【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための発明に係る一態様としてのガスタービン冷却系統は、
ガスタービンの空気圧縮機で圧縮された圧縮空気をガスタービン中で燃焼ガスに接する高温部品に導く冷却空気ラインと、前記冷却空気ライン中の前記圧縮空気を冷却して冷却空気にする冷却器と、前記冷却空気ライン中の前記冷却空気を昇圧する昇圧機と、前記冷却空気ライン中で前記昇圧機よりも前記高温部品側のラインである吐出ライン中の前記冷却空気を前記冷却空気ライン中で前記昇圧機よりも前記空気圧縮機側の吸気ラインに戻すリターンラインと、前記リターンラインに設けられ、前記リターンラインを流れる前記冷却空気の流量を調節するリターン弁と、前記吸気ラインを流れる前記冷却空気の状態量と前記吐出ラインを流れる前記冷却空気の状態量とを検知する検知器と、前記リターン弁の開度を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記ガスタービンの負荷遮断を示す負荷遮断指令を受け付ける受付部と、前記検知器で検知された前記状態量に応じた前記リターン弁の開度を示す第一弁指令を発生する第一弁指令発生部と、前記受付部が前記負荷遮断指令を受け付けると、前記検知器で検知された前記状態量に関わらず、前記リターン弁の開度を予め定めれた遮断時開度へ強制的に大きくする旨の弁指令を第二弁指令として発生する第二弁指令発生部と、前記第二弁指令発生部が前記第二弁指令を発生している場合、前記第二弁指令に基づくリターン弁指令を前記リターン弁に出力し、前記第二弁指令発生部が前記第二弁指令を発生していない場合、前記ガスタービンの状態に応じて前記第一弁指令に基づくリターン弁指令を前記リターン弁に出力するリターン弁指令出力部と、を有する。
【0008】
負荷遮断時には、空気圧縮機の吐出圧が急激に低下する。このため、冷却系統における昇圧機の吸気圧も、空気圧縮機の吐出圧の急激な低下に伴って、急激に低下する。一方、昇圧機の吐出圧は、冷却空気ライン等の存在により、空気圧縮機の吐出圧の低下に対して遅れて低下する。このため、負荷遮断直後では、一時的に、昇圧機の圧力比が高まる。よって、負荷遮断時には、昇圧機でのサージング発生の可能性が急激に高まる。
【0009】
そこで、当該冷却系統では、受付部が負荷遮断指令を受け付けると、第二弁指令発生部が第二弁指令を発生する。この第二弁指令は、検知器で検知された状態量に関わらず、リターン弁の開度を予め定めれた遮断時開度へ強制的に大きくする旨の弁指令である。第二弁指令発生部が第二弁指令を発生すると、リターン弁指令出力部は、この第二弁指令に基づくリターン弁指令をリターン弁に出力する。この結果、負荷遮断直後に、リターン弁の開度は、遮断時開度へ強制的に大きくなる。
【0010】
リターン弁の開度が大きくなると、リターンラインを流れる冷却空気の流量が多くなるため、昇圧機を流れる冷却空気の体積流量は増加する。このため、リターン弁の開度が大きくなると、昇圧機の体積吸込流量が増加する。また、リターン弁の開度が大きくなると、昇圧機の吐出圧と吸気圧との差が小さくなり、昇圧機の圧力比が小さくなる。よって、リターン弁の開度が大きくなると、サージング発生の可能性が低下する。
【0011】
従って、当該冷却系統では、負荷遮断時における昇圧機でのサージング発生の可能性を抑えることができる。このため、当該冷却系統によれば、負荷遮断時でも高温部品に冷却空気を送り、この高温部品を冷却することができる。
【0012】
ここで、前記ガスタービン冷却系統において、前記遮断時開度は、前記リターン弁の全開の開度であってもよい。
【0013】
当該冷却系統では、遮断時開度がリターン弁の全開の開度であるため、負荷遮断直後にリターン弁の開度は全開になる。このため、リターンラインを流れる冷却空気の流量が多くなり、負荷遮断時における昇圧機でのサージング発生の可能性をより抑えることができる。
