(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記評価対象の薄膜及び前記指標用薄膜からなる積層体に、高エネルギーの原子イオンを照射した際に前方または後方に散乱する原子イオンのエネルギー値を測定して、前記評価対象の薄膜の深さ方向の組成及び密度を得ることを特徴とする請求項3または請求項4に記載した薄膜評価方法。
【背景技術】
【0002】
光学部品や電子部品等の機能性部品の製造において、基板材料に1um以下の薄膜を形成する技術(コーティング技術)が多用されている。
このコーティングは、例えば、光学部品分野では、ミラーやレンズの反射率を制御するために、極薄いフッ化マグネシウム等が基材の表面に形成されるものである。また、半導体デバイスの一種である電界効果トランジスタ(Metal−Oxide−Semiconduator Field−Effect Transistor:MOS‐FET)においては、ゲート絶縁膜やゲート電極、また、層間絶縁膜や配線等、ほぼ全ての材料が、1um以下の薄膜で形成される。
【0003】
これら薄膜の形成方法は多種である。例えば、MOS‐FETのゲート絶縁膜は、所定量のイオンを拡散させたシリコン基板を高温で熱酸化して形成され、また、電極や層間絶縁膜は、化学気相蒸着法(CVD)により形成され、配線は、物理気相蒸着法の一つであるスパッタリング法にて形成される。
スパッタリング法は、蒸着膜の組成が均一で平坦、かつ膜厚が制御しやすいために、100nm以下の薄膜を形成する場合に多用される。
【0004】
また、スパッタリング法には異なる方式がいくつかあるが、概ね高真空中で、薄膜を成膜する被コーティング材とターゲットと呼ばれる薄膜原料とを対向させ、両者に電圧をかけることにより、アルゴン(Ar)等のイオン化されたガスがマイナス側にバイアスされたターゲットに衝突することによって、原料粒子を弾き飛ばす現象を利用している。
ここで、弾き飛ばされた原料粒子は、高エネルギー状態で対向する被コーティング材に衝突し堆積する。
【0005】
ところで、このように成膜された薄膜は、十分に機能が発揮されるか否か、電気特性にて判断される。さらには、電気特性の由来を評価するため、膜分析が行われる。例えば、絶縁耐圧等の電気特性は、ゲート絶縁膜の構造欠陥や膜密度や成分の偏析等に影響されるため、絶縁膜の観察や化学組成分析が行われる。
薄膜の観察には、多くの場合、電子顕微鏡が用いられる。
薄膜を被コーティング材の平面方向に観察する場合は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いる。また、薄膜を被コーティング材の深さ方向に観察する場合は、収束イオンビーム(Forcused Ion Beam:FIB)等により薄膜を切削する等して出現する断面を、SEMや透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)を用いて観察する。
【0006】
また、薄膜の組成分析には、電子線を試料に当てることにより発生する各元素の特性線を検出するエネルギー分散型X線分析(Energy Dispersive X−ray Spectrometory:EDX)や、オージェ電子を検出するオージェ電子分光分析(Auger Electron Spectroscopy:AES)、または、試料にX線を照射したときに発生する光電子を検出するX線光電子分光分析(X−ray Photoelectron Spectoscopy:XPS)や、発生する蛍光X線のエネルギーを検出する蛍光X線分析(X−ray Fluorescence:XRF)、または、試料にビスマス(Bi)イオン等の一次イオンを照射したときに試料表面に存在する物質がイオン化された二次イオン質量を検出する二次イオン質量分析(Secondary Ion Mass Spectorometory:SIMS)等、多種多様の分析手法がある。
【0007】
これらの組成分析法では、多くの場合、表層から数nm〜数10nmの範囲内における組成情報が得られる。しかしながら、薄膜の深さ方向の組成分布を分析する場合、試料表面をArイオン等でスパッタエッチングしながら測定する必要があり、エッチングイオンのエネルギーにより深さ方向に原子のミキシングが起こる可能性があるため、正確な組成分布を得ることが困難な場合がある。
