特許第6587411号(P6587411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6587411
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】ラジアントチューブ式加熱装置
(51)【国際特許分類】
   F23D 14/12 20060101AFI20191001BHJP
   F23C 3/00 20060101ALI20191001BHJP
   F23L 15/00 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
   F23D14/12 A
   F23C3/00 301
   F23L15/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-84026(P2015-84026)
(22)【出願日】2015年4月16日
(65)【公開番号】特開2016-205644(P2016-205644A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593150863
【氏名又は名称】サン−ゴバン セラミックス アンド プラスティクス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 英樹
(72)【発明者】
【氏名】神谷 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】ブリセルデン トーマス ディー
【審査官】 岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−107811(JP,A)
【文献】 特開平09−184608(JP,A)
【文献】 実開平03−064315(JP,U)
【文献】 特開2014−092329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/12
F23C 3/00
F23L 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部が炉体を貫通し、且つ先端側のターン部が炉内に突き出るラジアントチューブと、該ラジアントチューブの一端部側における中空部の中心部に該中空部と同軸状に配置された燃焼バーナとを備えるラジアントチューブ式加熱装置であって、
上記ラジアントチューブの他端部側の中空部には、燃焼用エアを排気ガスの熱によって予熱するための熱交換器が配置され、
上記熱交換器は、セラミックからなり、円筒状の本体と、上記ラジアントチューブのターン部側に位置する先端部とを有し、該先端部に開口する凹部は、上記本体の外周面に該本体の軸方向に沿って形成された螺旋外溝と連通していると共に、上記本体の内側には、隣接する上記螺旋外溝同士の間に位置し且つ該本体の軸方向に沿って螺旋内溝が形成され、該螺旋内溝の内壁面の底面同士に囲まれた円柱状の空間に、上記燃焼用エアを流す給気パイプが上記先端部側で開口するように上記本体の軸方向に沿って配管されている、
ことを特徴とするラジアントチューブ式加熱装置。
【請求項2】
上記ラジアントチューブの中空部内で且つ上記燃焼バーナの先端側の開口部を囲む位置に配置され、上記ラジアントチューブの内壁面と上記燃焼バーナの外周面との間に燃焼済みガスが流れる内外一対の流路を形成する全体が円筒状の昇温抑制体を配置してなる、
ことを特徴とする請求項1に記載のラジアントチューブ式加熱装置。
【請求項3】
上記昇温抑制体は、セラミックからなり、中心部に前記燃焼バーナの先端側を前記内側の流路となる間隔を置いて囲む貫通孔が軸方向に沿って形成されていると共に、当該昇温抑制体の外周面には、複数の螺旋形状の凹溝、または複数の直線状の凹溝が軸方向に沿って互いに平行に形成されている、
ことを特徴とする請求項2に記載のラジアントチューブ式加熱装置。
【請求項4】
