(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明を実施するための形態である第1の実施の形態を、図面を用いて順に説明する。なお、各図においてX軸、Y軸、Z軸が記載されている場合、X軸とY軸とZ軸は互いに直交しており、Z軸方向は鉛直上向き方向を示し、X軸方向はユーザ(揺動関節装置を装着したユーザ)に対する前方向を示し、Y軸方向はユーザに対する右方向を示している。なお本明細書では、
図1に示す「大腿揺動アーム13」が「第1揺動アーム」に相当し、「下腿揺動アーム33」が「第2揺動アーム」に相当している。また「回転角度検出手段11S」が「第1角度検出手段」に相当しており、「回転角度検出手段31S」が「第2角度検出手段」に相当している。また「電動モータ11」が「第1駆動手段」に相当しており、「電動モータ31」が「第2駆動手段」に相当している。また、以下の説明において、駆動軸部材6が凸状の部材である例を示しているが、駆動軸部材6は、凸形状の軸であってもよいし、軸を支持する凹形状(孔形状)であってもよい。従って、「駆動軸部材6回り」という記載は、「駆動軸部材6の中心軸である駆動軸線6J回り」と同じことを示す。また、「下腿中継アーム34」と「下腿アーム35」は「揺動リンク部材」に相当している。また、「弾性体」は、「伸縮バネ23K」を含んでおり、以下の説明では伸縮バネを使って説明する。
【0025】
●●[第1の実施の形態の揺動関節装置1の全体構成(
図1〜
図4)]
第1の実施の形態の揺動関節装置1は、ユーザの片脚(第1の実施の形態では左脚)に取り付けられて、ユーザの歩行または走行等の動作を支援する。
図1に示すように、揺動関節装置1は、符号2、3、4、5、6、7にて示したユーザ装着部と、符号11、12、13、19にて示した大腿揺動部と、符号16、21、22、23にて示した剛性調整部と、符号31、32、32P、32B、33、34、35、36、39にて示した下腿揺動部と、にて構成されている。なお、
図1は揺動関節装置1の各構成要素の形状と組み付け位置等を示す分解斜視図であり、各構成要素を組み付けた状態の揺動関節装置1を
図2に示す。また
図3は揺動関節装置1をユーザに装着した状態を説明しており、
図4は大腿揺動アーム13及び下腿揺動アーム33の揺動の例を示している。
【0026】
●[ベース部2、腰装着部3、肩ベルト4、制御ユニット5、ベース部2等にて構成されたユーザ装着部(
図1〜
図4)]
ベース部2は、腰装着部3に固定され、前記大腿揺動部、前記剛性調整部、前記下腿揺動部を保持するためのベース(基板)となる部材である。またベース部2には、揺動関節装置1を装着したユーザの股関節の側方に相当する位置に、Y軸にほぼ平行に延びる駆動軸部材6が取り付けられ、駆動軸部材6に対して上方となる位置に、駆動軸部材6と平行に配置された従動軸部材7が取り付けられている。なお、駆動軸部材6は、後述する下腿揺動アーム33の貫通孔33Hに挿通された後、大腿揺動アーム13の貫通孔13Hに挿通される。また、従動軸部材7は、連動揺動部材16の貫通孔16Hに挿通される。なお駆動軸線6Jは、駆動軸部材6の中心軸を示しており、従動軸線7Jは、従動軸部材7の中心軸を示している。
【0027】
腰装着部3は、ユーザの腰に巻回されてユーザの腰に固定される部材であり、ユーザの腰周りの寸法に応じて調整可能に構成されている。また腰装着部3には、ベース部2が固定され、肩ベルト4の一方端と他方端が接続されている。
【0028】
肩ベルト4は、一方端が腰装着部3の前面側に接続され、他方端が腰装着部3の背面側に接続され、長さを調節可能に構成されており、制御ユニット5が取り付けられている。ユーザは、肩ベルト4の長さを調節して自身の肩に肩ベルト4を装着することで、背中に制御ユニット5をバックパックやランドセルのように背負うことができる。
【0029】
制御ユニット5は、電動モータ11、21、31を制御する制御手段と、当該制御手段及び電動モータ11、21、31への電力を供給するバッテリ等を収容している。
【0030】
●[電動モータ11、ブラケット12、大腿揺動アーム13、大腿装着部19等にて構成された大腿揺動部(
図1〜
図4)]
大腿揺動アーム13(揺動アームに相当)は、外周面にギア歯が形成された円板部13Gと、円板部13Gから下方に延びるアーム部にて構成されている。そして円板部13Gの中心には貫通孔13Hが形成されており、貫通孔13Hには駆動軸部材6が挿通される。従って、大腿揺動アーム13は、駆動軸部材6回りに揺動自在に支持される。また大腿揺動アーム13の貫通孔13Hは、ユーザの股関節の側方に相当する位置に配置され、大腿揺動アーム13の下端に設けられたリンク孔13Lは、ユーザのひざ関節の側方に相当する位置に配置される。なお、大腿揺動アーム13の下方に延びる長さは調整可能に構成されており、ユーザは、自身のひざ関節の位置に応じて、リンク孔13Lの上下方向の位置を調整可能である。また大腿揺動アーム13には、大腿装着部19が取り付けられ、大腿装着部19は、ユーザの大腿部(ふとももの周囲)にあてがわれ、ユーザの大腿部へ大腿揺動アーム13を装着することを容易にする。
【0031】
ブラケット12は、電動モータ11の回転軸が駆動軸部材6と同軸となるように電動モータ11を固定するための部材であり、貫通孔12Hが駆動軸部材6と同軸となるようにベース部2に固定される。なお、駆動軸部材6に、下腿揺動アーム33の貫通孔33Hが嵌め込まれて、さらに大腿揺動アーム13の貫通孔13Hが嵌め込まれた後、ブラケット12がベース部2に固定される。
【0032】