そのため、スパッタエッチングを行わずに、非破壊で深さ方向の組成分布を分析可能な、様々な手法が開示されている。
【0008】
中でも、代表的な手法は、ヘリウム(He)等の軽元素イオンを高いエネルギーで試料に照射した際、後方に散乱される軽元素イオンのエネルギー値を検出することで、試料中に含まれる元素の種類や存在量を測定するラザフォード後方散乱分析(Rutherford Buckscattering Spectrometry:RBS)や、高エネルギー軽元素イオンにより弾き飛ばされる原子やイオンを検出する反跳原子検出分析(Elastic Recoiled Detection Analysis:ERDA)である。
【0009】
RBS分析やERDA分析は、前述のように、散乱されるイオンのエネルギー値が被衝突元素の質量に依存するため、軽元素イオンを照射することのみで測定を行うことが可能である。そのため、標準試料の準備が要らない、前処理が要らない、非破壊である等の特徴があり、また、同時に面密度を測定できるため、薄膜分析では重要な位置付けとなっている。
RBS測定装置においては、近年深さ方向の分解能が1nm程度の測定装置も開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
この測定装置は、高エネルギーイオンビームを用いて、深い位置の情報を、高エネルギー分解能で分析することが可能である。具体的には、入射ビーム軸に入射方向上流側から散乱イオン検出器、アパーチャ、試料が順に配設され、入射ビーム軸に平行な磁場が印加される。散乱イオン検出器及びアパーチャは、その中心部に開口部を有しており、入射ビームは、開口部を通過して試料を照射することが可能である。
【0010】
したがって、高エネルギーイオンビームを用いて照射された試料から後方散乱した散乱イオンは、磁場により収束され、アパーチャの開口部を抜けた散乱イオンが検出器で検出されることとなる。そして、磁場強度、試料位置、アパーチャ、検出器の位置を変化させると、あるエネルギーを有する散乱イオンのみを検出器で検出可能となり、散乱イオンのエネルギースペクトルを測定することが可能となる。
【0011】
しかしながら、上記のRBS測定装置は、薄膜中の化学組成を高分解能で測定可能であるものの、薄膜の組成に深さ方向の濃度勾配が有る場合、深さ方向のどの位置に対象原子が有るのかを判定することが困難である。
そこで、本願発明の発明者等は、評価対象の薄膜の間に、この薄膜とは異なる元素を含む、指標となる超薄膜を挟んで薄膜評価用構造体を形成し、形成した超薄膜を指標として、評価対象の薄膜の深さ方向における組成及び密度を求める手法を見出した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、近年では、光学部材はより多層化し、平滑で欠陥の無い膜を形成する必要がある。また、半導体デバイスは高集積化し、MOS−FETが微細化されることにより薄膜の薄化が図られ、数nmの膜を形成することが要求されている。このように、より平滑で薄い膜を形成できるように、薄膜成膜プロセスは、従来の手法から新たな手法へと変化している。
その一つに、原子層堆積法(Atomic Layer Deposition:ALD)がある。
【0014】
ALD法は、表面吸着した物質を、表面における化学反応によって原子レベルで一層ずつ成膜していく方法であり、前駆体またはプリカーサともいわれている、活性に富んだガスと反応性ガスを交互に用い、基板表面における吸着と、これに続く化学反応によって、原子レベルで一層ずつ薄膜を成長させていく特殊な成膜方法である。
ALD法の具体的な成膜方法は、基材上の表面吸着において、表面がある種のガスで覆われると、それ以上そのガスの吸着が生じないこと(セルフ・リミッティング効果)を利用し、前駆体が一層のみ吸着したところで未反応の前駆体を排気する。次に、反応性ガスを導入して、先の前駆体を酸化または還元させて所望の組成を有する薄膜を一層のみ得たのち、反応性ガスを排気する。このような処理を1サイクルとし、このサイクルを繰り返して薄膜を成長させていくものである。
【0015】
