(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記試験器の指令出力部は、複数種の試験の一部又は全部について選択的に実行指令を出力可能であって、前記火災感知器の機器種別情報が示す機器種別に基づいて前記複数種の試験の実行又は非実行を決定することを特徴とする請求項3記載の試験システム。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[実施形態の概要]
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る試験システムの構成例を示す構成図である。
図1に示すように、この試験システム100は、伝送路101に接続された複数の火災感知器10と、伝送路101に接続された受信機40と、伝送路101に接続された試験器20とを備えている。
なお、火災感知器10は、煙感知器10A、熱感知器10B、炎感知器10C等の種別があり、上記試験システム100には、これら各種の感知器が混在している。なお、以下の説明において、各種の火災感知器について包括的に説明する場合には、「火災感知器10」と記載し、種別毎に区別して説明する場合には、上記の通り、「煙感知器10A」、「熱感知器10B」、「炎感知器10C」と記載する。
【0021】
[伝送路]
伝送路101は、一対の配線であるライン線Lとコモン線Cから構成されている。これらライン線L及びコモン線Cは、いずれも一端部が受信機40の電源回路45に接続されており、他端部が終端器102に接続されている。そして、受信機40の電源回路45から電源が供給され、ライン線Lとコモン線Cとの間には例えば24V程度の電位差が生じている。
【0022】
[煙感知器]
図2に、本試験システムに用いられる煙感知器の一例を示す。
煙感知器10Aは、発光素子から放射された光が煙検出室内に流入した煙の粒子によって散乱された光を受光素子に受光させ、その受光量が所定のレベルに達したことを感知すると火災発生と判断するものである。
【0023】
上記のような機能を実現するために、煙感知器10Aは、発光素子11および受光素子12と、受光素子12からの信号を増幅する増幅器13と、該増幅器13により増幅された信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換するAD変換回路14と、該AD変換回路14からの出力値に基づいて火災の発生を判断する火災判断回路15を備えている。本実施形態においては、上記受光素子12と増幅器13とAD変換回路14とにより煙濃度検出手段が構成される。
火災判断回路15は、マイクロプロセッサ(CPU)およびROM(リードオンリメモリ)やRAM(ランダムアクセスメモリ)などの記憶手段により構成される。また、火災判断回路15は、後述する機器情報を記憶する記憶部として、ROMとは別個に、電気的に書き込み可能なEEPROMもしくはフラッシュメモリのような不揮発性メモリを備えている。不揮発性メモリは電池によりバックアップされたRAMに機器情報を記憶しても良い。
【0024】
また、煙感知器10Aは、ライン線Lとコモン線Cとにそれぞれ接続される一対の端子16a,16bと、ライン線Lとコモン線Cに印加されている電圧(例えば24V)から、感知器内部で使用する電源電圧(3Vや6V)を生成して各内部回路へ供給する電源回路17や、火災判断回路15によって火災の発生が検出された場合に、ライン線L−コモン線C間のインピーダンスを下げる(短絡を含む)ことによって、火災の発生を受信機40へ知らせるためのスイッチで構成された短絡回路18、ライン線Lとコモン線Cに接続される一対の端子16a,16bに接続され、該端子に外部より入力される信号(コマンド)を受信して火災判断回路15へ伝送したり、内部のデータを外部へ送信したりする送受信回路19を備える。
【0025】
ところで、上記構成の煙感知器はいわゆる光電式スポット型煙感知器と呼ばれるものであり、このほか後述の通り様々なタイプの煙感知器が存在する。
上記火災判断回路15の記憶部には、煙感知器10Aに固有の機器情報が記憶されている。この機器情報には、「アドレス」、「機器種別」、「方式種別」、「設置型種別」、「感度種別」が含まれている(
図13参照)。
【0026】
上記「アドレス」は、火災感知器を個々に識別するために、同一伝送路内で重複が生じないように設定された番号である。
