特許第6587216号(P6587216)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6587216
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/2165 20110101AFI20191001BHJP
   B62J 27/00 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
   B60R21/2165
   B62J27/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-191540(P2016-191540)
(22)【出願日】2016年9月29日
(65)【公開番号】特開2018-52340(P2018-52340A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2018年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】増田 泰士
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 滋幸
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 武経
【審査官】 小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−161062(JP,A)
【文献】 特開平2−303949(JP,A)
【文献】 特開2007−69782(JP,A)
【文献】 特開平8−11663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16−33
B62J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に膨張用ガスを流入可能な袋状として折り畳まれて収納部位内に収納されるエアバッグと、該エアバッグを覆うエアバッグカバーと、を備える構成とされて、
該エアバッグカバーが、合成樹脂製として、内部に膨張用ガスを流入させて膨張する前記エアバッグにより押し開かれる扉部と、該扉部の周縁付近から延びるように形成されて収納部位に取り付けられる取付壁部と、前記扉部の周囲に配置されて膨張する前記エアバッグに押圧されて破断可能とされる破断予定部と、を備える構成とされ、
前記扉部と前記取付壁部とが、前記破断予定部を介して、一体的に構成されるエアバッグ装置であって、
前記破断予定部が、前記扉部と前記取付壁部との境界部位付近を外表面側から凹ませるようにして連続的に形成される溝部と、該溝部の底部を構成して前記エアバッグに押圧されて破断可能とされる薄肉部と、を備える構成とされ、
前記溝部が、前記底部から前記外表面にかけて連なるとともに相互に対向するように配置されて、前記扉部側に形成される扉側面部と、前記取付壁部側に形成される壁側面部と、を備える構成とされて、
前記扉側面部と前記壁側面部とが、膨張する前記エアバッグによって押圧される前記扉部の変形時において、前記薄肉部の破断前に、外表面近傍となる部位を相互に当接可能とされるとともに、当接時に、前記薄肉部に、破断方向側への引張力を作用させるように、構成されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記扉部と前記取付壁部とが、略直交するように配置され、
前記扉部が、膨張する前記エアバッグに押圧される一般部と、該一般部の周縁において前記取付壁部に連なるように湾曲する湾曲縁部と、を備える構成とされて、
前記破断予定部における前記薄肉部が、前記エアバッグカバーの内表面側において、前記湾曲縁部と前記取付壁部との境界部位付近であって、前記一般部と略直交している領域に、配置されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記エアバッグカバーが、略長方形状の天井壁部と、該天井壁部の周縁から延びる略四角筒形状の周壁部と、を有する構成とされて、
前記扉部が、前記天井壁部から構成されるとともに、一辺側を、ヒンジ部により、前記周壁部から構成される前記取付壁部側に連結された状態で、開き可能に構成され、
前記破断予定部を構成する溝部と、前記ヒンジ部と、が、前記取付壁部における前記天井壁部近傍となる部位において、前記天井壁部の四辺を略全周にわたって囲むように、配設されて、
