(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも一つの振動素子それぞれを構成する前記所定数の積層体は、一つずつ、あるいは2個以上の積層体を組み合わせた積層体群毎に、一つの検出素子に電気的に接続し、積層体一つずつの静電容量あるいは積層体群毎の静電容量は、電気的に接続された前記一つの検出素子の静電容量と整合する、請求項1から4のいずれか一つに記載の超音波振動子。
前記少なくとも一つの振動素子それぞれにおいて、同じ材料もしくは材料組成比の前記下部電極を有する二つ以上の積層体が隣接配置されている積層体集合部が分散して配置されており、
個々の積層体集合部の寸法は、受信対象の超音波の半波長以下である、請求項1から7のいずれか一つに記載の超音波振動子。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態における超音波診断装置Sの全体構成を示すブロック図である。
【0017】
超音波診断装置Sは、超音波診断装置本体1と超音波プローブ2とにより構成される。超音波診断装置本体1は、制御部3と、信号処理部14と、画像生成部15と、表示制御部16と、ユーザーインターフェースUIとを備える。ユーザーインターフェースUIは、表示部17と操作部18とを有する。
【0018】
超音波プローブ2は、プローブ制御部2Aと、送受信部11と、超音波振動子10とを有する。超音波振動子10は複数の振動素子20(後述する)が配列された振動子配列20A(後述する)を有する。超音波プローブ2には、送受信部11の送信部12と受信部13とに接続される送受信切替部(スイッチ)4が設けられている。
【0019】
送受信切替部4は、プローブ制御部2Aからの送受信切替信号に従って、各振動素子20と送信部12又は受信部13との接続の切り替えを行う。送受信切替部4の切り替えによって、各振動素子20は送信部12又は受信部13に接続されることになる。送信部12に接続された振動素子20は、送信用の振動素子20として機能し、送信部12から供給される電圧パルスによって超音波パルスを発生する。また、受信部13に接続された振動素子20は、受信用の振動素子20として機能し、被検体からの反射(エコー)信号を受信し、受信部13に出力する。なお、送受信部11は、超音波プローブ2内に設けられた構成としてが、超音波診断装置本体1内に設けられた構成としてもよい。
【0020】
受信部13は、反射(エコー)信号の受信に伴って振動素子20により誘起された電荷をその電荷量に応じた電圧信号に変換する。受信部13は、各振動素子20と一対一に対応付けて設けられた検出系130を有し、検出系130は、一つ以上の検出素子から構成される。検出素子としては、例えばMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)が用いられる。
図2は振動素子20と検出系130とが接続されたMOSFET検出の回路図である。
図2に示すように、振動素子20において受信した反射信号の圧電変換により生成された電圧信号(V)が、検出系130において検出信号(Vin)として検出される。振動素子20を最大限に高感度化するため、振動素子20側の第1静電容量C
fと検出系130側の第2静電容量C
in(ゲート静電容量)との整合をとることは後述する。
【0021】
プローブ制御部2Aは、予め設定された送信用の振動素子20と受信用の振動素子20の位置を示す配置パターンに従って所定の切替タイミングで送受信切替部4における接続を切り替えることで、各振動素子20を送信部12又は受信部13に接続し、振動素子20を送信用又は受信用に切り替える。
【0022】
信号処理部14は、受信部13からの電圧信号に対してBPF(Band Pass Filter)を施す処理、非線形圧縮、深度補正、検波処理などの各種処理を行う。画像生成部15、信号処理後のデータに基づいて、被検体の組織形状を表す画像データを生成する。表示制御部16は、操作部18(キーボード、マウス、タッチパネルなど)による入力操作を受けて、画像データに基づいて表示部17(液晶画面など)に断層像を表示させる。
