(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
空気入りタイヤの空洞部内のリム上に、タイヤ周方向に複数に分割されたランフラット支持体を、帯状部材で連結しタイヤ周方向に環状に配置したタイヤ/ホイール組立体であって、前記ランフラット支持体が、発泡体からなる本体部と、そのタイヤ径方向外側に配置された外周部とからなり、前記帯状部材が、そのタイヤ周方向長さを伸縮自在に繰り返し調整可能で、かつ固定、解除することができる締緩機構を有すると共に、前記外周部の厚さが0.5mm〜5.0mm、ランフラット走行時にタイヤ内周面と接する外周部の表面積が、前記タイヤ内周面の面積の1/4以上3/4以下であることを特徴とするタイヤ/ホイール組立体。
互いに隣接する前記本体部同士の接合面と、互いに隣接する前記外周部同士の接合面とが、タイヤ径方向に重ならないように、タイヤ周方向にずらせて配置されてなることを特徴とする請求項1記載のタイヤ/ホイール組立体。
前記本体部が、前記外周部の側に張り出しタイヤ周方向に延在する少なくとも2つの凸部と、これら凸部の間に形成された凹部を有し、この凹部に前記帯状部材がタイヤ1周にわたり配置されてなることを特徴とする請求項1または2記載のタイヤ/ホイール組立体。
前記本体部が、前記凸部の両側に沿って形成され前記リム上に固定される脚部を有し、かつ前記凸部および脚部の内周面と前記リムの外周面により中空部が形成され、前記空気入りタイヤの子午線方向断面における前記中空部が占める面積が空気入りタイヤの空洞部の断面積の1/4以上であることを特徴とする請求項3に記載のタイヤ/ホイール組立体。
前記本体部が、前記外周部の側に張り出しタイヤ周方向に延在する少なくとも1つの凸部と、その凸部の両側に沿って形成され前記リム上に固定される脚部を有し、かつ前記凸部および脚部の内周面と前記リムの外周面により中空部が形成され、前記空気入りタイヤの子午線方向断面における前記中空部が占める面積が空気入りタイヤの空洞部の断面積の1/4以上であることを特徴とする請求項1または2記載のタイヤ/ホイール組立体。
前記外周部が、カーボンファイバー、ガラス繊維または有機繊維により強化された熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂、エボナイトからなる群から選択されることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のタイヤ/ホイール組立体。
【背景技術】
【0002】
現在、空気入りタイヤの内圧減少時或いはパンク時等の緊急時に走行可能にならしめるランフラットタイヤとしては、サイドウオール部を補強した補強層が、内圧減少時のタイヤトレッド部分を支える構造が一般的であるが、通常のチューブレスタイヤに比べてタイヤの剛性が高く、タイヤ重量の増加等による操縦性、乗り心地、タイヤノイズなどの悪化が懸念される。その他に、リム本体に設けられた内側フランジ部分の形状を工夫し、緊急時にはこの内側リムフランジ部分によってトレッド部分を支える構造になっているものや、タイヤ内部にタイヤとは別体の中子を設置し、タイヤ内圧減少時あるいはパンク時において、この中子によってタイヤを支えることによって緊急走行を可能ならしめる方法などが提案されている。
【0003】
タイヤ内部において、リムに支持される形状で中子を設置する方法として、特許文献1や特許文献2に皿状横断面を持つ環状体を設置する方法が提案されている。しかしこの方法は、中子をリムに設置する際には、内圧減少時にタイヤがリムから脱離(リム外れ)することを防止するために、タイヤビード部分を内側からリムのフランジ部分に対して強力に支持するように設置しなければならならない。このため、その支持要素を複数個に分けた構造としたり、材質を変えることで対応することが提案されている。しかしながら、タイヤ内部にこれら中子を設置すること、即ち、タイヤビードの片方をリム組みした後に、これら中子をもう一方のタイヤビードとリムフランジとの僅かな空間から挿入して、所定の位置に設置し、しかる後にもう一方のビードを同様にリムフランジに嵌めなければならず、大変に煩雑かつ特殊な治具と技術が必要である。
【0004】
また、皿型横断面をもつ環状体以外のものとして、特許文献3、特許文献4では、リムの内側フランジ部分を高くしてリム外れを防止することに加え、両内側フランジ部分の間のリム部分にリング状のランフラットタイヤ支持体を設置することが提案されている。
【0005】