このように、ALD法では、薄膜は2次元的に成長し、原子層あるいは分子層が1層ずつ成膜されるため、極薄い数nmの膜厚でも制御よく成膜可能であり、成膜欠陥が少ないことが特徴である。また、ALD法は、従来のCVD法やスパッタリング法等と比較して、前駆体が気体状態で基材表面に吸着したのちに、反応ガスにより酸化あるいは還元させるため、基材に対する膜の追従性が非常に高く、深さと幅の比が大きい高アスペクト比を有するMOS−FETの、ホールパターン内のバリアメタル膜等の幅広い分野への応用が期待されている。
【0016】
しかしながら、ALD法により成膜された、深さ方向に濃度勾配がある膜の組成分析を、上記のRBS測定装置を用いて行う場合、正確な分析結果が得られないという問題が生じる。また、ALD法により成膜された膜の密度や組成は、下地の影響を大きく受けるため、異なる組成をもつ指標用超薄膜を評価対象の薄膜の間に形成することができないという問題が生じる。
【0017】
一方、ゲート絶縁膜などは、イオンを拡散させたシリコン基板を高温で熱酸化したり熱窒化したりして形成される。評価対象の薄膜がこのように熱処理により形成される場合、異なる元素を含む指標用超薄膜を評価対象の薄膜の間に形成することができないという問題が生じる。
【0018】
本発明は、このような問題点を解決しようとするものであり、原子層堆積法(ALD法)により成膜した膜の深さ方向の組成や密度分布を測定することが可能な、薄膜評価用構造体及び薄膜評価方法を提供することを目的とする。また、下地膜の熱処理により形成した膜の深さ方向の組成や密度分布を測定することが可能な、薄膜評価用構造体及び薄膜評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様は、評価対象の薄膜を複数積層した薄膜評価用構造体であって、
前記評価対象の薄膜と同じ組成である指標用薄膜を、隣り合う前記評価対象の薄膜間に配置し
、
前記評価対象の薄膜および前記指標用薄膜は、金属または半金属を有する無機化合物であり、
前記評価対象の薄膜および前記指標用薄膜を構成する無機化合物は、酸化物または窒化物であり、
前記指標用薄膜を構成する酸素または窒素は、前記評価対象の薄膜を構成する酸素または窒素とは互いに同位体であることを特徴とする薄膜評価用構造体である。
【0025】
また、本発明の一態様は、前記評価対象の薄膜及び前記指標用薄膜は、原子層堆積法または熱処理により成膜されることを特徴とする薄膜評価用構造体である。
また、本発明の一態様は、評価対象の薄膜を複数積層した薄膜評価用構造体を評価する薄膜評価方法であって、隣り合う前記評価対象の薄膜間に、前記評価対象の薄膜と同じ組成を有する指標用薄膜を配置し
、前記評価対象の薄膜および前記指標用薄膜は、金属または半金属を有する無機化合物であり、前記評価対象の薄膜および前記指標用薄膜を構成する無機化合物は、酸化物または窒化物であり、前記指標用薄膜を構成する酸素または窒素は、前記評価対象の薄膜を構成する酸素または窒素とは互いに同位体である積層体を生成し、当該積層体を評価することにより、前記評価対象の薄膜の深さ方向の評価を行うことを特徴とする薄膜評価方法である。
【0032】
また、本発明の一態様は、前記評価対象の薄膜及び前記指標用
薄膜は、原子層堆積法または熱処理により成膜されることを特徴とする薄膜評価方法である。
【0033】
また、本発明の一態様は、前記評価対象の薄膜及び前記指標用薄膜からなる積層体に、高エネルギーの原子イオンを照射した際に前方または後方に散乱する原子イオンのエネルギー値を測定して、前記評価対象の薄膜の深さ方向の組成及び密度を得ることを特徴とする薄膜評価方法である。
【発明の効果】
【0034】
本発明の一態様であれば、薄膜中に指標となる指標用薄膜層を形成し、その指標用薄膜層により、薄膜を断面方向に分割することで、深さ方向に濃度勾配や密度差がある薄膜について、組成や密度分布を高分解能で測定することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(評価用構造体の構造)
図1は、第一実施形態の薄膜評価用構造体1の一例を示す構成図であり、側面図である。
図1中に示すように、第一実施形態の薄膜評価用構造体1は、基板2上に、評価対象の複数層の薄膜3が成膜され、さらに、薄膜3の間に、指標となる薄膜(指標用薄膜)超薄膜4が成膜された構成となっている。