前記熱交換器の先端部と前記ターン部との間における前記ラジアントチューブの中空部内には、セラミックからなり、複数の螺旋状流路を有する熱輻射体が配置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のラジアントチューブ式加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、熱処理炉内の雰囲気を清浄に保ちつつ加熱するためのラジアントチューブ式加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ラジアントチューブ式加熱装置には、燃焼用空気の温度を効率的に上昇させて、全体の熱効率を高めることが求められている。例えば、ラジアントチューブにおける一端部側に配置した燃焼バーナの外周側に配設した螺旋型熱交換器内に、上記ラジアントチューブの他端側から排出された排気ガスを還流させることによって、上記燃焼バーナに供給される燃焼用空気を所要温度域に予熱するラジアントチューブ式加熱装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、前記ラジアントチューブ式加熱装置のように、排気ガスの熱を利用して燃焼用空気を予熱した場合、燃焼バーナ内における燃焼温度の上昇に伴って、燃焼用空気中の窒素が酸化することにより、環境上から有害な一酸化窒素や二酸化窒素などの窒素酸化物(NOx)が発生する、という問題があった。しかも、燃焼済みの排気ガス中に含まれる上記窒素酸化物の割合は、予熱される燃焼用空気の温度の上昇に従って、指数関数的に増加する傾向にある。そのため、かかる窒素酸化物の割合は、大気汚染防止法によって規制されている。その結果、該規制値により予熱温度が制限されるので、熱効率の向上の限界となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−194977号公報(第1〜9頁、図1〜3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、背景技術で説明した問題点を解決し、燃焼バーナで発生する窒素酸化物(NOx)の発生を抑制できること、および、熱効率を格段に高められることの少なくとも一方または双方が可能なラジアントチューブ式加熱装置を提供する、ことを課題とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
発明による第1のラジアントチューブ式加熱装置(請求項1)は、両端部が炉体を貫通し、且つ先端側のターン部が炉内に突き出るラジアントチューブと、該ラジアントチューブの一端部側における中空部の中心部に該中空部と同軸状に配置された燃焼バーナとを備えるラジアントチューブ式加熱装置であって、上記ラジアントチューブの他端部側の中空部には、燃焼用エアを排気ガスの熱によって予熱するための熱交換器が配置され、該熱交換器は、セラミックからなり、円筒状の本体と、上記ラジアントチューブのターン部側に位置する先端部とを有し、該先端部に開口する凹部は、上記本体の外周面に該本体の軸方向に沿って形成された螺旋外溝と連通していると共に、上記本体の内側には、隣接する上記螺旋外溝同士の間に位置し且つ該本体の軸方向に沿って螺旋内溝が形成され、該螺旋内溝の内壁面の底面同士に囲まれた円柱状の空間に、上記燃焼用エアを流す給気パイプが上記先端部側で開口するように上記本体の軸方向に沿って配管されている、ことを特徴とする。
【0007】
これによれば、前記ラジアントチューブのターン部を通過した燃焼済みガスは、上記熱交換器の先端部に開口する凹部から該熱交換器の本体の外周面で且つ軸方向に沿って形成された螺旋外溝に沿って流され、該本体の内側に位置する螺旋内溝内を流れる新たな燃焼用エアを効率良く予熱できるので、係る燃焼用エアを螺旋内溝の内壁面の底面同士に囲まれた円柱状の空間内に配管された給気パイプ内に流すことができる。
従って、上記予熱による燃焼用空気の加熱温度の上限を高められるので、熱効率を格段に高めることができる(効果(4))。
尚、前記熱交換器の先端部は、例えば、半球形状、円錐形状、または半楕円球形状を呈する。
【0008】
尚、前記ラジアントチューブは、鋳鋼などからなる金属製パイプであり、その先端部は、横向きのU字形状、あるいは横向きのW形状を呈する。