しかしながらこの方法は、通常に比べ高さのある内側フランジを有するリムという特殊な形状のホイールを製造しなければならないことに加え、リムの外周に沿って予め設置されたランフラット支持体があるために、これらにタイヤを装着することは非常に困難であり、タイヤの形状やサイズによって不可能な場合が多い。また、このランフラット支持体の構造、材質についても特許文献4では、ポリウレタンフォーム弾性体が提案され、その他、特許文献5及び特許文献6では、樹脂発泡体からなる基材部と、非発泡樹脂外層部、或いはその補強層からなる複合構造体であることが、耐久性等の問題に対し提案されているが、これらは、前記タイヤ設置の問題をなんら解決するものではない。また特許文献7、特許文献8、特許文献9などでは、ランフラットタイヤ走行支持体として、ホイールのリム外周面に沿う内周面体と外周面体との間を、径方向にリブを結合させてなる構成による支持体が、軽量、乗り心地の改善等の効果で提案されているが、これらもタイヤをホイールリムの装着する際の問題を解決するものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、通常走行時に、従来の空気入りタイヤと同等以上の操縦安定性、乗り心地を維持しながら、ランフラット走行時に、走行安定性が優れ、且つリム組み性に優れたタイヤ/ホイール組立体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明のタイヤ/ホイール組立体は、空気入りタイヤの空洞部内のリム上に、タイヤ周方向に複数に分割されたランフラット支持体を、帯状部材で連結しタイヤ周方向に環状に配置したタイヤ/ホイール組立体であって、前記ランフラット支持体が、発泡体からなる本体部と、そのタイヤ径方向外側に配置された外周部とからなり、
前記帯状部材が、そのタイヤ周方向長さを伸縮自在に繰り返し調整可能で、かつ固定、解除することができる締緩機構を有すると共に、前記外周部の厚さが0.5mm〜5.0mm、ランフラット走行時にタイヤ内周面と接する外周部の表面積が、前記タイヤ内周面の面積の1/4以上3/4以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のタイヤ/ホイール組立体は、通常走行時に優れた操縦安定性、および乗り心地を維持しながら、ランフラット走行時に、走行安定性および耐久性を有し、且つリム組み性を従来レベル以上に向上させることができる。特に発泡体からなる本体部の外側に外周部を配置したので、ランフラット走行時にタイヤ内側面と接するランフラト支持体が摩擦・摩耗するのを抑制し、耐久性を高くすることができる。
【0010】
互いに隣接する前記本体部同士の接合面と、互いに隣接する前記外周部同士の接合面とが、タイヤ径方向に重ならないように、タイヤ周方向にずらせて配置されてなることが好ましく、ランフラット支持体のリム組みをより安定させることができる。
【0011】
前記本体部は、前記外周部の側に張り出しタイヤ周方向に延在する少なくとも2つの凸部と、これら凸部の間に形成された凹部を有し、この凹部に前記帯状部材がタイヤ1周にわたり配置されてなることが好ましい。これにより、ランフラット支持体をリム組みするのが容易になり、かつリム組みを確実に行うことができる。また前記凸部の両側に沿って形成され前記リム上に固定される脚部を有し、かつ前記凸部および脚部の内周面と前記リムの外周面により中空部が形成され、前記空気入りタイヤの子午線方向断面における前記中空部が占める面積が空気入りタイヤの空洞部の断面積の1/4以上であるとよい。これにより、ランフラット支持体がリム上のビード部を押圧するようにリム組みし安定性をより高くするとともに、ランフラット支持体を軽量化することができる。
【0012】
また前記本体部は、前記外周部の側に張り出しタイヤ周方向に延在する少なくとも1つの凸部と、その凸部の両側に沿って形成され前記リム上に固定される脚部を有し、かつ前記凸部および脚部の内周面と前記リムの外周面により中空部が形成され、前記空気入りタイヤの子午線方向断面における前記中空部が占める面積が空気入りタイヤの空洞部の断面積の1/4以上であるように構成してもよい。
【0013】
前記帯状部材は、そのタイヤ周方向長さを伸縮自在に繰り返し調整可能で、かつ固定、解除することができる締緩機構を有することができる。これにより、ランフラット支持体をリム上に組み付けること、および取り外すことを容易にするとともに、リム組みの安定性をより優れたものにすることができる。