前記溝部が、両端末を、前記取付壁部において前記ヒンジ部の形成されるヒンジ側壁部の領域内に進入させるように、構成され、
前記ヒンジ部が、前記溝部よりも前記扉部から離れた側において、前記ヒンジ側壁部の内表面側を凹ませるようにして、連続的に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に膨張用ガスを流入可能な袋状として折り畳まれて収納部位内に収納されるエアバッグと、エアバッグを覆うエアバッグカバーと、を備える構成のエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアバッグ装置としては、合成樹脂製のエアバッグカバーにおいて、エアバッグの膨張時に破断して扉部を開かせる構成の破断予定部を、扉部の周縁において、外表面側から連続的に凹ませるようにして、形成したものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−94704公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来のエアバッグ装置では、破断予定部は、エアバッグカバーの外表面側に鈍角状の溝を設けるようにして凹ませて形成されることから、外表面側に露出させないように内表面側を凹ませて形成される破断予定部と同様に、エアバッグの展開膨張時に、膨張するエアバッグが扉部を押圧する押圧力のみを利用して破断予定部を破断させる構成であった。そのため、従来のエアバッグ装置では、扉部の周囲に設けられる破断予定部を迅速に破断させて、扉部を迅速かつ円滑に開かせる点に、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、エアバッグの展開膨張時に、扉部を迅速かつ円滑に開かせることが可能なエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るエアバッグ装置は、内部に膨張用ガスを流入可能な袋状として折り畳まれて収納部位内に収納されるエアバッグと、エアバッグを覆うエアバッグカバーと、を備える構成とされて、
エアバッグカバーが、合成樹脂製として、内部に膨張用ガスを流入させて膨張するエアバッグにより押し開かれる扉部と、扉部の周縁付近から延びるように形成されて収納部位に取り付けられる取付壁部と、扉部の周囲に配置されて膨張するエアバッグに押圧されて破断可能とされる破断予定部と、を備える構成とされ、
扉部と取付壁部とが、破断予定部を介して、一体的に構成されるエアバッグ装置であって、
破断予定部が、扉部と取付壁部との境界部位付近を外表面側から凹ませるようにして連続的に形成される溝部と、溝部の底部を構成してエアバッグに押圧されて破断可能とされる薄肉部と、を備える構成とされ、
溝部が、底部から外表面にかけて連なるとともに相互に対向するように配置されて、扉部側に形成される扉側面部と、取付壁部側に形成される壁側面部と、を備える構成とされて、
扉側面部と壁側面部とが、膨張するエアバッグによって押圧される扉部の変形時において、薄肉部の破断前に、外表面近傍となる部位を相互に当接可能とされるとともに、当接時に、薄肉部に、破断方向側への引張力を作用させるように、構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明のエアバッグ装置では、収納部位内に折り畳まれて収納されるエアバッグの膨張初期に、膨張するエアバッグが扉部を押し上げることとなるが、このとき、扉部は、エアバッグによる押圧力を受けて伸びるように変形しつつ、外表面に沿って張力を発生させるような態様となる。そして、本発明のエアバッグ装置では、破断予定部を構成している溝部において、相互に対向するように配置される扉側面部と壁側面部とが、薄肉部の破断前に、エアバッグによる押圧力(外表面に沿って発生する張力)を受けて、外表面側近傍となる部位を相互に当接させるように、構成されている。そして、扉側面部と壁側面部とは、当接時に、薄肉部に、破断方向側への引張力を作用させるように、構成されている。すなわち、本発明のエアバッグ装置では、扉部は、エアバッグに押し上げられている領域を力点とし、扉側面部と壁側面部との当接部位を支点としたてこの原理によって、エアバッグによる扉部を押圧している押圧力(外表面に沿って発生する張力)を、溝部の底部を構成している薄肉部の部位に、薄肉部を破断させるような破断方向に沿った引張力として、作用させることができて、この薄肉部を、円滑に破断させることができる。そのため、膨張するエアバッグの扉部を押圧する押圧力のみを利用する従来のエアバッグ装置のエアバッグカバーと比較して、扉部を迅速かつ円滑に開かせることができる。
