(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材の一方の面に耐熱滑性層、他方の面に少なくとも、アスペクト比(長径/短径)30〜5000で規定される繊維状または針状のアルミナ水和物粒子又はアルミナ粒子を主構成成分とする耐熱性剥離層および色材含有接着層をこの順に設けてなる熱転写記録媒体。
前記熱転写記録媒体の前記耐熱性剥離層が、前記アルミナ水和物粒子又はアルミナ粒子と樹脂からなり、前記アルミナ水和物粒子又はアルミナ粒子が60重量%以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱転写記録媒体。
【背景技術】
【0002】
従来、熱転写記録装置を用いて着色された金属光沢を有する画像を得る方式としては、例えば特許文献1に紹介された方式がある。これによるとまず金属蒸着層を設けた熱転写記録媒体にて先に画像を転写し、その上から着色層を設けた熱転写記録媒体で画像を重ね転写し、着色された金属光沢を有する画像を得ている。
【0003】
近年、スマートフォンやタブレット端末等の平面ディスプレイからなる機器において、ディスプレイ表面から見たときにメーカーロゴや機種名等を金属光沢を有する画像で表示すべく、全ての画像を熱転写記録媒体を用いて画像を転写したいという潜在的ニーズがある。
【0004】
この方式では以下のようなメリットがある。すなわち
1.画像を転写する装置としてサーマルヘッドを用いた熱転写記録装置を使用すると、画像パターンを自由に設定できるので小部数の作成に有利である。
2.着色層を設けた熱転写記録媒体と、金属光沢層を設けた熱転写記録媒体を別にすることで、画像デザインの自由度が上がる。例えばメーカーロゴを金色、機種名を銀色とする等の画像を簡便に得ることが出来る。
3.透明な受像体の転写を行わなかった側を機器の表側とすることで、前記特許文献1に記載の方式に比べて前記金属光沢を有する画像は機器の内側となり、汚れたり、破損を受けるたりすることが無く、長い期間美観を保つことが出来る。
【0005】
前記メリットが得られる観点から、本発明者は従来公知の熱転写記録媒体を用いて、以下の熱転写加飾方式を検討した。
1)ガラス等の透明な受像体に、基材の上に少なくとも着色層を設けた第1の熱転写記録媒体を用いて画像を転写する。
2)前記画像の上に、基材の上に少なくとも金属蒸着層、接着層を設けた第2の熱転写記録媒体を用いて画像を重ね転写する。
3)さらに前記画像の上に、基材の上に少なくとも黒色隠蔽層を設けた第3の熱転写記録媒体で画像を重ね転写する。場合によっては、さらに別の熱転写記録媒体にて画像を重ね転写する。この目的は、前記の透明な受像体を、転写を行った面の反対側の面から見た場合に、光が第1、第2の熱転写記録媒体にて形成された画像を透過してしまって金属光沢が弱くなることを防ぐ目的で、第2の熱転写記録媒体の上に熱転写にて重ねて転写を行うものである。
4)前記の透明な受像体を転写を行なった面の反対側の面から見ることで、着色された金属光沢画像を得る。
【0006】
しかしながら、前記の第1の熱転写記録媒体として、基材の一方の面に耐熱滑性層、他方の面に着色層としての色材含有接着層を設けてなる従来公知の熱転写記録媒体を用いた場合、着色層としての色材含有接着層を転写した画像の上から第2の熱転写記録媒体で重ね転写を行う際や、さらにその上から第3の熱転写記録媒体で重ね転写した際に、着色層としての色材含有接着層表面が重ね転写を行う際の熱によりダメージを受けて細かな凹凸状態になり、金属光沢がくすんだように見える問題が生じた。
【0007】
一方、特許文献1における方式においては、先ず最初に、基材の一方の面に耐熱滑性層、他方の面に離型層、アンカー層、金属蒸着層、接着層をこの順に設けてなる熱転写記録媒体を用いて熱転写にて画像を形成させた後、着色層を有する熱転写記録媒体を用いて熱転写にて画像を形成させる。すなわち下地が硬い画像上に、熱により溶融しやすい画像を形成させるため、本加飾方式と異なり最終画像において、金属光沢がくすんだように見える問題が生じ難い。
