(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
(白色フィルム)
本発明の白色フィルムは、内部に有機粒子を有し、該有機粒子を核材としてその周りに気泡が形成される層を有する。該有機粒子の周りに気泡を含有させることにより、高い反射特性を有する白色フィルムを後述するように容易に製造することが可能である。核材として有機粒子を用いることで、光吸収性を抑え形成した白色フィルムの反射効率をより高めることができるだけでなく、白色フィルムの軽量化が可能となる。
【0013】
本発明の白色フィルムにおいて、気泡は独立した気泡であっても良いし、複数の気泡が連続しているものであっても良い。また、フィルムの白色性・光反射性はフィルムへ入射した光線が内部の気固界面(気泡と、マトリックス樹脂もしくは樹脂粒子からなる気固界面)にて反射されることによって発現されるため、フィルム厚み方向に多数の気固界面を形成させることが好ましい。フィルム厚み方向に多数の気固界面を形成させるためには、気泡の断面形状は、円状ないし、フィルム面方向に対して伸長されている楕円状であることが好ましい。なお、本発明においてマトリックス樹脂とは、有機粒子を核とした気泡を含有する層に含まれる樹脂であって、有機粒子以外の全樹脂を指す。
【0014】
また、気泡の形成方法としては、白色フィルムを構成する主たる樹脂成分(a)と、該樹脂成分(a)に対して有機粒子となる非相溶性樹脂成分(b)とを含有する混合物を溶融押出しした後、少なくとも一方向に延伸し、内部に気泡を形成させることにより、界面を形成させる方法が、より微細で扁平な気泡を生成させることが出来、反射性能および生産性が良好であるために好ましい。
【0015】
この方法は延伸中に白色フィルムを構成する主たる樹脂成分(a)と非相溶樹脂性成分(b)の界面で剥離が起こることを利用して、扁平状の気泡を生成させる手法である。したがって、気泡占有体積を増大させ、フィルム厚み当りの界面数を増大させ反射性能を向上させるために、一軸延伸より二軸延伸がより好ましく用いられる。
【0016】
本発明の白色フィルム中の有機粒子の断面は矩形であることが好ましい。有機粒子が矩形であることによって、白色フィルムを曲げる力に対して気泡が変形しにくく、ひいては折れしわを発生させにくくすることができる。
【0017】
本発明の白色フィルム中の有機粒子の平均矩形化率は85%以上である。88%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。本発明でいう平均矩形化率(R)とは白色フィルムの断面を電子顕微鏡で10000倍に拡大して観察し、気泡中に存在する有機粒子の断面形状に外接する最小の矩形面積(S)に対する粒子断面積(s)の割合を有機粒子100個について求めた平均をいう。
【0018】
(R)=(s)/(S)×100 (1)
円形や楕円形の場合の理論矩形化率は78.5%である。平均矩形化率が85%未満であると十分な耐折れしわ性を得られないため好ましくない。上限は理論上限である100%である。平均矩形化率を上記範囲にする方法としては、マトリックス樹脂に有機粒子となる非相溶性樹脂(b)を含有する混合物を溶融押出した後に、少なくとも一方に延伸して内部に気泡を形成し、その後非相溶性樹脂の(熱変形温度)〜(熱変形温度+50℃)の範囲で有機粒子に対しフィルム厚み方向に力を加えることで有機粒子を矩形状に変形させることが挙げられる。有機粒子が非晶性樹脂の場合は有機粒子のガラス転移温度(Tg+10℃)〜(Tg+50℃)の範囲でフィルム厚み方向に力を加えることが好ましい。また、有機粒子に断面が矩形形状の粒子を用いても良いが、扁平な粒子はフィルムの延伸により気泡を形成する方法において、大きな気泡とならず十分な反射性能が得られない場合があるため好ましくない。
【0019】
