特許第6587022号(P6587022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6587022
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】回転電機の液冷構造
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/24 20060101AFI20191001BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
   H02K3/24 C
   H02K9/19 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-166071(P2018-166071)
(22)【出願日】2018年9月5日
【審査請求日】2019年6月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(72)【発明者】
【氏名】酒井 有
(72)【発明者】
【氏名】藤原 優哉
【審査官】 宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−040924(JP,A)
【文献】 特開2004−088944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/24
H02K 9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状をなすステータコアのヨーク部の内周に周方向に沿って複数突設されたティース部に、コイルを装着されたボビンをそれぞれ取り付けられたステータの隣り合う当該ティース部の間へ向けて当該ステータの軸方向から冷却液を送給することにより、当該コイルを冷却する回転電機の液冷構造であって、
前記ステータの周方向に隣り合う前記ティース部の間にそれぞれ位置するように前記ボビンの幅方向両側に当該ステータの軸方向に沿ってガイドブロックウォールをそれぞれ設け、
前記コイルと前記ガイドブロックウォールとの間に隙間を形成する一方、
隣り合う前記ボビンの前記ガイドブロックウォールの間を閉塞させるように当該ガイドブロックウォール同士を隣接させた
ことを特徴とする回転電機の液冷構造。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機の液冷構造であって、
前記ガイドブロックウォールの、前記ステータの周方向の厚さが、当該ステータの径方向内側よりも外側ほど厚くなるように、当該ガイドブロックウォールの、前記ステータの周方向外側に位置する面がテーパ状に傾斜している
ことを特徴とする回転電機の液冷構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の回転電機の液冷構造であって、
前記コイルが、四角形断面の平角導線からなる
ことを特徴とする回転電機の液冷構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータや発電機等の回転電機のステータのコイルを冷却液で冷却する回転電機の液冷構造に関する。
【背景技術】
【0002】
モータや発電機等の回転電機のステータのコイルを冷却液で冷却する回転電機の液冷構造としては、例えば、下記特許文献1に記載されているものがある。この構造は、コイルをそれぞれ装着した複数の分割ステータコアをロータの周方向へ環状に配列したステータコアに対して、隣り合う分割ステータコアの間やコイルの間に対向するようにオイルの噴射孔を配置して、当該噴射孔から上記間へ向けてロータの軸方向に沿ってオイルを噴射してコイルを冷却するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−057261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載されている構造においては、分割ステータコアに回転電機の半径方向内方へ向って突出するインシュレータをそれぞれ設けて、隣り合う分割ステータコアの間の小径側の隙間をインシュレータで塞ぐようにすることにより、隣り合う分割ステータコアの間やコイルの間に軸方向の油路を形成している。
【0005】
このようにして形成される油路は、円形断面をなす丸導線からなるコイルであると、回転電機の径方向内側と外側とで巻き数を異ならせることが容易にできるため、隣り合うコイルの間の油路を回転電機の径方向で一定の大きさにすることが簡単にできるものの、四角形断面をなす平角導線からなるコイルであると、回転電機の径方向内側と外側とで巻き数を異ならせることが難しいため、隣り合うコイルの間の油路が、回転電機の径方向内側よりも外側ほど大きくなってしまい、オイルの流通に無駄を生じ、冷却効率の低下を引き起こしてしまうおそれがあった。
【0006】
