特許第6586812号(P6586812)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6586812
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】石炭火力発電設備
(51)【国際特許分類】
   F23J 15/00 20060101AFI20191001BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20191001BHJP
   B01D 46/00 20060101ALI20191001BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
   F23J15/00 AZAB
   B01D53/86 222
   B01D46/00 302
   B01D39/20 D
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-152878(P2015-152878)
(22)【出願日】2015年7月31日
(65)【公開番号】特開2017-32212(P2017-32212A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年6月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】吉河 敏和
(72)【発明者】
【氏名】引野 健治
(72)【発明者】
【氏名】盛田 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】清永 英嗣
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−074770(JP,A)
【文献】 特開2003−080035(JP,A)
【文献】 特開2007−230859(JP,A)
【文献】 実開昭64−039819(JP,U)
【文献】 実開昭58−006718(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23J 15/00
B01D 39/20
B01D 46/00
B01D 53/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭を粉砕して微粉炭を製造する微粉炭機と、
前記微粉炭機において製造された微粉炭を燃焼させる燃焼ボイラと、
前記燃焼ボイラの下流側に配置され該燃焼ボイラにおいて微粉炭が燃焼されて発生した排ガス中に含まれる窒素酸化物を除去する脱硝装置と、を備える石炭火力発電設備であって、
前記脱硝装置は、長手方向に延びる複数の排ガス流通穴が形成されたハニカム構造体、及び前記ハニカム構造体に担持された脱硝触媒を含む複数のハニカム触媒を有する脱硝触媒層と、
前記脱硝触媒層の上流側に配置され、長手方向に延びる複数の排ガス流通穴が形成された複数のハニカム構造体を有する微粒子吸着層と、を備え、
前記微粒子吸着層の排ガス流路方向の長さは、前記脱硝触媒層の排ガス流路方向の長さの半分以下であり、
前記微粒子吸着層は、前記脱硝触媒層に導入される排ガスを整流する整流層として機能する石炭火力発電設備。
【請求項2】
前記脱硝触媒層を構成するハニカム構造体は、多孔質材料からなり、
前記微粒子吸着層を構成するハニカム構造体は、前記多孔質材料と同一の多孔質材料からなる請求項1に記載の石炭火力発電設備。
【請求項3】
前記多孔質材料は、セラミック材料である請求項2に記載の石炭火力発電設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭火力発電設備に関する。より詳しくは、脱硝装置を構成する脱硝触媒の劣化を抑制できる石炭火力発電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭火力発電所では、石炭の燃焼に伴い窒素酸化物が発生するが、大気汚染防止法等により、窒素酸化物の排出は一定水準以下に抑えることが必要となっている。そこで発電所では、窒素酸化物を還元分解するために脱硝装置を設置している。この脱硝装置には、五酸化バナジウム等の活性成分を含む脱硝触媒が配置されており、ここにアンモニアを共存させることで、高温下の還元反応により脱硝を実現している。
【0003】
この脱硝触媒は、一般に300℃〜400℃の高温雰囲気下で効率的に作動するため、ボイラにおいて石炭を燃焼させた直後の煤塵が非常に多く含まれた排ガスを脱硝させる必要がある。脱硝装置の性能を維持するために、活性が低下した触媒は、新品の触媒に取替えたり、再生したりする必要がある