本発明の白色フィルムは有機粒子の数平均厚みが0.30μm未満である。有機粒子の厚みが0.30μm未満であることによってボイドの厚みが小さくなり曲げ変形に対して耐折れしわ性が向上することができる。好ましくは0.25μm未満であり、より好ましくは0.20μm未満である。下限は特に限定されないが0.05μm以上であることが好ましい。本発明でいう有機粒子の数平均厚みは、白色フィルムの断面を電子顕微鏡で観察し、観察画像内に存在する有機粒子の断面形状に外接する最小面積の矩形の白色フィルム厚み方向の辺の長さを、有機粒子100個について求めその平均値を数平均厚みとした。有機粒子の数平均厚みを上記範囲にする方法としては、マトリックス樹脂に有機粒子となる非相溶性樹脂(b)を含有する混合物を溶融押出した後に、少なくとも一方に延伸に内部に気泡を形成し、その後非相溶性樹脂の(熱変形温度)〜(熱変形温度+50℃)の範囲で有機粒子に対しフィルム厚み方向に力を加えることで有機粒子を矩形状に変形させることが挙げられる。有機粒子が非晶性樹脂の場合は有機粒子のガラス転移温度(Tg+10℃)〜(Tg+50℃)の範囲でフィルム厚み方向に力を加えることが好ましい。
【0020】
本発明の白色フィルムは、内部に有機粒子を有し、該有機粒子を核材としてその周りに気泡が形成される層(B層)のみからなる単層でもよく、A層/B層やA層/B層/A層のフィルム構成であっても良い。該A層により表面光沢度のコントロールや製膜安定性を確保することが出来るため、A層/B層/A層が好ましい。
【0021】
本発明においてA層は表層となる層である。背面への光漏洩を防ぐ役割、製膜を安定化させる支持層の役割を持たせるため、A層はポリエステルに無機粒子を含有させることが好ましく、光を散乱させる役割がある。A層の光散乱性は主に表面粗さを制御することにより調整することができ、他の方法としては、例えば、ポリエステル樹脂に屈折率の異なる粒子を添加する方法が挙げられる。ここで、A層に含有させる無機微粒子の種類としては、特に限定されるものではないがモース硬度3.0以上であることが好ましく、例えば炭酸カルシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、二酸化珪素、硫化亜鉛、硫酸バリウム、アルミナ、タルクなどが挙げられる。これらの無機粒子は、光沢度調整や白色度調整、耐光性付与などといった表面機能の付与の必要性に応じて、単独で、あるいは組み合わせて使用することができる。
【0022】
本発明の白色フィルムの厚みは30μm以上500μm以下が好ましく、50μm以上300μm以下がより好ましい。厚みが30μm未満の場合、十分な反射性が得られないため好ましくない。一方、500μmより厚い場合、液晶ディスプレイの薄膜化の要求に答えることができず好ましくない。
【0023】
本発明において、白色フィルムの比重は、0.5以上1.3以下であることが好ましい。より好ましくは0.6以上1.2以下、さらに好ましくは0.7以上1.1以下である。ここでいう比重とは、白色フィルムを5cm×5cmの大きさに切りだしたものを5枚用意し、JIS K7112(1980年版)に基づいて電子比重計SD−120L(ミラージュ貿易(株)製)を用いてそれぞれを測定した平均値である。比重がかかる範囲を外れて低くなると、フィルムの強度が低下し、フィルムが破断しやすくなり、生産性に劣るため好ましくなく、また液晶ディスプレイの組み立て作業において折れ皺が発生しやすくなるため好ましくない。逆に比重がかかる範囲を外れて高くなると、気泡含有構造に由来する反射性が不十分となるため、好ましくない。
【0024】
本発明の白色フィルムにおいて、比重を0.5以上1.3以下にする方法としては、1)非相溶性樹脂成分(b)の含有量を増やす、2)非相溶性樹脂成分(b)の体積平均粒径Dvを小さくする、3)延伸倍率を高倍率化する、などが挙げられる。
【0025】
(主たる樹脂成分(a))
本発明において、白色フィルムは、その主たる樹脂成分(a)としてポリエステル樹脂が用いられていることが好ましい。本発明のポリエステル樹脂とは、ジオール成分とジカルボン酸成分の重縮合によって得られるポリマーであり、ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等が代表例として挙げられる。またジオール成分としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等が代表例として挙げられる。ポリエステル樹脂(A)の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(ポリエチレンナフタレート)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等を使用することができる。
【0026】
