(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
布に刺繍を施す場合、無地や何もない生地に刺繍するという機会はまれであり、ほとんどの場合は、ポケットや袖等のパーツに対して刺繍したり、既に飾り縫いが縫われている布、又は、プリント柄のある布に対して、刺繍模様を形成したりする。
【0003】
特許文献1には、刺繍枠に装着された刺繍布に対して、操作者によって選択された文字等の複数の模様を、指定された縫い範囲に、均等に配置して縫うことができるミシンが開示されている。
このような従来のミシンでは、利用者は、刺繍布をセットした刺繍枠をミシンに取り付け、目的の刺繍模様が縫われる位置にミシンの機能であるジョグ操作によって刺繍枠を移動させて、針位置を開始点付近に移動させる。次に、利用者は、縫い範囲確認機能を実行し、模様が縫われる範囲の矩形線上を、針に対して刺繍枠を移動させてこの矩形内に模様が入るであろうことを目視で確認する。この機能により刺繍される位置及び範囲は、刺繍実行前におおよそ確認できるが、背景にある刺繍布の柄と模様の位置関係を明確にすることはできなかった。
また、針の下に刺繍布の刺繍開始位置を位置合わせする場合に、ミシンの機構部を避けて目視しなければならず、正確な位置合わせを行うことが難しかった。
【0004】
一方、従来から、ミシンとパーソナルコンピュータ等とを無線通信により接続する技術が知られている(特許文献2参照)。
また、近年では、パーソナルコンピュータの代わりに、より簡単に利用可能なタブレット端末が様々な分野において用いられるようになっている。
ミシンの分野においても、ミシンとタブレット端末とが無線LAN接続可能なシステムが開発されている。
【0005】
タブレット端末やパーソナルコンピュータ等を利用して刺繍に関する編集を行おうとする場合、刺繍編集画面への背景画像の表示は、縫製位置の調整や縫い上がりのイメージを確認するために行われる。その用途から背景画像は正しい倍率で表示しなければならない。
通常、パーソナルコンピュータ等のアプリケーションでは、スキャナやデジタルカメラを使用して画像データに変換し、その画像データを加工することによって大きさを調整していた。一方、撮影機能付きのタブレット端末を用いる場合には、編集作業中にカメラ機能を起動し、撮影した画像をそのまま背景として取り込むことが想定される。しかし、スキャナを利用する場合とは異なり、タブレット端末を用いて撮影された画像は、寸法の基準が不明確な画像となっており、正しい倍率で表示することができず、刺繍位置や刺繍範囲を背景画像(刺繍布)に対して決定する編集に利用することができなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、刺繍布に対して簡単かつ正確に刺繍模様の配置を行うことができる刺繍模様配置システム、刺繍模様配置装置、刺繍模様配置装置の刺繍模様配置方法、刺繍模様配置装置のプログラム、ミシンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、刺繍枠(40)及び前記刺繍枠(40)に装着された刺繍布(50)を撮影範囲内に含んで撮影する撮影部(26)と、前記刺繍枠(40)の情報を取得する刺繍枠情報取得部(27)と、前記刺繍枠情報取得部(27)が取得した前記刺繍枠(40)の情報と、前記撮影部(26)が撮影した撮影画像中の前記刺繍枠(40)とを対応付ける解析を行う撮影画像解析部(28)と、刺繍を行う予定の刺繍模様に関する情報を取得する刺繍模様取得部(24)と、前記撮影画像解析部(28)の解析結果を用いて、前記刺繍模様取得部(24)が取得した刺繍模様と前記撮影部(26)が撮影した撮影画像の少なくとも一部とを、縮尺が等しくなるようにして重ねて表示部(21)に表示させる表示制御部(25)と、利用者からの操作を受け付ける操作部(21a)と、前記操作部(21a)による操作内容に応じて前記刺繍枠(40)に対する前記刺繍模様の位置及び向きを決定する刺繍配置編集部(29)と、前記刺繍配置編集部(29)が決定した前記刺繍模様の位置及び向きと対応するように前記刺繍枠(40)に装着された前記刺繍布(50)に対して刺繍を実行する刺繍実行部(17)と、を備える刺繍模様配置システムである。
