(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
木酢(きず)みかんとは、福岡県特産の酢みかんとして知られており、ミカン科ミカン属に属し、学名は、Citrus kizuである。本発明では木酢みかんを使用しているが、同様のCOX−2阻害作用のある物質を含有する柑橘類であれば、特に制限なく、本発明と同様に使用できる。使用部位は、果肉、果皮が好適に用いられるが、これ以外に、枝葉も使用できる。木酢みかんの使用時期は、未完熟および完熟共に使用できる。
【0015】
COXは、アラキドン酸からプロスタグランジンを合成する経路に関わる酵素シクロオキシゲナーゼであり、COX−1とCOX−2が知られている。
【0016】
COX−1は胃、血小板、腎臓その他のほとんどの組織で常時発現している構成型の酵素である。COX−1が産生するプロスタグランジンは胃粘液分泌増加、血流増加の作用を持ち、胃粘膜保護などの生理機能の維持に関与する。
【0017】
COX−2は活性化マクロファージや滑膜細胞においてサイトカイン等の炎症調節物質により急速に(1〜2時間で)誘導される(炎症時に主に炎症組織で誘導される)COX−2が産生するプロスタグランジンが炎症を増悪させる。そこで、COX−2を特異的に阻害できれば、副作用が少なく、より効率的に炎症を軽減しうると考えられている。
【0018】
発明者らは、COX−2阻害剤をスクリーニングすることにより、木酢みかん抽出物中にCOX−2阻害活性が存在することを見出した。この場合、抽出に用いる溶媒、抽出方法は特に限定されないが、抽出溶媒としては、熱水またはエタノールが好ましい。
【0019】
熱水抽出する場合の好ましい温度範囲は、40℃〜100℃、より好ましくは、60℃〜100℃、さらに好ましくは、80℃〜100℃である。熱水抽出する際の抽出時間は、好ましくは10分〜3日間、より好ましくは、30分〜1日間、さらに好ましくは、60分〜6時間である。抽出した成分はそのまま、またはさらに精製して用いてもよい。
【0020】
また、エタノール抽出する場合、エタノール単独でも、エタノール/水の混合溶媒でも使用できる。エタノール:水の比率は、好ましくは、100:0〜20:80、より好ましくは、100:0〜40:60、さらに好ましくは、100:0〜60:40、特に好ましくは80:20である。エタノール抽出する場合の好ましい温度範囲は、10℃〜100℃、より好ましくは、20℃〜80℃、さらに好ましくは、30℃〜80℃である。エタノール抽出する際の抽出時間は、好ましくは10分〜10日間、より好ましくは、1時間〜5日間、さらに好ましくは、3時間〜2日間である。抽出した成分はそのまま、乾燥させて溶媒に溶解、またはさらに精製して用いてもよい。
【0021】
これらの抽出物を用いて、COX−1またはCOX−2の阻害活性を測定したところ、COX−1においては、ポジティブコントロールのindomethacinを含め、その他のサンプルでも阻害活性が認められなかった(表1および
図1)。このことは、COX−1阻害による副作用が無いことを意味する。COX−2については、棒グラフからも読み取れるように、100% initial activityと比較してprostaglandin の生成が抑えられており、強い酵素阻害活性が認められた(表2および
図2)。indomethacin をはじめとし、木酢の熱水・エタノール抽出物にも活性が認められた。
【0022】
以上より、木酢みかんの実・皮の抽出物は、人体に有害なCOX−2のみ阻害して炎症の原因となるプロスタグランジンの生成を抑制し、人体に有用なプロスタグランジンを産生するCOX−1は阻害しないことが判明した。
【0023】
今回の結果では、みかんの皮に比べて実の抽出物に強い活性が認められた。抽出方法による活性の違いはなかった。
【0024】
上述のようにして得られた木酢みかん抽出物を、本発明に係る育毛剤の有効成分として使用することができる。本発明の木酢みかん抽出物は、脱毛を抑制する作用、および/または発毛を促進する作用を示し、さらに、毛母細胞を含む毛根部の細胞のアポトーシスまたは細胞死を防ぎ得る。
