘテロアリール基は、1又は2以上の置換基を有していてもよ
く、1又は2以上の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基等が挙げられる。置換基R322
で表されるヘテロアリール基としては、ピリジル基、ピリミジル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基等が挙げられる。
【0025】
式(4)で表される置換基R33における置換基R331で表されるアルキル基は、分岐し
ていてもよく、1又は2以上の置換基を有していてもよく、1又は2以上の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基等が挙げられる。R331で表されるアルキル基としては、メチル
基、エチル基、n‐プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
置換基R331で表されるシクロアルキル基は、1又は2以上の置換基を有していてもよ
く、1又は2以上の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基等が挙げられる。R331で表さ
れるシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
置換基R331で表されるアリール基は、1又は2以上の置換基を有していてもよく、1
又は2以上の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基等が挙げられる。R331で表されるア
リール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
置換基R331で表されるヘテロアリール基は、1又は2以上の置換基を有していてもよ
く、1又は2以上の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基等が挙げられる。置換基R331
で表されるヘテロアリール基としては、ピリジル基、ピリミジル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基等が挙げられる。
【0026】
式(4)で表される置換基R33における置換基R332で表されるアルキル基は、分岐し
ていてもよく、1又は2以上の置換基を有していてもよく、1又は2以上の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基等が挙げられる。R332で表されるアルキル基としては、メチル
基、エチル基、n‐プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
置換基R332で表されるシクロアルキル基は、1又は2以上の置換基を有していてもよ
く、1又は2以上の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、
炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基等が挙げられる。R332で表さ
れるシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
置換基R332で表されるアリール基は、1又は2以上の置換基を有していてもよく、1
又は2以上の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基等が挙げられる。R332で表されるア
リール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
置換基R332で表されるヘテロアリール基は、1又は2以上の置換基を有していてもよ
く、1又は2以上の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基等が挙げられる。R332で表さ
れるヘテロアリール基としては、ピリジル基、ピリミジル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基等が挙げられる。
【0027】
式(5)で表される置換基R34における置換基R341で表されるアルキル基は、分岐し
ていてもよく、1又は2以上の置換基を有していてもよく、1又は2以上の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基等が挙げられる。R341で表されるアルキル基としては、メチル
基、エチル基、n‐プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
【0028】
式(6)で表される置換基R35における置換基R351で表されるアルキル基は、分岐し
ていてもよく、1又は2以上の置換基を有していてもよく、1又は2以上の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル基等が挙げられる。R351で表されるアルキル基としては、メチル
基、エチル基、n‐プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。R351で表されるアル
ケニル基又はアルキニル基は、置換基としてアリール基又はヘテロアリール基を有していてもよい。
【0029】
3として好ましいものは、シクロヘキシル基、n-ヘキシル基、フェニル基、イソプロ
ポキシ基、又はシクロヘキシルオキシ基が挙げられる。
【0030】
4で表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
4で表されるアルキル基は直鎖であって、1又は2以上の置換基を有していてもよい
。好ましい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。R4で表
されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n‐プロピル基等が挙げられる。
【0031】
一般式(1)の化合物として好ましくは、R1は炭素数が1〜10のアルコキシ基を表
し、R2は炭素数1〜10のアルキル基を表し、R3は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキルオキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基、フェノキシ基、ピリジルオキシ基、一般式(2)で示されるR31、一般式(3)で示されるR32、又は、一般式(4)で示されるR33を表し、R4は水素原子を表す。
【0032】
一般式(1)の化合物としてより好ましく、R1は炭素数が1〜10のアルコキシ基を
表し、R2は炭素数1〜10のアルキル基を表し、R3は一般式(3)で示されるR32(R321はフェニルなどのアリール基、R322はトリアゾリルなどのヘテロアリール基)、又は、一般式(4)で示されるR33(R331はフェニルなどのアリール基、R332はトリアゾリルなどのヘテロアリール基)を表し、R4は水素原子を表す。
【0033】
本発明のキノン誘導体の特に好適な例として、下記に示す化合物が例示できる。
【化7】
【0034】
一般式(1)で表される本発明化合物の中には、光学異性体が存在する化合物が含まれるが、それぞれの光学異性体及びそれらの混合物は全て本発明に含まれる。本発明の組成物としては、ラセミ体及び光学異性体及び2つの光学異性体の任意の混合物のいずれを用いてもよい。
【0035】
式(1)の化合物の薬学的に許容される塩としては、有機カルボン酸・スルホン酸付加塩(例えばギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン
酸塩等)、あるいは、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等の金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。なお、式(1)の化合物は水和物であってもよい。
【0036】
一般式(1)で表される本発明の化合物は、抗トリパノソーマ剤として使用でき、トリパノソーマ症の治療薬及び予防薬またはその開発に向けた創薬のリード化合物やシーズとして好適に用いることができる。
【0037】
本発明の化合物をトリパノソーマ症の治療及び/又は予防薬として用いる場合、有効成分として1又は2種類以上を含有していてもよく、必要に応じて、従来から用いられているベンズニダゾールなどの抗トリパノソーマ剤を含有することもできる。
【0038】
本発明において「抗トリパノソーマ活性」とは、トリパノソーマ原虫数を減少させる効果、トリパノソーマ原虫数の増加(増殖)を抑制する効果、トリパノソーマ原虫を不活性化させる効果が含まれる。本発明において「トリパノソーマ原虫を不活性化させる」とは、トリパノソーマ原虫が再生する能力を減少、抑制させることを含み、不活性化させる手段としては例えば殺すことが挙げられる。
【0039】
本発明においてトリパノソーマ症とは、トリパノソーマ原虫による感染症であればよく、例えば南米シャーガス病が挙げられる。トリパノソーマ症の原因となるトリパノソーマ原虫としては、例えば、Trypanosoma cruziが挙げられる。
【0040】