【0009】
請求項2の発明は、刺繍枠(40)及び前記刺繍枠(40)に装着された刺繍布(50)を撮影範囲内に含んで撮影する撮影部(26)と、前記刺繍枠(40)の情報を取得する刺繍枠情報取得部(27)と、前記刺繍枠情報取得部(27)が取得した前記刺繍枠(40)の情報と、前記撮影部(26)が撮影した撮影画像中の前記刺繍枠(40)とを対応付ける解析を行う撮影画像解析部(28)と、刺繍を行う予定の刺繍模様に関する情報を取得する刺繍模様取得部(24)と、前記撮影画像解析部(28)の解析結果を用いて、前記刺繍模様取得部(24)が取得した刺繍模様と前記撮影部(26)が撮影した撮影画像の少なくとも一部とを、縮尺が等しくなるようにして重ねて表示部(21)に表示させる表示制御部(25)と、利用者からの操作を受け付ける操作部(21a)と、前記操作部(21a)による操作内容に応じて前記刺繍枠(40)に対する前記刺繍模様の位置及び向きを決定する刺繍配置編集部(29)と、前記刺繍配置編集部(29)が決定した前記刺繍模様の位置及び向きに関する情報を保持する刺繍配置情報保持部(23)と、を備える刺繍模様配置装置(20)である。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2に記載の刺繍模様配置装置(20)において、前記撮影部(26)は、前記刺繍枠情報取得部(27)が取得した前記刺繍枠(40)の情報から当該刺繍枠(40)に相当する表示を前記表示部(21)に表示させることにより、前記刺繍枠(40)に相当する表示に前記刺繍枠(40)を一致させて撮影を行うように利用者に対して撮影の案内を行い、前記撮影画像解析部(28)は、前記撮影部(26)による撮影が、前記刺繍枠(40)に相当する表示に前記刺繍枠(40)を一致させて行われた結果に基づいて、前記刺繍枠(40)の情報と撮影画像中の前記刺繍枠(40)との対応付けを行うこと、を特徴とする刺繍模様配置装置(20)である。
【0011】
請求項4の発明は、請求項2又は請求項3に記載の刺繍模様配置装置(20)において、前記刺繍枠情報取得部(27)は、前記撮影部(26)による撮影前に、前記操作部(21a)を利用して利用者が選択した前記刺繍枠(40)の種類に応じた前記刺繍枠(40)の情報を取得すること、を特徴とする刺繍模様配置装置(20)である。
【0012】
請求項5の発明は、請求項2又は請求項3に記載の刺繍模様配置装置(20)において、前記刺繍枠情報取得部(27)は、前記撮影部(26)による撮影画像から刺繍に用いられる前記刺繍枠(40)の種類を特定して、その特定した前記刺繍枠(40)の種類に応じた前記刺繍枠(40)の情報を取得すること、を特徴とする刺繍模様配置装置(20)である。
【0013】
請求項6の発明は、請求項2から請求項5までのいずれか1項に記載の刺繍模様配置装置(20)において、前記刺繍模様取得部(24)は、刺繍を実行するミシン(10)と通信を行って、前記ミシン(10)から刺繍を行う予定の刺繍模様に関する情報を取得すること、を特徴とする刺繍模様配置装置(20)である。
【0014】
請求項7の発明は、請求項2から請求項6までのいずれか1項に記載の刺繍模様配置装置(20)において、前記刺繍配置情報保持部(23)が保持する刺繍配置情報を、ミシン(10)に送信する刺繍配置情報送信部を備えること、を特徴とする刺繍模様配置装置(20)である。
【0015】
請求項8の発明は、請求項2から請求項7までのいずれか1項に記載の刺繍模様配置装置(20)において、前記刺繍配置編集部(29)は、前記操作部(21a)による操作内容に応じて刺繍模様のサイズ変更を行うことができること、を特徴とする刺繍模様配置装置(20)である。
【0016】