もちろん、これらのポリエステルは、ホモポリエステルであってもコポリエステルであってもよく、共重合成分としては、例えばジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコール等のジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等のジカルボン酸成分を用いることができる。
【0027】
本発明の白色フィルムにおいて、ポリエステル樹脂として、上述の樹脂を用いることにより、高い無着色性を維持しつつ、フィルムとしたときに高い機械強度を付与することができる。より好ましくは、安価でかつ耐熱性が優れるという点で、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましい。
【0028】
本発明でいう主たる樹脂成分とはフィルム全体の質量に対して51質量%以上である樹脂成分のことを言う。
【0029】
(非相溶性樹脂成分(b))
本発明では、白色フィルムが主たる樹脂成分(a)と、有機粒子を構成する樹脂成分(a)とは非相溶な樹脂成分(b)を用いてなるフィルムであることが好ましい。
【0030】
非相溶性樹脂成分(b)としては、マトリックスとなる主たる樹脂成分(a)と非相溶なものであれば特に限定されず、マトリックスと非相溶の熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。その樹脂は、結晶性、非晶性、どちらも好ましく用いられる。その具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、シクロペンタジエンなどのような直鎖状、分鎖状あるいは環状のポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリスチレン、フッ素系樹脂などが好ましく用いられる。これらの非相溶性樹脂は単独重合体であっても共重合体であってもよく、さらには2種以上の非相溶性樹脂を併用してもよい。
【0031】
白色フィルムの主たる樹脂成分(a)としてポリエステル樹脂を用いる場合、非相溶性樹脂成分(b)の結晶性樹脂の具体例としては、透明性、耐熱性の観点から、ポリメチルペンテンやポリプロピレンがより好ましく用いられる。ここで、ポリメチルペンテンとしては、分子骨格中に4−メチルペンテン−1からの誘導単位を好ましくは80モル%以上、より好ましくは85モル%以上、特に好ましくは90モル%以上含むものが好ましい。また、その他の誘導単位としては、エチレン単位、プロピレン単位、ブテン−1単位、3−メチルブテン−1、あるいは4−メチルペンテン−1以外で炭素数6〜12の炭化水素などが例示される。ポリメチルペンテンは単独重合体であっても共重合体であってもよい。また、組成や、溶融粘度などの異なる複数のポリメチルペンテン、他のオレフィン系樹脂やその他樹脂と併用してもよい。
【0032】
また、本発明において非相溶性樹脂成分(b)として非晶性樹脂を用いる場合、環状オレフィン共重合体樹脂を特に好ましく用いることができる。環状オレフィン共重合体とは、シクロアルケン、ビシクロアルケン、トリシクロアルケン及びテトラシクロアルケンからなる群から選ばれた少なくとも1種の環状オレフィンと、エチレン、プロピレン等の直鎖オレフィンからなる共重合体である。
【0033】
環状オレフィン共重合体樹脂における環状オレフィンの代表例としては、ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、6−メチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、5,6−ジメチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、1−メチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、6−エチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、6−n−ブチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、6−i−ブチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、7−メチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、トリシクロ〔4,3,0,12.5 〕−3−デセン、2−メチル−トリシクロ〔4,3,0,12.5 〕−3−デセン、5−メチル−トリシクロ〔4,3,0,12.5 〕−3−デセン、トリシクロ〔4,4,0,12.5 〕−3−デセン、10−メチル−トリシクロ〔4,4,0,12.5 〕−3−デセン等がある。