すなわち、第一実施形態の薄膜評価用構造体1は、評価対象となる薄膜3と、この薄膜3よりも膜厚の薄い、指標となる超薄膜4とが交互に積層されて構成されている。
【0037】
ここで、基板2の材質としては、単結晶シリコン(Si)、ガラス、金属、樹脂等を用いることが可能である。
薄膜3は、複数の薄膜層を備えている。なお、第一実施形態では、一例として、
図1中に示すように、薄膜3の構成を、薄膜評価用構造体1の基材2側から順に、第一から第五の、五層の薄膜層31〜35を備えた構成とした場合について説明する。
超薄膜4は、複数の超薄膜層を備えている。なお、第一実施形態では、一例として、
図1中に示すように、超薄膜4の構成を、薄膜評価用構造体1の基材2側から順に、第一から第四の、四層の超薄膜層41〜44を備えた構成とした場合について説明する。
【0038】
図2は、第一実施形態の薄膜評価用構造体の作製工程を示す図である。
第一の薄膜層31は、原子層堆積法(ALD法)で形成されている(S10)。
ここで、第一の薄膜層31が二酸化ケイ素(SiO
2)等の酸化物である場合、Siを含む有機ケイ素等の前駆体を基板2に吸着させ、一定時間余剰前駆体をパージした後、反応性ガスとして、水(H
2O)、オゾン(O
3)、プラズマ化された酸素(O
2)等で酸化を行うことが望ましい。
【0039】
また、第一の薄膜層31がチタンナイトライド(TiN)等の窒化膜である場合、Tiを含む四塩化チタン(TiCl
4)等の前駆体を基板2に吸着させ、一定時間余剰前駆体をパージした後、反応ガスとして、窒素(N
2)と水素(H
2)の混合物等で窒化することが望ましい。
第一の薄膜層31が成膜されると、第一の薄膜層31のALD成膜が停止され、次に、第一の薄膜層31の上に、第一の超薄膜層41がALD法で成膜される(S11)。
【0040】
ここで、第一の薄膜層31が、例えば、二酸化ケイ素(SiO
2)等の酸化物である場合、第一の超薄膜層41も、第一の薄膜層31と同じ有機ケイ素等の前駆体を用いて成膜する。同様に、第一の薄膜層31がTiNを用いて成膜されている場合、第一の超薄膜層41も、第一の薄膜層31と同じTiCl
4等の前駆体を用いて成膜する。
第一の超薄膜層41は、第一の薄膜層31を構成する元素と同じ元素で構成されるが、反応ガスとなるO
2あるいはN
2は、第一の薄膜層31を形成したO
2あるいはN
2とは同位体となるものを使用する。この場合、例えば、O
2であれば(18)O
2、N
2であれば(15)N
2等を用いる。
【0041】
次に、形成された第一の超薄膜層41の上に、第二の薄膜層32を成膜する(S12)。第二の薄膜層32の成膜手法は、第一の薄膜層31と同様である。
続いて、第二の薄膜層32の上に、第二の超薄膜層42を成膜する(S13)。第二の超薄膜層42の成膜手法は、第一の超薄膜層41と同様である。
このようにして、薄膜層31〜35と超薄膜層41〜44とを交互に成膜することにより、薄膜3と超薄膜4とが交互に積層された薄膜評価用構造体1を作製する。
なお、評価対象の薄膜3としては、例えば、金属または半金属を有する無機化合物等を適用することが可能である。ここで、無機化合物としては、酸化物または窒化物等を適用することが可能である。
【0042】
また、指標となる超薄膜4としては、例えば、薄膜3に含まれる元素と同じ金属または半金属からなる無機化合物等を適用することが可能である。ここで、無機化合物としては、酸化物または窒化物等を適用することが可能である。なお、薄膜3及び超薄膜4は、各薄膜及び各超薄膜層の判別を容易とするため、各薄膜及び各超薄膜層の膜厚を異ならせてもよい。
したがって、第一実施形態の薄膜評価用構造体1は、複数の積層した評価対象の薄膜3を含んでおり、薄膜3と同じ組成である超薄膜4(指標用薄膜)を、隣り合う薄膜3間に配置した積層体を含んで形成されている。
【0043】
(第二実施形態)
以下、本発明の第二実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(評価用構造体の構造)
図3は、第二実施形態の薄膜評価用構造体1の一例を示す構成図であり、側面図である。
図3中に示すように、第二実施形態の薄膜評価用構造体1は、第一実施形態と同様に、基板2上に、評価対象の複数層の薄膜3が成膜され、さらに、薄膜3の間に、指標となる薄膜(指標用薄膜)超薄膜4が成膜された構成となっている。