電動モータ11は、先端に減速機11Dが取り付けられ、減速機11Dはブラケット12の貫通孔12Hに挿通されて大腿揺動アーム13の円板部13Gの中心に取り付けられている。また電動モータ11は、ブラケット12に固定されている。また電動モータ11には、制御ユニット5に収容されているバッテリ及び制御手段から駆動信号とともに電力が供給されている。そして電動モータ11は、ブラケット12(すなわちベース部2)に対して、駆動軸部材6回りに大腿揺動アーム13を前後方向に揺動させることができる(
図4参照)。また電動モータ11には、エンコーダ等の回転角度検出手段11Sが設けられている。回転角度検出手段11Sは電動モータ11のシャフトの回転角度に応じた信号を制御手段に出力する。そして制御手段は、回転角度検出手段11Sからの検出信号と減速機11Dの減速比に基づいて、減速機11Dの回転角度を検出可能であり、大腿揺動アーム13の揺動角度を検出することが可能である。なお、ブラケット12に、ブラケット12に対する大腿揺動アーム13の揺動角度を検出する角度検出手段(角度センサ)を設けるようにしてもよいし、ブラケット12に、ブラケット12に対する下腿揺動アーム33の揺動角度を検出する角度検出手段(角度センサ)を設けるようにしてもよい。また、大腿揺動アーム13の揺動角度を検出する角度検出手段を設ける代わりに、連動揺動部材16の揺動角度を検出する角度検出手段を設けるようにしてもよい。
【0033】
●[電動モータ31、ブラケット32、動力伝達部(32P、32B)、下腿揺動アーム33、下腿中継アーム34、下腿アーム35、足先保持部36、下腿装着部39等にて構成された下腿揺動部(
図1〜
図4)]
下腿揺動アーム33は、駆動軸部材6が挿通される貫通孔33Hが形成されている。駆動軸部材6が貫通孔33Hに挿通されると、下腿揺動アーム33は、駆動軸部材6回りに揺動自在に支持される。そして下腿揺動アーム33にはベルト32Bがかけられ、電動モータ31と、プーリ32P及びベルト32Bにて構成された動力伝達部から動力が伝達されて駆動軸部材6回りに揺動する。
【0034】
下腿中継アーム34は、上方端が下腿揺動アーム33の先端に揺動自在に接続され、下方端が下腿アーム35の上方端の側の平行リンク形成部35Mの端部に揺動自在に接続されている。なお、下腿中継アーム34の下方に延びる長さは調整可能に構成されており、大腿揺動アーム13の調整された長さに応じて、下腿中継アーム34の長さは調節される。
【0035】
下腿アーム35は、略逆L字状であり、L字の屈曲部に相当する位置に、大腿揺動アーム13の下端のリンク孔13Lと接続するためのリンク孔35Lが形成されている。従って下腿アーム35は、上方端の側の平行リンク形成部35Mの一方端が下腿中継アーム34の下方端に揺動自在に接続され、平行リンク形成部35Mの他方端が大腿揺動アーム13の下方端に揺動自在に接続されている。また下腿アーム35の下方端には、足先保持部36の上方端が揺動自在に接続されている。なお、下腿アーム35の下方に延びる長さはユーザの下腿に合うように調整可能に構成されている。また、足先保持部36は、略L字状であり、下端部がユーザの足の裏に配置される。また下腿アーム35には、下腿装着部39が取り付けられ、下腿装着部39は、ユーザの下腿(ふくらはぎの周囲)にあてがわれ、ユーザの下腿部へ下腿アーム35を装着することを容易にする。
【0036】
ブラケット32は、電動モータ31を固定するための部材であり、ベース部2に固定される。またブラケット32には、貫通孔32Hが形成されている。
【0037】
電動モータ31は、先端に減速機31Dが取り付けられ、減速機31Dはブラケット32の貫通孔32Hに挿通される。また減速機31Dにはプーリ32Pが取り付けられ、プーリ32Pと下腿揺動アーム33にはベルト32Bがかけられる。また電動モータ11には、制御ユニット5に収容されているバッテリ及び制御手段から駆動信号とともに電力が供給されている。そして電動モータ31は、プーリ32Pとベルト32Bを介して下腿揺動アーム33を、駆動軸部材6回りに前後方向に揺動させることができる(
図4参照)。また電動モータ31には、エンコーダ等の回転角度検出手段31Sが設けられている。回転角度検出手段31Sは電動モータ31のシャフトの回転角度に応じた信号を制御手段に出力する。そして制御手段は、回転角度検出手段31Sからの検出信号と減速機31Dの減速比とプーリ比とに基づいて、下腿揺動アーム33の回転角度を検出可能であり、下腿揺動アーム33の揺動角度を検出することが可能である。
【0038】
次に
図4を用いて、大腿揺動アーム13を装着したユーザの大腿部UL1の揺動支援と、下腿アーム35を装着したユーザの下腿部UL2の揺動支援の動作を説明する。大腿揺動アーム13は、電動モータ11の動力によって駆動軸部材6回りに揺動運動する。同様に下腿揺動アーム33は、電動モータ31の動力によって駆動軸部材6回りに揺動運動する。また、大腿揺動アーム13と下腿揺動アーム33と下腿中継アーム34と(下腿アーム35の)平行リンク形成部35Mは、平行四辺形からなる平行リンクを構成している。従って、下腿中継アーム34と下腿アーム35は、大腿揺動アーム13と下腿揺動アーム33とに接続されて、大腿揺動アーム13の揺動角度(
図4中の角度θ1)と下腿揺動アーム33の揺動角度(
図4中の角度θ1−θ2)とに基づいて動作する揺動リンク部材に相当している。なお、
図4において実線にて示す大腿揺動アーム13、下腿揺動アーム33、下腿中継アーム34、下腿アーム35、の位置を、各アームの初期位置(ユーザが直立状態で静止した位置)とする。
【0039】
大腿揺動アーム13を、大腿揺動アーム13の初期位置から角度θ1にて前方に揺動させると、
図4に示すように、ユーザの大腿部UL1を角度θ1にて前方に振り出すことができる。同時に、下腿揺動アーム33を、下腿揺動アーム33の初期位置から角度(θ1―θ2)にて前方に揺動させると、