式(1)で表される本発明化合物またはその薬学的に許容される塩を含有している医薬組成物は、医薬製剤の製造法で一般的に用いられている公知の手段に従って、薬理学的に許容される抗体と混合して、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、注射剤、坐剤、徐放剤、貼付剤等の剤形で提供される場合があるが、これらに限られない。
本発明の化合物又はその薬学的に許容できる塩を有効成分として含む本発明の医薬組成物は、静脈内投与、皮下投与、直腸投与などの非経口的投与の他、経口投与、経粘膜投与、又は経皮投与により適用可能である。
本発明の化合物又はその薬理学的に許容できる塩は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより異なり特に制限されないが、例えば、患者(体重60kgとして)に対して一日につき約0.1〜5g、好ましくは約0.1〜1g、より好ましくは約0.1〜0.5gである。
【実施例】
【0041】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
以下、化合物A〜Sの合成方法について記載する。
【0042】
[実施例1]
5‐(シクロヘキシルメチル)‐2‐イソプロピル‐3‐メトキシシクロヘキサ‐2,5‐ジエン‐1,4‐ジオン(化合物A)の合成方法
【化8】
【0043】
1‐(ブロモメチル)‐4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンゼン(15
0mg)のTHF(0.5mL)溶液を氷冷し、シクロヘキシルマグネシウムブロミド(2.0M ジエチルエーテル溶液、0.5mL)を加え、徐々に室温に戻しながら終夜撹拌した。1Mの塩酸水溶液を加えて、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた抽出溶液を硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過し、ろ液を濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより1‐(シクロヘキシルメチル)‐4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンゼン(36mg、収率24%)を得た。
1‐(シクロヘキシルメチル)‐4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンゼン(30mg)のアセトニトリル(3.9mL)溶液に、氷冷下にて硝酸二アンモニウムセリウム(CAN)水溶液(0.2M,1.15mL)を加え、そのままの温度で1時間撹拌した。水を加えて酢酸エチルで3回抽出し、合わせた抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過した。ろ液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより5‐(シクロヘキシルメチル)‐2‐イソプロピル‐3‐メトキシシクロヘキサ‐2,5‐ジエン‐1,4‐ジオン(21mg、収率78%)を得た。
1H‐NMR(CDCl3,500MHz)
6.38(1H,s),3.94(3H,s),3.21(sept,J=7.3Hz,1H),2.25(d,J=7.0Hz,2H),1.61‐1.72(m,5H),1.43‐1.53(m,1H),1.25‐1.11(m,3H),1.20(d,J=7.3Hz,6H),0.97‐0.87(m,2H)
13C‐NMR(CDCl3,125MHz)
188.32,184.40,156.30,145.77,137.63,133.90,61.07,37.01,36.47,33.33,26.36,26.20,24.61,20.60
IR(neat,cm-1
2924,1653,1649,1273
HRMS
1928NO3(M+CH3CN+H+)計算値:318.2064,測定値318.20
67
【0044】
[実施例2]
5‐ヘプチル‐2‐イソプロピル‐3‐メトキシシクロヘキサ‐2,5‐ジエン‐1,4‐ジオン(化合物B)の合成方法
【化9】
【0045】
1‐(ブロモメチル)‐4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンゼン(150mg)のTHF(0.5mL)溶液を氷冷し、ヘキシルマグネシウムブロミド(2.0M ジエチルエーテル溶液、0.5mL)を加え、徐々に室温に戻しながら終夜撹拌した。1Mの塩酸水溶液を加えて、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた抽出溶液を硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過し、ろ液を濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより1‐ヘプチル‐4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンゼン(24mg、収率16%)を得た。
1‐ヘプチル‐4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンゼン(30mg)のアセトニトリル(2.6mL)溶液に、氷冷下にて硝酸二アンモニウムセリウム(CAN)水溶液(0.2M,0.78mL)を加え、そのままの温度で1時間撹拌した。水を加えて酢酸エチルで3回抽出し、合わせた抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過した。
ろ液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより5‐ヘプチル‐2‐イソプロピル‐3‐メトキシシクロヘキサ‐2,5‐ジエン‐1,4‐ジオン(14mg、収率76%)を得た。
1H‐NMR(CDCl3,500MHz)
6.40(s,1H),3.94(s,3H),3.21(sept,J=7.3Hz,1H),2.35(t,J=7.8Hz,2H),1.51‐1.44(m,2H),1.37‐1.22(m,8H),1.20(d,J=7.3Hz,6H),0.87(t,J=7.5Hz,3H)
13C‐NMR(CDCl3,125MHz)
188.40,184.31,156.31,147.36,137.66,132.78,61.05,31.78,29.37,29.08,28.54,27.83,24.60,22.70,20.59,14.15
IR(neat,cm-1
2930,1653,1271
HRMS
1930NO3(M+CH3CN+H+)計算値:320.2220,測定値320.22
29
【0046】
[実施例3]
5‐ベンジル‐2‐イソプロピル‐3‐メトキシシクロヘキサ‐2,5‐ジエン‐1,4‐ジオン(化合物C)の合成方法
【化10】
【0047】
1‐(ブロモメチル)‐4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンゼン(150mg)のTHF(0.5mL)溶液を氷冷し、フェニルマグネシウムブロミド(1.0M THF溶液、1.0mL)を加え、徐々に室温に戻しながら終夜撹拌した。1Mの塩酸水溶液を加えて、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた抽出溶液を硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過し、ろ液を濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより1‐ベンジル‐4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンゼン(12mg、収率8%)を得た。
1‐ベンジル‐4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンゼン(11mg)のアセトニトリル(1.5mL)溶液に、氷冷下にて硝酸二アンモニウムセリウム(CAN)水溶液(0.2M,0.44mL)を加え、そのままの温度で1時間撹拌した。水を加えて酢酸エチルで3回抽出し、合わせた抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過した。ろ液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより5‐ベンジル‐2‐イソプロピル‐3‐メトキシシクロヘキサ‐2,5‐ジエン‐1,4‐ジオン(7mg、収率74%)を得た。
1H‐NMR(CDCl3,500MHz)
7.32(t,J=7.0Hz,2H),7.27‐7.24(m,1H),7.18(d,J=7.0Hz,2H),6.21(s,1H),3.95(s,3H),3.70(s,2H),3.19(sept,J=7.0Hz,1H),1.19(d,J=7.0Hz,6H)
13C‐NMR(CDCl3,125MHz)
188.20,183.99,156.23,146.38,137.82,136.6
9,133.80,129.44,128.91,127.03,61.09,34.81,24.63,20.56
IR(neat,cm-1
2963,1653,1273
HRMS
1922NO3(M+CH3CN+H+)計算値:312.1594,測定値312.15