このようなことから、本発明は、平角導線を使用したコイルであっても、冷却効率の低下を抑制することができる回転電機の液冷構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決するための、本発明に係る回転電機の液冷構造は、環状をなすステータコアのヨーク部の内周に周方向に沿って複数突設されたティース部に、コイルを装着されたボビンをそれぞれ取り付けられたステータの隣り合う当該ティース部の間へ向けて当該ステータの軸方向から冷却液を送給することにより、当該コイルを冷却する回転電機の液冷構造であって、前記ステータの周方向に隣り合う前記ティース部の間にそれぞれ位置するように前記ボビンの幅方向両側に当該ステータの軸方向に沿ってガイドブロックウォールをそれぞれ設け、前記コイルと前記ガイドブロックウォールとの間に隙間を形成する一方、隣り合う前記ボビンの前記ガイドブロックウォールの間を閉塞させるように当該ガイドブロックウォール同士を隣接させたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る回転電機の液冷構造は、上述した回転電機の液冷構造であって、前記ガイドブロックウォールの、前記ステータの周方向の厚さが、当該ステータの径方向内側よりも外側ほど厚くなるように、当該ガイドブロックウォールの、前記ステータの周方向外側に位置する面がテーパ状に傾斜していることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る回転電機の液冷構造は、上述した回転電機の液冷構造であって、前記コイルが、四角形断面の平角導線からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る回転電機の液冷構造によれば、ステータの周方向に隣り合うティース部の間でボビンのガイドブロックウォール同士が隣接してガイドブロックウォールの間を閉塞していることから、冷却液の大部分が、コイルとガイドブロックウォールとの間の隙間に流入してガイドブロックウォールで案内されながら流通することによりコイルを全体的に冷却するようになるので、冷却液を無駄に流通させることなくコイルの冷却に有効に利用することができ、冷却効率の低下を大きく抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る回転電機の液冷構造の要部の概略図であり、Aが側面図、BがAの矢線B方向から見た図、CがAの矢線C方向から見た図である。
図2図1のボビン及びコイルの構造図であり、Aが平面図、BがAの矢線B方向から見た図、CがAの矢線C方向から見た図である。
図3図2のボビン及びコイルの分解斜視図である。
図4図1の噴射管の概略構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る回転電機の液冷構造の実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は図面に基づいて説明する以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0013】
〈主な実施形態〉
本発明に係る回転電機の液冷構造の主な実施形態を図1〜4に基づいて説明する。
【0014】
図1において、10はステータ、11はステータコア、12はボビン、13はコイル、21は噴射管である。
【0015】
ステータ10は、コイル13を装着されたボビン12が、環状をなすステータコア11の内周に周方向に沿って複数取り付けられたものであり、外周側がケーシングの内部に固定保持されると共に、内周側にロータが同軸をなして配設されるようになっている。
【0016】
ステータコア11は、鉄等の磁性材料からなり、環状をなすヨーク部11aと、ヨーク部11aの内周に周方向に沿って複数設けられて径方向内側へ向かって突出するティース部11bとを有している。
【0017】
ボビン12は、樹脂等の絶縁材料からなり、コイル13を装着されることによりコイル13を保持し、ステータコア11のティース部11bに嵌合されることによりステータコア11に取り付けられるようになっている。
【0018】
前記ボビン12は、図2,3に示すように、コイル13を装着されるオーバル形状の筒型をなす装着部12Aaと、装着部12Aaに装着されたコイル13を覆うように装着部12Aaの一方側の端部(ステータコア11の径方向外側へ位置する端部)の周縁に装着部12Aaの径方向外側(ステータコア11の周方向で離反する方向)へ向かって突設された四角形状のフランジ部12Abとを有するボビン本体12Aを具えると共に、ステータコア11のティース部11bに内面側が嵌合すると共にボビン本体12Aの装着部12Aaの内側に外面側が嵌合するオーバル形状の筒型をなす取付部12Baと、ボビン本体12Aの装着部12Aaに装着されたコイル13を覆うように、取付部12Baの、前記装着部12Aaと嵌合される側と反対側の端部(ステータコア11の径方向内側へ位置する端部)の周縁に当該取付部12Baの径方向外側(ステータコア11の周方向で離反する方向)へ向かって突設された四角形状のフランジ部12Bbとを有するボビン補助体12Bを具えている。
