特許第6586936号(P6586936)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6586936
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】物品搬送設備
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20191001BHJP
   B65G 1/00 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
   H01L21/68 A
   B65G1/00 501C
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-184566(P2016-184566)
(22)【出願日】2016年9月21日
(65)【公開番号】特開2018-49943(P2018-49943A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2018年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】北原 素行
(72)【発明者】
【氏名】森本 雄一
(72)【発明者】
【氏名】松尾 研介
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 武司
【審査官】 井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−152766(JP,A)
【文献】 特開2007−191235(JP,A)
【文献】 特開2011−035022(JP,A)
【文献】 特開2012−076852(JP,A)
【文献】 特開2012−066933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B65G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の搬送対象場所の間で移動経路に沿って移動して物品を搬送する物品搬送車と、当該物品搬送車を制御する制御装置と、を備えた物品搬送設備であって、
前記物品搬送車は、前記物品を収容する収容部と、当該収容部を覆うカバー部と、前記収容部と当該収容部に対して外側に位置する前記複数の搬送対象場所の一つとの間で前記物品を移動させて当該搬送対象場所と前記物品搬送車との間の前記物品の移載を行う移載機構と、搬送中の前記物品の姿勢を変更する姿勢変更機構と、を有し、
前記姿勢変更機構は、前記物品の姿勢を、搬送元である前記搬送対象場所での移載のための姿勢である第一姿勢と、搬送先である前記搬送対象場所での移載のための姿勢である第二姿勢とに変更可能であり、
前記カバー部は、前記収容部に収容された状態の前記物品が前記第一姿勢である場合及び前記第二姿勢である場合に前記物品と干渉せず、前記物品の姿勢が前記第一姿勢と前記第二姿勢との間で変更する過程の姿勢である中間姿勢である場合に前記物品と干渉する位置に設けられ、
前記制御装置は、前記搬送元から前記搬送先までの経路である搬送経路の途中において、前記移載機構により前記収容部に対して外側に前記物品を移動させた状態で前記姿勢変更機構によって前記物品を前記第一姿勢から前記第二姿勢に変更した後、前記物品を前記移載機構により前記収容部に収容する制御である姿勢変更制御を実行する物品搬送設備。
【請求項2】
前記移載機構は、前記物品を把持する把持部と、前記把持部を鉛直方向に沿って昇降させる昇降機構と、前記搬送経路に交差すると共に水平方向に沿う方向である横方向に沿って前記把持部を横移動させる横移動機構と、を備え、
前記姿勢変更機構は、前記鉛直方向に沿う旋回軸周りに前記把持部を旋回させる旋回部を備え、前記第一姿勢と前記第二姿勢との間での姿勢変更は前記旋回軸周りでの前記物品の旋回によって行われ、
前記姿勢変更制御は、前記横移動機構により前記物品が前記収容部に対して外側に位置するように前記把持部を横移動させた状態で、前記物品を前記旋回軸周りに旋回させることにより行う請求項1に記載の物品搬送設備。
【請求項3】
前記移動経路は、天井から吊り下げ支持されたレールにより定まり、
前記移載機構は、前記レール又は前記天井に支持されると共に前記移動経路に隣接する位置に配置された支持部材を更に備え、
前記支持部材は、前記物品が前記収容部に対して外側に位置するように前記把持部を横移動させた状態で、前記横移動機構を前記鉛直方向に支持するように設けられている請求項2に記載の物品搬送設備。
【請求項4】
前記制御装置は、前記搬送経路の途中における前記物品搬送車の停止中に前記姿勢変更制御を実行する請求項1から3のいずれか一項に記載の物品搬送設備。
【請求項5】
前記制御装置は、前記姿勢変更制御を、前記物品が前記収容部の外側における前記カバー部と干渉しない範囲内にあって、且つ前記移載機構による前記物品の移動中に実行する請求項1から4のいずれか一項に記載の物品搬送設備。
【請求項6】
前記移載機構により前記収容部に対して外側に前記物品を横移動させた状態で、前記移載機構及び前記物品が前記搬送経路の周囲に存在する他の部材と干渉しない前記搬送経路の領域が、姿勢変更許可領域として設定され、
前記制御装置は、前記物品搬送車が前記姿勢変更許可領域内にある場合に、前記姿勢変更制御を実行する請求項2又は3に記載の物品搬送設備。
【請求項7】
前記物品は、半導体基板が収納される容器であり、
前記搬送対象場所には、前記半導体基板に対する処理を行う処理装置と前記物品搬送車との間での前記物品の授受のための授受部が含まれ、
複数の前記授受部が工程内経路で結ばれていると共に、複数の工程内経路が工程間経路で結ばれており、
前記姿勢変更許可領域は、前記移動経路における、前記工程内経路と前記工程間経路との接続領域に設定されている請求項6に記載の物品搬送設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の搬送対象場所の間で移動経路に沿って移動して物品を搬送する物品搬送車を備えた物品搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記の特許文献1に開示された設備では、物品搬送車の移動経路が複数の搬送対象場所を経由する状態で設定されている。そして、複数の搬送対象場所のうち搬送先となる搬送対象場所において物品が移載されるための適切な姿勢となるように、当該物品の姿勢が変更される。このように、物品の姿勢が搬送元と搬送先とで変更される理由は、例えば、物品が、その一側面にのみ内容物を出し入れする開口を有する容器であり、搬送対象場所が、その内容物を処理する処理部である場合には、容器の開口を処理部に対して対向させなければならないこと等による。そして、物品の姿勢を変更するために、特許文献1の設備には、移動経路間を接続する状態で且つ物品搬送車とは別に設けられた姿勢変更機構が備えられている。この姿勢変更機構に対して物品搬送車が物品を渡し、姿勢変更機構がこの物品を旋回させることにより、物品の姿勢が第一姿勢から第二姿勢に変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−253070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、物品搬送車とは別に姿勢変更機構を設けた設備では、当該姿勢変更機構の配置スペースが必要となると共に、当該姿勢変更機構を設ける分だけ設備のコストが増加することになる。そこで、本願の発明者は、姿勢変更機構を物品搬送車に一体的に備えさせることを検討した。しかしながら、物品搬送車における搬送中に物品を収容する収容部はカバー部により覆われており、物品搬送車の大型化を抑制するために、カバー部と収容部に収容された物品との隙間は最小限に設定されている。このような収容部に収容された物品の姿勢変更を行うためには、物品とカバー部との隙間を広げる必要があり、その結果、物品搬送車が大型化せざるを得ないという問題があった。
【0005】