97
【0048】
[実施例4]
5‐((1‐ヒドロキシシクロヘキシル)メチル)‐2‐イソプロピル‐3‐メトキシシクロヘキサ‐2,5‐ジエン‐1,4‐ジオン(化合物D)の合成方法
【化11】
【0049】
1‐(ブロモメチル)‐4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンゼン(61mg)のジエチルエーテル(1mL)溶液を−78℃に冷却し、nBuLiヘキサン溶液(1.6M,0.375mL)を加えて1時間撹拌した。シクロヘキサノン(62μL)を加え、−78℃から徐々に室温に戻しながら終夜撹拌した。塩化アンモニウム水溶液を加え、ジエチルエーテルで3回抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過した。ろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより1‐(4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンジル)シクロヘキサン‐1‐オール(25mg,収率39%)を得た。
1‐(4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンジル)シクロヘキサン‐1‐オール(40mg)のアセトニトリル(5.0mL)溶液に、氷冷下にて硝酸二アンモニウムセリウム(CAN)水溶液(0.2M,1.5mL)を加え、そのままの温度で1時間撹拌した。水を加えて酢酸エチルで3回抽出し、合わせた抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過した。ろ液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより5‐((1‐ヒドロキシシクロヘキシル)メチル)‐2‐イソプロピル‐3‐メトキシシクロヘキサ‐2,5‐ジエン‐1,4‐ジオン(25mg、収率68%)を得た。
1H‐NMR(CDCl3,500MHz)
6.50(s,1H),3.92(s,3H),3.21(sept,J=7.0Hz,1H),2.57(s,2H),1.62‐1.21(m,11H),1.20(d,J=7.0Hz,6H)
13C‐NMR(CDCl3,125MHz)
187.92,185.33,156.37,143.07,137.97,136.00,71.50,61.06,37.95,25.64,24.67,22.22,20.57
IR(neat,cm-1
3462,2934,1651,1385,1273
HRMS
1928NO4(M+CH3CN+H+)計算値:334.2013,測定値334.20
17
【0050】
[実施例5]
5‐(2‐ヒドロキシ‐2‐メチルプロピル)‐2‐イソプロピル‐3‐メトキシシクロ
ヘキサ‐2,5‐ジエン‐1,4‐ジオン(化合物E)の合成方法
【化12】
【0051】
1‐(ブロモメチル)‐4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンゼン(100mg)のジエチルエーテル(1mL)溶液を−20℃に冷却し、イソプロピルマグネシウムクロリドジエチルエーテル溶液(2.0M、0.330mL)を加えて5時間撹拌した。アセトン(50μL)を加え、−20℃から徐々に室温に戻しながら3時間撹拌した。塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで3回抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過した。ろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより1‐(4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシフェニル)‐2‐メチルプロパン‐2‐オール(44mg,収率47%)を得た。
1‐(4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシフェニル)‐2‐メチルプロパン‐2‐オール(36mg)のアセトニトリル(5.1mL)溶液に、氷冷下にて硝酸二アンモニウムセリウム(CAN)水溶液(0.2M、1.5mL)を加え、そのままの温度で1時間撹拌した。水を加えて酢酸エチルで3回抽出し、合わせた抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過した。ろ液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより5‐(2‐ヒドロキシ‐2‐メチルプロピル)‐2‐イソプロピル‐3‐メトキシシクロヘキサ‐2,5‐ジエン‐1,4‐ジオン(26mg、収率81%)を得た。
1H‐NMR(CDCl3,500MHz)
6.52(s,1H),3.93(s,3H),3.22(sept,J=7.0Hz,1H),2.61(s,2H),1.25(s,6H),1.21(d,J=7.0Hz,6H)
13C‐NMR(CDCl3,125MHz)
187.92,185.26,156.36,143.33,138.09,136.04,70.74,61.07,41.79,29.74,24.69,20.57
IR(neat,cm-1
3462,2969,1653,1274
HRMS
1624NO4(M+CH3CN+H+)計算値:294.1700,測定値294.17
01
【0052】
[実施例6]
5‐(イソプロポキシメチル)‐2‐イソプロピル‐3‐メトキシシクロヘキサ‐2,5‐ジエン‐1,4‐ジオン(化合物F)の合成方法
【化13】
【0053】
1‐(ブロモメチル)‐4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンゼン(150mg)と2‐プロパノール(115μL)のTHF(2mL)溶液を氷冷し、水素化ナ
トリウム(60%、60mg)とジメチルホルムアミド(200μL)を加えて室温で2時間撹拌した。水を加え、酢酸エチルで3回抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過した。ろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより1‐(イソプロポキシメチル)‐4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンゼン(109mg,収率78%)を得た。
1‐(イソプロポキシメチル)‐4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンゼン(61mg)のアセトニトリル(9.0mL)溶液に、氷冷下にて硝酸二アンモニウムセリウム(CAN)水溶液(0.2M、2.6mL)を加え、そのままの温度で1時間半撹拌した。水を加えて酢酸エチルで3回抽出し、合わせた抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過した。ろ液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより5‐(イソプロポキシメチル)‐2‐イソプロピル‐3‐メトキシシクロヘキサ‐2,5‐ジエン‐1,4‐ジオン(38mg、収率70%)を得た。
1H‐NMR(CDCl3,500MHz)
6.68(t,J=2.0Hz,1H),4.30(d,J=2.0Hz,2H),3.93(s,3H),3.67(sept,J=6.0Hz,1H),3.22(sept,J=7.0Hz,1H),1.20(d,J=7.0Hz,6H),1.19(d,J=6.0Hz,6H)
13C‐NMR(CDCl3,125MHz)
188.12,183.83,156.06,144.18,138.06,132.12,72.56,63.21,61.07,24.66,22.08,20.57
IR(neat,cm-1
2972,1653,1267
HRMS
1624NO4(M+CH3CN+H+)計算値:294.1700,測定値294.16
98
【0054】
[実施例7]
N‐((4‐イソプロピル‐5‐メトキシ‐3,6‐ジオキソシクロヘキサ‐1,4‐ジエン‐1‐イル)メチル)シクロヘキサンカルボキシアミド(化合物G)の合成方法
【化14】
【0055】
1‐(ブロモメチル)‐4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンゼン(150mg)にアンモニア・エタノール溶液(2.0M、2.5mL)を加えて室温で4時間撹拌した。反応溶液を濃縮し、1Mの水酸化ナトリウム水溶液を加えて、酢酸エチルで3回抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過した。ろ液を濃縮し、ジエチルエーテル(2mL)を加えて氷冷したところに、ピリジン(120μL)とシクロヘキサンカルボニルクロリド(135μL)を加えて室温で撹拌した。1Mの塩酸水溶液を加えて、酢酸エチルで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過した。ろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することによりN‐(4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンジル)シクロヘキサンカルボキシアミド(35mg,収率20%)を得た。