【0004】
例えば、下記の特許文献1には、脱硝触媒が複数段充填された排煙脱硝装置の脱硝触媒の交換方法であって、最上流側に位置する第1段目の脱硝触媒を取出す触媒取出し工程と、第2段目以降の全ての脱硝触媒を順次、1段上流側に移動させる触媒移動工程と、触媒移動工程により移動して空となった最下流段に新たな脱硝触媒を補充する触媒補充工程と、を含む脱硝触媒の交換方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−052335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、そもそも、どのタイミングで脱硝触媒の取替えや再生を行うかについて、従来は知見がない。このため、現地での排ガス測定や実際に触媒サンプルを採取して触媒性能試験等を実施し、脱硝率の低下を測定しているのが現状である。石炭火力発電所の操業における脱硝触媒の機能の低下は長期間に亘って徐々に進行するものであるから、この劣化メカニズムを明らかにすることは、劣化予測や劣化抑制対策を講じる上で極めて重要である。
【0007】
本発明者らは、脱硝触媒の劣化メカニズムにつき鋭意検討した結果、従来の石炭灰の粒径である数十μm以上百μm以下程度の範囲に比べて遥かに小さい粒径の堆積物が脱硝触媒の表面を被覆して被覆層を形成し、それによって、脱硝触媒と排ガスの接触が阻害され脱硝触媒の性能が低下していることを見出した。
【0008】
従って、本発明は、微小な粒径の堆積物が脱硝触媒の表面を被覆することを防ぐことで脱硝触媒の劣化を抑制できる石炭火力発電設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、石炭を粉砕して微粉炭を製造する微粉炭製造装置と、前記微粉炭製造装置において製造された微粉炭を燃焼させる燃焼ボイラと、前記燃焼ボイラの下流側に配置され該燃焼ボイラにおいて微粉炭が燃焼されて発生した排ガス中に含まれる窒素酸化物を除去する脱硝装置と、を備える石炭火力発電設備であって、前記脱硝装置は、長手方向に延びる複数の排ガス流通穴が形成されたハニカム構造体、及び前記ハニカム構造体に担持された脱硝触媒を含む複数のハニカム触媒を有する脱硝触媒層と、前記脱硝触媒層の上流側に配置され、長手方向に延びる複数の排ガス流通穴が形成された複数のハニカム構造体を有する微粒子吸着層と、を備える石炭火力発電設備に関する。
【0010】
また、前記脱硝触媒層に含まれるハニカム構造体は、多孔質材料からなり、前記微粒子吸着層に含まれるハニカム構造体は、前記多孔質材料と同一の多孔質材料からなることが好ましい。
【0011】
また、前記多孔質材料は、セラミック材料であることが好ましい。
【0012】
また、前記微粒子吸着層は、前記脱硝触媒層よりも排ガス流路方向の長さが短いことが好ましい。
【0013】
また、前記微粒子吸着層は、前記脱硝触媒層に導入される排ガスを整流する整流層であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、微小な粒径の堆積物が脱硝触媒の表面を被覆することを防ぐことで脱硝触媒の劣化を抑制できる石炭火力発電設備を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る石炭火力発電設備の構成を示す図である。
図2図1に示す燃焼ボイラの付近を拡大して示す図である。
図3図1に示す脱硝装置の付近を拡大して示す図である。
図4】脱硝装置を構成する脱硝触媒層及び微粒子吸着層の構造を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の石炭火力発電設備の好ましい一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
本実施形態の石炭火力発電設備1は、図1に示すように、石炭バンカ20と、給炭機25と、微粉炭機30と、燃焼ボイラ40と、燃焼ボイラ40の下流側に設けられた排気通路50と、この排気通路50に設けられた脱硝装置60、空気予熱器70、電気集塵装置90、ガスヒータ(熱回収用)80、誘引通風機210、脱硫装置220、ガスヒータ(再加熱用)230、脱硫通風機240、及び煙突250と、を備える。
【0017】
石炭バンカ20は、石炭サイロ(図示しない)から運炭設備によって供給された石炭を貯蔵する。給炭機25は、石炭バンカ20から供給された石炭を所定の供給スピードで微粉炭機30に供給する。