上記「機器種別」は、火災感知器の検知対象に基づく分類である。具体的には、当該火災感知器10が「煙感知器」、「熱感知器」、「炎感知器」のいずれであるかを示す情報である。
上記「方式種別」は検知方法に基づく分類であり、光電式とイオン式とがある。
上記「設置型種別」は感知エリアに基づく分類であり、一箇所の煙の検知におり発報するスポット型と広範囲の煙の検知による発報を行う分離型がある。
上記「感度種別」は火災と判断する煙濃度の範囲の広狭の分類であり、感度の高さに応じて例えば1〜3種というように分類される。
【0027】
[熱感知器]
図3に、本試験システムに用いられる熱感知器の一例を示す。
熱感知器10Bは、周囲の温度が一定値以上となった場合に火災発生と判断する。
この熱感知器10Bにおいて、前述した煙感知器10Aと同一の構成については同符号を付して重複する説明は省略する。
熱感知器10Bは、サーミスタ等の熱感知素子11B、増幅器13、AD変換回路14、火災判断回路15、一対の端子16a,16b、電源回路17、短絡回路18送受信回路19を備える。
【0028】
なお、方式種別が定温式の場合には、火災判断回路15は、AD変換回路14からの周囲の検出温度の出力値に基づいて火災の発生を判断する。また、方式種別が差動式の場合には、熱感知素子11Bに替えて圧力検出素子を備え、熱感知器内部の密閉領域内の圧力が火災の熱により高まると、これを圧力センサ等で検出し、火災判断回路が、検出圧力の上昇に基づいて火災の発生を判断する。
また、熱感知素子11Bは、サーミスタに限らず、例えば、バイメタルを使用する場合もある。バイメタルを使用する場合には、増幅器13、AD変換回路14は使用されず、火災判断回路15は、バイメタルからなる接点の開閉による電流値又は電圧値の変動により火災の発生を判断する。
【0029】
また、熱感知器10Bの火災判断回路15の記憶部にも、熱感知器10Bに固有の機器情報が記憶されている。熱感知器10Bの機器情報の項目は前述した煙感知器10Aと同じであるが、一部の項目については内容が異なるので、その点についてのみ説明する(
図13参照)。
熱感知器10Bの「設置型種別」には、一箇所の熱の検知により発報するスポット型と広範囲の熱の検知による発報を行う分布型とがある。
また、熱感知器10Bの「感度種別」については、感度の高さに応じて例えば特種と1〜3種というように分類される。
【0030】
[炎感知器]
炎感知器10Cは、赤外線式と紫外線式の二種類の検知方式がある。
赤外線式は、所定波長の赤外線の検出強度が一定値以上となった場合に火災発生と判断し、紫外線式は、所定波長の紫外線の検出強度が一定値以上となった場合に火災発生と判断する。
【0031】
図4は炎感知器10Cの構成を示している。この炎感知器10Cにおいて、前述した煙感知器10Aと同一の構成については同符号を付して重複する説明は省略する。
炎感知器10Cは、図示しない赤外線光又は紫外線光を透過するバンドパスフィルタを備えた光電変換素子又は焦電センサ等の光検出素子11C、増幅器13、AD変換回路14、火災判断回路15、一対の端子16a,16b、電源回路17、短絡回路18送受信回路19を備える。
炎感知器10Cの火災判断回路15は、煙感知器10Aと同様に、AD変換回路14からの出力値に基づいて火災の発生を判断する。
【0032】
また、炎感知器10Cの火災判断回路15の記憶部にも、炎感知器10Cに固有の機器情報が記憶されている。炎感知器10Cの機器情報の項目は前述した煙感知器10Aと同じであるが、「方式種別」は前述した赤外線式と紫外線式とからなる点が他の火災感知器と異なっている。
【0033】
[受信機]
図5は受信機40の構成である。
図5に示すように、受信機40は、ライン線Lとコモン線Cにそれぞれ接続される一対の端子41a,41bと、端子41a,41bの端子間電圧に基づいて煙感知器10から火災発報信号が出力されたか否か判定する火災信号判定回路44、該端子41a,41bを介して各火災感知器10に対する発報の停止を促す復旧指令信号の送信を行う送受信回路42と、火災の発生と発生箇所の報知表示を行うLCD(液晶パネル)やLEDランプなどからなる表示部46、火災の発生の報知音を鳴動させるブザーやスピーカなどの音響出力部48、火災発報信号を受けて表示部46及び音響出力部48の報知処理を行う制御部43、各火災感知器10に対する復旧指令信号の送信を実行させる入力操作部47と、AC100Vのような商用交流電圧を受けて、受信機40内の上記各構成の動作に必要な直流電源電圧(3Vや6V)を生成して供給する電源回路45とを備えている。
