【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業 センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
定着構造体が定着された状態のFRPケーブルは、その張力が集中しやすい定着構造体の近傍において損傷を受けやすい。したがって、FRPケーブルが損傷を受けることを効果的に抑制可能な技術が求められる。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、繊維強化プラスチックケーブルの端部を良好に保持可能とする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る繊維強化プラスチックケーブルの定着構造体は、繊維強化プラスチックから成り、繊維強化プラスチックケーブルの長手方向端部に設けられ、保持部と、上記保持部から上記繊維強化プラスチックケーブルの長手方向中央部に向けて径が小さくなる傾斜部と、を有する。
【0010】
この構成の定着構造体は、保持部が保持された状態で各種構造物や安定地盤などに定着されるように構成されている。保持部に加わる保持力は、定着構造体を介して繊維強化プラスチックケーブルまで伝達される。当該保持力は、定着構造体内を伝達される際に、傾斜部に沿って小径になるにつれて緩和される。したがって、定着構造体から繊維強化プラスチックケーブルに加わる保持力は、傾斜部の大径の後端部から小径の先端部に向けて徐々に小さくなる。
【0011】
定着構造体が設けられた繊維強化プラスチックケーブルの張力は、まず定着構造体の傾斜部の先端部に加わる。そして、定着構造体の傾斜部は、保持力の弱い先端部から順次変形することにより、当該張力を後端部に向けて分散させる。このように、定着構造体が設けられた繊維強化プラスチックケーブルの張力は、局所的に集中せず、傾斜部に沿って分散される。したがって、定着構造体が設けられた繊維強化プラスチックケーブルには損傷が発生しにくい。
【0012】
上記定着構造体は、シート状の繊維強化プラスチックが螺旋状に巻き付けられた構成を有していてもよい。
上記定着構造体は、シート状の繊維強化プラスチックを巻き付けることによって容易に形成可能である。
【0013】
上記シート状の繊維強化プラスチックは、繊維クロスがプラスチックによって含浸された構成を有していてもよい。
上記定着構造体では、繊維クロスがプラスチックによって含浸された構成のシート状の繊維強化プラスチックを用いることにより、特に高い強度が得られる。
【0014】
本発明の一形態に係る繊維強化プラスチックケーブルの定着構造体の製造方法では、繊維強化プラスチックの未硬化シートが用意される。
上記未硬化シートが、繊維強化プラスチックケーブルの長手方向端部に、上記繊維強化プラスチックケーブルの長手方向中央部から離れる方向に向けて螺旋状に巻き付けられる。
上記繊維強化プラスチックケーブルに巻き付けられた上記未硬化シートが硬化させられる。
この構成では、繊維強化プラスチックケーブルに損傷が発生しにくい定着構造体を、未硬化シートを巻き付けることによって容易に形成可能である。
【0015】
本発明の一形態に係る繊維強化プラスチックケーブルの強度試験方法では、繊維強化プラスチックケーブルの試験片が用意される。
上記試験片の長手方向両端部のそれぞれに、繊維強化プラスチックによって、保持部と、上記保持部から上記試験片の長手方向中央部に向けて径が小さくなる傾斜部と、を有する保持構造体が設けられる。
上記試験片に設けられた上記保持構造体の上記保持部を保持した状態で、上記試験片の強度試験が行われる。
この構成では、試験片を保持構造体の近傍で破断させることなく、試験片の強度試験を行うことが可能となる。これにより、繊維強化プラスチックケーブル本来の正確な強度を評価することが可能となる。
【0016】
上記保持構造体を設けるために、繊維強化プラスチックの未硬化シートが用意されてもよい。
この場合、上記未硬化シートが、上記試験片の長手方向両端部のそれぞれに、上記試験片の長手方向中央部から離れる方向に向けて螺旋状に巻き付けられる。
上記試験片に巻き付けられた上記未硬化シートが硬化させられる。
この構成では、試験片の両端部に保持構造体を容易に設けることができる。
【0017】
上記引張試験、圧縮試験、及び曲げ試験の少なくとも1つであってもよい。
この構成では、繊維強化プラスチックケーブル本来の正確な引張強度、圧縮強度、及び曲げ強度を評価することが可能となる。
【0018】
本発明の一形態に係る繊維強化プラスチックケーブルの強度試験用サンプルは、繊維強化プラスチックケーブルの試験片と、保持構造体と、を具備する。
上記保持構造体は、繊維強化プラスチックから成り、上記試験片の両端部にそれぞれ設けられ、保持部と、上記保持部から上記試験片の長手方向中央部に向けて径が小さくなる傾斜部と、を有する。
この構成では、試験片を保持構造体の近傍で破断させることなく、試験片の強度を評価することが可能な強度試験用サンプルを提供することができる。
【0019】
上記保持構造体は、シート状の繊維強化プラスチックが螺旋状に巻き付けられた構成を有していてもよい。
この構成では、シート状の繊維強化プラスチックを巻き付けることによって、傾斜部を有する保持構造体を容易に形成可能である。