微粉炭機30は、給炭機25から供給された石炭を粉砕して微粉炭を製造する。微粉炭機30においては、石炭は、平均粒径60μm〜80μmに粉砕される。また、微粉炭の粒度分布は、150μm以上が10〜15%、75μm〜150μmが30〜40%、75μm未満が45〜60%程度となる。
微粉炭機30としては、ローラミル、チューブミル、ボールミル、ビータミル、インペラーミル等が用いられる。
【0018】
燃焼ボイラ40は、微粉炭機30から供給された微粉炭を、強制的に供給された空気と共に燃焼する。微粉炭を燃焼することによりクリンカアッシュ及びフライアッシュ等の石炭灰が生成されると共に、排ガスが発生する。
尚、クリンカアッシュとは、微粉炭を燃焼させた場合に発生する石炭灰のうち、燃焼ボイラ40の底部に落下した塊状の石炭灰をいう。また、フライアッシュとは、微粉炭を燃焼させた場合に発生する石炭灰のうち、燃焼ガス(排ガス)と共に吹き上げられて排気通路50側に流通する程度の粒径(粒径200μm程度以下)の球状の石炭灰をいう。
【0019】
図2を参照して、燃焼ボイラ40について詳しく説明すると、図2において、燃焼ボイラ40は全体として略逆U字状をなしており、図中矢印に沿って排ガス(燃焼ガス)が逆U字状に移動した後、2次節炭器41eを通過後に、再度小さくU字状に反転する。
【0020】
燃焼ボイラ40の下方には、燃焼ボイラ40の内部のバーナーゾーン41a’付近で微粉炭を燃焼するためのバーナ41aが配置されている。また、燃焼ボイラ40の内部のU字頂部付近には、第一の過熱器41bが配置されており、更にそこから第二の過熱器41cが続いて配置されている。更に、第二の過熱器41cの終端付近からは、1次節炭器41d、2次節炭器41eが2段階に設けられている。ここで、節炭器(ECOとも呼ばれる)は、排ガスの保有する熱を利用してボイラ給水を予熱するために設けられた伝熱面群である。
【0021】
以上の燃焼ボイラ40によれば、バーナーゾーン41a’において微粉炭が燃焼される。微粉炭の燃焼温度は、1300℃から1500℃に及び、燃焼によって生成される石炭灰は、矢印の方向に沿って上昇して排ガスと共に第一の過熱器41b、第二の過熱器41c、1次節炭器41d、及び2次節炭器41eを順次通過する。燃焼ガスは、ボイラ給水を予熱するために設けられた伝熱面群を通過することによって熱交換され、450℃〜500℃程度に温度が低下する。排ガスがバーナーゾーン41a’から節炭器付近まで到達するまでに要する時間は、おおむね5秒から10秒である。
【0022】
排気通路50は、燃焼ボイラ40の下流側に配置され、燃焼ボイラ40で発生した排ガス及び生成された石炭灰を流通させる。この排気通路50には、上述のように、脱硝装置60、空気予熱器70、ガスヒータ(熱回収用)80、電気集塵装置90、誘引通風機210、脱硫装置220と、ガスヒータ(再加熱用)230、脱硫通風機240、及び煙突250が配置される。
【0023】
脱硝装置60は、排ガス中の窒素酸化物を除去する。本実施形態では、脱硝装置60は、比較的高温(300℃〜400℃)の排ガス中に還元剤としてアンモニアガスを注入し、脱硝触媒との作用により排ガス中の窒素酸化物を無害な窒素と水蒸気に分解する、いわゆる乾式アンモニア接触還元法により排ガス中の窒素酸化物を除去する。
【0024】
脱硝装置60は、図3に示すように、脱硝反応器61と、この脱硝反応器61の内部に配置される複数段の脱硝触媒層62,62,62と、脱硝触媒層62の上流側に配置される微粒子吸着層63と、脱硝反応器61の入口付近に配置される整流板64と、脱硝反応器61の上流側に配置されるアンモニア注入部65と、を備える。
【0025】
脱硝反応器61は、脱硝装置60における脱硝反応の場となる。
脱硝触媒層62は、脱硝反応器61の内部に、排ガスの流路に沿って所定間隔をあけて複数段(本実施形態では3段)配置される。
【0026】
脱硝触媒層62は、図4に示すように、脱硝触媒としての複数のハニカム触媒622を含んで構成される。より詳細には、脱硝触媒層62は、複数のケーシング621と、これら複数のケーシング621に収容される複数のハニカム触媒622と、シール部材623と、を備える。
【0027】
ケーシング621は、一端及び他端が開放された角筒状の金属部材により構成される。ケーシング621は、開放された一端及び他端が脱硝反応器61における排ガスの流路に向かい合うように、つまり、ケーシング621の内部を排ガスが流通するように配置される。また、複数のケーシング621は、脱硝反応器61における排ガスの流路を塞ぐように当接した状態で連結されて配置される。
【0028】