請求項9の発明は、撮影部(26)が、刺繍枠(40)及び前記刺繍枠(40)に装着された刺繍布(50)を撮影範囲内に含んで撮影するステップと、刺繍枠情報取得部(27)が、前記刺繍枠(40)の情報を取得するステップと、撮影画像解析部(28)が、前記刺繍枠情報取得部(27)が取得した前記刺繍枠(40)の情報と、前記撮影部(26)が撮影した撮影画像中の前記刺繍枠(40)とを対応付ける解析を行うステップと、刺繍模様取得部(24)が、刺繍を行う予定の刺繍模様に関する情報を取得するステップと、表示制御部(25)が、前記撮影画像解析部(28)の解析結果を用いて、前記刺繍模様取得部(24)が取得した刺繍模様と前記撮影部(26)が撮影した撮影画像の少なくとも一部とを、縮尺が等しくなるようにして重ねて表示部(21)に表示させるステップと、操作部(21a)が、利用者からの操作を受け付けるステップと、刺繍配置編集部(29)が、前記操作部(21a)による操作内容に応じて前記刺繍枠(40)に対する前記刺繍模様の位置及び向きを決定するステップと、刺繍配置情報保持部(23)が、前記刺繍配置編集部(29)が決定した前記刺繍模様の位置及び向きに関する情報を保持するステップと、を備える刺繍模様配置装置(20)の刺繍模様配置方法である。
【0017】
請求項10の発明は、刺繍模様配置装置(20)のコンピュータに、撮影部(26)が、刺繍枠(40)及び前記刺繍枠(40)に装着された刺繍布(50)を撮影範囲内に含んで撮影するステップと、刺繍枠情報取得部(27)が、前記刺繍枠(40)の情報を取得するステップと、撮影画像解析部(28)が、前記刺繍枠情報取得部(27)が取得した前記刺繍枠(40)の情報と、前記撮影部(26)が撮影した撮影画像中の前記刺繍枠(40)とを対応付ける解析を行うステップと、刺繍模様取得部(24)が、刺繍を行う予定の刺繍模様に関する情報を取得するステップと、表示制御部(25)が、前記撮影画像解析部(28)の解析結果を用いて、前記刺繍模様取得部(24)が取得した刺繍模様と前記撮影部(26)が撮影した撮影画像の少なくとも一部とを、縮尺が等しくなるようにして重ねて表示部(21)に表示させるステップと、操作部(21a)が、利用者からの操作を受け付けるステップと、刺繍配置編集部(29)が、前記操作部(21a)による操作内容に応じて前記刺繍枠(40)に対する前記刺繍模様の位置及び向きを決定するステップと、刺繍配置情報保持部(23)が、前記刺繍配置編集部(29)が決定した前記刺繍模様の位置及び向きに関する情報を保持するステップと、を実行させるための刺繍模様配置装置(20)のプログラムである。
【0018】
請求項11の発明は、請求項7に記載の刺繍模様配置装置(20)と通信可能な通信部と、前記通信部を介して前記刺繍配置情報送信部から取得した刺繍配置情報にしたがって刺繍を実行する刺繍実行部(17)と、を備えるミシン(10)である。
【0019】
請求項12の発明は、請求項11に記載のミシン(10)において、当該ミシン(10)に装着された刺繍枠(40)の種類を認識する刺繍枠認識部と、刺繍を実行するか否かを判断する実行判断部(16)と、を備え、前記実行判断部(16)は、前記通信部を介して前記刺繍配置情報送信部から取得した刺繍配置情報に含まれる前記刺繍枠(40)の種類と、前記刺繍枠認識部が認識した前記刺繍枠(40)の種類とが一致した場合に、刺繍を実行すると判断すること、を特徴とするミシン(10)である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、刺繍布に対して簡単かつ正確に刺繍模様の配置を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面等を参照して説明する。
【0023】
(実施形態)
図1は、本発明による刺繍模様配置システムの実施形態を示す図である。
図2は、ミシン10及びタブレット端末20の制御構成を示すブロック図である。
図3は、刺繍模様配置システムにより行われる刺繍模様の配置の概要を示す図である。
なお、
図1及び
図2を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張して示している。
また、以下の説明では、具体的な数値、形状、動作等を示して説明を行うが、これらは、適宜変更することができる。
【0024】
本実施形態の刺繍模様配置システムは、ミシン10と、刺繍模様配置装置としてのタブレット端末20とを備えており、ミシン10とタブレット端末20とは、不図示のルータ等を介した無線LANにより相互の通信が可能である。
本実施形態では、