【0023】
図3は、超音波振動子10の一例を概略的に示す図である。
【0024】
図3に示すように、振動子配列20Aは、超音波プローブ2の長軸方向(
図3にXで示す走査方向)に128個の振動素子20が配列されたものである。振動素子20は、電子走査時において遅延時間を与える対象としての1単位(1つのチャンネル)を構成するものである。すなわち、複数の振動素子20は複数(ここでは128)チャンネルのアレイを構成する。
【0025】
各振動素子20は、同一の構造を備えた所定数(ここでは26)の積層体が長軸方向および長軸方向に直交する短軸方向(
図3にYで示すエレベーション方向)に2×13のマトリックス状に配列されて構成される。言い換えれば、複数の積層体が、所定数毎に分けられて複数の振動素子20を構成する。なお、個々の積層体は、圧電体を含むものであって、MEMS技術により作製されるとき、これを「pMUTセル」(pMUT:piezoelectric Micromachined Ultrasound Transducer)と呼ぶことがあり、このような積層体の集合を「pMUTセル群」と呼ぶことがある。
【0026】
本実施の形態では、各振動素子20においては、高感度化を図るために2種類の積層体が混在している。以下、第1の種類の積層体を積層体30Aと称し、第2の種類の積層体を積層体30Bと称する。なお、以下の説明では、2つ以上の積層体(積層体30A、30B)の集合を積層体群300と称する。また、積層体30A、30Bの総称を積層体30と称する。
【0027】
図4は、積層体群300の一例を概略的に示す断面図である。この例では、積層体群300は、一つの積層体30Aと積層体30Bとを含んでいる。
【0028】
積層体30A、30Bはいずれも、振動板(ダイヤフラム)32、下部電極33および圧電体膜34、上部電極35を有する。振動板32、下部電極33、圧電体膜34および上部電極35は、この順で積層される。なお、図示しないが、上部電極35上には保護および絶縁のための膜が成膜される。この膜には、例えばSiO
2(酸化シリコン)などの酸化膜、エポキシ樹脂やパリレン等の有機膜が用いられる。
【0029】
振動板32は、基板31によりその両端部が支持される。振動板32は、基板31と一体に形成される。例えば、振動板32は、基板31の材料としてのシリコン基板をエッチングにより部分的に薄くして薄膜の平板状に形成される。
【0030】
下部電極33は平板状の振動板32上に成膜される。さらに、圧電体膜34は下部電極33に成膜される。さらに、上部電極35は圧電体膜34に成膜される。本実施の形態では、これらの積層は、平坦であり複雑ではないため、通常の成膜技術とMEMS技術により容易にかつ微細に作製することができるため、積層体30の小型化や高密度化ひいては振動素子20の小型化や高密度化を図ることができる。
【0031】
上部電極35の材料には、作製のし易さから、後述する下部電極33の材料と同じ材料を用いるとよいが、下部電極33とは異なる材料であってもよい。
【0032】
また、圧電体膜34の材料は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛のような従来周知の材料を用いてよい。
【0033】
図4に示すように、積層体30A、30Bは同一の構造を有する。同一の構造とは、基板31、振動板32、下部電極33、圧電体膜34、上部電極35など、それぞれを構成する厚みや断面形状が同一であることをいう。なお、基板31は積層体30A及び積層体30Bとの間で共有されている箇所を含むが、半分で区切ったときの構造で同一としている。また、同一の範囲には製造誤差を含む。例えば、圧電体膜34は同一の材料からなり、かつ、同一の厚みを有する。また、上記したように振動板32が平板状である。さらに、圧電体膜34および上部電極35もそれぞれ同一の製造プロセスの中で容易に作製することができる。このため、積層体30A、30Bが作製し易くなり、ひいては、振動素子20の作製を容易にする。
【0034】