【0008】
しかしながら、特許文献1における方式では、まず受像体に金属光沢のある画像を転写し、その上から着色層を重ね転写するため、受像体側には着色されていない金属光沢層が面する事になる。このため透明な受像体に転写を行って反対側から見る方式では、着色した金属光沢画像を得られない。転写を行った側から見ると着色した金属光沢画像を得ることができるが、前記の3.のメリットは得られず、転写物の美観を長く保つことが困難である。
【0009】
そこで本発明者は、鋭意研究を行った結果、前記の第1の熱転写記録媒体として、基材の一方の面に耐熱滑性層、他方の面に少なくとも耐熱性剥離層および色材含有接着層をこの順に設けてなる熱転写記録媒体を用いることで、本発明の熱転写加飾方式においても、金属光沢がくすむ現象をなくすことができる事を見出し、本発明を完成した。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の加飾方式に用いられる、前記第1の熱転写記録媒体は、基材の一方の面に耐熱滑性層、他方の面に少なくとも耐熱性剥離層および色材含有接着層をこの順に設けてなる熱転写記録媒体であり、前記第2の熱転写記録媒体は、基材の一方の面に耐熱滑性層、他方の面に少なくとも金属蒸着層、接着層をこの順に設けてなる熱転写記録媒体であり、前記第3の熱転写記録媒体は、基材の一方の面に耐熱滑性層、他方の面に少なくとも黒色隠蔽層を設けた熱転写記録媒体である。
(受像体)
【0018】
本発明における透明な受像体は、スマートフォンやタブレット端末等の平面ディスプレイからなる機器においてディスプレイ表面に設置されるため、視認性かつ耐久性が必要である。このため透明かつ硬質であることが好適である。また、機器の薄型化の傾向よりなるべく薄いことが好ましい。具体的には厚さが0.3〜1.0mm程度の硬質ガラス板や、アクリル系樹脂やポリカーボネート樹脂等の透明な硬質プラスチック板等が好適に用いられる。
(基材)
【0019】
本発明の前記第1の熱転写記録媒体、前記第2の熱転写記録媒体、前記第3の熱転写記録媒体に使用される基材としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムなどのポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアミドフィルム、アラミドフィルムその他この種の熱転写記録媒体の基材用フィルムとして一般に使用されている各種のプラスチックフィルムが使用できる。また、コンデンサーペーパーのような高密度の薄い紙も使用できる。基材の厚さは通常は1〜10μm程度であり、熱伝達を良好にする為には、1〜6μmの範囲が好ましい。
(耐熱滑性層)
【0020】
本発明の前記第1の熱転写記録媒体、前記第2の熱転写記録媒体、前記第3の熱転写記録媒体に使用される耐熱滑性層の材料としては、熱転写記録媒体で従来より採用されているものが特に制限無く使用でき、たとえばシリコーン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ニトロセルロース樹脂等の耐熱性樹脂、前記耐熱性樹脂で他の樹脂を変性した耐熱性樹脂(たとえばシリコーン変性ウレタン樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂等)などの1種または2種以上からなるものがあげられるが、サーマルヘッドに対する耐熱性、高温時での動摩擦係数を下げる点やコストの観点より、シリコーン変性ウレタン樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂、またはその混合物が特に好ましい。
【0021】
また、本発明の耐熱滑性層には、滑剤を配合してもよい。滑剤としては、たとえばシリコーンオイル類(たとえばジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジエンポリシロキサン、フッ素含有シリコーンオイル、およびエポキシ変性、アルキル変性、アミノ変性、カルボキシル変性、アルコール変性、ポリエーテル変性などの各種変性シリコーンオイルなど)、アスパラギン酸エステル類、フッ素系界面活性剤、リン酸エステル類、パラフィンワックス、高級脂肪酸アミド類、エステル類および金属塩などの液体状態で滑性を示すものなどがあげられる。