なお、この受信機40は、いわゆるP型受信機であり、火災の検知と火災発生の判断は火災感知器10側で行い、それらの結果を受信して報知を行う。
また、電源回路45は、ライン線Lとコモン線Cとに10V〜32V程度の電位差を発生させて、各火災感知器10に対して電源の供給も行っている。なお、この受信機40の電源回路45はバッテリを内蔵しており、外部から交流電圧の供給がない場合、内部回路はバッテリからの電源電圧でも動作可能に構成されている。
【0034】
[試験器]
図6には試験器20の構成例および該試験器20と火災感知器10との接続関係が示されている。
図6に示すように、試験器20は、ライン線Lとコモン線Cにそれぞれ接続される一対の端子21a,21bと、該端子21a,21bを介して各火災感知器10へパルス信号(コマンドコード)を送出する送受信回路22と、試験に必要な演算や内部回路の制御等を行う感度判定手段としての演算制御部23とを備える。演算制御部23は、マイクロプロセッサ(CPU)とROM(リードオンリメモリ)やRAM(ランダムアクセスメモリ)などの記憶手段により構成される。
また、演算制御部23は、取得情報記憶部として、ROMとは別個に、電気的に書き込み可能なEEPROMもしくはフラッシュメモリのような不揮発性メモリを備えている。不揮発性メモリは電池によりバックアップされたRAMに機器情報を記憶しても良い。
試験器20の演算制御部23は、各火災感知器10から機器情報を取得して、この取得情報記憶部に格納する。そして、各種の試験を実施する際には、取得情報記憶部に格納された機器情報を参照しながら、試験の実施対象であるか否かを判断する。即ち、この演算制御部23は、各火災感知器10に対する試験の実行又は非実行を決定する「指令出力部」として機能する。
また、取得情報記憶部として不揮発性メモリに対して、演算制御部23は、各火災感知器10に対して行った試験の結果も記録する。つまり、取得情報記憶部として不揮発性メモリは、「試験結果記憶部」としても機能する。
【0035】
また、試験器20は、上記一対の端子21a,21bに接続され、端子間電圧に基づいて各火災感知器10から火災発報信号が出力されたか否か判定する火災発報信号検出手段としての火災信号判定回路24や、AC100Vのような商用交流電圧を受けて、内部回路の動作に必要な直流電源電圧(3Vや6V)を生成して各内部回路へ供給する電源回路25、演算制御部23によって取得された各火災感知器10の機器情報や演算制御部23によって実行された試験結果を出力するLCD(液晶パネル)やLEDランプなどからなる結果出力部としての表示部26、演算制御部23へ対する指令や設定情報を入力するための操作ボタンからなる入力操作部27、演算制御部23による制御によって音を発生するブザーやスピーカなどの音響出力部28を備える。
上記音響出力部28は必須のものでなく、省略しても良い。電源回路25はバッテリを内蔵しており、外部から交流電圧の供給がない場合、内部回路はバッテリからの電源電圧でも動作可能に構成されている。
【0036】
[作動試験]
試験器20が各火災感知器10に対して行う試験の種別について説明する。
火災感知器10の試験は、主に、感度試験と作動試験とが行われる。
作動試験は、火災感知器10が火災の発報動作を行うことができるか否かを確認する試験であり、機種種別に拘わらず、全ての火災感知器10を対象として行われる。
作動試験では、試験器20が送受信回路22から、作動試験の対象となる火災感知器10のアドレスと作動試験の実行指令のコマンドとを火災感知器10に対して送信する。
これに対して、各火災感知器10の火災判断回路15は、指定されたアドレスが自己のアドレスである場合には、作動試験の実行指令のコマンドに応じて発報動作、即ち、短絡回路18によるライン線Lとコモン線Cとの短絡を実行する。
そして、試験器20は、作動試験の実行指令のコマンドの送信から規定時間内に、送受信回路22を通じてライン線Lとコモン線Cとの短絡状態が検出されるか否かによって火災感知器10が発報動作可能かを判定する。
【0037】
[感度試験]
感度試験は、塵芥などの付着等の要因により、設置してから経時的に感度の変化が生じやすい煙感知器10Aのみを対象として行われる。
この感度試験は、煙感知器10Aが製造当初に設定された煙濃度の設定範囲で正しく火災発生と判断できるか否かを確認する試験である。
【0038】