【0014】
前記外周部を構成する材料は、ロックウェル硬度がR20以上M130以下、圧縮破壊強度が20N/cm
2以上、曲げ破壊強度が60N/cm
2以上であるとよい。外周部をこのような性状の材料で構成することにより、ランフラット支持体の耐久性をより優れたものにすることができる。
【0015】
また前記本体部を構成する前記発泡体の10%歪み時の圧縮強度は20N/cm
2以上であり、且つ5%歪み時の曲げ強度は30N/cm
2以上であるとよい。発泡体の圧縮強度および/または曲げ強度を上記範囲にすることによりランフラット走行時の耐久性をより優れたものにすることができる。
【0016】
前記外周部は、カーボンファイバー、ガラス繊維または有機繊維により強化された熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂、エボナイトからなる群から選択されるとよい。前記発泡体は、ポリウレタン、ポリスチレンまたはポリオレフィンの発泡体からなるとよい。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明のタイヤ/ホイール組立体の実施形態の一例を模式的に示すタイヤ子午線方向の断面図である。
図1においてタイヤ/ホイール組立体は、ホイールのリム1に空気入りタイヤ2がリム組みされ、その空気入りタイヤ2の空洞部内に、ランフラット支持体3が配置され、帯状部材6によりリム1上に固定される。ランフラット支持体3は、本体部4と、外周部5とからなり、いずれもタイヤ周方向に複数に分割されているが、帯状部材6により連結され、リム1上に環状に配置される。本体部4は、発泡体で形成されており、軽量でありながら強度が優れる。外周部5は、本体部4のタイヤ径方向外側に配置された厚さ0.5mm〜5.0mmの薄い層である。図示の例では、外周部5のタイヤ径方向外側に、タイヤ1周にわたり巻回された帯状部材6を引き締めることにより、外周部5および本体部4がリム1上に組み付けられている。
【0019】
外周部5は、ランフラット走行時にランフラット支持体3がタイヤ内周面と接する領域に少なくとも配置され、ランフラット走行時に空気入りタイヤの内周面を支える支持面となる。とりわけ、ランフラット支持体3がタイヤ内周面との接触により、摩擦・摩耗するのを抑制し、その耐久性を高くする。ランフラット走行時にタイヤ内周面と接する外周部5の表面積は、タイヤ内周面の面積の1/4以上3/4以下、好ましくは5/16以上11/16以下にする。
【0020】
本体部4は、
図1に例示するように、外周部5の側に張り出しタイヤ周方向に延在する少なくとも2つの凸部と、これら凸部の間に形成された凹部を有することができる。このとき外周部5は、本体部4の外側に凸部および凹部に沿って配置される。この凹部に帯状部材6が配置され、タイヤ1周にわたり巻回されるとよい。このような断面形状を有する本体部4および外周部5を形成し、帯状部材6を配置することにより、ランフラット支持体をリム組みするのが容易になり、かつリム組みを確実に行うことができる。
【0021】
また、本体部4は、タイヤ幅方向外側の両方に脚部41を有することができる。すなわち、脚部41は、上述した凸部のタイヤ幅方向外側にタイヤ周方向に沿って形成され、脚部41の先がリム1上に固定されるように形成される。脚部41を有することにより、ランフラット支持体がリム1上のビード部を押圧するようにリム組みし、装着時の安定性をより高くすることができる。また脚部41を有する形状にすることにより、本体部4をタイヤ空洞内に挿入し易くなり、リム組み性が向上する。さらに、凸部、凹部および脚部の内周面とリム1の外周面により中空部7を形成することができる。空気入りタイヤの子午線方向断面において、この中空部7が占める面積は、空気入りタイヤの空洞部の断面積の1/4以上であるとよく、5/16以上がより好ましい。中空部7を形成することにより、ランフラット支持体を軽量化することができる。
【0022】
図1の例は、本体部4が2つの凸部を有する例であるが、凸部が1つで、その両側に沿って脚部41を有してもよい。すなわち、本体部4は、外周部5の側に張り出しタイヤ周方向に延在する少1つの凸部と、その凸部の両側に形成されリム1上に固定される脚部41を有することができる。このとき、帯状部材6は、本体部4のタイヤ幅方向のほぼ中央部に配置することができる。同時に凸部および脚部の内周面とリムの外周面により中空部が形成され、空気入りタイヤの子午線方向断面における中空部が占める面積が空気入りタイヤの空洞部の断面積の1/4以上、好ましくは5/16以上であるとよい。