また、前記炉体は、例えば、熱処理炉や焼結炉などの炉壁のほか、炉天井部も含んでいる。
更に、前記燃焼バーナは、予熱されたエアと燃料との混合ガスを燃焼させ、その先端の開口部から細長い火炎を前記ラジアントチューブの中空部内に該中空部の軸方向に沿って放射(吐出)させる
【0009】
また、本発明には、上記ラジアントチューブの中空部内で且つ上記燃焼バーナの先端側の開口部を囲む位置に配置され、上記ラジアントチューブの内壁面と上記燃焼バーナの外周面との間に燃焼済みガスが流れる内外一対の流路を形成する全体が円筒状の昇温抑制体を配置してなる、ラジアントチューブ式加熱装置(請求項2)も含まれる。
【0010】
これによれば、以下のような効果(1)〜(3)を奏することが可能となる。
(1)前記円筒状の昇温抑制体が、ラジアントチューブの中空部内で且つ燃焼バーナの先端側の開口部を囲む位置に配置され、係る昇温抑制体によって上記ラジアントチューブの内壁面と上記燃焼バーナの外周面との間に、中心側の火焔を囲む燃焼済みガスが流れる内外一対の流路を形成している。そのため、上記昇温抑制体の貫通孔における燃焼済みガスの出口(下流)側の圧力は、該燃焼済みガスの熱膨張によって、入口(上流)側の圧力よりも高圧になる。その結果、出口側の上記焼済みガスの一部が、上記ラジアントチューブの内壁面と昇温抑制体の外周面との間に位置する外側の流路を還流(逆流)し、該昇温抑制体の入口側の貫通孔の開口部付近に達した際に、燃焼バーナの先端から高速で放出される新たな燃焼済みガスにより生じるベンチュリー効果を受ける。これにより、前記焼済みガスの一部は、上記該昇温抑制体の入口側の貫通孔の内壁面と燃焼バーナの外周面との間に位置する内側の流路を出口側に向かって流れつつ、空気を含む新たな燃焼済みガスに混入する。係る混入によって、燃焼済みガス中における酸素濃度が低下し、且つ燃焼温度が低下するため、中心側の火焔の局所的な温度上昇を抑制できるので、有害な窒素酸化物(NOx)の発生を抑制することができる。
(2)前記燃焼バーナの先端側の開口部を囲む位置に昇温抑制体を配置することで、該燃焼バーナの火炎付近が比較的均一に加熱されるため、従来のようにラジアントチューブが局所的に過加熱されず、該チューブに亀裂が生じなくなる。その結果、上記ラジアントチューブの寿命(耐用期間)を延ばすことができる。
(3)上記効果(1)に伴って、燃焼済みガス中に含まれる窒素酸化物の割合を抑制できるため、大気防止法による規制値に基づく予熱限界(即ち、熱効率の上限)を拡大できる。そのため、燃焼用空気の予熱温度を高めるなど、ラジアントチューブ式加熱装置の全体における熱効率の向上を更に図ることが可能となる。
なお、前記昇温抑制体における円柱状の外周面には、次述するように、複数の螺旋形状の前記凹溝同士間、または複数の直線状の前記凹溝同士間を区画し、且つ外側に突出する複数の螺旋形状または直線状の凸条が位置し、該凸条の頂面は、前記ラジアントチューブの中空部の内周面に接触ないし近接している。
加えて、前記昇温抑制体の貫通孔の軸方向と直交する断面は、前記燃焼バーナの外形と相似形の円形である。
【0011】
更に、本発明によるラジアントチューブ式加熱装置(請求項2)は、前記昇温抑制体と、燃焼用エアを排気ガスの熱によって予熱するための前記熱交換器とを併有している、ことを特徴とする。
これによれば、前記第1および第2のラジアントチューブ式加熱装置による前記効果(1)〜(4)を相乗的に奏する効果(5)を得ることができる。即ち、前記効果(1)と相まって、前記燃焼バーナから放射される燃焼済みガス中の窒素酸化物の割合が抑制されていることにより、上記予熱による燃焼用空気の加熱温度の上限を高められるので、熱効率を格段に高められ、環境対策および高熱効率化の双方に貢献することができる。
【0012】
尚、前記熱交換器を構成するセラミックも、前記同様のセラミック材料からなるが、高い熱伝達率および高い耐熱衝撃性の点からSiCが推奨される。
また、上記熱交換器は、3次元(3D)プリンタを用いることで、複雑な内外形状についても容易に制作可能である。