煙感知器10Aは、火災判断回路15の記憶部に、煙感知のパラメータとして、煙が発生していない状態での検知煙濃度(初期値)と火災発生と判断する煙濃度の範囲の最大値及び最小値とが登録されている。
煙感知器10Aの感度試験は、経年的又は外的要因によって生じる煙の検知感度の変化が許容される範囲内か否かを確認する必要がある。
【0039】
煙の検知感度に変化を生じている場合には、煙が発生していない状態での検知煙濃度の値にその変化が現れる。これに基づいて、試験器20は、煙感知器10Aに対して、感度試験の対象となる煙感知器10Aのアドレスと作動試験の実行指令のコマンドと煙感知器10Aが現在検出している煙濃度値に加算又は減算する試験値を与える。これに対して、感度試験の対象となる煙感知器10Aは、現在検出している煙濃度値に当該試験値を加算又は減算した比較値が火災発生と判断する煙濃度の範囲内となるか否かを判断し、範囲内であれば発報するので、試験器20は、発報動作の有無を検出し、煙感知器10Aの感度の適否を判断する。
【0040】
[試験対象の設定]
上述したように、作動試験は全ての機器種別の火災感知器10を対象とし、感度試験は煙感知器10Aのみを対象とするが、試験器20は、上記制限の範囲内で、さらに、各種の試験の対象を前述した他の種別について選択設定することが可能である。
図7は試験器20の表示部26に表示される作動試験の対象となる火災感知器10の設定画面であり、この設定画面から入力操作部27を通じて作動試験を実施する火災感知器10を方式種別又は感度種別ごとに選択設定することができる。
具体的には、煙感知器10A及び熱感知器10Bについては、感度種別ごとに実施対象を選択することができ、炎感知器10Cは方式種別ごとに選択することができる。
なお、選択可能な種別は一例であり、方式種別や感度種別に限定されない。
【0041】
また、
図8は感度試験の対象となる煙感知器10Aの設定画面であり、この設定画面から入力操作部27を通じて感度種別ごとに実施対象を選択設定することができる。なお、感度試験の対象となる煙感知器10Aの設定画面は、作動試験の対象となる火災感知器10の設定画面と共通する画像データを使用しており、熱感知器10B及び炎感知器10Cの設定項目も表示されるが、これらは破線又は薄色で表示され、入力操作部27による入力ができないようになっている。
そして、
図7及び
図8の設定画面に示す各種試験の実施対象の設定については、試験器20の演算制御部23の取得情報記憶部に格納される。
【0042】
[試験器による試験の実施処理(1)]
図9には、試験器20の演算制御部23による火災感知器10の試験の実施処理(1)のフローチャートが示されている。なお、試験システム100における各火災感知器10の各種の試験は、従来から行われている火災感知器10を設置箇所から取り外して試験器に接続する方式とは異なり、火災感知器10を設置箇所に設置したままの状態で実施される(後述する実施処理(2),(3)も同様)。
また、試験器20は作動試験と感度試験の二種類の試験を実施可能であるが、この実施処理(1)では、作動試験又は感度試験のいずれか一方のみを実施する場合の処理について説明する。
【0043】
まず、演算制御部23は、試験対象となる火災感知器10のアドレスNを0にリセットし(ステップS1)、次いで、アドレスNを一つカウントアップする(ステップS3)。
そして、現在のアドレスの火災感知器10に対して機器情報の要求を実行する(ステップS5)。具体的には、演算制御部23は、パルス信号によってアドレス信号と機器要求コマンド信号とを生成して送受信回路22を通じて伝送路101(ライン線Lとコモン線C)に送信する。これに対して、各火災感知器10は、アドレス信号を送受信回路19により受信して、火災判断回路15が自己のアドレスと一致するか判定し、一致しなければアドレス信号に続く機器情報要求コマンド信号には応答しない。また、アドレスが一致する火災感知器10の火災判断回路15は、機器要求コマンド信号に応じて、自己の記憶部に格納された機器情報を参照し、「アドレス」、「機器種別」、「方式種別」、「設置型種別」、「感度種別」の各種の設定情報のパルス信号を生成して、送受信回路19を通じて伝送路101に送信する。
【0044】
試験器20の演算制御部23は、アドレス信号と機器情報要求コマンド信号の送信後、規定時間が経過するまで火災感知器10からの応答待ちを行う(ステップS7)。