図4に示すように、大腿揺動アーム13に対して角度θ2の傾斜を有するように、ユーザの下腿部UL2を前方に振り出すことができる。電動モータ11による大腿揺動アーム13の揺動運動と、電動モータ31による下腿揺動アーム33の揺動運動を、それぞれ独立して制御することができるので、角度θ1、角度θ2を、ユーザの所望する角度に合わせて自由に調整することができる。また、この構成によれば、大きなトルクが必要である大腿部の振り出しを、電動モータ11と電動モータ31の双方のトルクで行うことができるので、大型のモータを必要としない。
【0040】
また、大腿揺動アーム13を揺動運動させると、連動揺動部材16が連動して揺動運動(往復旋回運動)する。そして揺動運動のエネルギーを、連動揺動部材16を介してバネユニット23に蓄え、反対方向への揺動運動に利用する。つまり、大腿揺動アーム13を前方に振り出した際のエネルギーをバネユニット23に蓄えて大腿揺動アーム13を後方に振り出す際に利用し、大腿揺動アーム13を後方に振り出した際のエネルギーをバネユニットに蓄えて大腿揺動アーム13を前方に振り出す際に利用する。次に、バネユニット23を含む剛性調整部について説明する。
【0041】
●[連動揺動部材16、電動モータ21、ブラケット22、バネユニット23等にて構成された剛性調整部(
図1〜
図3)]
ブラケット22は、電動モータ21の剛性調整軸部材21D(この場合、減速機)が、連動揺動角度がゼロの場合において連動揺動部材16の外周部に設けられたバネ係止部材16Kと同軸となる位置(
図8、
図9参照)に電動モータ21を固定する部材であり、ベース部2に固定される。そしてブラケット22において、連動揺動角度がゼロの場合の連動揺動部材16のバネ係止部材16Kと同軸となる位置には、貫通孔22Hが形成されている。なお、剛性調整軸部材21Dの回転軸である剛性調整軸21DJ(
図5〜
図7参照)は、駆動軸線6J及び従動軸線7Jと平行である。
【0042】
連動揺動部材16は、外周面にギア歯16Gが形成された円板状の部材である。そして連動揺動部材16の中心には貫通孔16Hが形成されており、貫通孔16Hには従動軸部材7が挿通される。従って、連動揺動部材16は、従動軸部材7回りに揺動自在に支持されている。また、大腿揺動アーム13の円板部13Gの外周面のギア歯と、連動揺動部材16の外周面のギア歯は噛み合わされており、大腿揺動アーム13の揺動運動に連動して連動揺動部材16が揺動する。また、円板部13Gの径よりも連動揺動部材16の径のほうが充分大きく設定されており、例えば円板部13Gのギア歯数に対する連動揺動部材16のギア歯数は、1:10に設定されている。この場合、例えば大腿揺動アーム13が60[°]の揺動角度で揺動した場合、連動揺動部材16は6[°]の揺動角度で連動して揺動する。また、連動揺動部材16の外周部の近傍の位置であって、連動揺動角度がゼロの場合において剛性調整軸部材21D(電動モータ21のシャフトに設けられた減速機)と同軸となる位置(
図8、
図9参照)には、バネ係止部材16K(バネ揺動端に相当し、
図1参照)が設けられている。このバネ係止部材16Kには、後述するように、バネユニット23の伸縮バネの一方端が接続される。
【0043】
電動モータ21は、先端に剛性調整軸部材21Dが取り付けられ、剛性調整軸部材21Dはブラケット22の貫通孔22Hに挿通されてバネユニット23の取付部23Hに取り付けられている。また電動モータ21は、ブラケット22に固定されている。また電動モータ21には、制御ユニット5に収容されているバッテリ及び制御手段から駆動信号とともに電力が供給されている。そして電動モータ21は、ブラケット22(すなわちベース部2)に対して剛性調整軸部材21D回りにバネユニット23を旋回させることができる(
図4参照)。また電動モータ21には、エンコーダ等の回転角度検出手段21Sが設けられている。回転角度検出手段21Sは電動モータ21のシャフトの回転角度に応じた信号を制御手段に出力する。そして制御手段は、回転角度検出手段21Sからの検出信号と剛性調整軸部材21Dの減速比に基づいて、剛性調整軸部材21Dの回転角度を検出可能であり、バネユニット23(旋回部材23A)の旋回角度を検出することが可能である。なお、ブラケット22に、ブラケット22に対するバネユニット23(旋回部材23A)の旋回角度を検出する角度検出手段(角度センサ)を設けるようにしてもよい。なおバネユニット23については、以下にて詳細を説明する。
【0044】
●[バネユニット23の構成と動作(
図5〜
図9)]
図5(
図4におけるV−V断面図)に示すように、バネユニット23は、取付部23Hを有する旋回部材23A、軸受23B、揺動追従軸部材23Cを有する揺動追従部材23M、シャフト23D、伸縮伝達部材23E、ワッシャ23F、23G、伸縮バネ23Kにて構成されている。
【0045】
旋回部材23Aは、一方端の近傍に設けられた取付部23Hに、電動モータ21の剛性調整軸部材21Dが嵌め込まれ、剛性調整軸21DJ回りに旋回する。また旋回部材23Aの他方端(剛性調整軸部材から離れた位置)には軸受23Bと揺動追従軸部材23Cを取り付けるための貫通孔23A1が設けられている。
【0046】
揺動追従軸部材23C(バネ固定端に相当)は、旋回部材23Aにおける剛性調整軸部材21Dから離れた位置に、軸受23Bを介して取り付けられている。従って、揺動追従軸部材23Cを有する揺動追従部材23Mは、剛性調整軸21DJに平行なバネ支持軸23CJ回りに旋回可能となるように支持されている。また揺動追従部材23Mには、シャフト23Dを挿通するための貫通孔23M1、23M2が、剛性調整軸21DJに直交する方向に形成されている。
【0047】
シャフト23Dには、伸縮伝達部材23E、ワッシャ23F、伸縮バネ23K、ワッシャ23Gが嵌められ、シャフト23Dは揺動追従部材23Mの貫通孔23M1、23M2に挿通されている。そして伸縮伝達部材23Eの取付部23E1には、連動揺動部材16の外周部に設けられているバネ係止部材16K(
