(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6586827
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】紫外線処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20191001BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
H01L21/30 572A
H01L21/30 502D
B29C59/02 B
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-170002(P2015-170002)
(22)【出願日】2015年8月31日
(65)【公開番号】特開2017-50300(P2017-50300A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2018年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100092200
【弁理士】
【氏名又は名称】大城 重信
(74)【代理人】
【識別番号】100110515
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 益男
(74)【代理人】
【識別番号】100189083
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100078754
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 正彦
(72)【発明者】
【氏名】吉原 啓太
(72)【発明者】
【氏名】和佐本 真
(72)【発明者】
【氏名】石原 肇
【審査官】
今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−155160(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/037573(WO,A1)
【文献】
特開2012−176339(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0116335(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30、21/302、21/461
G03F 1/00−1/86、7/26−7/42
B29C 53/00−53/84、57/00−59/18
B08B 1/00−1/04、5/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線を放射する紫外線ランプと、
基本的に矩形の平面領域を有する平面部材と、
この平面部材に設けられた、前記平面領域の一辺およびこれに連続する二辺に沿って、当該平面領域より突出した状態で伸びる平板部分と、
前記平板部分の表面との間に間隙が形成される状態に平板状の被処理物を保持する保持部材と、
前記平面部材の前記平面領域に、前記平面領域の前記一辺に沿って設けられた処理ガス供給口と、
前記平面領域の前記一辺と対向する他辺に、前記被処理物が載置されることにより形成される処理ガス排出口と、
前記平面部材の前記平面領域における前記処理ガス供給口よりも他辺側であって、前記処理ガス排出口との間に設けられた、前記紫外線ランプからの紫外線を照射する紫外線照射窓とを有することを特徴とする紫外線処理装置。
【請求項2】
前記処理ガス排出口は、前記平面領域の前記一辺と対向する他辺側が開放されることにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の紫外線処理装置。
【請求項3】
前記平板部分の表面と被処理物との間に形成される間隙の大きさが、0.1〜3mmの範囲であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の紫外線処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノインプリント用テンプレートの表面を光洗浄処理するための紫外線処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ナノインプリント用テンプレートの表面に付着したレジスト残渣を除去するための光洗浄装置として、
図5に示されるように、両側面の各々における上縁部65aに沿ってガスが流通される矩形の筒状のガス流路部材65が設けられた筺体60を有する構成の光洗浄装置が提案されている(特許文献1参照。)。
【0003】
ナノインプリント用テンプレートの光洗浄処理には、波長の短い紫外線、例えばキセノンのエキシマ発光である波長172nmの紫外線が用いられている。このような波長の短い紫外線は空気に吸収されやすいという特性を有するので、洗浄能力および洗浄効率を向上させるためには、紫外線を照射する紫外線照射窓61とテンプレートとの距離を小さくする必要がある。
【0004】
しかしながら、上記のような上縁部65aに沿ってガス流路部材65が設けられている構成の光洗浄装置においては、当該ガス流路部材65に設けられるガス供給口をある程度以上には小さくすることができないので、紫外線照射窓とテンプレートとの距離を小さくすることが困難である、という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−155160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
紫外線照射窓とテンプレートとの距離を小さくするためには、例えば紫外線照射窓とガス供給口とを同一平面上に設ける構成とすることが考えられる。
しかしながら、このような構成の光洗浄装置では、紫外線照射窓とテンプレートとの間に形成される被処理空間において処理ガスを平面的に高い均一性で拡散させることが難しい、という問題が生じる。
