(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記凹部は、前記接着層側の接着面と前記接着面と対向する対向面とを貫通する貫通孔、前記接着面と前記対向面とを貫通すると共に、前記バスバーの側面に至る切欠き、及び前記接着面に開口部を有する有底の窪みのいずれか一つである請求項1に記載の配電基板。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本発明の実施形態の説明]
最初に、本発明の実施形態を列記して説明する。
【0011】
(1)本発明の実施形態に係る配電基板は、バスバーと、前記バスバーの一面に接着層を介して配置される放熱部材とを備え、前記バスバーは、前記接着層側に開口すると共に、前記接着層の構成材料が充填される凹部を備える。
【0012】
上記構成によれば、バスバーに凹部を備えることで、凹部の開口縁部を経て凹部の内面に亘ってバスバーと接着層とが接着される。つまり、バスバーと接着層とは、放熱部材に沿った水平面に加え、水平面と交差する交差面でも接着される。そのため、凹部を備えない場合に比較して、この接着層を介して配置されるバスバーと放熱部材との接着力を向上できる。よって、上記実施形態に係る配電基板は、配電基板に大きな機械的負荷がかかったとしても、バスバーと放熱部材との接着力に優れる。
【0013】
(2)上記の配電基板の一例として、前記凹部は、前記接着層側の接着面と前記接着面と対向する対向面とを貫通する貫通孔、前記接着面と前記対向面とを貫通すると共に、前記バスバーの側面に至る切欠き、及び前記接着面に開口部を有する有底の窪みのいずれか一つである形態が挙げられる。
【0014】
凹部が貫通孔である場合、凹部の接着面側の開口縁部から対向面側の開口縁部に亘ってバスバーと接着層とを接着することができ、バスバーと接着層との接着面積の増加により接着力をより強固にできる。凹部が切欠きである場合も、凹部の接着面側の開口縁部から対向面側の開口縁部に亘ってバスバーと接着層とを接着することができる。凹部が有底の窪みである場合、バスバーの対向面側が底面となるため、凹部の開口縁部を経て凹部の側面(上記交差面)及び底面(上記水平面)でバスバーと接着層とが接着されることになる。そのため、バスバーと接着層との接着面積を向上でき、バスバーと接着層との接着力をより強固にできる。また、凹部が有底の窪みである場合、凹部が貫通孔である場合に比較して、バスバーの導通領域を確保することができる。
【0015】
(3)上記の配電基板の一例として、前記バスバーは、前記接着層と接着する本体部と、前記本体部と一体に成形され、前記本体部から延びる延設部とを備え、前記延設部は、その先端側にボルトが貫通するボルト孔を備え、前記本体部側に前記凹部を備える形態が挙げられる。
【0016】
電線(ワイヤーハーネス)の一端部に接続された端子は、ボルト及びナットを用いてバスバーに固定される。このボルトが貫通するボルト孔を延設部の先端側に備える場合、ナットの回動により、延設部の本体部側と接着層との間に負荷が生じ易い。延設部の本体部側に凹部を備えることで、ボルトに対するナットの回動に伴って配電基板に大きな機械的負荷がかかったとしても、バスバーと放熱部材との接着力の低下を効果的に抑制できる。
【0017】
(4)バスバーにボルト孔を有する延設部を備える上記の配電基板の一例として、前記凹部は、前記ボルトに対するナットの回動に伴う力が作用する位置に設けられている形態が挙げられる。
【0018】
ボルトが貫通するボルト孔を延設部の先端側に備える場合、凹部がボルトに対するナットの回動に伴う力が作用する位置に設けられることで、バスバーと放熱部材との接着力の低下をより効果的に抑制できる。
【0019】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る配電基板を詳細に説明する。図中の同一符号は、同一名称物を示す。なお、
図3及び
図5では、説明の便宜上、接着層及び絶縁層の厚みを厚くしている。
【0020】
≪実施形態1≫
図1〜3を参照して、実施形態1の配電基板1αを説明する。配電基板1αは、基板ユニット100に備えられるものである。基板ユニット100は、例えば、自動車等の車両において、車載電装品への電力供給の切り替えに使用されるものである。以下、まず配電基板1αについて説明し、その後にこの配電基板1αを備える基板ユニット100について説明する。
【0021】