【0020】
上記シート状の繊維強化プラスチックは、繊維クロスがプラスチックによって含浸された構成を有していてもよい。
この構成では、繊維クロスがプラスチックによって含浸された構成のシート状の繊維強化プラスチックを用いることにより、特に高い強度の保持構造体が得られる。
【発明の効果】
【0021】
繊維強化プラスチックケーブルの端部を良好に保持可能とする技術を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図面には、適宜相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。X軸、Y軸、及びZ軸は全図において共通である。
【0024】
<第1の実施形態>
[定着構造体20の構成]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る定着構造体20を示す正面図である。
【0025】
定着構造体20は、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)ケーブル10の両端部にそれぞれ設けられ、当該FRPケーブル10とともにFRPケーブル構造体1を構成している。FRPケーブル10の両端部の定着構造体20はいずれも同様の構成を有するため、以下では、一方の端部の定着構造体20についての説明のみを行い、他方の端部の定着構造体20についての説明を省略する。
【0026】
定着構造体20は多種多様なFRPケーブル10に対応可能であり、FRPケーブル10は特定の種類に限定されない。FRPケーブル10としては、例えば、その長手方向に沿って延びる複数の繊維材料が束ねられた構成のFRPワイヤを利用可能である。この場合、複数の繊維材料は、FRPケーブル10の長手方向に切れ目なく連続していることが好ましい。
【0027】
定着構造体20は、Z軸方向端部に配置された保持部22と、保持部22からFRPケーブル10の長手方向中央部に向けて径が小さくなる傾斜部21と、から構成されている。傾斜部21は略円錐台状であり、保持部22は略円盤状である。保持部22と、傾斜部21の最も大径の部分とは、相互に等しい径を有するとともに連続している。
【0028】
定着構造体20は、保持部22が保持装置2(
図3参照)によって保持された状態で、保持装置2を介して各種構造物や安定地盤などに定着されるように構成されている。
【0029】
定着構造体20が設けられたFRPケーブル構造体1は、FRPケーブル10の張力によって、橋梁や建築物などの構造物を支持ないし補強することが可能である。FRPケーブル構造体1は、例えば、橋梁ケーブル、建築物用の補強ケーブル、各種構造物やグランドアンカ等のテンドンなどとして利用可能である。
【0030】
定着構造体20は、FRPから成る。つまり、FRPケーブル構造体1を構成するFRPケーブル10及び定着構造体20は、いずれもFRPから成る。したがって、FRPケーブル構造体1は、全体として非常に軽量であるため、作業性の向上に寄与する。また、FRPケーブル構造体1は、錆が発生しないため、TLPなどの海洋構造物の用途に特に有用である。
【0031】
定着構造体20を構成するFRPは、樹脂成分と繊維材料とから成り、樹脂成分によって繊維材料が含浸された構成を有する。本実施形態では、樹脂成分としてエポキシ樹脂を用い、繊維材料としてガラス繊維を用いた構成により、高強度の定着構造体20が実現されている。しかし、定着構造体20を構成するFRPの樹脂成分及び繊維材料は特定の種類に限定されない。
【0032】
定着構造体20を構成するFRPの樹脂成分は、充分な強度を有し、かつFRPケーブル10に良好に接着可能な樹脂ないし接着剤であればよく、特定の種類に限定されない。定着構造体20を構成するFRPの樹脂成分としては、エポキシ樹脂以外に、例えば、ビニルエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂などを採用可能である。
【0033】
定着構造体20を構成するFRPの繊維材料は、樹脂成分と一体として充分な強度を発現可能であればよく、特定の種類に限定されない。定着構造体20を構成するFRPの繊維材料としては、ガラス繊維以外に、例えば、炭素繊維、アラミド繊維、ボロン繊維などを採用可能である。更に、炭素繊維としては、例えば、高剛性ピッチ系炭素繊維、高強度PAN系炭素繊維などを採用可能である。
【0034】
定着構造体20は、FRPケーブル10に対し、シート状のFRP(FRPシート)がZ軸方向下方に向けて螺旋状に巻き付けられた構成を有する。つまり、FRPシートのZ軸方向上端部は、X−Y平面に対して角度αだけ傾斜しており、Z軸方向下方に向けて螺旋状に延びている。これにより、Z軸方向下方に向けて段階的に径が大きくなる傾斜部21が形成される。
【0035】
図2は定着構造体20を示す断面図である。より詳細には、
図2(a)は定着構造体20の
図1のA−A'線に沿った断面を示し、
図2(b)は定着構造体20の
図1のB−B'線に沿った断面を示し、
図2(c)は定着構造体20の
図1のC−C'線に沿った断面を示している。
【0036】
つまり、
図2(a)は傾斜部21のFRPシートが2周巻き付けられた部分を示し、