【0008】
したがって、本発明のエアバッグ装置では、エアバッグの展開膨張時に、扉部を迅速かつ円滑に開かせることができる。
【0009】
また、本発明のエアバッグ装置において、扉部と取付壁部とを、略直交するように配置させ、
扉部を、膨張するエアバッグに押圧される一般部と、一般部の周縁において取付壁部に連なるように湾曲する湾曲縁部と、を備える構成として、
破断予定部における薄肉部を、エアバッグカバーの内表面側において、湾曲縁部と取付壁部との境界部位付近であって、一般部と略直交している領域に、配置させる構成とすることが、好ましい。
【0010】
エアバッグ装置をこのような構成とすれば、破断予定部を構成する溝部の扉側面部と壁側面部とが、扉部の一般部と略直交する方向側で対向して配置されることなり、換言すれば、薄肉部に作用する破断方向側への引張力の作用方向が、膨張するエアバッグにより扉部の一般部を押し上げる押し上げ方向と略一致することから、この膨張するエアバッグが一般部を押し上げる際の押上力も、ダイレクトに薄肉部の部位に作用させることができ、てこの原理による薄肉部に作用する破断方向側への引張力と相まって、薄肉部を、一層迅速に破断させることができる。
【0011】
さらに、上記構成のエアバッグ装置において、エアバッグカバーを、略長方形状の天井壁部と、天井壁部の周縁から延びる略四角筒形状の周壁部と、を有する構成とし、
扉部を、天井壁部から構成するとともに、一辺側をヒンジ部により周壁部から構成される取付壁部側に連結された状態で、開き可能に構成し、
破断予定部を構成する溝部と、ヒンジ部と、を、取付壁部における天井壁部近傍となる部位において、天井壁部の四辺を略全周にわたって囲むように、配設させて、
溝部を、両端末を取付壁部においてヒンジ部の形成されるヒンジ側壁部の領域内に進入させるように、構成し、
ヒンジ部を、溝部よりも扉部から離れた側において、ヒンジ側壁部の内表面側を凹ませるようにして、連続的に形成する構成とすることが、好ましい。
【0012】
エアバッグ装置を上記構成とすれば、薄肉部の破断完了時に、ヒンジ部を回転中心として、扉部を、周壁部(取付壁部)の端部側全体を開口させるように、大きく開かせることができ、エアバッグを、扉部が大きく開いて形成される突出用開口から、迅速に突出させつつ膨張させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態であるバイク用エアバッグ装置を搭載したスクータの側面図である。
図2】実施形態のエアバッグ装置の前後方向に沿った概略部分拡大縦断面図である。
図3】実施形態のエアバッグ装置において使用されるエアバッグカバーの概略斜視図である。
図4】実施形態のエアバッグ装置において使用されるエアバッグカバーの概略斜視図である。
図5図3のエアバッグカバーの平面図である。
図6図3のエアバッグカバーにおける前後方向側の断面図である。
図7図3のエアバッグカバーにおける上下方向側の断面図である。
図8】実施形態のエアバッグ装置の作動時を示す部分拡大縦断面図である。
図9】実施形態のエアバッグ装置において、エアバッグカバーにおける破断予定部の破断の過程を説明する概略拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態では、エアバッグ装置Mとして、図1,2に示すように、バイク(スクータ1)に搭載されるバイク用のエアバッグ装置Mを例に採り、詳細に説明する。エアバッグ装置Mは、スクータ1におけるシート23の前方側におけるハンドル11の下方となる位置に、搭載されている。詳細には、エアバッグ装置Mは、運転者Dの着座するシート23の上面23aから僅かに上方であって、ハンドル11の左右方向の中央部14(図1参照)の直下となる位置に、配置されている。詳細には、エアバッグ装置Mは、運転者Dの着座するシート23の上面23aとハンドル11の中央部14との間の高さの位置に、配置されている。
【0015】
エアバッグ装置Mは、実施形態の場合、図1,2に示すように、スクータ1の車体フレーム3としてのヘッドパイプ4やヘッドパイプ4から左右に分岐して下方に延びるダウンフレーム部5L,5Rに対して、取付ブラケット7を利用して、取付固定されている。
【0016】