N‐(4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンジル)シクロヘキサンカルボキシアミド(20mg)のアセトニトリル(2.9mL)溶液に、氷冷下にて硝酸二アンモニウムセリウム(CAN)水溶液(0.2M、0.71mL)を加え、そのままの温度で2時間半撹拌した。水を加えて酢酸エチルで3回抽出し、合わせた抽出液を硫酸ナトリ
ウムで乾燥させ、ろ過した。ろ液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーで精製することによりN‐((4‐イソプロピル‐5‐メトキシ‐3,6‐ジオキソシクロヘキサ‐1,4‐ジエン‐1‐イル)メチル)シクロヘキサンカルボキシアミド(14mg、収率74%)を得た。
1H‐NMR(CDCl3,500MHz)
6.43(t,J=1.8Hz,1H),5.84(brs,1H),4.20(dd,J=1.8Hz,J=6.5Hz,2H),3.94(s,3H),3.20(sept,J=7.3Hz,1H),2.16‐1.99(m,1H),1.91‐1.75(m,4H),1.70‐1.64(m,1H),1.48‐1.38(m,2H),1.32‐1.20(m,3H),1.19(d,J=7.0Hz,6H)
13C‐NMR(CDCl3,125MHz)
187.78,184.17,176.34,156.10,142.32,138.37,132.61,61.10,45.45,37.57,29.76,25.74,24.71,20.53
IR(neat,cm-1
3293,2932,1653,1647,1635,1269
HRMS
1825NNaO4(M+Na+)計算値:342.1676,測定値320.1675
【0056】
[実施例8]
N‐((4‐イソプロピル‐5‐メトキシ‐3,6‐ジオキソシクロヘキサ‐1,4‐ジエン‐1‐イル)メチル)‐N‐メチルシクロヘキサンカルボキシアミド(化合物H)の合成方法
【化15】
【0057】
1‐(ブロモメチル)‐4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンゼン(150mg)にメチルアミン・メタノール溶液(40%、1mL)を加えて室温で1時間撹拌した。反応溶液を濃縮し、1Mの水酸化ナトリウム水溶液を加えて、酢酸エチルで3回抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過した。ろ液を濃縮し、ジエチルエーテル(2mL)を加えて氷冷したところに、ピリジン(120μL)とシクロヘキサンカルボニルクロリド(135μL)を加えて室温で撹拌した。1Mの塩酸水溶液を加えて、酢酸エチルで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過した。ろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することによりN‐(4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンジル)‐N‐メチルシクロヘキサンカルボキシアミド(70mg,収率39%)を得た。
N‐(4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンジル)‐N‐メチルシクロヘキサンカルボキシアミド(36mg)のアセトニトリル(5.0mL)溶液に、氷冷下にて硝酸二アンモニウムセリウム(CAN)水溶液(0.2M、1.24mL)を加え、そのままの温度で2時間半撹拌した。水を加えて酢酸エチルで3回抽出し、合わせた抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過した。ろ液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーで精製することによりN‐((4‐イソプロピル‐5‐メトキシ‐3,6‐ジオキソシクロヘキサ‐1,4‐ジエン‐1‐イル)メチル)‐N‐メチルシクロヘキサンカルボキシアミド(22mg、収率67%)を得た。
1H‐NMR(CDCl3,500MHz)
6.18(t,J=2.0Hz,1H),4.32(d,J=2.0Hz,2H),3.93(s,3H),3.20(sept,J=6.8Hz,1H),3.07(s,3H),2.59‐2.50(m,1H),1.86‐1.61(m,5H),1.58‐1.40(m,2H),1.32‐1.24(m,3H),1.18(d,J=6.8Hz,6H)
13C‐NMR(CDCl3,125MHz)
187.74,184.00,176.68,156.27,141.50,138.07,131.52,61.07,45.98,40.82,36.19,29.28,25.84,24.67,20.52
IR(neat,cm-1
2932,1653,1647,1635,1267
HRMS
1928NO4(M+H+)計算値:334.2013,測定値334.2011
【0058】
[実施例9]
2‐イソプロピル‐3‐メトキシ‐5‐((2‐オキソピロリジン‐1‐イル)メチル)シクロヘキサ‐2,5‐ジエン‐1,4‐ジオン(化合物I)の合成方法
【化16】
【0059】
1‐(ブロモメチル)‐4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンゼン(150mg)とピロリジノン(115μL)のTHF(2mL)溶液を−10℃に冷却したところに、水素化ナトリウム(60%、60mg)を加え、室温で1時間撹拌した後、ジメチルホルムアミド(200μL)を加えて、さらに5時間半撹拌した。水を加えて、酢酸エチルで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過した。ろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより1‐(4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンジル)ピロリジン‐2‐オン(113mg,収率75%)を得た。
1‐(4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンジル)ピロリジン‐2‐オン(49mg)のアセトニトリル(8.0mL)溶液に、4℃にて硝酸二アンモニウムセリウム(CAN)水溶液(0.2M、2.0mL)を加え、そのままの温度で2時間撹拌した。水を加えて酢酸エチルで3回抽出し、合わせた抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過した。ろ液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより2‐イソプロピル‐3‐メトキシ‐5‐((2‐オキソピロリジン‐1‐イル)メチル)シクロヘキサ‐2,5‐ジエン‐1,4‐ジオン(37mg、収率84%)を得た。
1H‐NMR(CDCl3,500MHz)
6.30(t,J=1.5Hz,1H),4.22(d,J=1.5Hz,2H),3.92(s,3H),3.38(t,J=7.0Hz,2H),3.18(sept,J=6.8Hz,1H),2.42(t,J=8.3Hz,2H),2.11‐2.04(m,2H),1.17(d,J=6.8Hz,6H)
13C‐NMR(CDCl3,125MHz)
187.58,183.71,175.72,156.22,140.74,138.22,132.22,61.10,47.85,40.71,30.48,24.69,20.49,18.10
IR(KBr,cm-1
2951,1697,1655,1630,1603,1269
HRMS
1519NNaO4(M+Na+)計算値:300.1206,測定値300.1206
【0060】
[実施例10]
2‐イソプロピル‐3‐メトキシ‐5‐((4‐ニトロ‐1H‐イミダゾール‐1‐イル)メチル)シクロヘキサ‐2,5‐ジエン‐1,4‐ジオン(化合物J)の合成方法
【化17】
【0061】
1‐(ブロモメチル)‐4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンゼン(150mg)と4‐ニトロイミダゾール(170mg)のTHF(2mL)溶液を氷冷したところに、水素化ナトリウム(60%、60mg)とジメチルホルムアミド(200μL)を加えて、室温で7時間半撹拌した。水を加えて、酢酸エチルで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過した。ろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより1‐(4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンジル)‐4‐ニトロ‐1H‐イミダゾール(119mg,収率72%)を得た。