【0025】
本発明の木酢みかん抽出物を、マウスの脱毛部分に塗布することで、発毛を促進することが確認できた(実施例3、
図3)。
【0026】
本発明に係る育毛剤は、医薬、医薬部外品または化粧料として使用することができる。また、上述の木酢みかん抽出物を、医薬、医薬部外品または化粧料の製造のために使用することもできる。
【0027】
さらに、本発明に係る育毛剤を医薬、医薬部外品または化粧料として利用する場合には、その取扱い説明書またはパッケージに、木酢みかん抽出物を含有し、育毛活性を有することを特徴とする旨を表示することができる。
【0028】
本発明に係る育毛剤を、医薬または医薬部外品として使用する場合には、剤形としては、特に限定されるものではないが、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤および懸濁剤等の内服剤、軟膏、水剤、エキス剤、ローション剤、ゲル剤、クリーム剤、湿布剤、塗布剤、経皮吸収剤、局所徐放剤および乳剤等の外用剤並びに注射剤が挙げられる。当該医薬または医薬部外品には、木酢みかん抽出物の他に、助剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、吸収促進剤および界面活性剤等の薬学的に許容される担体を任意に組合せて配合することができる。
【0029】
一方、本発明に係る育毛剤を化粧料として使用する場合には、剤形としては、特に限定されるものではないが、例えば、油中水型または水中油型の乳化化粧料、クリーム、ローション、ジェル、フォーム、エッセンス、ファンデーション、パック、スティックおよびパウダー等が挙げられる。当該化粧料には、木酢みかん抽出物の他に、化粧料成分として一般に使用されている油分、界面活性剤、紫外線吸収剤、アルコール類、キレート剤、pH調整剤、防腐剤、増粘剤、色素類、香料および各種皮膚栄養剤等を任意に組合せて配合することができる。
【0030】
また、本発明にかかる育毛剤は木酢みかん抽出物を有効成分として含有するが、その他の有効成分を含有していてもよい。有効成分としては、皮膚用および頭皮用有効成分であれば、特に限定されないが、例えば、細胞賦活剤、ビタミン類、ホルモン類、血管拡張剤、アミノ酸類、抗炎症剤、殺菌剤、角質溶解剤等を挙げることができる。これらは、単独、または、複数の有効成分を組み合わせて用いることができる。
【0031】
細胞賦活剤としては、ペンタデカン酸グリセリド、ヒノキチオール、フォルスコリン、トランス−3 ,4’−ジメチル−3−ヒドロキシフラバノン等が挙げられる。
【0032】
ビタミン類としては、酢酸トコフェロール等のトコフェロール類、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、パルミチン酸レチノール、β−カロチン、カルシフェロール、葉酸、ビオチン、D−パントテニルアルコール、アセチルパントテニルエチルエーテル、パントテン酸カルシウム、パントテニルエチルエーテル、アスコルビン酸等が挙げられる。
【0033】
ホルモン類としては、エストラジオール等が挙げられる。
【0034】
血管拡張剤としては、ミノキシジル、センブリ抽出液等が挙げられる。
【0035】
アミノ酸類としては、アルギニン、アスパラギン酸、メチオニン、セリン、グリシン、グルタミン酸、シスチン等が挙げられる。
【0036】
抗炎症剤としては、β−グリチルレチン酸、グリチルリチン酸類、塩酸ピリドキシン等、殺菌剤としては、イソプロピルメチルフェノール、ピロクトンオラミン等が挙げられる。
【0037】
有効成分としては、養育毛有効成分であるペンタデカン酸グリセリド、酢酸トコフェロール、ニコチン酸アミド、パントテニルアルコール、アセチルパントテニルエチルエーテル、ヒノキチオール、センブリ抽出液、β−グリチルレチン酸およびフォルスコリンから選ばれる1種または2種以上が好ましい。
【0038】