〔配電基板〕
配電基板1αは、バスバー30を有する回路構成体と、バスバー30の一面に接着層40を介して配置される放熱部材60とを備える。実施形態1の配電基板1αの主たる特徴とするところは、バスバー30が、接着層40側に開口すると共に、接着層40の構成材料が充填される凹部36を備える点にある。本例では、凹部36は、接着層40側の接着面30m(
図3)と、接着面30mと対向する対向面30n(
図1,3)とを貫通する貫通孔36hである。以下、各構成を詳細に説明する。
【0022】
(回路構成体)
回路構成体は、回路基板10と、回路基板10に重なるバスバー30とを備える。回路基板10は、
図1,2に示すように、後述するバスバー30上に配置され、バスバー30の配置面と反対側の面に、導電パターン(図示せず)が形成された略矩形状のプリント基板である。導電パターンが構成する導電路は、制御用の導電路(回路の一部)である。回路基板10には、スイッチング素子等の電子部品(図示せず)やコネクタ部20が実装されている。コネクタ部20には、図示しない外部の制御装置等の相手側コネクタ部が接続される。
【0023】
・バスバー
バスバー30は、
図1,2に示すように、回路基板10が配置される本体部32と、本体部32と一体に成形されると共に、本体部32から延びる延設部34とを備える。バスバー30の本体部32は、例えば絶縁性の接着剤や接着シート等を介して、回路基板10の導電パターンの形成面と反対側の面に固定される。これにより、回路基板10とバスバー30とは、一体物として取り扱える。また、バスバー30の本体部32は、回路基板10の配置面と反対側の面に、後述する放熱部材60が接着層40(
図2,3)を介して配置される。
【0024】
バスバー30の延設部34は、外部機器を電気的に接続するための部分であり、図示しない電線(ワイヤーハーネス)の接続端子が電気的に接続される。延設部34には、後述する雄ネジ部90が貫通するボルト孔34h(
図2)が形成されている。本例では、バスバー30の本体部32の対向する二辺からそれぞれ延設部34が設けられており、各延設部34にそれぞれ電線の接続端子が電気的に接続される。
【0025】
バスバー30の延設部34は、本体部32側で本体部32に沿った基端部34aと、先端側で基端部34aに対して段差状に屈曲した先端部34bとを備える。基端部34aの一方の面(
図3の接着面30m)には、後述する放熱部材60が接着層40を介して配置される。つまり、バスバー30のうち、本体部32及び延設部34の基端部34aの一面に、放熱部材60が接着層40を介して配置される。先端部34bは、上述した雄ネジ部90が貫通するボルト孔34hを備え、後述する下部ケース82の土台部822上に配置される(
図1,3を参照)。
【0026】
延設部34の基端部34aには、接着層40側の接着面30m(
図3)と接着面30mと対向する対向面30n(
図1,3)とを貫通する貫通孔36hが形成されている。この貫通孔36hは、接着面30m側及び対向面30n側にそれぞれ開口しており、接着層40の構成材料が充填されている。本例では、接着層40の構成材料は、貫通孔36hの接着面30m側の開口縁部から対向面30n側の開口縁部に亘って貫通孔36hの内部に充填している(
図1,3を参照)。つまり、バスバー30と接着層40とは、
図3に示すように、放熱部材60に沿った水平面に加え、水平面と交差する交差面でも接着されることになる。そのため、バスバー30と接着層40との接着面積を増加できる。
【0027】
貫通孔36hは、配電基板1αに大きな機械的負荷がかかる虞がある箇所に備えることが好ましい。例えば、バスバー30と上述した電線の接続端子との電気的な接続は、バスバー30に形成されたボルト孔を雄ネジ部90に通すと共に、接続端子に形成されたボルト孔を雄ネジ部90に通し、ナット(図示せず)を雄ネジ部90に螺合することで行える。このとき、雄ネジ部90に対するナットの回動に伴って配電基板1αに大きな機械的負荷がかかる虞がある。本例では、バスバー30における延設部34の先端部34bにボルト孔34hが形成されているため、上記機械的負荷は延設部34の基端部34aにかかり易いと思われる。基端部34aに大きな機械的負荷がかかると、バスバー30と放熱部材60との接着力が低下する虞がある。そのため、延設部34の先端部34bにボルト孔34hを備える場合、延設部34の基端部34aに貫通孔36hを備えることで、上記機械的負荷が基端部34aにかかったとしても、バスバー30と接着層40との接着面積の増加によりバスバー