ハニカム触媒622は、長手方向に延びる複数の排ガス流通穴624が形成された長尺状(直方体状)に形成される。複数のハニカム触媒622は、排ガス流通穴624の延びる方向が排ガスの流路に沿うように配置される。本実施形態では、複数のハニカム触媒622は、ケーシング621に収容された状態で脱硝反応器61の内部に配置される。
【0029】
本実施形態では、ハニカム触媒622は、多孔質材料により構成されるハニカム構造体と、このハニカム構造体に担持される触媒物質と、を備える。
ハニカム構造体は、酸化チタンや酸化ジルコニウム等の耐熱性、耐食性を有するセラミック材料を押出成形した後、所定の温度で加熱することにより形成される。
【0030】
触媒物質は、ハニカム構造体に担持された状態で、排ガス中に含まれる窒素酸化物の還元反応を促進させる。触媒物質としては、バナジウムやタングステン等を用いることができる。
本実施形態では、ハニカム触媒622は、触媒物質をセラミック材料に練り合わせた後、押出成形し、更に加熱することにより形成される。
【0031】
シール部材623は、短手方向に隣り合って配置されるハニカム触媒622の間に配置され、隣り合って配置されるハニカム触媒622の間の隙間に排ガスが流入することを防ぐ。ハニカム触媒622の長手方向の一端側及び他端側の所定の長さの部分(例えば、端部から150mm)に巻きつけられている。シール部材623としては、アルミナやシリカを主成分とした無機繊維及びバインダを混合して構成したセラミックペーパを用いることができる。
【0032】
以上の脱硝触媒層62において、ハニカム触媒622としては、例えば、150mm×150mm×860mmの直方体形状で目開き6mm×6mmの排ガス流通穴が400個(20×20)形成されたものが用いられる。また、ケーシング621としては、このハニカム触媒622を72本(縦6本×横12本)収容可能なものが用いられる。そして、一層の脱硝触媒層62には、このケーシング621が120〜150個用いられる。即ち、一層の脱硝触媒層62には、9000本から10000本のハニカム触媒622が設置される。
【0033】
微粒子吸着層63は、脱硝触媒層62の上流側に配置される。微粒子吸着層63は、ハニカム構造体632を含んで構成される。より詳細には、微粒子吸着層63は、複数のケーシング631と、これら複数のケーシング631に収容される複数のハニカム構造体632と、シール部材633と、を備える。
【0034】
ケーシング631は、ケーシング621同様、一端及び他端が開放された角筒状の金属部材により構成される。ケーシング631は、開放された一端及び他端が脱硝反応器61における排ガスの流路に向かい合うように、つまり、ケーシング631の内部を排ガスが流通するように配置される。また、複数のケーシング631は、脱硝反応器61における排ガスの流路を塞ぐように当接した状態で連結されて配置される。
【0035】
本実施形態では、ケーシング631の排ガス流路方向の長さL2は、ケーシング621の排ガス流路方向の長さL1よりも短い。従って微粒子吸着層63の排ガス流路方向の長さは脱硝触媒層62の排ガス流路方向の長さよりも短い。かかる構成によりハニカム構造体632の製造コストを抑えつつ、かつ十分な微粒子吸着効果が得られる。
【0036】
ハニカム構造体632は、ハニカム触媒622同様、長手方向に延びる複数の排ガス流通穴634が形成された長尺状(直方体状)に形成される。複数のハニカム構造体632は、排ガス流通穴634の延びる方向が排ガスの流路に沿うように配置される。本実施形態では、複数のハニカム構造体632は、ケーシング631に収容された状態で脱硝反応器61の内部に配置される。
本実施形態では、ハニカム構造体632はハニカム触媒622に用いられるものと同一の多孔質材料を押出成形することで形成される。多孔質材料としては、酸化チタンや酸化ジルコニウム等の耐熱性、耐食性を有するセラミック材料が用いられる。
なお、ハニカム構造体632に用いられる多孔質材料は、帯電性を有するものであってもよい。ハニカム構造体632が帯電性を有することで、より好ましい微粒子吸着効果が得られる。即ち、脱硝触媒層62を構成する多孔質材料と、微粒子吸着層63を構成する多孔質材料とは、異なっていてもよい。
【0037】
本実施形態では、ハニカム構造体632はハニカム触媒622とは異なり、触媒物質が担持されずに構成される。かかる構成によりハニカム構造体632の製造コストを抑えつつ、かつ十分な微粒子吸着効果が得られる。
【0038】
本実施形態では、微粒子吸着層63は脱硝反応器61における排ガスの流路を区画する。微粒子吸着層63は、排気通路50を流通し脱硝反応器61に導入される排ガスを整流して脱硝触媒層62に均等に導く。