図2(b)は傾斜部21のFRPシートが7周巻き付けられた部分を示し、
図2(c)は保持部22を示している。保持部22は、FRPシートの巻き付け端部であり、13周巻き付けられたFRPシートによって構成されている。
【0037】
なお、FRPシートの巻き付け数や角度αは、FRPケーブル10の種類やFRPケーブル構造体1の用途などに応じて適宜決定可能である。また、定着構造体20におけるFRPシートの巻き付け方向は、
図2に示すように左巻きであっても、その反対の右巻きであっても構わない。
【0038】
本実施形態に係る定着構造体20を構成するFRPシートの繊維材料は、長径の繊維が2次元的に配列された繊維クロスとして構成される。つまり、このFRPシートは、繊維クロスがプラスチックによって含浸された構成を有する。これにより、特に強度の高い定着構造体20が得られる。この繊維クロスは、例えば、平織、綾織、繻子織などの織物の構成を有していてもよい。
【0039】
なお、FRPシートの繊維材料の態様は、繊維クロスに限定されない。例えば、FRPシートの繊維材料は、例えば、FRPシートの巻き付け方向に配向した長径の繊維や、プラスチック内にランダムな方向に分散した短径の繊維であってもよい。
【0040】
図3は、定着構造体20からFRPケーブル10に加わる保持力を説明するための図である。より詳細には、
図3の左図は、保持部22が保持装置2によって保持された状態の定着構造体20を示す正面図である。
図3の右図は、当該定着構造体20からFRPケーブル10に加わる保持力のZ軸方向に沿った変化を定性的に示すグラフである。
図3の右図において、横軸は保持力の大きさを示し、縦軸は
図3の左図に対応するZ軸方向の位置を示している。
【0041】
保持装置2は、X軸方向に相互に対向する保持部材2a,2bを有し、当該保持部材2a,2b間に定着構造体20の保持部22を挟み込むことにより、定着構造体20を保持する。上述のとおり、定着構造体20は、保持部22が保持装置2によって保持された状態で、保持装置2を介して各種構造物や安定地盤などに定着される。
【0042】
保持装置2から保持部22に加わる保持力は、定着構造体20を介してFRPケーブル10まで伝達される。当該保持力は、定着構造体20内を伝達される際に、傾斜部21に沿って小径になるにつれて緩和される。したがって、定着構造体20からFRPケーブル10に加わる保持力は、傾斜部21の大径の後端部Gから小径の先端部Fに向けて徐々に小さくなる。
【0043】
つまり、
図3の右図に示すとおり、定着構造体20からFRPケーブル10に加わる保持力は、保持部22では一定であるものの、傾斜部21では大径の後端部Gから小径の先端部Fに向けて徐々に小さくなる。
【0044】
なお、
図3の右図では、説明の便宜上、傾斜部21における保持力のZ軸方向に沿った変化を直線的に示している。しかし、傾斜部21における保持力は、大径の後端部Gから小径の先端部Fに向けて単調減少していればよい。
図1〜3に示すFRPシートが螺旋状に巻き付けられた構成の傾斜部21では、傾斜部21における保持力が段階的に変化しているものと考えられる。
【0045】
定着構造体20が設けられたFRPケーブル10の張力は、まず定着構造体20の傾斜部21の小径の先端部Fに加わる。そして、定着構造体20の傾斜部21は、保持力の弱い先端部Fから順次変形することにより、当該張力を後端部Gに向けて分散させる。
【0046】
このように、定着構造体20が設けられたFRPケーブル10の張力は、傾斜部21の先端部Fの近傍に集中することなく、傾斜部21に沿って分散される。したがって、定着構造体20が設けられたFRPケーブル10は、傾斜部21の先端部Fの近傍において損傷を受けにくい。
【0047】
FRPケーブル10の張力は、傾斜部21からFRPケーブル10に加わる保持力のZ軸方向に沿った変化の程度(
図3の右図のグラフの傾斜部21における傾き)に応じて分散する。つまり、当該変化が緩やかであれば、傾斜部21におけるFRPケーブル10の張力の分散領域が広くなる。反対に、当該変化が急峻であれば、傾斜部21におけるFRPケーブル10の張力の分散領域が狭くなる。
【0048】
傾斜部21からFRPケーブル10に加わる保持力のZ軸方向に沿った変化の程度は、傾斜部のZ軸に対する傾斜角度によって決定する。また、傾斜部のZ軸方向に対する傾斜角度は、FRPシートのZ軸方向上端部のX−Y平面に対する角度αによって決定する。したがって、傾斜部21におけるFRPケーブル10の張力の分散領域の広さは、FRPシートのZ軸方向上端部のX−Y平面に対する角度αによって決定する。
【0049】
つまり、角度αを大きくすると、傾斜部21のZ軸に対する傾斜角度が小さくなるため、傾斜部21からFRPケーブル10に加わる保持力のZ軸方向に沿った変化が小さくなる。したがって、角度αを大きくすることにより、傾斜部21におけるFRPケーブル10の張力の分散領域を広くすることができる。
【0050】
反対に、角度αを小さくすると、傾斜部21のZ軸に対する傾斜角度が大きくなるため、傾斜部21からFRPケーブル10に加わる保持力のZ軸方向に沿った変化が大きくなる。したがって、角度αを小さくすることにより、傾斜部21におけるFRPケーブル10の張力の分散領域を狭くすることができる。