試験システム100の伝送路101に接続された火災感知器10の中には、伝送路101に対して火災発生の発報を行う機能は有するが、伝送路101を通じた信号の通信機能は持っていないものが存在する。このような通信機能を持たない火災感知器10は割り当てられた自己のアドレス信号が伝送路101に送信されても応答は行わない。
また、現在のアドレスの火災感知器10に何らかの異常が発生して応答が行われない場合もある。
従って、現在のアドレスが通信機能を持たない火災感知器10のアドレスである場合又は異常が発生した火災感知器10のアドレスである場合には、演算制御部23は、応答信号待ちの規定時間が経過しても、機器情報信号を取得することはできない(ステップS7:NO)。この場合には、演算制御部23は、現在のアドレスの火災感知器10は応答が得られなかったことを取得情報記憶部に記録すると共に、処理をステップS13に進めて、現在のアドレスが最終アドレスNmaxであるか否かを判定する。その結果、最終アドレスNmaxに達していれば(ステップS13:YES)、実施処理(1)は終了となる。また、現在のアドレスが最終アドレスNmaxではない場合には(ステップS13:NO)、ステップS3に処理を戻して、アドレスをカウントアップして次のアドレスに基づいて機器情報の要求を行う。
【0045】
一方、現在のアドレスの火災感知器10から機器情報信号の応答が得られた場合には(ステップS7:YES)、演算制御部23は、取得した機器情報を取得情報記憶部に格納する。そして、この取得情報記憶部に格納した機器情報と、前述した
図7又は
図8に示す各種試験の実施対象の設定情報とを参照して、現在のアドレスの火災感知器10がこれから実施する試験の実施対象であるか否かを判定する(ステップS9)。
例えば、試験が作動試験である場合には、機器種別を問わず実施対象となるが、
図7の実施対象の設定情報が存在する場合には、取得した機器情報から方式種別又は感度種別が実施対象に該当するか否かについても判定する。
また、試験が感度試験である場合には、取得した機器情報から機器種別が煙感知器であるかを判定し、さらに、
図8の実施対象の設定情報が存在する場合には、取得した機器情報から感度種別が実施対象に該当するか否かについても判定する。
【0046】
そして、現在のアドレスの火災感知器10が試験の実施対象である場合には(ステップS9:YES)、当該火災感知器10に対して試験実行コマンドを送信して試験を実行させる(ステップS11)。そして、試験結果を取得してから、ステップS13に処理を進める。
また、現在のアドレスの火災感知器10が試験の実施対象ではない場合には(ステップS9:NO)、当該火災感知器10に対して試験を実行することなく、ステップS13に処理を進める。
【0047】
ステップS13では、現在のアドレスが最終アドレスNmaxであるか否かを判定する。
そして、現在のアドレスが最終アドレスNmaxではない場合には(ステップS13:NO)、ステップS3に処理を戻して、アドレスをカウントアップして次のアドレスの火災感知器10に対する処理を実行する。
また、現在のアドレスが最終アドレスNmaxである場合には(ステップS13:YES)、全ての火災感知器10に対して試験が完了したことになるので、試験の実施処理(1)は終了となる。
【0048】
図10は
図9のステップS11の試験の処理を示すフローチャートである。
演算制御部23は、現在のアドレスの火災感知器10に対して試験の実行を要求する(ステップS111)。
例えば、試験が作動試験の場合には、演算制御部23は、送受信回路22を通じて、アドレス信号と作動試験コマンド信号とを伝送路101に送信する。
これに対して、現在のアドレスの火災感知器10の火災判断回路15は、作動が正常であれば、短絡回路18によりライン線Lとコモン線Cとを短絡させて火災発報信号を送信する。また、何らかの異常により作動が正常ではない場合には火災発報信号は送信されない。
【0049】
そして、試験器20の演算制御部23は、アドレス信号と作動試験コマンド信号を送信してから一定期間の応答待ち(火災発報信号待ち)を行う。
その結果、一定期間内に火災発報信号が得られた場合には(ステップS113:YES)、現在のアドレスの火災感知器10又は全ての火災感知器10に対して発報状態を停止させる復旧コマンド信号を送信して(ステップS115)、表示部26に現在のアドレスの火災感知器10は作動試験結果が正常であったことを表示する(ステップS117)。
また、一定期間内に火災発報信号が得られなかった場合には(ステップS113:NO)、表示部26に現在のアドレスの火災感知器10は作動試験結果が異常であったことを表示する(ステップS117)。