図3に示したような模様が設けられている刺繍布50上に、刺繍模様Hを利用者が適切であると考える位置及び回転方向(向き)に簡単に配置して、
図3中の右側に示したような刺繍結果を得る場合について、説明する。
【0025】
ミシン10は、例えば、刺繍データにしたがって複数色の糸を用いて半自動的に刺繍を行うことができる。また、通常の縫製についても、様々な縫製パターンにより縫製を行うことができる多機能のミシンである。
なお、以下の説明において、刺繍データに含まれている模様について「刺繍模様」と呼ぶが、「刺繍データ」と「刺繍模様」とは、同一の模様に関するものとする。
ミシン10は、ミシン側表示部11と、ミシン側無線通信部12と、ミシン側記憶部13と、制御部14と、刺繍枠認識部15と、実行判断部16と、刺繍実行部17とを備えている。
【0026】
ミシン側表示部11は、ミシン10自体に設けられており、例えば液晶表示装置により構成されている。ミシン側表示部11には、ミシンの動作状態に対応して利用者にとって有益な各種情報を表示される。例えば、糸通しを行う状態にあるときには、糸通しの操作を補助できるような表示を行う。この表示内容は、ミシンが多機能であることから、多数の表示内容が存在している。また、ミシン側表示部11は、タッチパネルとして構成されており、利用者からの各種操作入力を受け付けることができる。
【0027】
ミシン側無線通信部12は、無線LANに接続されており、不図示のルータ等を介して、タブレット端末20との間で相互の無線通信を行うことができる。
【0028】
ミシン側記憶部13は、ROM、RAM、フラッシュメモリ等により構成されており、例えば、数百種類の刺繍データを記憶している。
また、ミシン側記憶部13は、ミシン10に予め内蔵されている模様(刺繍データ)の他に、利用者が外部から入手した模様(利用者作成模様)も記憶していてもよい。
ミシン側記憶部13に記憶されている刺繍データそのもの、又は、刺繍データに関連する情報については、タブレット端末20に転送が可能である。
【0029】
制御部14は、ミシン10の動作を統括的に制御する。また、制御部14は、タブレット端末20からの問い合わせに対する応答も行う。また、制御部14は、ミシン側表示部11の表示及び入力機能を用いて、ミシン10単体で刺繍模様の選択や、組み合わせ、及び、変形等の簡易的な編集作業が可能なように制御を行うこともできる。
【0030】
刺繍枠認識部15は、ミシン10に装着された刺繍枠40の種類を認識する。本実施形態の刺繍枠認識部15は、利用者がミシン側表示部11を用いて入力又は選択した刺繍枠40の種類を、ミシン10に装着された刺繍枠40の種類として認識する。なお、刺繍枠認識部15による刺繍枠の認識方法は、これに限らず、例えば、ICチップを利用したり、接点回路を利用したりして、ミシン10に装着された刺繍枠40の種類を認識してもよい。
【0031】
実行判断部16は、刺繍を実行するか否かを判断する。より具体的には、実行判断部16は、ミシン側無線通信部12を介して後述の刺繍配置情報送信部30から取得した刺繍配置情報に含まれる刺繍枠40の種類と、刺繍枠認識部15が認識した刺繍枠40の種類とが一致した場合に、刺繍を実行すると判断する。
【0032】
刺繍実行部17は、実行判断部16が刺繍を実行すると判断した場合に、ミシン側無線通信部12を介して刺繍配置情報送信部30から取得した刺繍配置情報にしたがって、刺繍枠40に装着された刺繍布50に対して刺繍を実行する。これにより、刺繍実行部17は、後述の刺繍配置編集部29が決定した刺繍模様の位置及び向きと対応するように刺繍枠40に装着された刺繍布50に対して刺繍を実行することができる。
【0033】
タブレット端末20は、一般的に市販されている汎用品を利用することができる。本実施形態における刺繍模様配置装置としてタブレット端末20を使用するためには、この刺繍模様配置システム用のプログラム(アプリケーションプログラム)をタブレット端末20にインストールして実行する。なお、プログラムは、フラッシュメモリ装置等の記録媒体に記録されていてもよいし、既知の様々なネットワークを介してダウンロードして入手可能となっていてもよい。