図1参照)が、軸受23Nを介して取り付けられている。なお、剛性調整軸21DJとバネ係止部材16Kの中心軸であるバネ揺動軸16KJが同軸にある場合、伸縮バネ23Kは自由長であり、圧縮も伸長もされていない状態である。
【0048】
バネユニット23は、上記の構成により、
図5に示す状態から連動揺動部材16が下方に移動した場合、
図6に示すように、バネ係止部材16Kが、伸縮伝達部材23E及びワッシャ23Fを下方に押し込む。すると、伸縮バネ23Kが圧縮され、伸縮バネ23Kの付勢力は、剛性調整軸21DJとバネ揺動軸16KJとの距離ΔLdをゼロとする方向に働く。
【0049】
また、
図5に示す状態から連動揺動部材16が上方に移動した場合、
図7に示すように、バネ係止部材16Kが、伸縮伝達部材23Eとシャフト23Dとワッシャ23Gを上方に引き上げる。すると、伸縮バネ23Kが圧縮され、伸縮バネ23Kの付勢力は、剛性調整軸21DJとバネ揺動軸16KJとの距離ΔLuをゼロとする方向に働く。
【0050】
図8は、大腿揺動アーム13の揺動角度がゼロの場合におけるバネユニット23の周囲の斜視図である。大腿揺動アーム13の揺動角度がゼロの場合では、剛性調整軸21DJとバネ揺動軸16KJが同軸であり、伸縮バネ23Kは自由長である。バネユニット23の旋回部材23Aは、電動モータ21の剛性調整軸部材21Dの剛性調整軸21DJ回りに旋回可能であり、電動モータ21によって旋回角度が調整されている。またバネユニット23の揺動追従部材23Mは、バネ支持軸23CJ回りに旋回可能である。
【0051】
図9は、
図8の状態から大腿揺動アーム13が符号R8方向に揺動した場合を示しており、連動揺動部材16が符号L8方向に連動揺動した場合を示している。大腿揺動アーム13がR8方向に揺動すると、大腿揺動アーム13の円板部13Gの外周のギア歯に噛み合っている連動揺動部材16がL8方向に連動揺動する。すると、連動揺動部材16の外周部のバネ係止部材16Kが、剛性調整軸21DJから離れる方向に移動して、伸縮伝達部材23Eを、バネ支持軸23CJから離れる方向に引張る。すると伸縮バネ23Kが圧縮されて(
図7参照)、伸縮バネ23Kに発生した付勢力は、バネ揺動軸16KJが剛性調整軸21DJと同軸となる方向へと連動揺動部材16を旋回させる力(L8方向の反対方向へと連動揺動部材16を旋回させる力)となって働く。
【0052】
●[バネユニットの模式図と剛性調整角度(
図10、
図11)]
次に
図10、
図11を用いて、剛性調整角度について説明する。なお
図10、
図11、
図14では、
図5に示すバネユニット23の構造を簡略化した模式図のバネユニット23Zを用いて説明する。模式図で示すバネユニット23Zは、
図5に示すバネユニット23の構成から旋回部材23Aと揺動追従軸部材23Cと伸縮バネ23Kのみを残し、伸縮バネ23Kの一方端は揺動追従軸部材23Cに係止され、伸縮バネ23Kの他方端はバネ係止部材16Kに係止されている。また、
図10に示す連動揺動角度がゼロの場合であって、剛性調整軸21DJとバネ揺動軸16KJが同軸の場合、伸縮バネ23Kは、伸長も圧縮もされていない自由長である。
【0053】
また
図10、
図11において、従動軸部材7を中心として従動軸部材7から剛性調整軸部材21Dまでの距離を半径とする円である仮想連動揺動円(本実施の形態では、連動揺動部材の外周円)における円周上の接線であって、剛性調整軸部材21Dの位置における接線を仮想接線VSとする。また、連動揺動角度がゼロの場合におけるバネ固定端(揺動追従軸部材23Cに相当)とバネ揺動端(バネ係止部材16Kに相当)とを結ぶ直線を仮想直線V23とする。また、従動軸部材7の従動軸線7Jと、剛性調整軸部材21Dの剛性調整軸21DJとを結ぶ直線を仮想基準線VXとする。バネ揺動軸16KJが、仮想基準線VXと重なる位置にある場合では、大腿揺動アーム13の揺動角度はゼロであり、連動揺動部材16の連動揺動角度はゼロである。また、仮想接線VSと仮想基準線VXは直交している。そして、仮想接線VSと仮想直線V23との成す角である、
図10における角度φa、
図11における角度φbを、剛性調整角度とする。
【0054】
図10は、剛性調整角度φaが、ほぼ直角となるように、電動モータ21を制御した場合の例を示している。そして大腿揺動アーム13が、揺動角度がゼロの状態から符号L10方向に揺動し、連動揺動部材16が、連動揺動角度がゼロの状態から符号R10方向に連動揺動角度θR10まで揺動したとする。この場合、バネ係止部材16Kは、剛性調整軸部材21Dと同軸の位置から、連動揺動角度θR10だけ右に回転したバネ係止部材16K´の位置に移動する。これにより伸縮バネ23Kは、伸縮バネ23K´の状態となり、ΔLR10だけ伸長される。この伸縮バネ23K´の伸長による付勢力は、連動揺動部材16を、連動揺動角度がゼロとなる方向へ、揺動させる力となる。
【0055】
図11は、
図10に対して、剛性調整角度φbを約45[°]となるように、電動モータ21を制御した場合の例を示している。この場合、
図10と同様に大腿揺動アームが、揺動角度がゼロの状態から符号L10方向に揺動し、連動揺動部材16が、連動揺動角度がゼロの状態から符号R10方向に連動揺動角度θR10まで揺動したとする。この場合の伸縮バネ23Kは、伸縮バネ23K´の状態となり、ΔLR11だけ伸長されるが、
図10の場合と同じ連動揺動角度θR10であるにもかかわらず、伸長されるΔLR11は、
図10に示すΔLR10よりも長い。すなわち、
図10における伸縮バネ23K´の付勢力よりも、
図11における伸縮バネ23K´の付勢力のほうが大きい。
【0056】