【0034】
また、環状オレフィン共重合体樹脂における直鎖オレフィンの代表例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン等がある。
【0035】
本発明において、非相溶性樹脂(b)は、そのガラス転移温度Tgが130℃以上であることが好ましい。さらに好ましくは150℃以上である。140℃以上とすることで、混練時においてマトリックス樹脂中により微細に分散し、延伸工程において気泡を形成し、熱処理工程における気泡の消失をより抑制することができるためである。上限は180℃が好ましい。180℃を越えると、製膜時に有機粒子を矩形化しその厚みを薄くする際の加工温度が高くなりフィルムの平面性が悪化するため好ましくない。より好ましくは160℃以下である。また、ガラス転移温度(Tg)についてはJIS K7121−1987に記載の中間点ガラス転移温度(Tmg)であり、示差熱分析計(例えば、TA Instruments社製DSC Q100)を用いて、窒素雰囲気下において、樹脂を25℃から300℃まで20℃/分の昇温速度で加熱し、その状態で10分間保持する。次いで25℃以下となるよう急冷し、再度室温から20℃/分の昇温速度で300℃まで昇温を行い吸発熱曲線(DSC曲線)を求める。
【0036】
非相溶樹脂(b)として、環状オレフィン共重合体樹脂を用いる場合、そのガラス転移温度Tgを前述の範囲に制御するためには、例えば環状オレフィン共重合体中の環状オレフィン成分の含有量を多くし、エチレン等の直鎖オレフィン成分の含有量を少なくすることが挙げられる。具体的には、環状オレフィン成分は60モル%以上であり、エチレン等の直鎖オレフィン成分の含有量は40モル%未満であることが好ましい。より好ましくは、環状オレフィン成分は70モル%以上であり、エチレン等の直鎖オレフィン成分の含有量は30モル%未満、さらに好ましくは環状オレフィン成分が80モル%以上であり、エチレン等の直鎖オレフィン成分の含有量が20モル%未満である。特に好ましくは環状オレフィン成分が90モル%以上であり、エチレン等の直鎖オレフィン成分の含有量が10モル%未満である。かかる範囲にすることにより、環状オレフィン共重合体のガラス転移温度Tgを前述の範囲まで高めることができる。
【0037】
また、非相溶性樹脂(b)として、環状オレフィン共重合体樹脂を用いる場合、直鎖オレフィン成分は特に制限されるものではないが、反応性の観点からエチレン成分が好ましい。
【0038】
さらに、環状オレフィン成分も特に制限されるものではないが、ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン(ノルボルネン)やその誘導体が生産性・透明性・高Tg化の点から好ましい。
【0039】
したがって、本発明では、白色フィルムがポリエステル樹脂(A)および非相溶性樹脂成分(b)を有しており、非相溶性樹脂成分(b)が、ガラス転移温度が130℃以上180℃以下であることが好ましい。さらに非相溶性樹脂成分(b)は非晶性樹脂であることが好ましく、さらに好ましくは、(非晶性の)環状オレフィン共重合体樹脂であることである。
【0040】
本発明において、上述の非相溶性樹脂(b)の含有量は、白色層に対し、3質量%以上25質量%以下であることが好ましく、より好ましくは4質量%以上15質量%以下である。非相溶性樹脂(b)の含有量が3質量%未満であると、フィルム内部に気泡が十分に生成されず、白色性や光反射特性に劣ることがある。一方、非相溶性樹脂(b)の含有量が25質量%を越えると、フィルムの強度が低下し、延伸時の破断が起こりやすくなることがある。含有量をかかる範囲内にすることにより、十分な白色性・反射性・軽量性を発現せしめることができる。
【0041】
(無機粒子)
本発明において、無機粒子を含有していても良い。無機粒子の例としては、ガラス、シリカ、硫酸バリウム、酸化チタン、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、タルクなどを挙げることができる。