なお、実施形態のスクータ1では、ハンドル11の中央部14に連結された操行軸15が、下方に延びて、ヘッドパイプ4を挿通するとともに、前輪26を懸架しているフロントフォーク27に連結される構成である。また、ダウンフレーム部5L,5Rには、下カバー24やシート23が取付支持され、さらに、図示しない所定のエンジン、駆動機構、給油機構、及び、サスペンション等を介在させて、後輪29も支持されている。
【0017】
ハンドル11は、図1に示すように、中央部14と、この中央部14から左右方向側で拡開しつつ上方に延びる左側部12L,右側部12Rと、を備え、各左側部12L,右側部12Rの先端に、それぞれ、左グリップ部13Lと右グリップ部13Rとを配設させている。この左グリップ部13Lと右グリップ部13Rとは、運転者Dが操舵時に把持する部位である。左グリップ部13Lと右グリップ部13Rとの間は、ハンドルカバー18によって覆われ、ヘッドパイプ4付近は、前側カバー19や後側カバー20によって覆われている。後側カバー20の下端は、フットボード21に連なっている。これらのハンドルカバー18、前側カバー19、後側カバー20、及び、フットボード21等は、所定のステイを利用して、ダウンフレーム部5L,5Rや後部フレーム部6L,6Rに支持されている。
【0018】
なお、ハンドル11は、左グリップ部13L,右グリップ部13R間の内部に、金属パイプからなるハンドル本体11aを配設させて構成されており、ハンドル本体11aにおいて中央部14に配置される部位に、操行軸15が連結固定されている。また、左グリップ部13Lと右グリップ部13R付近を除くハンドル本体11aの周囲は、ハンドルカバー18に覆われている。
【0019】
エアバッグ装置Mは、図2に示すように、内部に膨張用ガスを流入可能な袋状として構成されるエアバッグ45と、エアバッグ45に膨張用ガスを供給するインフレーター40と、折り畳んだエアバッグ45を収納する収納部位としてのケース35と、折り畳まれたエアバッグ45を覆うエアバッグカバー48と、を備えて構成されている。
【0020】
収納部位としてのケース35は、板金製として、略長方形状の底壁部35aと、底壁部35aの外周縁から後方に向かって略四角筒形状に延びる周壁部35bと、を備えて構成されている。底壁部35aは、実施形態の場合、左右方向側を幅広とした略長方形状として、上縁側を前方に位置させるように、鉛直面に対して僅かに傾斜させて配設されている。底壁部35aには、インフレーター40の後述する本体部40aを貫通させる貫通孔(図符号省略)と、後述するリテーナ42のボルト42aを貫通させる取付孔(図符号省略)と、が、形成される。ケース35の周壁部35bは、図2に示すように、リベット(ブラインドリベット)37を用いて、エアバッグカバー48の取付壁部56と連結されている。また、ケース35は、取付ブラケット7に対してボルト8を利用して連結固定されるブラケット36を有し、このブラケット36を介して、車体フレーム3としてのダウンフレーム部5L,5Rに取り付けられている(図2参照)。
【0021】
インフレーター40は、図2に示すように、複数のガス吐出口40bを有した略円柱状の本体部40aと、インフレーター40をケース35の底壁部35aに取り付けるためのフランジ部40cと、を備えて構成されている。実施形態の場合、インフレーター40は、エアバッグ45とともに、エアバッグ45に配置させたリテーナ42の各ボルト42aを取付手段として、エアバッグ45におけるガス流入口45aの周縁、ケース35の底壁部35a、及び、インフレーター40のフランジ部40cを、貫通させて、ナット43止めすることにより、ケース35の底壁部35aに取り付けられている。
【0022】
エアバッグ45は、内部に膨張用ガスを流入させて膨張可能な可撓性を有した袋状として構成されるもので、ケース35内に折り畳まれて収納され、膨張完了時に、シート23に着座している運転者Dを保護可能に、構成されている。また、エアバッグ45には、内部に膨張用ガスを流入可能に略円形に開口して、周縁をケース35の底壁部35aに取り付けられるガス流入口45aが、形成されている(図2参照)。エアバッグ45は、インフレーター40からの膨張用ガスを内部に流入させて、ケース35から車両後方側に突出しつつ展開膨張する構成とされて、具体的には、膨張完了形状を、図1の二点鎖線に示すように、後面側を運転者Dの腹部Bの前側近傍に位置させるような略四角錐台形状とされている。
【0023】