そこで、物品の姿勢を変更するための姿勢変更機構を物品搬送車に一体的に備えつつ、物品搬送車の大型化を抑制することができる物品搬送設備の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記に鑑みた、複数の搬送対象場所の間で移動経路に沿って移動して物品を搬送する物品搬送車と、当該物品搬送車を制御する制御装置と、を備えた物品搬送設備の特徴構成は、前記物品搬送車は、前記物品を収容する収容部と、当該収容部を覆うカバー部と、前記収容部と当該収容部に対して外側に位置する前記複数の搬送対象場所の一つとの間で前記物品を移動させて当該搬送対象場所と前記物品搬送車との間の前記物品の移載を行う移載機構と、搬送中の前記物品の姿勢を変更する姿勢変更機構と、を有し、前記姿勢変更機構は、前記物品の姿勢を、搬送元である前記搬送対象場所での移載のための姿勢である第一姿勢と、搬送先である前記搬送対象場所での移載のための姿勢である第二姿勢とに変更可能であり、前記カバー部は、前記収容部に収容された状態の前記物品が前記第一姿勢である場合及び第二姿勢である場合に前記物品と干渉せず、前記物品の姿勢が前記第一姿勢と前記第二姿勢との間で変更する過程の姿勢である中間姿勢である場合に前記物品と干渉する位置に設けられ、前記制御装置は、前記搬送元から前記搬送先までの経路である搬送経路の途中において、前記移載機構により前記収容部に対して外側に前記物品を移動させた状態で前記姿勢変更機構によって前記物品を前記第一姿勢から前記第二姿勢に変更した後、前記物品を前記移載機構により前記収容部に収容する制御である姿勢変更制御を実行する点にある。
【0007】
本構成では、収容部を覆うカバー部は、第一姿勢又は第二姿勢の物品が収容部に収容された状態で、当該物品と干渉しない位置に設けられている。一方で、このカバー部が設けられる位置は、収容部に収容された状態の物品が中間姿勢になった場合に、当該物品と干渉する位置となっている。すなわち、収容部を覆うカバー部と物品との隙間は比較的小さく設定されている。従って、本構成に係る物品搬送設備によれば、物品搬送車の大型化を抑制することができる。また、本構成では、物品搬送車が、搬送元から搬送先までの経路である搬送経路の途中において、移載機構により収容部に対して外側に物品を移動させた状態で、物品搬送車が備える姿勢変更機構によって物品の姿勢を第一姿勢から第二姿勢に変更する。従って、本構成によれば、物品搬送のための時間及び空間を有効利用して、物品の姿勢変更を行うことができる。このため、物品搬送車とは別に姿勢変更機構を備える場合に比べて、設備の小型化及び低コスト化を図ることが容易となっている。
【0008】
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】物品搬送設備の全体平面図。
図2】物品の移載の様子を示す図。
図3】物品搬送車を搬送方向から見た図。
図4】物品の姿勢を変更させる様子を示す平面模式図。
図5】制御構成を示すブロック図。
図6】姿勢変更制御を実行する際の手順を示すフローチャート。
図7】特定搬送処理を実行する際の手順を示すフローチャート。
図8】第二実施形態において物品の姿勢を変更させる様子を示す平面模式図。
図9】第二実施形態において姿勢変更制御を実行する際の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.第一実施形態
物品搬送設備の第一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、物品搬送設備1は、複数の搬送対象場所6の間で移動経路Rに沿って移動して物品Wを搬送する物品搬送車2と、当該物品搬送車2を制御する制御装置Hと、を備えている(図5も参照)。そして、この物品搬送設備1は、複数の搬送対象場所6のうち搬送元となる搬送対象場所6から搬送先となる他の搬送対象場所6まで物品Wを搬送する途中に当該物品Wの姿勢を変更することができるようになっている。
【0011】
1−1.物品搬送設備の機械的構成
物品Wは、物品搬送車2によって搬送される対象である。ここで、物品Wは、平面視で非円形状に形成されている。物品Wは、例えば、平面視で多角形状、より具体的には、四角形状に形成されている(図4参照)。なお、四角形状には、厳密には四角形でなくても、全体としてみれば四角形とみなせる形状も含む。また、多角形状の一部の辺が円弧等の曲線で形成された平面視の形状を有していても良い。例えば、物品Wの平面視の形状はD形であっても良い。以下、「状」という表現を用いて物等の形状を説明する場合は、これと同様の趣旨である。また、物品Wの立体的形状に関しては、ここでは、柱状体とされている。物品Wは、例えば、内容物が収納される容器である。本実施形態では、物品Wは、半導体基板が収納される容器である。ここでは、物品Wは、直方体状に形成されており、複数枚の半導体基板を複数段に分けて収容可能である。本実施形態では、物品Wの上面及び底面は、常に塞がった状態である。また、物品Wの上面には、物品Wの搬送の際に物品搬送車2によって把持されるためのフランジ部Waが設けられている。また、物品Wの4つの側面のうち一面には、半導体基板を出し入れするための開口部Wbが設けられている。
【0012】
搬送対象場所6は、物品Wの搬送元となる場所であり、又は、物品Wの搬送先となる場所である。搬送対象場所6は、物品搬送設備1の中の複数個所に設けられている。搬送対象場所6では、例えば、物品Wの処理が行われる。本実施形態では、図1に示すように、搬送対象場所6には、半導体基板に対する処理を行う処理装置6aと物品搬送車2との間での物品Wの授受のための授受部6bが含まれている。本実施形態では、授受部6bには、処理装置6aに対して開口部Wbを対向させた状態の物品Wが搬送される。また、物品Wに収納された半導体基板が、処理装置6aが備えるアーム等によって開口部Wbから取り出される。そして、半導体基板は、処理装置6aによって処理される。このように処理装置6aによって半導体基板が処理されるために、本実施形態では、物品Wは、開口部Wbが処理装置6aに対して対向する適切な姿勢にされた上で、物品搬送車2によって授受部6bに搬送される。
【0013】
移動経路Rは、物品搬送設備1において物品搬送車2が移動する経路である。図1に示すように、移動経路Rは、複数の搬送対象場所6を経由している。移動経路Rは、例えば、床面上に設けられるか、又は、床面から上方に距離を置いた位置に設けられる。本実施形態では、移動経路Rは、天井99から吊り下げ支持されたレール98により定まっている(図2及び図3参照)。図1に示すように、本実施形態では、レール98は、複数の授受部6bを経由する状態で設けられている。また、レール98は、移動経路Rに沿って延在すると共に横方向Yに離間した状態で設けられる一対の長尺部材によって構成されている(図2及び図3参照)。本実施形態では、移動経路Rは、工程内経路Riと工程間経路Rcとを含んで構成されている。そして、複数の授受部6bが工程内経路Riで結ばれていると共に、複数の工程内経路Riが工程間経路Rcで結ばれている。
【0014】
物品搬送車2は、複数の搬送対象場所6の間で移動経路Rに沿って移動して物品Wを搬送する。本実施形態では、物品搬送車2は、工程間経路Rcを移動することで、工程間経路Rcで結ばれた複数の工程内経路Riのそれぞれに移動できる。そのため、物品搬送車2は、複数の工程内経路Riのそれぞれを移動することで、工程内経路Riに結ばれた複数の授受部6bのそれぞれに移動できる。なお、本実施形態では、物品搬送車2は、移動経路Rを一方向にのみ移動でき、逆方向には移動できないようになっている。また、物品搬送車2は、移動経路R内における当該物品搬送車2の現在位置を検出する位置検出センサSe6を備えている。本実施形態では、移動経路Rには、複数の位置情報記憶部(図示省略)が分散された状態で配置されている。そして、位置情報記憶部は、移動経路Rを区画した複数の領域のそれぞれに割り当てられている。また、複数の位置情報記憶部のそれぞれは、移動経路R内においてそれぞれが配置されている位置の情報を記憶している。本実施形態では、位置検出センサSe6は、移動経路R内に配置された複数の位置情報記憶部のそれぞれに記憶された位置情報を読み取ることで、移動経路R内における物品搬送車2の現在位置を検出可能に構成されている。例えば、位置情報記憶部としてはバーコードが表示されたプレート等であっても良く、その場合の位置検出センサSe6としてはバーコードリーダとなる。
【0015】
図2及び図3に示すように、物品搬送車2は、レール98上を走行自在の走行部21と、走行部21に吊り下げ支持される本体部22と、を有している。なお、以下の説明において、移動経路Rに沿って物品搬送車2が移動すると、移動経路Rに沿って物品搬送車2が走行するとは、同義である。また、図3では、説明の便宜のため、後述する支持部材5を省略している。物品搬送車2は、物品Wを収容する収容部22aと、当該収容部22aを覆うカバー部22bと、を有している。本実施形態では、収容部22a及びカバー部22bは、本体部22の一部として構成されている。