【0042】
主たる樹脂としてポリエステル樹脂を用いた場合、これらの無機粒子の中でも、特に、気泡形成、白色度、光学濃度など総合的効果の点から、酸化チタン、炭酸カルシウムおよび硫酸バリウムからなる群から選ばれる1種以上の無機粒子を用いることが好ましく、特に酸化チタンを用いることが最も好ましい。
【0043】
本発明において、上述の無機粒子の含有量は、白色フィルムに対し、5質量%以上26質量%以下であることが好ましい。より好ましくは13質量%以上21質量%以下である。
【0044】
無機粒子の含有量が5質量%未満であると、フィルム内部に気泡が十分に生成されず、白色性や光反射特性に劣ることがある。一方、無機粒子の含有量が26質量%を越えると、フィルムの強度が低下し、延伸時の破断が起こりやすくなることがある。含有量をかかる範囲内にすることにより、十分な白色性・反射性・軽量性を発現せしめることができる。
【0045】
なお、本発明において、非相溶性樹脂と無機粒子とを併用することは、好ましい態様の一つである。特に、本発明では、白色フィルムがポリエステル樹脂および非相溶性樹脂成分および無機粒子を用いてなる層を有しており、かつ非相溶性樹脂成分として、ガラス転移温度が130℃以上180℃以下である環状ポリオレフィン、および、酸化チタン、炭酸カルシウムおよび硫酸バリウムからなる群から選ばれる1種以上の無機粒子が用いられていることが好ましい。
【0046】
(その他添加物)
本発明において、白色フィルムのマトリックス成分として、ポリエステル樹脂に、共重合成分を導入した共重合ポリエステル樹脂を混合してもよい。この場合共重合成分の量は、特に限定されないが、透明性、成形性等の観点および次に述べる非晶化の観点よりジカルボン酸成分およびジオール成分とも、それぞれの成分に対して好ましくは1モル%以上70モル%以下であり、より好ましくは10モル%以上40モル%以下である。
【0047】
また、共重合樹脂として、共重合により非晶性となったポリエステルを用いることは本発明において好ましい態様の一つである。その例としては、ジオール成分の主成分が脂環式グリコールである共重合ポリエステル樹脂や、酸成分が脂環式ジカルボン酸である共重合ポリエステル樹脂などが好適例として挙げられる。特に、ジオール成分を脂環式グルコールの一種であるシクロへキサンジメタノールとし、共重合した非晶性ポリエステルが透明性、成形性の点や後述する非相溶樹脂の微分散化効果の点から好ましく用いることができる。その場合、共重合ポリエステル樹脂のジオール成分のシクロヘキサンジメタノール成分が30モル%以上とすることが、非晶化の観点から好ましい。
【0048】
(製造方法)
本発明の白色フィルムの製造方法について説明する。本発明の製造には以下の延伸方法が特に好ましい。製造方法はこれに限定されない。
【0049】
少なくとも、ポリエステル樹脂と非相溶性樹脂成分を含む混合物を、必要に応じて十分真空乾燥を行い、押出機(主押出機)を有する製膜装置の加熱された押出機に供給する。非相溶性樹脂成分の添加は、事前に均一に溶融混練して配合させて作製されたマスターチップを用いても、もしくは直接混練押出機に供給するなどしてもよいが、事前に均一にポリエステル樹脂と非相溶性樹脂成分を含む混合物を溶融混練したマスターチップを用いるほうが、非相溶性樹脂成分の分散が促進されるという点でより好ましい。
【0050】
また、溶融押出に際してはメッシュ40μm以下のフィルターにて濾過した後に、Tダイ口金内に導入し押出成形により溶融シートを得ることが好ましい。この溶融シートを表面温度10℃以上60℃以下に冷却されたドラム上で静電気により密着冷却固化し、未延伸フィルムを作製する。
【0051】
該未延伸フィルムを70℃以上120℃以下の温度に加熱されたロール群に導き、長手方向(縦方向、すなわちフィルムの進行方向)に周速の異なる二本のロール間で延伸する(すなわち、ロールの周速差を利用して延伸する)。長手方向の延伸倍率は3.0倍以上4.5倍以下が好ましく、その後、20℃以上50℃以下の温度のロール群で冷却する。3.0倍未満では十分な大きさに気泡が形成できず十分な反射率と得ることが出来ない。また、4.5倍を越えて延伸するとその後の横延伸(幅方向への延伸)において破れやすくなり生産性に優れないため好ましくない。
【0052】