ここで、積層体30の構造を非平面状とすることで、あるいは、圧電体膜34の材料を、誘電率が異なるものとなるように積層体30Aと積層体30Bとで互いに異ならせることで、高感度の振動素子20を得ることも考えられるが、これでは振動素子20の作製コストが嵩んでしまうおそれがある。
【0035】
本実施の形態では、積層体30の構造を非平面状に複雑化しなくても、そして積層体30A、30B内の圧電体膜34の材料を互いに異ならせなくても、個々の振動素子20を構成する所定数の積層体30において、材料もしくは材料組成比の異なる下部電極33を混在させ、その混在比率を調整することで、圧電体膜34の物性、特に、圧電体膜34の誘電率(比誘電率ε
γ)を適切に制御することができる。これにより、作製コストを嵩ませることなく、高感度の振動素子20を得ることができる。
【0036】
下部電極33の材料には、上層に成膜する圧電材の圧電効果が出せるもので、かつ、圧電材料中の成分元素と反応化合物を生成しないもの、表面平滑性が良いもの、圧電材料の成膜プロセス温度変化により合金相を析出しないものが望ましい。それにより圧電体膜34と下部電極33の密着し剥がれ難くなり、圧電特性の継時的な劣化が抑制されるという効果が得られる。
【0037】
例えば、圧電体膜34の材料として、結晶の単位格子大きさを表す格子定数が3.9〜4.1[Å]のものが用いられる場合は、上述の効果が得られる下部電極33の材料としては、格子定数が3.9〜4.1[Å]の範囲ものが用いられる。
【0038】
このような格子定数を有する下部電極33の材料として、例えば、白金(Pt)、LNO(LaNiO
3)などのペロブスカイト型化合物、銀(Ag)を主成分としてパラジウム(Pd)を含む銀合金(Ag−Pd)が挙げられる。
【0039】
なお、下部電極33において使用可能な材料に関する他の例としては、銅(Cu)、珪素(Si)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、金(Au)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、コバルト(Co)のうち少なくとも1種類を含有する銀合金がある。
【0040】
また、下部電極33の材料は、格子定数が4.0〜4.1[Å]である(Ba,La)TiO
3、(Ba,La)SnO
3であってもよい。さらに、SrRuO
3であってもよい。これらの材料は、白金(Pt)、LNO、銀合金(Ag−Pd)と同様に、圧電材の圧電効果が出るものである。
【0041】
振動板32上に下部電極33を成膜する方法としては、スパッタリング法、イオンプレーティング法、分子線エピタキシー法、レーザアブレーション法、イオン化クラスタビーム蒸着法、並びにイオンビーム蒸着法などのPVD法が用いられる。なお、成膜方法として、上記する材料をターゲット材料としたスパッタリング法を用いることが好ましい。
【0042】
振動板32上に下部電極33を例えば多源スパッタリング法で成膜すれば、また、ターゲット材料として銀(Ag)およびパラジウム(Pd)を用いたとき、試料とターゲット材料の位置関係により、試料中に銀(Ag)とパラジウム(Pd)の含有量を少しずつ異ならせた領域を一度に作製でき、格子定数の微調整が容易にでき、圧電体膜34の格子定数と下部電極33の格子定数を適切に調整でき、誘電率を制御できる。
【0043】
下部電極33の材料が銀合金(Ag−Pd)である場合において、いずれかの積層体30A、30Bの下部電極33は、他のいずれかの積層体30A、30Bの下部電極33とは異なる、銀(Ag)とパラジウム(PD)の組成比を有する。これにより、積層体30Aの静電容量は、積層体30Bの静電容量とは異なるものとなる。
【0044】
圧電体膜34の比誘電率ε
γは、公知の測定方法で確認できる。
【0045】
比誘電率ε
γの測定方法の一例を説明する。圧電体膜34の比誘電率ε
γの測定には、例えば、比誘電率ε
γの測定対象として、下部電極33に膜厚が1[μm]/100[nm]となるようにPZT(Pb(Zr,Ti)O
3)/PLT(Pb,La)TiO