【0016】
物品搬送車2は、収容部22aと当該収容部22aに対して外側に位置する複数の搬送対象場所6の一つとの間で物品Wを移動させて当該搬送対象場所6と物品搬送車2との間の物品Wの移載を行う移載機構3を有している。また、物品搬送車2は、搬送中の物品Wの姿勢を変更する姿勢変更機構4を有している。
【0017】
図3に示すように、移載機構3は、物品Wを把持する把持部3Gaと、把持部3Gaを鉛直方向Zに沿って昇降させる昇降機構3Hと、搬送経路Rtに沿う搬送方向Xに交差すると共に水平方向に沿う方向である横方向Yに沿って把持部3Gaを横移動させる横移動機構3Sと、を備えている。本実施形態では、把持部3Gaを横移動させる横移動機構3Sとして、把持部3Gaをスライドさせるスライド機構3Sを例示して説明する。ここで、本明細書において、ある特定の方向に沿うとは、当該特定の方向に完全に平行である場合の他、設置や組付け等の製造上の誤差の範囲内において当該特定の方向に対して僅かに傾いている状態も含む概念である。より具体的には、当該特定の方向に対して±15°以下の範囲で傾いている状態も含む。スライド機構3Sは、横方向Yに沿って把持部3Gaをスライドさせることができる。本実施形態では、把持機構3Gと昇降機構3Hとスライド機構3Sとによって、物品搬送車2と授受部6bとの間で物品Wを移載する。なお、物品Wの移載とは、物品搬送車2と授受部6bとの間で物品を移動させることをいう。すなわち、収容部22aに収容された状態の物品Wを授受部6bに載置するまでの過程、又は、授受部6bに載置された状態の物品Wを収容部22aに収容するまでの過程が、物品Wの移載である。また、物品Wの搬送とは、複数の授受部6bのうち、搬送元となる授受部6bから搬送先となる他の授受部6bまで物品Wを移動させることをいう。すなわち、物品Wの搬送とは、物品Wの移載も含む概念である。また、搬送経路Rtとは、移動経路Rにおける、搬送元となる搬送対象場所6から搬送先となる他の搬送対象場所6までの経路である。すなわち、移動経路Rの中に、搬送元と搬送先とに応じて、その都度搬送経路Rtが設定されている。
【0018】
図2に示すように、物品Wの移載として、授受部6bに載置された状態の物品Wを収容部22aに収容する場合は、把持機構3Gにより物品Wを把持した状態で昇降機構3Hによって物品Wを上昇させ、スライド機構3Sによって物品Wを収容部22aにスライドさせる。物品Wの移載として、収容部22aに収容された状態の物品Wを授受部6bに載置する場合には、上記と逆の工程を行う。なお、以下では、鉛直方向Zのうち、上側を鉛直方向上側Z1とし、下側を鉛直方向下側Z2として説明する。また、横方向Yのうち、物品Wを収容部22aから収容部22aの外側へ突出させる側(図2及び図3における左側)を横方向第一側Y1とし、物品Wを収容部22aの外側から収容部22aに引退させる側を横方向第二側Y2として説明する。以下では、収容部22aに収容されている状態の物品Wの位置を引退位置P1といい、横方向第一側Y1に突出する限度での物品Wの位置を突出位置P2という。なお、本実施形態では、横方向Yは、搬送経路Rtに直交する方向である。
【0019】
図3に示すように、物品搬送車2は、走行部21を有している。走行部21は、モータ等の駆動手段により駆動されて移動経路Rに沿って走行する。本実施形態では、走行部21は、レール98上を走行する。図3に示すように、本実施形態では、走行部21は、走行用モータ21Mによって駆動されて水平軸周りに回転すると共にレール98の上面を搬送方向Xに沿って転動する走行輪21aと、レール98の鉛直面に当接して鉛直軸周りに回転すると共に走行部21をレール98に沿って案内する案内輪21bと、を有している。また、走行部21は、物品搬送車2の走行速度を検出する速度検出センサSe1(図5参照)を備えている。本実施形態では、速度検出センサSe1は、所定時間内における走行輪21aの回転数やレール98との相対速度等に基づいて物品搬送車2の速度を検出可能に構成されている。
【0020】
物品搬送車2は、本体部22を有している。本体部22は、走行部21に連結されており、走行部21の走行によって当該走行部21と一体的に移動経路Rを移動する。本実施形態では、本体部22は、レール98を構成する一対の長尺部材によって形成される隙間を介して、走行部21によって吊り下げ支持されている。本実施形態では、本体部22は、物品Wを収容する収容部22aと、当該収容部22aを覆うカバー部22bと、を有している。収容部22aは、カバー部22bの内側に配置されている。本実施形態では、カバー部22bは、横方向Yの両側及び下方が開放された門状に形成されている。より具体的には、カバー部22bは、横方向Yから見て角ばった逆U字状に形成されている。そのため、収容部22aは、横方向Yの両側及び下方において、収容部22aの外側と連通している。これにより、収容部22aに収容された状態の物品Wをスライド機構3Sによって横方向Yにスライドさせることで、当該物品Wを収容部22aの外側に位置させることができる。
【0021】
スライド機構3Sは、横方向Yに沿って伸縮自在である。例えば、スライド機構3Sは、縮んだ状態でカバー部22bの内側に収容され、伸びた状態で一部がカバー部22bの外側に突出するように構成されている。本実施形態では、スライド機構3Sは、収容部22aに取り付けられている。また、本実施形態では、スライド機構3Sは、スライド用モータ3SMによって駆動又は従動される一対のスライド用プーリ3Scと、一対のスライド用プーリ3Scのそれぞれに巻回されるスライド用ベルト3Sbと、スライド用ベルト3Sbに連結されて横方向Yにスライド自在なスライド部3Saと、を有している。そして、スライド部3Saは、横方向第一側Y1にスライドすることで収容部22aの外側に移動でき、横方向第二側Y2にスライドすることで収容部22aに移動できる。また、スライド機構3Sは、スライド部3Saのスライド量を検出するスライド量検出センサSe2を備えている(図5も参照)。本実施形態では、スライド量検出センサSe2は、スライド部3Saのスライド時におけるスライド用プーリ3Scの回転数等に基づいてスライド部3Saのスライド量を検出可能に構成されている。
【0022】
姿勢変更機構4は、搬送中の物品Wの姿勢を変更する。例えば、姿勢変更機構4は、物品Wを特定の軸周りに旋回させることにより、当該物品Wの姿勢を変更する。より具体的には、姿勢変更機構4は、鉛直軸周りに物品Wを旋回させることで、当該物品Wの姿勢を変更する。本実施形態では、姿勢変更機構4は、スライド機構3Sのスライド部3Saと連結している。そのため、姿勢変更機構4は、スライド機構3Sのスライド部3Saと一体的に横方向Yに沿って移動する。本実施形態では、姿勢変更機構4は、鉛直方向Zに沿う旋回軸4b周りに把持部3Gaを旋回させる旋回部4aを備えている。ここでは、旋回部4aの内部において、旋回軸4bの上部が旋回用モータ4Mと連結している。そして、旋回用モータ4Mによって旋回軸4bが駆動される。また、姿勢変更機構4は、把持部3Gaの旋回量を検出する旋回量検出センサSe5を備えている(図5も参照)。本実施形態では、旋回量検出センサSe5は、旋回軸4bの回転角度や旋回軸4bが回転する時間等に基づいて把持部3Gaの旋回量を検出可能に構成されている。
【0023】
昇降機構3Hは、物品Wを昇降させる。本実施形態では、昇降機構3Hは、カバー部22bが配置される高さから、少なくとも、授受部6bが配置される高さまでの間で、物品Wを昇降させる。本実施形態では、昇降機構3Hは、昇降用モータ3HMによって駆動される昇降用プーリ3Hcと、昇降用ドラム3Hdと、昇降用プーリ3Hc及び昇降用ドラム3Hdに巻回される昇降用ベルト3Hbと、昇降用モータ3HMと昇降用プーリ3Hcと昇降用ドラム3Hdと昇降用ベルト3Hbとを内部で保持する昇降部3Haと、を有している。そして、昇降機構3Hは、昇降用モータ3HMによって昇降用プーリ3Hcを駆動させることで、昇降用ベルト3Hbを巻き取り又は繰出して、後述するように把持部3Gaを昇降させる。また、本実施形態では、昇降部3Haは、姿勢変更機構4が有する旋回軸4bと連結している。そのため、昇降機構3Hは、旋回軸4bの回転によって鉛直軸周りに旋回する。昇降機構3Hは、姿勢変更機構4を介してスライド機構3Sと連結しているから、スライド機構3Sと一体的に横方向Yに沿って移動する。また、昇降機構3Hは、把持部3Gaの昇降量を検出する昇降量検出センサSe3を備えている。本実施形態では、昇降量検出センサSe3は、把持部3Gaの昇降時における昇降用プーリ3Hcの回転数や昇降用プーリ3Hcが回転する時間等に基づいて把持部3Gaの昇降量を検出可能に構成されている。