更に、前記熱交換器の本体の外周面は、前記ラジアントチューブの中空部の内壁面に接触ないし近接している。
また、前記熱交換器の先端部に開口する凹部、螺旋外溝、および螺旋内溝は、少なくともそれぞれが1個ずつの形態、または、複数の凹部と、これらに連通する1個の螺旋外溝と、その内側の1個の螺旋内溝とからなる形態、あるいは、複数の凹部と、該凹部と同数で且つ互いに平行な螺旋外溝および螺旋内溝とからなる形態の何れとしても良い。
加えて、前記給気パイプの材料には、耐熱性の金属からなるものが望ましい。
【0013】
また、本発明には、前記昇温抑制体は、セラミックからなり、中心部に前記燃焼バーナの先端側を前記内側の流路となる間隔を置いて囲む貫通孔が軸方向に沿って形成されていると共に、当該昇温抑制体の外周面には、複数の螺旋形状の凹溝、または複数の直線状の凹溝が軸方向に沿って互いに平行に形成されている、ラジアントチューブ式加熱装置(請求項3)も含まれる。
これらのうち、昇温抑制体の外周面に複数の螺旋形状の凹溝が軸方向に沿って互いに平行に形成された形態によれば、前記燃焼済みガスの還流速度を比較的抑えられるので、前記効果(1)を一層確実に奏することが可能となる。
更に、昇温抑制体の外周面に形成される複数の螺旋形状の凹溝同士間、または複数の直線状の凹溝同士間に位置する複数の螺旋形状の凸条、あるいは複数の直線状の凸条によって、当該昇温抑制体をラジアントチューブの中空部における所定に位置に容易且つ正確に配置することが容易となる(効果(6))。
尚、前記昇温抑制体を構成するセラミックには、例えば、SiC、WC、B4C、アルミナ(Al2O3)、窒化アルミニウム、TiN、ムライトなどが含まれる。
【0014】
加えて、本発明には、前記熱交換器の先端部と前記ターン部との間における前記ラジアントチューブの中空部内には、セラミックからなり、複数の螺旋状流路を有する熱輻射体が配置されている、ラジアントチューブ式加熱装置(請求項4)も含まれる。
これによれば、前記燃焼バーナから放出され且つターン部を通過した燃焼済みガスは、上記熱輻射体ごとの複数の螺旋状流路に沿って流れるので、該燃焼済みガスが有する潜熱を受けた後、前記ラジアントチューブを介して炉内に対して熱輻射できる。しかも、順次送られてくる燃焼済みガスを予熱できるので、前記効果(1)に相まって、熱効率を著しく高めることができる(効果(7))。
尚、上記熱輻射体を構成するセラミックも前記同様のセラミック材料からなる。
また、上記熱輻射体における複数の螺旋状流路同士間を区画する複数の螺旋状凸片の最外辺は、前記ラジアントチューブの中空部の内壁面に接触ないし近接している。
更に、上記熱輻射体は、複数個をラジアントチューブの中空部の軸方向に沿って配置した形態としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による一形態のラジアントチューブ式加熱装置を示す垂直断面図。
図2】上記加熱装置に用いる一形態の昇温抑制体を示す側面図。
図3】上記昇温抑制体の垂直断面図。
図4】(A)は上記昇温抑制体の正面図、(B)は異なる形態の昇温抑制体を示す正面図、(C)は更に異なる形態の昇温抑制体を示す正面図。
図5】(A)は上記加熱装置に用いる一形態の熱輻射体を示す側面図、(B)は該熱輻射体の正面図。
図6】上記加熱装置に用いる一形態の熱交換器を示す側面図。
図7】上記熱交換器の垂直断面図。
図8】(A)は上記熱交換器の正面図、(B)は異なる形態の熱交換器を示す正面図。
図9】更に異なる形態の熱交換器を示す側面図。
図10】別異な形態の熱交換器を示す側面図。
図11】上記加熱装置に用いる異なる形態のラジアントチューブの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下において、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明による一形態のラジアントチューブ式加熱装置1を示す垂直断面図である。尚、係る加熱装置1は、前記第3のラジアントチューブ式加熱装置に相当するものである。