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、紫外線照射窓と被処理物との間の距離を小さくすることができ、しかも、処理ガスを紫外線照射窓と被処理物との間に形成される被処理空間において平面的に高い均一性で拡散して流通させることができる紫外線処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の紫外線処理装置は、紫外線を放射する紫外線ランプと、
基本的に矩形の平面領域を有する平面部材と、
この平面部材に設けられた、前記平面領域の一辺およびこれに連続する二辺に沿って、当該平面領域より突出した状態で伸びる平板部分と、
前記平板部分の表面との間に間隙が形成される状態に平板状の被処理物を保持する保持部材と、
前記平面部材の前記平面領域に、前記平面領域の前記一辺に沿って設けられた処理ガス供給口と、
前記平面領域の前記一辺と対向する他辺に、前記被処理物が載置されることにより形成される処理ガス排出口と、
前記平面部材の前記平面領域における前記処理ガス供給口よりも他辺側であって、前記処理ガス排出口との間に設けられた、前記紫外線ランプからの紫外線を照射する紫外線照射窓とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明の紫外線処理装置においては、前記処理ガス排出口は、前記平面領域の前記一辺と対向する他辺
側が開放されることにより形成されている構成とすることができる。
【0010】
本発明の紫外線処理装置においては、前記平板部分の表面と被処理物との間に形成される間隙の大きさが、0.1〜3mmの範囲であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の紫外線処理装置は、紫外線照射窓およびガス供給口が同一の平面領域上に設けられ、しかも、当該平面領域の三方が平板部分によって囲われると共に、残る一方に処理ガス排出口が形成される構成とされている。従って、紫外線照射窓と被処理物との間の距離を極めて小さくすることができ、しかも、処理ガスを紫外線照射窓と被処理物との間に形成される被処理空間において平面的に高い均一性で拡散して流通させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の紫外線処理装置の一例における構成を示す平面図である。
【
図2】
図1に示す紫外線処理装置において被処理物が載置された状態を示す平面図である。
【
図3】
図1に示す紫外線処理装置のA−A線断面を、被処理物が載置された状態で示す断面図である。
【
図4】
図1に示す紫外線処理装置のB−B線断面を、被処理物が載置された状態で示す断面図である。
【
図5】従来の紫外線処理装置の一例における構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の紫外線処理装置の一例における構成を示す平面図、
図2は、
図1に示す紫外線処理装置において被処理物が載置された状態を示す平面図、
図3は、
図1に示す紫外線処理装置のA−A線断面を、被処理物が載置された状態で示す断面図、
図4は、
図1に示す紫外線処理装置のB−B線断面を、被処理物が載置された状態で示す断面図である。
この紫外線処理装置は、例えばナノインプリント用テンプレートを被処理物としてこれの表面を光洗浄処理するために用いられるものである。
【0014】
この紫外線処理装置においては、基本的に矩形の平面領域12を有する平面部材10の当該平面領域12に、紫外線照射窓11および処理ガス供給口15が共に設けられている。そして、平面部材10には、平面領域12の一辺(
図1における左辺)12xおよびこれに連続する二辺(
図1における上辺および下辺)12y,12zに沿って、当該平面領域12より突出した状態で伸びる平面視においてコの字形状の平板部分14が設けられている。具体的には、平面領域12の一辺12xから連続して伸びる縦土手部分14Xと、当該一辺12xに連続する二辺12yおよび12zからそれぞれ連続して伸びる横土手部分14Y,14Zとを有し、これらが一体的に連続されることによりコの字形状が形成されている。さらに、平面部材10における平面領域12の一辺12xと対向する他辺(
図1における右辺)12vは、被処理物Wが載置されることにより平面領域12の上部(
図4において上部)が塞がれて処理ガス排出口20が形成されるよう、閉塞されずに開放されている。
【0015】
平面部材10の四隅には、平板状の被処理物Wが載置されたときに平板部分14の表面との間に間隙が形成される状態に、当該被処理物Wを保持する保持部材13がそれぞれ形成されている。
なお、本実施例では、平面部材10の四隅に保持部材13が設けられた構造を示しているが、保持部材13を使用せずに、被処理物Wの裏面を吸着部材で吸着して保持して、平板部分14の表面と被処理物Wとの間に間隙が形成されるよう構成してもよい。
要は、被処理物Wと平板部分14の表面との間に間隙を形成するように、被処理物Wを保持する機構であれば、どのような機構であれ、それは、本願発明の保持部材に相当するものである。
【0016】
処理ガス供給口15は、平面領域12の一辺12xに沿って設けられており、例えば複数個のガス供給孔(
図1においては3個)が当該一辺12xに沿って並んだ構成とされている。
【0017】
平面部材10の平面領域12における処理ガス供給口15よりも他辺12v側、すなわち、処理ガス供給口15および他辺12vに形成される処理ガス排出口20との間には、紫外線照射窓11が設けられている。
【0018】
本発明の紫外線処理装置においては、平面部材10の下部に紫外線ランプ室31が設けられており、当該紫外線ランプ室31における平面部材10の平面領域12の紫外線照射窓11と対向する位置に、紫外線ランプ30が配置されている。
【0019】
平面部材10および紫外線ランプ室31の材料としては、耐紫外線性および耐オゾン性を有する材料を用いればよく、例えば硬質アルマイトやSUSを用いることができる。
【0020】