【0019】
さらに、前記ボビン12は、前記ボビン本体12Aの前記フランジ部12Abの幅方向(ステータコア11の周方向で離反する方向)両側に前記装着部12Aaの長手方向(ステータコア11の軸方向)に沿って設けられて当該装着部12Aaの他方の端部側(ステータコア11の径方向内側へ位置する端部側)へ向かって突出するガイドブロックウォール12Acを有している。
【0020】
このガイドブロックウォール12Acは、ステータコア11の周方向の厚さである幅方向(装着部12Aaの短手方向)の厚さ(長さ)が、フランジ部12Abに連結している端部側である基端側(装着部12Aaの前記一端側)であるステータコア11の径方向外側ほど、フランジ部12Abから突出している端部側である先端側(装着部12Aaの他端側)であるステータコア11の径方向内側よりも厚く(長く)なるように、ステータコア11の周方向外側の面である幅方向(装着部12Aaの短手方向)外側の面がテーパ状に傾斜している。
【0021】
つまり、ステータコア11の各ティース部11bにボビン12の取付部12Baを差し込んでそれぞれ取り付けると、ステータコア11の周方向に隣り合うティース部11bの間にボビン12のガイドブロックウォール12Acがそれぞれ位置することにより、隣り合う当該ボビン12の当該ガイドブロックウォール12Acの間を閉塞させるように当該ガイドブロックウォール12Ac同士を隣接できる形状になっているのである。
【0022】
コイル13は、四角形断面をなす平角導線からなり、ボビン12の装着部12Aaに装着されて、フランジ部12Ab,12Bbで覆われると共に、ガイドブロックウォール12Acとの間にステータコア11の周方向(装着部12Aaの短手方向)で一定の間隔の隙間が形成されるように設定されている。
【0023】
噴射管21は、図1,4に示すように、ステータコア11の周方向に隣り合うティース部11bの各間を周方向で連絡するように環状をなしてステータコア11の一端側に対向配設され、ステータコア11の軸方向一端側からステータコア11の隣り合うティース部11bの各間へ向けてステータコア11の軸方向に沿って冷却液を噴射するノズル孔21aが複数形成されている。
【0024】
このような本実施形態に係る回転電機の液冷構造においては、噴射管21の内部に冷却液を送給すると、冷却液がノズル孔21aから噴射され、ステータ10の周方向に隣り合うコイル13の各間へステータ10の軸方向一端側から供給される。
【0025】
このとき、ステータ10の周方向に隣り合うコイル13の各間でボビン12のガイドブロックウォール12Ac同士が隣接して当該ガイドブロックウォール12Acの間を閉塞していることから、噴射管21のノズル孔21aから噴射された冷却液は、その大部分が、コイル13とガイドブロックウォール12Acとの間の一定の間隔の隙間にステータコア11の軸方向一端側から流入し、当該ガイドブロックウォール12Acで案内されながらステータコア11の軸方向他端側へ向かって流通するようになる。
【0026】
このため、噴射管21のノズル孔21aから噴射された冷却液は、そのほとんどがステータ10のコイル13に接触してコイル13を全体的に冷却することができる。
【0027】
したがって、本実施形態によれば、平角導線を使用したコイル13であっても、噴射管21のノズル孔21aから噴射された冷却液を無駄に流通させることなくコイル13の冷却に有効に利用することができるので、冷却効率の低下を大きく抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明に係る回転電機の液冷構造は、冷却液を無駄に流通させることなくコイルの冷却に有効に利用することができ、冷却効率の低下を大きく抑制することができるので、産業上、極めて有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
10 ステータ
11 ステータコア
11a ヨーク部
11b ティース部
12 ボビン
12A ボビン本体
12Aa 装着部
12Ab フランジ部
12Ac ガイドブロックウォール
12B ボビン補助体
12Ba 取付部
12Bb フランジ部
13 コイル
21 噴射管
21a ノズル孔
【要約】
【課題】平角導線を使用したコイルであっても、冷却効率の低下を抑制することができる回転電機の液冷構造を提供する。
【解決手段】ステータ10のステータコア11の周方向に隣り合うティース部11bの間にそれぞれ位置するようにボビン12の幅方向両側にステータ10の軸方向に沿ってガイドブロックウォール12Acをそれぞれ設け、コイル13とガイドブロックウォール12Acとの間に隙間を形成する一方、隣り合うボビン12のガイドブロックウォール12Acの間を閉塞させるようにガイドブロックウォール12Ac同士を隣接させた。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4