上記ラジアントチューブ式加熱装置1は、図1に示すように、炉壁(炉体)Wを内外方向に沿って水平状に貫通するパイプ状のラジアントチューブ2と、該チューブ2の一端側2aにおける該チューブ2の中空部3の中心部に同軸状に配置された燃焼バーナBと、該燃焼バーナBの先端側の開口部を囲む位置で且つ上記中空部3内に配置された昇温抑制体10と、上記ラジアントチューブ2の他端側2bの中空部3内に順次配置された熱輻射体15および熱交換器20aと、を備えている。上記炉壁Wは、例えば、熱処理炉の炉壁(W)が例示される。
また、上記ラジアントチューブ2は、例えば、鋳鋼からなる一体物であり、側面視で全体がほぼ横U字形状を呈し、前記炉壁Wを炉内および炉外方向に沿って互いに平行に貫通する一端部2aおよび他端部2bと、炉内側に半円形状で突き出した先端側のターン部2cと、これらの内側を連続して貫通する中空部3とを有している。
【0017】
更に、前記昇温抑制体10は、図1に示すように、前記中空部3内の位置に配置された状態で、その外周面と前記ラジアントチューブ2の内壁面との間に、軸方向に沿って螺旋形状を呈する複数の外側の流路13を形成すると共に、該昇温抑制体10の中心側を軸方向に沿って貫通する貫通孔12の内壁面と前記燃焼バーナBの先端側の外周面との間に内側の円筒状の流路12aを形成している。
係る昇温抑制体10は、例えば、高い熱伝達率と高い耐熱衝撃性とを併有するSiC(セラミック)からなり、図2図3、および図4(A)に示すように、全体が円筒形状を呈し、中心側を軸方向に沿って貫通する貫通孔12と、外周面の軸方向に沿って互いに平行な螺旋形状の5個(複数)の凹溝13と、これらの流路13,13間の境界に沿って螺旋形状に突出する5個の凸条14とを一体に備えている。係る複数の凸条14は、前記ラジアントチューブ2の内壁面に接触ないし近接している。尚、上記凹溝13は、幅方向に沿った断面が円弧形状であるが、次述するように、係る断面をほぼ扇形状としても良い。
【0018】
図1図3に示すように、前記貫通孔12の内壁面側が前記内側の流路12aとなり、前記凹溝13と前記ラジアントチューブ2の内壁面とに囲まれた空間が前記外側の流路13となる。
前記昇温抑制体10は、例えば、図4(B)に示すように、螺旋形状の6個の凹溝13と、これらの間に同数で突出する凸条14とからなる形態としても良い。これらの凹溝13と凸条14とは、複数ずつで且つ同数であれば任意である。
一方、図4(C)に示すように、円柱形の外周面に6個(複数)の凸条14を互いに対称で且つ軸方向に沿って直線状に突設し、こらの間に同数の凹溝13aを軸方向に沿って直線状に形成した形態の昇温抑制体10aを前記同様に用いても良い。尚、上記凹溝13aは、幅方向に沿った断面がほぼ扇形状であるが、前記同様の円弧形状の断面としても良い。
【0019】
図1に示すように、前記ラジアントチューブ2の中空部3内における前記熱交換器20aの先端部22と前記ターン部2cとの間には、前記同様のセラミックからなり、一対(複数)の螺旋状流路17を対称に有する複数の熱輻射体15が該中空部3の軸方向に沿って配置されている。
係る熱輻射体15は、図5(A)の正面図と(B)の右側面図に示すように、表面および裏面に3つの螺旋状流路17が互いに隣接して位置するように、上記中空部3の軸方向と平行な中心軸18と、該中心軸18から互いに線対称に延びるように形成され、且つ円弧形状の断面が等間隔に位置する3つの螺旋状板16とから構成されている。
尚、図1では、5個(複数)の熱輻射体15を、前記中空部3内における所定の位置にそれらの中心軸18が連続するように配置したが、配置すべき該熱輻射体15の総数は、単数の形態を含めて任意である。
また、熱輻射体15は、例えば、3つ以上(複数)の螺旋状流路17を有するように、上記螺旋状板16の形態に適宜改変しても良い。
【0020】
図1に示すように、前記ラジアントチューブ2の他端部2b側の中空部3内には、前記燃焼バーナBに供給される燃焼用エアを排気ガスの熱によって予熱するための熱交換器20aが配置されている。