【0051】
このように、定着構造体20では、FRPケーブル10の種類やFRPケーブル構造体1の用途などに応じて、傾斜部21におけるFRPケーブル10の張力の分散領域の広さを容易に制御可能である。
【0052】
[定着構造体20の製造方法]
図4は、定着構造体20の製造方法を示すフローチャートである。
図5及び
図6は、定着構造体20の製造過程を示す正面図である。以下、定着構造体20の製造方法について、
図4に沿って、
図5及び
図6を適宜参照しながら説明する。
【0053】
(ステップS1−1:未硬化シート用意工程)
ステップS1−1では、未硬化のFRPシート(未硬化シート)S1を用意する。
図5は、ステップS1−1で用意される未硬化シートS1を示す正面図である。未硬化シートS1は、繊維クロスに未硬化プラスチックを充填することにより得られる。
【0054】
未硬化シートS1の未硬化プラスチックとしては、硬化の容易性から常温硬化型の接着剤を用いている。しかし、未硬化プラスチックは熱硬化型樹脂であってもよい。なお、未硬化シートS1としては、市販のプリプレグを利用することも可能である。
【0055】
未硬化シートS1は、X軸方向に細長く、Z軸方向上端部を斜辺とする略直角三角形状に切断されている。
未硬化シートS1のZ軸方向上端部のX−Y平面に対する角度αは、定着構造体20の傾斜部21の構成に応じて適宜決定可能である。つまり、角度αを大きくすると、傾斜部21のZ軸に対する傾斜角度が小さくなる。反対に、角度αを小さくすると、傾斜部21のZ軸に対する傾斜角度が大きくなる。
【0056】
(ステップS1−2:未硬化シート巻き付け工程)
ステップS1−2では、ステップS1−1で用意された未硬化シートS1を、FRPケーブル10の端部に巻き付ける。
図6は、ステップS1−2を説明するための図である。
【0057】
まず、
図6(a)に示すように、未硬化シートS1のZ軸方向に平行な短辺上にFRPケーブル10の端部をセットする。そして、
図6(b)に示すように、FRPケーブル10をZ軸に平行な中心軸を中心に回転させながら、未硬化シートS1をFRPケーブル10に巻き付けていく。
【0058】
これにより、未硬化シートS1のZ軸方向上端部がZ軸方向下方に向けて螺旋を描きながら傾斜部21が形成されていく。未硬化シートS1の巻き付けが完了すると、未硬化の定着構造体20が得られる。
【0059】
(ステップS1−3:硬化工程)
ステップS1−3では、ステップS1−2で得られた未硬化の定着構造体20を硬化させる。
ステップS1−3では、未硬化プラスチックとして常温硬化型の接着剤を用いた場合には、未硬化の定着構造体20を常温で放置する。未硬化プラスチックとして熱硬化型樹脂を用いた場合には、未硬化の定着構造体20を所定温度に加熱する。
これにより、
図1に示す定着構造体20が得られる。
【0060】
(定着構造体20の製造方法の変形例)
図7及び
図8は、上記実施形態に係る定着構造体20の製造過程の変形例を示す正面図である。
【0061】
本変形例では、ステップS1−1において、
図7に示す矩形の未硬化シートS2が用意される。そして、ステップS1−2において、
図8に示すように、X−Y平面に対して角度αだけ傾けた未硬化シートS2をFRPケーブル10の端部に螺旋状に巻き付ける。
【0062】
そして、未硬化シートS2の巻き付けが終了した後に、
図8(b)に示すX−Y平面に平行な切断面CPに沿って未硬化シートS2を切断する。
これにより、上記実施形態と同様の未硬化の定着構造体20が得られる。
【0063】
その後、上記実施形態と同様のステップS1−3を行うことにより、
図1に示す定着構造体20が得られる。
【0064】
[定着構造体20の変形例]
以下、上記実施形態の変形例に係る定着構造体20について説明する。なお、各変形例に係る定着構造体20の構成は、以下に説明する構成以外について上記実施形態と共通する。また、各変形例に係る定着構造体20について、上記実施形態と共通する構成には同一の名称及び符号を用い、当該構成の説明を適宜省略する。
【0065】
(1)変形例1
図9は、上記実施形態の変形例1に係る定着構造体20の正面図である。
変形例1に係る定着構造体20は、小径部20a及び大径部20bから構成されている。小径部20a及び大径部20bはいずれもFRPシートにより形成されている。また、小径部20aはFRPケーブル10に直接設けられ、大径部20bは小径部20aの保持部22aに設けられている。
【0066】
定着構造体20は、小径部20aの傾斜部21aのみでFRPケーブル10の張力を充分に分散させられる場合には、小径部20aのみによって構成されていてもよい。しかし、小径部20aの傾斜部21aのみではFRPケーブル10の張力を充分に分散させられない場合に、小径部20aの保持部22aに大径部20bを設けることができる。
【0067】
この場合、保持装置2による保持を受ける保持部22は、大径部20bの保持部22bとなる。この構成では、大径部20bの保持部22bに加わる保持力が、大径部20bの傾斜部21bと小径部20aの傾斜部21aとによって2段階で緩和されるため、FRPケーブル10の張力をより広く分散させることが可能となる。
【0068】