本発明の紫外線処理装置において、平板部分14の表面と被処理物Wとの間に形成される間隙の大きさh1は、例えば0.1〜3mmの範囲とされることが好ましい。この間隙の大きさが過大であると、処理ガス供給口15から供給された処理ガスが、当該間隙から外部に漏れ、その結果、平面領域12の紫外線照射窓11上において当該処理ガスを高い均一性で流通させることができなくなるおそれがある。
【0021】
また、平面領域12からの平板部分14の突出高さ(
図4における上下方向の高さ)h2は、例えば0.8mm以下とされる。
【0022】
紫外線処理装置の寸法の一例を示すと、平面部材10の大きさが165mm×165mm、平板部分14の表面と被処理物Wとの間に形成される間隙の大きさh1が0.3mm、平面領域12と平板部分14の高さ(
図4における上下方向の高さ)h2が0.7mm、平板部分14の縦土手部分14Xの幅(
図1における左右方向の長さ)が15mm、横土手部分14Y,14Zの幅(
図1における上下方向の長さ)がそれぞれ35mm、平面領域12の幅(
図1における上下方向の長さ)が70mm、紫外線照射窓11の大きさが60mm×60mmである。
【0023】
このような紫外線処理装置においては、まず、被処理物Wが平面部材10の保持部材13上に載置され、これにより平面領域12の他辺12vと被処理物Wの一辺とに囲われた処理ガス排出口20が形成される。
次いで、処理ガスが処理ガス供給口15から紫外線照射窓11と被処理物Wとの間に形成される被処理空間Sに供給されると、平面領域12と被処理物Wとの距離が、平板部分14と被処理物Wとの距離h1よりも大きいので、当該処理ガスは、平板部分14と被処理物Wとの間隙から僅かずつ漏洩しながら、全体的には処理ガス排出口20に向かって安定的に流通する。平板部分14と被処理物Wとの間隙から処理ガスが僅かずつ漏洩することによって外部からのガスに対する流れ抵抗が生じ、外部のガスの被処理空間Sへの流入が抑制される。そして、この状態で、紫外線ランプ30を点灯させることにより、紫外線ランプ30からの紫外線が紫外線照射窓11を介して被処理空間Sおよび被処理物Wの被照射面に照射され、これにより、被処理物Wの光洗浄処理が行われる。
【0024】
以上において、紫外線照射窓11と被処理物Wとの間の間隙に流通される処理ガスの供給量は、例えば0.1〜10L/minである。
また、被処理物Wに対する紫外線の照射時間は、例えば3〜3600秒間である。
【0025】
処理ガスとしては、紫外線を照射することによりオゾンを発生させるガスであればよく、例えばCDA(Clean Dry Air)を用いることができる。
【0026】
上記の紫外線処理装置は、紫外線照射窓11および処理ガス供給口15が同一の平面領域12上に設けられ、しかも、当該平面領域12の三方が平板部分14によって囲われると共に、残る一方に処理ガス排出口20が形成される構成とされている。従って、紫外線照射窓11と被処理物Wとの間の距離を極めて小さくすることができ、しかも、処理ガスを被処理空間Sにおいて平面的に高い均一性で拡散して流通させることができ、その結果、被処理物Wの光洗浄処理を高い効率で行うことができる。
【0027】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されず、種々の変更を加えることが可能である。
例えば、本発明においては、処理ガス供給口15は、平面領域12の一辺12xに沿って伸びるスリットから構成されていてもよい。
また例えば、本発明の紫外線処理装置の被処理物は、ナノインプリント用テンプレートに限定されず、紫外線照射処理が必要とされる種々のものに適用することができる。
【0028】
以下、本発明の効果を確認するために行った実験例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
〔実施例1〕
図1に示される紫外線処理装置を作製した。紫外線処理装置の各寸法は以下の通りとした。これを紫外線処理装置〔1〕とする。
・平面部材10の全体の大きさ:165mm×165mm
・平面領域12と平板部分14の高さh2:0.7mm
・縦土手部分14Xの幅:15mm
・横土手部分14Y,14Zの幅:35mm
・平面領域12の幅:70mm
・紫外線照射窓11と被処理物Wとの距離:1mm
(・平板部分14の表面と被処理物Wとの間に形成される間隙の大きさh1:0.3mm)
・紫外線照射窓11の大きさ:60mm×60mm
【0030】
上記の紫外線処理装置〔1〕を用いて、以下の光洗浄処理条件(処理ガスの供給条件および紫外線の照射条件)で被処理物(テンプレート)の光洗浄処理を行ったところ、被処理物(テンプレート)に付着したレジストのアッシング量にムラは生じなかった。
・処理ガス種:CDA
・処理ガスの供給量:0.5L/min
・紫外線照射窓11における紫外線照度:70mW/cm
2
・紫外線の照射時間:600秒間
【0031】
〔比較例1〕
実施例1に用いた紫外線処理装置において、紫外線照射窓と被処理物の距離を3.8mm、すなわち、平板部分の表面と被処理物との間に形成される間隙の大きさを3.1mmにしたこと以外は同様にして、比較用の紫外線処理装置〔2〕を作製した。
これを用いて、上記の紫外線処理装置〔1〕と同様の光洗浄処理条件で被処理物(テンプレート)の光洗浄処理を行ったところ、平板部分の表面と被処理物との間に形成される間隙の大きさが過大であるために平面領域の外部に処理ガスが流出してしまい、紫外線照射窓上に処理ガスを高い均一性で流通させることができなかった。そして、この光洗浄処理を行った被処理物(テンプレート)に付着したレジストのアッシング量にムラが生じてしまった。
【符号の説明】
【0032】
10 平面部材
11 紫外線照射窓
12 平面領域
12v,12x,12y,12z 辺
13 保持部材
14 平板部分
14X 縦土手部分
14Y,14Z 横土手部分
15 処理ガス供給口
20 処理ガス排出口
30 紫外線ランプ
31 紫外線ランプ室
60 筺体
61 紫外線照射窓
65 ガス流路部材
65a 上縁部
S 被処理空間
W 被処理物