【0023】
図2は、
図1のタイヤ/ホイール組立体のタイヤ赤道方向の断面を模式的に示す説明図である。
図2(a)は、タイヤ空洞内で、ランフラット支持体3が帯状部材6により、固定される前の状態を例示する。すなわち、タイヤ周方向に配置された複数の本体部4のタイヤ径方向外側に複数の外周部5が配置され、これら外周部5の径方向外側に、帯状部材6が1周にわたり配置される。タイヤ周方向に配置された複数の本体部4および外周部5は、帯状部材6を締結する前の状態において、互いに接触または離間して配置される。なお複数の本体部4の周方向端部、および複数の外周部5の周方向端部は、タイヤ径方向に重ならず、タイヤ周方向にずらせるように配置される。この状態から帯状部材6を締め付けると、
図2(b)に示すように、帯状部材6のタイヤ周方向の長さが短く、その径が小さくなり、本体部4および外周部5をタイヤ径方向内側に押し付け、リム1の外周上に固定される。リム1上に固定されたランフラット支持体3は、互いに隣接する本体部4同士の接合面と、互いに隣接する外周部5同士の接合面とが、タイヤ径方向に重ならないように、タイヤ周方向にずらせて配置されるとよい。これにより、ランフラット支持体としての強度をより高くすることができる。
【0024】
本発明のタイヤ/ホイール組立体は、タイヤ周方向に分割された複数の本体部4および外周部5を帯状部材6で連結するようにしたのでリム組み性が良好である。更にこのランフラット支持体3は、軽量で、通常走行時に空気入りタイヤの内周面に接触しないので、従来の空気入りタイヤと同等の操縦安定性、乗り心地を確保することができる。
【0025】
本発明において、本体部4は発泡体からなる。この発泡体を形成する材料は特に制限されるものでなく、例えばポリウレタン、ポリスチレン、ポリオレフィン、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル、ユリア樹脂、シリコーン、ポリイミド、メラミン樹脂などを発泡させた発泡性樹脂を挙げることができる。好ましくはポリウレタン、ポリスチレンまたはポリオレフィンの発泡体であり、なかでもポリウレタンフォームが好ましい。
【0026】
ポリウレタンフォームは、イソシアネート基(−NCO)を有する化合物および水酸基(−OH)を有する化合物の縮合により生成されるウレタン結合(−NHCOO−)を有する重合体からなる発泡樹脂である。イソシアネート基を有する化合物として1分子中にイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物が挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えばトリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)等の脂肪族ポリイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、H6XDI(水添XDI)、H12MDI(水添MDI)、H6TDI(水添TDI)等の脂環式ポリイソシアネートなどのジイソシアネート化合物;ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物;これらのイソシアネート化合物のカルボジイミド変性ポリイソシアネート;これらのイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性ポリイソシアネート;これらのイソシアネート化合物と上記で例示したポリオール化合物とを反応させて得られるウレタンプレポリマー;等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0027】
水酸基を有する化合物として1分子中に水酸基を2個以上有するポリオール化合物が挙げられる。ポリオール化合物としては、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、その他のポリオール及びこれらポリオールの混合物等が例示される。なかでもポリカーボネートポリオールが好ましい。
【0028】
ポリエーテルポリオールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,2,5−ヘキサントリオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、4,4′−ジヒドロキシフェニルプロパン、4,4′−ジヒドロキシフェニルメタン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールから選ばれる少なくとも1種に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等から選ばれる少なくとも1種を付加させて得られるポリオール;ポリオキシテトラメチレンオキサイド等が例示される。
【0029】
ポリエステルポリオールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパンその他の低分子ポリオールの1種または2種以上と、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸その他の低分子カルボン酸やオリゴマー酸の1種または2種以上との縮合重合体;プロピオンラクトン、バレロラクトンなどの開環重合体等が例示される。
【0030】
ポリカーボネートポリオールは、ポリオールとジメチルカーボネートとの脱メタノール縮合反応、ポリオールとジフェニルカーボネートの脱フェノール縮合反応、または、ポリオールとエチレンカーボネートの脱エチレングリコール縮合反応などの反応を経て生成される。これらの反応で使用されるポリオールとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、オクタンジオール、1,4−ブチンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の飽和もしくは不飽和の各種グリコール類、1,4−シクロヘキサンジグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール等が挙げられる。
【0031】
その他のポリオールとしては、例えばポリマーポリオール;ポリブタジエンポリオール;水素添加されたポリブタジエンポリオール;アクリルポリオール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコールラウリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミン)、ポリプロピレングリコールラウリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミン)、ポリエチレングリコールオクチルアミン(例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)オクチルアミン)、ポリプロピレングリコールオクチルアミン(例えば、N,N−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシエチル)オクチルアミン)、ポリエチレングリコールステアリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミン)、ポリプロピレングリコールステアリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミン)、トリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどの低分子ポリオール等が例示される。
【0032】
本発明において、発泡体を形成する材料は、ポリオール、ポリイソシアネート、および水または発泡剤を主成分にする発泡性化合物からなるポリウレタンフォームが好ましい。またポリオール、ポリイソシアネート、および水または発泡剤を主成分にし、これらの反応によって生じる炭酸ガスが発泡成分の主成分になるポリウレタンフォームが好ましい。とりわけポリカーボネートジオール、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、および水または発泡剤を主成分にする発泡性化合物からなるポリウレタンフォームが好ましい。また発泡剤としては、特に制限されるものではなく、無機系発泡剤、有機系発泡剤のいずれでもよい。無機系発泡剤として、例えば炭酸アンモニウムや炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウムや亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウムなどを挙げることができる。有機系発泡剤として、例えばカルボンアミド系発泡剤、ニトロソ系発泡剤、スルホニルヒドラジド系発泡剤、アゾ系発泡剤、アジド系発泡剤等を挙げることができる。