【0024】
把持機構3Gは、物品Wを把持可能である。例えば、把持機構3Gは、物品Wを上方から把持する。より具体的には、把持機構3Gは、平面視で物品Wと完全に重複した状態で、当該物品Wを上方から把持する。本実施形態では、把持機構3Gは、昇降用ベルト3Hbに連結される把持部3Gaと、把持部3Gaの内部で保持される把持用モータ3GM(図5参照)と、把持用モータ3GMにより駆動されて把持姿勢と解除姿勢との間で切り替わり自在な一対の把持爪3Gbと、を有している。そして、一対の把持爪3Gbは、互いに接近する方向に移動することで把持姿勢となり、互いに離間する方向に移動することで解除姿勢となる。本実施形態では、一対の把持爪3Gbは、把持姿勢にて物品Wのフランジ部Waを把持する。そして、一対の把持爪3Gbは、フランジ部Waを把持した状態から解除姿勢となることで、フランジ部Waの把持を解除する。また、把持機構3Gは、一対の把持爪3Gbの把持姿勢と解除姿勢とを検出する把持検出センサSe4を備えている(図5参照)。本実施形態では、把持検出センサSe4は、一対の把持爪3Gbによる光軸の遮断の有無等に基づいて一対の把持爪3Gbが把持姿勢であるか解除姿勢であるかを検出可能に構成されている。把持部3Gaは、昇降用ベルト3Hbを介して昇降機構3Hと連結しているから、把持機構3Gは、旋回軸4bの回転によって旋回する昇降機構3Hと一体的に旋回する。また、把持機構3Gは、昇降機構3H及び姿勢変更機構4を介してスライド機構3Sと連結しているから、昇降機構3H、姿勢変更機構4及びスライド機構3Sと横方向Yに沿って一体的に移動する。そのため、把持機構3Gに把持された状態の物品Wの、昇降、旋回及びスライドの各動作が、昇降機構3H、姿勢変更機構4及びスライド機構3Sによって行われる。
【0025】
姿勢変更機構4は、物品Wの姿勢を、搬送元である搬送対象場所6での移載のための姿勢である第一姿勢A1と、搬送先である搬送対象場所6での移載のための姿勢である第二姿勢A2とに変更可能である。前述したように、物品搬送設備1では、それぞれ異なる場所に配置される複数の処理装置6aによって、物品Wに収納された半導体基板が処理されるから、処理装置6aの授受部6bに物品Wが搬送される際には、処理装置6aが物品Wから半導体基板を取り出せるように物品Wの開口部Wbが処理装置6aに対向する状態となっていなければならない。すなわち、第二姿勢A2とは、搬送先である搬送対象場所6の処理装置6aに対して物品Wの開口部Wbが対向している状態の姿勢をいう。従って、第二姿勢A2は、搬送先に対応する処理装置6aの向きによって変化するものである。また、第一姿勢A1とは、搬送元における物品Wの姿勢をいう。例えば、搬送対象となる物品Wが、複数の処理装置6aのうちの一つの処理装置6aによってある処理工程を終えた物品Wである場合には、第一姿勢A1は、当該一つの処理装置6aに対して開口部Wbが対向している状態の姿勢となる。ただし、このような場合に限らず、例えば、第一姿勢A1は、物品Wが物品搬送設備1に搬入された時点での姿勢であっても良い。いずれにしても、物品Wの搬送を開始する時点での物品Wの姿勢が第一姿勢A1となる。
【0026】
本実施形態では、第一姿勢A1と第二姿勢A2との間での物品Wの姿勢変更は、旋回軸4b周りでの物品Wの旋回によって行われる。すなわち、図4に示すように、物品Wを旋回軸4bの延在方向(本例では鉛直方向Z)から見たときに、物品Wの角Wcが旋回軸4bを中心とする円弧を描くように物品Wを旋回させることで、物品Wを姿勢変更する。本実施形態では、第一姿勢A1の状態の物品Wを、搬送先に対応する処理装置6aに対して開口部Wbが対向する状態となるように、姿勢変更機構4によって旋回軸4b周りで旋回させる。これにより、物品Wが第一姿勢A1から第二姿勢A2に姿勢変更される。
【0027】
図4に示すように、カバー部22bは、収容部22aに収容された状態の物品Wが第一姿勢A1である場合又は第二姿勢A2である場合に物品Wと干渉せず、物品Wの姿勢が第一姿勢A1と第二姿勢A2との間で変更する過程の姿勢である中間姿勢Amである場合に物品Wと干渉する位置に設けられている。本実施形態では、カバー部22bは、搬送方向Xで互いに対向する一対の内側面22fを有している。また、収容部22aの搬送方向Xにおける領域は、一対の内側面22fによって区画されている。本実施形態では、収容部22aに収容された状態の物品Wの姿勢が中間姿勢Amである場合に、一対の内側面22fのうちの少なくとも一つの内側面22fに物品Wが干渉する位置に、カバー部22bが設けられている。より具体的には、図4に示すように、物品Wの旋回時における物品Wの回転中心(本例では旋回軸4b)から最も遠い部分(本例では物品Wの角Wc)が描く旋回軌跡TRが、収容部22aよりも大きくなるように、カバー部22bの大きさが設定されている。前述したように物品Wは平面視で四角形状であるから、旋回軌跡TRの直径は、平面視において物品Wの対角を結ぶ対角線によって定まる。より具体的には、一対の内側面22fの搬送方向Xにおける間隔が、平面視での物品Wの対角線の長さよりも短くなるように設定されている。
【0028】
1−2.制御装置の構成
次に、物品搬送設備1の制御構成について、図5を参照して説明する。
制御装置Hは、物品搬送設備1全体の制御を行う上位制御装置Huと、物品搬送車2の制御を行う下位制御装置Hdと、を含んで構成されている。上位制御装置Huは、物品搬送設備1のいずれかの領域に固定される状態で配置されている。下位制御装置Hdは、物品搬送車2に配置されて当該物品搬送車2と共に移動経路R上を移動する。本実施形態では、下位制御装置Hdは、複数の物品搬送車2のそれぞれに配置されて、それぞれの物品搬送車2と共に移動経路R上を移動する。制御装置Hは、マイクロコンピュータ等のプロセッサ、メモリ等の周辺回路等を備えている。そして、これらのハードウェアと、コンピュータ等のプロセッサ上で実行されるプログラムと、の協働により、制御装置Hの各機能が実現される。
【0029】
制御装置Hは、複数の搬送対象場所6のそれぞれについての物品Wの適正な姿勢を適正姿勢情報Jaとして記憶している。適正姿勢情報Jaは、上位制御装置Huに記憶されていても良いし、複数の下位制御装置Hdのそれぞれによって各別に記憶されていても良い。本実施形態では、上位制御装置Huは、記憶部を備え、複数の搬送対象場所6のそれぞれについての物品Wの適正な姿勢を適正姿勢情報Jaとして当該記憶部に記憶している。すなわち、上位制御装置Huは、複数の搬送対象場所6のそれぞれでの物品Wの第二姿勢A2を記憶部に記憶している。上位制御装置Huは、姿勢変更を伴うことなく、搬送元である搬送対象場所6から搬送先である他の搬送対象場所6に物品Wを搬送させる指令である単純搬送指令、又は姿勢変更を伴い、搬送元である搬送対象場所6から搬送先である他の搬送対象場所6に物品Wを搬送させる指令である特定搬送指令を、下位制御装置Hdに指令する。
【0030】
下位制御装置Hdは、単純搬送指令を受けることで単純搬送処理を実行し、特定搬送指令を受けることで特定搬送処理を実行する。下位制御装置Hdは、これらの各処理を実行するにために、各種モータの作動を制御する。本実施形態では、下位制御装置Hdは、速度検出センサSe1によって検出される物品搬送車2の走行速度の情報、スライド量検出センサSe2によって検出されるスライド部3Saのスライド量の情報、昇降量検出センサSe3によって検出される把持部3Gaの昇降量の情報、把持検出センサSe4によって検出される一対の把持爪3Gbの姿勢の情報、旋回量検出センサSe5によって検出される把持部3Gaの旋回量の情報、及び位置検出センサSe6によって検出される物品搬送車2の現在位置の情報を、取得する。そして、下位制御装置Hdは、各センサによって検出された情報に基づいて、走行用モータ21M、スライド用モータ3SM、昇降用モータ3HM、把持用モータ3GM、及び旋回用モータ4Mの作動を制御する。
【0031】