【0014】
また、以上のいずれかの前記ガスタービン冷却系統において、前記第二弁指令発生部は、前記受付部が前記負荷遮断指令を受け付けると、前記昇圧機のサージング発生の可能性が低くなったとされる予め定められている条件が満た条件が満たされるまで、前記遮断時開度を維持する旨の弁指令を前記第二弁指令として発生してもよい。
【0015】
当該冷却系統では、昇圧機でのサージング発生の可能性が低くなったとされる条件が満たされるまで、リターン弁の開度が遮断時開度に維持される。
【0016】
また、前記条件が満たされるまで、遮断時開度を維持する旨の弁指令を前記第二弁指令として発生する、前記ガスタービン冷却系統において、前記第二弁指令発生部は、前記予め定められた条件が満たされると、前記リターン弁の開度を前記遮断時開度から小さくする旨の弁指令を前記第二弁指令として発生してもよい。
【0017】
リターン弁の開度を遮断時開度にしても、昇圧機から吐出ラインを経て高温部品に冷却空気が供給される。しかしながら、リターン弁の開度を遮断時開度にすると、昇圧機から吐出された冷却空気の一部がリターン弁を通ることになり、高温部品に供給される冷却空気の流量は減少する。このため、高温部品は焼損する可能性が生じる。
【0018】
しかしながら、当該冷却系統では、負荷遮断指令を受け付けてから昇圧機でのサージング発生の可能性が低くなったとされる条件を満たすと、リターン弁の開度が小さくなる。この結果、昇圧機から吐出ラインを経て高温部品に供給される冷却空気の流量が増加し、高温部品の焼損を抑えることができる。
【0019】
また、前記条件が満たされると、リターン弁の開度を前記遮断時開度から小さくする旨の弁指令を前記第二弁指令として発生する、前記ガスタービン冷却系統において、前記第一弁指令発生部は、前記検知器で検知された前記状態量がサージング発生の可能性が高まっていることを示す場合、前記リターン弁の開度が大きくなる開度を示す前記第一弁指令を発生し、前記検知器で検知された前記状態量がサージング発生の可能性が低下していることを示す場合、前記リターン弁の開度が小さくなる開度を示す前記第一弁指令を発生し、前記予め定められた条件が満たされたときの前記第二弁指令が示す開度の閉側への変化率は、サージング発生の可能性が低下しているときの前記第一弁指令が示す開度の閉側への最大変化率より大きくてもよい。
【0020】
当該冷却系統では、負荷遮断指令を受け付けてから昇圧機でのサージング発生の可能性が低くなったとされる条件を満たすと、リターン弁の開度が急激に小さくなる。この結果、昇圧機から吐出ラインを経て高温部品に供給される冷却空気の流量が
急激に増加し、高温部品の焼損をより抑えることができる。
【0021】
また、前記条件が満たされると、リターン弁の開度を前記遮断時開度から小さくする旨の弁指令を前記第二弁指令として発生する前記ガスタービン冷却系統において、前記予め定められた条件が満たされたときの前記第二弁指令が示す開度の変化率は、予め定められた変化率であってもよい。
【0022】
また、前記条件が満たされると、リターン弁の開度を前記遮断時開度から小さくする旨の弁指令を前記第二弁指令として発生する、前記ガスタービン冷却系統において、前記第二弁指令発生部は、前記予め定められた条件が満たされたとき、前記検知器で検知された前記状態量に応じて定めた開度を示す弁指令を前記第二弁指令として発生してもよい。
【0023】
また、前記条件が満たされると、リターン弁の開度を前記遮断時開度から小さくする旨の弁指令を前記第二弁指令として発生する、いずれかの前記ガスタービン冷却系統において、前記予め定められている条件である第一条件が満たされた後、第二条件が満たされると、前記第二弁指令発生部は、前記第二弁指令の発生を中止してもよい。
【0024】