1‐(4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンジル)‐4‐ニトロ‐1H‐イミダゾール(70mg)のアセトニトリル(8.4mL)溶液に、氷冷下にて硝酸二アンモニウムセリウム(CAN)水溶液(0.2M、2.5mL)を加え、そのままの温度で1時間撹拌した。水を加えて酢酸エチルで3回抽出し、合わせた抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過した。ろ液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより2‐イソプロピル‐3‐メトキシ‐5‐((4‐ニトロ‐1H‐イミダゾール‐1‐イル)メチル)シクロヘキサ‐2,5‐ジエン‐1,4‐ジオン(48mg、収率75%)を得た。
1H‐NMR(CDCl3,500MHz)
7.82(d,J=1.5Hz,1H),7.53(d,J=1.5Hz,1H),6.43(s,1H),4.98(s,2H),3.97(s,3H),3.21(sept,J=7.3Hz,1H),1.19(d,J=6.5Hz,6H)
13C‐NMR(CDCl3,125MHz)
186.56,182.50,155.93,139.15,139.02,136.67,134.70,119.63,61.35,45.84,24.90,20.39
IR(KBr,cm-1
3142,3107,2960,1654,1631,1606,1284
HRMS
14153NaO5(M+Na+)計算値:328.0904,測定値328.0903
【0062】
[実施例11]
5‐((1H‐1,2,4‐トリアゾール‐1‐イル)メチル)‐2‐イソプロピル‐3‐メトキシシクロヘキサ‐2,5‐ジエン‐1,4‐ジオン(化合物K)の合成方法
【化18】
【0063】
1‐(ブロモメチル)‐4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンゼン(150mg)とトリアゾール(104mg)のTHF(2mL)溶液を氷冷したところに、炭酸カリウム(207mg)とジメチルホルムアミド(200μL)を加えて、室温で2時間撹拌した。水を加えて、酢酸エチルで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過した。ろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより1‐(4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンジル)‐1H‐1,2,4‐トリアゾール(98mg,収率68%)を得た。
1‐(4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンジル)‐1H‐1,2,4‐トリアゾール(50mg)のアセトニトリル(7.0mL)溶液に、氷冷下にて硝酸二アンモニウムセリウム(CAN)水溶液(0.2M、2.05mL)を加え、そのままの温度で1時間半撹拌した。水を加えて酢酸エチルで3回抽出し、合わせた抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過した。ろ液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより5‐((1H‐1,2,4‐トリアゾール‐1‐イル)メチル)‐2‐イソプロピル‐3‐メトキシシクロヘキサ‐2,5‐ジエン‐1,4‐ジオン(35mg、収率79%)を得た。
1H‐NMR(CDCl3,500MHz)
8.20(s,1H),7.97(s,1H),6.30(s,1H),5.15(s,2H),3.94(s,3H),3.19(sept,J=7.3Hz,1H),1.19(d,J=7.3Hz,6H)
13C‐NMR(CDCl3,125MHz)
186.97,182.78,155.89,152.69,144.37,139.49,138.78,134.46,61.20,46.87,24.80,20.43
IR(neat,cm-1
2963,1653,1647,1636,1273
HRMS
141633(M+H+)計算値:262.1186,測定値262.1190
【0064】
[実施例12]
5‐[(1‐(2,4‐ジフルオロフェニル)‐2‐(1H‐1,2,4−トリアゾール‐1‐イル)エトキシ)メチル]‐2‐イソプロピル‐3‐メトキシシクロヘキサ‐2,5‐ジエン‐1,4‐ジオン(化合物L)の合成方法
【化19】
【0065】
1‐(2,4‐ジフルオロフェニル)‐2‐(1H‐1,2,4‐トリアゾール‐1‐イル)エタン‐1‐オールのTHF(1mL)溶液を氷冷したところに水素化ナトリウム
(60%、30mg)を加え、氷冷下で30分撹拌した後、1‐(ブロモメチル)‐4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンゼン(150mg)のTHF(1mL)溶液とジメチルホルムアミド(100μL)を加えて、氷冷下で1時間撹拌した。飽和塩化ナトリウム水溶液を加えて、酢酸エチルで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過した。ろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより1‐[2‐(2,4‐ジフルオロフェニル)‐2‐((4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンジル)オキシ)エチル]‐1H‐1,2,4‐トリアゾール(224mg,収率98%)を得た。
1H‐NMR(CDCl3,500MHz)
8.11(s,1H),7.85(s,1H),7.39‐7.34(m,1H),6.90‐6.79(m,2H),6.33(s,1H),5.09(t,J=6.3Hz,1H),4.41(d,J=11.5Hz,1H),4.38(d,J=6.3Hz,2H),4.23(d,J=11.5Hz,1H),3.74(s,3H),3.70(s,3H),3.61(s,3H),3.43(sept,J=7.1Hz,1H),1.24(d,J=7.1Hz,3H),1.24(d,J=7.1Hz,3H)
13C‐NMR(CDCl3,125MHz)
164.02(d,J=11.9Hz),161.87(dd,J=11.9Hz,J=41.8Hz),159.72(d,J=11.9Hz),154.67,151.63(d,J=8.4Hz),145.40,144.21,130.90,129.15(dd,J=6.0Hz,J=9.5Hz),127.55,121.12(d,J=9.5Hz),111.92(d,J=17.9Hz),107.10,104.26(t,J=25.6Hz),73.32,66.61,60.77,60.74,55.75,54.41,25.22,21.14
IR(neat,cm-1
2960,1502,1384,1263
HRMS
232723NaO4(M+Na+)計算値:470.1862,測定値:470.1866
【0066】
1‐[2‐(2,4‐ジフルオロフェニル)‐2‐((4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンジル)オキシ)エチル]‐1H‐1,2,4‐トリアゾール(100mg)のアセトニトリル(9.0mL)溶液に、氷冷下にて硝酸二アンモニウムセリウム(CAN)水溶液(0.2M、2.4mL)を加え、そのままの温度で1時間半撹拌した。食塩水を加えて酢酸エチルで3回抽出し、合わせた抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過した。ろ液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより5‐[(1‐(2,4‐ジフルオロフェニル)‐2‐(1H‐1,2,4−トリアゾール‐1‐イル)エトキシ)メチル]‐2‐イソプロピル‐3‐メトキシシクロヘキサ‐2,5‐ジエン‐1,4‐ジオン(94mg、収率100%)を得た。
1H‐NMR(CDCl3,500MHz)
8.08(s,1H),7.91(s,1H),7.31−7.27(m,1H),6.91‐6.82(m,2H),6.47(t,J=1.8Hz,1H),5.09(t,J=6.2Hz,1H),4.42(d,J=6.2Hz,2H),4.20(dd,J=1.8Hz,J=16.0Hz,1H),4.10(dd,J=1.8Hz,J=16.0Hz,1H),3.87(s,3H),3.18(sept,J=7.3Hz,1H),1.16(d,J=7.3Hz,6H)
13C‐NMR(CDCl3,125MHz)
187.57,183.08,163.32(dd,J=11.4Hz,J=250Hz),160.75(dd,J=11.9Hz,J=249Hz)155.92,152.19,144.20,141.91,138.23,132.33,128.86(dd,J=5.9Hz,J=10.8Hz),120.16(dd,3.6Hz,14.4H
z),112.32(d,J=25.0Hz),104.66(t,J=25.1Hz),74.45,64.73,61.09,54.09,24.70,20.51
IR(KBr,cm-1
2943,1655,1604,1508,1275
HRMS
212123NaO4(M+Na+)計算値:440.1392,測定値:440.1387
【0067】
[実施例13]
5‐[2‐(2,4‐ジフルオロフェニル)‐2‐ヒドロキシ‐3‐(1H‐1,2,4‐トリアゾール‐1‐イル)プロピル]‐2‐イソプロピル‐3‐メトキシシクロヘキサ‐2,5‐ジエン‐1,4‐ジオン(化合物M)の合成方法
【化20】