制御装置Hは、搬送元から搬送先までの経路である搬送経路Rtの途中において、移載機構3により収容部22aに対して外側に物品Wを移動させた状態で姿勢変更機構4によって物品Wを第一姿勢A1から第二姿勢A2に変更した後、物品Wを移載機構3により収容部22aに収容する制御である姿勢変更制御を実行する。本実施形態では、上位制御装置Huから特定搬送指令を受けた下位制御装置Hdが、搬送元である搬送対象場所6から搬送先である他の搬送対象場所6に物品Wを搬送する過程において姿勢変更制御を実行する。本例では、姿勢変更制御は、スライド機構3Sにより物品Wが収容部22aに対して外側に位置するように把持部3Gaをスライドさせた状態で、物品Wを旋回軸4b周りに旋回させることにより行う。具体的には、スライド機構3Sによってスライド部3Saを横方向第一側Y1に突出させることで、収容部22aに配置された姿勢変更機構4、昇降機構3H、把持機構3G及び把持部3Gaに把持された物品Wを突出位置P2に配置させる。そして、突出位置P2に配置された物品Wを把持機構3G、昇降機構3Hごと、姿勢変更機構4によって旋回させることで物品Wの姿勢を第一姿勢A1から第二姿勢A2に変更する。その後、スライド機構3Sによってスライド部3Saを横方向第二側Y2に引退させることで、第二姿勢A2となった物品Wを、把持機構3G、昇降機構3H及び姿勢変更機構4ごと引退位置P1(収容部22a)に配置させる。このようにして、姿勢変更制御が実行される。なお、本実施形態において物品Wが収容部22aに対して外側に位置している状態には、物品Wが収容部22aに対して完全に外側に位置している状態の他、物品Wの一部が収容部22aに対して外側に位置している状態も含む。更に言えば、平面視で物品Wが収容部22aに重複していない状態の他、平面視で物品Wの一部のみが収容部22aと重複していない状態も含む。
【0032】
本実施形態では、下位制御装置Hdは、搬送経路Rtの途中における物品搬送車2の停止中に姿勢変更制御を実行する。搬送経路Rt内には、複数の物品搬送車2が存在している状態であり、それぞれの物品搬送車2が、処理装置6aに半導体基板の処理をさせるために、物品Wを搬送対象場所6の授受部6bに搬送している。そのため、物品搬送車2が、授受部6bへの物品Wの移載のために搬送経路Rt内で停止すると、後続の他の物品搬送車2も停止することになる。すなわち、物品搬送車2は、搬送経路Rt内を走行中に、渋滞を原因として停止することがある。そこで、例えば、下位制御装置Hdは、搬送経路Rtの途中における物品搬送車2の渋滞停止中に姿勢変更制御を実行する。これにより、物品搬送車2が意図せず停止した時間を利用して、姿勢変更制御を実行できる。すなわち、姿勢変更制御を実行するために物品搬送車2を停止させる必要がないから、姿勢変更制御を実行する都度物品搬送車2を停止させる場合に比べて、搬送時間を短縮できる。
【0033】
本実施形態では、移載機構3により収容部22aに対して外側に物品Wをスライドさせた状態で、移載機構3及び物品Wが搬送経路Rtの周囲に存在する他の部材と干渉しない搬送経路Rtの領域が、姿勢変更許可領域Tpとして設定されている(図1参照)。より具体的には、スライド機構3Sにより物品Wを突出位置P2にスライドさせるのに十分なスペースを有する搬送経路Rtにおける領域が、姿勢変更許可領域Tpとして設定されている。そして、下位制御装置Hdは、物品搬送車2が姿勢変更許可領域Tp内にある場合に、姿勢変更制御を実行する。本実施形態において姿勢変更許可領域Tpは、物品Wを突出位置P2にスライドさせるのに十分なスペースを有しているから、姿勢変更許可領域Tpにて姿勢変更制御を実行することで、姿勢変更制御の実行中に移載機構3及び物品Wが搬送経路Rtに存在する他の部材と干渉することを抑制できる。なお、搬送経路Rtの周囲に存在する他の部材とは、例えば、処理装置6aや物品Wを一時的に保管するための収納棚及び保管庫等(図示省略)である。
【0034】
本実施形態では、姿勢変更許可領域Tpは、移動経路Rにおける、工程内経路Riと工程間経路Rcとの接続領域Tcに設定されている。本実施形態において接続領域Tcとは、工程内経路Riと工程間経路Rcとが接続されている領域付近において、物品搬送車2が工程内経路Riを循環するための循環経路に相当する領域をいう(図1参照)。物品搬送設備1では、工程内経路Riと工程間経路Rcとのそれぞれには、各処理装置6aで処理を行う半導体基板を搬送するために、比較的多くの物品搬送車2が走行している。これに対して、工程内経路Riと工程間経路Rcとの接続領域Tcを走行する物品搬送車2の数が比較的少ない。そのため、接続領域Tcを姿勢変更許可領域Tpとして、当該接続領域Tcに物品搬送車2があるときに姿勢変更制御を実行することで、当該物品搬送車2が姿勢変更制御のために停止することが他の物品搬送車2の走行に影響することを抑制できる。すなわち、搬送経路Rt中における渋滞の発生を抑制し、物品搬送設備1の全体の搬送効率の低下を抑制できる。
【0035】
図2に示すように、本実施形態では、移載機構3は、レール98又は天井99に支持されると共に移動経路Rに隣接する位置に配置された支持部材5を更に備えている。図示の例では、支持部材5は、レール98及び天井99の双方に支持されている。また、支持部材5は、物品Wが収容部22aに対して外側に位置するように把持部3Gaをスライドさせた状態で、スライド機構3Sを鉛直方向Zに支持するように設けられている。支持部材5は、レール98よりも横方向第一側Y1において天井に連結する天井連結部5aと、天井連結部5aの下端部に連結すると共に横方向第一側Y1からレール98に連結するレール連結部5bと、スライド機構3Sを鉛直方向下側Z2から支持する支持部5dと、レール連結部5bと支持部5dとを繋ぐフレーム部5cと、を有している。物品Wが収容部22aに対して外側に位置するように把持部3Gaを突出位置P2にスライドさせた状態で、支持部5dが、スライド機構3Sに連結された姿勢変更機構4を鉛直方向下側Z2から支持する。すなわち、支持部5dが、姿勢変更機構4を介して間接的にスライド機構3Sを支持している。これにより、支持部5dが、把持部3Ga及びこれに把持された物品Wを支持できる。その結果、スライド機構3Sにおける物品W等を支持した部分を力点とした物品搬送車2を中心とするモーメントによって物品搬送車2やレール98等に掛かる負担を軽減できる。また、支持部材5は、レール98及び天井99の双方に支持されているから、支持部材5が受ける物品W等の荷重をレール98及び天井99の双方に分散でき、支持部材5自体に掛かる負担も軽減できる。
【0036】
本実施形態では、支持部5dは、横方向Yに沿って延在する板状部材が搬送方向Xに離間して一対配置される状態で構成されている。そして、支持部5dは、一対の板状部材によって姿勢変更機構4を下方から支持する。より具体的には、姿勢変更機構4の旋回部4aには、支持部5dにより案内されるスライド用案内輪4cが設けられており、支持部5dは、このスライド用案内輪4cを鉛直方向下側Z2から支持する。また、スライド部3Saが支持部材5に向かって横方向第一側Y1にスライドする際に当該スライド部3Saが支持部材5に案内され易いように、支持部5dの横方向第二側Y2の端部には、横方向第二側Y2に向かって鉛直方向下側Z2に傾斜する傾斜部5eが形成されている。スライド部3Saが横方向第一側Y1にスライドしてスライド用案内輪4cが支持部5dに支持される過程で、当該スライド用案内輪4cは傾斜部5eを転動する。本実施形態では、このような支持部材5が、姿勢変更許可領域Tpに設けられている。すなわち、本実施形態では、姿勢変更制御を実行する過程で、スライド機構3Sを支持部材5に支持させる。これにより、姿勢変更制御の実行中に、モーメントによって物品搬送車2やレール98等に掛かる負担を軽減できる。
【0037】
次に、姿勢変更制御が実行される手順について、図6を参照して説明する。