当該冷却系統では、第二条件が満たされると、第一弁指令に基づくリターン弁指令がリターン弁に出力される。
【0025】
以上のいずれかの前記ガスタービン冷却系統において、前記吸気ラインに設けられ、前記吸気ラインを流れる冷却空気の流量を調節する吸気弁を備え、前記制御装置は、前記受付部が前記負荷遮断指令を受け付けると、前記検知器で検知された前記状態量に関わらず、前記吸気弁の開度を予め定められた遮断時開度へ強制的に大きくする旨の第一弁指令を発生する吸気弁指令発生部と、前記吸気弁指令発生部で発生した前記第一弁指令に基づく吸気弁指令を前記吸気弁に出力する吸気弁指令出力部と、を有してもよい。
【0026】
当該冷却系統では、受付部が負荷遮断指令を受け付けると、吸気弁指令出力部が吸気弁の開度を予め定めれた遮断時開度へ強制的に大きくする旨の吸気弁指令を吸気弁に出力する。このため、当該冷却系統では、負荷遮断直後に、吸気弁の開度は、遮断時開度へ強制的に大きくなる。吸気弁の開度が大きくなると、昇圧機を流れる冷却空気の体積流量が増加する。このため、当該冷却系統では、この吸気弁の動作によっても、負荷遮断時におけるサージング発生を抑えることができる。また、当該冷却系統では、吸気弁の開度が大きくなることにより、昇圧機を流れる冷却空気の体積流量が増加すると共に、吐出ラインを経て高温部品に供給される冷却空気の体積流量も増加するので、高温部品の焼損を抑えることができる。特に、当該冷却系統では、リターン弁が遮断時開度になったことに起因した、高温部品に供給される冷却空気流量の減少を、この吸気弁の強制開により相殺することできる。
【0027】
前記吸気弁を備える前記ガスタービン冷却系統において、前記吸気弁指令発生部で発生する前記第一弁指令が示す前記遮断時開度は、前記吸気弁が全開の開度であってもよい。
【0028】
当該冷却系統では、遮断時開度が吸気弁の全開の開度であるため、負荷遮断直後に吸気弁の開度は全開になる。このため、当該冷却系統では、昇圧機を流れる冷却空気の体積流量が増加すると共に、吐出ラインを経て高温部品に供給される冷却空気の体積流量も増加するので、負荷遮断時における昇圧機でのサージング発生の可能性を抑えつつ、高温部品を冷却することができる。
【0029】
以上のいずれかのガスタービン冷却系統において、前記制御装置は、前記ガスタービンにかかる負荷の変化に対して正の相関性を持って変化する開度を示す基準指令を発生する基準指令発生部を備え、前記第一弁指令発生部は、前記昇圧機でのサージング発生が高まった場合、前記第一弁指令として、前記検知器で検知された前記状態量に応じて、前記基準指令が示す開度より大きな開度を示す指令を発生し、前記リターン弁指令出力部は、前記リターン弁に関する前記第一弁指令と前記第二弁指令と前記基準指令とのうち、いずれか一の指令を選択する選択部と、前記選択部が選択した前記一の指令を前記リターン弁の制御に合ったリターン弁指令に変換して、前記リターン弁指令を前記リターン弁に出力する指令変換部と、を有し、前記選択部は、前記第二弁指令と、前記リターン弁に関する前記第一弁指令又は前記基準指令との入力がある場合、前記第二弁指令を選択し、前記第二弁指令の入力がなく且つ前記第一弁指令と前記基準指令との入力がある場合、大きな開度を示す指令を選択し、前記指令変換部は、前記選択部が選択した一の指令が前記基準指令の場合、前記負荷が予め定められた値未満のとき、前記基準指令を、前記負荷の変化に対して負の相関性を持って変化する前記リターン弁の開度を示すリターン弁指令に変換し、前記負荷が前記予め定められた値以上のとき、前記基準指令を、前記負荷の変化に関わらず一定の開度を示すリターン弁指令に変換してもよい。
【0030】