このように、連動揺動角度が同じであっても、剛性調整角度を変えることで、伸縮バネ23Kの伸縮量を変えることができる。つまり、剛性調整角度を変化させると、連動揺動部材16から見た伸縮バネ23Kの見かけ上のバネ定数を変化させることができる。すなわち、剛性調整角度を調整することで、駆動軸部材6回りの剛性を調整することができる。なお、連動揺動部材16から見た伸縮バネ23Kの見かけ上のバネ定数は、剛性調整角度が直角の場合が最も小さく、剛性調整角度がゼロの場合が最も大きい(0[°]≦剛性調整角度≦90[°]とした場合)。
【0057】
以上に説明したバネユニット23、剛性調整軸部材21D、電動モータ21(剛性調整軸旋回手段)にて、見かけ上バネ定数可変手段が構成されている。そして見かけ上バネ定数可変手段は、連動揺動部材16から見た伸縮バネ23Kの見かけ上のバネ定数を可変としており、駆動軸部材6回りの剛性を可変としている。また、見かけ上バネ定数可変手段と、従動軸部材7と、連動揺動部材16にて、剛性可変手段が構成されている。このように、「剛性」とは、大腿揺動アーム13を揺動させるために必要とする単位角度変位あたりのトルクを指し、連動揺動部材16から見た伸縮バネ23Kの見かけ上のバネ定数は当該トルクに関連している。従って、「連動揺動部材16から見た弾性体の剛性」は、「連動揺動部材16から見た伸縮バネ23Kの見かけ上のバネ定数」を含んでいる。バネ定数は、剛性の一種とされている。そして、弾性体の剛性を可変させて、エネルギーを最適に保存し、保存したエネルギーを最適に出力することが可能である。また、「連動揺動部材16から見た弾性体の剛性を可変とする剛性可変手段」は、「連動揺動部材16から見た伸縮バネ23Kの見かけ上のバネ定数を可変とする見かけ上バネ定数可変手段」を含んでいる。
【0058】
●[制御手段の入出力(
図12)]
次に
図12を用いて、制御手段50の入出力について説明する。制御ユニット5には、制御手段50及びバッテリ60が収容されている。また制御ユニット5は、起動スイッチ54、入出力手段であるタッチパネル55、バッテリ60への充電用コネクタ61等が設けられている。また制御手段50(制御装置)は、CPU50A、モータドライバ51、52、53等を有している。なお、制御手段50の処理を実行させるためのプログラムや各種の計測結果等を記憶する記憶装置も備えているが、図示省略する。
【0059】
制御手段50は、後述するように、大腿揺動アーム13を揺動運動させるための目標揺動周期や目標揺動角度を求め、モータドライバ51を介して駆動信号を電動モータ11に出力する。電動モータ11は制御手段50からの駆動信号に基づいて減速機11Dを介して大腿揺動アーム13を所定周期で所定角度にて揺動運動させる。また電動モータ11のシャフトの回転速度や回転量は、回転角度検出手段11Sにて検出され、検出信号はモータドライバ51に入力されるとともにモータドライバ51を介してCPU50Aに入力される。CPU50Aは、回転角度検出手段11Sからの検出信号に基づいた実際の揺動周期と実際の揺動角度が、目標揺動周期及び目標揺動角度に近づくようにフィードバック制御する。
【0060】
また制御手段50は、後述するように、バネユニット23の剛性調整角度を、連動揺動部材16から見た見かけ上バネ定数が最適な値となるように、目標剛性調整角度を求め、モータドライバ52を介して駆動信号を電動モータ21に出力する。電動モータ21は制御手段50からの駆動信号に基づいて剛性調整軸部材21Dを介してバネユニット23を旋回させる。また電動モータ21のシャフトの回転速度や回転量は、回転角度検出手段21Sにて検出され、検出信号はモータドライバ52に入力されるとともにモータドライバ52を介してCPU50Aに入力される。CPU50Aは、回転角度検出手段21Sからの検出信号に基づいた実際の旋回角度が、目標剛性調整角度に近づくようにフィードバック制御する。
【0061】
制御手段50は、後述するように、下腿揺動アーム33を揺動運動させるための目標揺動周期や目標揺動角度を求め、モータドライバ53を介して駆動信号を電動モータ31に出力する。電動モータ31は制御手段50からの駆動信号に基づいて減速機31D及びプーリ32Pとベルト32Bを介して下腿揺動アーム33を所定周期で所定角度にて揺動運動させる。また電動モータ31のシャフトの回転速度や回転量は、回転角度検出手段31Sにて検出され、検出信号はモータドライバ53に入力されるとともにモータドライバ53を介してCPU50Aに入力される。CPU50Aは、回転角度検出手段31Sからの検出信号に基づいた実際の揺動周期と実際の揺動角度が、目標揺動周期及び目標揺動角度に近づくようにフィードバック制御する。
【0062】
起動スイッチ54は、制御手段50を起動するためのスイッチである。またタッチパネル55は、ユーザの身長や体重等の入力や、設定状態の表示等を行うための装置である。また充電用コネクタ61は、バッテリ60を充電する際に、充電用ケーブルが接続されるコネクタである。
【0063】
●[制御手段の処理手順(
図13)]
次に
図13に示すフローチャートを用いて、制御手段50の処理手順について説明する。ユーザが制御ユニットの起動ボタンを操作すると(ステップS10)、制御手段はステップS15に進む。
【0064】
ステップS15にて制御手段は、タッチパネルからのユーザの初期設定入力を待つ。ユーザからの身長と体重の入力を確認すると、制御手段はステップS20に進む。なお制御手段は、所定時間が経過してもユーザからの入力が確認されない場合、例えば、予め設定された標準身長と標準体重を設定してステップS20に進む。
【0065】
ステップS20にて制御手段は、所定期間の間、電動モータ11、21、31に通電せず、ユーザの歩行状態(または走行状態)を計測し、計測時間に対応させて回転角度検出手段11S、31Sからの検出信号を計測データとして記憶装置に記憶する。電動モータ11、31のシャフトは、非通電時には空回りする構成とされている。なお電動モータ21のシャフトは、非通電時には空回りせずロックされる構成とされている。そして制御手段は、例えば所定歩数あるいは所定時間の間、計測データを収集すると、ステップS25に進む。