下位制御装置Hdは、以下の手順により姿勢変更制御を実行する。すなわち、スライド用モータ3SMを制御して横方向第一側Y1への物品Wのスライドを開始させる(ステップ#10)。その後、スライド量検出センサSe2によって検出された情報を得て、物品Wが突出位置P2に到達したか否かを判断する(ステップ#11)。規定時間内に物品Wが突出位置P2に到達していないと判断した場合は(ステップ#11:No,ステップ#19:Yes)、各種モータの制御を中止し(ステップ#20)、エラー報知を行い(ステップ#21)、姿勢変更制御を終了する。物品Wが突出位置P2に到達したと判断した場合は(ステップ#11:Yes)、スライド用モータ3SMを制御して物品Wのスライドを停止させる(ステップ#12)。その後、旋回用モータ4Mを制御して物品Wの旋回を開始させる(ステップ#13)。その後、旋回量検出センサSe5によって検出された情報を得て、物品Wが第二姿勢A2になったか否かを判断する(ステップ#14)。規定時間内に物品Wが第二姿勢A2になっていないと判断した場合は(ステップ#14:No,ステップ#22:Yes)、各種モータの制御を中止し(ステップ#20)、エラー報知を行い(ステップ#21)、姿勢変更制御を終了する。物品Wが第二姿勢A2になったと判断した場合は(ステップ#14:Yes)、旋回用モータ4Mを制御して物品Wの旋回を停止させる(ステップ#15)。その後、スライド用モータ3SMを制御して横方向第二側Y2への物品Wのスライドを開始させる(ステップ#16)。その後、スライド量検出センサSe2によって検出された情報を得て、物品Wが引退位置P1に到達したか否かを判断する(ステップ#17)。規定時間内に物品Wが引退位置P1に到達していないと判断した場合は(ステップ#17:No,ステップ#23:Yes)、各種モータの制御を中止し(ステップ#20)、エラー報知を行い(ステップ#21)、姿勢変更制御を終了する。物品Wが引退位置P1に到達したと判断した場合は(ステップ#17:Yes)、スライド用モータ3SMを制御して物品Wのスライドを停止させる(ステップ#18)。以上の手順を行うことにより、下位制御装置Hdは、姿勢変更制御を実行する。
【0038】
下位制御装置Hdは、上位制御装置Huから特定搬送指令を受けた場合に(図5参照)、姿勢変更制御を伴う物品Wの搬送処理としての特定搬送処理を実行する。姿勢変更制御は、物品Wを搬送する過程で実行される。以下、特定搬送処理が実行される手順について、図7を参照して説明する。
【0039】
下位制御装置Hdは、以下の手順により特定搬送処理を実行する。すなわち、特定搬送指令を受けた後、走行用モータ21Mを制御して物品搬送車2を搬送元となる搬送対象場所6へ走行させる(ステップ#30)。その後、スライド用モータ3SM、昇降用モータ3HM及び把持用モータ3GMを制御して搬送対象場所6の授受部6bに載置された物品Wを移載する。すなわち、当該載置された物品Wを収容部22aに収容する(ステップ#31)。その後、走行用モータ21Mを制御して搬送先となる搬送対象場所6に向けて物品搬送車2を走行させる(ステップ#32)。その後、速度検出センサSe1によって検出された情報を得て、物品搬送車2が渋滞等を原因として停止したか否かを判断する(ステップ#33)。物品搬送車2が停止したと判断した場合は(ステップ#33:Yes)、位置検出センサSe6によって検出された情報を得て、物品搬送車2の現在位置が姿勢変更許可領域Tpであるか否かを判断する(ステップ#34)。物品搬送車2の現在位置が姿勢変更許可領域Tpでないと判断した場合は(ステップ#34:No)、渋滞が解消され再び走行を開始する物品搬送車2についてステップ#33の処理を行う。物品搬送車2の現在位置が姿勢変更許可領域Tpであると判断した場合は(ステップ#34:Yes)、姿勢変更制御を実行する(ステップ#35)。姿勢変更制御を実行した後は、走行用モータ21Mを制御して搬送先となる搬送対象場所6に向けて物品搬送車2を再び走行させる(ステップ#36)。
【0040】
ステップ#33の処理において、物品搬送車2が停止していないと判断した場合は(ステップ#33:No)、物品搬送車2の走行中に、物品搬送車2の現在位置が姿勢変更許可領域Tpである旨の位置情報を、位置検出センサSe6が読み取ったか否かを判断する(ステップ#37)。前述したように、搬送経路Rtは、複数の位置情報記憶部によって複数の領域に区画されている。複数の位置情報記憶部のうち、姿勢変更許可領域Tpに配置されている位置情報記憶部は、当該位置情報記憶部の配置位置が姿勢変更許可領域Tpである旨の位置情報を記憶している。そのため、物品搬送車2が姿勢変更許可領域Tpにあるときは、物品搬送車2が備える位置検出センサSe6により姿勢変更許可領域Tpに配置されている位置情報記憶部の位置情報を読み取ることで、下位制御装置Hdは、物品搬送車2の現在位置が姿勢変更許可領域Tpにあると判断できる。下位制御装置Hdは、物品搬送車2の走行中に、物品搬送車2の現在位置が姿勢変更許可領域Tpである旨の位置情報を、位置検出センサSe6が読み取っていないと判断した場合は(ステップ#37:No)、ステップ#33の処理を行う。物品搬送車2の現在位置が姿勢変更許可領域Tpである旨の情報を、位置検出センサSe6が読み取ったと判断した場合は(ステップ#37:Yes)、物品搬送車2の現在位置である姿勢変更許可領域Tpが、搬送先となる搬送対象場所6までに存在する複数の姿勢変更許可領域Tpのうち最後の姿勢変更許可領域Tpであるか否かを判断する(ステップ#38)。物品搬送車2の現在位置である姿勢変更許可領域Tpが最後の姿勢変更許可領域Tpでないと判断した場合は(ステップ#38:No)、ステップ#33の処理を行う。物品搬送車2の現在位置である姿勢変更許可領域Tpが最後の姿勢変更許可領域Tpであると判断した場合は(ステップ#38:Yes)、走行用モータ21Mを制御して物品搬送車2を停止させる(ステップ#39)。その後、姿勢変更制御を実行する(ステップ#35)。姿勢変更制御を実行した後は、走行用モータ21Mを制御して搬送先となる搬送対象場所6に向けて物品搬送車2を再び走行させる(ステップ#36)。
【0041】
物品搬送車2を再び走行させた後は、位置検出センサSe6によって検出された情報を得て、物品搬送車2が搬送先となる搬送対象場所6に到達したか否かを判断する(ステップ#40)。物品搬送車2が搬送先となる搬送対象場所6に到達していないと判断した場合は(ステップ#40:No)、ステップ#30の処理を繰り返す。物品搬送車2が搬送先となる搬送対象場所6に到達したと判断した場合は(ステップ#40:Yes)、走行用モータ21Mを制御して物品搬送車2の走行を停止させる(ステップ#41)。その後、スライド用モータ3SM、昇降用モータ3HM及び把持用モータ3GMを制御して収容部22aに収容された物品Wを移載する。すなわち、当該収容された物品Wを搬送対象場所6の授受部6bに載置する(ステップ#42)。以上の手順を行うことにより、下位制御装置Hdは、特定搬送処理を実行する。
【0042】
以上では、下位制御装置Hdが、上位制御装置Huから特定搬送指令を受けて、特定搬送処理を実行する場合を説明した。しかし、下位制御装置Hdは、単純搬送指令を上位制御装置Huから受けた場合には(図5参照)、姿勢変更制御を伴わない搬送処理としての単純搬送処理を実行する。下位制御装置Hdは、単純搬送処理を実行するに際し、図7のフローチャートにおけるステップ#30からステップ#32までの処理を実行した後、ステップ#40からステップ#42までの処理を実行する。これにより、下位制御装置Hdは、単純搬送処理を実行する。
【0043】
2.第二実施形態
次に、第二実施形態に係る物品搬送設備1について説明する。第二実施形態では、姿勢変更制御の手順のみが第一実施形態と異なる。以下では、第一実施形態と異なる点を中心に説明する。特に説明しない点については、第一実施形態と同様である。
【0044】
図8に示すように、下位制御装置Hdは、姿勢変更制御を、物品Wが収容部22aの外側におけるカバー部22bと干渉しない範囲内にあって、且つ移載機構3による物品Wの移動中に実行する。第二実施形態では、下位制御装置Hdは、物品Wが収容部22aの外側におけるカバー部22bの内側面22fと干渉しない範囲であって、且つスライド機構3Sによる物品Wの横方向Yに沿う移動中に、姿勢変更制御を実行する。より具体的には、図8に示すように、物品Wが収容部22aに収容された状態から、スライド機構3Sにより物品Wを横方向第一側Y1にスライドさせ、物品Wが突出位置P2に配置される前に、物品Wの角Wcが内側面22fに干渉しない範囲で姿勢変更機構4により物品Wの旋回を開始する。そして、姿勢変更機構4による物品Wの旋回を継続させたまま、突出位置P2に配置された物品Wをスライド機構3Sにより横方向第二側Y2にスライドさせ、物品Wを引退位置P1(収容部22a)に配置させる。少なくとも、スライド機構3Sによって物品Wを横方向第二側Y2にスライドさせている途中に物品Wの第二姿勢A2への姿勢変更を完了させる。これにより、姿勢変更制御に要する時間を短縮できる。ここで、姿勢変更制御の時間は短いほど好ましい。第二実施形態では、下位制御装置Hdは、姿勢変更機構4によって物品Wを第一姿勢A1から第二姿勢A2に変更するために当該物品Wを旋回させる時間と、スライド機構3Sによって物品Wを収容部22aから突出させ再び収容部22aに収容するまでの時間と、の差が短くなるように、姿勢変更機構4(旋回用モータ4M)及びスライド機構3S(スライド用モータ3SM)を制御する。詳細には、物品Wを横方向第一側Y1にスライドさせる過程で、物品Wがカバー部22bに干渉しない非干渉位置に位置するまで物品Wの旋回を開始できないから、物品Wを収容部22aから突出させ再び収容部22aに収容するまでのうちの物品Wがカバー部22bと干渉しない範囲にいる時間が、物品Wを旋回させる時間と同程度になるように、下位制御装置Hdは、姿勢変更機構4(旋回用モータ4M)及びスライド機構3S(スライド用モータ3SM)を制御する。これにより、姿勢変更制御に要する時間を更に短縮できる。