当該ガスタービン冷却系統では、負荷が予め定められた値未満の場合であって、リターン弁指令出力部が基準指令に基づくリターン弁指令を出力した場合、リターン弁の開度が負荷の増加に連れて次第に小さくなる。リターン弁の開度が小さくなると、リターンラインを流れる冷却空気の流量が少なくなるので、高温部品に送られる冷却空気の流量が多くなる。このため、この場合、リターン弁の制御により、負荷が大きくなるに連れて、高温部品に送る冷却空気の流量を多くすることができる。
【0031】
前記吸気弁を備える、以上のいずれかの前記ガスタービン冷却系統において、前記制御装置は、前記ガスタービンにかかる負荷の変化に対して正の相関性を持って変化する開度を示す基準指令を発生する基準指令発生部を備え、前記第一弁指令発生部は、前記昇圧機でのサージング発生が高まった場合、前記第一弁指令として、前記検知器で検知された前記状態量に応じて、前記基準指令が示す開度より大きな開度を示す指令を発生し、前記リターン弁指令出力部は、前記リターン弁に関する前記第一弁指令と前記第二弁指令と前記基準指令とのうち、いずれか一の指令を選択する選択部と、前記選択部が選択した前記一の指令を前記リターン弁の制御に合ったリターン弁指令に変換して、前記リターン弁指令を前記リターン弁に出力する指令変換部と、を有し、前記選択部は、前記リターン弁に関する前記第二弁指令と、前記リターン弁に関する前記第一弁指令又は前記基準指令との入力がある場合、前記第二弁指令を選択し、前記第二弁指令の入力がなく且つ前記第一弁指令と前記基準指令との入力がある場合、大きな開度を示す一の指令を選択し、前記指令変換部は、前記選択部が選択した一の指令が前記基準指令の場合、前記負荷が予め定められた値未満のとき、前記基準指令を、前記負荷の変化に対して負の相関性を持って変化する前記リターン弁の開度を示すリターン弁指令に変換し、前記負荷が前記予め定められた値以上のとき、前記基準指令を、前記負荷の変化に関わらず一定の開度を示すリターン弁指令に変換し、前記吸気弁指令出力部は、前記吸気弁に関する前記第一弁指令と前記基準指令とのうち、いずれか一の指令を選択する選択部と、前記吸気弁指令出力部の前記選択部が選択した前記一の指令を前記吸気弁の制御にあった吸気弁指令に変換して、前記吸気弁指令を前記吸気弁に出力する指令変換部と、を有し、前記吸気弁指令出力部の前記選択部は、前記吸気弁に関する前記第一弁指令と前記基準指令との入力がある場合、大きな開度を示す一の指令を選択し、前記吸気弁指令出力部の前記指令変換部は、前記吸気弁指令出力部の前記選択部が選択した一の指令が前記基準指令の場合、前記負荷が前記予め定められた値未満のとき、前記基準指令を、前記負荷の変化に関わらず一定の開度を示す吸気弁指令に変換し、前記負荷が前記予め定められた値以上のとき、前記基準指令を、前記負荷の変化に対して正の相関性を持って変化する開度を示す吸気弁指令に変換してもよい。
【0032】
当該ガスタービン冷却系統では、負荷が予め定められた値未満の場合であって、リターン弁指令出力部が基準指令に基づくリターン弁指令を出力した場合、リターン弁の開度が負荷の増加に連れて次第に小さくなる。リターン弁の開度が小さくなると、リターンラインを流れる冷却空気の流量が少なくなるので、高温部品に送られる冷却空気の流量が多くなる。このため、この場合、リターン弁の制御により、負荷が大きくなるに連れて、高温部品に送る冷却空気の流量を多くすることができる。
【0033】
さらに、当該ガスタービン冷却系統では、負荷が予め定められた値以上の場合であって、吸気弁指令出力部が基準指令に基づく吸気弁指令を出力した場合、吸気弁の開度が負荷の増加に連れて次第に大きくなる。吸気弁の開度が大きくなると、高温部品に送られる冷却空気の流量が多くなる。このため、この場合、吸気弁の制御により、負荷が大きくなるに連れて、高温部品に送る冷却空気の流量を多くすることができる。
【0034】