【0033】
カルボンジアミド系発泡剤としてはアゾジカルボンアミド(ADCA)等、ニトロソ系発泡剤としてはN,N′−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、N,N′−ジメチル−N,N′−ジニトロソテレフタルアミド等が例示される。スルホニルヒドラジド系発泡剤としては、ベンゼンスルホニルヒドラジド(BSH)、p,p′−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、トルエンスルホニルヒドラジド(TSH)、ジフェニルスルホン−3,3′−ジスルホニルヒドラジド等が例示される。アゾ系発泡剤としてはアゾビスイソブチロニトリル(AZBN)、アゾビスシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレート等が例示される。アジド系発泡剤としてはカルシウムアジド、4,4′−ジフェニルジスルホニルアジド、p−トルエンスルホニルアジド等が例示される。これらの発泡剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0034】
ポリウレタンフォームは、充填材、繊維、接着性付与剤、界面活性剤、老化防止剤から選ばれる少なくとも1つを更に含むことができる。これらの配合剤を含むことにより、ランフラット走行時の耐久性をより優れたものにすることができる。
【0035】
本発明において、発泡体の密度は、好ましくは0.05〜0.30g/cm
3、より好ましくは0.08〜0.25g/cm
3であるとよい。発泡体の密度をこのような範囲内にすることにより、ランフラット支持体をより軽量にすることができる。本明細書において、発泡体の密度はJIS A 9511に準拠して測定することができる。
【0036】
発泡体の10%歪み時の圧縮強度は、好ましくは8N/cm
2以上、より好ましくは20N/cm
2以上、さらに好ましくは20〜30N/cm
2であるとよい。発泡体の圧縮強度を8N/cm
2以上にすることにより、耐荷重性および耐久性を優れたものにすることができる。本明細書において、発泡体の圧縮強度はJIS A 9511に準拠し10%歪み時の圧縮強度として測定することができる。
【0037】
発泡体の5%歪み時の曲げ強度は、好ましくは15N/cm
2以上、より好ましくは30N/cm
2以上、さらに好ましくは30〜40N/cm
2である。発泡体の曲げ強度を15N/cm
2以上にすることにより、耐歪性を優れたものにすることができる。本明細書において、発泡体の曲げ強度はJIS A 9511に準拠して5%歪み時の曲げ強度として測定することができる。
【0038】
本発明において、外周部5は、中実の成形体からなり、その厚さが0.5mm〜5.0mm、好ましくは1.0mm〜5.0mm、より好ましくは1.5mm〜4.0mmである。外周部5の厚さが0.5mm未満であると、耐久性を十分に改良することができない。また5.0mmを超えると、リム組み性が低下する。なお、中実の成形体とは、意図して発泡成形された成形体を除く成形体であり、射出成型、押出成形等いずれの成形方法で得られたものでもよい。
【0039】
また外周部5は、所定の機械的特性を有する材料で構成されるとよい。すなわち、外周部を構成する材料は、そのロックウェル硬度が好ましくはR20以上M130以下、圧縮破壊強度が20N/cm
2以上、曲げ破壊強度が60N/cm
2以上であるとよい。
【0040】
外周部5を構成する材料のロックウェル硬度は、好ましくはR20以上M130以下、より好ましくはR50以上M130以下、さらに好ましくはR70以上M120以下であるとよい。ロックウェル硬度がR20以上であることにより耐久性を確保することができる。またロックウェル硬度がM130以下であることにより良好なリム組み性を確保することができる。本明細書において、ロックウェル硬度はJIS K 7202-2に準拠し、R硬さスケールまたはM硬さスケールで測定することができる。
【0041】
外周部5を構成する材料の圧縮破壊強度は、好ましくは20N/cm
2以上、より好ましくは20〜100N/cm
2、さらに好ましくは25〜90N/cm
2であるとよい。圧縮破壊強度が20N/cm
2以上であることにより耐久性を確保することができる。本明細書において、外周部を構成する材料の圧縮破壊強度はJIS K 7181に準拠し測定することができる。