【0045】
次に、第二実施形態に係る姿勢変更制御の手順について、図9を参照して説明する。なお、以下の説明では、物品Wを収容部22aに収容された状態から横方向第一側Y1にスライドさせた後、当該物品Wを横方向第二側Y2にスライドさせて当該物品Wを収容部22aに収容させるまでの一連の動作を、往復スライドと称する。第二実施形態に係る姿勢変更制御では、往復スライドの開始から終了までの間であって、カバー部22bと干渉しない範囲内にある間に、物品Wの姿勢を第一姿勢A1から第二姿勢A2に変更する。
【0046】
下位制御装置Hdは、以下の手順により第二実施形態に係る姿勢変更制御を実行する。すなわち、スライド量検出センサSe2の情報を得て、物品Wの横方向Yにおける位置を把握しながらスライド用モータ3SMを制御することで、物品Wの往復スライドを開始させる(ステップ#50)。その後、スライド量検出センサSe2によって検出される情報を得て、中間姿勢Amの物品Wが非干渉位置に位置しているか否かを判断する(ステップ#51)。ここで、非干渉位置は、物品Wの大きさや形状、物品Wの旋回量及び物品Wのスライド量の組み合わせにより様々である。第二実施形態では、予め下位制御装置Hdは、様々なパターンにおける複数の非干渉位置の情報を記憶している。第二実施形態では、下位制御装置Hdは、この予め記憶された情報を用いて、非干渉位置に物品Wが位置しているか否かを判断する。規定時間内に物品Wが非干渉位置にないと判断した場合、すなわち、中間姿勢Amの物品Wがカバー部22bと干渉する位置であると判断した場合は(ステップ#51:No,ステップ#56:Yes)、各種モータの制御を中止し(ステップ#57)、エラー報知を行い(ステップ#58)、姿勢変更制御を終了する。物品Wが非干渉位置にあると判断した場合は(ステップ#51:Yes)、旋回用モータ4Mを制御して物品Wの旋回を開始させる(ステップ#42)。その後、旋回量検出センサSe5によって検出される情報を得て、物品Wが第二姿勢A2になったか否かを判断する(ステップ#53)。規定時間内に物品Wが第二姿勢A2になっていないと判断した場合は(ステップ#53:No,ステップ#59:Yes)、各種モータの制御を中止し(ステップ#57)、エラー報知を行い(ステップ#58)、姿勢変更制御を終了する。物品Wが第二姿勢A2になったと判断した場合は(ステップ#53:Yes)、旋回用モータ4Mを制御して物品Wの旋回を停止させる(ステップ#54)。その後、物品Wの往復スライドを終了させる(ステップ#55)。以上の手順により、下位制御装置Hdは、第二実施形態に係る姿勢変更制御を実行する。
【0047】
3.その他の実施形態
次に、物品搬送設備のその他の実施形態について説明する。
【0048】
(1)上記の実施形態では、姿勢変更許可領域Tpが、移動経路Rにおける、工程内経路Riと工程間経路Rcとの接続領域Tcに設定されている例について説明した。しかし、本発明に係る物品搬送設備1は、このような構成に限定されない。すなわち、図1に示すように、移動経路R内に、物品搬送車2が退避する退避経路Reを別途設け、姿勢変更許可領域Tpは退避経路Reに設定されていても良い。これによれば、物品搬送車2が姿勢変更制御を実行する際に、移動経路R内における退避経路Re以外の経路を走行する他の物品搬送車2の走行に影響を与えることを大幅に抑制できる。
【0049】
(2)上記の実施形態では、支持部材5が、姿勢変更許可領域Tpに設けられており、下位制御装置Hdが姿勢変更制御を実行する過程で、スライド機構3Sを支持部材5に支持させる例について説明した。しかし、本発明に係る物品搬送設備1は、このような構成に限定されない。すなわち、姿勢変更許可領域Tpに支持部材5を設けなくても良く、下位制御装置Hdは、支持部材5のない領域で姿勢変更制御を実行しても良い。
【0050】
(3)上記の実施形態では、下位制御装置Hdは、搬送経路Rtの途中における物品搬送車2の渋滞停止中に姿勢変更制御を実行する例について説明した。しかし、本発明に係る物品搬送設備1は、このような構成に限定されない。すなわち、上位制御装置Hu又は下位制御装置Hdが搬送経路Rtの渋滞を認知可能に構成され、搬送経路Rtが渋滞中であると判断した場合に、物品搬送車2を直近の姿勢変更許可領域Tpに移動させた上で姿勢変更制御を実行しても良い。
【0051】
(4)上記の実施形態では、下位制御装置Hdは、搬送経路Rtの途中における物品搬送車2の停止中に姿勢変更制御を実行する例について説明した。しかし、本発明に係る物品搬送設備1は、このような構成に限定されない。すなわち、下位制御装置Hdは、姿勢変更許可領域Tp内を物品搬送車2が走行中に姿勢変更制御を実行しても良い。この場合には、安全に姿勢変更制御を実行するために、物品搬送車2を低速で走行させるようにすると良い。
【0052】
(5)上記の実施形態では、鉛直方向Zに沿う旋回軸4bの回転によって第一姿勢A1から第二姿勢A2に物品Wの姿勢を変更する例について説明した。すなわち、上記の実施形態では、物品Wの姿勢を水平面内において2次元的に変更させていた。しかし、本発明に係る物品搬送設備1は、このような構成に限定されない。すなわち、搬送先の態様によって物品Wの姿勢を3次元的に変更させても良い。例えば、搬送元では、物品Wの開口部Wbが水平方向に向いた状態であるのに対し、搬送先では、物品Wの開口部Wbを鉛直方向Z、又は鉛直斜め方向に向いた状態にしなければならない場合には、物品Wを鉛直軸及び水平軸周りに旋回させることで物品Wの姿勢を変更させても良い。
【0053】
(6)上記の実施形態では、把持部3Gaを横移動させる横移動機構として、把持部3Gaをスライドさせるスライド機構3Sを例示して説明した。しかし、本発明に係る物品搬送設備1は、このような構成に限定されない。すなわち、横移動機構3Sとして、アームを有するリンク機構等であっても良く、当該アームにより把持部3Gaを横移動させても良い。
【0054】
(7)上記の実施形態では、物品Wのフランジ部Waを把持する把持機構3Gが、移載機構3の一部として構成されている例について説明した。しかし、本発明に係る物品搬送設備1は、このような構成に限定されない。すなわち、物品Wを下方から支持するフォーク機構が移載機構の一部として構成されていても良い。この場合には、フォーク機構が物品Wを下方から支持した状態で、当該フォーク機構を姿勢変更機構により旋回させるようにすると良い。
【0055】
(8)上記の実施形態では、物品Wの姿勢を第一姿勢A1から第二姿勢A2に変更するために、姿勢変更制御を実行する過程で、スライド機構3Sによって物品Wを収容部22aの外側に移動させる例について説明した。しかし、本発明に係る物品搬送設備1は、このような構成に限定されてない。すなわち、昇降機構3Hによって物品Wを下降させることにより当該物品Wを収容部22aの外側に移動させても良い。この状態で姿勢変更機構4によって物品Wを旋回させることにより当該物品Wの姿勢変更を行う。この場合には、スライド機構3Sは設けなくても良いし、スライド機構3Sを支持する支持部材5も設けなくて良い。すなわち、移載機構3は、物品Wを把持する把持部3Gaと、把持部3Gaを鉛直方向Zに沿って昇降させる昇降機構3Hと、を備え、姿勢変更機構4は、鉛直方向Zに沿う旋回軸周りに把持部3Gaを旋回させる旋回部4aを備え、第一姿勢A1と第二姿勢A2との間での姿勢変更は旋回軸周りでの物品Wの旋回によって行われ、姿勢変更制御は、昇降機構3Hにより物品Wが収容部22aに対して外側に位置するように把持部3Gaを下降させた状態で、物品Wを旋回軸周りに旋回させることにより行うと良い。
【0056】
(9)なお、前述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0057】