【0050】
また、試験が感度試験の場合には、演算制御部23は、現在のアドレスの火災感知器10に対して、試験指令として、煙感知のパラメータの要求コマンドや現在検出している煙濃度値に試験値を加算した比較値に対する火災判定の要求コマンドを送信する(ステップS111)。
なお、感度試験の場合には、試験値を変化させて複数回判定を行う場合があるので、当該火災判定の要求コマンドは複数回送信される場合がある。
【0051】
これに対して、現在のアドレスの火災感知器10の火災判断回路15は、比較値(試験値と現在検出している煙濃度値との合計値)が火災発生と判断する煙濃度の範囲となった場合には、短絡回路18によりライン線Lとコモン線Cとを短絡させて火災発報信号を送信する。また、比較値が火災発生と判断する煙濃度の範囲内にならない場合には火災発報信号は送信されない。
【0052】
そして、試験器20の演算制御部23は、火災発報信号が得られると(ステップS113:YES)、現在のアドレスの火災感知器10に対して発報状態を停止させる復旧コマンド信号を送信して(ステップS115)、その際の試験値に応じて現在のアドレスの火災感知器10の感度試験結果が正常か異常かを判定し、その判定結果を表示する(ステップS117)。
また、最終的に火災発報信号が得られなかった場合には(ステップS113:NO)、表示部26に現在のアドレスの火災感知器10は感度試験結果が異常であったことを表示する(ステップS117)。
【0053】
[試験器による試験の実施処理(2)]
図11には、試験器20の演算制御部23による火災感知器10の試験の実施処理(2)のフローチャートが示されている。
この実施処理(2)は作動試験又は感度試験のいずれか一方のみを実施する場合の処理である。また、前述した実施処理(1)は各火災感知器10に対して機器情報の要求と試験とを連続して行っていたが、この実施処理(2)では全ての火災感知器10に対して機器情報の要求を行ってから各火災感知器10に対して試験を実行する点が異なっている。
【0054】
この実施処理(2)におけるステップS21〜S25までの処理は、前述した実施処理(1)におけるステップS1〜S5までの処理と同一である。
即ち、演算制御部23は、火災感知器10のアドレスをリセットしてから(ステップS21)、一つカウントアップし(ステップS23)、当該アドレスの火災感知器10に対して機器情報の要求を行う(ステップS25)。
【0055】
その後、演算制御部23は、機器情報要求に対する応答待ちを行い、所定時間内に機器情報信号を取得できなかった場合には、当該アドレスの火災感知器10は応答が得られなかったことを取得情報記憶部に記録し、機器情報信号が得られた場合には、取得した機器情報を取得情報記憶部に格納する(ステップS27)。
【0056】
そして、演算制御部23は、現在のアドレスが最終アドレスNmaxであるか否かを判定する(ステップS29)。その結果、現在のアドレスが最終アドレスNmaxに達していない場合には(ステップS29:NO)、ステップS23に処理を戻して、アドレスをカウントアップして次のアドレスに基づいて機器情報の要求を行う。
また、最終アドレスNmaxに達していれば(ステップS29:YES)、アドレスのカウントをリセットして(ステップS31)、個々の火災感知器10の試験に移行する。
【0057】
まず、アドレスを一つカウントアップし(ステップS33)、当該アドレスの火災感知器10の機器情報と前述した
図7又は
図8に示す各種試験の実施対象の設定情報とを呼び出して、現在のアドレスの火災感知器10がこれから実施する試験の実施対象であるか否かを判定する(ステップS35)。この判定については、前述した実施処理(1)のステップS9の処理と同一である。
【0058】
そして、現在のアドレスの火災感知器10が試験の実施対象である場合には(ステップS35:YES)、当該火災感知器10に対して試験実行コマンドを送信して試験を実行させる(ステップS37)。試験実行の処理については
図10に基づいて既に説明した通りである。そして、試験の結果を取得してから、ステップS39に処理を進める。
また、現在のアドレスの火災感知器10が試験の実施対象ではない場合には(ステップS35:NO)、当該火災感知器10に対して試験を実行することなく、ステップS39に処理を進める。
【0059】
ステップS39では、現在のアドレスが最終アドレスNmaxであるか否かを判定する。