エアバッグカバー48は、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等の合成樹脂から形成されるもので、図2〜4,6,7に示すように、ケース35の開口35cを覆うように配置される略長方形状の天井壁部49と、天井壁部49の周縁から前方に延びるように配置されてケース35の周壁部35bの外周側を覆う略四角筒形状の周壁部50と、を備える構成とされている。周壁部50は、天井壁部49に対して略直交するように配置されている。また、エアバッグカバー48は、内部に膨張用ガスを流入させて膨張するエアバッグ45により押し開かれる扉部52と、扉部52の周縁付近から延びるように形成されて収納部位としてのケース35に取り付けられる取付壁部56と、扉部52の周囲に配置されて膨張するエアバッグ45に押圧されて破断可能とされる破断予定部65と、扉部52の周囲に配置されて開き時の回転中心となるヒンジ部72と、を備える構成とされている。扉部52と取付壁部56とは、破断予定部65及びヒンジ部72を介して、一体的に構成されるもので、扉部52は天井壁部49から構成され、取付壁部56は周壁部50から構成されている。
【0024】
扉部52は、ケース35の開口35cを略全域にわたって覆い可能に、左右方向側を幅広とした略長方形板状として、構成されるもので、一辺側を、ヒンジ部72により、取付壁部56(周壁部50)側に連結された状態で、開き可能に構成されている。実施形態の場合、ヒンジ部72は、図5,7に示すように、扉部52の上縁側である取付壁部56の上壁部57の領域に、配置されるもので、扉部52は、図2の二点鎖線及び図8に示すように、上開きとして構成されている。また、扉部52は、膨張するエアバッグ45に押圧される一般部53と、一般部53の周縁において取付壁部56に連なるように湾曲する湾曲縁部54と、を備える構成とされている。湾曲縁部54は、図3,4,6,7に示すように、一般部53の外周縁側において全周にわたって形成されるもので、一般部53に対して略直交して配置される取付壁部56(周壁部50)との境界部位を、なだらかに連ならせるように、湾曲させて形成されている。一般部53における裏面側(内表面側であって、搭載時における前面側)には、図3,4,6,7に示すように、前後方向側から見て略格子状として前方に突出するリブ53aが、形成されている。このリブ53aは、薄肉の板状体を、前後左右に複数本ずつ沿わせるように配置させて略格子状とされるもので、一般部53の形状保持性能を向上させるとともに、膨張するエアバッグ435に押圧された際に、一般部53の外表面側に、後述する張力T1を発生させやすくするスペーサの機能を発揮するように、配設されている。
【0025】
取付壁部56(周壁部50)は、ケース35の周壁部35bの外周側を覆うような略四角筒状として構成されるもので、上下方向側で対向するように配置される上壁部57及び下壁部58と、左右方向側で対向するように配置される左壁部59及び右壁部60と、を備えている。実施形態では、取付壁部56は、各壁部の境界となるコーナ部を、なだらかに連ならせるように湾曲させて構成されている。取付壁部56において、ヒンジ部72の形成される上壁部57(ヒンジ側壁部)を除いた下壁部58,左壁部59,右壁部60には、図2に示すように、車体フレーム3から延びる取付ブラケット9に取り付けられる取付片部62が、扉部52の一般部53に略沿って外方に突出するように、形成されている(図3,4,6,7参照)。
【0026】
破断予定部65は、図7に示すように、扉部52と取付壁部56との境界部位付近を外表面48a側から凹ませるようにして連続的に形成される溝部66と、溝部66の底部66aを構成してエアバッグ45に押圧されて破断可能とされる薄肉部70と、を備える構成とされている。実施形態のエアバッグカバー48では、破断予定部65は、扉部52における湾曲縁部54と取付壁部56との境界部位付近となる領域に、形成されている。詳細には、破断予定部65は、薄肉部70を、エアバッグカバー48の裏面側(内表面48b側)において、湾曲縁部54と取付壁部56との境界部位付近であって、一般部53と略直交している領域に、配置させるように、構成されている。
【0027】