30と放熱部材
60との接着力の低下を抑制できる。
【0028】
特に、貫通孔36hは、雄ネジ部90に対するナットの回動に伴う力が作用する位置に備えることが好ましい。本例では、各基端部34aに二つの貫通孔36hを備え、各貫通孔36hは、ボルト孔34hからの距離が略同等となる位置に設けられている。各基端部34aに備わる二つの貫通孔36hのうち、一方が雄ネジ部90に対してナットを締め付ける力が作用する位置にあり、他方が雄ネジ部90に対してナットを取り外す力が作用する位置にある。
【0029】
貫通孔36hの形状や個数は、バスバー30と接着層40との接着面積の増加による接着力を向上できると共に、貫通孔36hの形成によって導通領域に影響を及ぼさない程度に適宜選択できる。本例では、貫通孔36hは、断面形状が円形状であるが(
図1,2を参照)、その他に断面形状が楕円形状やレーストラック形状、矩形等の多角形状等でもよい。また、本例では、貫通孔36hは、内周面が接着面30m(対向面30n)と垂直となっているが(
図3を参照)、その他に接着面30m(対向面30n)から対向面30n(接着面30m)に向かって先細るテーパ状となっていてもよい。更に、本例では、各基端部34aに二つの貫通孔36hを設けたが(
図1,2を参照)、各基端部34aに一つ又は三つ以上設けてもよい。
【0030】
(放熱部材)
放熱部材60は、回路構成体や電子部品から発生した熱を外部に放熱する部材である。放熱部材60は、例えばアルミニウムや銅又はその合金等の高熱伝導性の金属板に絶縁塗装したものを用いることができる。放熱部材60は、少なくともバスバー30の本体部32及び延設部34の基端部34aの一面に配置される大きさを有する。本例では、放熱部材60は、回路構成体を収納するケース80の底板としても機能する(
図2を参照、詳細は後述する)。
【0031】
放熱部材60は、接着層40を介してバスバー30に固定される。本例では、放熱部材60の上に絶縁層50を形成し、絶縁層50に重ねて接着層40を形成してからバスバー30を固定している(
図3を参照)。
【0032】
接着層40や絶縁層50の構成材料は、絶縁性樹脂、特にセラミックスフィラー等を含有して放熱性に優れるものが好ましい。具体的な樹脂は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂や、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、液晶ポリマー(LCP)等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。接着層40は、例えば、塗布やスプレーにより形成したり、シート状のものを用いたりできる。
【0033】
〔基板ユニット〕
上述した配電基板1αは、基板ユニット100に備わる。基板ユニット100は、回路構成体を収容するケース80を備える。ケース80は、
図1,2に示すように、下部ケース82と、下部ケース82の上方を覆う上部カバー84とで構成される。下部ケース82及び上部カバー84と、放熱部材60とを組み合わせて形成される内部空間に回路構成体が収容される。
【0034】
(下部ケース)
下部ケース82は、
図2に示すように、方形状の枠体であり、バスバー30の先端部34bを除く回路構成体の外周の四方を覆う。下部ケース82の一方の開口部(
図2の下方側)には放熱部材60が配置される。つまり、放熱部材60は、ケース80の底板の役割を果たす。下部ケース82は、枠部分を構成する一部にバスバー30の先端部34bが載置される土台部822と、土台部822以外の上面に上部カバー84が差し込まれる差込み溝824と、上部カバー84と係合する係合部(係合突起826)とを備える。
【0035】
土台部822には、上面から上方に向かって雄ネジ部90が突出して配置されている。雄ネジ部90は、頭部と軸部とを備え、頭部が土台部822に固定されている。本例では、土台部822は、雄ネジ部90の頭部を側方から挿入可能な切欠きと、切欠き内に頭部を固定する固定部とを備える。バスバー30の先端部34bに形成されたボルト孔34hに雄ネジ部90の軸部を挿通し、先端部34bを土台部822の上面に載置すると共に、電線の接続端子(図示せず)と合わせてナットによって締め付けることで、バスバー30と外部機器とを電気的に接続できる。
【0036】