前記吸気弁を備える、以上のいずれかの前記ガスタービン冷却系統において、前記吸気弁指令発生部は、前記昇圧機のサージング発生の可能性が低くなったと想定される条件が満たされた後であって、前記高温部品が十分に冷却された状態に戻ったと想定される条件が満たされると、前記吸気弁に関する前記第一弁指令の発生を中止してもよい。
【0035】
当該冷却系統では、高温部品が十分に冷却された状態に戻ったと想定される条件が満たされるまで、吸気弁の開度が遮断時開度に維持される。
【0036】
上記目的を達成するための発明に係る一態様としてのガスタービン設備は、
以上のいずれかのガスタービン冷却系統と、前記ガスタービンと、を備える。
【0037】
上記目的を達成するための発明に係る一態様としてのガスタービン冷却系統の制御方法は、
ガスタービンの空気圧縮機で圧縮された圧縮空気をガスタービン中で燃焼ガスに接する高温部品に導く冷却空気ラインと、前記冷却空気ライン中の前記圧縮空気を冷却して冷却空気にする冷却器と、前記冷却空気ライン中の前記冷却空気を昇圧する昇圧機と、前記冷却空気ライン中で前記昇圧機よりも前記高温部品側のラインである吐出ライン中の前記冷却空気を前記冷却空気ライン中で前記昇圧機よりも前記空気圧縮機側の吸気ラインに戻すリターンラインと、前記リターンラインに設けられ前記リターンラインを流れる前記冷却空気の流量を調節するリターン弁と、を備えるガスタービン冷却系統の制御方法において、
前記吸気ラインを流れる前記冷却空気の状態量と前記吐出ラインを流れる前記冷却空気の状態量とを検知する検知工程と、前記ガスタービンの負荷遮断を示す負荷遮断指令を受け付ける受付工程と、前記検知工程で検知された前記状態量に応じた前記リターン弁の開度を示す第一弁指令を発生する第一弁指令発生工程と、前記受付工程により前記負荷遮断指令を受け付けると、前記検知工程で検知された前記状態量に関わらず、前記リターン弁の開度を予め定めれた遮断時開度へ強制的に大きくする旨の弁指令を第二弁指令として発生する第二弁指令発生工程と、前記第二弁指令発生工程で前記第二弁指令を発生している場合、前記第二弁指令に基づくリターン弁指令を前記リターン弁に出力し、前記第二弁指令発生工程で前記第二弁指令を発生していない場合、前記ガスタービンの状態に応じて前記第一弁指令に基づくリターン弁指令を前記リターン弁に出力するリターン弁指令出力工程と、を実行する。
【0038】
前述したように、負荷遮断時には、昇圧機でのサージング発生の可能性が急激に高まる。当該冷却系統の制御方法では、受付工程で負荷遮断指令を受け付けると、第二弁指令発生工程で第二弁指令を発生する。この第二弁指令は、検知工程で検知された状態量に関わらず、リターン弁の開度を予め定めれた遮断時開度へ強制的に大きくする旨の弁指令である。第二弁指令発生工程で第二弁指令を発生すると、リターン弁指令出力工程では、この第二弁指令に基づくリターン弁指令をリターン弁に出力する。この結果、負荷遮断直後に、リターン弁の開度は、遮断時開度へ強制的に大きくなる。
【0039】
リターン弁の開度が大きくなると、リターンラインを流れる冷却空気の流量が多くなるため、昇圧機を流れる冷却空気の体積流量は増加する。このため、リターン弁の開度が大きくなると、昇圧機の体積吸込流量が増加する。また、リターン弁の開度が大きくなると、昇圧機の吐出圧と吸気圧との差が小さくなり、昇圧機の圧力比が小さくなる。よって、リターン弁の開度が大きくなると、サージング発生の可能性が低下する。
【0040】
従って、当該冷却系統の制御方法では、負荷遮断時における昇圧機でのサージング発生の可能性を抑えることができる。このため、当該冷却系統の制御方法によれば、負荷遮断時でも高温部品に冷却空気を送り、この高温部品を冷却することができる。
【0041】
ここで、前記ガスタービン冷却系統の制御方法において、前記遮断時開度は、前記リターン弁が全開の開度であってもよい。
【0042】