【0022】
本発明の耐熱滑性層には、帯電防止剤などその他の添加剤を配合してもよい。
【0023】
本発明の耐熱滑性層は、前記成分を適宜の溶剤に溶解、分散してえられる塗工液を塗工、乾燥することによって形成できる。耐熱滑性層の塗工厚み(乾燥後塗工厚み、以下同様)は、良好なステイック防止効果を達成しかつ熱伝導の悪化を防止する観点から、0.05〜 0.8μmの範囲が適当である。耐熱滑性層の厚みが0.05μm未満では、耐熱性が不十分で印字時にサーマルヘッドの熱でヘッドに貼り付くスティックを起したり、熱で記録媒体が基材ごと溶融して印字不可能となることがある。0.8μmを超えた場合は、熱伝導が悪化して印字に支障をきたすことがある。
(第1の熱転写記録媒体)
(色材含有接着層)
【0024】
本発明の第1の熱転写記録媒体の色材含有接着層としては、熱溶融性ないし熱軟化性のビヒクルと着色剤とからなる従来から知られている感熱転写インク層がとくに制限無く使用できる。前記ビヒクルとしては、熱可塑性樹脂を単独で使用してもよく、または2種以上併用して使用してもよい。また、種々の目的のために添加剤を適宜使用してもよい。
【0025】
前記熱可塑性樹脂(エラストマーを含む)としては、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酪酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン−アクリロニトリル共重合体、エチレンアクリルアミド共重合体、エチレン−スチレン共重合体などのエチレン系共重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−ビニルアルコール共重合体などの塩化ビニル系(共)重合体、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、アセトフェノン−ホルムアルデヒド系樹脂、セルロース系樹脂、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、イソプレン重合体、クロロプレン重合体、石油系樹脂、スチレン系樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン−インデン樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂などがあげられる。これら樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
前記添加剤としては、可塑剤、消泡剤、界面活性剤、酸化防止剤などがあげられる。
【0027】
前記着色剤としては、熱転写記録媒体の着色層で一般に使用されている有機、無機の着色顔料、染料などが使用できるが、着色された金属光沢のある画像を得るためには前記色材含有着色層の光透過性が良いことが求められるため、染料や有機の着色顔料が好適である。着色剤の色材含有着色層中における含有量は、20〜60重量%が適当である。
【0028】
前記色材含有接着層の厚みは0.2〜2.0μmの範囲が好適である。厚みが0.2μm未満の場合は、十分な着色力が得られづらい。厚みが2.0μmより厚いと転写性が損なわれる傾向がある。
(耐熱性剥離層)
【0029】
前記第1の熱転写記録媒体の耐熱性剥離層は、微細なアルミナ水和物粒子又はアルミナ粒子を主構成成分とする。
【0030】