有効成分の含有率は、配合する有効成分の有効量であるが、通常、育毛剤組成物中0.01〜10質量%が好ましく、より好ましくは、0.1〜5質量%である。
【0039】
本発明に係る育毛剤を医薬、医薬部外品または化粧料として使用する場合、木酢みかん抽出物の配合量は、乾燥物として計算して、医薬、医薬部外品または化粧料の全組成の0.01〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.3〜10質量%である。
【0040】
本発明に係る育毛剤の育毛活性の評価は、以下のように行うことができる。育毛活性の評価方法としては、例えば、ヒト毛乳頭細胞および/若しくはヒトケラチノサイトまたは髭毛包器官培養を用いた方法が挙げられる。
【0041】
ヒト毛乳頭細胞および/またはヒトケラチノサイトを用いた方法では、先ず、ヒト毛乳頭細胞、ヒトケラチノサイトまたはこれらの混合培養物に、本発明に係る育毛剤を作用または接触させる。次いで、作用または接触させた細胞を培養し、培養後、ヒト毛乳頭細胞および/またはヒトケラチノサイトの増殖能を定量する。このようにして、定量したヒト毛乳頭細胞および/またはヒトケラチノサイトの増殖能が、陰性対照と比較して統計上有意差で増加した場合には、本発明に係る育毛剤は育毛活性を有すると判断することができる。特に、本発明に係る育毛剤を作用または接触させたヒト毛乳頭細胞および/またはヒトケラチノサイトの増殖能が、陰性対照と比較して1.2倍以上増加した場合には、本発明に係る育毛剤の育毛活性は良好であると判断することができる。
【0042】
一方、髭毛包器官培養を用いた方法では、先ず、単離した毛包に、本発明に係る育毛剤を作用または接触させる。次いで、作用または接触させた毛包を培養し、培養後、毛包の伸長を測定する。このようにして、測定した毛包の伸長率が、陰性対照と比較して統計上有意差で増加した場合には、本発明に係る育毛剤は育毛活性を有すると判断することができる。特に、本発明に係る育毛剤を作用または接触させた毛包の伸長率が、陰性対照と比較して1.2倍以上増加した場合には、本発明に係る育毛剤の育毛活性は良好であると判断することができる。
【0043】
in vivoにおける評価としては、例えば、マウスにコリン欠損食を摂食させ、脱毛させた後、脱毛部位に本発明の育毛剤を塗布し、コントロールに比較して統計的に有意に発毛量が増加した場合には、本発明に係る育毛剤の育毛活性が確認できたと判断することができる。
【0044】
以上に説明した本発明に係る育毛剤を、ヒトを含めた動物に適用することで、育毛を促進することができる。
【0045】
本発明の組成物は、ヒトの頭皮の脱毛予防および発毛促進に加え、動物の脱毛予防および発毛促進(例えば、ミンクなどの毛皮用動物の発毛、ペット動物の脱毛予防など)にも使用可能である。本発明の組成物は、特に、脱毛を生じた皮脂の過剰分泌がさらに続く条件下にあっても、発毛作用を示し得る。したがって、皮脂の過剰分泌とともに生じる脱毛の予防および治療のために特に有用である。
【0046】
本発明の組成物は、他の公知の発毛促進剤、育毛剤、養毛剤などと併用することも可能である。
【0047】
本発明の育毛用組成物には、育毛効果の点から、フキタンポポ抽出物、ベニバナ抽出物、タイソウ抽出物、クワ抽出物および紅茶抽出物から選ばれる1種または2種以上の植物抽出物を配合してもよい。これらの植物抽出物のなかでも、フキタンポポ抽出物、ベニバナ抽出物が好ましい。
【0048】
これらの植物抽出物は、市販品あるいは公知の方法によって得られたものを使用することができる。この場合、抽出に用いる溶媒としては、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール類等が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上混合溶媒として用いることができる。
【0049】