また、以上のいずれかの前記ガスタービン冷却系統の制御方法において、前記第二弁指令発生工程では、前記受付工程で前記負荷遮断指令を受け付けると、前記昇圧機でのサージング発生の可能性が低くなったとされる予め定められている条件が満たされるまで、前記遮断時開度を維持する旨の弁指令を前記第二弁指令として発生してもよい。
【0043】
また、前記条件が満たされるまで、遮断時開度を維持する旨の弁指令を前記第二弁指令として発生する、前記ガスタービン冷却系統の制御方法において、前記第二弁指令発生工程では、前記予め定められた条件が満たされると、前記リターン弁の開度を前記遮断時開度から小さくする旨の弁指令を前記第二弁指令として発生してもよい。
【0044】
また、前記条件が満たされると、リターン弁の開度を前記遮断時開度から小さくする旨の弁指令を前記第二弁指令として発生する、前記ガスタービン冷却系統の制御方法において、前記第一弁指令発生工程では、前記検知工程で検知された前記状態量がサージング発生の可能性が高まっていることを示す場合、前記リターン弁の開度が大きくなる開度を示す前記第一弁指令を発生し、前記検知工程で検知された前記状態量がサージング発生の可能性が低下していることを示す場合、前記リターン弁の開度が小さくなる開度を示す前記第一弁指令を発生し、前記予め定められた条件が満たされたときの前記第二弁指令が示す開度の閉側への変化率は、サージング発生の可能性が低下しているときの前記第一弁指令が示す開度の閉側への最大変化率より大きくてもよい。
【0045】
また、前記条件が満たされると、リターン弁の開度を前記遮断時開度から小さくする旨の弁指令を前記第二弁指令として発生する、前記ガスタービン冷却系統の制御方法において、前記予め定められた条件が満たされたときの前記第二弁指令が示す開度の変化率は、予め定められた変化率であってもよい。
【0046】
また、前記条件が満たされると、リターン弁の開度を前記遮断時開度から小さくする旨の弁指令を前記第二弁指令として発生する、前記ガスタービン冷却系統の制御方法において、前記第二弁指令発生工程では、前記予め定められた条件が満たされたとき、前記検知工程で検知された前記状態量に応じて定めた開度を示す弁指令を前記第二弁指令として発生してもよい。
【0047】
また、前記条件が満たされると、リターン弁の開度を前記遮断時開度から小さくする旨の弁指令を前記第二弁指令として発生するする、いずれかの前記ガスタービン冷却系統の制御方法において、前記予め定められている条件である第一条件が満たされた後、第二条件が満たされると、前記第二弁指令発生工程では、前記第二弁指令の発生を中止してもよい。
【0048】
以上のいずれかの前記ガスタービン冷却系統の制御方法において、前記ガスタービン冷却系統は、前記吸気ラインに設けられ前記吸気ラインを流れる前記冷却空気の流量を調節する吸気弁を備え、前記受付工程により前記負荷遮断指令を受け付けると、前記検知工程で検知された前記状態量に関わらず、前記吸気弁の開度を予め定められた遮断時開度へ強制的に大きくする旨の第一弁指令を発生する吸気弁指令発生工程と、前記吸気弁指令発生工程で発生した前記第一弁指令に基づく吸気弁指令を前記吸気弁に出力する吸気弁弁指令出力工程と、を実行してもよい。
【0049】
前記吸気弁指令発生工程を実行する前記ガスタービン冷却系統の制御方法において、前記吸気弁指令発生工程で発生する前記第一弁指令が示す前記遮断時開度は、前記吸気弁の全開の開度であってもよい。
【0050】