本発明の第1の熱転写記録媒体の耐熱性剥離層は、耐熱性のみならず、機能上透明性が要求される。さらに、熱転写記録媒体としての剥離層の機能面から、耐熱性剥離層は適切な基材密着性と転写時の基材からの離型性の両立および切れ性と熱感度を低下させないことが要求される。耐熱性および透明性の観点からは、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ、酸化セリウム、酸化ニオブなどのコロイド状の無機粒子が挙げられる。しかしながら、一般には、これら単独では自立膜形成能力がなく、前記剥離層としての機能を満たさないのが現状である。
【0031】
一方、高アスペクト比(長径/短径)の繊維状または針状のアルミナ水和物粒子又はアルミナ粒子の集積膜は、耐熱性、可撓性かつ高い透明性を有する配向性の自立膜を形成することが知られている(特開2010−105846号公報)。又、前記アルミナ水和物粒子又はアルミナ粒子と有機物の集積体も、よりクラック防止された配向性の自立膜を形成することが知られている(特開2010−285315号公報)。
【0032】
前述のごとく、本発明の耐熱性剥離層の熱転写記録媒体としての剥離層の機能面からは、基材密着性と転写時の基材からの離型性の両立および熱転写時の切れ性と熱感度を低下させないことが要求される。この観点から、前記耐熱性剥離層の主構成成分である前記繊維状または針状のアルミナ水和物粒子又はアルミナ粒子の前記アスペクト比は、30〜5000であることが好ましい。このアスペクト比が30未満であると、成膜性が低下すると同時にクラックが発生しやすくなるため好ましくない。一方、このアスペクト比が5000を超えると、前記繊維状または針状のアルミナ水和物粒子又はアルミナ粒子の合成に要する時間が長くなるため実用的でない上に、この種の巨大分子からなる膜は透明性、可撓性に乏しくなるので好ましくない。
【0033】
また、本発明に使用される前記アルミナ水和物粒子又はアルミナ粒子は、短径1〜10nm、長径100〜10000nmであることが好ましい。粒子の平均短径が1nm未満である場合は、粒子が微小であるため、前記アルミナ水和物粒子又はアルミナ粒子の分散液が凝集し易くなり、それにより、粘度が増大し、保存安定性が低下するため、好ましくない。10nm以上では、得られる膜の可撓性が低い。また、十分な可撓性や強度を有する自立膜を得るためには、アルミナ水和物粒子又はアルミナ粒子の長径が、100nm以上で10000nm以下の範囲であることが好ましい。この場合、長径は、これらの範囲のいずれか1種の特定の値をとることができる。
【0034】
アルミナの結晶形には種々あるが、本発明において、前記アルミナ粒子が上記寸法を有し、アルミナ薄膜が十分な強度を発揮するためには、前記アルミナ粒子の結晶形態は、ベーマイト結晶形及び/又は擬ベーマイト結晶形を主成分とすることが好ましい。
【0035】
そして、前記アルミナ水和物粒子又はアルミナ粒子は、川研ファインケミカル株式会社より、水系、有機溶剤ゾル液として購入することができる。
【0036】
本発明において使用される前記アルミナ水和物粒子又はアルミナ粒子を主構成成分とする耐熱性剥離層は、前記アルミナ水和物粒子又はアルミナ粒子単独層としての使用も可能であるが、高耐熱性、低熱膨張率のような無機物特有の特徴を保持しつつ、前記アルミナ水和物粒子又はアルミナ粒子膜の、膜強度、可撓性、透明性をより向上させ、さらにクラック防止の観点および基材フィルムとの密着性を調節する観点から、本発明の前記耐熱性をそこなわない範囲で樹脂やシランカップリング剤を加えることができる。
【0037】
前記樹脂としては、従来公知の樹脂が使用できるが、前記アルミナ水和物粒子又はアルミナ粒子が、前述のように、水系、有機溶剤系ゾル液として提供されることから、前記アルミナ水和物粒子又はアルミナ粒子の分散を壊さない樹脂が好ましい。この観点から、アクリル系樹脂、メタアクリル系樹脂、ブチラール系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、アセタール系樹脂などが好ましい。
【0038】
また、必要に応じて、前記アルミナ水和物粒子又はアルミナ粒子の分散を壊さない範囲で、基材との密着調整剤として、エポキシ樹脂、脂環族炭化水素樹脂、ケトン樹脂、スチレン系樹脂、ロジン系樹脂、ポリエステル樹脂、クマロン−インデン樹脂、フェノール樹脂やこれらの変性樹脂やシランカップリング剤などを添加してもよい。