なお、変形例1に係る定着構造体20は小径部20a及び大径部20bの2段に構成されているが、定着構造体20は必要に応じて3段以上に構成されていてもよい。
【0069】
(2)変形例2
図10は、上記実施形態の変形例2に係る定着構造体20の斜視図である。
変形例2に係る定着構造体20が設けられるFRPケーブル10は、
図10(a)に示すように、複数のFRPワイヤ10aが束ねられたFRPロープとして構成される。
また、FRPケーブル10は、
図10(b)に示すように、複数のFRPワイヤ10aが束ねられた状態で捻りが加えられたFRPロープとして構成されていてもよい。
【0070】
(3)変形例3
図11は、上記実施形態の変形例3に係る定着構造体20の正面図である。
変形例3に係る定着構造体20は、金型Mを用いて成形されており、円錐台状の傾斜部21と、円盤状の保持部22と、を有する。変形例3に係る定着構造体20は、上記実施形態とは異なり、傾斜部21の径が連続的に変化している。
変形例3に係る定着構造体20でも、上記実施形態に係る定着構造体20と同様に、傾斜部21によってFRPケーブル10の張力を分散させることが可能である。
【0071】
図12は、変形例3に係る定着構造体20の製造方法を示すフローチャートである。
図13は、変形例3に係る定着構造体20の製造過程を示す断面図である。以下、変形例3に係る定着構造体20の製造方法について、
図12に沿って、
図13を適宜参照しながら説明する。
【0072】
(ステップS2−1:金型及び未硬化材用意工程)
ステップS2−1では、定着構造体20の形状に対応する金型Mと、当該金型Mに充填可能な未硬化のFRP材(未硬化材)と、を用意する。未硬化材としては、上述の未硬化シートが利用可能である。また、未硬化材は、例えば、未硬化プラスチックに短繊維長を含む有限な繊維長の繊維材料が分散された構成とすることもできる。
【0073】
(ステップS2−2:金型セット工程)
ステップS2−2では、
図13(a)に示すように、ステップS2−1で用意された金型MをFRPケーブル10の端部にセットする。
【0074】
(ステップS2−3:注型・硬化工程)
ステップS2−3では、
図13(b)に示すように、ステップS2−2でセットされた金型Mに、ステップS2−1で用意された未硬化材を注型し、金型Mに注型した未硬化材を硬化させる。
【0075】
(ステップS2−4:金型取り外し工程)
ステップS2−4では、ステップS2−3で得られた定着構造体20から金型Mを取り外す。
これにより、
図11に示す変形例3に係る定着構造体20が得られる。
【0076】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態では、第1の実施形態に係る定着構造体20と同様の構成の保持構造体120を用いることによって、第1の実施形態で用いたようなFRPケーブル10本来の正確な強度を評価することが可能となる。以下、第2の実施形態について詳細に説明する。
【0077】
[FRPケーブル10の強度試験用サンプル101]
図14は、本実施形態に係るFRPケーブル10の強度試験用サンプル101を示す正面図である。強度試験用サンプル101は、FRPケーブル10の試験片110と、試験片110の両端部にそれぞれ設けられた保持構造体120と、により構成されている。
【0078】
試験片110は、第1の実施形態で用いたFRPケーブル10を所定の長さに切断したものである。
保持構造体120は、第1の実施形態に係る定着構造体20と同様の構成を有する。つまり、保持構造体120は、傾斜部121と、保持部122と、を有する。強度試験用サンプル101では、保持構造体120の保持部122が保持された状態で、試験片110の保持構造体120間の試験領域111において強度試験を行うことが可能である。
【0079】
ここで、試験片110の両端部が直接保持された状態で試験片110の強度試験を行う場合を想定する。
この場合、試験片110の試験領域111に生じる張力や圧縮力が保持部分の近傍に集中する。これにより、試験片110は、実際に耐えうる荷重より小さい荷重で、保持部分の近傍に損傷を受けてしまう。
また、この場合、試験片110の両端部に直接保持力が加わるため、試験片110の両端部で樹脂材料と樹脂成分との剥離が発生しやすい。樹脂材料と樹脂成分との剥離によって試験片110の強度が大幅に低下してしまう。
したがって、この場合には、試験片110本来の正確な強度を評価することができない。
【0080】
この点、本実施形態に係る強度試験用サンプル101では、試験片110の試験領域111に生じる張力や圧縮力が、保持構造体120の傾斜部121に沿って分散するため、傾斜部121の先端部Fの近傍に集中しない。したがって、保持構造体120が設けられた試験片110は、傾斜部121の先端部Fの近傍において損傷を受けにくい。
【0081】
また、本実施形態に係る強度試験用サンプル101では、試験片110の両端部がその全周にわたって保持構造体120によって覆われることにより補強されている。したがって、保持構造体120の保持部122に保持力が加わっても、試験片110の樹脂材料と樹脂成分との剥離が発生しにくい。
【0082】
したがって、本実施形態に係る強度試験用サンプル101を用いることにより、試験片110本来の正確な強度を評価することが可能となる。