1‐(ブロモメチル)‐4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンゼン(1.0g)のジエチルエーテル(16mL)溶液を−20℃に冷却したところに、イソプロピルマグネシウムクロリドジエチルエーテル溶液(2.0M、3.3mL)を加え、−10℃で終夜撹拌した。1‐(2,4‐ジフルオロフェニル)‐2‐(1H‐1,2,4‐トリアゾール‐1‐イル)エタン‐1‐オンのTHF(16mL)溶液を加え、−10℃から徐々に室温に戻しつつ終夜撹拌した。塩化アンモニウム水溶液を加えて、酢酸エチルで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過した。ろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより2‐(2,4‐ジフルオロフェニル)‐1‐(4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシフェニル)‐3‐(1H‐1,2,4‐トリアゾール‐1‐イル)プロパン‐2‐オール(638mg,収率43%,純度82%)を得た。
1H‐NMR(CDCl3,500MHz)
8.12(s,1H),7.79(s,1H),7.36‐7.29(m,1H),6.80‐6.64(m,2H),6.17(s,1H),4.74(d,J=13.8Hz,1H),4.53(d,J=13.8Hz,1H),3.76(s,3H),3.74(s,3H),3.60(s,3H),3.39(sept,J=7.0Hz,1H),3.20(d,J=14.3Hz,1H),3.15(d,J=14.3Hz,1H),1.22(d,J=7.0Hz,3H),1.21(d,J=7.0Hz,3H)
13C‐NMR(CDCl3,125MHz)
162.64(dd,J=12.5Hz,J=247.4Hz),158.81(dd,J=11.9Hz,J=244.4Hz),154.74,151.54,151.08,144.88,130.77,130.10,130.01(dd,J=6.0Hz,J=9.6Hz),126.04,125.59(d,J=13.1Hz),111.27(dd,J=1.8Hz,J=20.3Hz),109.67,103.80(t,J=26.8Hz),60.96,60.55,55.72,39.58,25.17,21.11,21.14
IR(neat,cm-1
3393,2958,1499,1273
HRMS
232723NaO4(M+Na+)計算値:470.1862,測定値:470.1863
【0068】
2‐(2,4‐ジフルオロフェニル)‐1‐(4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシフェニル)‐3‐(1H‐1,2,4‐トリアゾール‐1‐イル)プロパン‐2‐オール(72mg、純度85%)のアセトニトリル(5.5mL)溶液を氷冷したところに、硝酸二アンモニウムセリウム(CAN)水溶液(0.2M、1.5mL)を加え、そのままの温度で1時間撹拌した。塩化ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで3回抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過した。ろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより5‐[2‐(2,4‐ジフルオロフェニル)‐2‐ヒドロキシ‐3‐(1H‐1,2,4‐トリアゾール‐1‐イル)プロピル]‐2‐イソプロピル‐3‐メトキシシクロヘキサ‐2,5‐ジエン‐1,4‐ジオン(48mg,収率84%)を得た。
1H‐NMR(CDCl3,500MHz)
8.08(s,1H),7.83(s,1H),7.42‐7.35(m,1H),6.80‐6.72(m,2H),6.41(s,1H),5.13(brs,1H),4.71(d,J=14.5Hz,1H),4.54(d,J=14.5Hz,1H),3.78(s,3H),3.16‐3.08(m,2H),2.86(d,J=13.5Hz,1H),1.14(d,J=7.5Hz,6H)
13C‐NMR(CDCl3,125MHz)
187.36,185.16,162.96(dd,J=12.6Hz,J=248.6Hz),158.61(dd,J=11.4Hz,J=245.0Hz),156.08,151.80,144.53,141.00,138.43,137.11,129.82(dd,J=5.9Hz,J=9.6Hz),124.12(d,J=13.1Hz),111.73(d,J=17.9Hz),104.36(t,J=26.3Hz),74.97,61.00,57.36,37.48,24.67,20.50,20.44
IR(KBr,cm-1
3399,2963,1651,1616,1599,1500,1273
HRMS
212123NaO4(M+Na+)計算値:440.1392,測定値:440.1399
【0069】
[実施例14]
5‐((シクロヘキシルオキシ)メチル)‐2‐イソプロピル‐3‐メトキシシクロヘキサ‐2,5‐ジエン‐1,4‐ジオン(化合物N)の合成方法
【化21】
【0070】
1‐(ブロモメチル)‐4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンゼン(200mg)とシクロヘキサノール(210μL)のジメチルホルムアミド(1mL)溶液を氷冷し、水素化ナトリウム(60%、53mg)を加えて氷冷下で30分撹拌し、室温で1時間撹拌した。水を加え、酢酸エチルで3回抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過した。ろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより1‐((シクロヘキシルオキシ)メチル)‐4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンゼン(185mg,収率87%)を得た。
1‐((シクロヘキシルオキシ)メチル)‐4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメト
キシベンゼン(100mg)のアセトニトリル(12.5mL)溶液に、氷冷下にて硝酸二アンモニウムセリウム(CAN)水溶液(0.2M、3.1mL)を加え、そのままの温度で1時間撹拌した。食塩水を加えて酢酸エチルで3回抽出し、合わせた抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過した。ろ液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより5‐((シクロヘキシルオキシ)メチル)‐2‐イソプロピル‐3‐メトキシシクロヘキサ‐2,5‐ジエン‐1,4‐ジオン(71mg、収率78%)を得た。1H‐NMR(CDCl3,500MHz)
6.70(t,J=2.0Hz,1H),4.33(d,J=2.0Hz,2H),3.93(s,3H),3.38‐3.31(m,1H),3.22(sept,J=7.0Hz,1H),1.93‐1.86(m,2H),1.77‐1.69(m,2H),1.55‐1.48(m,1H),1.41‐1.22(m,5H),1.20(d,J=7.0Hz,6H)
13C‐NMR(CDCl3,125MHz)
188.16,183.85,156.07,144.36,138.04,132.08,78.21,62.95,61.07,32.11,25.79,24.66,23.91,20.58
IR(neat,cm-1
2934,1653,1265
HRMS
19282NO4(M+H+)計算値:334.2013,測定値:334.2019
【0071】
[実施例15]
2‐イソプロピル‐3‐メトキシ‐5‐(フェノキシメチル)シクロヘキサ‐2,5‐ジエン‐1,4‐ジオン(化合物O)の合成方法
【化22】
【0072】
フェノール(47mg)のTHF(1mL)溶液を氷冷したところに、水素化ナトリウムを加えた後、1‐(ブロモメチル)‐4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンゼン(100mg)のTHF(1mL)溶液を加え、室温で終夜撹拌した。ジメチルホルムアミド(200μL)を加え、室温にて5時間撹拌し、フェノール(47mg)と水素化ナトリウム(19mg)を加えて、さらに室温で撹拌した。水を加え、酢酸エチルで3回抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過した。ろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより2‐イソプロピル‐1,3,4‐トリメトキシ‐5‐(フェノキシメチル)ベンゼン(36mg,収率34%)を得た。
2‐イソプロピル‐1,3,4‐トリメトキシ‐5‐(フェノキシメチル)ベンゼン(34mg)のアセトニトリル(4.5mL)溶液に、氷冷下にて硝酸二アンモニウムセリウム(CAN)水溶液(0.2M、1.2mL)を加え、そのままの温度で1時間撹拌した。食塩水を加えて酢酸エチルで3回抽出し、合わせた抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過した。ろ液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより2‐イソプロピル‐3‐メトキシ‐5‐(フェノキシメチル)シクロヘキサ‐2,5‐ジエン‐1,4‐ジオン(23mg、収率75%)を得た。