すなわち、第二実施形態の薄膜評価用構造体1は、第一実施形態と同様に、評価対象となる薄膜3と、この薄膜3よりも膜厚の薄い、指標となる超薄膜4とが交互に積層されて構成されている。
【0044】
ここで、基板2の材質としては、単結晶シリコン(Si)、金属を用いることが可能である。
薄膜3は、複数の薄膜層を備えている。なお、第二実施形態では、一例として、
図3中に示すように、薄膜3の構成を、薄膜評価用構造体1の表面側から順に、第一から第五の、五層の薄膜層31〜35を備えた構成とした場合について説明する。
超薄膜4は、複数の超薄膜層を備えている。なお、第二実施形態では、一例として、
図3中に示すように、超薄膜4の構成を、薄膜評価用構造体1の表面側から順に、第一から第四の、四層の超薄膜層41〜44を備えた構成とした場合について説明する。
【0045】
図4は、第二実施形態の薄膜評価用構造体の作製工程を示す図である。
第一の薄膜層31は、基板2の熱処理で形成されている(S20)。
ここで、基板2が単結晶Siであり、第一の薄膜層31が二酸化ケイ素(SiO
2)等の酸化物である場合、基板2を酸素(O
2)や水(H
2O)雰囲気下のもと高温で熱処理を行うことが望ましい。
【0046】
第一の薄膜層31が成膜されると、第一の薄膜層31の熱処理が停止され、次に、第一の薄膜層31の下に、第一の超薄膜層41が熱処理で成膜される(S21)。ここで、Siの酸化の場合、第一の超薄膜層41の酸化に寄与するOは、第一の薄膜層31であるSiO
2の格子位置のOとは位置交換せず、第一の薄膜層31であるSiO
2の格子間位置を拡散する。拡散したOは、基板2のSiを酸化するため、結果として、第一の超薄膜層41は、第一の薄膜層31の下に形成される。
【0047】
第一の超薄膜層41は、第一の薄膜層31を構成する元素と同じ元素で構成されるが、反応ガスとなるO
2あるいはH
2Oは、第一の薄膜層31を形成したO
2あるいはH
2Oとは同位体となるものを使用する。この場合、例えば、O
2であれば(18)O
2、H
2OであればH
2(18)O等を用いる。
【0048】
熱処理の方法としては、熱酸化炉内に基板2を載置し、N
2などの不活性ガスを流しながら炉内を処理温度(800℃以上1000℃以下程度)まで昇温したのち、反応ガスを炉内に導入し、所定時間(30分以上2時間以下程度)加熱する。
【0049】
次に、形成された第一の超薄膜層41の下に、第二の薄膜層32を成膜する(S22)。第二の薄膜層32の成膜手法は、第一の薄膜層31と同様である。
続いて、第二の薄膜層32の下に、第二の超薄膜層42を成膜する(S23)。第二の超薄膜層42の成膜手法は、第一の超薄膜層41と同様である。
このようにして、薄膜層31〜35と超薄膜層41〜44とを交互に成膜することにより、薄膜3と超薄膜4とが交互に積層された薄膜評価用構造体1を作製する。
なお、評価対象の薄膜3としては、例えば、金属または半金属を有する無機化合物等を適用することが可能である。ここで、無機化合物としては、酸化物または窒化物等を適用することが可能である。
【0050】
また、指標となる超薄膜4としては、例えば、薄膜3に含まれる元素と同じ金属または半金属からなる無機化合物等を適用することが可能である。ここで、無機化合物としては、酸化物または窒化物等を適用することが可能である。なお、薄膜3及び超薄膜4は、各薄膜及び各超薄膜層の判別を容易とするため、各薄膜及び各超薄膜層の膜厚を異ならせてもよい。
したがって、第一実施形態の薄膜評価用構造体1は、複数の積層した評価対象の薄膜3を含んでおり、薄膜3と同じ組成である超薄膜4(指標用薄膜)を、隣り合う薄膜3間に配置した積層体を含んで形成されている。
【0051】
(評価方法)
本発明にかかる薄膜の深さ方向における組成及び密度を求める評価方法は、上述した構成の薄膜評価用構造体1に対し、高いエネルギーの原子イオンを照射した際に後方散乱する原子イオンのエネルギー値を測定することで実現される。
また、薄膜評価用構造体1は、表面に高いエネルギーの原子イオンが照射されることにより、後方散乱する原子イオンのエネルギー値を求めることが可能である。
入射イオンには、H
+イオン、He
+イオン等の軽元素イオンを用いる。