続いて、フィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、90℃以上150℃以下の温度に加熱された雰囲気中で、長手方向に直角な方向(幅方向)に3倍以上5倍以下に延伸する。3倍未満では気泡サイズが小さく十分な反射率を得ることが出来ない。また、5倍を超えて延伸すると破れやすくなり生産性に優れないため好ましくない。
【0053】
得られた二軸延伸(二軸配向)フィルムを有機粒子を矩形化し粒子の厚みを0.3μm未満とするために、プレス機を用いて、有機粒子を構成する非相溶性樹脂の(熱変形温度)〜(熱変形温度+50℃)の温度で厚み方向に1秒間以上30秒間以下、5kPa〜100kPaの圧力で圧縮し、均一に徐冷後、室温まで冷却し、その後必要に応じて、他素材との密着性をさらに高めるためにコロナ放電処理などを行うことにより、本発明の白色フィルムを得ることができる。このとき気泡内に空気等のガスが封入されると有機粒子を厚み方向に圧縮する力が低下するために、製膜直後に厚み方向に圧縮することが好ましい。
【0054】
尚、一般にプレス温度が高いほど、熱寸法安定性も高くなるが、本発明では、高温(180℃以上)で熱処理されることが好ましい。本発明では、白色フィルムは一定の熱寸法安定性を有することが望まれるためである。本発明の製造方法により得られる白色フィルムは液晶ディスプレイなどに搭載されている面光源(バックライト)の反射フィルムとして用いられることがある。バックライトによってはバックライト内部の雰囲気温度が100℃程度まで上昇することがあるためである。
【0055】
かくして得られた本発明の液晶ディスプレイ反射用白色ポリエステルフィルムは、フィルム内部に微細な気泡が形成され高反射率が達成されており、サイドライトタイプ及び直下型ライトタイプの液晶ディスプレイの反射板として使用された場合に高い輝度を得ることができる。
【0056】
(測定方法)
(1)フィルム厚み・層厚み
フィルムの厚みは、JIS C2151−2006に準じて測定した。
【0057】
フィルムをミクロトームを用いて厚み方向に切断し、切片サンプルを得た。
該切片サンプルの断面を日立製作所製電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)S−800を用いて、3,000倍の倍率で撮像し、撮像から積層厚みを採寸し各層厚みを算出した。
【0058】
(2)比重
白色フィルムを5cm×5cmの大きさに切りだし、JIS K7112(1980年版)に基づいて電子比重計SD−120L(ミラージュ貿易(株)製)を用いて測定した。なお、各白色フィルムについて5枚用意し、それぞれを測定し、その平均値でもって該白色フィルムの比重とした。
【0059】
(3)非相溶性樹脂成分(b)のガラス転移温度
非相溶成分(b)を単独で得られる場合は、非相溶成分(b)5mgを融解および急冷したサンプルを、示差走査型熱量計(DSC−2型、パーキンエルマー社製)を用い、25℃から20℃/分の昇温速度で昇温し、JIS K7121(1987年)の中間点ガラス転移温度をガラス転移温度として測定した。
【0060】
また、非相溶成分(b)を単独で得られない場合は、白色フィルムから非相溶成分(b)単離して示差走査型熱量計を用いてガラス転移温度を測定する。例えばポリエステル樹脂(A)、非相溶の熱可塑性樹脂(B1)として環状オレフィン共重合体および無機粒子(B2)からなる白色フィルムの場合、白色フィルムをメタノールおよびクロロホルムを体積分率1:1の混合溶液に溶解させた未溶解物を濾過して取り出す。この未溶解物をさらにクロロホルムに溶解させ未溶解物を取り出し、ヘキサフルオロイソプロパノールおよびクロロホルムを体積分率1:1からなる混合溶液に溶解させた。その溶液を遠心分離器により遠心分離し、浮遊物を採取することで環状オレフィン共重合体を得ることができる。こうして得られた環状オレフィン共重合体5mgを融解および急冷したサンプルを、示差走査型熱量計(DSC−2型、パーキンエルマー社製)を用い、25℃から20℃/分の昇温速度で昇温し、JIS K7121(1987年)の中間点ガラス転移温度をガラス転移温度として測定することができる。
【0061】
(4)有機粒子の矩形化率、平均厚み
日立イオンミリング装置IM4000を用いて、フィルムを厚み方向に潰すことなく、フィルム面に対して垂直かつフィルム長手方向平行に切断し測定資料を作成し、また、同様にフィルム面に対して垂直かつフィルム幅方向に平行に切断し測定試料を作製した。