【0039】
本発明の前記アルミナ水和物粒子又はアルミナ粒子と前記樹脂系よりなる前記耐熱性剥離層の場合は、前記アルミナ水和物粒子又はアルミナ粒子の比率は、耐熱性や熱印字の際の切れ性の観点から60重量%以上であることが好ましい。
【0040】
また、前記シランカップリング剤としては、エポキシ基含有シランカップリング剤やアミノ基含有シランカップリング剤等が好ましい。前記シランカップリング剤を、前記アルミナ水和物粒子又はアルミナ粒子層または前記アルミナ水和物粒子又はアルミナ粒子と前記樹脂系よりなる層に添加する場合に添加量は、耐熱性剥離層固形分において、15重量%以下に抑えることが好ましい。15重量%を超える場合、密着力が上がりすぎ転写性に影響を与える場合がある。
【0041】
前記耐熱性剥離層の厚みは乾燥状態で0.1〜0.6μmが好適である。厚みが0.1μm未満では耐熱性の効果が得られづらい。厚みが0.6μmを超えると転写感度低下する傾向がある。
【0042】
本発明における金属蒸着層を設けた前記第2の熱転写記録媒体は、基材の一方の面に耐熱滑性層、他方の面に少なくとも金属蒸着層、接着層をこの順に設けた熱転写記録媒体であり、従来より公知の熱転写記録媒体の使用が可能である。通常は前記他方の面に、離型層、金属蒸着層、接着層をこの順に設けた熱転写記録媒体が使用される。
【0043】
前記離型層、接着層の材料としては熱溶融性ないし熱軟化性のビヒクルからなる従来から知られている感熱転写インク層がとくに制限無く使用できる。前記ビヒクルとしては、熱可塑性樹脂、ワックス類を単独で使用してもよく、または2種以上併用して使用してもよい。前記熱可塑性樹脂としては前記第1の熱転写記録媒体における前記着色層説明で掲げた熱可塑性樹脂を単独で使用してもよく、または2種以上併用して使用してもよい。また、添加剤として前記着色層説明で掲げたものを適宜利用できる。
【0044】
また、前記第2の熱転写記録媒体には、金属蒸着層を蒸着して設ける際の熱による基材、離型層のダメージを防ぐために、離型層と金属蒸着層の間に耐熱性のあるアンカー層を設けても良い。また、金属蒸着層と接着層の間には、特開2010−5969号公開公報に記載の中間層を設けてもよい。
【0045】
また、前記アンカー層としては、従来から金属蒸着層を設けた熱転写記録媒体において用いられているアンカー層が特に制限無く使用できる。前記アンカー層を構成する材料としては、例えば、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸アミド等のアクリル系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等のビニル系樹脂、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンオキシド等のポリエーテル系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ニトロセルロース樹脂、エチルセルロース樹脂等の樹脂が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、耐熱性を確保する点から、前記樹脂をイソシアネート等の架橋剤で架橋硬化させることが好適である。前記アンカー層の厚みは、金属蒸着の下地としての機能を果たす意味から0.2〜2.0μmの範囲が好適である。厚みが0.2μm未満の場合は、本来の機能が発揮されにくい。2.0μmより厚いと転写性が損なわれる傾向がある。
【0046】
前記金属蒸着層としては、従来から金属蒸着層を設けた熱転写記録媒体において用いられている金属蒸着層が特に制限無く使用できる。
【0047】
前記金属蒸着層の金属としては、アミルニウム、亜鉛、錫、ニッケル、クロム、チタン、銅、銀、金、白金などの単体、混合物、合金などが使用できるが、アルミニウムや錫が好ましく用いられる。金属蒸着層は真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理蒸着法や化学蒸着法などにより形成できる。