そして、現在のアドレスが最終アドレスNmaxではない場合には(ステップS39:NO)、ステップS33に処理を戻して、アドレスをカウントアップして次のアドレスの火災感知器10に対する処理を実行する。
また、現在のアドレスが最終アドレスNmaxである場合には(ステップS39:YES)、全ての火災感知器10に対して試験が完了したことになるので、試験の実施処理(2)は終了となる。
【0060】
[試験器による試験の実施処理(3)]
図12には、試験器20の演算制御部23による火災感知器10の試験の実施処理(3)のフローチャートが示されている。
この実施処理(3)は複数種類の試験、例えば、作動試験と感度試験の両方を実施する場合の処理である。この実施処理(3)は、前述した実施処理(2)と同様に、先に全ての火災感知器10に対して機器情報の要求を行ってから各火災感知器10に対して試験を実行する。
【0061】
この実施処理(3)におけるステップS61〜S69までの処理は、各火災感知器10に対する機器情報の取得を行う処理であり、前述した実施処理(3)におけるステップS21〜S29までの処理と同一であるため説明は省略する。
【0062】
ステップS61〜S69の処理により、全ての火災感知器10の機器情報の取得の処理が完了すると、演算制御部23は、アドレスのカウントをリセットしてから(ステップS71)、一つカウントアップし(ステップS73)、まず、一方の試験A(例えば、感度試験とする)を実施する。
演算制御部23は、現在のアドレスの火災感知器10の機器情報と前述した
図8に示す感度試験の実施対象の設定情報とを呼び出して、現在のアドレスの火災感知器10が感度試験の実施対象であるか否かを判定する(ステップS75)。この判定については、前述した実施処理(1)のステップS9の処理と同一である。
【0063】
そして、現在のアドレスの火災感知器10が感度試験の実施対象である場合には(ステップS75:YES)、当該火災感知器10に対して試験実行コマンドを送信して感度試験を実行させる(ステップS77)。感度試験実行の処理については
図10に基づいて既に説明した通りである。そして、感度試験の結果を取得してから、ステップS79に処理を進める。
また、現在のアドレスの火災感知器10が感度試験の実施対象ではない場合には(ステップS75:NO)、当該火災感知器10に対して感度試験を実行することなく、ステップS79に処理を進める。
【0064】
ステップS79では、現在のアドレスが最終アドレスNmaxであるか否かを判定する。
そして、現在のアドレスが最終アドレスNmaxではない場合には(ステップS79:NO)、ステップS73に処理を戻して、アドレスをカウントアップして次のアドレスの火災感知器10に対する処理を実行する。
また、現在のアドレスが最終アドレスNmaxである場合には(ステップS79:YES)、全ての火災感知器10に対して感度試験が完了したことになるので、次の試験Bに移行する(例えば、作動試験とする)。
【0065】
作動試験の処理であるステップS81〜S89の処理は感度試験の処理であるステップS71〜S79と殆ど同一なので、簡単に説明する。
演算制御部23は、アドレスをリセットし(ステップS81)、一つカウントアップして(ステップS83)、現在のアドレスの火災感知器10の機器情報と前述した
図7に示す感度試験の実施対象の設定情報とを呼び出して、作動試験の実施対象であるか否かを判定する(ステップS85)。
そして、現在のアドレスの火災感知器10が作動試験の実施対象であれば(ステップS85:YES)、感度試験を行い(ステップS87)、その試験結果を取得する。
また、現在のアドレスの火災感知器10が作動試験の実施対象ではなければ(ステップS85:NO)、作動試験は行わない。
そして、現在のアドレスが最終アドレスNmaxであるか否かを判定し、最終アドレスNmaxではない場合には(ステップS89:NO)、ステップS83に処理を戻して、次のアドレスの火災感知器10に対する処理を実行し、現在のアドレスが最終アドレスNmaxである場合には(ステップS89:YES)、全ての火災感知器10に対して作動試験が完了して、試験の実施処理(3)は終了となる。
【0066】
図13は、
図12の試験の実施処理(3)によって取得された各火災感知器10の機器情報及び感度試験による試験結果の表示例である。
この