以上のいずれかの前記ガスタービン冷却系統の制御方法において、前記ガスタービンにかかる負荷の変化に対して正の相関性を持って変化する開度を示す基準指令を発生する基準指令発生工程を実行し、前記第一弁指令発生工程では、前記昇圧機でのサージング発生が高まった場合、前記リターン弁に関する前記第一弁指令として、前記検知工程で検知された前記状態量に応じて、前記基準指令が示す開度より大きな開度を示す指令を発生し、前記リターン弁指令出力工程は、前記リターン弁に関する前記第一弁指令と前記第二弁指令と前記基準指令とのうち、いずれか一の指令を選択する選択工程と、前記選択工程で選択された前記一の指令を前記リターン弁の制御に合ったリターン弁指令に変換して、前記リターン弁指令を前記リターン弁に出力する指令変換工程と、を含み、前記選択工程では、前記第二弁指令と、前記リターン弁に関する前記第一弁指令又は前記基準指令との入力がある場合、前記第二弁指令を選択し、前記第二弁指令の入力がなく且つ前記第一弁指令と前記基準指令との入力がある場合、大きな開度を示す指令を選択し、前記指令変換工程では、前記選択工程で選択された一の指令が前記基準指令の場合、前記負荷が予め定められた値未満のとき、前記基準指令を、前記負荷の変化に対して負の相関性を持って変化する前記リターン弁の開度を示すリターン弁指令に変換し、前記負荷が前記予め定められた値以上のとき、前記基準指令を、前記負荷の変化に関わらず一定の開度を示すリターン弁指令に変換してもよい。
【0051】
前記吸気弁を備える、以上のいずれかの前記ガスタービン冷却系統の制御方法において、前記ガスタービンにかかる負荷の変化に対して正の相関性を持って変化する開度を示す基準指令を発生する基準指令発生工程を実行し、前記第一弁指令発生工程では、前記昇圧機でのサージング発生が高まった場合、前記リターン弁に関する前記第一弁指令として、前記検知工程で検知された前記状態量に応じて、前記基準指令が示す開度より大きな開度を示す指令を発生し、前記リターン弁指令出力工程は、前記リターン弁に関する前記第一弁指令と前記第二弁指令と前記基準指令とのうち、いずれか一の指令を選択する選択工程と、前記選択工程で選択された前記一の指令を前記リターン弁の制御に合ったリターン弁指令に変換して、前記リターン弁指令を前記リターン弁に出力する指令変換工程と、を含み、前記選択工程では、前記第二弁指令と、前記リターン弁に関する前記第一弁指令又は前記基準指令との入力がある場合、前記第二弁指令を選択し、前記第二弁指令の入力がなく且つ前記第一弁指令と前記基準指令との入力がある場合、大きな開度を示す指令を選択し、前記指令変換工程では、前記選択工程で選択された一の指令が前記基準指令の場合、前記負荷が予め定められた値未満のとき、前記基準指令を、前記負荷の変化に対して負の相関性を持って変化する前記リターン弁の開度を示すリターン弁指令に変換し、前記負荷が前記予め定められた値以上のとき、前記基準指令を、前記負荷の変化に関わらず一定の開度を示すリターン弁指令に変換し、前記吸気弁指令出力工程は、前記吸気弁に関する前記第一弁指令と前記基準指令とのうち、いずれか一の指令を選択する選択工程と、前記吸気弁指令出力工程における前記選択工程で選択された前記一の指令を前記吸気弁の制御にあった吸気弁指令に変換して、前記吸気弁指令を前記吸気弁に出力する指令変換工程と、を含み、前記吸気弁指令出力工程における前記選択工程では、前記吸気弁に関する前記第一弁指令と前記基準指令との入力がある場合、大きな開度を示す一の指令を選択し、前記吸気弁指令出力工程における前記指令変換工程では、前記吸気弁指令出力工程における前記選択工程で選択された一の指令が前記基準指令の場合、前記負荷が前記予め定められた値未満のとき、前記基準指令を、前記負荷の変化に関わらず一定の開度を示す吸気弁指令に変換し、前記負荷が前記予め定められた値以上のとき、前記基準指令を、前記負荷の変化に対して正の相関性を持って変化する開度を示す吸気弁指令に変換してもよい。
【0052】
また、前記吸気弁を備える、以上のいずれかの前記ガスタービン冷却系統の制御方法において、前記吸気弁指令発生工程では、前記昇圧機のサージング発生の可能性が低くなったと想定される条件が満たされた後であって、前記高温部品が十分に冷却された状態に戻ったと想定される条件が満たされると、前記吸気弁に関する前記第一弁指令の発生を中止してもよい。