【0083】
図15は、本実施形態の比較例に係るFRPケーブル10の強度試験用サンプル201を示す正面図である。比較例に係る強度試験用サンプル201では、FRPケーブル10の試験片110の両端部に、柱状の保持構造体220が設けられている。比較例に係る保持構造体220は、実施例に係る保持構造体120の傾斜部121に対応する構成を有さず、保持部222のみによって構成されている。
【0084】
比較例に係る強度試験用サンプル201では、保持構造体220の保持部222が保持された状態で、試験片110の保持構造体220間の試験領域111において強度試験が行われる。強度試験用サンプル201では、保持構造体220の保持部222に加わる保持力がほぼ均一に伝達され、保持構造体220から試験片110に加わる保持力はZ軸方向に沿ってほぼ一定となる。
【0085】
このため、強度試験用サンプル201では、試験片110の試験領域111に生じる張力や圧縮力が保持構造体220の先端部Hの近傍に集中する。したがって、試験片110は、実際に耐えうる荷重より小さい荷重で、保持構造体220の先端部Hの近傍に損傷を受けてしまう。
このため、比較例に係る強度試験用サンプル201では、本実施形態に係る強度試験用サンプル101とは異なり、試験片110本来の正確な強度を評価することができない。
【0086】
なお、強度試験用サンプル101の保持構造体120は、第1の実施形態の変形例1〜3と同様に構成されていてもよい。
つまり、保持構造体120は、多段に構成されていてもよく、FRPケーブル10として複数のFRPワイヤが束ねられたFRPロープが用いられてもよく、金型を用いて成形されていていてもよい。
【0087】
[FRPケーブル10の強度試験方法]
図16は、本実施形態に係るFRPケーブル10の強度試験方法を示すフローチャートである。
図16に示す強度試験方法では、まず強度試験用サンプル101を作製し(ステップS3−1〜S3−4)、当該強度試験用サンプル101を用いて強度試験を行う(ステップS3−5)。以下、FRPケーブル10の強度試験方法について、
図16に沿って説明する。
【0088】
(ステップS3−1:試験片用意工程)
ステップS3−1では、
図14に示す強度試験用サンプル101のうちFRPケーブル10の試験片110を用意する。
【0089】
(ステップS3−2:未硬化シート用意工程)
ステップS3−2では、ステップS3−1で用意された試験片110に対応する未硬化シートS3を用意する。
未硬化シートS3の構成は、第1の実施形態に係る未硬化シートS1(
図5参照)や未硬化シートS2(
図7参照)と同様である。
【0090】
(ステップS3−3:未硬化シート巻き付け工程)
ステップS3−3では、ステップS3−1で用意された試験片110の両端部にそれぞれ、ステップS3−2で用意された未硬化シートS3を巻き付けることにより未硬化の保持構造体120が完成する。
未硬化シートS3の巻き付け方法は、第1の実施形態に係る未硬化シートS1(
図6参照)や未硬化シートS2(
図8参照)と同様である。
これにより、未硬化の保持構造体120が完成する。
【0091】
(ステップS3−4:硬化工程)
ステップS3−4では、ステップS3−3で得られた未硬化の保持構造体120を硬化させる。
以上のステップS3−1〜S3−4により、保持構造体120が完成し、
図14に示す強度試験用サンプル101が得られる。
【0092】
(ステップS3−5:強度試験工程)
ステップS3−5では、ステップS3−4で得られた強度試験用サンプル101を用いて強度試験を行う。
強度試験としては、例えば、引張試験、圧縮試験、曲げ試験などが挙げられる。いずれの強度試験も、強度試験用サンプル101の保持構造体120の保持部122を保持した状態で行われる。以下、強度試験用サンプル101を用いて強度試験を例示する。
【0093】
[強度試験の例示]
図17は、強度試験用サンプル101についての強度試験を例示する模式図である。
図17(a)は引張試験の一例を示し、
図17(b)は圧縮試験の一例を示し、
図17(c)は曲げ試験の一例を示す。
【0094】
(引張試験)
図17(a)に示す強度試験用サンプル101を用いた引張試験では、まず、Z軸方向に対向する一対の把持部C1U,C1Lで強度試験用サンプル101の保持構造体120の保持部122を把持する。
以下、強度試験用サンプル101を用いた引張試験の一例として、(i)引張強度試験及び(ii)引張疲労試験について説明する。
【0095】
(i)引張強度試験
強度試験用サンプル101を用いた引張強度試験では、Z軸方向上側の把持部C1Uを上昇させることにより、強度試験用サンプル101の試験領域111にZ軸方向の引張力を加える。
この引張強度試験では、把持部C1Uの上昇量と、把持部C1Uに加える荷重とによって、応力ひずみ線図が得られる。この応力ひずみ線図から、FRPケーブル10の試験片110のヤング率などの物性値を求めることができる。
【0096】
上記の強度試験用サンプル101を用いた引張強度試験では、強度試験用サンプル101の試験領域111がZ軸方向中央部で破断し、FRPケーブル10の試験片110本来の正確な引張強度が得られているものと考えられる。