【0039】
整流板64は、脱硝反応器61の入口の近傍における微粒子吸着層63よりも上流側に配置される。より具体的には、整流板64は、脱硝反応器61又は排気通路50の内壁における屈曲部分に配置され、内壁から内面側に突出する。整流板64は、排気通路50又は脱硝反応器61における屈曲部分における排ガスの流れを整える。
【0040】
アンモニア注入部65は、脱硝反応器61の上流側に配置され、排気通路50にアンモニアを注入する。
【0041】
以上の脱硝装置60によれば、まず、アンモニア注入部65において、排気通路50を流通する高温の排ガス(300℃〜400℃)にアンモニアが注入される。アンモニアが注入された排ガスは、整流板64により整流された状態で、微粒子吸着層63を通過して、脱硝触媒層62に導入される。
【0042】
脱硝触媒層62においては、アンモニアを含む排ガスがハニカム触媒622の排ガス流通穴624を通過するときに、以下の化学反応式に従って、窒素酸化物とアンモニアとが反応し、無害な窒素と水蒸気に分解される。
4NO+4NH+O→4N+6H
NO+NO+2NH→2N+3H
【0043】
ところで、脱硝触媒は、使用により劣化し脱硝率が低下する。脱硝触媒の劣化の原因としては、シンタリング等の熱的劣化、触媒成分の被毒による化学的劣化、及び石炭灰が触媒表面を被覆することによる物理的劣化等が挙げられる。本発明者らは、今般、石炭灰の平均的な粒径である数十μm以上百μm以下程度の範囲に比べて遥かに小さい粒径(1μm以下、より詳細には数十nm程度)の石炭灰に起因する堆積物が脱硝触媒の表面を被覆して被覆層を形成し、それによって、脱硝触媒の閉塞が生じていることを見出した。このような微小な粒径の石炭灰は含有量が少ないため、これまで脱硝触媒の劣化の原因とは考えられていなかった。
【0044】
上記被覆層の形成による脱硝触媒の劣化の進行は各触媒層において一様ではなく、最も劣化の進行が速いのは排ガスが最初に通過する第1層目の触媒層である。第1層目の触媒層は、排ガスが触媒層に流入する際の偏流の影響を受けやすく、その影響により上記微小な粒径の石炭灰が堆積しやすいため、劣化の進行が速いと考えられる。
ここで、本実施形態においては、脱硝触媒層62の上流側に微粒子吸着層63が配置される。また、微粒子吸着層63に含まれるハニカム構造体632は、脱硝触媒層62に含まれるハニカム触媒622に用いられるものと同一の多孔質材料により形成される。更にハニカム構造体632は、ハニカム触媒622の排ガス流通穴624と同一形状の排ガス流通穴634を有する。従って、第1層目の脱硝触媒層62のハニカム触媒622上に本来形成される被覆層が微粒子吸着層63のハニカム構造体632上に代わりに形成されることで、ハニカム触媒622の劣化を抑制できる。また、排ガスが脱硝触媒層62に達する時点では、排ガスはハニカム触媒622と同様の構造を有するハニカム構造体632により整流されているため、偏流によるハニカム触媒622の劣化を抑制できる。またハニカム構造体632には触媒が担持されていないため、ハニカム構造体632の製造にかかるコストを抑える事ができる。
【0045】
更に、上記被覆層は、脱硝触媒の入り口側により厚く形成され、脱硝触媒の出口側に向かうにつれその厚さは薄くなることが明らかとなっている。脱硝触媒の入り口側は、排ガスが触媒層に流入する際の偏流の影響を受けやすく、その影響により上記微小な粒径の石炭灰が堆積しやすいことが原因と考えられる。
ここで、本実施形態においてはケーシング631の排ガス流路方向の長さL2は、ケーシング621の排ガス流路方向の長さL1よりも短いため、ハニカム構造体632の製造にかかるコストを抑える事ができる。また、上記被覆層は、脱硝触媒の入り口側により厚く形成されるので、上記ケーシング631の排ガス流路方向の長さL2がケーシング621の排ガス流路方向の長さL1よりも短くとも、十分なハニカム触媒622の劣化を抑制する効果が得られる。
【0046】
空気予熱器70は、排気通路50における脱硝装置60の下流側に配置される。空気予熱器70は、脱硝装置60を通過した排ガスと押込式通風機75から送り込まれる燃焼用空気とを熱交換させ、排ガスを冷却すると共に、燃焼用空気を加熱する。
【0047】
ガスヒータ80は、排気通路50における空気予熱器70の下流側に配置される。ガスヒータ80には、空気予熱器70において熱回収された排ガスが供給される。ガスヒータ80は、排ガスから更に熱回収する。
【0048】