【0048】
金属蒸着層の厚みは、高光沢の金属光沢を得る点から、10〜100nmが好ましく、15〜80nmの範囲がより好ましい。厚みが10nm未満では光沢感が得られる程に可視光線を反射しなくなる。厚みが100nmを越えると印字時の箔切れが悪くなり、印字時の感度が低下する。
(第3の熱転写記録媒体)
【0049】
本発明における黒色隠蔽層を設けた第3の熱転写記録媒体は、基材の一方の面に耐熱滑性層、他方の面に少なくとも黒色隠蔽層を設けた熱転写記録媒体である。
【0050】
本発明における黒色隠蔽層を設けた第3の熱転写記録媒体で画像形成を行う目的は、透明な受像体に、基材の一方の面に耐熱滑性層、他方の面に少なくとも耐熱性剥離層および色材含有接着層をこの順に設けてなる第1の熱転写記録媒体を用いて熱転写にて画像を形成した後、その上に基材の一方の面に耐熱滑性層、他方の面に少なくとも金属蒸着層、接着層をこの順に設けてなる第2の熱転写記録媒体を用いて熱転写にて重ねて画像を形成した状態で前記の透明な受像体を、転写を行った面の反対側の面から見た場合に、光が第1、第2の熱転写記録媒体にて形成された画像を透過してしまって金属光沢が弱くなることを防ぐ目的で行うものであり、本方式特有のものである。
【0051】
前記黒色隠蔽層としては、熱溶融性ないし熱軟化性のビヒクルと着色剤とからなる従来から知られている感熱転写インク層がとくに制限無く使用できる。前記ビヒクルとしてはたとえば、前記第1の熱転写記録媒体の色材含有接着層で挙げられた熱可塑性樹脂、ワックス類を単独で使用してもよく、または2種以上併用して使用してもよい。また、種々の目的のために添加剤を適宜使用してもよい。
【0052】
前記着色剤としては、前記目的を達成するために光透過率の低い黒色着色剤を用いる。例えばカーボンブラック、チタンブラック、ペリレンブラック等の黒色顔料や黒色染料、各種有機顔料や染料を混合して黒色としたものなどが挙げられるが、光透過率やコストの点からカーボンブラックが好適である。着色剤の着色隠蔽層層中における含有量は20〜60重量%が適当である。
【0053】
前記黒色隠蔽層の厚みは、0.5〜2.5μmが好適である。厚みが0.5μm未満では、本来の機能が発揮されにくい。2.5μmより厚いと転写性が損なわれる傾向がある。
【0054】
また、前記第3の熱転写記録媒体は、必要に応じて基材と黒色隠蔽層の間に離型層を、黒色隠蔽層の上に接着層を設けても良い。前記離型層、接着層には熱溶融性ないし熱軟化性のビヒクルからなる従来から知られている感熱転写インク層がとくに制限無く使用できる。
【実施例】
【0055】
以下本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
【0056】
(耐熱滑性層作製)下記処方の材料を混練して耐熱滑性層塗工液を作成し、基材として用いた4.5μmのPETフィルムの上に乾燥後の厚みが0.15μmになるよう調整して前記基材上に塗工、乾燥させて耐熱滑性層を作製した。
耐熱滑性層塗工液;
シリコーン変性ウレタン樹脂 5部
イソシアネート(TDI) 3部
溶剤(MEK) 140部
溶剤(トルエン) 25部
【0057】
(第1の熱転写記録媒体の作製)前記耐熱滑性層付きの4.5μmのPETフィルム基材の他方の面に、表1に記載の組成を混練して耐熱性剥離層塗工液を作製し、塗工、乾燥させて耐熱性剥離層を作製した。
【0058】
次に、下記処方の材料を混練して色材含有接着層塗工液を作製し、乾燥後の厚みが0.4μmになるよう調整して前記耐熱性剥離層上に塗工、乾燥させて色材含有接着層を耐熱性剥離層上に積層して、第1の熱転写記録媒体を作製した。
色材含有接着層塗工液;
ポリエステル樹脂(軟化点110℃) 42部
ポリメチルメタクリレート樹脂
(Tg105℃、重量平均分子量Mw280,000) 42部
有機顔料 21部
分散剤 2部
溶剤(MEK) 225部
【0059】