前記抽出工程における各種条件は、特に制限されるものではないが、通常、抽出原料と前記抽出溶媒との比率は、質量比で抽出原料:抽出溶媒=1:2〜1:50程度の範囲が好ましく、抽出温度としては、例えば、5〜80℃ の範囲で、1時間〜1週間、抽出溶媒に浸漬あるいは撹拌することによって行うと好適である。なお、抽出pHは、極端な酸性またはアルカリ性でなければ、特に制限はない。
【0050】
前記抽出溶媒が、水、エタノール、水/エタノール(含水エタノール)等の非毒性の溶媒である場合は、抽出物をそのまま用いてもよく、あるいは希釈液として用いてもよい。また、前記抽出物を濃縮エキスとしてもよく、凍結乾燥等により乾燥粉末物や、ペースト状に調製してもよい。なお、他の溶媒を用いた場合は、溶媒を留去後、乾燥分を非毒性の溶媒で希釈して用いることが望ましい。
【0051】
植物エキス(植物抽出物)の配合量は、特に制限されるものではないが、通常、育毛用剤組成物中(抽出エキスの場合、抽出物として)0.01〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%である。
【0052】
本発明の育毛用組成物には、上記必須成分の他に、その使用目的等に応じ、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分を配合することができる。そのような任意成分としては、例えば、水、アルコール、非イオン性界面活性剤、糖質系界面活性剤、その他の界面活性剤、セルロース類、油脂類、高分子樹脂、色剤、香料、紫外線吸収剤および角質溶解剤等を挙げることができる。
【0053】
界面活性剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油モノまたはイソステアレート、グリセリン脂肪酸エステル等、セルロース類としては、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等、油脂類としては、サフラワー油、月見草油、ホホバ油等、高分子樹脂としては、両性、カチオン性、アニオン性およびノニオン性ポリマー等、紫外線吸収剤としては、メトキシケイ皮酸オクチル(ネオヘリオパンA V ; Haamann & Reimer 社商品名)、オキシベンゾン、ウロカニン酸等、角質溶解剤としてはサリチル酸、レゾルシン等が挙げられる。
【0054】
本発明の育毛用組成物に香料を配合する場合、使用される香料の配合率は、育毛用組成物全量に対して、香料組成物が0.00001〜50質量%となるように配合することが好ましく、より好ましくは0.0001〜30質量%である。
【0055】
本発明の木酢みかん抽出物は毛髪化粧料、特に育毛剤として好適に使用できる。育毛用組成物は、常法に従って調製することができ、均一溶液、ローション、ジェル等の形態にすることができる。また、本発明の育毛用組成物は、エアゾールの形態をとることができ、その場合には、上記の成分以外に、n−プロピルアルコールまたはイソプロピルアルコール等の低級アルコール、プロパン、ブタン、イソブタン、液化石油ガスおよびジメチルエーテルから選ばれる可燃性ガス、窒素ガス、酸素ガス、炭酸ガスおよび亜酸化窒素ガスから選ばれる圧縮ガスを配合することができる。これらの配合により、保存安定性、特に低温保存安定性が向上する。可燃性ガス、 圧縮ガスはいずれか単独で、または2種以上を併用してもよく、可燃性ガスと圧縮ガスとを併用してもよい。
【0056】
この中でも、可燃性ガスとしては、液化石油ガス、ジメチルエーテルが好ましく、有効成分の低温溶解安定性の観点から、ジメチルエーテルが特に好ましい。可燃性ガスの配合量は、育毛用組成物中20〜50質量%が好ましく、より好ましくは30〜45質量%である。この範囲内で良好な低温安定性が得られる。圧縮ガスとしては、窒素ガスが好ましく用いられる。圧縮ガスの配合量は、育毛用組成物中0.01〜5質量%が好ましい。エアゾール剤の長期安定性と使用感の観点から、可燃性ガスと圧縮ガスとを併用することが好ましい。可燃性ガスと圧縮ガスとの配合質量比は、可燃性ガス/圧縮ガス=95/5〜99/1が好ましく、より好ましくは96/4〜98/2である。ジメチルエーテルと窒素ガスとを併用した場合、その質量比は、ジメチルエーテル/窒素ガス=95/5〜99/1が好ましく、より好ましくは96/4〜98/2である。