【0097】
これに対し、一対の把持部C1U,C1Lで試験片110の両端部を直接把持して行う引張強度試験では、試験片110の試験領域111が把持部C1U,C1Lの近傍で破断し、上記の強度試験用サンプル101の引張強度試験よりも強度が大幅に低くなった。したがって、この引張強度試験では、FRPケーブル10の試験片110本来の正確な引張強度が得られていない。
【0098】
(ii)引張疲労試験
強度試験用サンプル101を用いた引張疲労試験では、Z軸方向上側の把持部C1Uを繰り返しZ軸方向に上下動させることにより、強度試験用サンプル101の試験領域111に繰り返しZ軸方向の引張力を加える。
この引張疲労試験では、把持部C1UのZ軸方向への上下動の回数に伴う、把持部C1Uに加える荷重の変化によって、強度試験用サンプル101の引張疲労特性を評価することができる。
【0099】
上記の強度試験用サンプル101を用いた引張疲労試験では、試験片110の試験領域111が主にZ軸方向中央領域で変形し、FRPケーブル10の試験片110本来の正確な引張疲労特性が得られているものと考えられる。
【0100】
これに対し、一対の把持部C1U,C1Lで試験片110の両端部を直接把持して行う引張疲労試験では、試験片110の試験領域111が把持部C1U,C1Lの近傍で急激に変形し、上記の強度試験用サンプル101の引張疲労試験よりも寿命特性が低下していた。このため、この引張疲労試験では、FRPケーブル10の試験片110本来の正確な引張疲労特性が得られていない。
【0101】
(圧縮試験)
図17(b)に示す強度試験用サンプル101を用いた圧縮試験では、まず、Z軸方向に対向する一対の把持部C2U,C2Lで強度試験用サンプル101の保持構造体120の保持部122を把持する。
以下、強度試験用サンプル101を用いた圧縮試験の一例として、(i)圧縮強度試験及び(ii)圧縮疲労試験について説明する。
【0102】
(i)圧縮強度試験
強度試験用サンプル101を用いた圧縮強度試験では、Z軸方向上側の把持部C2Uを下降させることにより、強度試験用サンプル101の試験領域111にZ軸方向の圧縮力を加える。
この圧縮強度試験では、把持部C2Uの下降量と、把持部C2Uに加える荷重とによって、応力ひずみ線図が得られる。この応力ひずみ線図から、FRPケーブル10の試験片110のヤング率などの物性値を求めることができる。
【0103】
上記の強度試験用サンプル101を用いた圧縮強度試験では、強度試験用サンプル101の試験領域111がZ軸方向中央部で損傷し、FRPケーブル10の試験片110本来の正確な圧縮強度が得られているものと考えられる。
【0104】
これに対し、一対の把持部C2U,C2Lで試験片110の両端部を直接把持して行う圧縮強度試験では、試験片110の試験領域111が把持部C2U,C2Lの近傍で座屈し、上記の強度試験用サンプル101の圧縮強度試験よりも強度が大幅に低くなった。したがって、この圧縮強度試験では、FRPケーブル10の試験片110本来の正確な圧縮強度が得られていない。
【0105】
(ii)圧縮疲労試験
強度試験用サンプル101を用いた圧縮疲労試験では、Z軸方向上側の把持部C2Uを繰り返しZ軸方向に上下動させることにより、強度試験用サンプル101の試験領域111に繰り返しZ軸方向の圧縮力を加える。
この圧縮疲労試験では、把持部C2UのZ軸方向への上下動の回数に伴う、把持部C2Uに加える荷重の変化によって、強度試験用サンプル101の圧縮疲労特性を評価することができる。
【0106】
上記の強度試験用サンプル101を用いた圧縮疲労試験では、試験片110の試験領域111が主にZ軸方向中央領域で変形し、FRPケーブル10の試験片110本来の正確な圧縮疲労特性が得られているものと考えられる。
【0107】
これに対し、一対の把持部C2U,C2Lで試験片110の両端部を直接把持して行う圧縮疲労試験では、試験片110の試験領域111が把持部C2U,C2Lの近傍で急激に変形し、上記の強度試験用サンプル101の圧縮疲労試験よりも寿命特性が低下していた。このため、この圧縮疲労試験では、FRPケーブル10の試験片110本来の正確な圧縮疲労特性が得られていない。
【0108】
(曲げ試験)
図17(c)に示す強度試験用サンプル101を用いた曲げ試験では、まず、X軸方向に対向する一対の把持部C3L,C3Rで強度試験用サンプル101の保持構造体120の保持部122を把持する。把持部C3L,C3Rはそれぞれ、Y軸に平行な回転軸PL,PRを有し、回転軸PL,PRを中心に回転可能である。
以下、強度試験用サンプル101を用いた曲げ試験の一例として、(i)曲げ強度試験及び(ii)平面曲げ疲労試験について説明する。
【0109】
(i)曲げ強度試験
強度試験用サンプル101を用いた曲げ強度試験では、Z軸方向上側の押圧子l1を下降させることにより、強度試験用サンプル101の試験領域111のX軸方向中央部にZ軸方向下方への曲げ力を加える。
この曲げ強度試験では、押圧子l1の下降量と、押圧子l1に加える荷重とによって、応力ひずみ線図が得られる。この応力ひずみ線図から、FRPケーブル10の試験片110のヤング率などの物性値を求めることができる。
【0110】