3)を成膜したものが用いられる。この測定対象を例えばソーヤタワー回路にセットし、圧電体膜34の両極に交流電源1[MHz]を印加する。圧電体膜34の両極に印加された電圧と、圧電体膜34の両極に誘起された電荷とに基づいて、圧電体膜34の比誘電率ε
γが測定される。
【0046】
下部電極33の材料等と圧電体膜34の比誘電率ε
γとの関係は例えば次の通りである。材料が白金(Pt)の場合、比誘電率ε
γは480である。また、材料がLNO(LaNiO
3)の場合、比誘電率ε
γは550である。さらに、材料組成比が銀(Ag)を主成分として45%のパラジウム(Pd)を含む銀合金Ag−Pd(45%)の場合、比誘電率ε
γは260である。さらに、材料組成比が銀(Ag)を主成分として25%のパラジウム(Pd)を含む銀合金Ag−Pd(25%)の場合、比誘電率ε
γは230である。
【0047】
このことから、積層体30A、30Bが同一の構造であっても、それらの下部電極33の材料等が異なることにより、積層体30A、30Bの静電容量が異なる。そのため、MOSFET(検出素子)に接続される積層体群300における積層体30A、30Bの組み合わせを調整することで、積層体群300(積層体30A、30B)側の静電容量を、検出系130においてその積層体群300に電気的に接続されるMOSFET(検出素子)の入力側の静電容量と整合させることが可能となり、高感度の振動素子20が得られる。また、このように検出系130側の第2静電容量C
inに対して振動素子20側の第1静電容量C
fを整合させる手法を採ることにより、MOSFETの製造公差(個体差)などに起因して検出系130側の第2静電容量C
inが常に同一とならなくても必ずその第2静電容量C
inに対して振動素子20側の第1静電容量C
fを一致させることができる。
【0048】
図5に積層体30A、30Bの混在比率の調整例を示す。積層体30Aを白抜きの円で示し、積層体30Bをハッチングが施された円で示す。この例では、同一チャンネルにおける積層体30A、30Bの総数が一定の26個であって、積層体30A、30Bの混在比率が「13:13」〜「24:2」で調整されている。このように積層体30A、30Bの混在比率を変えることで、振動素子20全体の第1静電容量C
fを調整することも可能である。
【0049】
次に、MOSFET(検出素子)に接続される積層体群側の第1静電容量C
fをMOSFET(検出素子)の入力側の第2静電容量C
inと整合させることについて表1を参照して説明する。なお、説明をわかり易くするため、MOSFET(検出素子)に接続された積層体群300における積層体の数が2〜4個であるものを例に挙げて説明する。
【0050】
表1に、下部電極33の材料もしくは材料組成比が異なることにより作製された積層体群300側の第1静電容量C
fを表す。なお、振動素子20の作製を容易にするため、同一チャンネル(振動素子20)における積層体が同一構造であることから、圧電体膜34の厚みdが同一であり、寸法(例えば辺の長さ)Lが同一であることが前提条件となる。
【0052】
表1において、dは圧電体膜34の厚みであり、ε
γは圧電体膜34の比誘電率であり、C
fは圧電体膜34の静電容量(積層体群300における各積層体の第1静電容量)であり、Lは正方形状の圧電体膜34の辺の長さである。なお、5[MHz]用の積層体を作製するとき長さLが53[μm]の圧電体膜34が用いられる。また、1[MHz]用の積層体を作製するとき長さLが106[μm]の圧電体膜34が用いられる。これらを式(1)に代入することで、各積層体の第1静電容量C
fが算出される。なお、真空の誘電率ε
oを8.85[pF/m]とする。
C
f=ε
oε
γL
2/d (1)
【0053】
表1から、例えば、d=1[μm]、ε
γ=200、L=53[μm]の圧電体膜34のとき、積層体の第1静電容量C
fは5[pF]となる。また、例えば、d=1[μm]、ε
γ=400、L=53[μm]の圧電体膜34のとき、積層体の第1静電容量Cfは10[pF]となる。なお、上記の前提条件により圧電体膜34の厚みdが同一であり、辺の長さLが同一である。
【0054】