【0057】
エアゾール剤とした場合の内圧は0.3〜0.8MPaが好ましく、より好ましくは0.4〜0.7MPaである。内圧が0.3MPa未満であると、頭皮への当たり心地が弱く、使用実感が乏しい場合がある。内圧が0.8MPaを超えると、高圧ガスの長期保存の安全性上好ましくない。
【0058】
なお、内圧は、通常用いられるエアゾール圧力計を用いて測定することができる。エアゾールを所定の恒温水槽に浸漬し、時々上下に振とうしながら一定温度にした後、エアゾール圧力計のアタッチメントをバルブに直接押し当て、表示の停止を確認し、内圧とする。
【実施例】
【0059】
以下に実施例により、本発明を説明するが、本発明の範囲は、これら実施例により何ら制限されるものではない。
【0060】
(実施例1:木酢みかん抽出物の調製)
熱水抽出は、100グラムの木酢みかんの実または皮に対して100℃の熱水300mlを添加して、60分間攪拌することにより行った。得られた抽出物は、乾燥後、10mlの超純水に溶解して用いた。
エタノール抽出は、80%エタノールを用いて、24時間浸漬することにより行った。得られた抽出物は、乾燥後、10mlの10%エタノール水溶液に溶解して以下の実験に用いた。
【0061】
(実施例2:COX−1およびCOX−2阻害活性測定)
実施例1で調製した木酢みかん抽出物を用いて以下の実験に供した。COX−1阻害活性の測定は、Cayman chemical社のCOX(ovine)inhibitor Screening Assay Kit Item No.560101を用いて行った。検量線を常法により作成し、阻害活性をプロスタグランジン濃度で表した。
【0062】
表1および
図1に示すように、COX−1に対しては、木酢みかん抽出物は、実の熱水抽出物を除き、酵素阻害活性は弱かった。実の熱水抽出物については、57.8%の阻害活性を示した。
図1および
図2の横軸は、表1および表2の左端のカラムの上からのサンプルの順序に対応している。
【0063】
【表1】
【0064】
COX−2に対しては、木酢みかん抽出物は、実、皮由来抽出物とも阻害活性を示した。特に実の熱水抽出物、実の80%エタノール抽出物が高い阻害活性を示した(表2および
図2)。
【0065】
【表2】
【0066】
(実施例3:発毛試験)
マウスは特定病原体未感染条件下において飼育した。飼育方法は、所属機関動物実験倫理委員会もしくは米国農務省(USDA)の「the Guide for the Care and Use of Laboratory Animals」のガイドラインに沿って許可されたプロトコルに従った。
【0067】
6〜8週齢の体重18〜20gのC57BL6/Jマウス(日本クレアより購入)を飼育した。
【0068】
すべてのマウスは、1週間の訓化飼育を行った。
【0069】
使用するマウスは1群8匹として、コントロールを含めて群を設けた。
【0070】
その後、試験開始日から、マウスに低蛋白高脂肪のコリン欠乏食を自由に摂食させた。このコリン欠乏食の組成(単位は質量%)を、表3に示す。
【0071】
【表3】
【0072】
試験開始から4週間で、背中から頭部にかけて脱毛が進んだ。なお、この4週間はマウスの体毛の状態を1日1回観察した。
【0073】
この4週目からコリン欠乏食を通常の飼料「SE-2(日本クレア;成分は表4および表4参照)」に変えた。これと同時に、マクロゴール軟膏(丸石製薬株式会社)(コントロール群)および木酢エキス(実の熱水抽出物)を2%含むマクロゴール軟膏(木酢エキス群)を2mg/cm
2となるように皮膚に塗布した。
【0074】
【表4】
【0075】
【表5】
【0076】
この後2週間後に電動バリカンを用いて、発毛した毛量だけを測定して、比較した。その結果、木酢エキス群はコントロール群に比べて発毛量が4割程度増加していた。この差はスチューデントt検定で5%有意であった(
図3)。