破断予定部65を構成している溝部66は、底部66aから外表面48aにかけて連なるとともに相互に対向するように配置されて、扉部52側に形成される扉側面部67と、取付壁部56側に形成される壁側面部68と、を備える構成とされている。実施形態の場合、扉側面部67と壁側面部68とは、扉部52の一般部53と略直交する方向側で対向するように、前後方向側で対向して、配置されている。そして、扉側面部67と壁側面部68とは、膨張するエアバッグ45によって押圧される扉部52の伸びるような変形時(外表面48aに沿うような張力T1の発生時)において、薄肉部70の破断前に、外表面48a近傍となる部位を相互に当接可能とされるとともに、当接時に、薄肉部70に、破断方向側への引張力T2を作用させるように、構成されている。具体的には、溝部66は、深さH2を、扉部52における湾曲縁部54と取付壁部56との境界部位の厚さ寸法H1の4/5程度に設定されており、換言すれば、薄肉部70は厚さ寸法H3を、この境界部位の厚さ寸法H1の1/5程度に設定されている(図7参照)。また、溝部66は、扉側面部67と壁側面部68とを凹みの先端側にかけて収束させるような断面略V字形状とされており、扉側面部67と壁側面部68との交差角度θは、20°程度に設定されている(図7参照)。
【0028】
そして、実施形態のエアバッグカバー48では、膨張するエアバッグ45によって押圧される扉部52の一般部53が伸びるように変形する際であって、薄肉部70の破断前に、扉側面部67が、外表面48aに沿って発生する張力T1を受けて、外表面48a近傍となる角部67aを、壁側面部68における外表面48a近傍となる角部68a付近の領域に、当接させることとなる(図9のB参照)。そして、この扉側面部67の角部67aを壁側面部68の角部68a付近に当接させた状態で、さらに、外表面48aに沿って発生している張力T1が角部67aを角部68a付近の部位に押し付けると、扉部52(一般部53)は、エアバッグ45に押し上げられている領域を力点P1(図2参照)とし、扉側面部67と壁側面部68との当接部位(角部67a)を支点P2(図9のB参照)としたてこの原理によって、エアバッグ45による扉部52(一般部53)を押圧している押圧力T1を、溝部66の底部66aを構成している薄肉部70の部位に、薄肉部70を破断させるような破断方向側への引張力T2として、作用させることとなる。
【0029】
また、実施形態のエアバッグカバー48では、破断予定部65を構成する溝部66と、ヒンジ部72と、が、取付壁部56(周壁部50)における天井壁部49(扉部52の一般部53)近傍となる部位において、天井壁部49の四辺を略全周にわたって囲むように、配設されている。実施形態では、破断予定部65とヒンジ部72とは、ともに、扉部52の一般部53と略平行となるように、形成されており、詳細には、破断予定部65を構成する溝部66は、取付壁部56(周壁部50)において、ヒンジ側壁部である上壁部57を除いて、左壁部59から下壁部58を経て右壁部60にかけて、連続的に形成されるもので、端末66b,66cを、それぞれ、ヒンジ側壁部である上壁部57の領域内に進入させるように、構成されている(図3,5参照)。ヒンジ部72は、上述したごとく、ヒンジ側壁部である上壁部57の領域において、上壁部57の内周面(内表面48b)側を凹ませるようにして、連続的に形成されている。実施形態の場合、ヒンジ部72は、上壁部57の内周面(内表面48b)側を、図7に示すように、略V字形状に凹ませるようにして、構成されている。さらに、ヒンジ部72は、破断予定部65を構成している溝部66よりも扉部52から離れた側(実施形態の場合、前側)に、形成されるものであり、端末72a,72bを、破断予定部65を構成している溝部66の端末66b,66cの前側に位置させるように、破断予定部65と前後方向側で重なる領域まで延びるように配設されている(図5参照)。また、このヒンジ部72の凹み形状は、破断予定部65を構成している溝部66よりも浅く、かつ、角度も大きく設定されて、端末72a,72bを溝部66の端末66b,66cと前後方向側で重なって配置されるように形成されていても、破断予定部65の破断時に、破断を伝搬させないように構成されている。
【0030】
次に、実施形態のエアバッグ装置Mのスクータ1への搭載について説明をする。まず、エアバッグ45を、内部にリテーナ42を収納させた状態で、ケース35内に収納可能に折り畳み、折り畳んだエアバッグ45の周囲を、折り崩れしないように、破断可能な図示しないラッピングシートによりくるむ。次いで、折り畳んだエアバッグ45を、ケース35の底壁部35aに載置させる。インフレーター40の本体部40aを、底壁部35aの下方から、ケース35内に挿入させるとともに、底壁部35aから下方に突出している各ボルト42aを、インフレーター40のフランジ部40cに挿通させる。その後、インフレーター40のフランジ部40cから突出した各ボルト42aにナット43を締結させれば、折り畳んだエアバッグ45とインフレーター40とを、ケース35に取り付けることができる。その後、エアバッグカバー48の取付壁部56を、リベット37を利用して、ケース35の周壁部35bに連結させれば、エアバッグ装置Mを組み立てることができる。