差込み溝824には、上部カバー84の側壁部84bが差し込まれる。係合突起826は、下部ケース82の周方向の適所に設けられ、上部カバー84の側壁部84bが差込み溝824に差し込まれた状態で、上部カバー84と下部ケース82とを固定して一体化する。
【0037】
(上部カバー)
上部カバー84は、
図2に示すように、下部ケース82の上方開口を覆う。上部カバー84は、下部ケース82の土台部822を露出させた状態で下部ケース82の上方を覆うような形状に形成されており、外壁の一部に切欠き部84cを有する。この切欠き部84cにより、下部ケース82に上部カバー84が固定された状態においても、バスバー30の先端部34bを通すことができる隙間が確保される。この隙間によって、土台部822の上面にバスバー30の先端部34bを載置できる。上部カバー84には、下部ケース82の係合突起826に係合する係合孔846を備える。
【0038】
上部カバー84の側壁部84bに上側凹部848を備え、下部ケース82における上側凹部848に対応する位置に下側凹部828を備え、上側凹部848及び下側凹部828で形成される開口部にはコネクタ部20が配置される。
【0039】
〔効果〕
上記配電基板1αは、バスバー30に貫通孔36hを備えることで、貫通孔36hの接着面30m側の開口縁部から対向面30n側の開口縁部に亘って接着層40の構成材料が充填される。接着面30mに沿ったバスバー30と接着層40との接着に加え、接着面30mと交差する方向に亘ってバスバー30と接着層40とが接着することによって、バスバー30と接着層40との接着面積を増加できる。このバスバー30と接着層40との接着面積の増加により、接着層40を介したバスバー30と放熱部材60との接着力を向上することができる。
【0040】
特に、配電基板1αに大きな負荷がかかる虞がある箇所、例えば雄ネジ部90に対するナットの回動に伴う力が作用し易い箇所で、バスバー30と接着層40との接着力の強化を行うことで、上記負荷によってバスバー30と放熱部材60とが剥離することを効果的に抑制することができる。
【0041】
≪実施形態2≫
実施形態2では、
図4に示すように、凹部36が、接着面30m
(図3を参照)と対向面30nとを貫通すると共に、バスバー30の側面30oに至る切欠き(スリット36s)である形態を説明する。
図4に示す配電基板1βは、下部ケース82の土台部822にバスバー30の先端部34bが載置された状態である。実施形態2の配電基板1βは、凹部36の形状がスリット36sである点が実施形態1と異なり、その他の構成は実施形態1と同様である。スリット36sは、バスバー30の接着面30m側及び対向面30n側の双方に開口すると共に、側面30o側にも開口している。凹部36がスリット36sであることで、バスバー30と接着層40との接着面積の増加により接着力を向上できる。本例では、スリット36sは、基端部34aの中央側から側面30oに向かって延びる細長い矩形状である。
【0042】
≪実施形態3≫
実施形態3では、
図5に示すように、凹部36が、接着面30mに開口部36oを有する有底の窪み(溝部36d)である形態を説明する。
図5に示す配電基板1γは、下部ケース82の土台部822にバスバー30の先端部34bが載置された状態である。実施形態3の配電基板1γは、凹部36の形状が溝部36dである点が実施形態1と異なり、その他の構成は実施形態1と同様である。溝部36dは、バスバー30の接着面30mと対向面30nとを貫通しておらず、対向面30n側に底面を有する。凹部36が溝部36dであることで、溝部36dの側面及び底面でバスバー30と接着層40とが接着されることになる。そのため、バスバー30と接着層40との接着面積を大きくできるため、接着層40を介したバスバー30と放熱部材60との接着力をより向上することができる。本例では、開口部36oの形状が円形状であるが、その他に楕円形状やレーストラック形状、矩形等の多角形状でもよい。また、バスバー30の側面に渡る溝部としてもよい。
【0043】
本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。例えば、凹部の大きさ・形状・個数、凹部の形成箇所等を変更することができる。また、複数の凹部を備える場合、凹部は、貫通孔、スリット、及び溝部の少なくとも一つであればよく、貫通孔とスリット、貫通孔と溝部、スリットと溝部、貫通孔とスリットと溝部の混合であってもよい。