(第2の熱転写記録媒体の作製)前記耐熱滑性層付きの4.5μmのPETフィルム基材の他方の面に、下記処方の材料を混練して離型層塗工液を作製し、乾燥後の厚みが0.5μmになるよう調整して塗工、乾燥させて前記基材上に離型層を作製した。
離型層塗工液;
ポリエステル樹脂(軟化点110℃) 1部
ケトン樹脂(軟化点80℃) 1部
アクリル樹脂(Tg105℃、重量平均分子量Mw25,000)
73部
溶剤(MEK) 225部
【0060】
つぎに、下記処方の材料を混練してアンカー層塗工液を作製し、乾燥後の厚みが0.5μmになるよう調整して前記離型層上に塗工、乾燥させてアンカー層を離型層上に積層して作製した。
アンカー層塗工液;
ニトロセルロース 21.5部
イソシアネート(HDI) 16.0部
アクリル樹脂(Tg105℃、重量平均分子量Mw95,000)
5.5部
溶剤(MEK) 57.0部
【0061】
つぎに、真空蒸着法にて、アルミニウムを前記アンカー層の上に蒸着厚み20nmになるよう調整して蒸着、積層して金属蒸着層を作成した。
【0062】
つぎに、下記処方の材料を混合して接着層塗工液を作製し、乾燥後の厚みが0.1μmになるよう調整して前記金属蒸着層上に塗工、乾燥させて接着層を金属蒸着層上に積層して、第2の熱転写記録媒体を作製した。
接着層塗工液;
ポリエステル樹脂(軟化点165℃) 2.0部
溶剤(MEK) 98.0部
【0063】
(第3の熱転写記録媒体の作製))前記耐熱滑性層付きの4.5μmのPETフィルム基材の他方の面に、下記処方の材料を混練して接着層塗工液を作製し、乾燥後の厚みが1.5μmになるよう調整して塗工、乾燥させて黒色隠蔽層を有する第3の熱転写記録媒体を作製した。
エポキシ樹脂(ビスフェノールA型 軟化点128℃) 8部
カーボンブラック 10部
ポリメチルメタクリレート樹脂(Tg105℃、重量平均分子量Mw25,000) 8部
溶剤(MEK) 74部
【0064】
印字転写性(転写層の切れ性・基材密着性)評価
一般に、基材フィルムと転写層との密着性が不十分であったり、キレ性が悪いと、印字において面状剥離の現象が起きる。一方、基材フィルムと転写層の密着性が良すぎると、キレ性や、転写時に加熱部の剥離性が悪くなりやすい。両者が両立しているかどうかの評価方法として、実施例1〜6で得られた各熱転写記録媒体を用い、熱転写プリンタ(キヤノン社製プレート&シートプリンタ PP500 プレート印字モード(転写速度:30mm/sec))で100μm厚PETフィルムに、最適エネルギーにて1ドットの印字を行い、PETフィルム上に得られた印字を顕微鏡(株式会社キーエンス製VHX−500)にて観察し、発熱素子の1ドット面積に対する印字の面積比を求め、以下の基準にて評価した。この場合、面積比が1に近いほどドットの再現性がよいことになる。すなわち、基材フィルムと転写層との密着性と転写時の印字像のキレ性が両立できていることになる。前記面積比が0.9未満では転写量が不足し、1.10を超える場合では転写過多となり、いずれも鮮明な画像をうることができない。
評価基準
◎:面積比が0.95〜1.05。
○:面積比が0.90〜0.94、又は1.06〜1.10。
×:面積比が0.90未満、又は1.10より大きい。
【0065】
(くすみ評価方法)
透明な厚み0.5mmのガラス板に実施例1〜6の第1の熱転写記録媒体を用いて熱転写プリンターにて画像を形成し、その上に前記第2の熱転写記録媒体を熱転写プリンターにて重ねて転写し、その上に前記第3の熱転写記録媒体を熱転写プリンターにて重ねて転写を行った後、前記ガラス板を転写を行った側の反対側から見て、着色された金属光沢画像のくすみの状態を目視で判定した。判定基準は以下に示す。
◎:金属光沢がくすまない。
○:金属光沢がわずかにくすむが、実用上問題ない。
×:金属光沢がくすみ、実用上問題がある。
使用プリンタ:キヤノン社製プレート&シートプリンタ PP500 プレート印字モード(印字速度:30mm/sec)
【0066】
表1に、各実施例の印字転写性(転写層の切れ性・基材密着性)評価、くすみ評価結果を示す。
【0067】
【表1】