タブレット端末20は、端末側表示部21と、端末側無線通信部22と、端末側記憶部23と、刺繍模様取得部24と、表示制御部25と、撮影部26と、刺繍枠情報取得部27と、撮影画像解析部28と、刺繍配置編集部29と、刺繍配置情報送信部30とを備えている。
【0034】
端末側表示部21は、タッチパネルとして機能させるために操作部21aを含んで構成されており、情報の表示に加えて、利用者からの各種操作入力を受け付けることができる。
【0035】
端末側無線通信部22は、無線LANに接続されており、不図示のルータ等を介して、ミシン10との間で相互の無線通信を行うことができる。
【0036】
端末側記憶部23は、ROM、RAM、フラッシュメモリ等により構成されており、ミシン10から取得した刺繍データを記憶する。なお、タブレット端末20に本システム用のプログラムをインストールした直後においては、端末側記憶部23には、刺繍データが全く記憶されていない形態であってもよいし、複数の刺繍データが含まれていてもよい。
また、端末側記憶部23は、刺繍配置編集部29が決定した刺繍模様の位置及び向きに関する情報を保持する刺繍配置情報保持部としても機能する。
【0037】
刺繍模様取得部24は、刺繍を行う予定の刺繍模様に関する情報をミシン10から取得する。より具体的には、刺繍模様取得部24は、ミシン10において縫い準備がされている刺繍データ又は刺繍データを特定する情報を無線通信によって取得する。刺繍模様取得部24は、端末側記憶部23に該当する刺繍データが含まれている場合には、どの刺繍データを用いるのかについての情報を取得し、端末側記憶部23に該当する刺繍データが含まれていない場合には、刺繍データそのものをミシン10から取得する。
【0038】
表示制御部25は、端末側表示部21の表示を制御する。また、表示制御部25は、撮影画像解析部28の解析結果を用いて、刺繍模様取得部24が取得した刺繍模様と撮影部26が撮影した撮影画像の少なくとも一部とを、縮尺が等しくなるようにして重ねて表示部に表示させる制御も行う。
【0039】
撮影部26は、刺繍枠40及び刺繍枠40に装着された刺繍布50を撮影範囲内に含んで撮影を行う。撮影を実際に行うときには、利用者がタブレット端末20を手に持って撮影を行う。したがって、撮影者に全てを任せてしまうと、撮影された刺繍布50がどのような大きさであるのか、不明になってしまう。その場合、撮影された範囲と、実寸法との対応を取ることができなくなってしまう。そのような事態を回避し、撮影された範囲と、実寸法との対応を取ることができるように、本実施形態の撮影部26は、以下のような撮影案内を行う。
撮影部26は、後述の刺繍枠情報取得部27が取得した刺繍枠40の情報から当該刺繍枠40に相当する表示(以下、枠イメージ)を端末側表示部21に表示させることにより、枠イメージに刺繍枠40を一致させて撮影を行うように利用者に対して撮影の案内を行う。また、枠イメージは、撮影部26のカメラ部(不図示)がリアルタイムで表示している撮影領域の画像と重ねて見ることができるように、透過表示(半透明表示)となっている(
図8参照)。これにより、利用者は、透過表示されている枠イメージに、カメラ部により撮影される実際の刺繍枠40を正確に合せて撮影することが簡単にできる。
【0040】
刺繍枠情報取得部27は、刺繍に用いる刺繍枠40の情報を取得する。本実施形態では、刺繍枠情報取得部27は、撮影部26による撮影前に、例えば、
図7に示したような表示がされている端末側表示部21を利用して利用者が選択した刺繍枠40の種類に応じた刺繍枠40の情報を取得する。
【0041】
撮影画像解析部28は、刺繍枠情報取得部27が取得した刺繍枠40の情報と、撮影部26が撮影した撮影画像中の刺繍枠40とを対応付ける解析を行う。より具体的には、撮影画像解析部28は、撮影部26による撮影が、枠イメージに刺繍枠40を一致させて行われたことを前提として、刺繍枠40の情報と撮影画像中の刺繍枠40との対応付けを行う。枠イメージと撮影画像中の刺繍枠40とが一致して重なっていれば、刺繍枠情報取得部27が取得した刺繍枠40の情報から、刺繍枠40のサイズが既知であるので、撮影画像を実際の寸法との対応を取ることができる。
【0042】