【0031】
このように組み立てたエアバッグ装置Mは、インフレーター40に対して所定の制御回路から延びる作動信号入力用の図示しないリード線を結線させつつ、ケース35に形成される図示しないブラケットを車体フレーム3側に取り付け、エアバッグカバー48の取付壁部56に形成される取付片部62を取付ブラケット7に対して取り付ければ、スクータ1に搭載することができる。
【0032】
エアバッグ装置Mのスクータ1への搭載後、走行するスクータ1が車両等の障害物に衝突して、運転者Dがシート23上で前方移動しようとしても、エアバッグ装置Mが作動されて、運転者Dを保護することができる。具体的には、スクータ1の車両等との衝突時には、インフレーター40が作動して、ガス吐出口40bから膨張用ガスが吐出されることとなり、エアバッグ45が、内部に膨張用ガスを流入させて膨張して、エアバッグカバー48の扉部52を押し開かせることとなる。そして、エアバッグ45は、ハンドル11の下方から後上方へ向かって突出するように展開膨張し、図1の二点鎖線に示すように、膨張を完了させることとなる。
【0033】
そして、実施形態のエアバッグ装置Mでは、収納部位としてのケース35内に折り畳まれて収納されるエアバッグ45の膨張初期に、膨張するエアバッグ45がエアバッグカバー48の扉部52を押し上げる(実施形態の場合、後方に向かって押圧する)こととなるが、このとき、扉部52は、エアバッグ45による押圧力を受けて伸びるように変形しつつ、外表面48aに沿って張力T1を発生させるような態様となる。そして、実施形態のエアバッグ装置Mでは、破断予定部65を構成している溝部66において、相互に対向するように配置される扉側面部67と壁側面部68とが、薄肉部70の破断前に、エアバッグ45による押圧力(外表面48aに沿って発生する張力T1)を受けて、外表面48a側近傍となる部位(具体的には、扉側面部67と壁側面部68とにおける外表面48a側の角部67a,68c)を相互に当接させるように、構成されている。そして、扉側面部67と壁側面部68とは、当接時に、薄肉部70に、破断方向側への引張力T2を作用させるように、構成されている。すなわち、実施形態のエアバッグ装置Mでは、扉部52は、エアバッグ45に押し上げられている領域である一般部53を力点P1(図2参照)とし、扉側面部67と壁側面部68との当接部位(角部67a,68a)を支点P2(図9のB参照)としたてこの原理によって、エアバッグ45による扉部52を押圧している押圧力(外表面48aに沿って発生する張力T1)を、溝部66の底部66aを構成している薄肉部70の部位に、薄肉部70を破断させるような破断方向に沿った引張力T2として、作用させることができて、この薄肉部70を、円滑に破断させることができる。そのため、膨張するエアバッグ45の扉部52を押圧する押圧力のみを利用する従来のエアバッグ装置のエアバッグカバーと比較して、扉部52を迅速かつ円滑に開かせることができる。
【0034】
したがって、実施形態のエアバッグ装置Mでは、エアバッグ45の展開膨張時に、扉部52を迅速かつ円滑に開かせることができる。
【0035】
また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、扉部52と取付壁部56とが略直交するように配置され、破断予定部65における薄肉部70が、エアバッグカバー48の内表面48b側において、扉部52の外周縁側に配置される湾曲縁部54と取付壁部56との境界部位付近であって、扉部52の一般部53と略直交している領域に、配置される構成である。すなわち、実施形態のエアバッグ装置Mでは、破断予定部65を構成する溝部66の扉側面部67と壁側面部68とが、扉部52の一般部53と略直交する方向側(前後方向側)で対向して配置されることなり、換言すれば、薄肉部70に作用する破断方向側への引張力T2の作用方向が、膨張するエアバッグ45により扉部52の一般部53を押し上げる押し上げ方向と略一致することから、この膨張するエアバッグ45が一般部53を押し上げる際の押上力T3も、ダイレクトに薄肉部70の部位に作用させることができ(図9のB参照)、てこの原理による薄肉部70に作用する破断方向側への引張力T2と相まって、薄肉部70を、一層迅速に破断させることができる。
【0036】