これに対し、MOSFET(検出素子)の入力側の第2静電容量C
inが15[pF]のとき、上記2種類の第1静電容量C
fを有する圧電体膜34を用いて2種類の積層体30A、30Bを作製すると、それらの第1静電容量C
fの合計は15(=5+10)[pF]となる。積層体30A、30Bの組み合わせにより積層体群300が構成され、その積層体群300に1つのMOSFET(検出素子)が接続されることにより、組み合わされた積層体30A、30B側の第1静電容量C
fの合計をMOSFET(検出素子)の入力側の第2静電容量C
inと整合させることができる。なお、上記の整合を行うとき、第1静電容量C
fの合計を第2静電容量C
inに一致させたが、必ずしも一致させる必要がない。第1静電容量C
fの合計が不連続な数値を示すため、一致させることが難しい場合は、振動素子20が高感度になるように、第1静電容量C
fの合計が第2静電容量C
inに近づくように、積層体を組み合わせることで、第1静電容量C
fの合計を第2静電容量C
inとほぼ一致させるようにして整合させてもよい。なお、第1静電容量C
fの合計と第2静電容量C
inの差は-20%〜+20%程度が望ましい。
【0055】
上記のように、積層体30A、30Bの組み合わせにより積層体群300が構成されたとき、
図6Aに示すように、積層体30A、30B(
図6にA、Bで示す)同士が互い違いになるように各積層体群300がエレベーション方向(Y方向)に配列される。その理由は、異なる第1静電容量を有する積層体30A、30B同士がなるべく混じるようにして、音響的特性の均一化を図るためである。なお、
図6Aに積層体群300を破線で示す。積層体群300における積層体30A、30Bでは、下部電極33同士が接続される。
【0056】
また、表1から、例えば、d=1[μm]、ε
γ=100、L=53[μm]の圧電体膜34のとき、積層体の第1静電容量C
fは2.5[pF]となる。また、例えば、d=1[μm]、ε
γ=400、L=53[μm]の圧電体膜34のとき、積層体の第1静電容量C
fは10[pF]となる。なお、上記の前提条件により圧電体膜34の厚みdが同一であり、辺の長さLが同一である。
【0057】
これに対し、MOSFET(検出素子)の入力側の第2静電容量C
inが22.5[pF]のとき、上記2種類の第1静電容量C
fを有する圧電体膜34を用いて2種類の積層体を作製すれば、それらの第1静電容量C
fの合計は22.5(=2.5+10+10)[pF]となる。2個の積層体30Aと1個の積層体30Bとの組み合わせにより積層体群300が構成され、その積層体群300に1つのMOSFET(検出素子)が接続されることにより、組み合わされた積層体30A、30B側の第1静電容量C
fの合計をMOSFET(検出素子)の入力側の第2静電容量C
inと一致させることができる。
【0058】
上記のように、2個の積層体30Aと1個の積層体30Bとを組み合わせて積層体群300を構成したとき、音響的特性の均一化を図るために、
図6Bに示すように、2個の積層体30Aと1個の積層体30Bとを組み合わせた積層体群300の全体形状は、例えばL字形状であって、その角に1個の積層体30Bが配置した形状となる。このL字形状が互いに組み合わさるように各積層体群300がエレベーション方向(Y方向)に配列される。なお、
図6Bに積層体群300を破線で示す。積層体群300における積層体30A、30Bでは下部電極33同士が接続される。
【0059】
なお、表1には示さないが、4種類の積層体30A、30B、30C、30Dの組み合わせにより積層体群300が構成され、その積層体群300に1つのMOSFET(検出素子)が接続されることにより、積層体群300(積層体30A、30B)側の第1静電容量C
fをMOSFET(検出素子)の入力側の第2静電容量C
inと整合させることができる。4種類の積層体30A、30B、30C、30Dを組み合わせて積層体群300を構成したとき、音響的特性の均一化を図るため、積層体群300の全体形状は、
図6Cに示すように、積層体30A、30B、30C、30Dを四隅に配置した四角形状となる。この四角形状の積層体群300がエレベーション方向(Y方向)に配列される。