刺繍配置編集部29は、端末側表示部21の操作部21aによる操作内容に応じて刺繍枠40に対する刺繍模様の位置及び向きを決定する。例えば、刺繍配置編集部29は、操作部21aによる操作内容に応じて刺繍模様のサイズ変更を行ったり、刺繍位置及び回転位置(向き)の変更を行ったりすることができる。
【0043】
刺繍配置情報送信部30は、端末側記憶部23が保持する刺繍配置情報を、ミシン10に送信する。よって、ミシン10では、刺繍配置編集部29によりタブレット端末20上で編集された刺繍データに基づいて刺繍を実行することができる。
【0044】
次に、フローチャートを参照しながら、本実施形態の刺繍模様配置システムにおける刺繍データの同期方法について説明する。
図4及び
図5は、刺繍模様配置システムによる刺繍模様の配置動作の流れを示すフローチャートである。
なお、ミシン10とタブレット端末20とは、不図示のルータを介して接続されており、予め暗号方式を一致させ、パスワードを双方に設定し、無線LANで通信できる状態になっているものとする。
図6は、刺繍布50を刺繍枠40に装着した状態を示す図である。
タブレット端末20を操作する前に、予め
図6に示したように刺繍布50を刺繍枠40に装着しておくものとする。
【0045】
タブレット端末20の刺繍編集アプリケーションを起動すると、ステップ(以下、単にSとする)1では、刺繍枠情報取得部27は、刺繍布50を装着した刺繍枠40の種類指定を利用者に対して求める。
図7は、S1における端末側表示部21の表示例を示す図である。
例えば、刺繍枠情報取得部27は、
図7に示すようなリスト表示を行い、このリストの中から利用者が選択した刺繍枠40の種類を、刺繍に用いる刺繍枠40であると特定する。ここでは、枠種GRが選択されたものとして、以下の説明を行う。
なお、刺繍枠40の種類毎のサイズ等のデータは、端末側記憶部23に保存されているが、ミシン10や他のネットワークに接続されたサーバ等と通信して取得してもよい。
【0046】
S2では、撮影部26が、S1において選択された刺繍枠40の枠イメージを背景が透過するように表示を行わせる。
図8は、枠イメージの表示例を示す図である。
例えば、枠種GRの場合、刺繍有効範囲が230mm×300mmの大きさであるが、表示解像度が264dpiで1563ドット×2048ドットのタブレット端末20をここでは使ったとすると、そのうちの1000ドット×1300ドットの面積を刺繍範囲に対応させると、1ドット当り0.23mmで描画すればよいことになる。
【0047】
S3では、タブレット端末20のカメラ機能が起動され、画面にカメラ部から入力される映像が表示されている。利用者は、透過表示されている枠イメージとカメラで写されている刺繍布50がセットされた刺繍枠40の外形とが一致して重なるように撮影範囲を調整する。この撮影範囲の調整は、カメラ位置(タブレット端末20の位置)を調整することにより行ってもよいし、カメラ部にズーム機能があれば、その機能を利用してもよい。
図9は、枠イメージとカメラで写されている刺繍布50がセットされた刺繍枠40の外形とがずれた状態を示す図である。
図10は、枠イメージとカメラで写されている刺繍布50がセットされた刺繍枠40の外形とが一致した状態を示す図である。
このS3では、
図9のような状態から、
図10の状態となるように利用者が撮影範囲を調整する。
【0048】
S4では、利用者の操作によって、撮影部26が、撮影を実行する。なお、画像認識を利用して、枠イメージとカメラで写されている刺繍布がセットされた刺繍枠の外形とが一致した状態になったときに、自動的に撮影が行われるようにしてもよい。
【0049】
S5では、S1で取得した刺繍枠40の情報と、S4で撮影した撮影画像中の刺繍枠40とを対応付ける解析を撮影画像解析部28が行う。この背景画像は、枠イメージと同じ大きさで撮影されたので、上述した枠イメージの場合と同様に、1ドット当り、0.23mmで描画すればよいものとして解析結果が簡単に得られる。そして、刺繍布50がセットされた刺繍枠40の画像データは、編集画面の背景画像として端末側記憶部23に記憶される。
【0050】
S6では、刺繍模様取得部24は、無線LANを介してミシン10に模様データ要求コマンドを送信する。ここでは、ミシン10において、刺繍に用いる刺繍模様が予め選択されていることを前提としているが、このS6において、刺繍模様が選択されていない場合には、刺繍模様の選択を促すように処理を行ってもよい。