【0062】
次いで、走査電子顕微鏡(日立製作所製電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)S−800)を用いて長手方向および幅方向のサンプルの切断面を観察し、10000倍に拡大観察した画像を得る。なお、観察場所はB層内において無作為に定めるものとするが、画像の上下方向がフィルムの厚み方向と、画像の左右方向がフィルム面方向とそれぞれ平行になるようにするものとした。
【0063】
気泡中に存在する有機粒子において、その断面形状に外接する最小の矩形面積(S)に対する粒子断面積(s)の割合を有機粒子100個について平均値を求め、平均矩形化率とした。
【0064】
(R)=(s)/(S)×100 (1)
また、観察画像内の気泡中に存在する有機粒子において、その断面形状に外接する最小面積の矩形の白色フィルムの厚み方向の辺の長さを有機粒子100個について求め、その平均値を数平均厚みとした。
【0065】
(5)屈曲試験
サンプルサイズ100mm×50mmの試験片を直径6mmの芯棒を用いてA層を内側にして折り返すJIS K5600−5−1に規定されている屈曲試験を、試験片の長手方向で行い、折り曲げた部分を目視により級判定した。
【0066】
A:A層に折れしわがなく、折り曲げに耐えている
F:A層に折れしわが生じたもの。
【0067】
(6)テープ剥離試験(折れしわ)
白色フィルムを幅20mm、長さ100mmの長方形にサンプリングし、該フィルムと鏡面加工ステンレス板(SUS304)とを幅と長さの方向が一致するように幅20mm、長さ100mmの両面テープ(日東電工両面テープNo.500)で貼り合わせる。2層の場合はA層/B層/両面テープ/SUS304となるように、3層の場合はA層/B層/A層/両面テープ/SUS304となるように貼り合わせる。次に該白色フィルムの端部を剥離し持ち上げ、ステンレスとの135°剥離(剥離速度50mm/秒)を長手方向に行い全部剥離する。剥離後のフィルム表面の折れしわをA層側より目視により級判定した。A、Bが合格である。
A:しわの発生が0個/10mm
2B:しわの発生が1〜3個/10mm
2F:しわの発生が4個以上/10mm
2 。
【0068】
(7)相対輝度(サイドライト方式輝度)
図1に示したようにサムソン(株)製液晶モニタ(750B)の4灯型バックライトの反射フィルムを各実施例、比較例にて作製した反射フィルムに変更し測定した。輝度測定は、家庭用電源100Vを使用し、ON/OFFスイッチを切り替えることで電圧を印加。冷陰極管の明るさが均一・一定になるのに1時間待機した。その後に、輝度計(topcon製BM−7fast)にて、測定距離500mmで輝度を測定した。測定回数は3回とし、その平均値を計算する。輝度評価として、東レ株式会社製#250E6SLを基準サンプル(100%)とし、
下記の通りの評価結果とした。
【実施例】
【0069】
以下実施例等によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0070】
(原料)
・ポリエステル樹脂(A−1)
酸成分としてテレフタル酸を、グリコール成分としてエチレングリコールを用い、三酸化アンチモン(重合触媒)を得られるポリエステルペレットに対してアンチモン原子換算で300ppmとなるように添加し、重縮合反応を行い、極限粘度0.63dl/g、カルボキシル末端基量40当量/トンのポリエチレンテレフタレートペレット(PET)を得た。示差熱分析計を用いて結晶融解熱を測定したところ1cal/g以上であり、結晶性のポリエステル樹脂である。この樹脂の融点Tmを測定したところ、250℃であった。
【0071】
・環状オレフィン共重合体樹脂(B1−1)
ガラス転移温度が178℃である環状オレフィン樹脂「TOPAS」(ポリプラスチック社製)を用いた。なお、示差熱分析計を用いて結晶融解熱を測定したところ1cal/g未満であり、非晶性樹脂であった。
【0072】
・環状オレフィン共重合体樹脂(B1−2)
ガラス転移温度が158℃である環状オレフィン樹脂「TOPAS」(ポリプラスチック社製)を用いた。なお、示差熱分析計を用いて結晶融解熱を測定したところ1cal/g未満であり、非晶性樹脂であった。
【0073】
・環状オレフィン共重合体樹脂(B1−3)