軽元素イオンの入射エネルギーは、測定のエネルギー分解能を考慮し、1MeV以下であることが望ましい。また、軽元素イオンの入射角及び散乱角は、入射エネルギーや、薄膜3と超薄膜4の組成及び膜厚により制限されるため、適宜調整する。
【0052】
原子イオンの後方散乱により得られた、例えば、酸素に相当するエネルギースペクトルは、薄膜3に含まれる酸素により散乱されるか、超薄膜4に含まれる同位体酸素により散乱されるかにより、異なるエネルギー値となるため、存在する酸素の種類により、異なる位置にピークが出現する。
このとき、各酸素による散乱エネルギーは、膜の深さ方向に伴いそれぞれ減衰するため、エネルギースペクトルは、ある程度の幅を持つ。さらに、薄膜3及び超薄膜4の深さ方向において、それぞれの酸素が存在する位置に応じて各酸素のピーク強度が変化するため、それぞれの酸素が存在しない領域では、エネルギー強度が極端に落ちる。
【0053】
つまり、薄膜3に含まれる酸素により散乱された軽元素イオンエネルギースペクトルには、山と谷が生じ、スペクトルの山の部分に相当する部分が、薄膜3に含まれる酸素分布を示すことになる。また、超薄膜4に含まれる同位体酸素により散乱された軽元素イオンエネルギースペクトルにも、山と谷が生じ、スペクトルの山の部分に相当する部分が、超薄膜4に含まれる同位体酸素分布を示すことになる。
この山と谷の分布は、超薄膜4の存在位置を示すため、総膜厚との相対比により、薄膜3のそれぞれ個々の膜厚が算出される。
また、山と谷の分布から求めた薄膜3の面密度を上記の算出した膜厚で割ることにより、密度が算出される。
このようにして、薄膜3中に指標となる超薄膜4を形成し、その超薄膜4により薄膜3を断面方向に分割することで、ALD法または熱処理により成膜された膜においても、指標層の影響を受けずに、深さ方向の組成や密度分布を、高分解能で評価することが可能となる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明の実施例について、
図1および3を参照して説明する。なお、以下に、本発明の実施例を示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0055】
<実施例1>
図1の薄膜評価用構造体1を作成した。
薄膜評価用構造体1の基板2には、単結晶Siを用いた。また、第一の薄膜層31として、酸化アルミニウム(Al
2O
3)をALD法にて成膜した。また、Al前駆体には、トリメチルアルミニウム(TMA)を用い、反応ガスにはH
2Oを用いた。
上記の基板2を、ALD装置の成膜室の基板ホルダーに載置し、成膜室の温度を500℃に保持して装置を密閉した後、真空ポンプで排気を行った。
【0056】
次に、成膜室にキャリアガスN
2とともに前駆体TMAを40msec導入して基板2に吸着させた後、キャリアガスN
2を流しながら5sec排気して、余剰TMAをパージした。
続いて、成膜室にキャリアガスN
2とともに反応ガスであるH
2Oを40msec導入し、TMAとH
2Oを反応させてAl
2O
3を生成させた。その後、キャリアガスN
2を流しながら10sec排気して、余剰H
2Oをパージした。
上述したTMA導入から余剰H
2Oパージまでの一連の作業を1サイクルとし、38サイクル繰り返して、Al
2O
3を成膜した。
【0057】
次に、第一の超薄膜層41としてAl
2(18)O
3を、第一の薄膜層31の上に成膜した。ここで、Al前駆体には、第一の薄膜層31と同じTMAを用い、反応ガスには、酸素部が同位体(18)OであるH
2(18)Oを用いた。そして、第一の薄膜層31と同じ条件で、TMA導入から余剰H
2(18)Oパージまで12サイクル繰り返し、Al
2(18)O
3を成膜した。
続いて、第二の薄膜層32を第一の超薄膜層41の上に、第一の薄膜層31の成膜条件と全く同様として38サイクル成膜し、さらに、第二の超薄膜層42を第二の薄膜層32の上に、第一の超薄膜層41の成膜条件と全く同様として12サイクル成膜した。
その後、第三の薄膜層33を第二の超薄膜層42の上に、第一の薄膜層31の成膜条件と全く同様として38サイクル成膜した。
以上により、本発明の薄膜評価用構造体1を作成した。
【0058】
(評価)
エリプソメトリにより、薄膜評価用構造体1に形成されたAl
2O
3とAl
2(18)O
3の総膜厚を測定したところ、24.0nmであった。