【0051】
S7では、刺繍模様取得部24は、ミシン10から送られてくる刺繍データの受信完了を待つ。刺繍データの受信が完了すると、受信した刺繍データは、端末側記憶部23の一時記憶エリアに保存され、S8へ進む。
【0052】
S8では、刺繍配置編集部29は、S7で受信した刺繍データに基づいて、刺繍模様の描画(表示)用データを作成する。例えば、100mm×100mmの刺繍模様の場合、435ドット×435ドット(100mm/0.23mm=435dot)で刺繍模様を描画すると、刺繍布50をセットした刺繍枠40や刺繍布50の柄と倍率が等しい(倍率が1:1の)刺繍模様が描画できる。
【0053】
S9では、表示制御部25は、撮影された刺繍布50の画像を背景にして、ミシン10から受信した刺繍模様を表示する。具体的には、先に述べたように、表示制御部25は、S5における撮影画像解析部28による解析結果を用いて、刺繍模様取得部24が取得した刺繍模様と撮影部26が撮影した撮影画像の少なくとも一部とを、縮尺が等しくなるようにして重ねて表示部に表示させる制御を行う。
図11は、撮影された背景画像と受信した刺繍模様とを倍率を合せて端末側表示部21に表示した表示例を示す図である。
刺繍布50をセットした刺繍枠40を撮影するときは、刺繍枠40の外形を含んで表示していたが、
図11に示すように、編集画面では、刺繍範囲のみを端末側表示部21いっぱいに表示するため、さらに拡大表示される。
【0054】
S10では、刺繍配置編集部29は、利用者から刺繍模様の編集操作を受け付ける。
図12は、利用者による編集作業によって、刺繍模様が回転させられた状態を示す図である。
刺繍模様の編集作業は、例えば、
図12のように、刺繍模様が回転させられて、背景の柄と重ならないように、刺繍模様の位置及び向きが決定される。なお、刺繍配置編集部29による編集作業としては、刺繍模様の位置及び向きの変更の他、刺繍模様の拡大又は縮小(サイズ変更)を行うようにしてもよい。
本実施形態では、刺繍枠40に装着された刺繍布50の画像データを背景として、この画像データ中の刺繍布50と倍率を等しくされた刺繍模様を見ながら編集を行える。よって、刺繍布50上の柄と刺繍模様との相対的な関係を正確に調整しながらの編集が、非常に簡単に行える。
【0055】
S11では、編集作業が終了するまでS10を繰り返す。編集作業の終了は、利用者からの操作入力によって指示される。編集作業が終了したら、S12へ進む。
【0056】
模様の編集作業が終了すると、S12では、編集後の刺繍模様から刺繍データの形式でデータファイルを生成し、ミシン10へ送信する。
上述したS4で撮影した刺繍布50をセットした刺繍枠40をミシン10に取り付け、ミシン10が受信した刺繍配置情報を用いて刺繍実行部17が刺繍を実行することにより、刺繍布50の柄にあった位置に刺繍を行うことができる。
このとき、実行判断部16は、刺繍配置情報送信部30から取得した刺繍配置情報に含まれる刺繍枠40の種類と、刺繍枠認識部15が認識した刺繍枠40の種類とが一致した場合に、刺繍を実行すると判断し、刺繍の実行を許可する。
図13は、刺繍模様の編集を行って刺繍を完了した状態の刺繍布50を示す図である。
【0057】
以上説明したように、本実施形態によれば、寸法が既知である刺繍枠40に図柄のある刺繍布50をセットし、刺繍枠40を含めて撮影することで編集画面に使用する背景画像と倍率情報を同時に取得することが可能となった。
また、撮影時に枠イメージを表示して、この枠イメージに刺繍枠40を一致させるだけで、刺繍布50の画像データと刺繍枠40の情報との対応付け(刺繍布50の画像データと刺繍模様との倍率調整)を簡単、かつ、正確に行うことができる。
そして、ミシン10側で刺繍する模様が選択されている場合、タブレット端末20は直ちにその刺繍データを受信し、模様イメージとして枠との倍率関係を1対1に保ちながら、編集画面上に描画できるようになった。すなわち、編集画面上には、刺繍布の図柄と刺繍しようとしている模様イメージが表示されていることになる。よって、編集画面上でさらに模様の位置調整や回転等を行い、再度ミシン10へ送信すれば、図柄に対して位置関係の調整された刺繍模様を縫うことが簡単かつ正確に行える。