ガラス転移温度が138℃である環状オレフィン樹脂「TOPAS」(ポリプラスチック社製)を用いた。なお、示差熱分析計を用いて結晶融解熱を測定したところ1cal/g未満であり、非晶性樹脂であった。
【0074】
・環状オレフィン共重合体樹脂(B1−4)
ガラス転移温度が198℃である環状オレフィン樹脂を用いた。なお、示差熱分析計を用いて結晶融解熱を測定したところ1cal/g未満であり、非晶性樹脂であった。
【0075】
・共重合ポリエステル樹脂(C−1)
CHDM(シクロヘキサンジメタノール)共重合PETを用いた。該共重合グリコール成分にシクロヘキサンジメタノールを30mol%共重合したPETである。示差熱分析計を用いて結晶融解熱を測定したところ1cal/g未満であり、非晶性樹脂であった。
【0076】
・共重合ポリエステル樹脂(C−2)
イソフタル酸共重合PETを用いた。該共重合ジカルボン酸成分にイソフタル酸を17.5mol%共重合したPETである。示差熱分析計を用いて結晶融解熱を測定したところ1cal/g未満であり、非晶性樹脂であった。
【0077】
・分散剤(D−1)
PBT-PAG(ポリアルキレングリコール)共重合体を用いた。該樹脂はPBT(ポリブチレンテレフタレート)とPAG(主としてポリテトラメチレングリコール)のブロック共重合体である。示差熱分析計を用いて結晶融解熱を測定したところ1cal/g以上であり、結晶性樹脂であった。
【0078】
・無機粒子(E−1)
粒径0.2μmのルチル型酸化チタン粒子を用いた。
【0079】
(実施例1)
表1に示した原料の混合物を180℃の温度で3時間真空乾燥した後に押出機(A)に供給した。また、別にポリエステル樹脂(A−1)を180℃の温度で3時間真空乾燥した後に押出機(B)に供給した。押出機(A)の供給した原料および押出機(B)に供給した原料を、それぞれ280℃の温度で溶融させ、フィードブロックを用いて、厚さ方向に押出機(A)に供給した原料からなる層(A層)と、押出機(B)に供給した原料からなる層(B層)を、B層/A層/B層の3層積層となるように積層し、Tダイ口金に導入した。次いで、Tダイ口金内より、シート状に押出して溶融シートとし、該溶融シートを、表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて未延伸フィルムを得た。このとき、ドラムに接しているフィルム面を裏面、空気に接している面をおもて面とした。
【0080】
続いて、該未延伸フィルムを85℃の温度に加熱したロール群で予熱した後,長手方向(縦方向)に、ロールの周速差を利用して、3.4倍延伸を行い、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の95℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に105℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な方向(幅方向)に3.6倍延伸し二軸延伸フィルムを得た。
【0081】
得られた二軸延伸フィルムをすぐに210℃に加熱したプレス機にて圧力50kPaで15秒プレスした後冷却し、厚み188μmの二軸延伸白色フィルムを得た。
【0082】
この白色フィルムの断面を観察したところ、内部に矩形状の有機粒子を含む微細な気泡を多数含有しており、該有機粒子の数平均厚みは0.18μmであった。フィルムの各種特性を表2に示す。
【0083】
(実施例2〜14
、実施例9は比較例4と読み替える。)
それぞれ表1に示した原料組成、プレス温度、圧力とした以外は、実施例1と同様に製膜を行い、厚さ188μmの二軸配向白色フィルムを得た。この白色フィルムの断面を観察したところ、内部に矩形状の有機粒子を含む微細な気泡を多数含有しており、耐折れしわ性に優れていた。フィルムの各種特性を表2に示す。
【0084】
(比較例1〜3)
それぞれ表1に示した原料組成、プレス温度、圧力とした以外は、実施例1と同様に製膜を行い、厚さ188μmの二軸配向白色フィルムを得た。この白色フィルムの断面を観察したところ、内部に矩形状の有機粒子を含む微細な気泡を多数含有しており、耐折れしわ性に優れていた。フィルムの各種特性を表2に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】