【0066】
ステップS25にて制御手段は、回転角度検出手段11Sからの検出信号に基づいた計測データから、大腿揺動アームの揺動角度(揺動振幅)や、大腿揺動アームの角速度及び角加速度から歩行周期(揺動周期)を算出する。また同様に制御手段は、回転角度検出手段31Sからの検出信号に基づいた計測データから、下腿揺動アームの揺動角度(揺動振幅)や、下腿揺動アームの角速度及び角加速度から歩行周期(揺動周期)を算出する。そして制御手段はステップS30に進む。
【0067】
ステップS30にて制御手段は、ステップS25にて算出した、大腿揺動アームの揺動角度、大腿揺動アームの揺動周期、ステップS15にて入力されたユーザの身長及び体重等に基づいて、最適関節剛性である目標剛性調整角度を算出し、ステップS35に進む。なお、目標剛性調整角度の具体的な算出方法については後述する。
【0068】
ステップS35にて制御手段は、電動モータ21を制御してバネユニット23(旋回部材23A)の剛性調整角度を、ステップS30にて求めた目標剛性調整角度に設定し、ステップS40に進む。
【0069】
ステップS40にて制御手段は、ステップS25にて算出した、大腿揺動アームの揺動角度、大腿揺動アームの揺動周期、下腿揺動アームの揺動角度、下腿揺動アームの揺動周期、バッテリの出力電圧等に基づいて、ユーザの大腿部のアシストパターン(電動モータ11への駆動信号の出力パターン等)と、ユーザの下腿部のアシストパターン(電動モータ31への駆動信号の出力パターン)とを算出し、ステップS45に進む。
【0070】
ステップS45にて制御手段は、ステップS40にて算出したアシストパターンに基づいて、電動モータ11及び電動モータ31に駆動信号の出力を開始して、大腿揺動アーム13及び下腿揺動アーム33を揺動運動させ、ユーザの歩行動作(または走行動作)を継続するように、ユーザの歩行動作(または走行動作)を支援し、ステップS50に進む。なお、電動モータ11及び電動モータ31への駆動信号の出力は、他のステップに移行した場合も継続される。
【0071】
ステップS50にて制御手段は、電動モータ11及び電動モータ31を動作させてユーザの歩行(または走行)の動作を支援しながら、ステップS20にて計測したように、計測時間に対応させて回転角度検出手段11S、31Sからの検出信号を計測データとして記憶装置に記憶し、ステップS55に進む。なお、計測データの収集は、他のステップに移行した場合も継続される。
【0072】
ステップS55にて制御手段は、ステップS50にて収集した計測データに基づいて、ユーザが歩行動作(または走行動作)の支援の停止を所望しているか否かを判定し、支援の停止を所望していると判定した場合(Yes)は、電動モータ11及び電動モータ31への駆動信号の出力を停止して処理を終了し、支援の停止を所望していないと判定した場合(No)はステップS25に戻る。
【0073】
●[目標剛性調整角度の算出方法(
図14)]
次に
図14を用いて、
図13に示すフローチャートのステップS30にて行う目標剛性調整角度の算出手順について説明する。
図14は、大腿揺動アーム13、連動揺動部材16、バネ係止部材16K、揺動追従軸部材23C、伸縮バネ23K、を模式的に記載した図である。なお、
図14に示す例では、大腿揺動アーム13の揺動運動は、ベルトVBを介して連動揺動部材16に伝達される構成とされている。
【0074】
図14において、連動揺動部材16の外周に設定された剛性調整軸21DJに接する接線を仮想接線VSとする。また、剛性調整軸21DJと従動軸線7Jを通る直線を仮想直線VTとする。また連動揺動部材16は、従動軸線7Jを中心とする半径rの真円であるとする。また伸縮バネ23Kの一方端(一方端に相当する個所)はバネユニットの揺動追従軸部材23C(バネ固定端に相当)に係止され、伸縮バネ23Kの他方端(他方端に相当する個所)はバネ係止部材16K(バネ揺動端に相当)に係止されている。また伸縮バネ23Kは、バネ係止部材16Kが剛性調整軸21DJと同軸である場合に自由長であり、この自由長をLとする。また、連動揺動部材16の連動揺動角度がゼロの場合、バネ係止部材16Kは剛性調整軸21DJと同軸の位置にあるものとする。
【0075】
連動揺動部材16の連動揺動角度がゼロの状態(バネ係止部材16Kと剛性調整軸21DJが同軸の状態)から、連動揺動部材16が時計回り方向に角度θだけ連動揺動すると、バネ係止部材16Kは、剛性調整軸21DJと同軸の位置から、符号16K´にて示す位置に移動し、伸縮バネ23Kの位置及び伸縮状態は、符号23K´に示すとおりとなる。なお、符号23K´の伸縮バネの長さをL´とする。この符号16K´を通り仮想接線VSに平行な直線を仮想直線VS´とする。また、揺動追従軸部材23Cの位置を位置(A)に設定し、位置(A)から仮想直線VS´に下ろした垂線と仮想直線VS´との交点の位置を位置(C)に設定し、符号16K´の位置を位置(B)に設定する。また、揺動追従軸部材23Cと剛性調整軸21DJとを結ぶ仮想直線V23と仮想接線VSとのなす角度である剛性調整角度を角度φとする。
【0076】
以上の各設定により、従動軸線7Jから符号16K´までの距離は、rである。また、従動軸線7Jから仮想接線VSまでの距離は、rである。また、位置(B)から仮想直線VTまでの距離は、r・sinθである。また、位置(C)から仮想直線VTまでの距離は、L・cosφである。また、仮想接線VSと仮想直線VS´との距離は、r−r・cosθ=r・(1−cosθ)である。また、位置(A)から仮想接線VSまでの距離は、L・sinφである。また、連動揺動部材16の連動揺動角度である角度θが充分小さな微小角度である場合、ベルトVBの移動長さである連動揺動部材16の周方向の変位量は、r・θである。