電気集塵装置90は、排気通路50におけるガスヒータ80の下流側に配置される。電気集塵装置90には、ガスヒータ80において熱回収された排ガスが供給される。電気集塵装置90は、電極に電圧を印加することによって排ガス中の石炭灰(フライアッシュ)を収集する装置である。電気集塵装置90において捕集されるフライアッシュは、フライアッシュ回収装置120に回収される。
【0049】
誘引通風機210は、排気通路50における電気集塵装置90の下流側に配置される。誘引通風機210は、電気集塵装置90においてフライアッシュが除去された排ガスを、一次側から取り込んで二次側に送り出す。
【0050】
脱硫装置220は、排気通路50における誘引通風機210の下流側に配置される。脱硫装置220には、誘引通風機210から送り出された排ガスが供給される。脱硫装置220は、排ガスに石灰石と水との混合液を吹き付けることにより、排ガスに含有されている硫黄酸化物を混合液に吸収させて脱硫石膏スラリーを生成させ、この脱硫石膏スラリーを脱水処理することで脱硫石膏を生成する。脱硫装置220において生成された脱硫石膏は、この装置に接続された脱硫石膏回収装置222に回収される。
【0051】
ガスヒータ230は、排気通路50における脱硫装置220の下流側に配置される。ガスヒータ230には、脱硫装置220において硫黄酸化物が除去された排ガスが供給される。ガスヒータ230は、排ガスを加熱する。ガスヒータ80及びガスヒータ230は、排気通路50における、空気予熱器70と電気集塵装置90との間を流通する排ガスと、脱硫装置220と脱硫通風機240との間を流通する排ガスと、の間で熱交換を行うガスガスヒータとして構成してもよい。
【0052】
脱硫通風機240は、排気通路50におけるガスヒータ230の下流側に配置される。脱硫通風機240は、ガスヒータ230において加熱された排ガスを一次側から取り込んで二次側に送り出す。
煙突250は、排気通路50における脱硫通風機240の下流側に配置される。煙突250には、ガスヒータ230で加熱された排ガスが導入される。煙突250は、排ガスを排出する。
【0053】
以上説明した本実施形態の石炭火力発電設備1によれば、以下のような効果を奏する。
【0054】
(1)石炭火力発電設備1における脱硝装置60を、長手方向に延びる複数の排ガス流通穴が形成されたハニカム構造体、及び前記ハニカム構造体に担持された脱硝触媒を含む複数のハニカム触媒622を有する脱硝触媒層62の上流側に配置され、長手方向に延びる複数の排ガス流通穴が形成された複数のハニカム構造体632を有する微粒子吸着層63を含んで構成した。これにより、石炭灰を含む排ガスがハニカム触媒622を通過する前にハニカム構造体632を通過し微小な石炭灰に起因する被覆層を形成することで、下流側に配置されたハニカム触媒622の劣化を抑制できる。またハニカム構造体632には触媒物質が担持されていないため、ハニカム構造体632の製造にかかるコストを抑えつつ、かつハニカム触媒622の劣化を抑制する十分な効果が得られる。
【0055】
(2)ハニカム触媒622において触媒物質が担持されるハニカム構造体を多孔質材料により構成し、ハニカム構造体632を同一の多孔質材料により構成した。これにより、ハニカム触媒622上に本来堆積する被覆層が確実にハニカム構造体632上に堆積するため、ハニカム触媒622の劣化を抑制できる。
【0056】
(3)ハニカム触媒622において触媒物質が担持されるハニカム構造体をセラミック材料により構成し、ハニカム構造体632を同一のセラミック材料により構成した。これにより、ハニカム構造体632はハニカム触媒622同様、良好な耐熱性、耐食性を有し長期間にわたって使用できる。
【0057】
(4)微粒子吸着層63の排ガス流路方向の長さを、脱硝触媒層62の排ガス流路方向の長さよりも短く構成した。これにより、ハニカム構造体632の製造にかかるコストを抑えつつ、かつハニカム触媒622の劣化を抑制する十分な効果が得られる。
【0058】
(5)微粒子吸着層63を、前記脱硝触媒層に導入される排ガスを整流する整流層として構成した。これにより、微粒子吸着層63は脱硝触媒層62に流入する排ガスを整流し、ハニカム触媒622の劣化を抑制できる。
【0059】
以上、本発明の石炭火力発電設備1の好ましい各実施形態につき説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 石炭火力発電設備
30 微粉炭機
40 燃焼ボイラ
60 脱硝装置
62 脱硝触媒層
63 微粒子吸着層
622 ハニカム触媒
624 排ガス流通穴
632 ハニカム構造体
634 排ガス流通穴
図1
図2
図3
図4