また、刺繍布50に予め基準線等(例えば、十字線)を描いておくと、刺繍枠40をセットしたとき、回転のズレもカメラで写すことができ、その回転のズレに合わせて刺繍模様の位置及び向きを調整すれば、回転のズレを補正することがより簡単に行える。また、この手法は、刺繍枠40内に模様が含まれない場合にも有効である。
【0058】
なお、タブレット端末20の処理をコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムをタブレット端末20に読み込ませ、実行することによって本発明の刺繍模様配置装置、刺繍模様配置装置の刺繍模様配置方法を実現することができる。ここでいうコンピュータとは、OSや周辺装置等のハードウェアを含む。
【0059】
また、「コンピュータ」は、WWW(World Wide Web)システムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(又は表示環境)も含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータから、伝送媒体を介して、又は、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
【0060】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータにすでに記録されているプログラムとの組み合せで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0061】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
【0062】
本実施形態において、刺繍模様配置装置としてタブレット端末20を用いる例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、刺繍模様配置装置には、パーソナルコンピュータを利用してもよいし、ゲーム機を利用してもよく、アプリケーションプログラムを実行でき、かつ、ミシン10と通信可能な装置であれば、その形態はどのようなものであってもよい。
【0063】
本実施形態において、ミシン10とタブレット端末20との間は、無線LANにより通信を行う例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、赤外線通信やBluetooth(登録商標)等、他の種類の通信を利用してもよい。
【0064】
本実施形態において、刺繍枠情報取得部27は、撮影部26による撮影前に、端末側表示部21を利用して利用者が選択した刺繍枠40の種類に応じた刺繍枠40の情報を取得する例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、刺繍枠情報取得部27は、撮影部26による撮影画像から刺繍に用いられる刺繍枠40の種類を特定して、その特定した刺繍枠40の種類に応じた刺繍枠40の情報を取得するようにしてもよい。例えば、撮影部26による撮影画像を解析して、撮影された刺繍枠40の形状から認識してもよいし、刺繍枠上に文字やバーコード等を表示しておいて、これを画像認識してもよい。
【0065】
本実施形態において、撮影画像解析部28は、撮影部26による撮影が、枠イメージに刺繍枠40を一致させて行われたことを前提として、刺繍枠40の情報と撮影画像中の刺繍枠40との対応付けを行う例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、撮影画像中に撮影された刺繍枠40を画像解析して刺繍枠40の撮影画像中における位置及び大きさを特定して、刺繍枠情報取得部27が取得した刺繍枠40の情報との対応を取るようにしてもよい。この場合には、撮影時における枠イメージの透過表示を行わなくてもよい。
【0066】
なお、実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した各実施形態によって限定されることはない。