次に、Al
2O
3の組成を得るために、作成された薄膜評価用構造体1をRBS分析した。
具体的には、入射イオンとしてHe
+イオンビームを用い、入射エネルギー500keV、ビーム電流15nA、入射量240μC、入射角45度、散乱角90度の条件で評価した。
このとき、He
+イオンが、Oにより散乱されるに相当するスペクトルは、Al
2O
3膜の表面からSi基板(基板2)に至るまでの全幅を3等分するそれぞれの位置でピーク強度が下がり、また、He
+イオンが(18)Oにより散乱されるに相当するスペクトルは、Al
2O
3膜の表面からSi基板(基板2)に至るまでの全幅を3等分するそれぞれの位置でピーク強度が上がっていることを確認した。
【0059】
また、得られた第一の薄膜層31の組成はAlOx(x=1.33)であり、第二の薄膜層32及び第三の薄膜層33の組成は、それぞれ、AlOx(x=1.48)であった。
また、密度を計算すると、第一の薄膜層31は2.8g/cm
2であり、第二の薄膜層32及び第三の薄膜層33の密度は、それぞれ、3.0g/cm
3であった。
このように、本発明の評価方法により、ALD法による成膜初期のAl
2O
3の組成や密度と、膜がある程度成長したAl
2O
3の組成や密度は、異なる結果を得た。
【0060】
<実施例2>
図3の薄膜評価用構造体1を作成した。
薄膜評価用構造体1の基板2には、単結晶Siを用いた。また、第一の薄膜層31としてSiO
2を熱処理により成膜した。このとき、反応ガスはO
2およびHClを用いた。
基板2を、石英ボートに載置し、熱酸化炉に挿入した後、熱酸化炉内温度を850℃に保持して、O
2およびHClを流しながら基板2の熱酸化処理を50分行った。その後、O
2とHClの供給を停止した。
【0061】
続いて、第一の超薄膜層41を第一の薄膜層31の下に成膜した。第一の薄膜層31の成膜後に、熱酸化炉を850℃に保持したまま炉内に(18)O
2およびHClを導入しながら基板2の熱酸化処理を10分行った。
【0062】
続いて、第二の薄膜層32を第一の超薄膜層41の下に、第一の薄膜層31の成膜条件と全く同様に成膜し、さらに、第二の超薄膜層42を第二の薄膜層32の下に、第一の超薄膜層41の成膜条件と全く同様に成膜した。
その後、第三の薄膜層33を第二の超薄膜層42の下に、第一の薄膜層31の成膜条件と全く同様に成膜した。
以上により、本発明の薄膜評価用構造体1を作成した。
【0063】
(評価)
エリプソメトリにより、薄膜評価用構造体1に形成された薄膜層3であるSiO
2と超薄膜層4であるSi(18)O
2の総膜厚を測定したところ、19.5nmであった。
次に、薄膜層3であるSiO
2の組成を得るために、作成された薄膜評価用構造体1をRBS分析した。
具体的には、入射イオンとしてHe
+イオンビームを用い、入射エネルギー500keV、ビーム電流15nA、入射量240μC、入射角45度、散乱角90度の条件で評価した。
このとき、He
+イオンが、Oにより散乱されるに相当するスペクトルは、SiO
2膜の表面からSi基板(基板2)に至るまでの全幅を3等分するそれぞれの位置で相対的にピーク強度が下がり、また、He
+イオンが(18)Oにより散乱されるに相当するスペクトルは、SiO
2膜の表面からSi基板(基板2)に至るまでの全幅を3等分するそれぞれの位置で相対的にピーク強度が上がっていることを確認した。
【0064】
また、得られた第一の薄膜層31および第二の薄膜層32の組成は、それぞれ、SiOx(x=2.00)であり、第三の薄膜層33の組成は、SiOx(x=1.99)であった。
また、密度を計算すると、第一の薄膜層31および第二の薄膜層32の密度はそれぞれ2.20g/cm
2であり、第三の薄膜層33の密度は、2.24g/cm
3であった。
このように、本発明の評価方法により、基板表面に近い熱酸化SiO
2の組成や密度と、Si/SiO
2界面に近い熱酸化SiO
2の組成や密度は若干異なる結果が得られた。
【0065】
なお、本発明に係る積層体からなる薄膜評価用構造体1の実施形態について、図面を参照して詳述してきたが、本発明の具体的な構成は、上述した実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、それらは本発明に含まれる。