【0077】
ここで、ユーザの歩行周波数をf、その場合の角速度をωとすると。以下の式(1)が成立する。歩行周波数fは、計測したユーザの歩行(または走行)の周期から求めることができる。従って、下記の式(1)のωの値を求めることができる。
ω=2・π・f 式(1)
【0078】
また、伸縮バネ23Kが自由長の方向に伸縮した場合のバネ定数を、kとして、剛性調整角度が角度φの場合における連動揺動部材16から見た伸縮バネの見かけ上のバネ定数を、k´とする。また、ユーザの下肢と大腿揺動アーム13と連動揺動部材16とを含む従動軸線7J回りの慣性モーメントをIとする。例えば、慣性モーメントIは、従動軸線7J回りに揺動する各部材の合計質量(既知)と、当該合計質量の重心の位置(既知)と、ユーザの体重及び身長から推定した下肢の質量と重心の位置とから、求めることが可能であり、以下の式(2)が成立する。上記よりωの値がわかっており、慣性モーメントIもわかっているので、下記の式(2)から見かけ上バネ定数k´を求めることができる。
ω=√(k´/I)
k´=I・ω
2 式(2)
【0079】
また、エネルギー保存則より、以下の式(3)が成立する。すでに、L、r、θ、k、k´は上記よりわかっているので、式(3)よりL´を求めることができる。
(1/2)・k´・(r・θ)
2=(1/2)・k・(L´―L)
2
L´=L+r・θ・√(k´/k) 式(3)
【0080】
また
図14において、位置(A)と位置(B)と位置(C)を頂点とする三角形は直角三角形であるので、三平方の定理より、以下の式(4)が成立する。
(r・sinθ+L・cosφ)
2+[r・(1−cosθ)+L・sinφ]
2
=L´
2 式(4)
【0081】
上記の式(4)を整理すると、以下の式(5)を得ることができる。
cos[(θ/2)−φ]
=[L´
2−L
2−2・r
2・(1−cosθ)]/4・L・r・sin(θ/2)
式(5)
【0082】
ここで、[L´
2−L
2−2・r
2・(1−cosθ)]/4・L・r・sin(θ/2)=χと置き換えると、θ=0のとき、χ=√(k´/k)であるので、以下の式(6)を得ることができる。上記より、すでにL´、L、r、θ、k、k´はわかっているので、χを求めることが可能であり、φを求めることができる。求めた角度φが、目標剛性調整角度である。
φ>θ/2の場合、φ=(θ/2)+cos
-1χ
φ≦θ/2の場合、φ=(θ/2)−cos
-1χ 式(6)
【0083】
以上に説明したように、制御手段50を用いて、駆動軸部材6回りの大腿揺動アーム13の揺動周波数(f)と、大腿揺動アーム13を含む揺動対象物における駆動軸部材6回りの慣性モーメント(I)と、伸縮バネ23Kのバネ定数(k)と、伸縮バネ23Kの自由長(L)と、従動軸部材7から剛性調整軸部材までの距離(r)と、連動揺動角度(角度θ)と、に基づいて、伸縮バネの共振点が、揺動対象物の揺動の周波数と一致するように剛性調整角度(角度φ)を調整する。
【0084】
このように、伸縮バネ23Kの共振点が、揺動アーム13を含む揺動対象物(駆動軸部材6回りに揺動する物体全体)の揺動の周波数と一致してエネルギー保存則が成立するように、剛性調整角度φを設定することで、電動モータ11にて消費する電力を最小とすることができる。なお、剛性調整角度を上記の式から求めることなく、微小角度だけ剛性調整角度を変更して当該剛性調整角度における所定周期分の電動モータ11の消費電力を計測した後、再度微小角度だけ剛性調整角度を変更して所定周期分の電動モータ11の消費電力を計測することを繰り返し、最も消費電力が少ない剛性調整角度を求めるようにしてもよい。
【0085】
●[連動揺動部材16にバネユニットを2つ取り付ける例(
図15)]
バネユニットにおける伸縮バネが伸長方向のみ有効で圧縮方向では有効でない場合(例えば
図10の模式図に示した状態の伸縮バネの場合)や、
図5に示すバネユニットであって伸長方向にも圧縮方向にも伸縮バネは有効であるが、連動揺動角度に対して付勢力が不足する場合等において、
図15の例に示すように、連動揺動部材16に対してバネユニット23とバネユニット23´との2つを取り付けるようにしてもよい。なお、バネユニット23内の伸縮バネの他方端に相当する個所は、剛性調整軸21DJの近傍に配置されたバネ係止部材(図示省略)に接続(係止)されており、バネユニット23´内の伸縮バネの他方端に相当する個所は、剛性調整軸21DJ´の近傍に配置されたバネ係止部材(図示省略)に接続(係止)されている。
【0086】
この場合、バネユニット23の旋回部材23A(剛性調整軸21DJ回りに旋回)は、電動モータ21にて旋回駆動される。また、バネユニット23´の旋回部材23A´(剛性調整軸21DJ´回りに旋回)は、旋回部材23Aに取り付けられたギアG1、ブラケット22(
図1参照)に支持されたギアG2、G3、旋回部材23A´に取り付けられたギアG4にて旋回駆動力が伝達される。そして隣り合うギアのギア比を適切に設定することで、バネユニット23の剛性調整角度と、バネユニット23´の剛性調整角度とを一致させることができる。
【0087】
例えば伸縮バネが伸長方向にのみ付勢力を発生するバネ(
図10、
図11参照)であったとしても、一方の方向に対する揺動運動に対して、一方の見かけ上バネ定数可変手段の伸縮バネを伸長方向に伸長し、他方の方向に対する揺動運動に対して、他方の見かけ上バネ定数可変手段の伸縮バネを伸長方向に伸長するように構成すればよく、
図5に示す複雑な構成のバネユニットを必要としない。従って、バネユニットの構造をよりシンプルにすることができる。
【0088】