係る熱交換器20aは、前記同様のセラミックからなり、且つ3Dプリンタにより制作したものであって、図6図7図8(A)に示すように、円筒状の本体21と、上記ラジアントチューブ2のターン部2c側に位置し且つ半球形状の先端部22とを有し、該先端部22に開口する3個(複数)の凹部(入口)26は、上記本体21の外周面および該本体21の軸方向に沿って平行に形成された3個(複数)の螺旋外溝24と個別に連通している。
また、上記本体21の内側には、隣接する上記螺旋外溝24,24間ごとに位置し且つ該本体21の軸方向に沿って3個(複数)の螺旋内溝25が互いに平行にして形成され、該螺旋内溝25ごとの内壁面の底面同士に囲まれた円柱状の空間に、燃焼用エアを流す給気パイプ7が上記先端部22側の空間28内で開口するように上記本体21の軸方向に沿って配管されている。
【0021】
図7に示すように、3個の螺旋内溝25ごとの先端側は、同図中で破線で示す給気パイプ7の先端よりも先端部22内の空間28に連通している。そのため、本体21の後端壁27に開設した通気孔29を経て、複数の螺旋内溝25内を先端部22側に螺旋状に送給された燃焼用エアは、上記空間28を経て、図1中の白抜きの矢印で示すように、給気パイプ7の先端側7aから該パイプ7内を垂直部7b側に送られ、この間において、螺旋内溝25ごとに隣接する各螺旋外溝24内を前記熱輻射体15側から流動する排気ガスの熱によって順次予熱される。
尚、図8(B)に示すように、前記熱交換器20aは、例えば、先端部22に6個の凹部26を対称に形成し、これらの基側に同数の螺旋外溝24を個別に連通させると共に、こらの内側に同数の螺旋内溝25を前記同様に形成した形態としても良い。即ち、これらの螺旋外溝24、螺旋内溝25、および凹部26は、互いに同数であれば、単数でも同数の複数ずつであっても良い。但し、螺旋外溝24と螺旋内溝25とが単数の場合には、凹部26は複数箇所形成しても良い。
【0022】
前記熱交換器20aで予熱された燃焼用エアは、図1中の白抜きの矢印で示すように、給気パイプ7の垂直部7bおよび耐熱性の蛇腹管8を経て、前記ラジアントチューブ2の一端部側2aを塞ぐ端板4に支持されたホルダ9を通じて、該ホルダ9基端部をに取り付けられた前記燃焼バーナB内に送給される。
尚、新たな燃焼用エアは、図1に示すように、前記通気孔29に連通する元給気管5a,5を経て前記給気パイプ7に送給される。一方、複数の前記螺旋外溝24を流れた排気ガスは、図1中の灰色系の矢印で示すように、ラジアントチューブ2の他端部2bと端板4との間に位置する接続部6aに連通する排気管6から外部に排出される。
【0023】
以下において、前記ラジアントチューブ式加熱装置1による作用を、主に図1に沿って説明する。
図1に示すように、ラジアントチューブ2の一端部側2aとターン部2cとの間の中空部3内において、前記位置に配置された昇温抑制体10によって上記ラジアントチューブ2の内壁面と前記燃焼バーナBの外周面との間に、中心側の火炎Fを囲む燃焼済みガスが流れる内外一対の流路12a,13が形成される。
そのため、上記昇温抑制体10の貫通孔12における燃焼済みガスの出口側の圧力は、該燃焼済みガスの熱膨張によって、入口側の圧力よりも高圧になる。その結果、図1中の実線の矢印で示すように、出口側の焼済みガスの一部が、ラジアントチューブ2の内壁面と昇温抑制体10の外周面との間に位置する外側の各流路13を還流(逆流)し、該昇温抑制体10の入口側の貫通孔12の開口部付近に達した際に、燃焼バーナBの先端から高速で放出される新たな燃焼済みガスにより生じるベンチュリー効果を受ける。
【0024】
前記ベンチュリー効果により、前記燃焼済みガスの一部は、該昇温抑制体10の入口側の貫通孔12の内壁面と燃焼バーナBの外周面との間に位置する内側の流路12aを出口側に向かって流れつつ、図1中の破線で示すように、火炎Fを囲むようにして燃焼済みガス中に順次混入していく。係る混入によって、燃焼済みガス中における酸素濃度が低下し、且つ上記燃焼済みガスの燃焼温度が低下することにり、中心側の火焔Fの局所的な温度上昇を抑制できるので、有害な窒素酸化物(NOx)の発生を抑制ないし低減することができる。