1H‐NMR(CDCl3,500MHz)
7.30(t、J=7.5Hz,2H),6.99(t,J=7.5Hz,1H),6.95(d,J=7.5Hz,2H),6.81(t,J=2.2Hz,1H),4.89
(d,J=2.2Hz,2H),3.98(s,3H),3.25(sept,J=7.0Hz,1H),1.22(d,J=7.0Hz,6H)
13C‐NMR(CDCl3,125MHz)
187.73,183.48,157.90,156.02,141.88,138.32,132.55,129.76,121.76,114.74,63.05,61.17,24.74,20.57
IR(KBr,cm-1
2963,1651,1635,1599,1500,1448,1258
HRMS
1922NO4(M+CH3CN+H+)計算値:328.1546,測定値:328.1
543
【0073】
[実施例16]
2‐イソプロピル‐3‐メトキシ‐5‐((ピリジン‐3‐イルオキシ)メチル)シクロヘキサ‐2,5‐ジエン‐1,4‐ジオン(化合物P)の合成方法
【化23】
【0074】
1‐(ブロモメチル)‐4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンゼン(200mg)と3‐ピリジノール(188mg)のジメチルホルムアミド(1mL)溶液を氷冷し、水素化ナトリウム(60%、53mg)を加えて氷冷下で30分撹拌し、室温で1時間撹拌した。1M水酸化ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで3回抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過した。ろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより3‐((4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンジル)オキシ)ピリジン(21mg,収率10%)を得た。
3‐((4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンジル)オキシ)ピリジン(21mg)のアセトニトリル(2.6mL)溶液に、氷冷下にて硝酸二アンモニウムセリウム(CAN)水溶液(0.2M、0.66mL)を加え、そのままの温度で1時間撹拌した。食塩水を加えて酢酸エチルで3回抽出し、合わせた抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過した。ろ液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより2‐イソプロピル‐3‐メトキシ‐5‐((ピリジン‐3‐イルオキシ)メチル)シクロヘキサ‐2,5‐ジエン‐1,4‐ジオン(16mg、収率84%)を得た。
1H‐NMR(CDCl3,500MHz)
8.37(s,1H),8.27(t,J=3.0Hz,1H),7.25(s,2H),6.78(t,J=2.2Hz,1H),4.93(d,J=2.2Hz,2H),3.98(s,3H),3.25(sept,J=7.0Hz,1H),1.22(d,J=7.0Hz,6H)
13C‐NMR(CDCl3,125MHz)
187.49,183.23,156.00,154.15,143.22,140.99,138.49,138.09,132.73,124.08,121.51,63.44,61.21,24.78,20.54
IR(KBr,cm-1
2964,1651,1633,1603,1577,1269
HRMS
1618NO4(M+H+)計算値:288.1230,測定値:288.1236
【0075】
[実施例17]
N‐((4‐イソプロピル‐5‐メトキシ‐3,6‐ジオキソシクロヘキサ‐1,4‐ジエン‐1‐イル)メチル)‐N‐メチルベンズアミド(化合物Q)の合成方法
【化24】
【0076】
1‐(4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシフェニル)‐N‐メチルメタンアミン(100mg)のジクロロメタン(2mL)溶液にトリエチルアミン(110μL)を加えて氷冷したところに、ベンゾイルクロリド(110μL)を加えて室温で撹拌した。水を加えて、酢酸エチルで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過した。ろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することによりN‐(4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンジル)‐N‐メチルベンズアミド(83mg,収率62%)を得た。
N‐(4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンジル)‐N‐メチルベンズアミド(74mg)のアセトニトリル(8.5mL)溶液に、氷冷下にて硝酸二アンモニウムセリウム(CAN)水溶液(0.2M、2.3mL)を加え、そのままの温度で1時間撹拌した。水を加えて酢酸エチルで3回抽出し、合わせた抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過した。ろ液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーで精製することによりN‐((4‐イソプロピル‐5‐メトキシ‐3,6‐ジオキソシクロヘキサ‐1,4‐ジエン‐1‐イル)メチル)‐N‐メチルベンズアミド(22mg、収率67%)を得た。
1H‐NMR(CDCl3,500MHz)
7.48‐7.32(m,5H),6.40(s,1H),4.50(s,2H),3.95(s,3H),3.22(sept,J=7.0Hz,1H),3.00(s,3H),1.20(d,J=7.0Hz,6H)
13C‐NMR(CDCl3,125MHz)
187.68,183.95,171.99,156.30,140.84,138.25,135.37,131.92,130.19,128.64,127.22,61.14,45.83,38.52,24.74,20.54
IR(neat,cm-1
2960,1653,1647,1635,1267
HRMS
1921NNaO4(M+Na+)計算値:350.1363,測定値:350.1361
【0077】
[実施例18]
N‐シクロヘキシル‐N‐((4‐イソプロピル‐5‐メトキシ‐3,6‐ジオキソシクロヘキサ‐1,4‐ジエン‐1‐イル)メチル)シクロヘキサンカルボキシアミド(化合物R)の合成方法
【化25】
【0078】
シクロヘキサンアミン(170μL)のTHF(1mL)溶液を氷冷したところに、1‐(ブロモメチル)‐4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンゼン(150mg)のTHF(1mL)溶液を加えて室温で5時間撹拌した。1Mの水酸化ナトリウム水溶液を加えて、酢酸エチルで3回抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた粗生成物(166mg)のうち135mgをTHF(1mL)に溶かし、氷冷したところに、トリエチルアミン(115μL)とシクロヘキサンカルボニルクロリド(84μL)を加えて室温で30分撹拌した。1Mの塩酸水溶液を加えて、酢酸エチルで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過した。ろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することによりN‐シクロヘキシル‐N‐(4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンジル)シクロヘキサンカルボキシアミド(151mg,収率87%)を得た。
N‐シクロヘキシル‐N‐(4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンジル)シクロヘキサンカルボキシアミド(120mg)のアセトニトリル(11.0mL)溶液に、氷冷下にて硝酸二アンモニウムセリウム(CAN)水溶液(0.2M、3.0mL)を加え、そのままの温度で1時間撹拌した。水を加えて酢酸エチルで3回抽出し、合わせた抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過した。ろ液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーで精製することによりN‐シクロヘキシル‐N‐((4‐イソプロピル‐5‐メトキシ‐3,6‐ジオキソシクロヘキサ‐1,4‐ジエン‐1‐イル)メチル)シクロヘキサンカルボキシアミド(69mg、収率62%)を得た。
1H‐NMR(CDCl3,500MHz)
6.09(t,J=1.8Hz,1H),4.19(d,J=1.8Hz,2H),3.19(s,3H),3.17(sept,J=7.2Hz,1H),2.56‐2.48(m,1H),1.85‐1.49(m,10H),1.41‐1.00(m,10H),1.16(d,J=7.2Hz,6H)