詳細には、実施形態のエアバッグ装置Mでは、膨張するエアバッグ45によって押圧される扉部52の一般部53が伸びるように変形すると、まず、扉側面部67が、図9のA,Bに示すように、外表面48aに沿って発生する張力T1を受けて、外表面48a近傍となる角部67aを、壁側面部68における外表面48a近傍となる角部68a付近の領域に、当接させることとなる。そして、この扉側面部67の角部67aを壁側面部68の角部68a付近に当接させた状態で、さらに、外表面48aに沿って発生している張力T1が角部67aを角部68a付近の部位に押し付けると、扉部52(一般部53)は、湾曲縁部54の領域を伸ばすように、外方に向かって変形しつつ、エアバッグ45に押し上げられている領域を力点P1とし、扉側面部67と壁側面部68との当接部位(角部67a)を支点P2としたてこの原理によって、エアバッグ45による扉部52(一般部53)を押圧している押圧力T1を、溝部66の底部66aを構成している薄肉部70の部位に、薄肉部70を破断させるような破断方向側への引張力T2として、作用させることとなる(図9のB参照)。また、薄肉部70の部位には、エアバッグ45が一般部53を押し上げる際の押上力T3も作用していることから、薄肉部70が、この引張力T2と押上力T3を受けて、図9のCに示すように、破断されることとなる。破断予定部65を構成する溝部66は、連続した線状に形成されているが、ヒンジ部72と対向して配置される下壁部58側の左右の中央付近に配置される部位で、最初に薄肉部70が破断されることとなり、その後、その破断状態が迅速に溝部66に沿って伝播し、薄肉部70全体が破断されて、扉部52がヒンジ部72を中心として開くこととなる。
【0037】
さらに、実施形態のエアバッグ装置Mでは、破断予定部65を構成する溝部66と、ヒンジ部72とが、取付壁部56における天井壁部49(扉部52)近傍となる部位において、天井壁部49(扉部52)の四辺を略全周にわたって囲むように、配設されるとともに、溝部66が、両端末66b,66cをヒンジ部72の形成されるヒンジ側壁部(上壁部57)の領域内に進入させるように、構成され、ヒンジ部72が、溝部66よりも扉部52から離れた側(前側)において、上壁部57の内表面側を凹ませるようにして、連続的に形成される構成である。そのため、薄肉部70の破断完了時に、図8に示すように、ヒンジ部72を回転中心として、扉部52を、周壁部50(取付壁部56)の端部側全体を開口させるように、大きく開かせることができ、エアバッグ45を、扉部52が大きく開いて形成される突出用の開口35cから、迅速に突出させつつ膨張させることができる。特に、実施形態のエアバッグ装置Mでは、ヒンジ部72の端末72a,72bは、破断予定部65における溝部66の端末66b,66cと前後方向側で重なる領域まで、延びるように形成されていることから、開き時に、扉部52を、一層大きく開かせることができる。
【0038】
なお、実施形態では、破断予定部65を構成している溝部66は、エアバッグカバー48を外表面48a側から鋭角状に凹ませるような凹部を形成することにより、構成され、相互に対向して先端側にかけて収束するように配置される扉側面部67と壁側面部68との外表面48a側の角部67a,68a相互を当接させる構成であるが、溝部の形状は、実施形態に限られるものではない。例えば、扉側面部と壁側面部とを、略平行に配置させ、扉側面部若しくは壁側面部における外表面近傍となる位置の少なくとも一方に、他方側に突出する突起状の部位を設け、この突起状の部位を、他方側の面に当接させるように、構成してもよい。
【0039】
また、実施形態では、バイク用のエアバッグ装置を例に採り説明したが、本発明を適用可能なエアバッグ装置はバイク用に限られるものではなく、本発明は、助手席用のエアバッグ装置等にも、適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1…スクータ(バイク)、35…ケース(収納部位)、40…インフレーター、42…リテーナ、45…エアバッグ、48…エアバッグカバー、48a…外表面、48b…内表面(裏面)、49…天井壁部、50…周壁部、52…扉部、53…一般部、54…湾曲縁部、56…取付壁部、57…上壁部(ヒンジ側壁部)、65…破断予定部、66…溝部、66b,66c…端末、67…扉側面部、67a…角部、68…壁側面部、68a…角部、70…薄肉部、72…ヒンジ部、72a,72b…端末、D…運転者、M…バイク用エアバッグ装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9