以上に説明した第1の実施の形態の揺動関節装置1は、ユーザの左脚用であるが、右脚用のベース部(ベース部2の左右対称版)、右脚用の大腿揺動部(符号11、12、13、19にて示した各部材の左右対称版)、右脚用の剛性調整部(符号16、21、22、23にて示した各部材の左右対称版)、右脚用の下腿揺動部(符号31、32、32P、32B、33、34、35、36、39にて示した各部材の左右対称版)を追加して、制御ユニット5からユーザの両脚の歩行動作(または走行動作)を支援するようにしてもよい。
【0089】
●●[第2の実施の形態の揺動関節装置]
第2の実施の形態の揺動関節装置は、
図1〜
図4に示す第1の実施の形態の揺動関節装置1から電動モータ11(及び回転角度検出手段11S)を省略し、大腿揺動アーム13の揺動角度を検出可能な回転角度検出手段を追加したものである。この第2の実施の形態では、ユーザの歩行(または走行)における大腿部の運動を電動モータで支援することはできないが、下腿部の運動を電動モータ31にて支援することができる。また、剛性調整ユニット(23)を有しているので、エネルギー保存則に基づいて剛性調整角度を適切な角度とすることで、ユーザの大腿部の運動量を適切に軽減させることができる。
【0090】
また、第1の実施の形態と同様に、右脚用のベース部(ベース部2の左右対称版)、右脚用の大腿揺動部(符号12、13、19にて示した各部材の左右対称版)、右脚用の剛性調整部(符号16、21、22、23にて示した各部材の左右対称版)、右脚用の下腿揺動部(符号31、32、32P、32B、33、34、35、36、39にて示した各部材の左右対称版)を追加して、制御ユニット5からユーザの両脚の歩行動作(または走行動作)を支援するようにしてもよい。
【0091】
●●[第3の実施の形態の揺動関節装置]
第3の実施の形態の揺動関節装置は、
図1〜
図4に示す第1の実施の形態の揺動関節装置1から、電動モータ31、ブラケット32、プーリ32P、ベルト32B、下腿揺動アーム33、下腿中継アーム34、下腿アーム35、足先保持部36、下腿装着部39を省略したものである。この第3の実施の形態では、ユーザの歩行(または走行)における大腿部の運動を電動モータ11にて支援し、下腿部の運動は支援しない。なお、剛性調整ユニット(23)を有しているので、エネルギー保存則に基づいて剛性調整角度を適切な角度とすることで、電動モータ11の消費電力を、より低減することができる。
【0092】
また、第1の実施の形態と同様に、右脚用のベース部(ベース部2の左右対称版)、右脚用の大腿揺動部(符号11、12、13、19にて示した各部材の左右対称版)、右脚用の剛性調整部(符号16、21、22、23にて示した各部材の左右対称版)を追加して、制御ユニット5からユーザの両脚の歩行動作(または走行動作)を支援するようにしてもよい。
【0093】
●●[第4の実施の形態の揺動関節装置]
第4の実施の形態の揺動関節装置は、第3の実施の形態の揺動関節装置から電動モータ11(及び回転角度検出手段11S)を省略し、大腿揺動アーム13の揺動角度を検出可能な回転角度検出手段を追加したものである。この第4の実施の形態では、ユーザの歩行(または走行)における下腿部の運動の支援をすることはできない。またユーザの大腿部の運動を電動モータで支援することもできない。しかし、剛性調整ユニット(23)を有しているので、エネルギー保存則に基づいて剛性調整角度を適切な角度とすることで、ユーザの大腿部の運動量を適切に軽減させることができる。
【0094】
また、第1の実施の形態と同様に、右脚用のベース部(ベース部2の左右対称版)、右脚用の大腿揺動部(符号12、13、19にて示した各部材の左右対称版)、右脚用の剛性調整部(符号16、21、22、23にて示した各部材の左右対称版)を追加して、制御ユニット5からユーザの両脚の歩行動作(または走行動作)を支援するようにしてもよい。
【0095】
本発明の揺動関節装置の構造、構成、形状、外観等は、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
【0096】
本実施の形態にて説明した揺動関節装置の用途は、ユーザの下肢の揺動運動(歩行や走行)を支援する用途に限定されず、周期的な揺動運動をする種々の対象物に適用可能である。
【0097】
本実施の形態では、大腿揺動アーム13の揺動運動を、ギアで連動揺動部材16に伝達したが、動力伝達手段はギアに限定されず、ベルトやプーリ、あるいはリンク機構等を用いて動力伝達手段を構成してもよい。同様に、電動モータ31の揺動回転運動を、プーリとベルトで下腿揺動アーム33に伝達したが、プーリとベルトに限定されず、ギアやリンク機構等を用いて伝達してもよい。また、
図15の例ではギアを用いた旋回部材駆動力伝達手段を用いて旋回駆動力を伝達したが、ギアに限定されず、プーリとベルト、あるいはリンク機構等を介して旋回駆動力を伝達するようにしてもよい。
【0098】
また、本実施の形態では、弾性体として伸縮バネ23Kを用いた例にて説明したが、伸縮バネ23Kの代わりに種々の弾性体を用いることができる。例えば、本実施の形態の伸縮バネは、螺旋状に巻いたバネとしているが、板状バネやウェーブスプリングなど別のバネでもよい。また、ゴム、樹脂などのエラストマや、オイルのような液体、気体を利用した弾性体でもよい。エネルギーを保存する対象物(動作)の運動量や保存するエネルギー量に合わせて弾性体を変更可能である。保存するエネルギー量が比較的少ない場合では、エラストマを使用することが効果的である。また、ユーザの歩行や走行等の動作に対しては、比較的大きなエネルギーの保存量、バネ定数(剛性)等の大きさ、調整の容易性(螺旋状のバネの場合、バネの巻き数や線の太さ等の調整の容易性)等から、伸縮バネを使用することが効果的である。また、伸縮バネは、コストの面からも優位である。