図13に示すように、アドレス2,8の火災感知器10は、機器情報の要求に対する応答が得られておらず、通信機能を有していないか或いは通信機能に異常がある火災感知器であることが予想される。
また、感度試験なので、煙感知器10A以外の機種種別の火災感知器10は、試験が行われず、試験結果が得られていないことが分かる。また、アドレス3の煙感知器10Aは、煙感知器であるにも拘わらず試験結果が得られていないので、感度試験で異常と判定されたことが予想される。
【0067】
なお、上記試験の実施処理(3)では、二種類の試験を実行する場合を例示したが、三以上の試験を実行することも可能である。その場合には、ステップS89の処理において、現在のアドレスが最終アドレスNmaxに達した後に、新たに、ステップS81〜S89と同じ処理により次の試験を行えば良い。
【0068】
[発明の実施形態の技術的効果]
試験システム100の試験器20は、複数の火災感知器10に対して機器情報を要求し、取得した機器情報に基づいて試験の実行の可否を決定しているので、試験の対象となる火災感知器に対して試験を実施することができ、試験実施の迅速化を図ることが可能となる。
また、機器情報にアドレス情報が含まれている場合には、火災感知器の管理や通信を適正に行うことができ、機器種別情報が含まれている場合には、複数種の試験を行う場合に、機器種別に応じた適正な試験を行うことができる。
また、試験器20から復旧指令を送信するので、受信機40からの送信を不要とし、作業負担が軽減される。
さらに、試験器20は、試験の結果を表示部26で表示しているが、その他に、情報記録媒体や情報通信により外部に出力可能としても良い。
【0069】
[機器情報の保持について]
試験器20の一対の端子21a,21bをぞれぞれ分離可能なプラグとソケットから構成し、ソケット部分を伝送路101側に残して、プラグをソケットから分離可能としても良い。
また、このように、試験器20を伝送路101から着脱可能とした場合において、演算制御部23は、試験器20の伝送路101に対する接続状態の解除が検出されるまでは、既に取得した機器情報を取得情報記憶部にそのまま保持するようにデータ管理を行う構成としても良い。
なお、この場合には、火災信号判定回路24を、試験器20が伝送路101から外されて接続状態が解除されたことを検出する解除検出部として使用することができる。
これにより、試験を実施する度に各火災感知器10に対して機器情報の要求を行う必要がなくなり、試験に要する時間を短縮化することが可能となる。
また、試験器20に主電源の投入と切断を行う電源スイッチを設けてもよい。その場合には、電源スイッチを切断すると、試験器20は伝送路101との接続状態が解除されるので、当該解除を電源回路25により検出可能として、演算制御部23は、試験器20の伝送路101に対する接続状態の解除が検出されるまでは、既に取得した機器情報を取得情報記憶部にそのまま保持するようにデータ管理を行う構成としても良い。
【0070】
[その他]
上記試験システム100では、受信機40と試験器20とが個別に設けられているが、受信機40と試験器20とを一体に構成しても良い。
その場合、受信機40と試験器20とがそれぞれ有している送受信回路、火災信号判定回路、表示部、入力操作部、音響出力部、電源回路等の構成は、一つを共用することができる。また、受信機40の制御部43と試験器20の演算制御部23も、いずれか一方を共用することができる。
【0071】
また、上記試験システム100の試験器20は、各火災感知器10の試験として作動試験と感度試験の二種類の試験を実施する場合を例示したが、試験の種別はこれらに限定されず、また、より多くの試験を実施しても良い。また、より多くの種別の試験の中から一部を選択して実施してもよい。
また、火災感知器10として煙感知器10Aと熱感知器10Bと炎感知器10Cとを例示したが、これらに限定されず、伝送路101を介して試験器20と通信可能な他の機器種別の火災感知器もシステム内に加えてもよい。
【0072】
なお、各火災感知器10が有する機器情報に、各火災感知器10の製造番号の情報を含ませても良い。これにより、例えば、製造番号から製造ロットを把握し、製造ロットごとの試験結果の統計を取ることができ、生産管理について試験結果を有効に利用することが可能となる。
この場合、試験器20の演算制御部23を所定のインターフェイスを介して外部の通信ネットワークと接続とし、当該通信ネットワークに接続されたサーバーから製造番号と関連する他の情報、例えは、製造ロット等の管理情報を取得可能とすることが望ましい。