4.上記実施形態の概要
以下、上記において説明した物品搬送設備の概要について説明する。
【0058】
物品搬送設備は、複数の搬送対象場所の間で移動経路に沿って移動して物品を搬送する物品搬送車と、当該物品搬送車を制御する制御装置と、を備え、前記物品搬送車は、前記物品を収容する収容部と、当該収容部を覆うカバー部と、前記収容部と当該収容部に対して外側に位置する前記複数の搬送対象場所の一つとの間で前記物品を移動させて当該搬送対象場所と前記物品搬送車との間の前記物品の移載を行う移載機構と、搬送中の前記物品の姿勢を変更する姿勢変更機構と、を有し、前記姿勢変更機構は、前記物品の姿勢を、搬送元である前記搬送対象場所での移載のための姿勢である第一姿勢と、搬送先である前記搬送対象場所での移載のための姿勢である第二姿勢とに変更可能であり、前記カバー部は、前記収容部に収容された状態の前記物品が前記第一姿勢である場合及び前記第二姿勢である場合に前記物品と干渉せず、前記物品の姿勢が前記第一姿勢と前記第二姿勢との間で変更する過程の姿勢である中間姿勢である場合に前記物品と干渉する位置に設けられ、前記制御装置は、前記搬送元から前記搬送先までの経路である搬送経路の途中において、前記移載機構により前記収容部に対して外側に前記物品を移動させた状態で前記姿勢変更機構によって前記物品を前記第一姿勢から前記第二姿勢に変更した後、前記物品を前記移載機構により前記収容部に収容する制御である姿勢変更制御を実行する。
【0059】
本構成では、収容部を覆うカバー部は、第一姿勢又は第二姿勢の物品が収容部に収容された状態で、当該物品と干渉しない位置に設けられている。一方で、このカバー部が設けられる位置は、収容部に収容された状態の物品が中間姿勢になった場合に、当該物品と干渉する位置となっている。すなわち、収容部を覆うカバー部と物品との隙間は比較的小さく設定されている。従って、本構成に係る物品搬送設備によれば、物品搬送車の大型化を抑制することができる。また、本構成では、物品搬送車が、搬送元から搬送先までの経路である搬送経路の途中において、移載機構により収容部に対して外側に物品を移動させた状態で、物品搬送車が備える姿勢変更機構によって物品の姿勢を第一姿勢から第二姿勢に変更する。従って、本構成によれば、物品搬送のための時間及び空間を有効利用して、物品の姿勢変更を行うことができる。このため、物品搬送車とは別に姿勢変更機構を備える場合に比べて、設備の小型化及び低コスト化を図ることが容易となっている。
【0060】
また、前記移載機構は、前記物品を把持する把持部と、前記把持部を鉛直方向に沿って昇降させる昇降機構と、前記搬送経路に交差すると共に水平方向に沿う方向である横方向に沿って前記把持部を横移動させる横移動機構と、を備え、前記姿勢変更機構は、前記鉛直方向に沿う旋回軸周りに前記把持部を旋回させる旋回部を備え、前記第一姿勢と前記第二姿勢との間での姿勢変更は前記旋回軸周りでの前記物品の旋回によって行われ、前記姿勢変更制御は、前記横移動機構により前記物品が前記収容部に対して外側に位置するように前記把持部を横移動させた状態で、前記物品を前記旋回軸周りに旋回させることにより行うと好適である。
【0061】
本構成によれば、物品の鉛直方向及び横方向の位置と旋回軸周りの角度とを調整して搬送先に移載することができる。また、そのような調整のための機構を利用して、搬送経路の途中において、カバー部に干渉しないように収容部に対して外側に物品を移動させた状態で、物品の姿勢を第一姿勢から第二姿勢に変更することができる。
【0062】
また、上記の構成に加えて、前記移動経路は、天井から吊り下げ支持されたレールにより定まり、前記移載機構は、前記レール又は前記天井に支持されると共に前記移動経路に隣接する位置に配置された支持部材を更に備え、前記支持部材は、前記物品が前記収容部に対して外側に位置するように前記把持部を横移動させた状態で、前記横移動機構を前記鉛直方向に支持するように設けられていると好適である。
【0063】
物品を把持した状態の把持部が収容部に対して外側に位置するように、当該把持部を移載機構によって横移動させると、把持部が横移動した距離に比例して物品搬送車を中心とするモーメントが大きくなり、物品搬送車やレール等に負担が掛かる場合がある。本構成では、物品が収容部に対して外側に位置するように把持部を横移動させた状態で、支持部材が横移動機構を鉛直方向に支持する。すなわち、支持部材が、横移動機構を介して間接的に把持部及びこれに把持された物品を支持でき、その結果、物品搬送車やレール等に掛かる負担を軽減できる。
【0064】
また、前記制御装置は、前記搬送経路の途中における前記物品搬送車の停止中に前記姿勢変更制御を実行すると好適である。
【0065】
本構成によれば、物品搬送車が停止中の安定した状態で、姿勢変更制御を実行できる。また、物品搬送車の移動中に収容部に対して外側に物品を移動させることがないので、収容部に対して外側にある当該物品と移動経路の周囲に存在する他の部材とが干渉することを抑制できる。
【0066】
また、前記制御装置は、前記姿勢変更制御を、前記物品が前記収容部の外側における前記カバー部と干渉しない範囲内にあって、且つ前記移載機構による前記物品の移動中に実行すると好適である。
【0067】
本構成によれば、移載機構による収容部の内側と外側との間での物品の移動中に姿勢変更制御を実行できるから、移載機構による物品の移動と姿勢変更とを各別に行う場合に比べて、姿勢変更制御に要する時間を短縮できる。更に、このような姿勢変更制御は、物品が収容部の外側におけるカバー部と干渉しない範囲内で行われるので、物品とカバー部とが干渉することも抑制できる。
【0068】
また、前記移載機構により前記収容部に対して外側に前記物品を横移動させた状態で、前記移載機構及び前記物品が前記搬送経路の周囲に存在する他の部材と干渉しない前記搬送経路の領域が、姿勢変更許可領域として設定され、前記制御装置は、前記物品搬送車が前記姿勢変更許可領域内にある場合に、前記姿勢変更制御を実行すると好適である。
【0069】
本構成によれば、移載機構及び物品が搬送経路の周囲に存在する他の部材と干渉しない領域である姿勢変更許可領域に物品搬送車があるときに姿勢変更制御が実行されるから、姿勢変更制御の実行中に移載機構及び物品が搬送経路の周囲に存在する他の部材と干渉することを抑制できる。
【0070】
また、前記物品は、半導体基板が収納される容器であり、前記搬送対象場所には、前記半導体基板に対する処理を行う処理装置と前記物品搬送車との間での前記物品の授受のための授受部が含まれ、複数の前記授受部が工程内経路で結ばれていると共に、複数の工程内経路が工程間経路で結ばれており、前記姿勢変更許可領域は、前記移動経路における、前記工程内経路と前記工程間経路との接続領域に設定されていると好適である。
【0071】
このような工程内経路及び工程間経路を備える設備において、工程内経路と工程間経路とのそれぞれには、各処理装置で処理を行う半導体基板を搬送するために、比較的多くの物品搬送車が走行している。これに対して、工程内経路と工程間経路との接続領域では、比較的物品搬送車の数が少ない。本構成では、この接続領域が姿勢変更許可領域に設定されているため、特定の物品搬送車の姿勢変更制御が、他の物品搬送車の走行に影響を与えることを抑制することができる。従って、物品搬送設備の全体の搬送効率の低下を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本開示に掛かる技術は、複数の搬送対象場所の間で移動経路に沿って移動して物品を搬送する物品搬送車を備えた物品搬送設備に利用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 :物品搬送設備
2 :物品搬送車
3 :移載機構
3G :把持機構
3Ga :把持部
3H :昇降機構
3S :横移動機構(スライド機構)
4 :姿勢変更機構
4a :旋回部
4b :旋回軸
5 :支持部材
6 :搬送対象場所
6a :処理装置
6b :授受部
22a :収容部
22b :カバー部
98 :レール
99 :天井
A1 :第一姿勢
A2 :第二姿勢
Am :中間姿勢
H :制御装置
Hd :下位制御装置
Hu :上位制御装置
R :移動経路
Rc :工程間経路
Re :退避経路
Ri :工程内経路
Rt :搬送経路
Tc :接続領域
Tp :姿勢変更許可領域
W :物品
Y :横方向
Z :鉛直方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9