次いで、上記燃焼済みガスは、図1中の白抜きの矢印で示すように、ラジアントチューブ2のターン部2cを経て、複数の熱輻射体15側に送給され、この間において、当該ラジアントチューブ2の管壁を介して、炉内に熱を輻射し続けるので、係る炉内の温度を所要の温度帯に加熱しつつ該温度帯に保持できる。
【0025】
更に、前記ターン部2cを通過した燃焼済みガスは、図1中の白抜きの矢印で示すように、複数の熱輻射体15の軸方向に沿った複数の螺旋状流路17を通過する。この際、前記燃焼バーナBから放出された燃焼済みガスが熱輻射体15ごとの複数の螺旋状流路17に沿って流れるので、該燃焼済みガスが有する潜熱を受けた後、前記ラジアントチューブ2の管壁を介して炉内に対して熱輻射する。
加えて、前記複数の熱輻射体15を通過した燃焼済みガスは、図1中の灰色系の矢印で示すように、前記熱交換器20aの先端部22の凹部26から該熱交換器20aの本体21に形成された各螺旋外溝24に沿って流されるので、該螺旋外溝24の内側に位置する螺旋内溝25内を流れる新たな燃焼用エアを効率良く予熱できる。しかも、前記昇温抑制体10により、前記燃焼バーナBから放射される燃焼済みガス中の窒素酸化物の割合が抑制されていることで、上記予熱による燃焼用空気の加熱温度の上限を高められるため、熱効率が著しく向上する。
以上の作用のように、前記ラジアントチューブ式加熱装置1は、前記第1乃至第3のラジアントチューブ式加熱装置を含んでいるので、前記効果(1)〜(7)を奏することができる。しかも、前記効果(1)による窒素酸化物の抑制に伴って、該効果(1)と効果(3)〜(5)との相乗効果による熱効率の著しい向上を奏することが可能となる。
【0026】
本発明は、以上において説明した各形態に限定されるものではない。
例えば、図9に示すように、前記熱交換器20aは、前記同様の本体21に先端側に円錐形状の先端部23を一体に有する形態としても良い。係る形態では、複数の螺旋外溝24ごとに個別に連通する複数の凹部26も、上記先端部23の円錐形状の傾斜した円錐面において、ほぼ直線状に開口する。
また、図10に示すように、前記同様の円筒形状の本体21と、その先端側の半球形状の先端部22とを有し、上記本体21の外周面に1個の螺旋外溝24と、その内側に裏腹で位置する図示しない1個の螺旋内溝24とを形成した形態の熱交換器20bを用いても良い。係る熱交換器20bでは、図示のように、燃焼済みガスの入口である凹部26は、1個であるが、先端部22に隣接する螺旋外溝24に向かって、該先端部22から平行に連通する複数の凹部26を形成しても良い。
【0027】
更に、図11に示すように、前記ラジアントチューブ2は、水平な両端部2a,2bの間に側面視で横W形状のターン部2dを有する形態としても良い。係るターン部2dの中央に位置する横U字形状の水平部分は、図示で左側に水平に長く延びていても良い。
加えて、本発明のラジアントチューブ式加熱装置は、前記熱処理炉に限らず、焼結炉、予熱炉、均熱炉、あるいは保温炉などに適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明によれば、燃焼バーナ内で発生する窒素酸化物(NOx)の発生を抑制できること、および熱効率を格段に高められることの少なくとも一方または双方を奏し得るラジアントチューブ式加熱装置を確実に提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0029】
1…………………ラジアントチューブ式加熱装置
2…………………ラジアントチューブ
2a………………上記チューブの一端部
2b………………上記チューブの他端部
2c,2d………上記チューブのターン部
3…………………上記チューブの中空部
7…………………給気パイプ
10………………昇温抑制体
12………………貫通孔
12a……………内側の流路
13,13a……凹溝/外側の流路
15………………熱輻射体
17………………螺旋状流路
20a,20b…熱交換器
21………………本体
22,23………先端部
24………………螺旋外溝
25………………螺旋内溝
W…………………炉壁(炉体)
B…………………燃焼パーナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11