上記の強度試験用サンプル101を用いた曲げ強度試験では、強度試験用サンプル101の試験領域111がZ軸方向中央部で破断し、FRPケーブル10の試験片110本来の正確な曲げ強度が得られているものと考えられる。
【0111】
これに対し、一対の把持部C3L,C3Rで試験片110の両端部を直接把持して行う曲げ強度試験では、試験片110の試験領域111が把持部C3L,C3Rの近傍で破断し、上記の強度試験用サンプル101の曲げ強度試験よりも強度が大幅に低くなった。したがって、この曲げ強度試験では、FRPケーブル10の試験片110本来の正確な曲げ強度が得られていない。
【0112】
(ii)平面曲げ疲労試験
強度試験用サンプル101を用いた平面曲げ疲労試験では、Z軸方向に対向する一対の押圧子l1,l2で試験片110の試験領域111のX軸方向中央部を挟む。そして、試験片110の試験領域111のX軸方向中央部を挟んだ押圧子l1,l2を繰り返しZ軸方向に上下動させることにより、強度試験用サンプル101の試験領域111のX軸方向中央部に繰り返しZ軸方向上方及び下方への曲げ力を加える。
この平面曲げ疲労試験では、押圧子l1,l2のZ軸方向への上下動の回数に伴う、押圧子l1,l2に加える荷重の変化によって、強度試験用サンプル101の曲げ疲労特性を評価することができる。
【0113】
上記の強度試験用サンプル101を用いた平面曲げ疲労試験では、試験片110の試験領域111が主にZ軸方向中央部で変形し、FRPケーブル10の試験片110本来の正確な曲げ疲労特性が得られているものと考えられる。
【0114】
これに対し、一対の把持部C3L,C3Rで試験片110の両端部を直接把持して行う平面曲げ疲労試験では、試験片110の試験領域111が把持部C3L,C3Rの近傍で急激に変形し、上記の強度試験用サンプル101の平面曲げ疲労試験よりも寿命特性が低下していた。このため、この平面曲げ疲労試験では、FRPケーブル10の試験片110本来の正確な曲げ疲労特性が得られていない。
【0115】
[実施例及び比較例]
本実施形態の実施例として
図14に示す強度試験用サンプル101を作製した。また、本実施形態の比較例として
図15に示す強度試験用サンプル201を作製した。実施例に係る強度試験用サンプル101と比較例に係る強度試験用サンプル201とでは、同一のFRPケーブル10の試験片110を用い、試験領域111を同一の長さとした。
【0116】
実施例1及び比較例1では、FRPケーブル10の試験片110として、24万本の炭素繊維が樹脂成分によって含浸されたFRPケーブル(小松精練株式会社製 型番「24K1P」)を用いた。
実施例2及び比較例2では、FRPケーブル10の試験片110として、48万本の炭素繊維が樹脂成分によって含浸されたFRPケーブル(小松精練株式会社製 型番「24K2P」)を用いた。
【0117】
図18(a)は、比較例1,2に係る強度試験用サンプル201を用いた引張強度試験によって得られた応力ひずみ線図である。
図18(b)は、実施例1,2に係る強度試験用サンプル101を用いた引張強度試験によって得られた応力ひずみ線図である。
【0118】
比較例1と実施例1とを比較すると、比較例1では引張ひずみεが1.5%付近になるときに強度試験用サンプル201が破断しているのに対し、実施例1では引張ひずみεが2.25%付近になるまで強度試験用サンプル101が破断していない。
また、比較例1に係る強度試験用サンプル201では保持構造体220の先端部Hの近傍で破断していたのに対し、実施例1に係る強度試験用サンプル101は試験領域111の中央部で破断していた。
【0119】
比較例2と実施例2とを比較すると、比較例2では引張ひずみεが1.1%付近になるときに強度試験用サンプル201が破断しているのに対し、実施例2では引張ひずみεが2.25%付近になるまで強度試験用サンプル101が破断していない。
また、比較例2に係る強度試験用サンプル201は保持構造体220の先端部Hの近傍で破断していたのに対し、実施例2に係る強度試験用サンプル101は試験領域111の中央部で破断していた。
【0120】
以上のとおり、実施例1,2に係る強度試験用サンプル101ではFRPケーブル10の試験片110本来の正確な評価結果が得られたが、比較例1,2に係る強度試験用サンプル201ではFRPケーブル10の試験片110本来の正確な評価結果が得られなかった。
【0121】
<その他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0122】
例えば、上記の第1の実施形態では傾斜部21を有する定着構造体20を例示し、上記の第2の実施形態では傾斜部121を有する保持構造体120を例示したが、定着構造体20及び保持構造体120はこれらの構成に限定されない。定着構造体20及び保持構造体120としては、FRPから成り、かつ傾斜部21,121を有する任意の構成を採用可能である。
【0123】
また、第1の実施形態に係る定着構造体20及び第2の実施形態に係る保持構造体120では、Z軸方向に平行な円筒面である保持部22,122が設けられているが、保持部22,122はこの構成に限定されない。保持部22,122としては、傾斜部21,121より大径となる任意の構成を採用可能である。更に、傾斜部21,121の大径の後端部Gが保持部22,122として構成されていてもよい。