【0042】
外周部5を構成する材料の曲げ破壊強度は、好ましくは60N/cm
2以上、より好ましくは60〜200N/cm
2、さらに好ましくは65〜190N/cm
2であるとよい。曲げ破壊強度が60N/cm
2以上であることにより耐久性を確保することができる。本明細書において、外周部を構成する材料の曲げ破壊強度はJIS K 7171に準拠し測定することができる。
【0043】
外周部5を構成する材料は、上述した機械的特性を有する限り特に制限させるものではないが、好ましくはカーボンファイバー、ガラス繊維または有機繊維により強化された熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂、エボナイトからなる群から選択されるとよい。カーボンファイバー、ガラス繊維および有機繊維は、工業製品向け材料に使用可能なものの中から適宜選んで使用することができる。また熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂は、工業製品向け材料に使用可能なものの中から適宜選んで使用することができる。エボナイトは、代表的な硬質ゴムで、耐摩耗性に優れるものを選択して使用することができる。
【0044】
帯状部材6は、そのタイヤ周方向長さを伸縮自在に繰り返し調整可能で、かつ固定、解除することができる締緩機構を有する。帯状部材6として、例えば可撓性を有する金属製、樹脂製、布性等のバンド、ロープ、チェーンで構成することができる。帯状部材6は、本体部4および外周部5からなるランフラット支持体3の外周に懸架され、1周して環状に形成された後、その合わせ目を締結可能に固定される。帯状部材6が緩んだ状態から、引き締めて固定することにより、ランフラット支持体がリムの外周上に固定される。帯状部材6は、タイヤ周方向長さを伸縮自在に繰り返し調整することができる締緩機構を有することができる。このような締緩機構を有することにより、リムの外周上へのランフラット支持体の取り付け、取り外しを繰り返し行うことができる。このような締緩機構としては、特に制限されるものではなく、通常の締緩式の固定手段を用いることができる。例えば、紐に対する樹脂製の固定手段、端部に係合溝を有する帯状部材に対応し係脱する係合爪を有する締緩手段、締め付けねじを回転させバンド端部を巻き込む締緩手段等を挙げることができる。
【0045】
帯状部材6が、そのタイヤ周方向長さを伸縮自在に調整することができるので、予め連結された複数の本体部および外周部のリム組みを容易に行うことができる。すべての本体部および外周部をタイヤ空洞内に挿入した後、帯状部材6を引き締めて固定することにより、リム1の外周上にランフラット支持体を容易に固定することができる。
【0046】
本発明のタイヤ/ホイール組立体の子午線方向断面において、発泡体の断面積は空気入りタイヤの空洞部の断面積の1/4以上が好ましく、より好ましくは1/2〜3/4であるとよい。ここで、空気入りタイヤの空洞部の断面積は、空気入りタイヤの内周およびホイールのリムの外周に囲まれた面積とする。発泡体の断面積が空気入りタイヤの空洞部の断面積の1/4以上であると、より耐久性に優れたタイヤを得ることできる。
【0047】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
実施例1〜3
表1に記載した「発泡体1〜3」の配合からなる発泡性化合物を秤量し、室温(25℃)で1分間攪拌した。直ちに所定形状の金型に注入した後、発泡が始まり約30分で発泡現象が観察されなくなった。この反応物を更に24時間静置し、発泡および重合反応を完結させ、発泡体1〜3を得た。
【0049】
上記で得られた発泡体1〜3を用いて、以下の測定方法により、圧縮強度および曲げ強度を測定した。
【0050】
圧縮強度
得られた発泡体を用いて、JIS A9511に従って測定用試験片を作成した。この測定用試験片を使用し、JIS A9511に準拠し、温度23℃、変形速度5mm/分の条件で圧縮試験を行い、歪みが10%のときの圧縮強度を測定した。
【0051】
曲げ強度
得られた発泡体を用いて、JIS A9511に従って測定用試験片を作成した。この測定用試験片を使用し、JIS A9511に準拠し、温度23℃、変形速度20mm/分の条件で曲げ試験を行い、歪みが5%のときの曲げ強度を測定した。
【0052】