図6Cに積層体群300を破線で示す。積層体群300における積層体30A、30Bでは下部電極33同士が接続される。
【0060】
以上のようにして、面積に応じて第2静電容量C
inが変化するMOSFET(検出素子)に合わせて、そのMOSFETに電気的に接続される積層体群300の第1静電容量C
fを調整することができる。なお、言うまでもないが、個々のMOSFETに一つずつ積層体30を電気的に接続するだけで互いの静電容量が一致する場合は、これらを一対一で電気的に接続すればよい。
【0061】
図6A〜6Cに示したように、振動素子20において異なる種類の積層体30A、30Bを分散して配置することができるが、静電容量調整上、同じ種類の積層体30Aまたは積層体30Bを隣接して配置することもあり得る。その一例を
図7に示す。この例では、8個の隣接配置された積層体30Aからなる積層体集合体301と、8個の隣接配置された積層体30Bからなる積層体集合体301とが、振動素子20において交互に配置されている。
【0062】
積層体集合部301がこのように配置された振動素子20では、個々の積層体集合部301の寸法は、受信対象の超音波の半波長以下である。
図7に示すように、例えば、Lを積層体集合部301(積層体30Aの集合又は積層体30Bの集合)のエレベーション方向(Y方向)の寸法、λは受信対象の超音波の波長とすれば、音響的特性の均一化を図るために許容される積層体集合部301の配置条件は、L≦λ/2となる。
【0063】
なお、上記実施の形態では、同一の積層体30A、30Bに含まれる下部電極33と上部電極35との面積が同一であるものを示した。これに対し、同一の積層体30A、30Bに含まれる下部電極33と上部電極35との面積が異なることで感度が上がる場合がある。感度を上げるために、一方の電極の面積より他方の電極の面積を小さくすればよいが、ここでは、下部電極33の面積より上部電極35の面積を小さくする。それは、下部電極33はその上に圧電体膜34が成膜されることから、一定の面積を確保する必要があるためである。
【0064】
例えば、
図8Aに示すように、下部電極33の円の直径Rより上部電極35の円の直径R1を小さくすることで、下部電極33の面積より上部電極35の面積を小さくする。
【0065】
また、例えば、
図8Bに示すように、下部電極33が円形状を有し、上部電極35がリング形状を有し、下部電極33が円の直径R2と上部電極35のリング形状の外径R3とは等しいとき、上部電極35をリング形状にすることで(リング形状の内径R4で示す)、下部電極33の面積より上部電極35の面積を小さくする。
【0066】
上記する超音波振動子10において、積層体が積層体30A(本発明の「第1の積層体」に対応)および積層体30B(本発明の「第2の積層体」に対応)を含み、複数の振動素子が複数のチャンネルのアレイを構成するとき、一つのチャンネルにおいて、積層体30A同士が隣り合わないように配置されるとよい。これにより、積層体30Aがそれとは異なる種類の積層体(例えば積層体30B)等と混じり合うことになるため、音響的特性の均一化を図ることができる。
【0067】
上記する超音波振動子10は、振動素子20が1つのチャンネルを構成するものであったが、同一チャンネルの振動素子20を構成する所定数の積層体30A、30Bは、複数のサブチャンネルに分割されてもよい。このとき、複数のサブチャンネルのうち同一サブチャンネルに含まれる下部電極33は、互いに電気的に接続される。電子走査に用いられるサブチャンネルにおける積層体の数は、1つのチャンネルにおける積層体の数より少ないが、被検体内の浅い部位を走査することが可能である。
【0068】
その他、上記実施の形態は、何れも本発明の実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0069】
本発明は、超音波振動子を備えた超音波診断装置に適用できる。小型、高密度に作製された振動素子を用いることで、超音波プローブが小型、軽量となり、超音波プローブの操作性を向上させることができる。