13C‐NMR(CDCl3,125MHz)
187.87,183.95,176.27,156.14,143.22,137.79,131.40,61.03,56.96,41.10,39.26,31.94,29.91,25.89,25.84,25.72,25.15,24.63,20.53IR(neat,cm-1
2932,1653,1647,1635,1269
HRMS
2436NO4(M+H+)計算値:402.2639,測定値:402.2635
【0079】
[実施例19]
2‐イソプロピル‐3‐メトキシ‐5‐((2‐オキソ‐3,4‐ジヒドロキノリン‐1(2H)‐イル)メチル)シクロヘキサ‐2,5‐ジエン‐1,4‐ジオン(化合物S)の合成方法
【化26】
【0080】
キノロン(74mg)のTHF(1mL)溶液を氷冷したところに、水素化ナトリウム(19mg)を加えた後、1‐(ブロモメチル)‐4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンゼン(100mg)のTHF(1mL)溶液を加え、室温で終夜撹拌した。ジメチルホルムアミド(200μL)を加え、室温にて5時間撹拌し、キノロン(74m
g)と水素化ナトリウム(19mg)を加えて、さらに室温で3時間撹拌した。水を加え、酢酸エチルで3回抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過した。ろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより1‐(4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンジル)‐3,4‐ジヒドロキノリン‐2(1H)‐オン(83mg,収率68%)を得た。
1‐(4‐イソプロピル‐2,3,5‐トリメトキシベンジル)‐3,4‐ジヒドロキノリン‐2(1H)‐オン(34mg)のアセトニトリル(9.0mL)溶液に、氷冷下にて硝酸二アンモニウムセリウム(CAN)水溶液(0.2M、2.5mL)を加え、そのままの温度で1時間撹拌した。食塩水を加えて酢酸エチルで3回抽出し、合わせた抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過した。ろ液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより2‐イソプロピル‐3‐メトキシ‐5‐((2‐オキソ‐3,4‐ジヒドロキノリン‐1(2H)‐イル)メチル)シクロヘキサ‐2,5‐ジエン‐1,4‐ジオン(45mg、収率58%)を得た。
1H‐NMR(CDCl3,500MHz)
7.20−7.14(m,2H),7.01(t,J=7.3Hz,1H),6.68(d,J=8.0Hz,1H),6.10(t,J=2.2Hz,1H),4.90(d,J=2.2Hz,2H),3.99(s,3H),3.19(sept,J=7.2Hz,1H),2.97(t,J=7.5Hz,2H),2.74(t,J=7.5Hz,2H),1.18(d,J=7.2Hz,6H)
13C‐NMR(CDCl3,125MHz)
187.36,183.68,170.40,156.24,140.81,139.03,138.16,131.58,128.31,127.83,126.22,123.59,114.71,61.16,40.92,31.72,25.48,24.69,20.56,20.49
IR(KBr,cm-1
2961,1674,1654,1629,1600,1271
HRMS
2022NO4(M+H+)計算値:340.1543,測定値:340.1547
【0081】
[試験1]
in vitro培養系における血流型T. cruziに対する抗トリパノソーマ活性
ヒト由来培養細胞HT1080に、T. cruziを感染させ、培養上清中の血流型虫体(トリポマスティゴート)を集めた。血流型虫体(5×106細胞)に各濃度のキノン誘導体、コマ
ロビキノン、又は既存薬であるベンズニダゾール(BZL)を添加し、24時間37℃で培養した。顕微鏡下で血流型虫体数を数え、IC50値を算出した。結果を図2および表1に示す。結果として、化合物E、F、G、H、J、K、L、M、Q、Rはベンズニダゾールと同等、もしくはそれ以上の抗トリパノソーマ活性を示した。
【0082】
【表1】
【0083】
[試験2]
ヒト由来線維肉腫細胞HT1080(ホスト細胞)のin vitro培養系におけるT. cruziの感染と増殖に関する各種キノン誘導体の効果
下記方法により、T. cruziとホスト細胞をキノン誘導体又はベンズニダゾール存在下で3日間in vitroで培養し、ホスト細胞へのT. cruziの感染と増殖(原虫の数/ホスト細胞)を調べた。
【0084】
HT1080細胞(1x104cells)

円形カバーグラスを入れた24穴プレートに播く

37℃、5% CO2存在下で一晩培養する

T. cruzi (1x106 cells) を感染させる

キノン誘導体又はベンズニダゾール(0.1, 1, 10 μM)を添加する

3日間培養する

Diff-Quik (Sysmex社)で染色後、カバーガラスを取出し封入する

光学顕微鏡下で感染率およびホスト細胞1個当たりの原虫数を測定する
【0085】
その結果を表2に示す。化合物L、Mはベンズニダゾール以上の抗トリパノソーマ活性を示した。
【0086】
【表2】
【0087】
[試験3]
培養細胞Swiss3T3を用いた細胞毒性試験
下記方法により、ヒト培養細胞Swiss3T3に対する毒性試験を行った。
培養細胞Swiss3T3(1×104cells/ well)

37℃、5%CO2、1日間培養

化合物E、F、L、M、コマロビキノン又はベンズニダゾールを添加

24時間後にCytoTox-ONE(Promega社)を用いてLDH(乳酸デヒドロゲナーゼ)を測定

LD50(μM)を算出
【0088】
その結果、表3に示すように、これら化合物E、F、L、MはいずれもLD50値が100μM以上であり、毒性が認められなかった。
【0089】
【表3】
【0090】
[試験4]
マウスモデルを用いたin vivoにおける本発明化合物の抗トリパノソーマ活性
さらに、トリパノソーマ感染マウスを用いたin vivoの試験を行った。C57BL/6(5-6週
齢、メス)4匹を1群とし、血流型虫体のT. cruzi(1×104細胞)を腹腔内に感染させ、
同時に化合物L、M及びベンズニダゾール(20mg/kg)を腹腔内に投与した。感染後、10
、12、14日目にマウス尾より採血し、血液中の原虫数を数えた。結果を図3に示す。
【0091】
図3に示す通り、化合物L及びMはベンズニダゾールと同等又はそれ以上の抗トリパノソーマ活性を示すことが確認された。
【0092】
既存薬ベンズニダゾールは、活性酸素種を放出することにより殺トリパノソーマ作用を示すことが報告されている。そこで、新規キノン誘導体Mの活性酸素種産生能を調べた。
【0093】
[試験5]
T. cruzi血流型虫体における本発明化合物の活性酸素種産生
T. cruzi血流型虫体(2 x 106 cells)に活性酸素検出試薬(DCFH-DA)を添加し、1時間インキュベートした。化合物M、コマロビキノン、ベンズニダゾールを加え、37℃で1
時間インキュベートし、活性酸素種産生を蛍光強度として測定した。結果を図4に示す。
図4に示すとおり、化合物Mは血流型虫体において活性酸素種を産生することが明らかとなった。
【0094】
宿主細胞におけるミトコンドリア膜電位変化について
新規キノン誘導体は、ミトコンドリア電子伝達系ではたらくユビキノンと共通した化学構造をもつ。そこで、化合物Mによるミトコンドリア膜電位変化を調べた。
【0095】
[試験6]
ヒト培養細胞HT1080細胞 (2 x 105 cells/ml)を、カバーグラス付シャーレにまき、37
℃で24時間培養した。ミトコンドリア膜電子測定試薬(JC-1:Cayman Chemical)を加え
、室温で30分間インキュベートした。50μMの化合物M、コマロビキノン、ベンズニダゾ
ールを加え、37℃で1時間インキュベートし、蛍光顕微鏡画像を取り込んだ。細胞の蛍光
強度から、画像解析によりミトコンドリア膜電位変化を調べた。結果を図5に示す。
図5に示すとおり、ベンズニダゾール添加ではミトコンドリアの膜電位は変化しなかった。一方、コマロビキノンおよび化合物Mでは、ミトコンドリアの膜電位が減少するという結果が得られた。以上の結果から、化合物Mは既存薬ベンズニダゾールとは異なる作用機構があると推察された。
【0096】
[試験7]
血流型虫体(5×10細胞)に各濃度のベンズニダゾール、化合物M、ベンズニダゾールと化合物Mを添加し、24時間37℃で培養した。顕微鏡下で血流型虫体数を測定した。その結果を図6に示す。
図6に示すとおり、ベンズニダゾール単独投与に比べ、化合物Mを併用した場合の方が強い抗トリパノソーマ作用が認められた。この結果は、化合物Mとベンズニダゾールを併用することで効果が増加することを示しており、併用によりベンズニダゾールの投与量を減らすことができ、副作用を軽減できる可能性を示している。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は医療等の分野で有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6