図1に示した断面形状を有する発泡体からなる本体部および外周部を備えたランフラット支持体を成型する。ランフラット支持体を装着する空気入りタイヤは、サイズが185/65R15で、内腔高さは113mmであった。ランフラット支持体のタイヤ径方向の高さは68mm、断面積は、空気入りタイヤの空洞部の断面積の3/5であった。またランフラット支持体タイヤ周方向の分割数は8分割、分割された発泡体1つ当たりの周方向長さは149.5mmとした。本体部および外周部は、タイヤ周方向に22.5°の角度でずらせるように配置した。
【0053】
外周部材として、
図1の断面形状を有するシート(長さ204.0mm、幅182.0mm、厚さ3mm)を、カーボン繊維強化ポリプロピレン樹脂(東洋紡績(株)社製)を使用し、熱プレス成形により得た。
【0054】
表1に記載した「発泡体1〜3」の配合からなる発泡性化合物を秤量し、室温(25℃)で1分間攪拌した。直ちに、
図1の断面形状の発泡体を成型する金型に注入した後、24時間30分静置し、発泡および重合反応を完結させ、分割された発泡体からなる本体部を得た。
【0055】
空気入りタイヤのビード部とリムフランジの間からタイヤ空洞内に、布製の帯状部材(幅55mm、厚さ1mm、締め付けねじからなる締緩機構を有する)、外周部材、本体部を順次挿入し、帯状部材を引き締めて固定することにより、リムの外周上にランフラット支持体を配置した。得られたタイヤ/ホイール組立体を使用して、通常走行時試験、ランフラット走行試験およびタイヤ/ホイール組立体の重量を以下の方法で評価した。
【0056】
通常走行時の操縦安定性および乗心地性試験
各試験タイヤをリムサイズ18×7.5Jのホイールに組み付けて試験車両に装着し、タイヤの空気圧を230kPaとし、アスファルト路面からなるテストコースを平均速度80km/hにて走行し、操縦安定性および乗心地性を、ドライバーが官能評価した。この評価は3名のテストドライバーにより行い、その平均を求めた。評価結果は従来例のタイヤを100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど通常走行時の操縦安定性および乗心地性が優れていることを意味する。なお、従来例のタイヤとしてサイド補強樹脂体を支持体とするランフラットタイヤを使用した。
【0057】
ランフラット走行試験
各試験タイヤをリムサイズ18×7.5Jのホイールに組み付けて試験車両に装着し、右側駆動輪のバルブコアを除去する一方で他のタイヤの空気圧を230kPaとし、アスファルト路面からなるテストコースを平均速度80km/hにて走行し、ドライバーがタイヤの故障による振動を感じるまで走行を継続し、その走行距離を測定した。このような測定は3名のテストドライバーにより行い、その平均走行距離を求めた。評価結果は従来例のタイヤを100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどランフラット耐久性が優れていることを意味する。なお、従来例のタイヤとしてサイド補強樹脂体を支持体とするランフラットタイヤを使用した。
【0058】
タイヤ/ホイール組立体の重量
各試験タイヤをリムサイズ18×7.5Jのホイールに組み付け、空気圧を230kPaとし、タイヤ/ホイール組立体の重量を測定した。得られた結果は従来例のタイヤを100とする指数にて示した。この指数値が小さいほどタイヤ/ホイール組立体が軽く、優れていることを意味する。なお、従来例のタイヤは、上述したものと同じとした。
【0059】
【表1】
【0060】
なお、表1において使用した原材料の種類を下記に示す。
・ポリオール化合物:ポリカーボネートジオール、旭化成社製T5651
・アミン化合物:トリエタノールアミン、(株)日本触媒社製
・触媒:オクチル酸スズ、日東化成社製ネオスタンU−28
・整泡剤:シリコーンオイル、東レダウコーニング社製FZ3703
・イソシアナート化合物1:ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、NCO基含有率31%、住化バイエルウレタン社製スミジュール44V10
・イソシアナート化合物2:ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、NCO基含有率31%、住化バイエルウレタン社製スミジュール44V20
【0061】
実施例1〜3のタイヤ/ホイール組立体は、ランフラット走行時の耐久性に優れることが確認された。また、発泡体1〜3の密度は0.2g/cm
3前後と低密度であるため、従来例より軽量かつ高耐久な特性を発現させることができた。